説明

セミトレーラの車体前部構造

【課題】大型コンテナと2つの小型コンテナとを選択的に積載可能な兼用タイプのセミトレーラにおいて、部品点数の増加による重量化やコストの上昇を抑制する。
【解決手段】前方小型用前側緊締装置120は、フロントボルスタ40の後面40bから突出するスレッドピン71の可動領域を上方から覆う使用位置と、セミトレーラに積載された40ftコンテナと干渉しないように使用位置から前上方へ回転した格納位置との間で回転可能にフロントボルスタ40に支持される。前方小型用前側緊締装置120は、使用位置に設定された状態で、スレッドピン71の可動範囲の上方で略水平に配置される上面126aと、この上面126aから上方へ突出して延びるツイストロック122とを有する。前方小型用前側緊締装置120は、40ftコンテナを積載する場合は格納位置に設定され、前方20ftコンテナを載置する場合は使用位置に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後方向の長さが相違するコンテナを積載可能な兼用タイプのセミトレーラの車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長さ寸法20フィートの小型コンテナと長さ寸法40フィートの大型コンテナとのいずれでも積載できる兼用タイプのセミトレーラが記載されている。このセミトレーラには、2つの小型コンテナが前後方向に積載可能であり、セミトレーラの前端部には、大型コンテナの前下隅と係合可能な係合ピンと、前方の小型コンテナの前下隅と係合可能な係合ピンとが設けられ、中間部には、前方の小型コンテナの後下隅と係合可能な係合ピンと、後方の小型コンテナの前下隅と係合可能な係合ピンとが前後に設けられ、後端部には、大型コンテナの後下隅と後方の小型コンテナの後下隅とに係合可能な兼用の係合ピンが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−6759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造では、前後方向に延びる縦梁材の前端部には、車幅方向に延びる前後2本の横梁材(前部前側横梁材と前部後側横梁材)が近接して並んで固定され、大型コンテナの前下隅と係合可能な左右の係合ピン(大型用前側係合ピン)は、前部後側横梁材の両端部のコンテナ支持面にそれぞれ設けられ、小型コンテナの前下隅と係合可能な左右の係合ピン(小型用前側係合ピン)は、前部前側横梁材の両端部側面にそれぞれ設けられている。すなわち、大型前側係合ピン及び小型前側係合ピンを設けるための2本の横梁材が必要であるため、部品点数が増加し、車体の重量化やコストの上昇を招く。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑み、大型コンテナと2つの小型コンテナとを選択的に積載可能な兼用タイプのセミトレーラにおいて、部品点数の増加による重量化やコストの上昇を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、前後の長さが第1所定長に設定された大型コンテナと、第1所定長の略1/2の第2所定長に設定された小型コンテナとを選択的に積載可能であり、且つ小型コンテナについては2つのコンテナを前後に並んで配置して積載可能な兼用タイプのセミトレーラの車体前部構造であって、前後方向に相対向して延びる左右1対のメインビームの前端部で車幅方向に延設されて左右のメインビームに支持される1本のフロントボルスタと、フロントボルスタの両端部にそれぞれ設けられた左右の大型コンテナ用前側緊締装置と、フロントボルスタの両端部にそれぞれ設けられた左右の前方小型コンテナ用前側緊締装置と、を備える。
【0007】
大型コンテナ用前側緊締装置は、前後方向に直線状に延び、フロントボルスタの後面から後方へ突出する係合位置と、フロントボルスタの後面から前方へ突出しない係合解除位置との間で前後方向に沿って移動自在なスレッドピンを有する。
【0008】
前方小型コンテナ用前側緊締装置は、フロントボルスタの後面から突出するスレッドピンの可動領域を上方から覆う使用位置と、セミトレーラに積載された大型コンテナと干渉しないように使用位置から前上方へ回転した格納位置との間で回転可能にフロントボルスタに支持される。
【0009】
前方小型コンテナ用前側緊締装置が格納位置に設定され、大型コンテナがセミトレーラに載置された状態で、スレッドピンは、係合解除位置から係合位置へ移動することによって大型コンテナの前下端隅部に前方から係合する。
【0010】
前方小型コンテナ用前側緊締装置は、使用位置に設定された状態で、スレッドピンの可動範囲の上方で略水平に配置される上面と、この上面から上方へ突出して延びるツイストロックとを有する。前方小型コンテナ用前側緊締装置が使用位置に設定され、スレッドピンが係合解除位置に設定された状態で、2つの小型コンテナのうち前方に配置される前方小型コンテナがセミトレーラに載置されると、ツイストロックは、前方小型コンテナの前下端隅部に下方から進入し、前下端隅部に進入したツイストロックは、この前下端隅部と解除可能に係合する。
【0011】
上記構成では、大型コンテナを積載する場合、その積載前に、前方小型コンテナ用前側緊締装置を格納位置に設定し、大型コンテナ用前側緊締装置のスレッドピンを係合解除位置に設定する。この状態で大型コンテナをセミトレーラに積載し、スレッドピンを係合位置へ移動させて大型コンテナの前下端隅部に係合させる。
【0012】
前方小型コンテナを積載する場合、その積載前に、前方小型コンテナ用前側緊締装置を使用位置に設定する。この状態で前方小型コンテナをセミトレーラに積載し、前方小型コンテナの前下端隅部に下方から進入したツイストロックをその前下端隅部に係合させる。
【0013】
このように、大型コンテナと2つの小型コンテナとを選択的に積載可能な兼用タイプのセミトレーラにおいて、大型コンテナの前下端隅部と係合する大型コンテナ用前側緊締装置と、前方小型コンテナの前下端隅部と係合する前方小型コンテナ用前側緊締装置とを、1本のフロントボルスタの両端部に設けることができるので、部品点数の増加による重量化やコストの上昇を抑制することができる。
【0014】
また、前方小型コンテナ用前側緊締装置は、スレッドピン挿入孔を有してもよい。前方小型コンテナ用前側緊締装置が使用位置に設定された状態で、係合解除位置から係合位置へ移動するスレッドピンは、スレッドピン挿入孔に進入する。スレッドピン挿入孔に進入したスレッドピンは、スレッドピン挿入孔と当接することによって前方小型コンテナ用前側緊締装置の使用位置からの回転を阻止する。
【0015】
上記構成では、前方小型コンテナを積載する際に、スレッドピンを係合位置に突出させることによって前方小型コンテナ用前側緊締装置を使用位置に保持することができ、前方小型コンテナの積載作業を良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大型コンテナと2つの小型コンテナとを選択的に積載可能な兼用タイプのセミトレーラにおいて、部品点数の増加による重量化やコストの上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態のセミトレーラの車体前部構造を示す平面図である。
【図2】図1の側面図であり、(a)は大型コンテナを積載した状態を、(b)は2つの小型コンテナを積載した状態をそれぞれ示す。
【図3】大型コンテナと小型コンテナとを前下方から視た斜視図である。
【図4】フロントボルスタの斜視図である。
【図5】大型コンテナ用前側緊締装置及び格納状態の前方小型コンテナ用前側緊締装置を示す平面図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】大型コンテナ用前側緊締装置及び使用状態の前方小型コンテナ用前側緊締装置を示す平面図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】図7の正面図である。
【図10】図8の断面図である。
【図11】ガイド穴を示す側面図である。
【図12】前方小型コンテナ用後側緊締装置を示す側面図である。
【図13】図12の平面図である。
【図14】図12の正面図である。
【図15】後方小型コンテナ用前側緊締装置を示す正面図である。
【図16】図15の平面図である。
【図17】図15の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、特に説明のない限り左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0019】
図2に示すように、本実施形態のセミトレーラ1は、前後の長さが40フィート(第1所定長)に設定された40ftコンテナ(大型コンテナ)20と、20フィート(第1所定長の略1/2の第2所定長)に設定された20ftコンテナ(小型コンテナ)110とを選択的に積載可能で、且つ20ftコンテナ110については2つのコンテナを前後に並んで配置して積載可能な兼用タイプのトレーラであり、トラクタ(図示省略)に連結されて牽引される。なお、2つの20ftコンテナ110を前後に配置して積載する場合、前方のコンテナを前方20ftコンテナ110Fと称し、後方のコンテナを後方20ftコンテナ110Rと称する。
【0020】
図3に示すように、40ftコンテナ20と20ftコンテナ110とは、ともに箱型タイプであり、各コンテナ20,110の後面は、左右に観音開き状に開移動してコンテナ内部を開放する扉(図示省略)によって閉止されている。各コンテナ20,110の前下端隅部と後下端隅部とには、前側の隅金具21,111と後側の隅金具22,112とがそれぞれ固定されている。
【0021】
40ftコンテナ20の前側の隅金具21には、前方へ開口する係合穴23が設けられ、後側の隅金具22には、下方へ開口する係合穴24が設けられている。20ftコンテナ110の前側及び後側の隅金具111,112には、下方へ開口する係合穴113,114がそれぞれ設けられている。なお、40ftコンテナ20の底部の前側部分には、後述するメインビーム4の段差11を吸収するための凹状のトンネルリセス部が設けられているが、図3ではその形状を省略している。一方、20ftコンテナ110の底部には、トンネルリセス部は設けられていない。
【0022】
図1及び図2に示すように、セミトレーラ1の車体は、シャシフレーム3によって構成される。シャシフレーム3は、車両前後方向に沿って略平行に延びる左右1対のメインビーム4と、車両前後方向に所定間隔をおいて配置されて車幅方向に延びる複数の直線状のクロスフレーム5とを有する。メインビーム4は、上下で離間して対向する板状の上フランジ4aと下フランジ4bとが上下に延びるウェブ4cによって連結されたI状断面を有する(図4参照)。各クロスフレーム5は、メインフレーム4に対して略直交し、クロスフレーム5の両端は、メインビーム4に結合される。シャシフレーム3には、懸架装置7を介して車輪(タイヤ)6が装着される。
【0023】
左右のメインビーム4の前端部には、矩形平板状のエプロンプレート9が固定されている。エプロンプレート9の左右の両側部は、左右のメインビーム4の下フランジ4bに結合され、エプロンプレート9の前端部は、後述するフロントボルスタ40の下部に結合され、左右のメインビーム4の前端部の間はエプロンプレート9によって覆われている。
【0024】
エプロンプレート9の下面の車幅方向の略中央には、キングピン10が突設されている。キングピン10は、セミトレーラ1を牽引するトラクタのカプラに解除可能に連結される。なお、キングピン10を、トラクタのカプラに対応した高さに合わせて配置するため、メインビーム4の前端部は、通称グースネックと称する段差11によって嵩上げされている。
【0025】
図4に示すように、左右のメインビーム4の前端部には、車幅方向に延びるフロントボルスタ40が固定され、フロントボルスタ40の左右両端は、各メインビーム4よりも車幅方向外側へ突出して延びている。
【0026】
フロントボルスタ40には、左右1対のコンテナガイド47が設けられている。各コンテナガイド47は、フロントボルスタ40の上面に固定され、コンテナ20,110Fをセミトレーラ1に積載する際にコンテナ20,110Fの前端下部を所定の前後位置に案内する。
【0027】
図4〜図10に示すように、フロントボルスタ40の左右両側の端部40aには、大型コンテナ用前側緊締装置(以下、大型前側用緊締装置と称する)70と、前方小型コンテナ用前側緊締装置(以下、前方小型用前側緊締装置と称する)120とが装着されている。大型前側用緊締装置70は、スレッドピン71と、レバー73と、レバーロックプレート74とを備え、フロントボルスタ40の端部40aの中空内部に配置されている。
【0028】
スレッドピン71は、フロントボルスタ40に固着されて前後方向に貫通する円筒状のピン支持管78の内径部に挿入され、ピン支持管78によって係合位置と係合解除位置との間を前後方向に沿ってスライド移動自在に支持される棒状体であり、シャシフレーム3に載置されたコンテナ20の隅金具21の直ぐ前方に配置される。前方小型用前側緊締装置120が後述する格納位置に設定され、40ftコンテナ20がシャシフレーム3に載置された状態で、係合解除位置から係合位置へ移動したスレッドピン71は、フロントボルスタ40の後面40bから後方へ突出し、前側の隅金具21の係合穴23へ前方から進入して係合し、コンテナ20の移動を規制する。また、係合位置から係合解除位置へ移動したスレッドピン71は、フロントボルスタ40の後面から後方へ突出せず、係合穴23から離脱して、コンテナ20の移動を許容する。
【0029】
レバー73は、その一端(車幅方向の外端)がスレッドピン71の後端に固定されて車幅方向内側へ延びる。レバー73が後方へ押されると、スレッドピン71が後方の係合位置へ移動し、レバー73が前方へ引かれると、スレッドピン71が前方の係合解除位置へ移動する。フロントボルスタ40には、前後方向に沿って起立するガイドプレート76が固定され、ガイドプレート76には、レバー73の他端(車幅方向の内端)が挿入される溝状のガイド穴77(図11に示す)が形成されている。ガイド穴77は、前後方向に延びる中間直線部77aと、中間直線部77aの前後の両端からそれぞれ下方へ延びる前端部77b及び後端部77cとを有する。レバー73は、その他端がガイド穴77の中間直線部77aに位置する状態で前後方向への移動が許容され、ガイド穴77の前端部77b及び後端部77cに位置する状態で前後方向への移動が規制される。
【0030】
レバーロックプレート74は、フロントボルスタ40に回転自在に支持され、スレッドピン71が係合位置に設定された状態(レバー73の他端が後端部77cに位置する状態)と係合解除位置に設定された状態(レバー73の他端が前端部77bに位置する状態)との双方において、レバー73の他端側と係合することによって、スレッドピン71を係合位置又は係合解除位置に保持する。
【0031】
このように、左右のスレッドピン71は、レバー73の操作に応じて、40ftコンテナ20の前下端隅部と解除可能に係合する。
【0032】
前方小型用前側緊締装置120は、回転格納型ツイストロック装置であり、ボディ121と、ツイストロック122と、レバー123と、レバーロックプレート124とを備える。ボディ121は、前後方向に沿って延びる左右1対のアーム125と、アーム125に固定される上板(シャーロックプレート)126及び前板129とを有する。アーム125は、車幅方向に沿った回転軸127を中心として回転自在にフロントボルスタ40に支持され、前方小型用前側緊締装置120は、回転軸127を中心として、フロントボルスタ40の後面40bから突出するスレッドピン71の可動領域を上方から覆う使用位置と、使用位置から前上方へ回転した格納位置との間で回転可能であり、前方小型用前側緊締装置120の回転範囲は、ボディ121とフロントボルスタ40との当接によって、使用位置と格納位置との間に規制される。使用位置では、上板126は、その上面126aが略水平に配置されてフロントボルスタ40の後面40bから突出するスレッドピン71の可動領域の上方を覆う(図8参照)。格納位置では、メインビーム40に載置されるコンテナ20との干渉が発生しないように、前方小型用前側緊締装置120の全体がフロントボルスタ40の上方に待避する。なお、格納位置は、フロントボルスタ40の斜め上前方や前方であってもよい。
【0033】
20ftコンテナ110は、トンネルリセス部を有していないため、シャシフレーム3に載置された前方20ftコンテナ110Fの下面は、シャシフレーム3に載置された40ftコンテナ20の下面よりも上方に位置し、使用位置の前方小型用前側緊締装置120は、シャシフレーム3に載置された前方20ftコンテナ110Fの隅金具113の直ぐ下方に配置されてスレッドピン71の可動領域を覆う。
【0034】
ツイストロック122は、頭部(ツイストロックヘッド)122aと、シャーブロック122bと、回転軸(ピンツイストロック)128とを有する。シャーブロック122bは、前後方向が長い矩形筒状を有し、上板126の上面126aに固定される。上板126には、シャーブロック122bの内径部と連通する貫通孔が形成され、回転軸128は、シャーブロック122bの内径部及び上板126の貫通孔を挿通した状態で、シャーブロック122bの内径部によって回転自在に支持される。前方小型用前側緊締装置120を使用位置に設定した使用状態において、シャーブロック122bは、上板126の上面から略鉛直上方に起立する。頭部122aは、シャーブロック122bから上方へ突出する回転軸128の上端に固定され、前後方向が長い係合解除位置(図7に実線で示す)と、係合解除位置から略90°回転した係合位置(図7に2点鎖線で示す)との間で、回転軸128と一体的に回転する。
【0035】
レバー123の一端は、回転軸128の下端側に連結され、係合解除位置では前方へ延び、係合位置では車幅方向内側へ延びる。レバー123の他端側が車幅方向内側へ回転操作されると、ツイストロック122の頭部122aが係合位置へ回転し、車幅方向外側へ回転操作されると、頭部122aが係合解除位置へ回転する。
【0036】
レバーロックプレート124は、ボディ121に対して回転自在に支持され、ツイストロック122の頭部122aが係合位置に設定された状態において、レバー123の他端側と係合することによって、頭部122aを係合位置に保持する。
【0037】
前方小型用前側緊締装置120を使用位置に設定し、ツイストロック122の頭部122aを係合解除位置に設定し、前方20ftコンテナ110Fをシャシフレーム3の前側の所定位置に載置すると、ツイストロック122の頭部122aは、隅金具111の係合穴113に下方から進入し、レバー123を操作して略90°回転することによって、係合位置に達して係合穴113と係合する。すなわち、使用位置の前方小型用前側緊締装置120は、前方20ftコンテナ110Fの前下端隅部と解除可能に係合する。
【0038】
前方小型用前側緊締装置120が使用位置に設定された状態において、前板129は、上板126の前端から下方へ延び、前板129には、係合解除位置から係合位置へ移動するスレッドピン71が進入するスレッドピン挿入孔129aが形成されている。スレッドピン挿入孔129aに進入したスレッドピン71は、スレッドピン挿入孔129aと当接することによって前方小型用前側緊締装置120の使用位置からの回転を阻止する。
【0039】
図1に示すように、段差(グースネック)11よりも後方の左右のメインビーム4の中間部には、それぞれが車幅方向に延びる第1センタボルスタ130と第2センタボルスタ150とが前後に近接して固着されている。
【0040】
図12〜図14に示すように、矩形筒形状の第1センタボルスタ130の左右両端には、前方小型コンテナ用後側緊締装置(以下、前方小型用後側緊締装置と称する)131が装着されている。前方小型用後側緊締装置131は、回転嵩上げ型ツイストロック装置であり、ボディ132と、ツイストロック133と、レバー134と、レバーロックプレート135,136とを備える。ボディ132は、左右1対のアーム137と、略平行に離間する上板138及び下板139とを有する。アーム137は、車幅方向に沿った回転軸140を中心として回転自在に第1センタボルスタ130の前面に支持され、前方小型用後側緊締装置131は、回転軸140を中心として、下板139が第1センタボルスタ130の上面に載置される使用位置と、使用位置から前下方へ略180°回転した格納位置との間で回転可能であり、前方小型用後側緊締装置131の回転範囲は、ボディ132と第1センタボルスタ130との当接によって、使用位置と格納位置との間に規制される。使用位置では、上板138及び下板139が略水平に配置され、前方小型用後側緊締装置131が第1センタボルスタ130によって下方から支持される(図12に実線で示す)。格納位置では、メインビーム40に載置される40ftコンテナ20の下面と干渉しないように、前方小型用後側緊締装置131の全体がメインビーム40の上面よりも下方に待避する(図12に2点鎖線で示す)。
【0041】
20ftコンテナ110は、トンネルリセス部を有しておらず、且つ前方20ftコンテナ110Fのうち段差11よりも前側に位置する部分は、嵩上げされたメインビーム4の前部に載置されるので、段差11よりも後側では、前方20ftコンテナ110Fがメインビーム4の上面から上方に離間する。このため、使用位置に設定された前方小型用後側緊締装置131の上板138の上面の高さは、前方20ftコンテナ110Fに当接して下方から支持するように、段差11よりも後側のメインビーム4の上面よりも所定距離高く設定される。また、第1センタボルスタ130の上面の高さは、40ftコンテナ20の下面がメインビーム4から浮かないように、メインビーム4の上面よりも僅かに低く設定される。このように、使用位置の前方小型用後側緊締装置131は、シャシフレーム3に載置された前方20ftコンテナ110Fの隅金具112の直ぐ下方に配置されて、前方20ftコンテナ110Fの後下端隅部を下方から支持する。
【0042】
ツイストロック133は、前後方向が長い矩形筒状であり、ボディ132に固定されて上板138を挿通する。前方小型用後側緊締装置131を使用位置に設定した使用状態において、ツイストロック133は、略鉛直上方に起立する。ツイストロック133の内径部には、回転軸141が回転自在に支持された状態で挿通し、回転軸141の上端には、ツイストロック133の頭部133aが固定される。頭部133aは、前後方向が長い係合解除位置(図13に実線で示す)と、係合解除位置から略90°回転した係合位置(図13に2点鎖線で示す)との間で、回転軸141と一体的に回転する。
【0043】
レバー134の一端は、回転軸141の下端側に連結され、係合解除位置では後方へ延び、係合位置では車幅方向内側へ延びる。レバー134の他端側が車幅方向内側へ回転操作されると、ツイストロック133の頭部133aが係合位置へ回転し、車幅方向外側へ回転操作されると、頭部133aが係合解除位置へ回転する。
【0044】
レバーロックプレート135,136は、ボディ132に対してそれぞれ回転自在に支持される。レバーロックプレート135は、ツイストロック133の頭部133aが係合位置に設定された状態において、レバー134の他端側と係合することによって、頭部133aを係合位置に保持する。レバーロックプレート136は、ツイストロック133の頭部133aが係合解除位置に設定された状態において、レバー134の他端側と係合することによって、頭部133aを係合解除位置に保持する。
【0045】
前方小型用後側緊締装置131を使用位置に設定し、ツイストロック133の頭部133aを係合解除位置に設定し、前方20ftコンテナ110Fをシャシフレーム3の前側の所定位置に載置すると、ツイストロック133の頭部133aは、隅金具112の係合穴114に進入し、レバー134を操作して略90°回転することによって、係合位置に達して係合穴114と係合する。すなわち、使用位置の前方小型用後側緊締装置131は、前方20ftコンテナ110Fの後下端隅部と解除可能に係合する。
【0046】
図15〜図17に示すように、第2センタボルスタ150の左右両端には、後方小型コンテナ用前側緊締装置(以下、後方小型用前側緊締装置と称する)151が装着されている。後方小型用前側緊締装置151は、リトラクタブル型ツイストロック装置であり、ツイストロック153と、レバー154と、レバーロックプレート155,156とを備える。後方小型用前側緊締装置151は、シャシフレーム3に載置された後方20ftコンテナ110Rの隅金具111の直ぐ下方で、第2センタボルスタ150の端部の中空内部に配置されている。
【0047】
ツイストロック153は、前後方向に沿った回転軸157を中心として回転自在に第2センタボルスタ150に支持され、回転軸157を中心として、上方に起立する使用位置(図15に2点鎖線で示す)と、使用位置から車幅方向内側へ略90°回転した格納位置(図15に実線で示す)との間で回転可能である。第2センタボルスタ150の上板150aには、使用位置と格納位置との間のツイストロック153の回転移動を許容する開口(図示省略)が形成され、使用位置のツイストロック153は、上板150aから突出して上方へ延びる。格納位置のツイストロック153は、メインビーム40に載置される40ftコンテナ20の下面と干渉しないように、上板150aの上面よりも下方に待避する。第2センタボルスタ150には、上板150aの開口を部分的に開閉するカバー152が回転自在に支持されている。カバー152は、コイルスプリング159によって閉方向に付勢され、開口を部分的に閉止して使用位置及び格納位置の双方においてツイストロック153の回転移動を阻止する。
【0048】
ツイストロック153は、前後方向が長い矩形筒状であり、使用位置に設定した使用状態において、略鉛直上方に起立する。ツイストロック153の内径部には、回転軸158が回転自在に支持された状態で挿通し、回転軸158の上端には、ツイストロック153の頭部153aが固定される。頭部153aは、前後方向が長い係合解除位置(図16に実線で示す)と、係合解除位置から略90°回転した係合位置(図16に2点鎖線で示す)との間で、回転軸158と一体的に回転する。
【0049】
レバー154の一端は、回転軸158の下端側に連結され、ツイストロック153が起立した状態において、係合解除位置では車幅方向内側へ延び、係合位置では前方へ延びる。レバー154の他端側が車幅方向外側へ回転操作されると、ツイストロック153の頭部153aが係合位置へ回転し、車幅方向内側へ回転操作されると、頭部153aが係合解除位置へ回転する。
【0050】
レバーロックプレート155,156は、第2センタボルスタ150に対してそれぞれ回転自在に支持される。レバーロックプレート155は、ツイストロック153の頭部153aが係合位置に設定された状態において、レバー154の他端側と係合することによって、頭部153aを係合位置に保持する。レバーロックプレート156は、ツイストロック153の頭部153aが係合解除位置に設定された状態において、レバー154の他端側と係合することによって、頭部153aを係合解除位置に保持する。
【0051】
後方小型用前側緊締装置151(ツイストロック153)を使用位置及び係合解除位置に設定し、後方20ftコンテナ110Rをシャシフレーム3の後側の所定位置に載置すると、ツイストロック153の頭部153aは、隅金具111の係合穴113に進入し、レバー154を操作して略90°回転することによって、係合位置に達して係合穴113と係合する。すなわち、使用位置の後方小型用前側緊締装置151は、後方20ftコンテナ110Rの前下端隅部と解除可能に係合する。
【0052】
図1及び図2に示すように、左右のメインビーム4の後端部には、車幅方向に延びるリヤボルスタ80が固着されている。リヤボルスタ80の左右両端は、各メインビーム4から車幅方向外側へ突出して延び、この左右両端の中空内部には、ツイストロック82を有する後側兼用緊締装置81が装着されている。後側兼用緊締装置81は、シャシフレーム3に載置された40ftコンテナ20及び後方20ftコンテナ110Rの隅金具22,112の直ぐ下方に配置される。ツイストロック82の頭部82aは、リヤボルスタ80の上面から上方に突出し、コンテナ20,110Rをシャシフレーム3に載置した際、隅金具22,112の係合穴24,114に進入し、略90°回転することによって、係合穴24,114と係合する。すなわち、後側兼用緊締装置81は、40ftコンテナ20の後下端隅部と解除可能に係合し、後方20ftコンテナ110Rの後下端隅部と解除可能に係合する。なお、特に図示して説明していないが、後側兼用緊締装置81も、上述の他の緊締装置120,131,151と同様に、レバーやレバーロックプレートなどを有する。
【0053】
左右のメインビーム4の後端部には、リヤボルスタ80の下方で車幅方向に延びる突入防止装置83が設けられている。突入防止装置83は、後方から追突した乗用車などの潜り込みを防止するフレーム状の部材であり、リヤボルスタ80の下面から下方へ延びる左右1対の支持フレーム85に固着されている。
【0054】
なお、上述した各緊締装置70,81,120,131,151は、要求される機能を奏するものであれば上記の構造に限定されない。
【0055】
本実施形態によれば、40ftコンテナ20を積載する場合、その積載前に、前方小型用前側緊締装置120と前方小型用後側緊締装置131と後方小型用前側緊締装置151とをそれぞれ格納位置に設定し、大型用前側緊締装置70のスレッドピン71と後側兼用緊締装置81のツイストロック82とを係合解除位置に設定する。この状態で40ftコンテナ20をセミトレーラ1に積載し、スレッドピン71を係合位置へ移動させて40ftコンテナ20の前下端隅部に係合させる。また、後側兼用緊締装置81のツイストロック82を40ftコンテナ20の後下端隅部に係合させる。
【0056】
また、2つの20ftコンテナ110を積載する場合、その積載前に、前方小型用前側緊締装置120と前方小型用後側緊締装置131と後方小型用前側緊締装置151とをそれぞれ使用位置に設定し、これらの緊締装置120,131,151及び後側兼用緊締装置81のツイストロック122,133,153,82を係合解除位置に設定する。この状態で2つの20ftコンテナ110を前後に配置してセミトレーラ1に積載する。前方20ftコンテナ110Fの左右の前下端隅部及び後下端隅部と、後方20ftコンテナ110Rの左右の前下端隅部及び後下端隅部とには、各緊締装置120,131,151,81のツイストロック122,133,153,82が下方から進入し、これら進入したツイストロック122,133,153,82を対応する下端隅部にそれぞれ係合させる。
【0057】
このように、40ftコンテナ20と2つの20ftコンテナ110とを選択的に積載可能な兼用タイプのセミトレーラ1において、40ftコンテナ20の前下端隅部と係合する大型用前側緊締装置70と、前方20ftコンテナ110Fの前下端隅部と係合する前方小型用前側緊締装置120とを、1本のフロントボルスタ40の両端部に設けることができるので、部品点数の増加による重量化やコストの上昇を抑制することができる。
【0058】
また、前方小型用前側緊締装置120が使用位置に設定された状態で、係合解除位置から係合位置へ移動するスレッドピン71は、前方小型用前側緊締装置120のスレッドピン挿入孔129aに進入する。スレッドピン挿入孔129aに進入したスレッドピン71は、スレッドピン挿入孔129aと当接することによって前方小型用前側緊締装置120の使用位置からの回転を阻止する。従って、前方20ftコンテナ110Fを積載する際に、スレッドピン71を係合位置に突出させることによって前方小型用前側緊締装置120を使用位置に保持することができ、前方20ftコンテナ110Fの積載作業を良好に行うことができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、40ftコンテナ20と2つの20ftコンテナ110とを選択的に積載可能な兼用タイプのセミトレーラ1を説明したが、40ftコンテナ20と前後2つの20ftコンテナ110とに加えて、セミトレーラ1の前後方向のほぼ中央に20ftコンテナ110を1つ積載することも可能なセミトレーラや、他の45ftコンテナように他のタイプのコンテナも積載可能なセミトレーラであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1:セミトレーラ
3:シャシフレーム
4:メインビーム
4a:上フランジ
4b:下フランジ
4c:ウェブ
5:クロスフレーム
6:タイヤ
7:懸架装置
8:フロントエンドクロスフレーム
9:エプロンプレート
10:キングピン
11:段差(グースネック)
20:40ftコンテナ(大型コンテナ)
21,22,111,112:隅金具
24,24,113,114:係合穴
40:フロントボルスタ
47:コンテナガイド
70:大型前側用緊締装置(大型コンテナ用前側緊締装置)
71:スレッドピン
73:レバー
74:レバーロックプレート
80:リヤボルスタ
81:後側兼用緊締装置
82:ツイストロック
82a:頭部
83:突入防止装置
85:支持フレーム
110:20ftコンテナ(小型コンテナ)
110F:前方20ftコンテナ(前方小型コンテナ)
110R:後方20ftコンテナ(後方小型コンテナ)
120:前方小型用前側緊締装置(前方小型コンテナ用前側緊締装置)
122:ツイストロック
122a:頭部(ツイストロックヘッド)
122b:シャーブロック
126:上板
126a:上面
128:回転軸(ピンツイストロック)
129:前板
129a:スレッドピン挿入孔
130:第1センタボルスタ
131:前方小型コンテナ用後側緊締装置(前方小型用後側緊締装置)
133:ツイストロック
150:第2センタボルスタ
151:後方小型コンテナ用前側緊締装置(後方小型用前側緊締装置)
153:ツイストロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後の長さが第1所定長に設定された大型コンテナと、前記第1所定長の略1/2の第2所定長に設定された小型コンテナとを選択的に積載可能であり、且つ前記小型コンテナについては2つのコンテナを前後に並んで配置して積載可能な兼用タイプのセミトレーラの車体前部構造であって、
前後方向に相対向して延びる左右1対のメインビームの前端部で車幅方向に延設されて該左右のメインビームに支持される1本のフロントボルスタと、
前記フロントボルスタの両端部にそれぞれ設けられた左右の大型コンテナ用前側緊締装置と、
前記フロントボルスタの両端部にそれぞれ設けられた左右の前方小型コンテナ用前側緊締装置と、を備え、
前記大型コンテナ用前側緊締装置は、前後方向に直線状に延び、前記フロントボルスタの後面から後方へ突出する係合位置と、前記フロントボルスタの後面から前方へ突出しない係合解除位置との間で前後方向に沿って移動自在なスレッドピンを有し、
前記前方小型コンテナ用前側緊締装置は、前記フロントボルスタの後面から突出する前記スレッドピンの可動領域を上方から覆う使用位置と、前記セミトレーラに積載された大型コンテナと干渉しないように前記使用位置から前上方へ回転した格納位置との間で回転可能に前記フロントボルスタに支持され、
前記前方小型コンテナ用前側緊締装置が前記格納位置に設定され、前記大型コンテナが前記セミトレーラに載置された状態で、前記スレッドピンは、前記係合解除位置から前記係合位置へ移動することによって前記大型コンテナの前下端隅部に前方から係合し、
前記前方小型コンテナ用前側緊締装置は、前記使用位置に設定された状態で、前記スレッドピンの可動範囲の上方で略水平に配置される上面と、該上面から上方へ突出して延びるツイストロックとを有し、
前記前方小型コンテナ用前側緊締装置が前記使用位置に設定され、前記スレッドピンが前記係合解除位置に設定された状態で、前記2つの小型コンテナのうち前方に配置される前方小型コンテナが前記セミトレーラに載置されると、前記ツイストロックは、前記前方小型コンテナの前下端隅部に下方から進入し、該前下端隅部に進入したツイストロックは、該前下端隅部と解除可能に係合する
ことを特徴とするセミトレーラの車体前部構造。
【請求項2】
請求項1に記載のセミトレーラの車体前部構造であって、
前記前方小型コンテナ用前側緊締装置は、スレッドピン挿入孔を有し、
前記前方小型コンテナ用前側緊締装置が前記使用位置に設定された状態で、前記係合解除位置から前記係合位置へ移動するスレッドピンは、前記スレッドピン挿入孔に進入し、
前記スレッドピン挿入孔に進入したスレッドピンは、該スレッドピン挿入孔と当接することによって前記前方小型コンテナ用前側緊締装置の前記使用位置からの回転を阻止する
ことを特徴とするセミトレーラの車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−32079(P2013−32079A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168553(P2011−168553)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000229900)日本フルハーフ株式会社 (93)
【Fターム(参考)】