説明

セメントキルンの燃料供給方法

【課題】 システム構成が簡単で大量の微粉炭を貯蔵タンクに貯える必要がないセメントキルンの燃料供給方法を提供する。
【解決手段】 竪型粉砕機で石炭を粉砕して微粉炭とし、該微粉炭をガスと共に竪型粉砕機から取り出す。そして、該ガスと共に機外に取り出した微粉炭を、燃料として、直接、セメントキルンのバーナに供給する。本発明によれば、微粉炭を大量に貯蔵する必要がないから、微粉炭の貯蔵にともない高まる爆発等の危険性を低減できる。また、前記竪型粉砕機については、竪型粉砕機内の上部と下部の圧力を計測して差圧を算出する差圧計と、竪型粉砕機の振動を計測する振動計を備えて、該算出した差圧の値が予め設定した制限値を超えた場合、又は該計測した振動の値が予め設定した制限値を超えた場合、に回転テーブルの回転数を低下させることによって、竪型粉砕機の運転停止を防止して、燃料供給システムの運転停止リスクを下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント焼成装置に係わるセメントキルンの燃料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントキルンの燃料は、第1次オイルショック頃まで、重油が多用されていた。しかし、オイルショックの煽りを受けて重油価格が高騰した現在においては、コスト面等の問題から、石炭が多用されている。
ここで、セメントキルンに燃料として供給される石炭は、燃焼効率を高めるために微粉末にされた石炭、所謂、微粉炭である。しかし、微粉炭は、着火しやすく、火災や爆発等の危険性が高いために長距離の輸送が難しいという問題点を有している。そのため、石炭は、通常、セメント工場まで塊状のままで搬送されており、セメント工場で細かく粉砕されて燃料用の微粉炭とされている。
【0003】
石炭を粉砕して微粉炭にする装置として竪型粉砕機(竪型ミル、或いは竪型ローラミルと称されることもある)と呼ばれる粉砕機が、一般的に使用されている。
また、塊状の石炭を粉砕して燃料用の微粉炭としてからセメントキルンのバーナに供給するシステムとして、特許文献1に開示されたようなシステムが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−202079号公報
【0005】
ここで、特許文献1に開示されたシステムの基本的な構成は、所謂、ビンシステムと呼ばれる粉砕システムである。特許文献1では、石炭の粉砕システムを、ボイラーやセメントキルン等の燃焼装置に対する燃料供給システムに使用している。
なお、ビンシステムとは粉砕機で製造した微粉炭を、一旦、ホッパ等に貯蔵することにより、燃焼装置の状況に合わせて必要な量だけ供給するシステムである。ホッパ等の貯蔵瓶に、一旦、微粉炭を貯蔵することから、ビン(瓶)システムと呼ばれている。
【0006】
ビンシステムを利用した従来型の燃料供給システム200について、図4に、その基本的な構成を示す。
原料ホッパ250内の石炭は、竪型粉砕機201に供給されて粉砕された後、微粉炭としてガス(通常は空気)と共に機外に取り出される。取り出された微粉炭は、バグフィルタ260に送られて、そこでガスと分離されて捕集される。バグフィルタ260で捕集された微粉炭は、貯蔵ホッパ252に、一旦、貯蔵された後、計量装置258で計量されて、キルンバーナ280の燃焼に必要な量だけが、燃料ラインに供給される。そして、燃料ラインに供給された微粉炭は、圧送ファン244により送られたガス(燃焼用空気)とともに、キルンバーナ280に供給されて、そこで燃焼される。
【0007】
なお、石炭の微粉砕に使用される竪型粉砕機201としては、一般的に、エアスエプト方式と呼ばれるタイプの竪型粉砕機201が使用される。
エアスエプトタイプの竪型粉砕機201において、原料投入口から投入された石炭は、粉砕ローラと回転テーブルの間で粉砕された後、機内に設置されたセパレータ等を介して、微粉炭となって機外に取り出される。このタイプの竪型粉砕機201は、原料を細かく微粉砕できると言う点で優れた方式である。
【0008】
ここで、図4で前述したシステム、或は特許文献1に開示されたシステムでは、基本的に竪型粉砕機で製造した微粉炭を、バグフィルタ(集塵機)で捕集し、一旦、貯蔵ホッパ(貯蔵タンク)等のビンに貯蔵するが、微粉炭は、着火しやすく、火災や爆発の危険性があるから、微粉炭を捕集して、貯蔵するシステムは、その安全管理が極めて重要になる。
万一、微粉炭が着火して火災になる、或は爆発等すれば、極めて重大な事故となるので、特別に厳重な注意が必要であった。
【0009】
特許文献1においては、ビンシステムで石炭を粉砕する際においてセメントキルンの熱風排ガスを利用すれば、排熱利用できるという利点もあるが、微粉炭に爆発の虞があり、特に揮発分の多い瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭の場合において、その危険性が高くなる傾向にあると記載されている。そして、キルンからの熱風排ガスを用いる方法では、石炭の処理量が少ない場合や石炭中の水分が少ない場合に、微粉炭を捕集するバグフィルタ等で火災の危険性があると記載されている。
【0010】
特許文献1に開示された発明は、前述したビンシステムに係わる問題点を課題とし、その解決策として、石炭の搬送ガスとして加熱水蒸気を使用すること等を提案する。
そして、石炭の搬送ガス等として加熱水蒸気を利用すれば、微粉炭による火災や爆発等を防止するという点において、一定の効果があると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に開示された発明のように、加熱水蒸気を使用して微粉炭を搬送しようとすれば、大量の加熱水蒸気が必要である。従って、その加熱水蒸気を導入する設備が必要であり、また、加熱水蒸気を循環させるためのラインも必要になる。そのため、システムについて新たな設備を設置しなければならず、その構造が複雑になるという問題点を抱えていた。
【0012】
また、特許文献1に開示された発明によれば、バグフィルタで生じる火災や爆発を防止するという点において、一定の効果は期待できるかもしれないが、微粉炭を貯蔵するタンクについて、火災や爆発の危険性が示唆されておらず、その解決策も記されていない。
【0013】
特に近年は燃料費削減の要望が強く、コストの安価な褐炭等を燃料用として使用したいとの要求が高まりつつある。しかし、褐炭は微粉炭にして脱水すると極めて発火しやすいという性質を有しており、ビンシステムを利用した前述の燃料供給システムは、石炭を微粉炭の状態でタンクに貯蔵する必要があるから、その安全管理に極めて厳重な注意が必要である。万一、タンク内に貯蔵された大量の微粉炭に火がつけば大事故につながる可能性もある。従って、燃料供給中においても、微粉炭を大量に貯蔵する必要がない燃料供給システムが求められていた。
【0014】
本発明は、以上、説明したような問題点に鑑みてなされたものであり、システム構成が簡単で、大量の微粉炭を貯蔵タンクに貯える必要がない、セメントキルンの燃料供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1) 上記の目的を達成するため、本発明によるメントキルンの燃料供給方法は、
回転テーブル上に供給した石炭を粉砕ローラで粉砕して、回転テーブル下方から導入したガスにより回転テーブル上方に吹き上げることによって、回転テーブル上方に配したセパレータにより粗粉と微粉に分離して、該微粉をガスとともに機外に取り出す竪型粉砕機を用いて、該ガスとともに機外に取り出した石炭の微粉を、燃料として、直接、セメントキルンのバーナに供給する。
【0016】
(2) (1)に記載のセメントキルンの燃料供給方法において、前記石炭を褐炭とする。
【0017】
(3) (1)又は(2)のいずれか1項に記載のセメントキルンの燃料供給方法において、前記竪型粉砕機が、竪型粉砕機内の上部と下部の圧力を計測して差圧を算出する差圧計と、竪型粉砕機の振動を計測する振動計を備えて、該算出した差圧の値が予め設定した制限値を超えた場合、又は該計測した振動の値が予め設定した制限値を超えた場合、に回転テーブルの回転数を低下させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の燃料供給方法によれば、燃料供給中においても、微粉炭を大量に貯蔵する必要がない。従って、微粉炭の貯蔵にともなって発生する火災、爆発等の危険性を低減できる。特に、褐炭の揮発分が大きい石炭は、着火性が高く、火災になりやすいので、本発明を適応するに好適である。
【0019】
また、本発明の方法であれば、竪型粉砕機の差圧及び振動を監視して、それぞれの値が予め設定した制限値を超えた場合に、回転テーブルの回転数を低下させることにより、異常振動等の発生を回避することによって、燃料供給システムの運転停止リスクを下げることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に使用する燃料供給システムの1例を説明する図である。
【図2】本発明に使用する燃料供給システムの他の1例を説明する図である。
【図3】本発明に使用する竪形粉砕機の1例について要部断面である。
【図4】従来技術による燃料供給システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面等に基づいて本発明の実施形態の好ましい1例を詳細に説明する。
図1〜図3は本発明の実施形態に係わり、図1は燃料供給システムの構成を説明する図であり、図2は燃料供給システムの構成について他の1例を説明する図である。図3は燃料供給システムに使用した竪型粉砕機の構造を説明する要部断面図である。図4は従来技術に係わる燃料供給システムの構成について1例を説明する図である。
【0022】
以下、図1を用いて本実施形態に使用した燃料供給システムの構成について、その好ましい1例を説明する。
図1に示した燃料供給システム100は、原料ホッパ50、計量フィーダ51、粉砕燃焼ファン41、及び竪型粉砕機1等を備えている。
【0023】
ここで、原料ホッパ50は、原料ホッパ50の上部に形成した図示しない原料投入口から、原料ホッパ50内に投入された塊状の石炭を、内部に貯蔵して、原料ホッパ50の下部に形成した図示しない下部取出口から排出することができる構成となっている。
なお、図1に示す原料ホッパ50については、下部取出口に図示しない開閉用の蓋が設置されており、指令信号に基づいて、下部取出口の開閉状態を自由に制御できる構成となっている。
【0024】
また、計量フィーダ51は、ベルトコンベヤタイプの搬送機構を備えるとともに、ベルトコンベヤ上に投入された原料の重量を、リアルタイムで計測することのできる重量計を備えている。計量フィーダ51は、前述の構成によって、ベルトコンベヤ上の原料の重量を常に計測し、該計測の記録等に基づいて、ベルトコンベヤの搬送速度(ベルト移動速度)を制御することによって、ベルトコンベヤ上から落下させる原料の重量について、調整することが可能である。
なお、図1に示したように、計量フィーダ51は、原料ホッパ50から排出された石炭について、ベルトコンベヤの一端側(反竪型粉砕機側)上で受け止めて載置し、該載置した石炭を、ベルトの移動により竪型粉砕機1側に搬送して、ベルトコンベヤの他端(竪型粉砕機側)で落下させる構成となっている。そして、落下した塊状の石炭は、竪型粉砕機1の原料投入口35に投入される構成となっている。
【0025】
竪型粉砕機1の構造については後述するが、竪型粉砕機1のガス導入口33には、粉砕燃焼ファン41が送風機として接続されており、竪型粉砕機1内にガス(本実施形態においては空気)を吹き込む構成となっている。
そのため、竪型粉砕機1の機内においては、回転テーブル2の下方に形成したガス導入口33から上部取出口35に向かって流れる気流が形成されており、竪型粉砕機1で粉砕された石炭は、気流に搬送されて、微粉炭として上部取出口35からガスと共に取り出される。そして、上部取出口35からガスと共に取り出された微粉炭は、セメントキルンのキルンバーナ80に、直接に供給されて、そこで燃焼する構成となっている。
【0026】
以下、本実施形態に係わる竪型粉砕機1の好ましい構成について説明する。
図3に示すように、本実施形態で使用する竪型粉砕機1は、その外郭を形成するケーシング1A及び1B、並びに、竪型粉砕機1の下部に設置された減速機2Bと駆動モータ2M(モータ2Mと略して称することもある)、前述の減速機2Bと駆動モータ2Mによって駆動される回転テーブル2、コニカル型の粉砕ローラ3等を備えている。
また、図3に示す竪型粉砕機1は、回転テーブル2の中央部上方に、センターシュート13が設けられて、原料投入口35から投入された原料は、センターシュート13を介して、回転テーブル2の中央部に供給される構成となっている。
【0027】
なお、図1に示す竪型粉砕機1において、粉砕ローラ3は、回転テーブル2の上面(回転テーブル上面2Aと称することもある)に複数個(本実施形態においては2個)が配されて、回転テーブル2の方向に押圧されるよう構成されている。粉砕ローラ3は、回転テーブル2が回転することにより、回転テーブル2に対して、原料を介して従動して回転する。
【0028】
また、本実施形態に使用した竪型粉砕機1は、駆動モータ2Mの駆動用電源としてインバータ電源を備えて、運転中、回転テーブル2の回転速度が任意に変更可能な可変速式の竪型粉砕機1であり、制御装置20によって回転数を自在に制御できる。そして、回転数については、回転計R1により、駆動モータ2Mの回転数を常に計測できる構成となっており、減速機構等を介して回転している回転テーブル2の回転数を常に把握して制御することが可能な構成となっている。
なお、図3に示す竪型粉砕機1は、回転テーブル2を駆動するモータ2Mの電流値、或いは又電圧値等を測定して電力値を算出する動力計D1を備えており、モータ2Mで消費した電力値を測定してミル動力としている。
【0029】
また、図3に示した竪型粉砕機1においては、センターシュート13の周りに、回転筒を配し、該回転筒に、支持部材を介して、上下方向に延びる複数枚の羽根を環状に配列した分級羽根を配設することによって、回転式の分級機14を形成している。
前記回転筒は、竪型粉砕機1の上部に設置された図示しない駆動モータにより駆動され、自在に回転する構成となっている。従って、分級機14は、竪型粉砕機1の上部に設置された図示しない駆動モータにより駆動され、自在に回転する構成となっている。
【0030】
本実施形態における竪型粉砕機1には、分級機14と回転テーブル2との間に漏斗状のコーン17が配されている。コーン17は、その上部分の形状が、中空の略逆円錐台形状となっており、その形状は下方に進むほど径が小さく、上方に進むほど径が大きくなっている。そして、その上端部が、機内上部に環状に並べられて設置された分級機14の下方に配されている。
【0031】
また、前述したように、本実施形態に使用した竪型粉砕機1は、回転テーブル2の下方にガスを導入するためのガス供給口33を設けており、ガス供給口33には機内にガスを吹き込むための送風ファンとして粉砕燃焼用ファン41が接続されている。そして、竪型粉砕機1の上部には、回転テーブル上方に該ガスと共に製品を取り出すための上部取出口39を設けている。
竪型粉砕機1は前述の構成によって、ガス供給口33から機内にガス(本実施形態においては空気)を吹き込み導入することにより、回転テーブル2下方から分級機14を通過して上部取出口39へと流れるガスの気流を形成する構成となっている。
【0032】
なお、回転テーブル2上で粉砕された原料は、前記ガスにより吹き上げられてケーシング内を上昇し、分級機14方向に流れるが、径が大きく重量の大きな原料は分級機14まで到達できずに、或いは到達しても通過できずに落下することによって、竪型粉砕機1内で循環して、再度粉砕される循環原料となる。
【0033】
そして、分級機14を通過した径の小さな原料は、その多くが、上部取出口39から製品として取り出されるが、通過した原料の中でも比較的径の大きな原料が上部取出口39から取り出されずに、漏斗状のコーン17内に落下して、循環原料となって、回転テーブル2の中心付近に再度投入される。
【0034】
さらに、図3に示した竪型粉砕機1においては、ガス供給口33付近に第1のガス圧力センサとして下部ガス圧力センサP1、上部取出口39付近に第2のガス圧力センサとして上部ガス圧力センサP2、並びにケーシング1に振動計S1を備えており、上部ガス圧力センサP2、下部ガス圧力センサP1、振動計S1の計測値が入力されて、機内を流れるガスの差圧の値と、竪型粉砕機に生じる振動の値を計測して記憶する制御装置20を備えている。
【0035】
なお、本実施形態においては、下部ガス圧力センサP1の測定したガス圧力p1から、上部ガス圧力センサP2で測定したガス圧力p2を減じたものを差圧Δpとした。
従って、Δp=p1−p2となる。
【0036】
ここで、差圧の測定方法は、様々な方法があって、例えば、上部ガス圧力センサP2並びに下部ガス圧力センサP1の測定位置等を変更することも可能である。
差圧値の測定方法としては、竪型粉砕機1の処理能力の変化によって、差圧が変化するような位置関係に上下のセンサを配して測定することが好ましい。
本実施形態においては、差圧が大きく上昇する等して予め設定した制限値を超えた場合、又計測された振動値が予め設定した制限値を超えた場合に、回転テーブル2の回転数を低下させるように、制御装置20にプログラムした。
【0037】
以下、前述した燃料供給システムを用いたセメントキルンの燃料供給方法ついて、その好ましい1例を、図1を用いて説明する。
原料ホッパ50に貯えられている塊状の石炭は、原料ホッパ50の下部取出口から排出されて、計量フィーダ51に供給される。
計量フィーダ51に供給された石炭は、竪型粉砕機1側に搬送されて、竪型粉砕機1の原料投入口35に投入される。なお、計量フィーダ51は、前述の構成によって、ベルトコンベヤ上の石炭の重量を計測及び記録することにより把握し、ベルトコンベヤの搬送速度を制御することによって、ベルトコンベヤから落下させる石炭の重量を調整する。
【0038】
竪型粉砕機1に投入された塊状の石炭は、原料供給口35から、センターシュート13を介して、回転テーブル2の中央付近に投入される。
そして、回転テーブル2の中央付近に投入された原料は、渦巻き状の軌跡を描きながら、回転テーブル2の外周側に移動して、回転テーブル2と粉砕ローラ3の間に噛み込まれ粉砕される。そして、回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された原料は、回転テーブル2の外縁部に周設されたダムリングを乗り越えて、回転テーブル上面2の外周部とケーシングとの隙間である環状通路30(環状空間部30と称することもある)へと向かう。
【0039】
前述したように竪型粉砕機1内では、運転中に、ガス供給口33よりガス(本実施形態においては空気)を導入することによって、回転テーブル2の下方から分級機14を通過して上部取出口39へと流れるガスの気流が形成されている。
従って、回転テーブル2上で粉砕された原料は、前記ガスにより吹き上げられてケーシング1内を上昇するが、径が大きく重量の大きな原料は分級機14まで到達できずに、或いは、又、通過できずに落下することによって、竪型粉砕機1内で再度粉砕される循環原料となる。
【0040】
なお、ガスにより吹き上げられてケーシング1内を上昇し、分級機14を通過した径の小さな原料は、その多くが、上部取出口39から製品として取り出されるが、通過した原料の中でも比較的径の大きな原料が上部取出口39から取り出されずに、漏斗状のコーン70内に落下して、循環原料となり、回転テーブル2の中心付近に再度投入される。
【0041】
上部取出口39から取り出された微粉炭は、セメントキルンのキルンバーナ80に送られてそこで燃焼される。
【0042】
本実施形態によれば、竪型粉砕機1で粉砕した後の微粉炭を、タンクに貯蔵せずに、そのままキルンバーナ80に供給する。そのため、微粉炭を貯蔵する必要がないから、微粉炭の貯蔵にともない高まる火災や爆発等の危険性を低減することができる。従って、大量の微粉炭を貯蔵して爆発の規模が大きい従来技術に比較すれば危険性は小さい。
特に、褐炭の揮発分が大きい石炭は、着火性が高く火災になりやすいので危険性が高いが、微粉炭を貯蔵する必要がない本発明であれば、その危険性を低減化できる。
【0043】
なお、本実施形態による燃料供給方法において、竪型粉砕機1に異常振動が発生する、或は粉砕不良による運転停止が発生すると、燃料の供給が停止することになるので、キルンバーナ80の燃焼が停止する可能性がある。そして、キルンバーナ80の燃焼が停止するとキルンの内容物の熱化学変化が途絶えて、不良品が発生する。この点において、従来型のビンシステムにおいては、例え、竪型粉砕機1が運転中に停止したとしても、貯蔵ホッパ52に貯えられている微粉炭があるから、燃料供給が途絶えると言う危険性は小さい。従って、本実施形態に用いる竪型粉砕機1の好ましい構成としては、以下のような運転停止回避システムを採用した。
【0044】
本実施形態に使用した竪型粉砕機1の制御装置20は、前述したように、竪型粉砕機1に生じる振動について振動計S1で計測しており、振動計S1で計測した振動値が制限値より超えた場合に、回転テーブル2の回転数を低下させるように、制御装置20にプログラムしている。従って、本実施形態の方法によれば、竪型粉砕機1に生じる振動が徐々に大きくなって制限値を超えた場合に、回転テーブル2の回転数を低下させることにより振動を抑えるように制御することによって、異常振動が発生して竪型粉砕機1が運転停止するという危険性を低減できる。
【0045】
また、竪型粉砕機1の制御装置20は、機内を流れるガスの差圧Δpを監視して、ミルの差圧が制限値以上に大きくなった場合は、粉砕機内を循環している石炭の量が増加したと判断して、回転テーブル2の回転数を減少させる。
回転テーブル2のテーブル回転数を減少させることによって、石炭と粉砕ローラ3の間が滑りにくくなり、その結果、粉砕ローラ3に噛み込まれずに弾かれてしまっていた石炭が、粉砕ローラ3に噛み込まれやすくなるので、処理能力が向上する。
この方法であれば、機内で生じている粉砕不良を早期に発見して、その対策が可能なので、ローラの噛み込み不良によって竪型粉砕機1の処理能力がダウンして運転停止に陥るという危険性を低減できる。
【0046】
以上説明したように本実施形態の方法であれば、竪型粉砕機の差圧及び振動を監視して、それぞれの値が予め設定した制限値を超えた場合に、回転テーブルの回転数を低下させることによって、運転停止というリスクを下げることが可能である。
【0047】
次ぎに、本発明を用いるに好適な他の燃料供給システムの1例を、図3を用いて説明する。なお、図3に記載された燃料供給システム101と、前述した燃料供給システム100の構成の相違は、燃料供給システム101が燃焼ファン48を有しているという点にあり、それ以外の構成は基本的に全て同一である。
【0048】
セメントキルンの燃焼状態によっては、竪型粉砕機1内に供給した空気量だけでは燃焼用空気が十分でない場合がある。そのような場合は、燃焼ファン48を別途設置して、空気と共に取り出された微粉炭のラインに、燃焼ファン48の送風ラインを合流させて、燃焼用空気を補充する。この方法によって、竪型粉砕機1内に供給した空気量だけでは燃焼用空気が十分でない場合でも、良好な燃焼が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように本願発明に係わる燃料供給方法によれば、セメントキルン等の燃焼装置に対して燃料供給中においても、微粉炭を大量に貯蔵する必要がない。従って、微粉炭の貯蔵にともなって発生する火災、爆発等の危険性を低減でき、特に、褐炭の揮発分が大きい石炭は、着火性が高く、火災になりやすいので、本発明を適応するに好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 竪型粉砕機
2 回転テーブル
3 粉砕ローラ
13 原料投入シュート
14 分級機
20 制御装置
33 ガス供給口
35 原料投入口
39 上部取出口
41 粉砕燃焼ファン
48 燃焼ファン
50 原料ホッパ
51 計量フィーダ
70 コーン
80 キルンバーナ
100 燃料供給システム
101 他の燃料供給システム
P1 下部圧力センサ
P2 上部圧力センサ
S1 振動センサ
R1 回転計
D1 動力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブル上に供給した石炭を粉砕ローラで粉砕して、回転テーブル下方から導入したガスにより回転テーブル上方に吹き上げることによって、回転テーブル上方に配したセパレータにより粗粉と微粉に分離して、該微粉をガスとともに機外に取り出す竪型粉砕機を用いて、
該ガスとともに機外に取り出した石炭の微粉を、該ガスと分離することなく、燃料としてセメントキルンのバーナに供給するセメントキルンの燃料供給方法。
【請求項2】
前記石炭が褐炭である請求項1に記載のセメントキルンの燃料供給方法。
【請求項3】
前記竪型粉砕機が、竪型粉砕機内の上部と下部の圧力を計測して差圧を算出する差圧計と、竪型粉砕機の振動を計測する振動計を備えて、該算出した差圧の値が予め設定した制限値を超えた場合、又は該計測した振動の値が予め設定した制限値を超えた場合、に回転テーブルの回転数を低下させることを特徴とした請求項1又は請求項2記載のセメントキルンの燃料供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−72974(P2012−72974A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218484(P2010−218484)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】