説明

セメントモルタル用水性樹脂分散体及びその組成物

【課題】セメント、充填材を含有する樹脂モルタル組成物において、配合安定性が良好であり、セメントの硬化遅延がなく、硬化物の良好な曲げ・圧縮強度、耐環境性、耐水性を与える水性樹脂分散体を提供することを目的とする。
【解決手段】エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)、芳香族ビニル単量体(b)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)とを含む単量体組成物(m1)を乳化重合して得られ、そのガラス転移温度Tg1が−10〜30℃である重合体(1);及び、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)とを含む単量体組成物(m2)を乳化重合して得られ、そのガラス転移温度Tg2が20〜60℃である重合体(2)を含み、Tg1<Tg2であり、各重合体、単量体を特定の比率で含むことを特徴とするセメントモルタル用水性樹脂分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土木・建築分野において使用されるセメントモルタル用水性樹脂分散体、及びその組成物に関するものであり、例えば建築物の補修材、床材、防水材、保護材、防食材、仕上げ材、薄塗り材、接着剤、成型材等に使用されるものである。
詳細には水性樹脂分散体、セメント、充填材を含有する樹脂セメントモルタル組成物において、良好なセメントモルタルへの配合安定性、シマリ性(樹脂セメントモルタル組成物のシマリ時間が長い)を与え、そのセメントモルタル硬化物の圧縮・曲げの強さが水性樹脂分散体未配合セメントモルタル組成物に比べ優れた強度を発揮する水性樹脂分散体に関する。さらには本発明の水性樹脂分散体を用いたセメントモルタル組成物はセメントの硬化遅延がないため、セメントモルタル硬化物の圧縮・曲げの強さ発現性も従来の水性樹脂分散体配合セメントモルタル組成物と比べて優れている。
【背景技術】
【0002】
従来からセメントモルタルの物性改良を目的に、水性樹脂分散体であるエマルジョン/ラテックスが配合されてきた。エマルジョン/ラテックスを配合することにより、その硬化物の曲げ強さの向上、下地コンクリートへの密着性の向上、セメントモルタル硬化物の耐水性、耐薬品性の向上、中性化防止、耐磨耗性の向上が図られてきた。セメントモルタルに使用されるエマルジョン/ラテックスとしては、エチレン−酢ビ系エマルジョン、スチレン−ブタジエン系ラテックス、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョン等が使われている。その中でも、耐久性、耐環境特性、耐薬品性、耐水性、耐候性等が求められる用途においては、エマルジョン/ラテックスとしてスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョンが特に使用されてきている。
【0003】
近年、セメントモルタル硬化物の軽量化が求められていてなかで、その一つの手段としてセメントモルタル硬化物の厚みを薄くする方向がある。それを達成するために、セメントモルタル硬化物の曲げ・圧縮強さの向上が強く求められていて、それに配合される水性樹脂分散体の改良が強く求められている。しかしながら、従来のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル系エマルジョンでは水性樹脂分散体未配合セメントモルタルに比べに曲げ・圧縮強さは改善されるものの、現在求められる性能に対しては充分ではない。
これに対して、特許文献1では2段階以上の乳化重合で作られた水性エマルジョンであって、最外層に1種のエチレンオキシド基を有する不飽和単量体を共重合させている技術の開示がある。セメントモルタル硬化物の耐水性、曲げ・圧縮強さに対する改良が記載されているが、現在求められているセメントモルタル硬化物の曲げ・圧縮強さに関しては充分ではない。
【0004】
さらに、特許文献2ではカルボキシル基を有する不飽和単量体とアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選ばれる不飽和単量体であって、ガラス転移温度が220〜270Kである混合物を、エチレン性不飽和結合とポリオキシアルキレン基とを有する分子を含む乳化剤を用いて乳化重合して得られるポリマーエマルジョンの技術の開示がある。本開示技術においても、セメントとの混和性、及びコンクリートへの付着性は向上するものの、曲げ・圧縮強さの改善が充分ではない。
また、特許文献3ではセメントモルタル硬化物の物性向上のために2段階以上の乳化重合を用い、かつ最終段と1段目のエチレン性不飽和カルボン酸単量体の質量比を限定している技術が開示されている。本開示技術で曲げ・圧縮強さの向上が認められるが、セメントに対する重合体の量の低減が求められている現在、そのセメントモルタル硬化物の曲げ
・圧縮強さに関しては充分ではない。
【0005】
【特許文献1】特開平8−217513号公報
【特許文献2】特開平10−251313号公報
【特許文献3】特開2005−29457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、セメント、充填材を含有する樹脂セメントモルタル組成物において、配合安定性が良好であり、セメントの硬化も遅延なく進行し、かつ、その硬化物の曲げ・圧縮強度が良好で、かつ良好な耐環境性、耐水性を与えるセメントモルタル用水性樹脂分散体を提供することであり、そのセメントモルタル用水性樹脂分散体を含む樹脂セメントモルタル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、乳化重合で造られる特定のガラス転移温度を有する2種の重合体を有し、その重合体が特定の単量体組成物からでき、かつ重合体(1)と重合体(2)におけるエチレン性不飽和カルボン酸の比率がある特定の範囲にあり、全重合体の単量体組成物中に特定量の不飽和カルボン酸単量体であるセメントモルタル用水性樹脂分散体を提供するものである。さらにその水性樹脂分散体が特定のアルカリ成分を含有することで前記課題を解決するに至った。さらに本発明の水性樹脂分散体を用いて、セメント、充填材とを組み合わせることによって、樹脂セメントモルタル組成物における前記課題を解決するために有効であることを見いだし、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)、芳香族ビニル単量体(b)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)とを含む単量体組成物(m1)を乳化重合して得られ、そのガラス転移温度Tg1が−10〜30℃である重合体(1);及び、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)とを含む単量体組成物(m2)を乳化重合して得られ、そのガラス転移温度Tg2が20〜60℃である重合体(2)を含み、Tg1<Tg2であり、重合体(1)/重合体(2)の質量比が25/75〜75/25であり、重合体(1)で使用するエチレン性不飽和カルボン酸単量体(a−1)と重合体(2)で使用するエチレン性不飽和カルボン酸単量体(a−2)との質量比(a−2)/(a−1)が3〜8であり、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)が全重合体の単量体組成物中0.1〜1.6質量%であることを特徴とするセメントモルタル用水性樹脂分散体、
2.セメントモルタル用水性樹脂分散体が塩基性アルカリ金属化合物を含有していることを特徴とする1.のセメントモルタル用水性樹脂分散体、
3.セメント100質量部に対して、充填材が5〜600質量部、及び1.、又は2.記載のセメントモルタル用水性樹脂分散体0.5〜100質量部(固形分)を含む樹脂セメントモルタル組成物、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性樹脂分散体は、セメントモルタルへの配合性が良好で、かつセメント硬化の遅延がなく、その硬化物の曲げ・圧縮強さも優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について、以下に具体的に説明する。
本発明のセメントモルタル用水性樹脂分散体(以下、水性樹脂分散体と記載する)は、乳化重合により得られる。乳化重合の方法に関しては特に制限はなく、従来公知の方法を
用いることができる。すなわち、水性媒体中で単量体組成物、界面活性剤、ラジカル重合開始剤および必要に応じて用いられる連鎖移動剤等の他の添加剤成分などを基本組成成分とする分散系において、単量体組成物を重合する方法である。
本発明の水性樹脂分散体を得る場合、例えば重合体(1)、及び重合体(2)を各々乳化重合しその後混合してもよい。また例えば重合体(1)又は重合体(2)の一方をまず重合し、その存在下に、他方を連続重合してもよい。好ましくは、重合(1)又は重合体(2)の一方をまず重合し、その存在下に他方を連続して重合する方法である。一方の重合体の存在下に他方を連続して重合する方法によってセメントモルタル硬化物の曲げ・圧縮強さに問題がない。さらに好ましくは重合体(1)をまず重合し、その存在下に、重合体(2)を連続重合する方法である。
【0011】
本発明の水性樹脂分散体中の重合体(1)に用いられるエチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)としては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸のモノエステル、フマル酸のモノエステル、イタコン酸のモノエステルなどのエチレン性不飽和モノカルボン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸が挙げられる。好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸から選ばれる1種以上のエチレン性不飽和カルボン酸である。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)を用いることによりセメントモルタルとの配合性、セメントモルタル硬化物の曲げ・圧縮強さに問題がない。
本発明の水性樹脂分散体中の重合体(1)に用いられる芳香族ビニル単量体(b)としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。好ましくはスチレンである。
【0012】
本発明の水性樹脂分散体中の重合体(1)に用いられる(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートである。
【0013】
また、上記単量体に加えて、本発明の重合体(1)に要求される様々な品質・物性を改良するために、上記以外の単量体成分を使用することもできる。それらの単量体としては、(イ)アミド基含有ビニル単量体、(ロ)ヒドロキシル基含有ビニル単量体、(ハ)エポキシ基含有ビニル単量体、(ニ)メチロール基含有ビニル単量体、(ホ)アルコキシメチル基含有ビニル単量体、(ヘ)シアノ基含有ビニル単量体、(ト)ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているビニル系単量体、(チ)加水分解性シリル基を有するビニル系単量体などが挙げられる。
(イ)アミド基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等を挙げることができる。好ましくはアクリルアミド、メタクリルアミドである。
【0014】
(ロ)ヒドロキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコー
ルメタクリレート等が挙げられる。好ましくはヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートである。
(ハ)エポキシ基含有ビニル単量体としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルアクリレート、メチルグリシジルメタクリレートなどが挙げられる。好ましくはグリシジルメタクリレートである。
(ニ)メチロール基含有ビニル単量体としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチロールアクリルアミド、ジメチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0015】
(ホ)アルコキシメチル基含有ビニル単量体としては、例えば、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどが挙げられる。
(ヘ)シアノ基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
(ト)ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているビニル系単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートなどが挙げられる。
【0016】
(チ)加水分解性シリル基を有するビニル系単量体としては、例えばビニルシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
またその他のビニル系単量体(リ)も使用できる。例えば、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基などの官能基を有する各種のビニル系単量体、さらには酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなども所望に応じて使用できる。
本発明において、重合体(1)に用いられる各単量体成分は一種であっても複数種であってもよい。
【0017】
本発明の水性樹脂分散体中の重合体(2)で用いられるエチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)は重合体(1)で用いられるものと同じである。
また上記単量体に加えて、本発明の重合体(2)に要求される様々な品質・物性を改良するために、上記以外の単量体成分を使用することもできる。それらの単量体としては、上記重合体(1)で述べた、(イ)アミド基含有ビニル単量体、(ロ)ヒドロキシル基含有ビニル単量体、(ハ)エポキシ基含有ビニル単量体、(ニ)メチロール基含有ビニル単量体、(ホ)アルコキシメチル基含有ビニル単量体、(ヘ)シアノ基含有ビニル単量体、(ト)ラジカル重合性の二重結合を2個以上有しているビニル系単量体、(チ)加水分解性シリル基を有するビニル系単量体、(リ)その他のビニル系単量体などが挙げられる。必要に応じて芳香族ビニル単量体(b)も使用してもよい。
【0018】
本発明において、重合体(2)に用いられる各単量体成分は一種であっても複数種であってもよい。
本発明において重合体(1)の単量体組成物は、エチレン性不飽和カルボン酸(a)が
0.05〜1.0質量%、芳香族ビニル単量体(b)が20〜79質量%、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)が20〜79質量%で、その他単量体が0〜50質量%である。
エチレン性不飽和カルボン酸(a)が0.05質量%以上でセメントモルタルの配合安定性に問題がなく、1.0質量%以下でセメントモルタルの硬化に遅延がない。さらに好ましくは、0.1〜0.7質量%である。芳香族ビニル単量体が20質量%以上でセメントモルタル硬化物の配合性に問題がなく、79質量%以下でセメントモルタル硬化物の耐久性に問題がない。さらに好ましくは30〜70質量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)が20質量%以上で曲げ・圧縮性能に問題がなく、79質量%以下でセメントモルタル硬化物の耐久性に問題がない。さらに好ましくは30〜70質量%である。
【0019】
本発明において重合体(2)の単量体組成物は、エチレン性不飽和カルボン酸(a)が0.5〜4.0質量%、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)が1〜99.5質量%、その他単量体が0〜50質量%である。
エチレン性不飽和カルボン酸(a)が0.5質量%以上でセメントモルタルの配合安定性に問題がなく、4.0質量%以下でセメントモルタルの硬化に遅延がない。さらに好ましくは、1.0〜3.0質量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)が1質量%以上で曲げ圧縮性能に問題がなく、99.5質量%以下でセメントモルタル硬化物の耐久性に問題がない。さらに好ましくは、30〜99質量%である。
本発明の重合体(2)を作製する際、(チ)の加水分解性シリル基を有するビニル系単量体を使用することによりセメントモルタル硬化物の曲げ・圧縮性能が向上する。加水分解性シリル基を有するビニル系単量体(チ)が0.05〜4質量%好ましい。0.05質量%以上でセメントモルタル硬化物の耐久性に問題がなく、4質量%以下で曲げ・圧縮性能に問題がない。
【0020】
本発明において重合体(1)と重合体(2)の質量比は重合体(1)/重合体(2)=25/75〜75/25(質量比)である。重合体(1)/重合体(2)=25/75とすることによりセメントモルタルの配合安定性に問題がなく、重合体(1)/重合体(2)=75/25とすることによりセメントモルタル硬化の遅延の問題がない。好ましくは重合体(1)/重合体(2)=35/65〜65/35であり、さらに好ましくは重合体(1)/重合体(2)=50/50である。
本発明において、重合体(1)に使用するエチレン性不飽和カルボン酸単量体(a−1)と重合体(2)に使用するエチレン性不飽和カルボン酸単量体(a−2)との質量比(a−2)/(a−1)は3〜8が好ましい。(a−2)/(a−1)の質量比が3以上でセメントモルタルの配合安定性に問題がなく、8以下でセメント硬化の遅延の問題がない。好ましくは(a−2)/(a−1)の質量比は4〜7である。
【0021】
本発明においてエチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)が全重合体の単量体組成物中0.1〜1.6質量%である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)が0.1質量%以上でセメントモルタルの配合性に問題なく、1.6質量%以下でセメント硬化の遅延の問題がない。好ましくは0.4〜1.4質量%である。
本発明において、水性樹脂分散体中の重合体(1)のガラス転移温度Tg1は−10〜30℃である。−10℃以上で硬化物の曲げ・圧縮性能に問題がなく、30℃以下で硬化物の耐久性に問題がない。好ましくは0から20℃である。
本発明において、水性樹脂分散体中の重合体(2)のガラス転移温度Tg2は20〜60℃である。20℃以上でセメントモルタルとの配合安定性に問題がなく、60℃以下で硬化物の曲げ・圧縮性能に問題がない。好ましくは20〜50℃である。
本発明において、水性樹脂分散体の重合体(1)と重合体(2)のガラス転移温度差は重合体(2)Tg2−重合体(1)Tg1が10〜50℃が好ましい。ガラス転移温度差
が10℃以上でセメントモルタル硬化物の物性に問題なく、50℃以下でセメントモルタル硬化物の耐久性に問題がない。
【0022】
なお、ここで言う重合体のガラス転移温度とは、単量体のホモ重合体のガラス転移温度と単量体の共重合比率より次式によって推定することが可能である。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・
Tg:単量体1、2・・・よりなる共重合体のガラス転移温度(゜K)
W1、W2・・:単量体1、単量体2、・・の質量分率
ここでW1+W2+・・=1
Tg1、Tg2・・:単量体1、単量体2、・・のホモ重合体のガラス転移温度(゜K)
計算に使用する単量体のホモ重合体のTg(゜K)は、例えばポリマーハンドブック(Jhon Willey & Sons)に記載されている。本願において用いた数値を例示する。カッコ内の値がホモ重合体のTgを示す。ポリスチレン(373゜K)、ポリメタクリル酸メチル(378゜K)、ポリアクリル酸ブチル(219゜K)、ポリアクリル酸2−エチルヘキシル(205゜K)、ポリアクリル酸(379゜K)、ポリメタクリル酸(403゜K)、ポリアクリロニトリル(373゜K)、ポリアクリル酸2−ヒドロキシエチル(258゜K)、ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(328゜K)。
【0023】
本発明の乳化重合で用いられるラジカル重合開始剤としては、熱または還元性物質によりラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤および有機系開始剤のいずれも使用できる。このようなものとしては、水溶性、油溶性の重合開始剤が使用できる。水溶性の重合開始剤としては例えばペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、水溶性のアゾビス化合物、過酸化物−還元剤のレドックス系などが挙げられ、ペルオキソ二硫酸塩としては例えばペルオキソ二硫酸カリウム(KPS)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(NPS)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)などが挙げられ、過酸化物としては例えば過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキシド、過酸化ベンゾイルなどが挙げられ、水溶性アゾビス化合物としては、例えば2,2−アゾビス(N−ヒドロキシエチルイソブチルアミド)、2、2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩化水素、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)などが挙げられ、過酸化物−還元剤のレドックス系としては、例えば先の過酸化物にナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、およびその塩、第一銅塩、第一鉄塩などの還元剤を重合開始剤に組み合わせて用いることもできる。
ラジカル重合開始剤の量としては、全単量体組成物100質量部に対して、ラジカル重合開始剤0.05〜1質量部を用いることができる。
【0024】
本発明の乳化重合で用いられる界面活性剤は、一分子中に少なくとも一つ以上の親水基と一つ以上の親油基を有する化合物を指す。界面活性剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば非反応性のアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。またノニオン性界面活性剤としては、例えば非反応性のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、
グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0025】
これらのほかに親水基と親油基を有する界面活性剤の化学構造式の中にエチレン性2重結合を導入した、いわゆる反応性界面活性剤を用いても良い。反応性界面活性剤の中でアニオン性界面活性剤としては、例えばスルホン酸基、スルホネート基又は硫酸エステル基及びこれらの塩を有するエチレン性不飽和単量体であり、スルホン酸基、又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基(アンモニウムスルホネート基、又はアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物であることが好ましい。例えばアルキルアリルスルホコハク酸塩(例えば三洋化成(株)エレミノール(商標)JS−2、JS−5、例えば花王(株)製ラテムル(商標)S−120、S−180A、S−180等が挙げられる)、例えばポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば第一工業製薬(株)製アクアロン(商標)HS−10等が挙げられる)、例えばα−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば旭電化工業(株)製アデカリアソープ(商標)SE−1025N等が挙げられる)、例えばアンモニウム=α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン(例えば第一工業製薬(株)製アクアロンKH−10などが挙げられる)など、スチレンスルホン酸塩が挙げられる。
【0026】
また、反応性界面活性剤でノニオン性界面活性剤としては、例えばα−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(例えば旭電化工業(株)製アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等が挙げられる)、例えばポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(例えば第一工業製薬(株)製アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等が挙げられる)などが挙げられる。
界面活性剤の量としては、全単量体組成物100質量部に対してアニオン性界面活性剤0.5〜5質量部、ノニオン性界面活性剤0.5〜10質量部を用いることができる。
界面活性剤の添加は重合前、重合中、または重合後いずれかでもよい。
連鎖移動剤としては、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラメチルチウラジウムジスルフィドなどのジスルフィド類、四塩化炭素などのハロゲン化誘導体、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。好ましくはn−ドデシルメルカプタンである。
連鎖移動剤の量としては、全単量体組成物100質量部に対して連鎖移動剤0〜1.0質量部を用いることができる。
【0027】
本発明の水性樹脂分散体の粒子径は特に限定されない。粒子径コントロール方法は例えば、シードラテックス、界面活性剤の使用割合などによって調整することができ、一般にそれらの使用割合を高くするほど生成する水性樹脂分散体の平均粒子径は小さくなり、その逆は平均粒子径が大きくなる傾向がある。なお、シードラテックスの重合は、本発明の水性樹脂分散体の重合に先だって同一反応容器で行っても、異なる反応容器で重合したシードラテックスを用いても良い。好ましい粒子径は50〜400nmであり、さらに好ましくは100〜200nmである。
【0028】
本発明の水性樹脂分散体には、塩基性アルカリ金属化合物を含有させることが好ましい。塩基性アルカリ金属化合物を含有させることにより、セメントモルタル硬化物の曲げ・圧縮強さに問題ない。塩基性アルカリ金属化合物の含有量は、水性樹脂分散体のpHが5〜12の範囲に調整することである。さらに好ましい塩基性アルカリ金属の含有量は、水性樹脂分散体のpHが7〜10に調整されるものである。
塩基性アルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、有機カルボン酸塩などが挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を上げることができる。また炭酸水素塩、炭酸塩としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等を挙げることができる。またアルカリ金属の有機カルボン酸塩として、例えば酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる1種以上のアルカリ金属の水酸化物である。
【0029】
本発明の水性樹脂分散体には塩基性アルカリ金属化合物以外に、長期の分散安定性を保つため、他の塩基性化合物を追加してもよい。例えばアンモニア、ジメチルアミノエタノールなどのアミン類を用いてもよい。
また、本発明の水性樹脂分散体の固形分としては、30〜70質量%であることが好ましい。
本発明の水性樹脂分散体には性能を向上させるために、以下の材料を配合してもよい。例えば、水溶性樹脂、溶剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、カップリング剤、着色剤、耐水化剤、潤滑剤、pH調整剤、防腐剤、無機顔料、有機顔料、界面活性剤、架橋剤、例えばエポキシ系化合物、多価金属化合物、イソシアネート系化合物などが挙げられる。また、減水剤及び流動化剤(ポリカルボン酸系、メラミンスルホン酸系、ナフタリンスルホン酸系、リグニンスルホン酸系など)、収縮低減剤(グリコールエーテル系、ポリエーテル系等)、耐寒剤(塩化カルシウム、珪酸塩等)、防水剤(ステアリン酸、シリコン系等)、防錆剤(リン酸塩、亜硝酸塩等)、粘度調整剤(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等)、凝結調整剤(リン酸塩等)等を配合してもよい。
【0030】
本発明に用いられるセメントとしては、特に限定はなく例えばJIS R5210(ポルトランドセメント)、R5211(高炉セメント)、R5212(シリカセメント)、R5213(フライアッシュセメント)に規定されている、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントが使用でき、また社団法人セメント協会が、セメントの常識(1994年3月発行)に記載している、特殊セメント、白色ポルトランドセメント、セメント系固化材、アルミナセメント、超速硬セメント、コロイドセメント、湯井セメント、地熱井セメント、膨張セメント、その他特殊セメント等種々のセメントを使用できる。
【0031】
本発明に用いられる充填材としては、特に限定はなく一般的にセメントモルタルに用いられる砂、珪砂、寒水砂、天然及び人工軽量骨材等が使用でき、また無機または有機の顔料等も用いることができ例えば、無機顔料ではマグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、鉛などの各種金属酸化物、水酸化物、硫化物、炭酸塩、硫酸塩または珪酸化合物などが挙げられる。具体的には例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、石膏、バライト粉、アルミナホワイト、サチンホワイトなどである。有機顔料ではポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの固体高分子微粉末などが挙げられる。
【0032】
本発明におけるその使用量はセメント100質量部に対して充填材が5〜600質量部、本発明の水性樹脂分散体0.5〜100質量部(固形分)である。充填材5質量部以上で、曲げ・圧縮強さに問題ない。一方、600質量部以下でセメントモルタル硬化物の耐久性に問題がない。好ましくは50〜500質量部の範囲である。
また、本発明の水性樹脂分散体0.5質量部以上でセメント硬化物の曲げ・圧縮強さに問題がなく、100質量部以下でセメントモルタルへの配合安定性に問題ない。好ましく
は1〜80質量部の範囲である。さらに好ましくは2〜50質量部の範囲である。
本発明の樹脂セメントモルタル組成物の配合法は特に限定されない。水性樹脂分散体、セメント、充填材を一緒に混合しても良く、順次混合してもよい。混合順も特に限定はない。
【0033】
本発明の樹脂セメントモルタル組成物の成型法は特に限定されるものでなく、例えば木枠等で作られた枠に樹脂セメントモルタル組成物を投入してもよい。また養生条件も特に限定されるものでなく、室温での養生、加温下での養生、蒸気中での養生、これらの組み合わせによる養生等が挙げられる。
本発明の樹脂セメントモルタル組成物は、上記の成分に限定されるものではなく、他のいかなる成分を添加しても良い。例えば、先に挙げた減水剤及び流動化剤(ポリカルボン酸系、メラミンスルホン酸系、ナフタリンスルホン酸系、リグニンスルホン酸系など)、収縮低減剤(グリコールエーテル系、ポリエーテル系等)、耐寒剤(塩化カルシウム、珪酸塩等)、防水剤(ステアリン酸、シリコン系等)、防錆剤(リン酸塩、亜硝酸塩等)、粘度調整剤(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール等)、凝結調整剤(リン酸塩等)、さらに膨張剤(エトリンガイト系、石灰系等)、着色剤(酸化鉄、酸化クロム等)、消泡剤(シリコン系、鉱油系等)、補強材(鋼繊維、ガラス繊維、合成繊維等)、界面活性剤(アニオン、ノニオン、カチオン系等)、増粘剤、レベリング剤、成膜助剤、溶剤、可塑剤、分散剤、耐水化剤、潤滑剤等が挙げられる。
【0034】
また、本発明の樹脂セメントモルタル組成物に本発明の水性樹脂分散体以外のエマルジョン/ラテックスを配合してもよい。例えば、酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニルエマルジョン、ウレタンエマルジョン、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンラテックスなどが挙げられる。さらに、再乳化型の粉末樹脂をも配合してもよい。
【実施例】
【0035】
本発明を実施例に基づいて説明する。本発明の実施様態は、これらによって限定されるものではない。なお。例中の部数は、すべて有り姿での部数(即ち、水性樹脂分散体は水を含有したそのものの部数である)を示した。また、「部」は特に断らない限り「質量部」を示すものである。
〔評価方法〕
各特性は次ぎのようにして求めた。
(1)樹脂セメントモルタルの作業性
JIS A 1171−2000(ポリマーセメントモルタルの試験方法)の5.ポリマーセメントモルタルの調整方法の手練りによる方法に準拠し、樹脂セメントモルタルを調整した。樹脂モルタル組成物のフロー値は170±5mmとなるよう水を20〜30質量部添加した。
表3、表4に示す樹脂セメントモルタルを調整した後、その後、20℃に放置し2時間以上攪拌可能な場合を合格とした。なお、本評価はモルタルへの配合安定性とシマリ性を現す。
【0036】
(2)樹脂セメントモルタル硬化物の曲げ・圧縮強さ
JIS A 1171−2000(ポリマーセメントモルタルの試験方法)の7.2曲げ強さ圧縮強さ試験に準拠して測定を行った。
但し、本発明の養生条件は水中養生後の放置日数は7日とした。
(3)樹脂セメントモルタル硬化物の耐久性試験後の曲げ強さ
JIS A6909(建築用仕上塗材)7.11温冷繰り返し試験条件に樹脂セメントモルタル硬化物を放置し、温冷繰り返し40サイクルを実施した。その後、曲げ強さを測定した。なお、本評価はモルタル硬化物の耐環境性を現す。
表1、表2に示す単量体組成物を用いて水性樹脂分散体を得た。具体的方法は以下の通りである。
【0037】
〔水性分散体1〜10〕
表1、表2に示す1段目単量体組成物に、エマルゲン150(花王(株)製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の20%水溶液10質量部、ラテムルE118B(花王(株)製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム)の25%水溶液35質量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1.2質量部、水250質量部を添加し、ホモミキサーで攪拌を行い、プレ乳化液を作製した。
また、同様に2段目単量体組成物にエマルゲン150(花王(株)製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)の20%水溶液100質量部、ラテムルE118B(花王(株)製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム)の25%水溶液35質量部、ペルオキソ二硫酸アンモニウム1.2質量部、水275質量部を添加し、ホモミキサーで攪拌を行い、プレ乳化液を作製した。
【0038】
別に攪拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた重合容器に、エマルゲン150の20%水溶液3.2質量部とラテムルE118Bの25%水溶液14質量部、水350質量部を仕込み、内温を80℃に昇温し、次いでペルオキソ二硫酸アンモニウム0.3質量部を水50質量部に溶解した水溶液を添加した。ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液添加5分後、前記1段目プレ乳化液を2時間かけて一定流速で添加した。同温度で0.5時間重合を続けた。次いで、2段目プレ乳化液を2時間かけて一定流速で添加した。同温度で1.0時間重合を続けた。
その後、冷却し、10%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した。次いで、200メッシュの金網を用いてろ過を行い、固形分が45%となるよう水を配合し、水性樹脂分散体1〜10を得た。
【0039】
[実施例1〜9]
表3、表4に記載の樹脂セメントモルタル組成物を調整し、a.作業性、b.硬化物の曲げ強さ圧縮強さ、c.硬化物の耐久性試験後の曲げ強さの評価を行った。評価結果を表3、表4に示す。
使用した原材料は、以下の通りである。
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
充填材:JIS R 5201 10.2記載の標準砂
[比較例1〜2]
表5に記載の樹脂セメントモルタル組成物を調整し、a.作業性、b.硬化物の曲げ強さ圧縮強さ、c.硬化物の耐久性試験後の曲げ強さの評価を実施例と同様に行った。評価結果を表5に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の樹脂セメントモルタル組成物の用途は特に限定されるものではない。例えば、建築物の防水材、補修材、養護材、仕上げ材、下地調整材、タイル接着用、防錆、グラウト用、パテ用、セルフレベリング床用、耐磨耗性床用、基礎コンクリート部の被覆材、デッキカバリング用、弾性モルタル用、セメント成型体、塗料用、防食用などの分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)、芳香族ビニル単量体(b)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)とを含む単量体組成物(m1)を乳化重合して得られ、そのガラス転移温度Tg1が−10〜30℃である重合体(1);及び、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)、(メタ)アクリル酸エステル単量体(c)とを含む単量体組成物(m2)を乳化重合して得られ、そのガラス転移温度Tg2が20〜60℃である重合体(2)を含み、Tg1<Tg2であり、重合体(1)/重合体(2)の質量比が25/75〜75/25であり、重合体(1)で使用するエチレン性不飽和カルボン酸単量体(a−1)と重合体(2)で使用するエチレン性不飽和カルボン酸単量体(a−2)との質量比(a−2)/(a−1)が3〜8であり、エチレン性不飽和カルボン酸単量体(a)が全重合体の単量体組成物中0.1〜1.6質量%であることを特徴とするセメントモルタル用水性樹脂分散体。
【請求項2】
セメントモルタル用水性樹脂分散体が塩基性アルカリ金属化合物を含有していることを特徴とする請求項1のセメントモルタル用水性樹脂分散体。
【請求項3】
セメント100質量部に対して、充填材が5〜600質量部、及び請求項1、又は請求項2記載のセメントモルタル用水性樹脂分散体0.5〜100質量部(固形分)を含む樹脂セメントモルタル組成物。

【公開番号】特開2008−81368(P2008−81368A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263996(P2006−263996)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】