説明

セメント中の粉砕助剤含有量の測定方法及びセメント中の粉砕助剤含有量の測定装置

【課題】 作業性が良好であり分析精度も比較的高いセメント中の粉砕助剤含有量の測定方法を提供することにある。
【解決手段】 粉砕助剤が含有されてなるセメントから水で前記粉砕助剤を抽出する抽出工程と、該抽出工程で得られた抽出液中の粉砕助剤含有量を全有機炭素計(TOC計)により全有機炭素濃度(TOC濃度)換算で定量する定量工程とを実施することを特徴とするセメント中の粉砕助剤含有量の測定方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント中の粉砕助剤含有量の測定方法及びセメント中の粉砕助剤含有量の測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、セメント工場において、セメント原料、セメントクリンカー、又はセメント製品等を粉砕し又は粉砕混合しセメントを製造する際に、粉砕性の向上を図るべく、多価アルコール(例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等)、アミノアルコール(例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)等の粉砕助剤が添加されている。
【0003】
これらの粉砕助剤は、粉砕時におけるセメント用原料同士の摩擦熱等によりある程度揮発されるが、セメントに過剰に残存してしまう場合がある。セメントにこれらの粉砕助剤が過剰に残存すると、セメントの品質に影響がでるという問題がある。従って、セメントに含まれる粉砕助剤量を測定し品質を把握することが必要となる。
【0004】
従来、セメント中の粉砕助剤含有量の測定方法としては、ガスクロマトグラフィーによって測定する方法が提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−308110号公報
【特許文献2】特開2007−240227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、斯かるセメント中の粉砕助剤含有量の測定方法は、粉砕助剤として含まれる化学物質の種類ごとに分離し定量する方法であることから、セメントに含まれる化学物質ごとに標準物質を測定して検量線を作成する必要があり、作業性が悪いという問題を有している。更に、クロマトグラムにおいて化学物質のピークが他の化学物質のピークと重なると定量が困難となってしまうため、このような場合には、カラムや検出器の種類の選定、カラム温度等の分離条件の設定という熟練を要する作業が必要となり、より一層作業性が悪化する。
また、想定外の種類の粉砕助剤が含まれている場合には、斯かる粉砕助剤含有量を定量することができないため、セメント中の粉砕助剤含有量の全量を実際の値よりも過小評価することとなる虞もある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、作業性が良好であり分析精度も比較的高いセメント中の粉砕助剤含有量の測定方法、及びセメント中の粉砕助剤含有量の測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
セメントを粉砕する際に用いられる粉砕助剤は水溶性有機化合物であり、セメントには粉砕助剤以外の有機化合物(特に、水溶性有機化合物)がほとんど存在しないことから、本発明の完成に至った。
【0009】
即ち、本発明は、粉砕助剤が含有されてなるセメントから水で前記粉砕助剤を抽出する抽出工程と、該抽出工程で得られた抽出液中の粉砕助剤含有量を全有機炭素計(TOC計)により全有機炭素濃度(TOC濃度)換算で定量する定量工程とを実施することを特徴とするセメント中の粉砕助剤含有量の測定方法にある。
【0010】
また、本発明は、粉砕助剤が含有されてなるセメントから水で前記粉砕助剤を抽出する抽出手段と、該抽出手段で得られた抽出液中の粉砕助剤含有量を全有機炭素計(TOC計)により全有機炭素濃度(TOC濃度)換算で定量する定量手段とが備えられてなることを特徴とするセメント中の粉砕助剤含有量の測定装置にある。
【0011】
これらのセメント中の粉砕助剤含有量の測定方法及びセメント中の粉砕助剤含有量の測定装置に於いては、セメントから粉砕助剤を抽出する溶媒として水を用いることにより、簡便に粉砕助剤を抽出することができる。
また、セメントを粉砕する際に用いられる粉砕助剤は水溶性有機化合物であるところ、セメントには粉砕助剤以外の有機化合物(特に、水溶性有機化合物)が粉砕助剤含有量の測定に影響を及ぼすほど存在することがほとんどないことから、比較的分析精度の高い測定を実施することができる。
さらに、測定対象を全有機炭素とすることから、粉砕助剤の種類によって分析条件等を変更したり、粉砕助剤の種類ごとに検量線を作成する必要がないことから、セメント中の粉砕助剤含有量を簡便に測定することができる。
また、測定対象を全有機炭素とすることから、想定外の種類の粉砕助剤がセメントに含まれている場合においても、クロマトグラフィーと異なり、該想定外の粉砕助剤をも漏れなく測定することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、作業性が良好であり分析精度も比較的高いセメント中の粉砕助剤含有量の測定方法及びセメント中の粉砕助剤含有量の測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
まず、本実施形態に於けるセメント中の粉砕助剤含有量の測定方法について説明する。
【0015】
本実施形態に於けるセメント中の粉砕助剤含有量の方法では、粉砕助剤が含有されてなるセメントから水で前記粉砕助剤を抽出する抽出工程と、該抽出工程で得られた抽出液中の粉砕助剤含有量を全有機炭素計(TOC計)により全有機炭素濃度(TOC濃度)換算で定量する定量工程とを実施する。
【0016】
前記抽出工程では、粉砕助剤が含有されてなるセメントと水とを所定割合で混合し撹拌して混合液を生成する混合液生成工程と、濾過により該混合液を固形分と濾液とに分離し該濾液を抽出液として回収する抽出液回収工程とを実施する。
尚、前記抽出工程の前には、該抽出工程で供されるセメントの量と、該抽出工程で用いられる水の量とをあらかじめ測定する。
【0017】
前記セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩)、混合セメント(高炉、フライアッシュ、シリカ)、特殊なセメント(白色ポルトランドセメント、セメント系固化材、アルミナセメント、エコセメント他:ポルトランドセメントをベースにしたもの、ポルトランドセメントの成分や粒度の構成を変えたもの、ポルトランドセメントとは異なる成分のもの)等が挙げられる。
【0018】
前記粉砕助剤として用いられるものは、水溶性有機化合物である。
前記粉砕助剤としては、例えば、多価アルコール(例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等)、アミノアルコール(例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)等が挙げられる。
【0019】
前記混合液生成工程では、好ましくは、セメントと水との所定の混合割合を、セメント100質量部に対して水50〜300質量部、より好ましくは、セメント100質量部に対して水100〜200質量部とする。本実施形態に於けるセメント中の粉砕助剤含有量の方法は、セメントと水との所定の混合割合を、セメント100質量部に対して水50質量部以上とすることにより、粉砕助剤が十分に抽出されやすくなるという利点がある。また、本実施形態に於けるセメント中の粉砕助剤含有量の方法は、セメントと水との所定の混合割合を、セメント100質量部に対して水300質量部以下とすることにより、前記抽出工程で得られる抽出液に含まれる粉砕助剤の濃度が低いものとなってしまうのを抑制することができるという利点がある。
【0020】
また、前記混合液生成工程では、撹拌速度にもよるが、水とセメントとを、好ましくは、1〜20分間、より好ましくは、2〜10分間撹拌する。前混合液生成工程は、水とセメントとの撹拌を1分間以上とすることにより、十分に混合液中の水に粉砕助剤を溶解させ得るという利点がある。また、前記混合液生成工程は、水とセメントとの撹拌を20分間以下とすることにより、作業時間を短縮することができるという利点がある。
【0021】
前記水としては、本発明の効果を損ねない範囲のものであれば特に限定されるものではないが、例えば、純水(例えば、電気抵抗率が1〜10MΩ・cmの範囲の水)、超純水(例えば、電気抵抗率が10MΩ・cmよりも大きい水)等が挙げられる。
【0022】
前記抽出液回収工程では、前記混合液生成工程で得られた混合液を濾紙によって濾過し固形分と濾液とに分離して該濾液を抽出液として回収する。
【0023】
前記定量工程では、前記抽出液を全有機炭素計(TOC計)で測定し、測定値と検量線とから、抽出液に含まれる粉砕助剤量を全有機炭素濃度(TOC濃度)換算で求める。尚、検量線については、全有機炭素濃度(TOC濃度)が既知の標準溶液であって濃度が異なる複数のものを全有機炭素計(TOC計)で測定してあらかじめ作成しておく。
そして、抽出液に含まれる粉砕助剤量と、前記抽出工程で用いた水の量と、前記抽出工程で供されたセメントの量とから、セメント中の粉砕助剤含有量を全有機炭素濃度(TOC濃度)換算で求める。
【0024】
前記全有機炭素計(TOC計)は、抽出液に含まれる粉砕助剤を酸化して有機炭素をCO2にする酸化手段と、該CO2の量を測定するCO2測定手段とを備えてなる。
前記酸化手段としては、本発明の効果を損ねない範囲であれば、特に限定されるものではないが、例えば、粉砕助剤を燃焼させるもの、酸化剤で粉砕助剤を酸化させるもの、UVにより粉砕助剤を酸化させるもの等が挙げられる。
前記CO2測定手段としては、本発明の効果を損ねない範囲であれば、特に限定されるものではないが、例えば、非分散形赤外線式ガス分析計等が挙げられる。
【0025】
本実施形態に於けるセメント中の粉砕助剤含有量の測定方法は、上記の如く構成されてなるが、次ぎに、本実施形態に於けるセメント中の粉砕助剤含有量の測定装置について説明する。
【0026】
本実施形態に於けるセメント中の粉砕助剤含有量の測定装置は、粉砕助剤が含有されてなるセメントから水で前記粉砕助剤を抽出する抽出手段と、該抽出手段で得られた抽出液中の粉砕助剤含有量を全有機炭素濃度(TOC濃度)換算で全有機炭素計(TOC計)により定量する定量手段とが備えられてなる。
【0027】
尚、本実施形態に於けるセメント中の粉砕助剤含有量の測定方法及びセメント中の粉砕助剤含有量の測定装置は、上記構成により、上記利点を有するものであったが、本発明に於いては、これらの測定方法及び測定装置に限定されず、適宜設計変更可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕助剤が含有されてなるセメントから水で前記粉砕助剤を抽出する抽出工程と、該抽出工程で得られた抽出液中の粉砕助剤含有量を全有機炭素計(TOC計)により全有機炭素濃度(TOC濃度)換算で定量する定量工程とを実施することを特徴とするセメント中の粉砕助剤含有量の測定方法。
【請求項2】
粉砕助剤が含有されてなるセメントから水で前記粉砕助剤を抽出する抽出手段と、該抽出手段で得られた抽出液中の粉砕助剤含有量を全有機炭素計(TOC計)により全有機炭素濃度(TOC濃度)換算で定量する定量手段とが備えられてなることを特徴とするセメント中の粉砕助剤含有量の測定装置。