説明

セメント容器等の防塵カバー

【課題】 セメントを収納したフレキシブルコンテナからミキサー等にセメントを投入する際に、粉塵が飛散するのを効果的に防止することのできる防塵カバーを提供する。
【解決手段】 セメント等の粉体を収納した袋状のフレキシブルコンテナに被せられる筒状の胴部と、該胴部の上端部を覆う蓋板部とを備え、前記蓋板部の中央部には、フレキシブルコンテナに設けられた吊り下げ用の紐を挿通する通孔が設けられ、その周囲に上方へ突出するカラーが設けられている。このカラーの周囲に設けた紐を引き締めることにより、開口部を絞ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばセメントを収納したフレキシブルコンテナからミキサー等にセメントを投入する際に、粉塵が飛散するのを防止するための防塵カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木・建築の分野では、例えば1トンのセメントを収納したフレキシブルコンテナをトラック等で施工現場へ搬入し、現場に設置したミキサーで混練している。フレキシブルコンテナの上部開口部は、紐で締め付けて閉じるようになっていて、この紐にクレーンのフックを掛けて吊り下げることができるようになっている。ミキサーの上部には、セメント投入用のホッパが設けられていて、該ホッパの開口部には、フレキシブルコンテナを切り裂くカッターが取り付けられているので、クレーン等で吊り上げたフレキシブルコンテナをホッパ上に降ろすと、前記カッターによって該フレキシブルコンテナの底部が切り裂かれ、内部のセメントがホッパ内へ流下する。この種のフレキシブルコンテナバッグ開袋機としては、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平6−329135号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記セメントを収納したフレキシブルコンテナからミキサーのホッパへセメントを移し替えるとき、大量の粉塵が発生するが、この粉塵が周囲に飛散し、近隣住宅へ悪影響を及ぼす等の公害問題を引き起こしていた。最近の都市土木等では、この公害問題が深刻な問題となっており、これを防止するための種々の工夫がなされている。従来、最も普通に行われてきた防塵方法は、フレキシブルコンテナをミキサーのホッパ上に運んだ状態で、該ホッパとコンテナの周囲をビニールシート等で囲い、粉塵の飛散を防止する方法であった。
【0005】
しかしながら、上記ビニールシート等でホッパの上部を囲う方法は、セメント投入のたびに何人もの人手を要し、作業能率も悪いという問題点があった。そこで、本発明は、フレキシブルコンテナからセメントをミキサー等に移し替えるときに、粉塵の飛散を簡単かつ効果的に防止することのできる防塵装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、次のような構成の防塵カバーを提案する。すなわち、本発明に係る防塵カバーは、セメント等の粉体を収納した袋状のフレキシブルコンテナに被せられる筒状の胴部と、該胴部の上端部を覆う蓋板部とを備え、前記蓋板部の中央部には、フレキシブルコンテナに設けられた吊り下げ用の紐を挿通する通孔が設けられていることを特徴としている。蓋体に設けられた通孔の周囲に上方へ突出する筒状カラーが設けられ、該カラーに、該カラーの開口部を絞ることのできる紐を設けておくのが好ましい。また、胴部の下端部にその開口縁部に沿って4本の筒を取り付け、胴部の下部が概略四角形を保つように形成しておけば、四角いホッパにも対応できる。
【発明の効果】
【0007】
この防塵カバーは、フレキシブルコンテナの上部と外周部を覆う概略逆向きカップ形の筒体で構成され、上部には、当該フレキシブルコンテナに設けられている吊紐が通る小穴が設けられている。この防塵カバーをフレキシブルコンテナに被せ、上部の小穴から当該吊紐の上部を引き出すと、防塵カバーを被せたフレキシブルコンテナをクレーン等で吊り下げることができる。一方、防塵カバーの下部は開口しているので、ミキサーのホッパ上に降ろすと、該コンテナの底部がカッターで切り裂かれて、セメントが当該ホッパ内へ落とし込まれる。この時、粉塵が発生するが、コンテナの外周部と上部が筒状の防塵カバーで囲まれているので、外部への粉塵の飛散が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。図1は本発明のフレキシブルコンテナ用防塵カバーの1実施形態を表すもので、この防塵カバー1は、円筒状の胴部2と該胴部の上端部を覆う蓋板部3とを備えた概略カップ形に形成されている。胴部2の下端部は開口している。蓋板部3の中央部には、吊紐挿通用の通孔5が設けられ、その周囲には上方に突出する円筒状カラー6が設けられている。場合によっては、このようなカラーを設けず、単に小さな通孔5だけを設けておいてもよいが、粉塵の飛散を防止するためには、カラー6を設けておく方が効果的である。防塵カバー1は、ある程度柔軟なシート材、例えば防災用等に使用されるターポリンと呼ばれる塩ビシート等を好適に使用することができる。
【0009】
図中の7は、例えばピアノ線等で作られた細いフレームであり、防塵カバー1の上縁部と下縁部にリング状に形成されたフレーム7a、7bが取り付けられている。上下のフレーム7a、7bは、適当な間隔で設けられた縦方向のフレーム7cによって互いに連結されている。このため、柔軟なシート材で作られた防塵カバー1が円筒状の形状を保つのである。なお、防塵カバー1の上下高さは、フレキシブルコンテナの高さよりも高くしておく。これは、フレキシブルコンテナに被せてクレーンで吊り下げたとき、防塵カバーの下部がミキサーのホッパの開口部の外周部を囲えるようにするためである。
【0010】
上記カラー6の外周部には、図2に示すように、複数の丸環9が適当な間隔で取り付けられている。この丸環9に挿通した紐10を締め付けることにより、カラー6の開口部を絞って、粉塵の飛散を防止できるようになっている。また、このように開口部を絞ることにより、雨の日の作業中に雨水がコンテナやホッパ内に流入することが防止できる。ホッパの下側が水とセメントを混練するミキサーとなっている場合は、雨水が流入しても問題はないが、ホッパーの下がセメントを一旦貯留するタンクとなっている場合は、雨水が流入するとセメントが固化するので、大きな問題となる。この点、上記のように、開口部を絞ることができれば、雨天時の作業でも雨水の流入を効果的に防ぐことができるという利点がある。
【0011】
この防塵カバー1は、図3乃至図6に示すようにして使用される。すなわち、セメントを詰めたフレキシブルコンテナ20の上部開口部を絞っている吊り紐21をカラー6の通孔に通し、防塵カバー1をフレキシブルコンテナ20に被せる。この状態では、防塵カバー1内面とフレキシブルコンテナ20の外周部との間に若干の隙間が存在する。図3に示すフレキシブルコンテナ20は丸型のセメント袋として形成されているが、角型のものもある。フレキシブルコンテナが角型であっても、防塵カバー1をフレキシブルコンテナの外形よりも大きく形成しておけば、十分に適用することができる。なお、防塵カバーを柔軟なシート材で形成しておくことにより、角型フレキシブルコンテナに対する適応性も向上する。
【0012】
次に、図4に示すように、クレーン30のフック31を防塵カバー1の上方へ突出している吊り紐21に引っ掛け、フレキシブルコンテナ20を防塵カバー1ごと吊り上げてミキサー40の上方まで搬送する。カバー1は、フレキシブルコンテナに被せられており、開口5の径はフレキシブルコンテナの外径よりも小さいので、防塵カバー1がフレキシブルコンテナからはずれて落下するおそれはない。ミキサー40のホッパ41上に運んだら、フレキシブルコンテナ20を徐々に下降させる。ミキサー40のホッパ41には、図5に示すように、上向きに尖ったカッター42が設けられているので、フレキシブルコンテナ20をさらに下降させると、該フレキシブルコンテナ20の底部がこのカッターによって切り裂かれ、内部のセメントがホッパ内へ流入する。このとき、必然的に粉塵が発生するが、防塵カバー1の下部は、ホッパ41の外周部を囲った状態となっているので、発生した粉塵の殆どは防塵カバー内に留まり、外部へ飛散することが防止される。
【0013】
フレキシブルコンテナ20内のセメントをミキサーのホッパ41内へ移したら、空になったフレキシブルコンテナ20と防塵カバー1を吊り上げ、邪魔にならない場所まで運んで、フレキシブルコンテナをクレーンから取り外すとともに、防塵カバー1を当該フレキシブルコンテナから取り外せばよい。なお、カラー6の内径を適当に小さくしておくことにより、空になったフレキシブルコンテナで支持したまま防塵カバーを吊り上げることができるが、上記のように、カラー6の開口部5を丸環に通した紐で絞っておけば、より確実に防塵カバーの分離・落下を防止することができる。
【0014】
次に、図7は上記と若干異なる実施形態を表すもので、この実施形態の防塵カバー1’は、角型のフレキシブルコンテナもしくは角型ホッパに対応できるようにしたものである。この防塵カバー1’は、全体の構造は前記実施形態のものと殆ど同じであるが、胴部の下縁部に等間隔で4本の筒50が取り付けられている点が相違している。筒50は、ある程度の剛性を有する軽量のパイプであり、例えば塩ビ等のプラスチックパイプを採用することができる。筒の材質はこれに限らず、例えばアルミ等の金属パイプとしてもよい。
【0015】
4本の筒50が防塵カバー1’の胴部2の下端開口部に等間隔で取り付けられているので、防塵カバーの下端開口部は概略四角形に保たれる。なお、筒同士の間隔部51では、胴部2が断面円弧状を呈することになる。4本の筒50には、紐52が挿通されており、該紐52の両端部は留め具55に挿入されている。この留め具55は、紐に係合する歯列を有する公知の紐固定具であり、紐52の端部を外向きに引っ張って胴部2の開口部を絞った状態で該紐の張力に抗して固定することができるようになっている。留め具55に設けられている突起55aを押し込むことにより、歯列と紐の係合が解除され、紐52の固定が解放されて、胴部2の開口部が広がるようになっている。
【0016】
なお、この実施形態では、カラー6の上縁部に紐を通す筒状部6aが形成され、該筒状部に通した紐57を引き締めることにより、カラー6の開口部を絞ることができるようになっている。図中の55は、上記と同様の留め具である。また、胴部2の上縁部には、前記実施形態と同様のリング状の細いフレーム7が取り付けられ、胴部2の上部が円形を保つようになっているが、場合によっては、上部も下部と同様に角型にすることもできる。
【0017】
この防塵カバー1’の使用法も上記実施形態と同様であるが、この実施形態では、胴部2の下端開口部を概略四角形に保つことができるので、四角形のホッパに被せて防塵効果を高めることができる。図示例では、4本の筒により、下端開口部を四角形に保つが、筒の本数と配置を変えることにより、種々の多角形状のホッパに対応させることも可能である。
【0018】
なお、以上の説明では、防塵カバーを合成樹脂等のシート材で形成したが、場合によっては金属板を筒状に加工して形成することもできる。しかしながら、柔軟性を有するシート材で形成しておけば、軽量であるのみならず、不使用時に小さく折りたたんで置くことができるので、実用上便利である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
セメントを収納したフレキシブルコンテナから内部のセメントをミキサー等に移すとき、粉塵が外部へ飛散することを効果的に防止し、現場周辺の環境を悪化させずにすむので、都市土木や建築現場等において使用するに適している。なお、以上の説明では、セメント袋ないしはセメント用フレキシブルコンテナについて説明したが、セメント以外の粉体、例えばソーダ灰、アルミナ粉末、肥料、化学工場用原料粉末等種々の粉体を収納する容器から内部の粉体を取り出すときの防塵に好適に使用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】防塵カバーの外観図である。
【図2】丸環の側面図(a)及び正面図(b)である。
【図3】フレキシブルコンテナの例を表す外観図である。
【図4】吊り下げ状態の説明図である。
【図5】ミキサーの平面図である。
【図6】ミキサーの正面図である。
【図7】上記と異なる実施形態における防塵カバーの外観図である。
【符号の説明】
【0021】
1,1’ 防塵カバー
2 胴部
3 蓋板部
5 通孔
6 カラー
7 フレーム
20 フレキシブルコンテナ
40 ミキサー
41 ホッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント等の粉体を収納した袋状のフレキシブルコンテナに被せられる筒状の胴部と、該胴部の上端部を覆う蓋板部とを備え、前記蓋板部の中央部には、フレキシブルコンテナに設けられた吊り下げ用の紐を挿通する通孔が設けられていることを特徴とするセメント等の防塵カバー。
【請求項2】
蓋体に設けられた通孔の周囲に上方へ突出する筒状カラーが設けられ、該カラーに、該カラーの開口部を絞ることのできる紐が設けられている請求項1に記載のセメント等の防塵カバー。
【請求項3】
胴部の下端部にその開口縁部に沿って4本の筒が取り付けられ、胴部の下部が概略四角形を保つように形成されている請求項1又は2に記載のセメント等の防塵カバー。
【請求項4】
4本の筒に紐が挿通され、この紐を締め付けることにより、胴部の開口部が絞られるように形成されている請求項3に記載のセメント等の防塵カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−137458(P2007−137458A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332542(P2005−332542)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(592237194)日本テクノ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】