説明

セメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法

【課題】減水性に優れるセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】特定の不飽和アルコールを脱水して、水の含有量を2000ppm未満とする脱水工程と、アルキレンオキシドとを反応させて、下記一般式(1):


式中、Y1はCH2=CHR0−(CH2m−を表し、この際、R0は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは0〜2の整数であり、R1Oは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表わし、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0より大きく500以下の数であり、R2は水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わす、で表されるポリアルキレングリコールエーテル系単量体を得る工程と、特定の不飽和カルボン酸系単量体と、を反応させてポリカルボン酸系重合体を得る工程と、を含む製造方法によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント混和剤ポリカルボン酸系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリート業界では、コンクリート建造物の耐久性と強度の向上が強く求められ、単位水量の低減が重要な課題である。特に、ポリカルボン酸系のセメント混和剤については、従来のナフタレン系などのセメント分散剤に比べて、高い減水性能を発揮することから、多くの提案がある。
【0003】
たとえば、特許文献1には、特定量のポリアルキレングルコールを含有する不飽和ポリアルキレングリコール系単量体と、不飽和カルボン酸系単量体とを反応させることで、モルタルの初期分散性、流動性の保持性能に優れたポリカルボン酸系重合体が開示されている。また、当該文献には、特定量のポリアルキレングルコールを含有する不飽和ポリアルキレングリコールを調製するにあたっては、水分含量を100〜10,000ppm含有する不飽和アルコールを原料として用いることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、不飽和アルコール中の水分含量を2000ppm以下に制御する方法が開示され、当該方法により、当該不飽和アルコールを用いて得られるポリカルボン酸系重合体は、セメント混和剤としての添加量が少量であっても十分な性能が発揮でき、減水性に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−106238号公報
【特許文献2】特開2010−235700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の方法では、たとえば、原料の不飽和アルコールを長期保存した際など、不飽和アルコールの水分含量が増加してしまった場合、原料として用いることができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、たとえ長期保存により原料のアルコールの水分含量が増加してしまった場合であっても、原料として用いることができる、セメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、ポリカルボン酸系重合体の原料であるアルコールに脱水処理を施すことで、最終的に得られるポリカルボン酸系重合体がセメント混和剤として優れた減水性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、上記目的は、Y1OH(Y1はCH2=CHR0−(CH2)m−−を表し、この際、R0は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは0〜2の整数である。)で表される2000ppm以上の水を含む不飽和アルコールを脱水して、水の含有量を2000ppm未満とする脱水工程と、前記脱水工程を経て得られた不飽和アルコールと、炭素数2〜18のアルキレンオキシドとを反応させて、下記一般式(1):
【0010】
【化1】

【0011】
式中、
1はCH2=CHR0−(CH2)m−−を表し、この際、R0は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは0〜2の整数であり、
1Oは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表わし、
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0より大きく500以下の数であり、
2は水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わす、
で表されるポリアルキレングリコールエーテル系単量体を得る工程と、前記ポリアルキレングルコールエーテル系単量体と、下記一般式(2):
【0012】
【化2】

【0013】
式中、
3、R4、およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH2pCOOH基であり(この際、pは、0〜2の整数である)、
Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基(有機アンモニウム基)である、
で表される不飽和カルボン酸系単量体と、を反応させてポリカルボン酸系重合体を得る工程と、を含む、セメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法によって達成される。
【0014】
また、上記目的は、Y2OH(Y2は炭素数1〜4のアルキル基である。)で表される2000ppm以上の水を含む飽和アルコールを脱水して、水の含有量を2000ppm未満とする脱水工程と、前記脱水工程を経て得られた飽和アルコールと、炭素数2〜18のアルキレンオキシドとを反応させて、下記一般式(3):
【0015】
【化3】

【0016】
式中、
2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは0〜2の整数であり、
1Oは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表わし、
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0より大きく500以下の数である、
で表されるポリアルキレングリコールエーテル系化合物を得る工程と、前記ポリアルキレングルコールエーテル系化合物と不飽和モノカルボン酸とのエステル化反応、あるいは前記ポリアルキレングルコールエーテル系化合物と不飽和モノカルボン酸アルキルエステル(不飽和モノカルボン酸アルキルエステル中のアルキル基の炭素数は1〜22である)とのエステル交換反応により、下記式(4):
【0017】
【化4】

【0018】
式中、
2、R1は、それぞれ、上記と同じであり、R6〜R8は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である。

で表されるポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体を得る工程と、前記ポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体と、下記一般式(2):
【0019】
【化5】

【0020】
式中、
3、R4、およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH2pCOOH基であり(この際、pは、0〜2の整数である)、
Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基(有機アンモニウム基)である、
で表される不飽和カルボン酸系単量体と、を反応させてポリカルボン酸系重合体を得る工程と、を含む、セメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法によっても達成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、原料であるアルコールの水分含量に関わらず、減水性に優れたセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体を製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態である脱水装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例で得られた重合体のゲル浸透クロマトグラフィーのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態は、上記式(1)で示されるポリアルキレングリコールエーテル系単量体の原料である不飽和アルコールの脱水工程に特徴を有するセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法を提供する。本発明のポリアルキレングリコールエーテル系単量体は、セメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体を製造するための重合原料である。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体は、減水性に優れる。このため、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体をセメント混和剤として用いた場合、少量の添加量で、良好な分散性能を有するセメント混和剤が得られる。
【0024】
本発明の他の実施形態は、上記式(4)で示されるポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体の原料である飽和アルコールの脱水工程に特徴を有するセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法を提供する。本発明のポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体は、セメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体を製造するための重合原料である。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体は、減水性に優れる。このため、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体をセメント混和剤として用いた場合、少量の添加量で、良好な分散性能を有するセメント混和剤が得られる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下、不飽和アルコールと飽和アルコールとを、単にアルコールと称する場合がある。また、本明細書中、ポリアルキレングリコールエーテル系単量体について、「ポリアルキレングリコール系単量体組成物」とも称する場合がある。同様にして、ポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体、ポリカルボン酸系重合体アルキレングリコールエーテル系単量体についても、それぞれ、「ポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体組成物」、「ポリカルボン酸系重合体組成物」とも称する場合がある。
【0026】
(I)不飽和アルコールを原料とした場合
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法は、(A)Y1OH(YはCH2=CHR0−(CH2m−を表し、この際、R0は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは0〜2の整数である。)で表される2000ppm以上の水を含む不飽和アルコールを、水の含有量を2000ppm未満とする脱水工程と、(B)前記脱水工程を経て得られた不飽和アルコール(Y1OH)と、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを反応させて、下記一般式(1):
【0027】
【化6】

【0028】
式中、
1はCH2=CHR0−(CH2m−を表し、この際、R0は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは0〜2の整数であり、
1Oは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表わし、
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0より大きく500以下の数であり、
2は水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わす、
で表されるポリアルキレングリコールエーテル系単量体を得る工程と、(C)前記ポリアルキレングルコールエーテル系単量体と、下記一般式(2):
【0029】
【化7】

【0030】
式中、
3、R4、およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH2pCOOH基であり(この際、pは、0〜2の整数である)、
Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基(有機アンモニウム基)である、
で表される不飽和カルボン酸系単量体と、を反応させてポリカルボン酸系重合体を得る工程と、を含む。
【0031】
以下に、本発明の製造方法のそれぞれの工程について、好ましい実施形態を説明する。
【0032】
<脱水工程>
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法は、(A)Y1OH(式中、Y1はCH2=CHR0−(CH2m−を表し、この際、R0は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは0〜2の整数である)で表される2000ppm以上の水を含む不飽和アルコールを、水の含有量を2000ppm未満とする脱水工程を含む。
【0033】
1OH(不飽和アルコール)において、Y1はCH2=CHR0−(CH2m−を表し、この際、R0は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは0〜2の整数である。R0が炭素数1〜3のアルキル基を表す場合、炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルなどの直鎖または分岐のアルキル基が挙げられる。
【0034】
1OH(不飽和アルコール)において、Y1がCH2=CHR0−(CH2m−を表す場合、たとえば、ビニル基(CH2=CH−基)、1−メチル−ビニル基(CH2=C(CH3)−基)、2−プロペニル基(アリル基)(CH2=CHCH2−基)、2−メチル−2−プロペニル基(メタリル基)(CH2=C(CH3)−CH2−基)、3−メチル−3−ブテニル基(イソプレニル基)(CH2=C(CH3)−CH2CH2−基)、などが挙げられる。この中でも、ビニル基、2−プロペニル基(アリル基)、2−メチル−2−プロペニル基(メタリル基)、3−メチル−3−ブテニル基(イソプレニル基)が好ましく、2−メチル−2−プロペニル基(メタリル基)、3−メチル−3−ブテニル基(イソプレニル基)がより好ましく、2−メチル−2−プロペニル基(メタリル基)、3−メチル−3−ブテニル基(イソプレニル基)がさらに好ましい。
【0035】
本発明で用いられる不飽和アルコールとしては、たとえば、ビニルアルコール(CH2=CH−OH)、1−メチル−ビニルアルコール(CH2=C(CH3)−OH)、2−プロペン−1−オール(アリルアルコール)(CH2=CHCH2−OH)、2−メチル−2−プロペン−1−オール(メタリルアルコール)(CH2=C(CH3)−CH2−OH)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)(CH2=C(CH3)−CH2CH2−OH)、などが挙げられる。この中でも、ビニルアルコール、2−プロペン−1−オール(アリルアルコール)、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)が好ましく、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)がより好ましく、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)がさらに好ましい。
【0036】
本発明の製造方法の脱水工程は、2000ppm以上の水分を含む不飽和アルコールを脱水して、水分含量が2000ppm未満の不飽和アルコールとする工程である。
【0037】
脱水の方法としては、従来公知の脱水操作、具体的には、有機系や無機系の脱水剤を添加する方法、これらを充填した脱水塔を用いる方法、蒸留法、膜分離法などが挙げられるが、脱水剤を用いる方法が好ましく、その中でも脱水塔を用いる方法がより好ましい。脱水剤を用いる方法としては、脱水剤と、アルコールとを混合して、得られた混合物からアルコールを分離できればよく、容器の中で、脱水剤と、アルコールとを混合して、ろ過などによりアルコールを分離してもよい。また、脱水塔を用いる方法としては、カラムなどに脱水剤を充填し、アルコールをカラム通過させることで、脱水されたアルコールを分離できる。
【0038】
本発明の脱水工程において、水分を効率的に除去するために圧力をかけて、アルコールと脱水剤とを分離することができる。たとえば、ろ過の場合、加圧または吸引ろ過により、アルコールを脱水剤から分離することができる。この際、加圧または吸引ろ過は、窒素、アルゴンなどの不活性ガスの存在下で行うのが好ましく、たとえば、加圧ろ過は、不活性ガスで加圧することで実施でき、吸引ろ過は、窒素雰囲気下、減圧しながら行うことができる。また、加圧または吸引ろ過をする際の温度は、特に制限されないが、5〜60℃であるのが好ましい。
【0039】
有機系や無機系の脱水剤としては、従来公知の脱水剤が使用でき、これらの具体例としては、たとえば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水酢酸などの酸無水物としての有機系脱水剤、モレキュラーシーブ(3A)、モレキュラーシーブ(4A)、モレキュラーシーブ(5A)、シリカなどのゼオライト類の無機酸化物としての無機系脱水剤、塩化カルシウム(無水)、硫酸カルシウム(無水)、塩化マグネシウム(無水)、硫酸マグネシウム(無水)、炭酸カリウム(無水)、硫化カリウム(無水)、亜硫化カリウム(無水)、硫酸ナトリウム(無水)、亜硫酸ナトリウム(無水)、硫酸銅(無水)、水素化カルシウム(無水)などの無機無水塩類としての無機系脱水剤が挙げられる。
【0040】
これらの脱水剤のうちでも、モレキュラーシーブ(3A)、モレキュラーシーブ(4A)、モレキュラーシーブ(5A)、シリカ、塩化カルシウム(無水)、硫酸カルシウム(無水)、塩化マグネシウム(無水)、硫酸マグネシウム(無水)、炭酸カリウム(無水)が好ましく、モレキュラーシーブ(3A)、モレキュラーシーブ(4A)、モレキュラーシーブ(5A)、硫酸マグネシウム(無水)がより好ましい。
【0041】
特に、脱水塔に充填する脱水剤は、脱水剤の細孔分布の制御技術が優れているゼオライト、たとえば合成ゼオライトを使用し、細孔径を3〜4Åに限定したものが好ましく、分子篩い効果により溶剤中に含有する不純物の中から水分だけを選択的に吸着分離する。すなわち、モレキュラーシーブ(3A)、モレキュラーシーブ(4A)が好ましい。また、アルコール中の不純物が、これらの脱水剤により除去されてもよい。また、脱水剤は、1種で用いても、2種以上を種々組み合わせて使用してもよい。また、これらの脱水剤の形状は、ペレット状、ビーズ状、トライシブ(Trisiv)状、パウダー状、メッシュ状、顆粒状など、特に制限されず用いることができる。
【0042】
本発明で用いられる脱水剤としては、さらに再生可能な脱水剤が好ましい。再生の方法としては、熱再生方式、圧力変動再生方式、パージガス脱着方式、置換再生方式のいずれであってもよい。熱再生方式としては、脱水剤に、加熱した空気、窒素、水素等を送風したり、導入することで脱水剤を加熱する直接加熱法であっても、脱水剤を充填した容器を加熱することで脱水剤を加熱する間接加熱法であってもよい。これらの加熱方法は、脱水剤を充填した脱水塔を用いて行うこともできる。圧力変動再生方式は、脱水操作を高圧で操作し、脱着の際は、温度を脱水時のままにして圧力のみを常圧または常圧以下とすることで、水を吸着した脱水剤を再生する方法である。パージガス脱着方式とは、吸着しにくいパージガスを用いて、吸着した水の分圧を下げることにより脱着を行う方法である。また、置換再生方式とは、より吸着されやすい物質を用いて、吸着されている水と置換させる方法である。本発明において、熱再生方式が好ましく用いられ、したがって、加熱により再生される脱水剤が好ましいため、モレキュラーシーブ(3A)、モレキュラーシーブ(4A)、モレキュラーシーブ(5A)が特に好ましく用いられる。
【0043】
また、本発明で用いられる脱水剤は、特に、原料のアルコールの分子量が200未満な場合、3A、4Aが好ましく、3Aがより好ましい。
【0044】
本発明を実施するための好ましい装置の1例として図1に脱水装置100の概略図を示す。
【0045】
図1において、脱水装置100は、タンク2と、回収タンク9とを備え、これらタンク2と回収タンク9とは、連通管8および脱水塔7を介して連通している。また、連通管8と脱水塔7との間には、溶剤ポンプ5が備えられている。そして、脱水塔7には脱水剤が充填されている。
【0046】
タンク2は、連通管1を通して導入される溶剤が入る溶剤槽であり、まず原料である未処理アルコール(水含有アルコール)がタンク2に導入される。次に、溶剤ポンプ5を自動運転して、未処理アルコールは、溶剤ポンプ5を通って移送され、流量計6、脱水剤が充填された脱水塔7に導入される。最適処理流量は、流量計6の指示値が設定流量になるように流量計で調整する。流量が所定流量を越える時は溶剤ポンプ5から流量計6に通じる配管の途中に分岐させた循環配管のタンク循環弁4で調整する。タンク2内の上方と下方には溶剤の液面を検知するフロートスイッチ3を有している。タンク2の液面が下限になると溶剤ポンプ5は空運転防止の為、自動停止する。
【0047】
脱水塔7より、脱水されたアルコール(脱水アルコール)が排出され、脱水アルコールは回収タンク9に移送されて貯蔵される。この回収タンク9の上方と下方には液面を検知するフロートスイッチ10を有しており、脱水アルコールにより回収タンク9の液面が上限になると溶剤ポンプ5は自動停止する。
【0048】
脱水アルコールは回収タンク抜き出しポンプ11で必要量を抜き出して利用できる。回収タンク9の液面が下限になると回収タンク抜き出しポンプ11は空運転防止の為、自動停止する。
【0049】
当該装置100は、窒素導入口13より、窒素を導入し、装置内を窒素で満たすことができる。また、タンク2、脱水塔7、回収タンク9、および連通管1、8、12は、SUS304またはSUS316等のステンレス鋼からなるのが好ましい。
【0050】
本発明において、脱水塔の塔高さは特に限定されないが、下記式で示される「接触時間が2分以上であることが好ましい。
【0051】
【数1】

【0052】
脱水塔に供給される処理液(アルコール)は、特に限定されないが、接触時間が2分以上であるのが好ましく、2.5分以上がより好ましく、3.0分以上がさらに好ましい。接触時間の上限は、特に制限されないが、120分以内であるのが好ましい。
【0053】
脱水塔に供給される処理液(アルコール)及び、脱水時の温度は、特に制限されないが、60℃未満であることが好ましい。
【0054】
脱水塔への処理液(アルコール)の供給は、上部あるいは底部いずれからでもよいが、ショートパスや偏流を防止し、処理液と吸着剤との均一接触を図るため、塔の底部より導入するほうが好ましい。
【0055】
本発明の脱水工程において、脱水剤を充填した脱水塔を使用する場合、脱水剤は、直接、脱水塔に充填してもよいが、充填および交換時の作業性から塔の大きさに合わせた袋に脱水剤を充填したカートリッジタイプにするほうが好ましい。また、必要に応じて紐等で連結することにより、脱水塔の塔高さが高くなっても交換しやすく交換時間が短縮できる。
【0056】
本発明で用いられるアルコールは、2000ppm以上の水分を含むものであり、脱水工程により2000ppm未満とする。本発明で用いられるアルコールの水分含量の上限は、特に制限されず、水分含量が多い場合には、上述した脱水塔の塔高さを増やして、処理に用いられる脱水剤の量を増やしたり、脱水塔を多段式にしたりすることで、十分に水分を除去できる。たとえば、水分含量が2000〜5000ppm程度の水分を含むアルコールであれば、本発明の脱水工程で好適に脱水される。また、脱水処理を施したアルコールの水分含量としては、特に制限されないが、5000ppm以下が好ましく、4500ppm以下がより好ましく、4000ppm以下がさらに好ましく、3500ppm以下が特に好ましい。原料のアルコールの水分含量を当該範囲とすることで、減水性に優れたセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体が得られる。
【0057】
また、たとえば、2000〜5000ppmの水分を含むアルコールの場合、使用アルコールの20重量%以上のモレキュラーシーブス(3Aまたは4A)で十分に水分を除去できる。また、モレキュラーシーブスの使用量の上限としては、特に制限されないが、使用アルコールの200重量%以下であるのが好ましい。
【0058】
以上のように、原料のアルコールが脱水工程を経ることにより、水分含量が低くなる。原料のアルコールに水が含有されていると、次の工程で、水にアルキレンオキシドが付加して、ポリエチレングリコールが副生する。そうするとポリアルキレングリコールエーテル系単量体中にポリエチレングリコールが含有されてしまうため、その後、得られるポリカルボン酸系重合体にも含有されてしまい、セメント混和剤として用いる際に減水性が低下してしまう。本発明の製造方法によれば、原料のアルコールの水分含量を管理することができるため、セメント混和剤として安定した性能のポリカルボン酸系重合体を提供できる。
【0059】
<ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を得る工程>
次に、上記の脱水工程を経て得られたアルコールを用いて、ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を製造する。
【0060】
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法は、(B)前記脱水工程を経て得られたアルコールと、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを反応させて、下記一般式(1):
【0061】
【化8】

【0062】
式中、
1はCH2=CHR0−(CH2)m−を表し、この際、R0は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは0〜2の整数であり、
1Oは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表わし、
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0より大きく500以下の数であり、
2は水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わす、
で表されるポリアルキレングリコールエーテル系単量体を得る工程(以下、当該工程を「工程(B)」とも称する。)を含む。
【0063】
本発明の工程(B)は、Y1OHで表される不飽和アルコールと炭素数2〜18のアルキレンオキシドとを、たとえば、アルカリ触媒存在下で付加反応させて、ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を得る反応工程を含む。当該反応工程において、付加反応は、従来公知の方法で行うことができ、たとえば、窒素などの不活性ガスの雰囲気下、アルカリ触媒存在下に混合撹拌することで反応を行うことができる。なお、炭素数が小さいアルキレンオキシドは、常温・常圧では気体状であるので、オートクレーブなどの耐圧容器を用いて加圧下で付加反応を行う必要がある。
【0064】
付加反応で用いられる不飽和アルコール(Y1OH)は、上記したように、脱水工程により、水分含量が2000ppm未満とされた不飽和アルコールを用いる。たとえば、水分含量が好ましくは0〜2000ppm、より好ましくは50〜1800ppm、さらに好ましくは100〜1500ppm程度の水分を含む不飽和アルコールを用いる。不飽和アルコールの種類については、上述したため省略する。
【0065】
付加反応で用いられるアルキレンオキシドは、上述した化学式(1)における(R1O)nの由来となる。よって、アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを用いることができ、好ましくは炭素数2〜8、より好ましくは炭素数2〜4である。炭素数2〜18のアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシドなどが挙げられる。この中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい。これらのアルキレンオキシドは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上のアルキレンオキシドを併用する場合には、たとえば、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で付加してもよい。2種以上のアルキレンオキシドを用いる場合は、エチレンオキシドを必須成分として用いることが好ましい。
【0066】
アルキレンオキシドの平均付加モル数は、0より大きく500以下の数である。平均付加モル数が減少すると不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体の親水性が低下し、逆に、平均付加モル数が増大すると不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体の反応性が低下する。それゆえ、アルキレンオキシドの平均付加モル数は、好ましくは2〜250、より好ましくは3〜200、さらに好ましくは4〜150、さらに好ましくは10〜75である。
【0067】
本発明の工程(B)で用いられる触媒としてはアルカリ触媒が好ましい。
【0068】
アルカリ触媒としては、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物;n−ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ナトリウムアミド;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物などが挙げられる。これらのアルカリ触媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、取り扱いやすさや経済性などの観点から、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシドが好ましく、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの場合、低沸点化合物の発生がないため、特に好ましい。
【0069】
本発明の工程(B)で用いられるアルカリ触媒の量は、通常、アルコールとアルキレンオキシドとの総量100重量%に対して、0.001〜10重量%、好ましくは0.005〜6重量%、より好ましくは0.01〜4重量%、さらに好ましくは0.025〜3重量%、特に好ましくは0.03〜2重量%である。アルカリ触媒が0.001〜10重量%の範囲で含有されている場合、後述する付加反応の進行に好適なため、好ましい。
【0070】
本発明の工程(B)は不活性ガス存在下で行うことが好ましい。本発明の工程(B)で用いられる不活性ガスとしては、たとえば、ヘリウム、アルゴン、窒素などが挙げられる。これらの不活性ガスは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの不活性ガスのうち、入手しやすさや経済性の観点から、窒素が特に好適である。
【0071】
ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を製造するための付加反応の温度は、特に制限はないが、付加反応の温度が高くなると、熱分解が進み、副生するポリエチレングリコールの量が増加するので、これが反応液に所定量だけ含まれるように、好ましくは80〜170℃の範囲である。より好ましくは90〜160℃、さらに好ましくは90〜150℃である。
【0072】
また、付加反応の圧力は、付加反応が円滑に進行するように適宜調整すればよく、特に限定されるものではないが、1.0MPa以下、好ましくは0.9MPa以下、より好ましくは0.8MPa以下である。付加反応の時間は、不飽和アルコールの仕込み量やアルキレンオキシドの添加量に応じて適宜調整すればよく、特に制限されるものではないが、たとえば、0.5〜24時間、好ましくは1〜20時間の範囲内である。
【0073】
不飽和アルコールに付加するアルキレンオキシドの平均付加モル数は、不飽和アルコールの仕込み量とアルキレンオキシドの添加量とにより決定される。しかし、不飽和アルコールに対して、所望量のアルキレンオキシドを一回の反応で付加してもよいし、複数回の反応で付加してもよい。たとえば、不飽和アルコールに対して、最初の反応で、所望量より少ないアルキレンオキシドを付加し、得られた不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加体に対して、それ以降の反応で、残りの量のアルキレンオキシドを付加してもよい。
【0074】
本発明の工程(B)において用いられうる安定化剤としては、たとえば、ジチオカルバミン酸塩類、マンガン塩、ヒドロキシアミン化合物、ニトロソ化合物、N−オキシル化合物などの重合防止剤が挙げられる。これら重合防止剤を用いる場合、その合計の使用量は、不飽和アルコールとアルキレンオキシドとの総量に対して、100〜1000重量ppmであるのが好ましい。当該範囲であれば、重合への影響が軽微である。
【0075】
付加反応の終了後、反応系をpH5.5〜8程度まで中和してもよい。中和に用いられる酸としては、特に制限されないが、硫酸、酢酸、リン酸、硝酸、クエン酸、スルホン酸(メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸など)などが用いられうる。
【0076】
本発明の工程(B)により得られるポリアルキレングリコールエーテル系単量体は、下記化学式(1)で表される。
【0077】
【化9】

【0078】
化学式(1)中、Y1はCH2=CHR0−(CH2)m−を表し、この際、R0は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは0〜2の整数である。Y1については上述したため省略する。
【0079】
化学式(1)中、R1Oは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表す。R1Oは、好ましくは、炭素数2〜8のオキシアルキレン基の1種または2種以上であり、より好ましくは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上である。
【0080】
すなわち、上記式(1)中、R1Oとしては、たとえば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基が挙げられる。この中でも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましく、オキシエチレン基、オキシプロピレン基がより好ましい。また、場合によっては、(R1O)nで表される繰り返し単位中に2以上の異なるR1O構造が存在していてもよい。ただし、ポリオキシアルキレン鎖の製造の容易性や構造の制御のし易さを考慮すると、(R1O)nで表される繰り返し構造は、同一のR1O構造の繰り返しであることが好ましい。なお、2以上の異なるR1O構造が存在する場合、これらの異なるR1O構造は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態で存在していてもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましい。より具体的には、全オキシアルキレン基100モル%に対し、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましい。
【0081】
化学式(1)において、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。nは、0より大きく500以下の数であり、好ましくは2〜250、より好ましくは3〜200、さらに好ましくは4〜150、さらに好ましくは5〜75である。オキシアルキレン基の平均付加モル数nが1以上であれば、得られる重合体の親水性が確保され、分散性能が向上しうるため、好ましい。また、オキシアルキレン基の平均付加モル数nが500以下であれば、反応工程における反応性が十分に確保されうるため、好ましい。なお、「平均付加モル数」とは、化合物1モル中において付加しているオキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。
【0082】
化学式(1)において、R2は水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基である。R2は、アルコールに付加したアルキレンオキシドの末端を意味する。ここで、炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、たとえば、置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6〜30のアリール基、あるいは置換もしくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基を表す。
【0083】
炭素数1〜30のアルキル基としては、直鎖、分岐、または環状のアルキル基のいずれでもよく、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基(アミル基)、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコサニル基、i−プロピル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、i−アミル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、t−アミル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−エチル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、t−オクチル基、分岐したノニル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基(C7)、アダマンチル基(C10)、シクロペンチルエチル基等の直鎖、分岐または環状のアルキル基が好適に挙げられる。R2は、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基が好ましく、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基がより好ましい。また、該アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がさらに好ましい。
【0084】
本発明において、R2で表されるアリール基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよい。該アリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。
【0085】
炭素数6〜30のアリール基としては、たとえば、フェニル基、アルキルフェニル基、アルキルフェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0086】
本発明において、R2で表されるアラルキル基は、無置換でもよいし置換基を有していてもよい。該アラルキル基としては、炭素数7〜30のアラルキル基が好ましい。
【0087】
2で表される炭素数7〜30のアラルキル基としては、たとえば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、スチリル基(Ph−CH=C−基)、シンナミル基(Ph−CH=CHCH2−基)、1−ベンゾシクロブテニル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基等が好適に挙げられる。
【0088】
2で表される基が置換基を有する場合、置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基などが挙げられる。
【0089】
2の炭化水素基の炭素原子数が増大するに従って疎水性が大きくなり、分散性が低下するため、R2が炭化水素基の場合、炭素数としては、1〜22が好ましく、1〜18がより好ましく、1〜12がさらに好ましく、1〜4が特に好ましい。
【0090】
ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は、特定の重量平均分子量を有する重合体であることが好ましい。重量平均分子量は、たとえば、ゲル浸透パーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)によるポリエチレングリコール換算での重量平均分子量として求めることができる。
【0091】
得られたポリアルキレングリコールエーテル系単量体は、重合体を高純度で得る上で、ポリアルキレングリコール含有量を、好ましくは10重量%以下、より好ましくは9重量%以下、8重量%、さらに好ましくは7.5重量%に抑制するのが好ましい。なお、下限は特に制限されない。本発明においては、ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を製造する前に、原料のアルコールに脱水工程を行っているため、上記範囲内にポリアルキレングリコール含有量を抑制することができる。なお、ポリアルキレングリコールの含有量は、後述する実施例のGPCにより測定することができる。
【0092】
<ポリカルボン酸系重合体を得る工程>
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法は、(C)前記ポリアルキレングルコールエーテル系単量体と、下記一般式(2):
【0093】
【化10】

【0094】
式中、
3、R4、およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH2pCOOH基であり(この際、pは、0〜2の整数である)、
Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基(有機アンモニウム基)である、
で表される不飽和カルボン酸系単量体と、を反応させてポリカルボン酸系重合体を得る工程(以下、当該工程を「工程(C)」とも称する。)を含む。
【0095】
上記で得られた不飽和ポリアルキレングルコールエーテル系単量体を原料として、重合開始剤の存在下で、化学式(2)で表される不飽和カルボン酸系化合物(単量体)と反応させることで、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体および不飽和カルボン酸系単量体がそれぞれ有する不飽和二重結合のラジカル重合が進行し、これらの共重合体(ポリカルボン酸系重合体)が得られる。この共重合体をセメント混和剤として用いることで、減水性に優れたセメント混和剤が得られる。
【0096】
以下、セメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法について述べる。
【0097】
セメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体は、上述した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体と、
下記化学式(2):
【0098】
【化11】

【0099】
式中、
3、R4、およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH2pCOOH基であり(この際、pは、0〜2の整数である)、
Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基(有機アンモニウム基)である、
で表される不飽和カルボン酸系単量体と、を反応させて得られる。
【0100】
上記化学式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩を挙げることができ、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの不飽和カルボン酸系単量体のうち、重合性の点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびこれらの一価金属塩が好ましく、アクリル酸、マレイン酸およびこれらの一価金属塩がより好ましい。
【0101】
上述した原料化合物(単量体)の使用量について特に制限はないが、好ましい形態として、上述した2つの原料化合物(単量体)の全量100重量%に対して、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体および不飽和カルボン酸系単量体をそれぞれ1重量%以上含むとよい。また、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体の含有量は、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上であり、さらに好ましくは20重量%以上であり、特に好ましくは40重量%以上である。かような形態とすることで、得られる共重合体をセメント分散剤として用いた際の分散性能に優れる。また、重合反応をスムーズに進行させるという観点からは、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の繰り返し単位は、得られる共重合体の全繰り返し単位の50モル%以下であることが好ましい。さらに、セメント分散剤としての使用時の分散性能を向上させるという観点からは、不飽和カルボン酸系単量体が(メタ)アクリル酸(塩)を必須に含有することが好ましい。
【0102】
なお、当該反応工程では、上述した2つの原料化合物(単量体)に加えて、これらと共重合可能な他の単量体をさらに共重合させてもよい。なお、他の単量体の使用量は、原料化合物(単量体)の全量100重量%に対して、好ましくは0〜70重量%であり、より好ましくは0〜50重量%であり、さらに好ましくは0〜30重量%であり、特に好ましくは0〜10重量%である。他の単量体としては、上述した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体および不飽和カルボン酸系単量体と共重合可能な化合物であれば特に制限されず、下記の化合物の1種または2種以上が用いられうる。
【0103】
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素原子数1〜30のアルコールに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類。
【0104】
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類。
【0105】
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテルあるいはアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体。
【0106】
上記不飽カルボン酸系単量体と不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体との反応においては、必要に応じて溶媒が使用されうる。溶媒としては特に限定されず、たとえば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられるが、原料化合物および得られる共重合体の溶解性から、水および炭素原子数1〜4の低級アルコールからなる群から選択される少なくとも1種を溶媒として用いることが好ましく、その中でも水を溶媒に用いるのが、脱溶媒工程を省略できる点でさらに好ましい。
【0107】
上記反応工程における反応を進行させるには、重合開始剤を用いて上述した原料(不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系化合物単量体)、および必要に応じて他の単量体を共重合させればよい。共重合は、溶液重合や塊状重合等の公知の方法で行うことができる。溶液重合は回分式でも連続式でも行うことができ、その際に使用される溶媒としては特に限定されず、たとえば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられるが、原料化合物および得られる共重合体の溶解性から、水および炭素原子数1〜4の低級アルコールからなる群から選択される少なくとも1種を溶媒として用いることが好ましく、その中でも水を溶媒に用いるのが、脱溶剤工程を省略できる点でさらに好ましい。
【0108】
反応工程において水溶液重合を行なう場合には、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、たとえば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2'−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2'−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤等が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。中でも、過酸化水素とL−アスコルビン酸(塩)等の促進剤との組み合わせが好ましい。これらのラジカル重合開始剤や促進剤はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、水溶液重合を行なう際の重合温度は特に制限されないが、たとえば、25〜99℃であり、好ましくは50〜95℃であり、より好ましくは60〜92℃であり、さらに好ましくは65〜90℃である。なお、「重合温度」とは、反応系における反応溶液の温度を意味する。
【0109】
また、低級アルコール、芳香族もしくは脂肪族炭化水素、エステル化合物、または、ケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合には、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ナトリウムパーオキサイド等のパーオキサイド;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等がラジカル重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤、または、ラジカル重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。なお、溶液重合を行なう際の重合温度は特に制限されないが、たとえば、25〜99℃であり、好ましくは40〜90℃であり、より好ましくは45〜85℃であり、さらに好ましくは50〜80℃である。
【0110】
さらに塊状重合を行う場合には、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ナトリウムパーオキサイド等のパーオキサイド;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を用い、50〜200℃の温度で行なわれる。
【0111】
各原料の反応器への投入方法は特に限定されず、全量を反応器に初期に一括投入する方法、全量を反応器に分割もしくは連続投入する方法、一部を反応器に初期に投入し、残りを反応器に分割もしくは連続投入する方法のいずれでもよい。具体的には、不飽和カルボン酸系単量体と不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体の全部を反応容器に連続投入する方法、不飽和カルボン酸系単量体の一部を反応容器に初期に投入し、不飽和カルボン酸系単量体の残りと不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体の全部を反応容器に連続投入する方法、あるいは、不飽和カルボン酸系単量体の一部と不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体の一部を反応容器に初期に投入し、不飽和カルボン酸系単量体の残りと不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体の残りをそれぞれ反応容器に交互に数回に分けて分割投入する方法等が挙げられる。さらに、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的または段階的に変えることにより各単量体の単位時間当りの投入重量比を連続的または段階的に変化させて、共重合体中の繰り返し単位の構成比率が異なる共重合体の混合物を重合反応中に合成するようにしてもよい。なお、ラジカル重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでもよいし、反応器へ滴下してもよいし、目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
【0112】
得られる共重合体の分子量を調整する目的で、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては特に限定されず、たとえば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;等が挙げられる。これらは1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。さらに、得られる共重合体の分子量を調整する目的には、「他の単量体」として(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。また、連鎖移動剤は、反応容器に初めから仕込んでもよいし、反応器へ滴下してもよいし、目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
【0113】
反応工程において得られる重合体の重量平均分子量について特に制限はないが、一例として、好ましくは3,000〜1,000,000であり、より好ましくは5,000〜500,000であり、さらに好ましくは10,000〜100,000である。かような範囲内の値であれば、反応の制御や重合物が取り扱いやすく、分散剤として十分な性能を発揮することができるという利点がある。
【0114】
(II)飽和アルコールを原料とした場合
以下、本発明の他の形態であるセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法について説明する。
【0115】
本発明の他の形態であるセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法は、(P)Y2OH(Y2は炭素数1〜4のアルキル基である。)で表される2000ppm以上の水を含む飽和アルコールを脱水して、水の含有量を2000ppm未満とする脱水工程と、(Q)前記脱水工程を経て得られた飽和アルコールと、炭素数2〜18のアルキレンオキシドとを反応させて、下記一般式(3):
【0116】
【化12】

【0117】
式中、
2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは0〜2の整数であり、
1Oは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表わし、
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0より大きく500以下の数であり、
で表されるポリアルキレングリコールエーテル系化合物を得る工程と、(R)前記ポリアルキレングルコールエーテル系化合物と不飽和モノカルボン酸とのエステル化反応、あるいは前記ポリアルキレングルコールエーテル系化合物と不飽和モノカルボン酸アルキルエステル(不飽和モノカルボン酸アルキルエステル中のアルキル基の炭素数は1〜22である)とのエステル交換反応により、下記式(4):
【0118】
【化13】

【0119】
式中、
2、R1は、それぞれ、上記と同じであり、R6〜R8は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である、
で表されるポリアルキレングリコールエーテル−不飽和モノカルボン酸エステル系単量体を得る工程と、(S)前記ポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体と、下記一般式(2):
【0120】
【化14】

【0121】
式中、
3、R4、およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH2pCOOH基であり(この際、pは、0〜2の整数である)、
Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基(有機アンモニウム基)である、
で表される不飽和カルボン酸系単量体と、を反応させてポリカルボン酸系重合体を得る工程と、を含む。
【0122】
以下に、本発明の製造方法のそれぞれの工程について、好ましい実施形態を説明する。
【0123】
<脱水工程>
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法は、(P)Y2OH(Y2は炭素数1〜4のアルキル基である。)で表される2000ppm以上の水を含む飽和アルコールを脱水して、水の含有量を2000ppm未満とする脱水工程(以下、当該工程を「工程(P)」とも称する。)を含む。
【0124】
2OH(飽和アルコール)において、Y2が炭素数1〜4のアルキル基の場合、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの直鎖または分岐のアルキル基が挙げられる。
【0125】
本発明で用いられる飽和アルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノールなどが挙げられる。これらのうちでも、メタノール、エタノールが好ましく用いられる。
【0126】
工程(P)の脱水処理については、上記工程(A)の脱水処理と同様に行うことができるため、詳細は省略する。すなわち、工程(A)で用いた不飽和アルコールを、飽和アルコールとすることで、工程(P)となる。
【0127】
なお、本発明で用いられる飽和アルコールは、2000ppm以上の水分を含むものであり、脱水工程により2000ppm未満とする。本発明で用いられる飽和アルコールの水分含量の上限は、特に制限されず、水分含量が多い場合には、上述した脱水塔の塔高さを増やして、処理に用いられる脱水剤の量を増やしたり、脱水塔を多段式にしたりすることで、十分に水分を除去できる。たとえば、水分含量が2000〜5000ppm程度の水分を含むアルコールであれば、本発明の脱水工程で好適に脱水される。また、脱水処理を施したアルコールの水分含量としては、特に制限されないが、5000ppm以下が好ましく、4500ppm以下がより好ましく、4000ppm以下がさらに好ましく、3500ppm以下が特に好ましい。原料のアルコールの水分含量を当該範囲とすることで、減水性に優れたセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体が得られる。
【0128】
工程(P)において、原料の飽和アルコールが脱水工程を経ることにより、水分含量が低くなる。原料のアルコールに水が含有されていると、次の工程で、水にアルキレンオキシドが付加して、ポリエチレングリコールが副生する。副生したポリエチレングリコールはエステル化工程においてジエステルを形成する。ジエステルは重合反応時に架橋剤となり、ポリマーの分散性能を低下させる。本発明の製造方法によれば、原料のアルコールの水分含量を管理することができるため、セメント混和剤として安定した性能のポリカルボン酸系重合体を提供できる。
【0129】
<ポリアルキレングリコールエーテル系化合物を得る工程>
次に、上記の脱水工程を経て得られたアルコールを用いて、ポリアルキレングリコールエーテル系化合物を製造する。
【0130】
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法は、(Q)前記脱水工程を経て得られた飽和アルコールと、炭素数2〜18のアルキレンオキシドとを反応させて、下記一般式(3):
【0131】
【化15】

【0132】
式中、
2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは0〜2の整数であり、
1Oは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表わし、
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0より大きく500以下の数であり、
で表されるポリアルキレングリコールエーテル系化合物を得る工程(以下、当該工程を「工程(Q)」とも称する。)を含む。
【0133】
本発明の工程(Q)は、Y2OHで表されるアルコールと炭素数2〜18のアルキレンオキシドとを、たとえば、アルカリ触媒存在下で付加反応させて、ポリアルキレングリコールエーテル系化合物を得る反応工程を含む。当該反応工程において、付加反応は、従来公知の方法で行うことができ、たとえば、窒素などの不活性ガスの雰囲気下、アルカリ触媒存在下に混合撹拌することで反応を行うことができる。なお、工程(Q)は、上記した工程(B)と同様に行うことができるため、詳細は省略する。すなわち、工程(B)で用いた不飽和アルコールを、飽和アルコールとすることで、工程(Q)となる。
【0134】
付加反応で用いられる飽和アルコール(Y2OH)は、上記したように、脱水工程により、水分含量が2000ppm以下のアルコールを用いる。アルコールの種類については、上述したため省略する。
【0135】
<ポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体を得る工程>
次に、上記の工程(Q)を経て得られたポリアルキレングリコールエーテル系化合物を用いて、ポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体を製造する。
【0136】
すなわち、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法は、(R)
前記ポリアルキレングルコールエーテル系化合物と不飽和モノカルボン酸とのエステル化反応、あるいは前記ポリアルキレングルコールエーテル系化合物と不飽和モノカルボン酸アルキルエステル(不飽和モノカルボン酸アルキルエステル中のアルキル基の炭素数は1〜22である)とのエステル交換反応により、下記式(4):
【0137】
【化16】

【0138】
式中、
2、R1は、それぞれ、上記と同じであり、R6〜R8は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である、
で表されるポリアルキレングリコールエーテル−不飽和モノカルボン酸エステル系単量体を得る工程(以下、当該工程を「工程(R)」とも称する。)を含む。
【0139】
エステル化反応に使用される不飽和カルボン酸系化合物としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩を挙げることができ、これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの不飽和カルボン酸系化合物のうち、重合性の点から、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの一価金属塩が好ましい。
【0140】
エステル交換反応時の不飽和モノカルボン酸アルキルエステル(不飽和モノカルボン酸アルキルエステル中のアルキル基の炭素数は1〜22である)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜22のアルコールとのエステル類
エステル化およびエステル交換反応工程における原料のポリアルキレングリコールエーテル系化合物は、1種のものを単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用してもよい。
【0141】
上記エステル化およびエステル交換反応工程で使用される上記原料の混合比率は、化学量論的には、ポリアルキレングリコールエーテル系化合物と、不飽和カルボン酸系化合物または不飽和モノカルボン酸エステル類とが、1:1(モル比)であるが、実際には、エステル化反応が効率良く進行する範囲であれば特に制限されるものではなく、通常、一方の原料を過剰に使用してエステル化反応を速めたり、目的のエステル化物の精製面からは、蒸留留去し易いより低沸点の原料を過剰に使用する。また、エステル化反応時に生成する水、アルコールを、溶媒と共沸して、系内から水、アルコールを除去するのが好ましい。
【0142】
エステル化反応は、酸触媒の存在下で行うことが好ましい。酸触媒の存在下で反応を行うことにより、反応を速やかに進行させることができる。エステル化反応において使用することのできる酸触媒としては、たとえば、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸水和物、キシレンスルホン酸、キシレンスルホン酸水和物、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸水和物、トリフルオロメタンスルホン酸、「Nafion」レジン、「Amberlyst 15」レジン、リンタングステン酸、リンタングステン酸水和物、塩酸などが挙げられ、これらのうち、硫酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸水和物、メタンスルホン酸などが好ましく使用される。
【0143】
エステル交換反応は、硫酸、パラトルエンスルホン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酸化スズ等の酸又は塩基からなる均一系触媒、または酸性ゼオライト触媒、や、アルミニウム酸化物及び/ 又は鉄酸化物を含有する触媒等からなる不均一系触媒が挙げられる。これらのうち、不均一系触媒が好ましく使用される。
【0144】
上記酸触媒の使用量としては、所望の触媒作用を有効に発現することができる範囲であれば特に制限されるものではないが、原料(ポリアルキレングリコールエーテル系化合物および不飽和カルボン酸系化合物)の総量100重量%に対して、0.001〜10重量%、好ましくは0.005〜6重量%、より好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.025〜3重量%、特に好ましくは0.03〜2.5重量%である。
【0145】
上記酸触媒の反応系への添加のし方は、一括、連続、または順次行ってもよいが、作業性の面からは、反応槽に、原料と共に一括で仕込むのが好ましい。
【0146】
また、上記エステル化反応、エステル交換反応においては、重合禁止剤の存在下で反応を行ってもよい。重合禁止剤を用いることにより、原料のポリアルキレングリコールエーテル系化合物および不飽和カルボン酸系化合物、生成物のエステル化物またはこれらの混合物の重合を防止することできる。上記エステル化反応において使用できる重合禁止剤としては、公知の重合禁止剤が使用できるものであり、特に制限されるものではなく、たとえば、フェノチアジン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、ジ−p−フルオロフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ベンゾキノン、ハイドロキノン、メトキノン、ブチルカテコール、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド、クペロン、塩化銅(II)などが挙げられる。これらのうち、脱水溶剤や生成水の溶解性の理由から、フェノチアジン、ハイドロキノン、メトキノンが好ましく使用される。これらの重合禁止剤は、単独で使用してもよいほか、2種以上を混合して使用することもできる。とりわけ、フェノチアジン、ハイドロキノン、メトキノンが、上記したように、エステル化反応終了後に、溶剤を水との共沸により留去する際にも、弱いながらも重合活性のある水溶性重合禁止剤を用いなくても極めて有効に重合禁止能を発揮することができ、高分子量体の形成を効果的におさえることができる点から極めて有用である。
【0147】
上記重合禁止剤の使用量は、原料(ポリアルキレングリコールエーテル系化合物および不飽和カルボン酸系化合物)の総量100重量%に対して、0.001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%の範囲内である。重合禁止剤の使用量が上記範囲であれば、重合禁止能の発現が十分であり、原料のアルキレンオキシド付加ポリマーとアクリル酸、生成物のエステル化物またはこれらの混合物の重合を防止することできる。
【0148】
さらに、エステル化反応およびエステル交換反応は溶剤中で行うこともできる。エステル化において、溶剤は、エステル化反応により生成する水、アルコールを、効率よく共沸させることができる。溶剤としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、クロロベンゼン、イソプロピルエーテルなどが挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上のものを混合溶剤として使用することができる。これらのうち水との共沸温度が150℃以下、より好ましくは60〜90℃の範囲であるものが好ましく、具体的には、シクロヘキサン、トルエン、ジオキサン、ベンゼン、イソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタンなどが挙げられる。水との共沸温度が150℃以下であれば、取り扱いの面(反応時の反応系内の温度管理および共沸物の凝縮液化処理などの制御等を含む)から好ましい。
【0149】
上記溶剤は、反応により生成した水と共沸して、水を凝縮液化して、反応系外に分離除去しながら還流させることが好ましく、この際、溶剤の使用量は、原料としてのポリアルキレングリコールエーテル系化合物および不飽和カルボン酸系化合物、または不飽和カルボン酸エステル系化合物の総量100重量%に対して、1〜100重量%、好ましくは2〜50重量%の範囲内である。溶剤の使用量が上記範囲内であれば、エステル化反応中に生成する水を、共沸により反応系外に十分除去でき、エステル化の平衡反応が進行しやすくなるため、好ましい。
【0150】
本発明において、エステル化反応は、回分式または連続式いずれによっても行ないうるが、回分式で行うことが好ましい。
【0151】
また、エステル化反応における反応条件は、エステル化反応が円滑に進行する条件であればよいが、たとえば、反応温度は、好ましくは30〜140℃、より好ましくは60〜130℃、さらに好ましくは90〜125℃、特に好ましくは100〜120℃である(なお、これらは、本発明の一般的な(広い意味での)エステル化反応の条件であり、上述した溶剤を反応系外に、反応により生成した水と共沸させ、水を凝縮液化して分離除去しながら還流させる場合は、その1例であり、これらの範囲内に含まれるが、完全に一致するものではない。)。反応温度が上記範囲であれば、溶剤の還流が速やかに進行し、エステル化反応が進行しやすいため好ましい。また、反応時間は、エステル化率が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%に達するまで行うのが好ましく、通常、1〜50時間、好ましくは3〜40時間である。さらに、本発明によるエステル化反応は、常圧下または減圧下いずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが好ましい。
【0152】
以上のようにして、下記式(4):
【0153】
【化17】

【0154】
式中、
2、R1は、それぞれ、上記と同じであり、R6〜R8は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である、
で表されるポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体を得ることができる。
【0155】
<ポリカルボン酸系重合体を得る工程>
次に、上記の工程(R)を経て得られたポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体を用いて、ポリカルボン酸系重合体を製造する。
【0156】
すなわち、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法は、(S)前記ポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体と、下記一般式(2):
【0157】
【化18】

【0158】
式中、
3、R4、およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH2pCOOH基であり(この際、pは、0〜2の整数である)、
Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基である、
で表される不飽和カルボン酸系単量体と、を反応させてポリカルボン酸系重合体を得る工程(以下、当該工程を「工程(S)」とも称する。)を含む。
【0159】
上記で得られたポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体を原料として、重合開始剤の存在下で、化学式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体と反応させることで、ポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体および不飽和カルボン酸系単量体がそれぞれ有する不飽和二重結合のラジカル重合が進行し、これらの共重合体(ポリカルボン酸系重合体)が得られる。この共重合体をセメント混和剤として用いることで、減水性に優れたセメント混和剤が得られる。
【0160】
工程(S)の反応については、上記工程(C)の反応と同様に行うことができるため、詳細は省略する。すなわち、工程(C)で用いたポリアルキレングリコールエーテル系単量体を、ポリアルキレングリコールエーテル−不飽和カルボン酸系単量体とすることで、工程(S)となる。
【0161】
<セメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の用途>
本発明の製造方法により製造されるポリカルボン酸系重合体は、セメント混和剤として用いられうる。
【0162】
本発明のセメント混和剤は、本発明の製造方法により製造されるポリカルボン酸系重合体を必須成分として含むものであるが、上述した製造方法により得られた水溶液の形態でそのままセメント混和剤の主成分として使用してもよいし、乾燥させて粉体化して使用してもよい。
【0163】
本発明のセメント混和剤は、各種水硬性材料、すなわちセメントや石膏等のセメント組成物やそれ以外の水硬性材料に用いることができる。このような水硬性材料と水と本発明のセメント混和剤とを含有し、さらに必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。
【0164】
上記水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も一般的であり、該セメント組成物は、本発明のセメント混和剤、セメントおよび水を必須成分として含んでなる。このようなセメント組成物は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0165】
上記セメント組成物において使用されるセメントとしては、特に限定はない。たとえば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩およびそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられ、さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加してもよい。又、骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。
【0166】
上記セメント組成物においては、その1m3あたりの単位水量、セメント使用量および水/セメント比には特に制限はなく、単位水量100〜185kg/m3、使用セメント量250〜800kg/m3、水/セメント比(重量比)=0.1〜0.7、好ましくは単位水量120〜175kg/m3、使用セメント量270〜800kg/m3、水/セメント比(重量比)=0.2〜0.65が推奨され、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリート、水/セメント比(重量比)が0.3以下の低−水/セメント比領域にある超高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。上記セメント組成物における本発明のセメント混和剤の配合割合については、特に限定はないが、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、固形分換算で、ポリカルボン酸系重合体がセメント重量の0.01〜5.0%、好ましくは0.02〜2.0%、より好ましくは0.05〜1.0%となる比率の量を添加すればよい。この添加により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記配合割合が0.01%未満では、性能的に充分とはならない虞があり、逆に5.0%を超える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となる。
【0167】
上記セメント組成物は、ポンプ圧送性にも優れ、施工時の作業性を著しく改善し、高い流動性を有していることから、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり、さらに、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0168】
上記セメント組成物は、たとえば、以下に記載するようなセメント分散剤を含有することができる。リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;特開平1−113419号公報に記載のようなアミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系;特開平7−267705号公報に記載のような(a)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物と(メタ)アクリル酸系化合物との共重合体および/またはその塩と、(b)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と無水マレイン酸との共重合体および/もしくはその加水分解物、ならびに/または、その塩と、(c)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と、ポリアルキレングリコール系化合物のマレイン酸エステルとの共重合体および/またはその塩とを含むセメント分散剤;特許第2508113号明細書に記載のようなA成分として、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステルと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体、B成分として、特定のポリエチレングリコールポリプロピレングリコール系化合物、C成分として、特定の界面活性剤からなるコンクリート混和剤。
【0169】
特開平1−226757号公報に記載のような(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、および、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特公平5−36377号公報に記載のような(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)もしくはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、ならびに、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特開平4−149056号公報に記載のようなポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体;特開平5−170501号公報に記載のような(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、および、分子中にアミド基を有するα,β−不飽和単量体からなる共重合体;特開平5−43288号公報に記載のようなアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、もしくは、その加水分解物、または、その塩;特公昭58−38380号公報に記載のようなポリエチレングリコールモノアリルエーテル、マレイン酸、および、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、もしくは、その塩、または、そのエステル。
【0170】
特公昭59−18338号公報に記載のようなポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、および、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体;特開昭62−119147号公報に記載のようなスルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよび必要によりこれと共重合可能な単量体からなる共重合体、または、その塩;特開平6−271347号公報に記載のようなアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端にアルケニル基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物;特開平6−298555号公報に記載のようなアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物。これらセメント分散剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0171】
上記セメント分散剤を用いる場合には、本発明のセメント混和剤としてのポリカルボン酸系重合体と上記セメント分散剤との比率、すなわち固形分換算での重量割合(重量%)としては、ポリカルボン酸系重合体と上記セメント分散剤との性能バランスによって最適な比率は異なるが、1/99〜99/1が好ましく、5/95〜95/5がより好ましく、10/90〜90/10が最も好ましい。
【0172】
また、上記セメント組成物は、以下の(1)〜(20)に例示するような他の公知のセメント添加剤(材)を含有することができる。
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化またはヒドロキシアルキル化誘導体の一部または全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基またはそれらの塩を部分構造として有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1,3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマーおよびその第4級化合物等。
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)オキシカルボン酸もしくはその塩、糖および糖アルコールからなる群から選ばれる1種以上の硬化遅延剤:珪弗化マグネシウム;リン酸ならびにその塩またはホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸およびその誘導体等。
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸およびギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和あるいは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステルまたはその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステルまたはその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基またはアルコキシ基を置換基として有してもよい、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アス
ファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
(20)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0173】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。これら公知のセメント添加剤(材)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0174】
上記セメント組成物において、セメントおよび水以外の成分についての特に好適な実施形態としては、次の(1)〜(4)が挙げられる。
【0175】
(1)(i)本発明のセメント混和剤、および、(ii)オキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組み合わせ。なお、(ii)のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、(i)のセメント混和剤中の共重合体(A)に対して0.001〜10重量%の範囲が好ましい。
【0176】
(2)(i)本発明のセメント混和剤、および、(ii)材料分離低減剤の2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、非イオン性セルロースエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等が使用可能である。なお、(i)のセメント混和剤中の親水性重合体と(ii)の材料分離低減剤との配合重量比としては、10/90〜99.99/0.01が好ましく、50/50〜99.9/0.1がより好ましい。この組み合わせのセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
【0177】
(3)(i)本発明のセメント混和剤、および、(ii)分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤の2成分を必須とする組み合わせ。スルホン酸系分散剤としては、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系の分散剤等が使用可能である。なお、(i)のセメント混和剤中のポリカルボン酸系重合体と(ii)の分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤との配合重量比としては、5/95〜95/5が好ましく、10/90〜90/10がより好ましい。
【0178】
(4)(i)本発明のセメント混和剤、および、(ii)リグニンスルホン酸塩の2成分を必須とする組み合わせ。なお、(i)のセメント混和剤中のポリカルボン酸系重合体と(ii)のリグニンスルホン酸塩との配合重量比としては、5/95〜95/5が好ましく、10/90〜90/10がより好ましい。
【実施例】
【0179】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、下記の製造例において、特に断らない限り、「%」および「ppm」は重量基準である。また、以下、エチレンオキシドを「EO」と称する場合がある。また、特に注釈のない限り、「重量」と「質量」とは同じことを意味する。
【0180】
<測定条件>
下記の例において、水分含量、製造された重合体の重量平均分子量、ならびに各種生成物の生成量・含有量は、以下の条件・方法で測定した。
【0181】
[水分測定]
アルコール中の水分含量をカールフィッシャー法で測定した。
【0182】
装置:京都電子工業株式会社(KEM)製MK−510
試薬 : ALDRICH製 HYDRANAL COMPOSITE 5K
[ポリエチレングリコールの含有量測定]
単量体組成物に含まれるポリエチレングリコールの含有量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、以下の条件下で測定した。
【0183】
使用カラム:昭和電工社製GF−1G 7B(ガードカラム)および昭和電工社製GF−3 10HQ
溶離液:水
流量:1mL/分
打ち込み量:単量体を濃度5.0%の溶離液溶液として、100μL
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、ピークトップ分子量(Mp)4020
検出器:日立製作所社製 L−7490 示唆屈折検出器
[共重合体の重量平均分子量測定]
重合体に含まれる共重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、以下の条件下で測定した。
【0184】
使用カラム:東ソー社製TSKguardcolumn SWXL、TSKgel G4000SWXL、G3000SWXLおよびG2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、さらに酢酸でpH6.0に調整した溶離液溶液
打ち込み量:重合体を濃度0.5%の溶離液溶液として、100μL
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、ピークトップ分子量(Mp)300000、219300、107000、50000、24000、11840、6450、4020、1470
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410 示唆屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 Empowerソフトウェア
[重合体中の共重合体含有量(ポリマー純分)の測定]
重合体に含まれるポリマー純分は、図2に示すGPCチャートより、重合体における共重合体部分の面積である(I)を、ポリエチレングリコールなどを含めた重合体全体の面積である(I+II)で割った値とした。なお、図2は、実施例2のGPCチャートである。
【0185】
<コンクリート試験>
以下に示すコンクリート原料、配合、混練法により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、パン型ミキサーを使用して材料の混練を実施した。単量体の水溶液(I−1)〜(I−6)より得られた比較例1〜3および実施例1〜3のポリマー(混和剤)を用いて、所定のスランプフロー値を得るための混和剤添加量と、混練直後のスランプフロー値を評価した。なお、混和剤添加量とは、セメント重量に対するセメント混和剤の配合量(重量%)を意味する。混和剤添加量は、混和剤の不揮発分量で計算して、重量%として示した。また必要に応じてAE剤であるMA303(ポゾリス物産製)の有姿1wt%水溶液を必要量配合し、空気量を4±0.5%に調整した。
【0186】
[不揮発分の測定]
アルミカップに重合体水溶液を約0.5g測り採り、イオン交換水約1gを加えて均一に広げた。これを窒素雰囲気下、130℃で1時間乾燥し、乾燥前後の重量差から不揮発分を計算した。
【0187】
[使用原料]
セメントは太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント(比重3.16)を均等に混合して使用した。粗骨材には青梅産砕石、細骨材には大井川産砂、君津産山砂を9/1で混合して使用した。練り水には上水道水を用いた。
【0188】
[コンクリート配合]
単位セメント量:170.0Kg/m3
単位水量:320.0Kg/m3 (ポリマー、AE剤などの混和剤を含む)
単位細骨材量:850.0Kg/m3
単位粗骨材量:942.0Kg/m3
水セメント比(W/C):53.1%
細骨材率(s/a):46.0%
[材料の練り混ぜ]
セメント、細骨材、粗骨材をミキサー内に仕込み、10秒間混練した。混練を止め、所定量の水と混和剤をミキサー内に仕込み、すぐに120秒間混練した。練り上がったフレッシュコンクリートを排出し、評価試験を行った。また評価試験においては、水と混和剤を仕込んだ後の混練開始時間をゼロ分とした。
【0189】
[フレッシュコンクリートの評価]
得られたフレッシュコンクリートについて、スランプフロー値の測定を以下の方法により実施した。
【0190】
スランプ値:JIS A 1101−1998
フロー値調製したモルタルを、ステンレス板上に置いた直径55mm、高さ50mmの中空円筒の容器に詰めた。次いで、この中空円筒の容器を垂直に持ち上げた後、ステンレス板上に広がったモルタルの直径を縦横2方向について測定し、この平均値をスランプフロー値(mm)とした。スランプフロー値は大きいほど流動性が高いことを示している。
【0191】
(比較例1)
・アルコール−10EO 付加
温度計、撹拌機、原料導入管、および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器にメタリルアルコール(含水量 2100ppm)200g、アルカリ触媒として水酸化ナトリウム0.6gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。
【0192】
そして安全圧下で120℃を保持したままエチレンオキシド1222gを8.5時間かけて反応器内に導入し、その後、1時間熟成し反応を終了した。得られた反応生成物は、5.0%のポリエチレングリコールと、95%のメタリルアルコールに平均10モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールとの組成物であった。この反応生成物を、反応生成物(1)と称する。
【0193】
・10EO−50EO 付加
次に、温度計、撹拌機、原料導入管、および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、反応生成物(1)200g、アルカリ触媒として49%水酸化ナトリウム水溶液0.50gを仕込み、120℃まで昇温した。次いで撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を5.3hPa(40Torr)に減圧した。2.5時間脱水終了後、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで昇温した。そして安全圧下で120℃を保持したままエチレンオキシド688gを7.0時間かけて反応器内に導入し、その後、1時間熟成した。容器温度を65℃まで下げた後、2L/hrの窒素を反応液に吹き込みながら、容器を開圧した。65℃、2L/hrの窒素での溶液バブリングを7時間続けた後、得られた反応生成物は、6.0%のポリエチレングリコールと、94%のメタリルアルコールに平均50モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(I−1)との組成物であった。水を加え、濃度を80%としたものを水溶液(I−1)とする。
【0194】
・ポリカルボン酸系重合体の製造
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を76.28g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、水溶液(I−1)261.9g、アクリル酸0.38gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、2%過酸化水素水9.26gを投入した。温度が58℃で安定した後、アクリル酸12.60gを水25.86gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を3時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸0.24g、2−メルカプトプロピオン酸0.61gを水32.75gに溶解させた水溶液3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、冷却後、49%NaOHでpH6.5まで中和した。水溶液(I−1)から得られたポリマーの分子量(Mw)は28,000、ポリマー分(P分)は66.2だった。
【0195】
得られたポリマーを用いてコンクリート試験を行った結果、ポリマー添加量(混和剤添加量)は、0.14重量%であり、スランプフロー値は280mmだった。
【0196】
(比較例2)
・アルコール−10EO 付加
温度計、撹拌機、原料導入管、および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に3−メチル−3−ブテン−1−オール(含水量 2000ppm)200g、アルカリ触媒として水酸化ナトリウム0.51gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。
【0197】
そして安全圧下で120℃を保持したままエチレンオキシド1023gを8.5時間かけて反応器内に導入し、その後、1時間熟成し反応を終了した。得られた反応生成物は、7.0%のポリエチレングリコールと、93%の3−メチル−3−ブテン−1−オールに平均10モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールとの組成物であった。この反応生成物を、反応生成物(2)と称する。
【0198】
・10EO−50EO 付加
次に、温度計、撹拌機、原料導入管、および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、反応生成物(2)200g、アルカリ触媒として49%水酸化ナトリウム水溶液0.48gを仕込み、120℃まで昇温した。次いで撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を5.3hPa(40Torr)に減圧した。2.5時間脱水終了後、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで昇温した。そして安全圧下で120℃を保持したままエチレンオキシド669gを7.0時間かけて反応器内に導入し、その後、1時間熟成した。容器温度を80℃まで下げた後、0.1L/hrの窒素を反応液に吹き込みながら、容器内を30hPaまで減圧し、3時間バブリングを続けた後、得られた反応生成物は、10.5%のポリエチレングリコールと、89.5%の3−メチル−3−ブテン−1−オールに平均50モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(I−2)との組成物であった。水を加え、濃度を80%としたものを水溶液(I−2)とする。
【0199】
・ポリカルボン酸系重合体の製造
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を76.28g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、水溶液(I−2)261.9g、アクリル酸0.38gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、2%過酸化水素水9.26gを投入した。温度が58℃で安定した後、アクリル酸12.60gを水25.86gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を3時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸0.24g、2−メルカプトプロピオン酸0.61gを水32.75gに溶解させた水溶液3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、冷却後、49%NaOHでpH6.5まで中和した。水溶液(I−2)から得られたポリマーの分子量(Mw)は30,000、ポリマー分(P分)は66.5だった。
【0200】
得られたポリマーを用いてコンクリート試験を行った結果、ポリマー添加量(混和剤添加量)は、0.14重量%であり、スランプフロー値は300mmだった。
【0201】
(比較例3)
・アルコール−10EO 付加
温度計、撹拌機、原料導入管、および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器にアリルアルコール(含水量 2200ppm)200g、アルカリ触媒として水酸化ナトリウム0.76gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。
【0202】
そして安全圧下で120℃を保持したままエチレンオキシド1517gを8.5時間かけて反応器内に導入し、その後、1時間熟成し反応を終了した。得られた反応生成物は、5.2%のポリエチレングリコールと、94.8%のアリルアルコールに平均10モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールとの組成物であった。この反応生成物を、反応生成物(3)と称する。
【0203】
・10EO−50EO 付加
次に、温度計、撹拌機、原料導入管、および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、反応生成物(3)200g、アルカリ触媒として49%水酸化ナトリウム水溶液0.52gを仕込み、120℃まで昇温した。次いで撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を5.3hPa(40Torr)に減圧した。2.5時間脱水終了後、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで昇温した。そして安全圧下で120℃を保持したままエチレンオキシド707gを7.0時間かけて反応器内に導入し、その後、1時間熟成した。熟成後、120℃のままで1.0L/hrの窒素を反応液に吹き込みながら、容器内を500hPaまで減圧し、0.5時間バブリングを続けた後、得られた反応生成物は、7.0%のポリエチレングリコールと、93.0%のアリルアルコールに平均50モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(I−3)との組成物であった。水を加え、濃度を80%としたものを水溶液(I−3)とする。
【0204】
・ポリカルボン酸系重合体の製造
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を76.28g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、水溶液(I−3)261.9g、アクリル酸0.38gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、2%過酸化水素水9.26gを投入した。温度が58℃で安定した後、アクリル酸12.60gを水25.86gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を3時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸0.24g、2−メルカプトプロピオン酸0.61gを水32.75gに溶解させた水溶液3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、冷却後、49%NaOHでpH6.5まで中和した。水溶液(I−3)から得られたポリマーの分子量(Mw)は30,000、ポリマー分(P分)は57.3だった。
【0205】
得られたポリマーを用いてコンクリート試験を行った結果、ポリマー添加量(混和剤添加量)は、0.14重量%であり、スランプフロー値は230mmだった。
【0206】
(アルコールの脱水システム)
シリカゲルを加えた容器を通気させた乾燥窒素で満たした、脱水前原料(アルコール)−送液ポンプ−脱水カラム−脱水後原料(アルコール)回収容器からなる脱水システムを使用して、含水量の高いアルコールの脱水を実施した。なお、脱水カラムには、脱水剤としてモレキュラーシーブス3A 9.17gが充填されている。
【0207】
送液ポンプ:HITACHI Auto Sampler L−7200
カラム:SUS製、内径 7.8mm、脱水材高さ 約300mm
上記、脱水系を「脱水システムA」とする。
【0208】
(実施例1)
・アルコール脱水
モレキュラーシーブス3Aが9.17g充填されたカラム(充填した脱水剤の体積重量 0.64g/ml)を備えた脱水システムAを用いて、メタリルアルコール(比重0.8:含水量 2100ppm)630gを、送液ポンプで、送液速度0.64g/minで、カラム底部から25℃で注入し、16.5時間掛けて通液させた(接触時間 18.8分)。これにより、含水量700ppmのメタリルアルコール620gを回収した。
【0209】
・アルコール−10EO 付加
温度計、撹拌機、原料導入管、および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に脱水後に得られたメタリルアルコール(含水量 700ppm)200g、アルカリ触媒として水酸化ナトリウム0.6gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。
【0210】
そして安全圧下で120℃を保持したままエチレンオキシド1222gを8.5時間かけて反応器内に導入し、その後、1時間熟成し反応を終了した。得られた反応生成物は、1.5%のポリエチレングリコールと、98.5%のメタリルアルコールに平均10モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールとの組成物であった。この反応生成物を、反応生成物(4)と称する。
【0211】
・10EO−50EO 付加
次に、温度計、撹拌機、原料導入管、および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、反応生成物(4)200g、アルカリ触媒として49%水酸化ナトリウム水溶液0.50gを仕込み、120℃まで昇温した。次いで撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を5.3hPa(40Torr)に減圧した。2.5時間脱水終了後、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで昇温した。そして安全圧下で120℃を保持したままエチレンオキシド688gを7.0時間かけて反応器内に導入し、その後、1時間熟成した。容器温度を75℃まで下げた後、1.0L/hrの窒素を反応液に吹き込みながら、容器内を500hPaまで減圧し、バブリングを5時間続けた後、得られた反応生成物は、2.5%のポリエチレングリコールと、97.5%のメタリルアルコールに平均50モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(I−4)との組成物であった。水を加え、濃度を80%としたものを水溶液(I−4)とする。
【0212】
・ポリカルボン酸系重合体の製造
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を76.28g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、水溶液(I−4)261.9g、アクリル酸0.38gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、2%過酸化水素水9.26gを投入した。温度が58℃で安定した後、アクリル酸12.60gを水25.86gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を3時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸0.24g、2−メルカプトプロピオン酸0.61gを水32.75gに溶解させた水溶液3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、冷却後、49%NaOHでpH6.5まで中和した。水溶液(I−4)から得られたポリマーの分子量(Mw)は28,000、ポリマー分(P分)は70.3だった。
【0213】
得られたポリマーを用いてコンクリート試験を行った結果、ポリマー添加量(混和剤添加量)は、0.14重量%であり、スランプフロー値は375mmだった。
【0214】
(実施例2)
・アルコール脱水
モレキュラーシーブス3Aが9.17g充填されたカラム(充填した脱水剤の体積重量 0.64g/ml)を備えた脱水システムAを用いて、3−メチル−3−ブテン−1−オール(比重0.8:含水量 2000ppm)630gを、送液ポンプで、送液速度0.96g/minで、カラム底部から25℃で注入し、11時間掛けて通液させた(接触時間 12.5分)。これにより、含水量1000ppmの3−メチル−3−ブテン−1−オール615gを回収した。
【0215】
・アルコール−10EO 付加
温度計、撹拌機、原料導入管、および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に脱水後に得られた3−メチル−3−ブテン−1−オール(含水量 1000ppm)200g、アルカリ触媒として水酸化ナトリウム0.51gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。
【0216】
そして安全圧下で120℃を保持したままエチレンオキシド1023gを8.5時間かけて反応器内に導入し、その後、1時間熟成し反応を終了した。得られた反応生成物は、4.1%のポリエチレングリコールと、95.9%の3−メチル−3−ブテン−1−オールに平均10モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールとの組成物であった。この反応生成物を、反応生成物(5)と称する。
【0217】
・10EO−50EO 付加
次に、温度計、撹拌機、原料導入管、および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、反応生成物(5)200g、アルカリ触媒として49%水酸化ナトリウム水溶液0.48gを仕込み、120℃まで昇温した。次いで撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を5.3hPa(40Torr)に減圧した。2.5時間脱水終了後、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで昇温した。そして安全圧下で120℃を保持したままエチレンオキシド669gを7.0時間かけて反応器内に導入し、その後、1時間熟成した。容器温度を70℃まで下げた後、1.1L/hrの窒素を反応液に吹き込みながら、容器内を45hPaまで減圧し、4.5時間バブリングを続けた後、得られた反応生成物は、7.0%のポリエチレングリコールと、93.0%の3−メチル−3−ブテン−1−オールに平均50モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(I−5)との組成物であった。水を加え、濃度を80%としたものを水溶液(I−5)とする。
【0218】
・ポリカルボン酸系重合体の製造
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を76.28g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、水溶液(I−5)261.9g、アクリル酸0.38gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、2%過酸化水素水9.26gを投入した。温度が58℃で安定した後、アクリル酸12.60gを水25.86gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を3時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸0.24g、2−メルカプトプロピオン酸0.61gを水32.75gに溶解させた水溶液3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、冷却後、49%NaOHでpH6.5まで中和した。水溶液(I−5)から得られたポリマーの分子量(Mw)は29,000、ポリマー分(P分)は70.3だった。
【0219】
得られたポリマーを用いてコンクリート試験を行った結果、ポリマー添加量(混和剤添加量)は、0.14重量%であり、スランプフロー値は380mmだった。
【0220】
(実施例3)
・アルコール脱水
モレキュラーシーブス3Aが9.17g充填されたカラム(充填した脱水剤の体積重量 0.64g/ml)を備えた脱水システムAを用いて、アリルアルコール(比重0.8:含水量 2200ppm)630gを、送液ポンプで、送液速度1.26g/minで、カラム底部から25℃で注入し、8.5時間掛けて通液させた(接触時間 9.6分)。これにより、含水量1200ppmのアリルアルコール615gを回収した。
【0221】
使用したモレキュラーシーブスを乾燥窒素流通下、300℃で24時間再生処理し、再びカラムに充填し、回収した含水量1200ppmのアリルアルコール600gを、3.11g/minの流速で3.5時間掛けて通液させた(接触時間 3.9分)。これにより、含水量700ppmのアリルアルコール580gを回収した。
【0222】
・アルコール−10EO 付加
温度計、撹拌機、原料導入管、および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に脱水後に得られたアリルアルコール(含水量 700ppm)200g、アルカリ触媒として水酸化ナトリウム0.76gを仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。
【0223】
そして安全圧下で120℃を保持したままエチレンオキシド1517gを8.5時間かけて反応器内に導入し、その後、1時間熟成し反応を終了した。得られた反応生成物は、1.7%のポリエチレングリコールと、98.3%のアリルアルコールに平均10モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールとの組成物であった。この反応生成物を、反応生成物(6)と称する。
【0224】
・10EO−50EO 付加
次に、温度計、撹拌機、原料導入管、および窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、反応生成物(6)200g、アルカリ触媒として49%水酸化ナトリウム水溶液0.52gを仕込み、120℃まで昇温した。次いで撹拌しながら反応容器の上部からガラス製トラップを装着した配管を接続し、真空ポンプを用いて反応容器内を5.3hPa(40Torr)に減圧した。2.5時間脱水終了後、反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで昇温した。そして安全圧下で120℃を保持したままエチレンオキシド707gを7.0時間かけて反応器内に導入し、その後、1時間熟成した。容器温度を80℃まで下げた後、0.2L/hrの窒素を反応液に吹き込みながら、容器内を80hPaまで減圧し、3.5時間バブリングを続けた後、得られた反応生成物は、2.5%のポリエチレングリコールと、97.5%のアリルアルコールに平均50モルのエチレンオキシドが付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(I−6)との組成物であった。水を加え、濃度を80%としたものを水溶液(I−6)とする。
【0225】
・ポリカルボン酸系重合体の製造
温度計・攪拌機・滴下ロート・窒素導入管・還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水を76.28g、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体として、水溶液(I−6)261.9g、アクリル酸0.38gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃に昇温した後、2%過酸化水素水9.26gを投入した。温度が58℃で安定した後、アクリル酸12.60gを水25.86gに溶解させた不飽和カルボン酸単量体水溶液を3時間かけて滴下し、アクリル酸水溶液を滴下し始めると同時に、L−アスコルビン酸0.24g、2−メルカプトプロピオン酸0.61gを水32.75gに溶解させた水溶液3.5時間かけて滴下した。その後1時間引き続き58℃を維持し、重合反応を完結させた。そして、冷却後、49%NaOHでpH6.5まで中和した。水溶液(I−6)から得られたポリマーの分子量(Mw)は30,000、ポリマー分(P分)は63.2だった。
【0226】
得られたポリマーを用いてコンクリート試験を行った結果、ポリマー添加量(混和剤添加量)は、0.14重量%であり、スランプフロー値は280mmだった。
【0227】
<コンクリート評価結果>
比較例1と実施例1、比較例2と実施例2、比較例3と実施例3とは、それぞれ、同じアルコールで、脱水処理の有無のみが異なるアルコールから得た混和剤である。
【0228】
表3より、脱水処理を施されたアルコールから合成された実施例(製造例)の混和剤は、脱水処理を施されていないアルコールから合成した比較例(比較製造例)の混和剤よりも、明らかに流動性に優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0229】
1 連通管、
2 タンク、
3 フロートスイッチ、
4 タンク循環弁、
5 溶剤ポンプ、
6 流量計、
7 脱水塔、
8 連通管、
9 回収タンク、
10 フロートスイッチ、
11 回収タンク抜き出しポンプ、
12 連通管、
13 窒素導入口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1OH(Y1はCH2=CHR0−(CH2m−を表し、この際、R0は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは0〜2の整数である。)で表される2000ppm以上の水を含む不飽和アルコールを脱水して、水の含有量を2000ppm未満とする脱水工程と、
前記脱水工程を経て得られた不飽和アルコールと、炭素数2〜18のアルキレンオキシドとを反応させて、下記一般式(1):
【化1】

式中、
1はCH2=CHR0−(CH2m−を表し、この際、R0は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、mは0〜2の整数であり、
1Oは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表わし、
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0より大きく500以下の数であり、
2は水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わす、
で表されるポリアルキレングリコールエーテル系単量体を得る工程と、
前記ポリアルキレングルコールエーテル系単量体と、下記一般式(2):
【化2】

式中、
3、R4、およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH2pCOOH基であり(この際、pは、0〜2の整数である)、
Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基(有機アンモニウム基)である、
で表される不飽和カルボン酸系単量体と、を反応させてポリカルボン酸系重合体を得る工程と、
を含む、セメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法。
【請求項2】
2OH(Y2は炭素数1〜4のアルキル基である。)で表される2000ppm以上の水を含む飽和アルコールを脱水して、水の含有量を2000ppm未満とする脱水工程と、
前記脱水工程を経て得られた飽和アルコールと、炭素数2〜18のアルキレンオキシドとを反応させて、下記一般式(3):
【化3】

式中、
2は炭素数1〜4のアルキル基を表し、mは0〜2の整数であり、
1Oは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表わし、
nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、0より大きく500以下の数である、
で表されるポリアルキレングリコールエーテル系化合物を得る工程と、
前記ポリアルキレングルコールエーテル系化合物と不飽和モノカルボン酸とのエステル化反応、あるいは前記ポリアルキレングルコールエーテル系化合物と不飽和モノカルボン酸アルキルエステル(不飽和モノカルボン酸アルキルエステル中のアルキル基の炭素数は1〜22である)とのエステル交換反応により、下記式(4):
【化4】

式中、
2、R1は、それぞれ、上記と同じであり、R6〜R8は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である、
で表されるポリアルキレングリコールエーテル−不飽和モノカルボン酸エステル系単量体を得る工程と、
前記ポリアルキレングリコールエーテル−不飽和モノカルボン酸エステル系単量体と、下記一般式(2):
【化5】

式中、
3、R4、およびR5は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、または−(CH2pCOOH基であり(この際、pは、0〜2の整数である)、
Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基または有機アミン基(有機アンモニウム基)である、
で表される不飽和カルボン酸系単量体と、を反応させてポリカルボン酸系重合体を得る工程と、
を含む、セメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記脱水工程に脱水剤を用いる、請求項1または2に記載のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記脱水剤が、モレキュラーシーブスである、請求項3に記載のセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により得られたセメント混和剤用ポリカルボン酸系重合体を含むセメント混和剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−75803(P2013−75803A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217849(P2011−217849)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】