説明

セメント混和剤

【課題】 本発明は、セメント分散性に優れかつコストパフォーマンスに優れたセメント混和剤を提供することを課題とした。
【解決手段】
下記の(イ)成分と(ロ)成分を必須とするセメント混和剤を提供することで上記課題を解決した。
成分:分子内に炭素数2〜18のポリオキシアルキレン基またはポリオキシスチレン基(平均付加モル数1〜300)を含有する重量平均分子量5000〜500000のビニル系共重合体
成分:不飽和モノカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸から選ばれた不飽和カルボン酸の単独重合体又は2種以上の共重合体であって、重量平均分子量が20000以上の重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント混和剤に関する。更に詳しくはセメントペースト、モルタル及びコンクリート等の水硬性組成物において流動性に優れた効果を発現するセメント混和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能減水剤等のセメント混和剤として特に流動性に優れた効果を発現するものとして、ポリカルボン酸系減水剤がよく知られている。本ポリカルボン酸系減水剤は、分散基としてポリオキシアルキレン鎖、セメントへの吸着基としてカルボン酸を分子内に有している。それ故、その生産工程において、ポリオキシアルキレン鎖を重合可能な単量体に導入する段階と、得られた単量体とカルボン酸を有する単量体との共重合体を得る段階の少なくとも2段階の工程を経る必要があり、そのために製造コストが比較的高い。
【0003】
セメントの分散性に優れ、コストパフォーマンスに優れた高性能減水剤がもとめられている。例えば上記のポリカルボン酸系減水剤の一部を、分散性を犠牲にすることなく、より安価に製造できるポリアクリル酸やアクリル酸/無水マレイン酸系共重合体等のカルボン酸系ポリマーに置き換えることができたら、コストパフォーマンスを向上させることができる。
これまで特許文献1〜3等にポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系減水剤とポリアクリル酸とを併用することが記載されているが、本発明のような高分子量タイプのカルボン酸系共重合体との併用については開示されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平9−67153号公報
【特許文献2】特開2003−335566号公報
【特許文献3】特開平11−60305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、セメント分散性に優れかつコストパフォーマンスに優れたセメント混和剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系減水剤にオキシアルキレン鎖を有さない分子量20,000以上の不飽和カルボン酸系重合体を併用することで分散性が向上し、コストパフォーマンスの高いセメント混和剤となることを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の(イ)成分と(ロ)成分を必須成分として含むセメント混和剤である。
(イ)成分:分子内に炭素数2〜18のポリオキシアルキレン基またはポリオキシスチレン基(平均付加モル数1〜300)を含有する重量平均分子量5000〜500000のビニル系共重合体
(ロ)成分:不飽和モノカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸から選ばれた不飽和カルボン酸の単独重合体又は2種以上の共重合体であって、重量平均分子量が20000以上の重合体。
【発明の効果】
【0008】
本発明のセメント混和剤は、流動性に優れ、コストパフォーマンスに優れる。
本発明の効果についてのメカニズムは現時点では明確ではないが、以下のように推測している。セメント中にはアルミネート相やフェライト相等の間隙相と呼ばれる成分が含まれている。ポリカルボン酸系減水剤を含んだ水をセメントに添加した際、ポリマーはまずこの間隙相に吸着され、速やかな水和により水和物に取り囲まれてしまうために、取り込まれた減水剤は系全体の分散性に寄与できなくなる。ここに分子量が大きく、かつ酸量の多い本発明の(ロ)成分のような重合体を併用すると、まず(ロ)成分が(イ)成分よりも速やかに間隙相に吸着されるため、有効に(イ)成分を活用できるため、分散性が向上すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明のセメント混和剤について詳細に説明する。
本発明の(イ)成分は、高いセメント分散性を得る観点から下記の一般式(a)で表される単量体の少なくとも1種(A)と下記の一般式(b)で表される単量体の少なくとも1種(B)とを共重合させて得られた共重合体であることが好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、
,R:水素原子又はメチル基
m:0〜2の数
:水素原子又は−COO(AO)nX
p:0又は1の数
AO:炭素数2〜18のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基
n:1〜300の数
X:水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基
を表す。)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、
〜R:水素原子、メチル基又は(CH)mCOOMであり、(CH)mCOOMはCOOM又は他の(CH)mCOOMと無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM,Mは存在しない。
,M:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基
:0〜2の数
を表す。)
一般式(a)で表される単量体(A)としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸、マレイン酸との(ハーフ)エステル化物、イタコン酸との(ハーフ)エステル化物や、(メタ)アリルアルコールとのエーテル化物、及び(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アリルアルコールへのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加物、ビニルエーテル‐ポリエチレングリコール付加物、ビニルエーテル‐ポリプロピレングリコール付加物、ビニルエーテル‐ポリエチレングリコール‐ポリプロピレングリコール‐ランダム及びブロック付加物、ヒドロキシプロピルビニルエーテル‐ポリエチレングリコール付加物、ヒドロキシプロピルビニルエーテル‐ポリプロピレングリコール付加物、ヒドロキシプロピルビニルエーテル‐ポリエチレングリコール‐ポリプロピレングリコール‐ランダム及びブロック付加物等のビニルエーテル系アルキレングリコール付加物が好ましく用いられる。ポリアルキレングリコールの平均付加モル数は1〜300モルの範囲が好ましく、2〜200モル、更には5〜150モルの範囲がより好ましい。
一般式(b)で表される単量体(B)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、又はこれらの無水物もしくは塩、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩が好ましい。
【0014】
上記(イ)成分を得るための重合反応は、特に限定されるものではなく、溶液重合や塊状重合などの公知の方法を採用することができる。特に反応の制御や、重合物の取り扱い易さの点を考慮すると、溶液重合が好ましい。
【0015】
溶液重合を行う場合、溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノールなどの低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチルなどのエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン化合物;等の1種または2種以上を用いることができる。中でも水、メチルアルコール、エチルアルコール、2プロパノールなどが特に好ましい。
【0016】
重合反応に利用される開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシドなどのパーオキシドが使用できる。
【0017】
レドックス系において開始剤と併用される還元剤としてはモール塩に代表される鉄(II)、スズ(II)、チタン(III)、クロム(II)、V(II)、Cu(II)等の低原子価状態にある金属の塩類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン,ヒドラジンなどのアミン化合物もしくはその塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ二亜硫酸ナトリウム、亜ニ酸チオン酸ナトリウムなどの低級酸化物もしくはその塩;ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物などの−SH基、−SO2H基、−NHNH2基、−COCH(OH)−基等の基を有する有機系化合物もしくはその塩;D−フルクトース、D−グルコース等の転化糖;チオウレア、二酸化チオウレアなどのチオウレア化合物;L−アスコルビン酸、Lアスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸エステルがある。
【0018】
得られる重合体の分子量調整には、チオール系連鎖移動剤が併用でき、所望する分子量を、移動剤添加量で適宜、作り分けることができる。
【0019】
この際に用いられるチオール系連鎖移動剤は
一般式(c)
HS−R−E (c)
で表される。
式中Rは炭素原子数1〜2のアルキル基を表し、Eは−OH、−COOM、COORまたは−SO基を表し、M2は水素、一価金属、二価金属、アンモニウム基、または有機アミン基を表し、R6は炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、lは1〜2の整数を表す。
具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
さらに本発明における(イ)成分は、本発明の効果を損なわない範囲内で単量体(A)、(B)以外の下記する不飽和化合物との共重合体であってもよい。
具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルなどの直鎖状または分枝状の不飽和カルボン酸エステル;スチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、p‐メチルスチレンなどのビニル芳香族類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどのジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどの不飽和シアン類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジンなどの不飽和アミン類;ジビニルベンゼンなどのジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレートなどのシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテルなどのアリル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)などのシロキサン誘導体なども挙げられる。さらには、N−ビニルコハクイミド、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニル化合物なども挙げられる。
(イ)成分の分子量は特に限定されないが、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリエチレングリコール換算の値で、重量平均分子量(Mw)で、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは8,000〜200,000、特に好ましくは10、000〜150,000である。
【0020】
本発明における(ロ)成分は、不飽和モノカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸から選ばれた不飽和カルボン酸の単独重合体又は2種以上の共重合体であり、不飽和モノカルボン酸としてアクリル酸及びメタクリル酸が、不飽和ジカルボン酸としてはマレイン酸、フマル酸及びイタコン酸等が挙げられる。(ロ)成分の一例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸/マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0021】
(ロ)成分の重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリアクリル酸ナトリウム換算の値で、20,000〜500,000の範囲がいい。より好ましくは、30,000〜200,000であり、さらに好ましくは、50,000〜100,000である。分子量が20,000よりも小さいと(イ)成分と併用しても分散性の向上効果が少なく、逆に分子量が大きすぎると粘性が高くなり、分散性が発現しなくなる。
【0022】
本発明において、(イ)成分と(ロ)成分の配合比は、(イ)成分/(ロ)成分=100/1〜100/500(固形分質量比)が好ましく、100/10〜100/200がより好ましく、100/20〜100/100が更に好ましい。(ロ)成分の比率が少なすぎると、混和剤全体としてのコストパフォーマンスの向上効果が少なく、また逆に(ロ)成分の比率が多すぎると、分散性に悪影響が出たり、セメントの硬化速度が遅くなったりする。
【0023】
さらに本発明における(イ)成分と(ロ)成分の添加量はセメントに対して固形分量で(イ)成分と(ロ)成分との合計の添加量で0.01〜3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜1.0質量%の範囲である。
【0024】
また、本発明における(イ)成分と(ロ)成分を添加する場合、予め(イ)成分と(ロ)成分を配合したものを添加しても、あるいは別々に添加してもよい。
【0025】
(イ)成分と(ロ)成分以外に、消泡剤と併用して使用してもよい。消泡剤としては、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物などのポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物などのポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オールなどのアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステルなどの(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステルなどのポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンステアリルリン酸エステルなどのポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物など)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂アミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物など)などのポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミドなどのオキシアルキレン系の消泡剤や、これらを2種類以上組み合わせたものが挙げられる。添加する割合は、用途に応じて適宜選択すればよく、一般には(イ)成分と(ロ)成分の合計固形分質量に対して、0.01〜20質量%となるように添加すればよい。
【0026】
(イ)成分と(ロ)成分をセメント分散剤として使用する場合、水溶液の形態で使用してもよい。それ以外に、重合後にカルシウム、マグネシウムなどの二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末などの無機粉体に担持して乾燥させたり、ドラム型乾燥装置、ディスク型乾燥装置又はベルト式乾燥装置を用いて支持体上に薄膜状に乾燥固化させた後に粉砕したりすることにより粉体化して使用してもよい。また、その場合、粉体化した本発明の分散剤を予めセメント粉末やドライモルタルのようなセメント組成物に配合し、左官、床仕上げ、グラウトなどに用いるプレミックス製品として使用しても良いし、セメント組成物の混練時に配合してもよい。
【0027】
水硬性材料と本発明の混和剤とを含有し、必要に応じて細骨材(砂など)や粗骨材(砕石など)を配合したものとして、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスターなどが挙げられる。セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩および、それらの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。セメントの組成物には、さらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末などの微粉体や石膏を添加してもよい。さらに骨材として、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材など以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質などの耐火骨材を配合してもよい。セメント組成物の1m3あたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比(質量比)は
、用途に応じて適宜選択すればよく、具体的には単位水量100〜185kg/m3、セメント使用量200〜800kg/m3、水/セメント比=0.1〜0.7、好ましくは単位水量120〜175kg/m3、セメント使用量250〜800kg/m3、水/セメント比=0.2〜0.65とすることができる。
【0028】
本発明のセメント混和剤は、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)の水/セメント比の低い領域(高減水率領域)から、単位セメント量が多く水/セメント比が小さい高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3以下の貧配合コンクリートに至る幅広い用途で使用することができる。
【0029】
本発明の混和剤は種々のコンクリートに用いることができる。例えば、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリートなどに好適に用いることができる。それ以外に、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材などの高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートの混和剤としても好適に用いることができる。
また本発明の混和剤は、対象となるセメントの特性を阻害しない範囲内で、公知のセメント分散剤と併用することもできる。本発明のセメント混和剤と公知のセメント分散剤との配合質量比は、使用する公知のセメント分散剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより一義的には決められないが、好ましくは固形分質量比で、5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10の範囲内である。中でも、セメントの銘柄やロット間でのバラツキが比較的少なく、かつ安定した分散性能を発揮することができる分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤(S)を併用することが好ましい。スルホン酸系分散剤(S)とは、主にスルホン酸基によってもたらされる静電的反発力によってセメントに対する分散性を発揮することができる分散剤である。上記スルホン酸系分散剤(S)の中でも、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物などのポリアルキルアリールスルホン酸塩系;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物などのメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物などの芳香族アミノスルホン酸塩系;リグニンスルホン酸塩、変成リグニンスルホン酸塩などのリグニンスルホン酸塩系;ポリスチレンスルホン酸塩系などの分子中に芳香族基を有する化合物やそれらを2種類以上組み合わせたものを用いることが好ましい。特に、水/セメント比が高いコンクリートの分散剤として用いる場合、リグニンスルホン酸塩系の分散剤を本発明のセメント混和剤と併用して用いることが好ましい。反対に、上記コンクリートよりも高い分散性能が要求される、つまり水/セメント比が中程度のコンクリートの分散剤として用いる場合、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系、芳香族アミノスルホン酸塩系、ポリスチレンスルホン酸塩系などの分散剤を本発明のセメント混和剤と併用して用いることが好ましい。
【0030】
また本発明の混和剤は、上記スルホン酸系分散剤(S)以外に、オキシカルボン酸系化合物(D)と併用して用いることもできる。上記構成を取ることで、高温の環境下での分散保持性能をさらに向上させることができる。そのためオキシカルボン酸系化合物(D)としては、炭素原子数4〜10のオキシカルボン酸もしくはその塩が好ましい。具体的には、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸や、これらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミンなどの無機塩または有機塩などが挙げられる。中でも、グルコン酸またはその塩を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、貧配合コンクリートの場合には、分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤(S)としてリグニンスルホン酸塩系の分散剤を用い、オキシカルボン酸系化合物(D)としてグルコン酸もしくはその塩を用いることが好ましい。
上記以外に、(1)〜(12)に例示する下記の公知のセメント添加剤(材)とも併用して用いることができる。
下記する添加剤(材)を併用する場合は、本発明のセメント混和剤とセメント添加剤(材)の配合質量比は、使用する添加剤(材)の種類等の違いにより一義的には決められないが、好ましくは固形分質量比で、好ましくは20.0:80.0〜99.9:0.1、より好ましくは50.0:50.0〜99.0:1.0の範囲内である。
【0031】
(1)水溶性高分子物質:メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの非イオン性セルロースエーテル類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの多糖類のアルキル化又はヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素原子数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナランなどのβ−1,3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状の区別は問わない)などの微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物など。
【0032】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキルなどの各種ビニル単量体の共重合物など。
【0033】
(3)オキシカルボン酸系化合物(D)以外の硬化遅延剤:グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖などの単糖類や、二糖、三糖などのオリゴ糖、又はデキストリンなどのオリゴ糖、又はデキストランなどの多糖類、これらを含む糖蜜類などの糖類;ソルビトールなどの糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリンなどの多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などのホスホン酸及びその誘導体など。
【0034】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウムなどの可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウムなどの塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウムなどのギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケートなど。
【0035】
(5)オキシアルキレン系以外の消泡剤:燈油、流動パラフィンなどの鉱油系消泡剤;動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物などの油脂系消泡剤;オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物などの脂肪酸系消泡剤;グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックスなどの脂肪酸エステル系消泡剤;オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類などのアルコール系消泡剤;アクリレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;アルミニウムステアレート、カルシウムオレエートなどの金属石鹸系消泡剤;ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサンなどのポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油などのシリコーン系消泡剤など。
【0036】
(6)AE剤:樹脂石鹸、飽和あるいは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネートなど。
【0037】
(7)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコールなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコールなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタンなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノールなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミンなどの分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸などの分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有してもよい、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドなどの各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤など。
【0038】
(8)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックスなど。
【0039】
(9)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛など。
【0040】
(10)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテルなど。
【0041】
(11)膨張材;エトリンガイト系、石炭系など。
【0042】
(12)その他の公知のセメント添加剤(材)、具体的にはセメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤などや、これらを2種以上組み合わせたもの。
【0043】
特に好適な実施形態として、下記の(1)〜(4)のものが挙げられる。以下の記載における配合質量比は、固形分質量比を表す。
【0044】
(1)<1>本発明の混和剤、および<2>オキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組み合わせ
オキシアルキレン系消泡剤としては、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類などが使用可能であるが、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が特に好適である。なお、<2>のオキシアルキレン系消泡剤の配合質量比は、<1>のセメント混和剤に対して0.01〜20質量%の範囲に設定することが好ましい。
【0045】
(2)<1>本発明の混和剤を分散剤として用い、さらに<2>材料分離低減剤を必須成分とする組み合わせ
材料分離低減剤として、非イオン性セルロースエーテル類などの各種増粘剤、部分構造として炭素原子数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物などが使用可能である。なお、<1>のセメント混和剤と<2>の材料分離低減剤との配合質量比は、10/90〜99.99/0.01が好ましく、50/50〜99.9/0.1がより好ましい。上記構成を取ることで、得られるセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適に用いることができる。
【0046】
(3)<1>本発明の混和剤を分散剤として用い、さらに<2>促進剤を必須成分とする組み合わせ
促進剤として、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウムなどの可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウムなどの塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウムなどのギ酸塩類などが使用可能である。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の促進剤との配合質量比としては、10/90〜99.9/0.1が好ましく、20/80〜99/1がより好ましい。
【0047】
(4)<1>本発明の混和剤を分散剤として用い、さらに<2>オキシアルキレン系消泡剤および<3>AE剤を必須成分とする組み合わせ
オキシアルキレン系消泡剤として、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類などが使用可能であり、中でもポリオキシアルキレンアルキルアミン類が特に好ましい。なお、<1>のセメント混和剤と<2>の消泡剤の配合質量比は、<1>のセメント混和剤に対して0.01〜20質量%が好ましい。一方、<3>のAE剤の配合質量比は、セメントに対して0.001〜2質量%とすることが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、特にことわりのない限り、「%」は質量%を、「部」は質量部を表わすものとする。
なお、(イ)成分と(ロ)成分の重量平均分子量の測定条件を以下に示す。
<(イ)成分の重量平均分子量測定条件>
使用カラム:東ソー社製TSKguardcolumn SWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に30%水酸化ナトリウムでpH6.0に調整したものを用いる。
打ち込み量:0.5%溶離液溶液100μL
溶離液流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、
7100、1470
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 MILLENNIUM Ver.3.21
<(ロ)成分の重量平均分子量測定条件>
使用カラム:昭和電工社製GF−7MHQ
溶離液:リン酸水素二ナトリウム12水和物34.5gおよびリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(いずれの試薬も特級である。)に純水を加えて全量を5,000gとし、その後、フィルター孔径0.45μmのメンブランフィルターで濾過した水溶液
溶離液流速:0.5mL/min
カラム温度:35℃
標準物質:ポリアクリル酸ナトリウム標準サンプル(創和科学社製)。
検出器:UV 214nm(日本Waters社製、モデル481型)
<製造例1>(実施例の記号(イ)−1)
特開2001-220417をもとに以下のように合成した。
【0049】
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置に、イオン交換水24.63部、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)の水酸基にエチレンオキシドを付加(エチレンオキシドの平均付加モル数50)させたもの(以下、IPN−50と称す)47.72部を仕込み、攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、そこへ過酸化水素2%水溶液3.75部を添加し、アクリル酸80%水溶液(B)8.07部を3時間かけて滴下した。(B)を滴下し始めると同時に3−メルカプトプロピオン酸0.20部、L−アスコルビン酸0.10部、イオン交換水15.54部からなる水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持した後、冷却して重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度(30℃)で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量38000の重合体水溶液を得た。
実施例および比較例に使用した(ロ)成分の内容と記号を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
<モルタル試験>
<モルタルの配合と混練方法>
モルタルの混練は以下のとおり実施した。
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50、ホバート社製)に、太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメント595gおよびセメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201−1997付属書2の5.1.3に規定)1350gを入れ、低速回転で30秒間空練りした後、表1に示す所定量の混和剤および消泡剤(NMB社製の商品名「MA404」の1%水溶液を11.9g)を秤量して水で希釈したもの240gを10秒間かけてミキサーに投入する。空練り開始後、2分後まで低速で混練し、混練を停止しミキサー内の上部に付着したモルタル分をスパチュラで掻き落とす。空練り開始後、2分30秒後に低速回転での混練を再開し、2分間混練し停止する。フローコーン(JIS R 5201−1997に記載)に2層に分けて練りあがったモルタルを詰め、フロー測定を行った。フローの測定はJIS R 5201−1997に準じて行った。
モルタル試験結果を以下の表2に示した。
【0052】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(イ)成分と(ロ)成分を必須成分として含むセメント混和剤。
成分:分子内に炭素数2〜18のポリオキシアルキレン基またはポリオキシスチレン基(平均付加モル数1〜300)を含有する重量平均分子量5000〜500000のビニル系共重合体
成分:不飽和モノカルボン酸及び不飽和ジカルボン酸から選ばれた不飽和カルボン酸の単独重合体又は2種以上の共重合体であって、重量平均分子量が20000以上の重合体。
【請求項2】
(イ)成分が下記の一般式(a)で表される単量体の少なくとも1種(A)と下記の一般式(b)で表される単量体の少なくとも1種(B)とを共重合させて得られた共重合体である請求項1に記載のセメント混和剤。
【化1】

(式中、
,R:水素原子又はメチル基
m:0〜2の数
:水素原子又は−COO(AO)nX
p:0又は1の数
AO:炭素数2〜18のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基
n:1〜300の数
X:水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基
を表す。)
【化2】

(式中、
〜R:水素原子、メチル基又は(CH)mCOOMであり、(CH)mCOOMはCOOM又は他の(CH)mCOOMと無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM,Mは存在しない。
,M:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基
:0〜2の数
を表す。)
【請求項3】
(ロ)成分において不飽和モノカルボン酸がアクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるものであり、不飽和ジカルボン酸がマレイン酸、フマール酸及びイタコン酸から選ばれるものである請求項1又は2に記載のセメント混和剤。
【請求項4】
(ロ)成分がアクリル酸の単独重合体である請求項1〜3の何れかに記載のセメント混和剤。

【公開番号】特開2006−273657(P2006−273657A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95105(P2005−95105)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】