説明

セメント混和剤

優れた減水性を有し、なおかつ経時的にセメント組成物の流動性が低下してスランプおよびスランプフローが小さくなることのないセメント混和剤を提供することを目的とする。2種以上のポリカルボン酸系重合体を含んでなるセメント混和剤であって、該セメント混和剤は、ポリカルボン酸系重合体として、下記式(1):


ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルケニル基、または炭素数6〜12のアリール基を表わし;Aは、炭素数1〜30のアルキレン基または炭素数6〜12のアリーレン基を表わし;aは、0または1であり;ORは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ORは同一であってもまたは異なるものであってもよく、ORが2種以上の混合物の形態である場合には、各ORはブロック状に付加していてもまたはランダム状に付加していてもよく;Rは、水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わし;mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300である、
で表される構成単位を有する少なくとも一のポリカルボン酸系重合体(A)、および下記式(2):


ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表わし;xは、0〜2の整数であり、yは、0または1であり、この際、x及びyが双方とも0である場合を除く;ORは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ORは同一であってもまたは異なるものであってもよく、ORが2種以上の混合物の形態である場合には、各ORはブロック状に付加していてもまたはランダム状に付加していてもよく;Rは、水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わし;nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300である、
で表される構成単位を有する少なくとも一のポリカルボン酸系重合体(B)を含み、かつ上記ポリカルボン酸系重合体(A)と上記ポリカルボン酸系重合体(B)との重量比[(A)/(B)の重量比]が1/99〜99/1である、セメント混和剤が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、セメント混和剤に関し、より詳しくは、特定の構成単位を有する2種以上のポリカルボン酸系重合体を含むセメント混和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
関連分野の説明
ポリカルボン酸系共重合体を含むセメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等に広く用いられており、セメント組成物から土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。このようなセメント混和剤は減水剤等として用いられ、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を有することになる。このような減水剤としては、従来のナフタレン系等の減水剤に比べて高い減水性能を発揮するポリカルボン酸系重合体を主成分とするポリカルボン酸系減水剤が、最近、高性能AE減水剤として多くの使用実績がある。
【0003】
その一例として、不飽和カルボン酸とビニルエーテル系単量体との共重合体は、セメント分散剤、洗剤用ビルダーなど種々の分野で利用されている。
【0004】
例えば、特開平9−309756号公報には、ビニルエーテル系単量体と無水マレイン酸との共重合体をセメント混和剤として用いることが記載されている。また、US−B−6777517およびWO 2004/084602には、ビニルエーテル系単量体と不飽和カルボン酸との共重合体の製造方法が開示されているが、副反応を抑制しつつ高純度の共重合体を得るには満足のいく方法ではなかった。
【発明の開示】
【0005】
本発明の要約
不飽和カルボン酸とビニルエーテル系単量体との共重合体は、優れた減水性を有するものの、経時的にセメント組成物の流動性が低下してスランプおよびスランプフローが小さくなるという問題点が残されていた。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、優れた減水性を有し、なおかつ経時的にセメント組成物の流動性が低下してスランプおよびスランプフローが小さくなることのないセメント混和剤を提供することを目的とするものである。
【0007】
本発明者らは、種々のセメント混和剤を検討するうち、ビニルエーテル系単量体由来の構造を必須成分として有するポリカルボン酸系重合体(A)と、炭素数2〜18のポリアルキレングリコール鎖を有しポリカルボン酸系重合体(A)とは異なる構造のポリカルボン酸系重合体(B)とを必須成分とするセメント混和剤が、優れた減水性を有し、なおかつ経時的に流動性が低下してスランプおよびスランプフローが小さくなることのないセメント組成物を得るために有効であることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、上記目的は、2種以上のポリカルボン酸系重合体を含んでなるセメント混和剤であって、該セメント混和剤は、ポリカルボン酸系重合体として、下記式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルケニル基、または炭素数6〜12のアリール基を表わし;Aは、炭素数1〜30のアルキレン基または炭素数6〜12のアリーレン基を表わし;aは、0または1であり;ORは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ORは同一であってもまたは異なるものであってもよく、ORが2種以上の混合物の形態である場合には、各ORはブロック状に付加していてもまたはランダム状に付加していてもよく;Rは、水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わし;mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300である、
で表される構成単位を有する少なくとも一のポリカルボン酸系重合体(A)、および下記式(2):
【0011】
【化2】

【0012】
ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表わし;xは、0〜2の整数であり、yは、0または1であり、この際、x及びyが双方とも0である場合を除く;ORは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ORは同一であってもまたは異なるものであってもよく、ORが2種以上の混合物の形態である場合には、各ORはブロック状に付加していてもまたはランダム状に付加していてもよく;Rは、水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わし;nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300である、
で表される構成単位を有する少なくとも一のポリカルボン酸系重合体(B)を含み、かつ上記ポリカルボン酸系重合体(A)と上記ポリカルボン酸系重合体(B)との重量比[(A)/(B)の重量比]が1/99〜99/1である、セメント混和剤によって達成される。
【0013】
本発明のセメント混和剤は、上述の構成よりなるので、優れたセメント分散性能、減水性能を発揮し、各種のセメント組成物等に好適に適用することができるうえに、経時的にセメント組成物の流動性が低下してスランプおよびスランプフローが小さくなることがなく取り扱う現場において作業しやすくなるので、本発明のセメント混和剤を用いることにより、土木・建築構造物等を構築する際の作業効率等が改善され、しかもこのような効果を得るために必要なセメント混和剤添加量が少なくて済むので経済的メリットも多大である。
【0014】
本発明の上記および他の目的、態様および他の利点は、下記好ましい態様の説明および添付図面から明らかになるであろう。
【0015】
好ましい実施形態の説明
以下、本発明を詳述する。
【0016】
本発明は、2種以上のポリカルボン酸系重合体を含んでなるセメント混和剤であって、該セメント混和剤は、ポリカルボン酸系重合体として、下記式(1):
【0017】
【化3】

【0018】
ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルケニル基、または炭素数6〜12のアリール基を表わし;Aは、炭素数1〜30のアルキレン基または炭素数6〜12のアリーレン基を表わし;aは、0または1であり;ORは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ORは同一であってもまたは異なるものであってもよく、ORが2種以上の混合物の形態である場合には、各ORはブロック状に付加していてもまたはランダム状に付加していてもよく;Rは、水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わし;mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300である、
で表される構成単位を有する少なくとも一のポリカルボン酸系重合体(A)、および下記式(2):
【0019】
【化4】

【0020】
ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表わし;xは、0〜2の整数であり、yは、0または1であり、この際、x及びyが双方とも0である場合を除く;ORは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ORは同一であってもまたは異なるものであってもよく、ORが2種以上の混合物の形態である場合には、各ORはブロック状に付加していてもまたはランダム状に付加していてもよく;Rは、水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わし;nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300である、
で表される構成単位を有する少なくとも一のポリカルボン酸系重合体(B)を含み、かつ上記ポリカルボン酸系重合体(A)と上記ポリカルボン酸系重合体(B)との重量比[(A)/(B)の重量比]が1/99〜99/1である、セメント混和剤に関するものである。
【0021】
本発明の必須成分の一つであるポリカルボン酸系重合体(A)は、一分子中に2個以上のカルボキシル基またはその塩を有する重合体であり、その重合体の構成単位として上記式(1)で示される特定の構造が導入されたものである。また本発明のもう一つの必須成分であるポリカルボン酸系重合体(B)は、一分子中に2個以上のカルボキシル基またはその塩を有する重合体であり、その重合体の構成単位として上記式(2)で示される特定の構造が導入されたものであり、好ましくは一分子中に2個以上のカルボキシル基またはその塩を有する重合体であり、その重合体の構成単位として、上記式(2)中のnが1〜10となっている上記式(2)で表される特定の構造および/または上記式(2)中のORの少なくとも一部が以下に詳述する下記式(3)である上記式(2)で表される特定の構造が導入されたものである。
【0022】
本発明において、上記ポリカルボン酸系重合体(A)と上記ポリカルボン酸系重合体(B)との重量比[(A)/(B)の重量比]は、1/99〜99/1の間で任意の割合とすることができる。しかしながら、特に経時的にセメント組成物の流動性が低下してスランプおよびスランプフローが小さくなることを抑制・防止する効果が望まれる場合には、本発明のセメント混和剤は、ポリカルボン酸系重合体(A)に比して、上記ポリカルボン酸系重合体(B)を多く含むことが好ましい。また、特にセメント混和剤の添加量を重視する場合には、本発明のセメント混和剤は、ポリカルボン酸系重合体(B)に比して、上記ポリカルボン酸系重合体(A)を比較的多く含むことが好ましい。
【0023】
すなわち、特に経時的にセメント組成物の流動性が低下してスランプおよびスランプフローが小さくなることを抑制・防止する点を考慮すると、上記ポリカルボン酸系重合体(A)と上記ポリカルボン酸系重合体(B)との重量比[(A)/(B)の重量比]は、50/50〜1/99であることが好ましく、さらに好ましくは40/60〜1/99、最も好ましくは30/70〜1/99である。また、特にセメント混和剤の添加量を重視する、即ち、所定のスランプフロー値になるまでセメントを分散・流動するのに必要なセメント混和剤の添加量を減少させる場合には、上記ポリカルボン酸系重合体(A)と上記ポリカルボン酸系重合体(B)の重量比[(A)/(B)の重量比]は、10/90〜99/1であることが好ましく、さらに好ましくは20/80〜99/1、最も好ましくは30/70〜99/1であることが望ましい。
【0024】
また、本発明のセメント混和剤は、上記ポリカルボン酸系重合体(A)と上記ポリカルボン酸系重合体(B)とのみからなっても、あるいは本発明に係るポリカルボン酸系重合体(A)及び(B)に加えて他の成分が含まれてもよい。このうち、特に経時的にセメント組成物の流動性が低下して、スランプ及びスランプフロー値が小さくなることを抑制・防止する点を重視する場合には、本発明のセメント混和剤は、本発明に係るポリカルボン酸系重合体(A)及び(B)のみからなることが最も好ましいため、本発明のセメント混和剤の総重量に占める上記ポリカルボン酸系重合体(A)と上記ポリカルボン酸系重合体(B)との合計重量の割合は、100重量%であることが最も好ましい。また、特にセメント混和剤の添加量を重視する、即ち、所定のスランプフロー値になるまでセメントを分散・流動するのに必要なセメント混和剤の添加量を減少させる場合には、本発明に係るポリカルボン酸系重合体(A)及び(B)に加えて、他の成分をさらに含んでもよい。このような場合における本発明のセメント混和剤の総重量に占める上記ポリカルボン酸系重合体(A)と上記ポリカルボン酸系重合体(B)との合計重量の割合は、所望の効果(例えば、優れた減水性、ならびに経時的なスランプ値およびスランプフロー値の低下の抑制・防止効果)を奏する割合であれば特に制限されないが、50重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは60重量%以上、最も好ましくは70重量%以上、最も特に好ましくは80重量%以上であることが好ましい。
【0025】
本発明のセメント混和剤の一成分である、ポリカルボン酸系重合体(A)は、一分子中に、カルボキシル基またはその塩を有する単量体由来の構成単位、および下記式(1):
【0026】
【化5】

【0027】
で表される構成単位を有する。
【0028】
上記式(1)において、R及びRは、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルケニル基、または炭素数6〜12のアリール基を表わす。この際、R及びRは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。炭素数1〜30のアルキル基としては、特に制限されず、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル、テトラデシル、オクタデシル、イコシル等の炭素数1〜30の直鎖及び分岐鎖のアルキル基;シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基などが挙げられる。また、炭素数1〜30のアルケニル基としては、特に制限されず、例えば、ビニル(CH=CH−)、1−プロペニル、アリル(CH=CHCH−)、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、及び、2−ペンテニル等の炭素数1〜30の直鎖及び分岐鎖のアルケニル基が挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、特に制限されず、例えば、フェニル、ベンジル、フェネチル、o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル、ナフチル等が挙げられる。これらのうち、R及びRは、水素原子、メチルであることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0029】
上記式(1)において、Aは、炭素数1〜30のアルキレン基または炭素数6〜12のアリーレン基を表わす。この際、炭素数1〜30のアルキレン基としては、特に制限されず、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、プロピレン、ブチレン等の炭素数1〜30の直鎖及び分岐鎖のアルキレン基などが挙げられる。また、炭素数6〜12のアリーレン基としては、特に制限されず、例えば、o−,m−,p−フェニレン、1,2−,1,4−ナフチレン等が挙げられる。aは、0または1である。
【0030】
上記式(1)において、ORは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシスチレン基等が好ましく挙げられるが、より好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらにより好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。これらのオキシアルキレン基は、一つの構成単位中に複数個存在する(即ち、式(1)中、mが2以上である)場合には、一つの構成単位中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。更に、mは、オキシアルキレン基(OR)の平均付加モル数を表し、1〜300の数である。mが300を超えると粘性が高くなり、作業性に劣ることがある。好ましくは、mは、1〜200であり、より好ましくは5〜100、さらに好ましくは10〜60、最も好ましくは15〜40である。
【0031】
上記式(1)において、Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、特に好ましくは水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。このような炭化水素基としては、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル、テトラデシル、オクタデシル、イコシル等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル;フェニル、ベンジル、フェネチル、o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニリル、ベンズヒドリル、トリチル及びピレニル等のアリール基などが挙げられる。これらのうち、Rは、好ましくは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表わし、より好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0032】
したがって、上記式(1)で表される構成単位は、下記式(4)で示される単量体(a)由来である。
【0033】
【化6】

【0034】
上記式(4)中、R、R、R、R、A、a及びmは、上記式(1)中の定義と同様である。
【0035】
また、本発明の必須成分であるポリカルボン酸系重合体(A)は、以下に詳述するが、上記式(1)で表される構成単位と一分子中にカルボキシル基またはその塩を有する単量体由来の構成単位を有する重合体であればよく、その合成経路は問わない。合成経路の1例を挙げるとすれば、例えば、次の経路を挙げることができる。一分子中にカルボキシル基またはその塩と重合性二重結合とを有する単量体の1種または2種以上と、上記式(4)で表される単量体(a)の1種または2種以上とを、重合することにより得ることができる。
【0036】
単量体(a)は、上記式(4)で表される構造であればよく、特に限定されないが、一例としては、いわゆるビニル系単量体を挙げることができる。さらに具体的な例としては、ビニルアルコールにアルキレンオキサイドを付加させて得られた上記式(4)のORがOH基であるビニルエーテル系単量体や、アセチレンにメトキシポリアルキレンオキサイドを付加させて得られた上記式(4)のORがOCH基であるビニル系単量体などを挙げることができる。
【0037】
本発明のセメント混和剤を構成するポリカルボン酸系重合体(B)は、一分子中に、2個以上のカルボキシル基またはその塩を有する単量体由来の構成単位、および下記式(2):
【0038】
【化7】

【0039】
で表される構成単位を有する。
【0040】
上記式(2)において、R及びRは、水素原子またはメチル基を表わす。この際、R及びRは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。また、xは、式(2)の1構成単位中に存在するメチレン(−CH−)単位の数を表わし、0〜2の整数、好ましくは0〜1の整数、より好ましくは0である。yは、式(2)の1構成単位中に存在するカルボニル(−CO−)単位の数を表わし、0または1であり、好ましくは1である、この際、x及びyが同時に0である場合は除く。
【0041】
上記式(2)において、Rは、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、より好ましくは水素原子または炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、特に好ましくは水素原子または炭素原子数1〜12の炭化水素基を表す。このような炭化水素基としては、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、イソオクチル、2,3,5−トリメチルヘキシル、4−エチル−5−メチルオクチル及び2−エチルヘキシル、テトラデシル、オクタデシル、イコシル等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル;フェニル、ベンジル、フェネチル、o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニリル、ベンズヒドリル、トリチル及びピレニル等のアリール基などが挙げられる。これらのうち、Rは、好ましくは水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表わし、より好ましくは水素原子またはメチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0042】
上記式(2)において、nは、オキシアルキレン基(OR)の平均付加モル数を表わし、1〜300の数である。この際、オキシアルキレン基(OR)の平均付加モル数nが比較的小さい場合には、ポリカルボン酸系重合体(B)のセメントへの吸着速度が比較的遅くなるので、ある程度時間が経過した後であっても、ポリカルボン酸系重合体(B)はセメントに有効に作用することができる。このため、特に経時的にセメント組成物の流動性が低下してスランプおよびスランプフローが小さくなること有効に抑制・防止しようとする場合には、nは1〜100であることが好ましく、さらに好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜25、最も好ましくは1〜10である。逆に、オキシアルキレン基(OR)の平均付加モル数nが大きい場合には、ポリカルボン酸系重合体(B)のセメントへの吸着速度が速くなり、ポリカルボン酸系重合体(B)のセメントへの効果が比較的早く発揮される。このため、特にセメント混和剤の添加量を重視する場合には、nは、6〜300であることが好ましく、さらに好ましくは10〜300、さらに好ましくは25〜300、最も好ましくは75〜300である。
【0043】
また、上記式(2)において、ORは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。このようなオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシスチレン基等が好ましく挙げられるが、より好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらにより好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。これらのオキシアルキレン基は、一つの構成単位中に複数個存在する(即ち、式(2)中、nが2以上である)場合には、一つの構成単位中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。
【0044】
この際、式(2)中のORの少なくとも一は、下記式(3):
【0045】
【化8】

【0046】
で表されることが好ましい。上記式(3)中のオキシエチレン(繰り返し単位数:o),オキシアルキレン(繰り返し単位数:p)及びオキシエチレン(繰り返し単位数:q)で表されるようなポリオキシアルキレン鎖は、いわゆるA−B型またはA−B−A型のブロック共重合体の形式であり、このような特定の構造が含まれると親水性ブロックであるオキシエチレンブロックが減水性を強く発現し、疎水性ブロックであるオキシアルキレンブロックが作業性をより多く付与することができる。したがって、このようなポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系重合体(B)を含むセメント混和剤は、より優れた効果を奏することができる。
【0047】
上記式(3)中、Rは、炭素数3〜18のアルキレン基を表わす。このようなオキシアルキレン基(OR)としては、2−メチルエチレン基(オキシプロピレン基)、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシ1−ブテン基、オキシ2−ブテン基、オキシスチレン基等が好ましく挙げられるが、より好ましくはオキシプロピレン基、オキシブチレン基、さらにより好ましくはオキシプロピレン基である。これらのオキシアルキレン基は、一つの構成単位中に複数個存在する(即ち、式(3)中、pが2以上である)場合には、一つの構成単位中に一種類が存在してもあるいは2種以上の混合物の形態で存在してもよい。オキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。これらのうち、Rは炭素数3である2−メチルエチレン基(一般にプロピレンオキシドが前駆体である)であることが好ましい。
【0048】
上記式(3)において、o及びqは、それぞれ、オキシエチレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300である。o及びqが300を超えると粘性が高くなり作業性に劣ることがある。なお、o及びqは、同一であってもあるいは異なる値であってもよい。また、oまたはqのいずれか一方が0である場合には、他方は0ではない、即ち、1〜300である。o及びqは、好ましくは0〜200であり、より好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜60、最も好ましくは1〜40である。また、pは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜50の数である。pが50を超えると減水性が低下したり、疎水性が高くなってセメントに配合する練水と相溶せずに作業性に劣る場合がある。pは、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜4である。o,p,qの総数であるo+p+qは、2〜300の数であり、300を超えると粘性が高くなり、作業性に劣ることがある。o、p及びqの合計(o+p+q)は、好ましくは6〜100、より好ましくは25〜75である。
【0049】
したがって、上記式(2)で表される構成単位は、下記式(5)で示される単量体(b)由来である。
【0050】
【化9】

【0051】
上記式(5)中、R、R、R、R、x、y及びnは、上記式(2)中の定義と同様である。
【0052】
また、本発明のもう一つの必須成分であるポリカルボン酸系重合体(B)は、以下に詳述するが、上記式(2)で表される構成単位と一分子中に2個以上のカルボキシル基またはその塩を有する単量体由来の構成単位とを有する重合体であればよく、その合成経路は問わない。合成経路の1例を挙げるとすれば、例えば、次の経路を挙げることができる。一分子中にカルボン酸またはカルボン酸塩と重合性二重結合とを有する単量体の1種または2種以上と、上記式(5)で表される単量体(b)の1種または2種以上とを、重合することにより得ることができる。この際、上記式(5)中のnが1〜10となっていると、経時的にセメント組成物の流動性が低下してスランプおよびスランプフローが小さくなることがないので好ましい。また、上記式(5)中のORが上記式(3)となっていると、親水性ブロックが減水性を強く発現し、疎水性ブロックが作業性をより多く付与するので、より優れたセメント混和剤が得られることとなるので好ましい。
【0053】
上記式(5)で表される単量体(b)は、上記式(5)で表される構造であればよく、特に限定されないが、例えば、不飽和アルコールあるいは不飽和カルボン酸に所定の繰り返し数となる量のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキサイドおよび/またはその他の炭素数2〜18のアルキレンオキサイドを付加することによって得ることができる。あるいは、炭素数1〜20の炭化水素基を有するアルコールやフェノール類に所定の繰り返し数となる量のエチレンオキシドを付加することによって得られるアルコールと不飽和カルボン酸とのエステル反応、あるいは、不飽和カルボン酸エステルとのエステル交換反応させることによっても得ることができる。
【0054】
上記方法において使用できる不飽和アルコールとしては、ビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール等が挙げられる。また、該不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、該不飽和カルボン酸エステルは、これらの該不飽和カルボン酸のアルキルエステル等を用いることができる。炭素数2〜18のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、不飽和炭化水素のエポキシド等が挙げられるが、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキシドが好ましい。炭素数1〜20の炭化水素基を有するアルコールやフェノール類としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルキルアルコール;ベンジルアルコール等のアリール基を有するアルコール;フェノール、パラメチルフェノール等のフェノール類が挙げられるが、メタノール、エタノール、ブタノールなどの炭素数1〜3のアルコールが好ましい。
【0055】
本発明に係るポリカルボン酸系重合体(A)あるいはポリカルボン酸系重合体(B)の上記合成経路において、上記式(4)または(5)の単量体と共重合する一分子中にカルボン酸またはカルボン酸塩と重合性二重結合とを有する単量体としては、例えば、下記式(6)で表される単量体(c)が挙げられる。
【0056】
【化10】

【0057】
上記式(6)において、R10、R11およびR12は、水素原子、メチル基、または−(CHCOOMを表わす。この際、R10、R11およびR12は、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。上記式:−(CHCOOMにおいて、zは、0〜2であり、好ましくは0〜1である。−COOM及び−COOMが2個以上存在する場合には、これらのうちの2個が無水物を形成していてもよく、例えば、−(CHCOOMが−COOMまたは他の−(CHCOOMと無水物を形成していてもよい。M及びMは、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属原子;アンモニウム、または有機アミン基を表わす。また、有機アミン基としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン及びフェニルアミン等の第一級アミン由来の基;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン及びジフェニルアミン等の第二級アミン由来の基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン及びトリフェニルアミン等の第三級アミン由来の基;およびエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来の基が挙げられる。これらのうち、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基等が好適に挙げられる。なお、M及びMが二価金属である場合には、2個の−COO−で無水物の形態をとる。M及びMは、同一であってもあるいは異なるものであってもよい。
【0058】
したがって、上記式(6)で表される単量体(c)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、または、それらの無水物が挙げられる。
【0059】
ポリカルボン酸系重合体(A)の製造方法
本発明の必須成分であるポリカルボン酸系重合体(A)は、式(1)の構成単位と一分子中に2個以上のカルボキシル基またはその塩を有する単量体由来の構成単位を有する重合体であり、その製造方法は特に制限されないが、本発明に係るポリカルボン酸系重合体(A)を製造する好ましい方法を以下に記載する。
【0060】
すなわち、式(4):
【0061】
【化11】

【0062】
で表される単量体(a)(以下、単に「単量体(a)」と称する)、および式(6):
【0063】
【化12】

【0064】
で表される単量体(c)(以下、単に「単量体(c)」と称する)と、必要に応じてその他の単量体(以下、単に「単量体(d)」と称する)とを共重合することによって、ポリカルボン酸系重合体(A)が得られる。この際、上記各単量体(a)の使用量は、所望の効果を達成できる量であれば特に制限されないが、用いられる単量体の総重量に対して、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは50〜90重量%であり、さらに好ましくは65〜85重量%である。また、単量体(c)の使用量もまた、所望の効果を達成できる量であれば特に制限されないが、5〜90重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%であり、さらに好ましくは15〜35重量%である。また、(a)、(c)以外の単量体(d)を共重合成分としてさらに用いてもよく、その際の使用量は、用いられる単量体の総重量に対して、0〜50重量%である。また、単量体(d)としては、単量体(a)、(c)の奏する効果を阻害せず、また、所望の効果をさらに付与できるものであれば特に制限されないが、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、アクリルアミド、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。上記単量体(d)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用してもよい。
【0065】
これらの単量体を重合することにより、該ポリカルボン酸系重合体(A)を得ることができる。重合方法としては、重合開始剤、及び、必要により連鎖移動剤を用いて、水溶液重合や有機溶媒中での重合のような溶液重合、エマルション重合、あるいは塊状重合等の公知の方法を用いることができる。特に反応の制御や、重合物の取り扱い易さの点を考慮すると、溶液重合が好ましい。溶液重合を行う場合、溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノールなどの低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチルなどのエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン化合物等の1種または2種以上を用いることができる。原料単量体及び得られる重合体の溶解性並びにこの重合体の使用時の簡便さを考慮すると、水及び炭素原子数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。この際の溶媒の使用量は、特に制限されないが、反応の制御しやすさ、副反応の起こり難さから考えると、溶媒における単量体の(a)及び(c)ならびに必要であれば単量体(d)からなる単量体成分の濃度が、好ましくは1〜90重量%、より好ましくは10〜80重量%、最も好ましくは20〜70重量%となるような量である。
【0066】
上記、単量体(a)、(c)を必須とする重合反応において、単量体(a)いわゆるビニル系単量体成分の不飽和結合は、酸性条件下において、ヘミアセタール化、単独重合反応などにより分解され、目的とする単量体(c)との共重合反応を阻害する要因となる。よって、単量体(a)の不飽和結合の分解を抑制するには、反応温度を下げることが好ましい。反応温度は、0℃〜90℃が好ましく、5℃〜60℃がより好ましく、10℃〜30℃が最も好ましい。
【0067】
重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のパーオキシドが好適である。また、上記重合反応において促進剤を併用してもよく、このような場合に使用できる促進剤は、特に制限されないが、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、モール塩、ピロ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、アスコルビン酸、エリソルビン酸等の還元剤;エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グリシン等のアミン化合物が使用できる。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0068】
また、塊状重合の場合においても、その方法、使用される重合開始剤の種類や量、重合条件などは、特に制限されず、公知の方法などが使用できる。例えば、重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が使用できる。また、塊状重合は、例えば、50〜200℃の温度範囲内で行なわれる。
【0069】
上記重合方法においては、得られる重合体の分子量を調節することを目的として、連鎖移動剤も必要に応じて使用することができる。このような連鎖移動剤としては、特に制限されず公知のものを1種または2種以上使用できる。例えば、疎水性連鎖移動剤として、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2−メルカプトプロピオン酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、オクタン酸2−メルカプトエチルエステル、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;α−メチルスチレンダイマー、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、ターピノーレン等の不飽和炭化水素化合物などが挙げられる。これらの疎水性連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、親水性連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;2−アミノプロパン−1−オール等の1級アルコール;イソプロパノール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物及びその塩等が挙げられる。これらの親水性連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0070】
上記連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、一括して投入する方法や、滴下、分割投入等の連続投入方法などいずれも適用することができるが、連続して投入することが好ましい。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入してもよく、単量体や溶媒等と予め混合しておいてもよい。上記重合方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。
【0071】
上記重合方法において、単量体や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に添加することによって重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体と重合開始剤の全量を、一括してあるいは逐次添加する方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、セメント組成物等の流動性を高める作用であるセメント分散性を向上することができることから、重合開始剤と単量体を反応容器に逐次滴下する方法で重合を行うことが好ましい。
【0072】
先に示したように、単量体(a)すなわちビニル系単量体を使用する場合、系中が酸性であると、単量体(c)との共重合反応が副反応により阻害される。本反応系において、系中を酸性としてしまう主な原因は単量体(c)の式中のMが水素の場合、例えば単量体(c)が(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの酸性モノマーの場合である。この場合、酸性モノマーの濃度が、副反応の反応速度に大きく影響することから、酸性モノマーの一部を中和し、副反応を抑制し、目的とする単量体(a)および(c)の共重合反応を促進することが望ましい。酸性モノマーの中和率は、1〜70mol%が好ましく、より好ましくは5〜60mol%、特に好ましくは10〜50mol%である。70mol%を超える酸性モノマーの中和は、単量体(c)の反応性を落とすこと、単量体(c)を入れておく容器壁面に多くの不飽和カルボン酸塩が析出してしまう可能性がある。単量体(c)の部分中和には、例えば、一価金属または二価金属の水酸化物、炭素塩などの無機物;アンモニア;有機アミンなどを用いることができ、中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の一価金属の水酸化物の水溶液が好ましい。
【0073】
ポリカルボン酸系重合体(B)の製造方法
本発明のもう一つの必須成分であるポリカルボン酸系重合体(B)は、式(2)の構成単位と一分子中に2個以上のカルボキシル基またはその塩を有する単量体由来の構成単位とを有する重合体であり、その製造方法は特に制限されないが、本発明に係るポリカルボン酸系重合体(B)を製造する好ましい方法を以下に記載する。
【0074】
すなわち、式(5):
【0075】
【化13】

【0076】
で表される単量体(b)(以下、単に「単量体(b)」と称する)、および式(6)の単量体(c)と、必要に応じてその他の単量体(以下、単に「単量体(e)」と称する)とを共重合することによって、ポリカルボン酸系重合体(B)が得られる。この際、上記各単量体(b)の使用量は、所望の効果を達成できる量であれば特に制限されないが、用いられる単量体の総重量に対して、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは50〜90重量%であり、さらに好ましくは65〜85重量%である。また、単量体(c)の使用量もまた、所望の効果を達成できる量であれば特に制限されないが、用いられる単量体の総重量に対して、5〜90重量%が好ましく、より好ましくは10〜50重量%であり、さらに好ましくは15〜35重量%である。また、(b)、(c)以外の単量体(e)を共重合成分としてさらに用いてもよく、その際の使用量は、用いられる単量体の総重量に対して、0〜50重量%である。また、単量体(e)としては、単量体(b)、(c)の奏する効果を阻害せず、また、所望の効果をさらに付与できるものであれば特に制限されないが、例えば、前述の該ポリカルボン酸系重合体(A)の製造において記載された単量体(d)に加えて、ポリエチレンイミンのアミノ基由来の活性水素(−NH)1当量に対して、エチレンオキシド(EO)を1〜20モル付加させたポリアルキレンイミンアルキレンキシド付加物1モルに対し、グリシジルメタクリレートを0.5〜10モル付加させた化合物などの、いわゆるポリエチレンイミン変性単量体などが挙げられる。
【0077】
これらの単量体を重合することにより、該ポリカルボン酸系重合体(B)を得ることができる。この際、ポリカルボン酸系重合体(B)の製造方法は、上記ポリカルボン酸系重合体(A)の製造方法と同様の方法が使用でき、すなわち、上記ポリカルボン酸系重合体(A)を得る場合と同様の重合開始剤、及び、必要により同様の連鎖移動剤、同様の溶媒を用いて、重合することができる。なお、上記重合において、溶媒の使用量は、特に制限されないが、反応の制御しやすさ、副反応の起こり難さから考えると、溶媒における単量体の(b)及び(c)ならびに必要であれば単量体(e)からなる単量体成分の濃度が、2〜70重量%、最も好ましくは3〜50重量%となるような量である。
【0078】
該ポリカルボン酸系重合体(B)の重合方法において、重合温度等の重合条件としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、重合温度としては、通常0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは40℃〜120℃、最も好ましくは60〜80℃の範囲である。
【0079】
上記の方法により得られる該ポリカルボン酸系重合体(A)および該ポリカルボン酸系重合体(B)は、そのままでもセメント混和剤の主成分として用いられるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して重合体塩の形態として用いてもよい。この際、アルカリ性物質としては、一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミンを用いることが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の一価金属の水酸化物が特に好ましく使用される。
【0080】
本発明の必須成分であるポリカルボン酸系重合体の(A)およびポリカルボン酸系重合体(B)重量平均分子量は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」という)によるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量(Mw)が3,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜80,000、さらに好ましくは7,000〜40,000である。なお、本明細書において、重合体の重量平均分子量は、特記しない限り、下記GPC測定条件によって測定された値である。
【0081】
〔GPC分子量測定条件〕
使用カラム:東ソー社製TSKguardColumn SWXL+TSKge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に、酢酸でpH6.0に調整した溶離液溶液を用いる。
【0082】
打込み量:0.5%溶離液溶液100μL
溶離液流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 MILLENNIUM Ver.3.21
本発明のセメント混和剤は、上述の方法によって得られるポリカルボン酸系重合体を必須成分とするものであるが、取り扱い上、水溶液の形態が好ましく、また、他の添加剤を本発明のセメント混和剤に含有していても良いし、あるいは、本混和剤をセメントと混合する際に、添加することもできる。他の添加剤としては、公知のセメント添加剤を用いることができ、例えば、下記のものが挙げられる。
【0083】
(a)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシエチレンあるいはポリオキシプロピレンのポリマーまたはそれらのコポリマー;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1,3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状の何れでも良く、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、バキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
【0084】
(b)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
【0085】
(c)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸またはクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩または有機塩等のオキシカルボン酸並びにその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖等の単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、またはデキストリン等のオリゴ糖、またはデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩またはホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0086】
(d)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナ
セメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
【0087】
(e)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
【0088】
(f)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキサイド付加物等。
【0089】
(g)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキサイド付加物等。
【0090】
(h)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0091】
(i)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキサイドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0092】
(j)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
【0093】
(k)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
【0094】
(l)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
【0095】
(m)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
【0096】
(n)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
【0097】
(o)AE剤:樹脂石鹸、飽和あるいは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステルまたはその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステルまたはその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0098】
(p)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキサイドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキサイド誘導体類;アルキル基またはアルコキシル基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0099】
(q)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
【0100】
(r)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
【0101】
(s)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルカンジオール類等。
【0102】
(t)膨張材:エトリンガイト系、石炭系等。
【0103】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等を挙げることができる。これら公知のセメント添加剤(材)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
さらには、本発明のセメント混和剤には、公知のセメント分散剤を併用することができ、例えば、以下のものが使用できる。
【0105】
リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;特開平1−113419号公報に記載の如くアミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系;特開平7−267705号公報に記載の如く(a)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物と(メタ)アクリル酸系化合物との共重合体及び/またはその塩と、(b)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と無水マレイン酸との共重合体及び/若しくはその加水分解物、並びに/または、その塩と、(c)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と、ポリアルキレングリコール系化合物のマレイン酸エステルとの共重合体及び/またはその塩とを含むセメント分散剤;特許第2508113号明細書に記載の如くA成分として、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステルと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体、B成分として、特定のポリエチレングリコールポリプロピレングリコール系化合物、C成分として、特定の界面活性剤からなるコンクリート混和剤;特開昭62−216950号公報に記載の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル若しくはポリエチレン(プロピレン)グリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、並びに、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特開平1−226757号公報に記載の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、及び、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特公平5−36377号公報に記載の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)若しくはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、並びに、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特開平4−149056号公報に記載の如くポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体;特開平5−170501号公報に記載の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及び、分子中にアミド基を有するα,β−不飽和単量体からなる共重合体;特開平6−191918号公報に記載の如くポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(塩)、並びに(メタ)アリルスルホン酸(塩)若しくはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)からなる共重合体;特開平5−43288号公報に記載の如くアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、若しくは、その加水分解物、または、その塩;特公昭58−38380号公報に記載の如くポリエチレングリコールモノアリルエーテル、マレイン酸、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、若しくは、その塩、または、そのエステル。
【0106】
特公昭59−18338号公報に記載の如くポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体;特開昭62−119147号公報に記載の如くスルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び必要によりこれと共重合可能な単量体からなる共重合体、または、その塩;特開平6−271347号公報に記載の如くアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端にアルケニル基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物;特開平6−298555号公報に記載の如くアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物;特開昭62−68806号公報に記載の如く3−メチル−3−ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、または、その塩等のポリカルボン酸(塩)。これらセメント分散剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。これら公知のセメント添加剤(材)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
上記セメント組成物において、セメント及び水以外の成分についての特に好適な実施形態としては、次の(1)〜(7)が挙げられる。
【0109】
(1)<1>本発明のセメント混和剤と<2>オキシアルキレン系消泡剤との2成分を必須とする組み合わせ。オキシアルキレン系消泡剤としては、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類等が使用可能であるが、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が特に好適である。尚、<2>のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、<1>のセメント混和剤に対して0.01〜20重量%の範囲が好ましい。
【0110】
(2)<1>本発明のセメント混和剤、<2>オキシアルキレン系消泡剤及び<3>AE剤の3成分を必須とする組み合わせ。オキシアルキレン系消泡剤としては、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類等が使用可能であるが、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が特に好適である。一方、AE剤としては、樹脂酸石鹸、アルキル硫酸エステル類、アルキルリン酸エステル類が特に好適である。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の消泡剤の配合重量比としては、<1>のセメント混和剤に対して0.01〜20重量%が好ましい。一方、<3>のAE剤の配合重量比としては、セメントに対して0.001〜2重量%が好ましい。
【0111】
(3)<1>本発明のセメント混和剤、<2>炭素原子数2〜18のアルキレンオキサイドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、(メタ)アクリル酸系単量体及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体(特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報、特開平9−241056号公報等に記載)、及び、<3>オキシアルキレン系消泡剤の3成分を必須とする組み合わせ。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の共重合体との配合重量比としては、5/95〜95/5の範囲が好ましく、10/90〜90/10の範囲がより好ましい。<3>のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、<1>のセメント混和剤と<2>の共重合体との合計量に対して0.01〜20重量%の範囲が好ましい。
【0112】
(4)<1>本発明のセメント混和剤と<2>遅延剤との2成分を必須とする組み合わせ。遅延剤としては、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類等が使用可能である。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の遅延剤との配合比としては、共重合体(A)及び/または共重合体(B)と<2>の遅延剤との重量比で、50/50〜99.9/0.1の範囲が好ましく、70/30〜99/1の範囲がより好ましい。
【0113】
(5)<1>本発明のセメント混和剤と<2>促進剤との2成分を必須とする組み合わせ。促進剤としては、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類等が使用可能である。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の促進剤との配合重量比としては、10/90〜99.9/0.1が好ましく、20/80〜99/1がより好ましい。
【0114】
(6)<1>本発明のセメント混和剤と<2>材料分離低減剤との2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、非イオン性セルロースエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素原子数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素原子数2〜18のアルキレンオキサイドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等が使用可能である。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の材料分離低減剤との配合重量比としては、10/90〜99.99/0.01が好ましく、50/50〜99.9/0.1がより好ましい。この組み合わせのセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
【0115】
(7)<1>本発明のセメント混和剤と<2>分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤との2成分を必須とする組み合わせ。スルホン酸系分散剤としては、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系の分散剤等が使用可能である。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤との配合比としては、<1>のセメント混和剤と<2>の分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤との重量比で、5/95〜95/5が好ましく、10/90〜90/10がより好ましい。
【0116】
本発明のセメント混和剤は、公知のセメント混和剤と同様に、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができる。また、超高強度コンクリートにも用いることができる。上記セメント組成物としては、セメント、水、細骨材、粗骨材等を含む通常用いられるものが好適である。また、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカヒューム、石灰石等の微粉体を添加したものであってもよい。なお、超高強度コンクリートとは、セメント組成物の分野で一般的にそのように称されているもの、すなわち従来のコンクリートに比べて水/セメント比を小さくしてもその硬化物が従来と同等またはより高い強度となるようなコンクリートを意味し、例えば、水/セメント比が25重量%以下、更に20重量%以下、特に18重量%以下、特に14重量%以下、特に12重量%程度であっても通常の使用に支障をきたすことのない作業性を有するコンクリートとなり、その硬化物が60N/mm以上、更に80N/mm以上、より更に100N/mm以上、特に120N/mm以上、特に160N/mm以上、特に200N/mm以上の圧縮強度を示すことになるものである。
【0117】
本発明のセメント混和剤に使用されるセメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)が好適であり、更に、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加してもよい。また、骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。上記セメントのコンクリート1m当たりの配合量及び単位水量としては、例えば、高耐久性・高強度のコンクリートを製造するためには、単位水量100〜185kg/m3、使用セメント量250〜800kg/m3、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7とすることが好ましく、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m3、使用セメント量270〜800kg/m3、水/セメント比(質量比)=0.2〜0.65が推奨され、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0118】
本発明のセメント混和剤のセメント組成物中の配合割合としては、例えば、水硬性セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、本発明の必須成分であるポリカルボン酸系重合体(A)およびポリカルボン酸系重合体(B)の合計重量が、セメント重量の全量100重量%に対して、0.01重量%以上となるようにすることが好ましく、10重量%以下となるようにすることが好ましい。0.01重量%未満であると、性能的に不充分となるおそれがあり、10重量%を超えると、経済性が劣ることとなる。より好ましくは、0.05重量%以上であり、8重量%以下であり、さらに好ましくは、0.1重量%以上であり、5重量%以下である。なお、上記重量%は、固形分換算の値である。
実施例
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「%」は、「重量%」を意味するものとする。
【0119】
(重合体の重量平均分子量測定方法)
使用カラム:東ソー社製TSKguardcolumn SWXL+TSKge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に酢酸でpH6.0に調整した溶離液溶液を用いる。
【0120】
打込み量:重合体濃度0.5%の溶離液溶液を100μL
溶離液流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470。
【0121】
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410
示差屈折検出器 解析ソフト:日本Waters社製 MILLENNIUM Ver.3.21
(製造例1)
CHEMIWAY 丸善石油化学株式会社製のジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV)から公知の方法により、ビニルエーテルのエチレンオキシド20モル付加化合物(以下VE−20と称す)を合成した。温調、攪拌翼、窒素導入口を備えた容器にVE−20の65重量%水溶液を163.4g仕込み、溶液温度を29℃とした。容器内に100ml/分の窒素を流し、70重量%のアクリル酸水溶液20.3gを1.5時間、4モル%/モノマーの過酸化水素水溶液21.2g、β−メルカプトプロピオン酸1.5モル%/モノマーとL−アスコルビン酸1モル%/モノマーの溶解した水溶液44.9gを1.75時間かけて滴下した。開始1.75時間後に30分の熟成を行った。反応中、溶液温度は27〜30℃の間でコントロールされた。
【0122】
得られたポリカルボン酸系重合体(A−1)の固形分は50%であり、GPC溶離液を加えサンプル濃度を0.5%とし、GPCでの分子量測定をおこなった。GPCピークは大きく2つ現れ、Mp34,560のピーク(重合体ピーク)とMp1,180のピーク(非重合体ピーク)を両ピークの間にできる谷部分の最下層で分け、Mp1,180のピークはマイナスピークを含まないようにした。この時、非重合体ピーク面積/重合体ピーク面積は23.5%であった。
【0123】
(製造例2)
〔ポリカルボン酸系重合体(B−1)の製造〕
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応器に蒸留水995部を仕込み、70℃に昇温した。続いて表1に示す単量体(b−1)1067部、メタクリル酸283部、48%水酸化ナトリウム水溶液41.2部、3−メルカプトプロピオン酸20部及び蒸留水354部を混合した溶液を5時間、並びに、6.5%過硫酸アンモニウム水溶液240部を6時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を70℃に1時間維持した。冷却後30%水酸化ナトリウム水溶液を加えpH7に調整し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリエチレングリコール換算で重量平均分子量14000のポリカルボン酸系重合体(B−1)の水溶液(固形分濃度45重量%)を得た。
【0124】
【表1】

【0125】
(製造例3)
〔ポリカルボン酸系重合体(B−2)の製造〕
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応器に蒸留水695.5部を仕込み、70℃に昇温した。続いて表1に示す単量体(b−1)1244.6部、メタクリル酸330.4部、30%水酸化ナトリウム水溶液76.1部、3−メルカプトプロピオン酸34.6部及び蒸留水368.6部を混合した溶液を5時間、並びに、2.4%過酸化水素水溶液240部を6時間、並びに3.1%L−アスコルビン酸水溶液245部を6時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を70℃に1時間維持した。冷却後30%水酸化ナトリウム水溶液を加えpH7に調整し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリエチレングリコール換算で重量平均分子量8500のポリカルボン酸系重合体(B−2)の水溶液(固形分濃度45重量%)を得た。
【0126】
(製造例4)
〔ポリカルボン酸系重合体(B−3)の製造〕
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却管を備えたガラス製反応装置に水344部を仕込み攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で70℃まで昇温した。メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数4)1076部、メタクリル酸190部、表1に示す単量体(b−2)の43%水溶液754.6部、48%水酸化ナトリウム水溶液21.7部、3−メルカプトプロピオン酸44.6部及び蒸留水287部を混合したモノマー水溶液を5時間で、2.0%過酸化水素水240部及び2.5%L−アスコルビン酸水溶液240部をそれぞれ6時間で滴下した。その後1時間引き続いて70℃を維持し、重合を完結させ、重量平均分子量10000のポリカルボン酸系重合体(B−3)の水溶液(固形分濃度55.7重量%)を得た。
【0127】
(製造例5)
〔ポリカルボン酸系重合体(B−4)の製造〕
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却管を備えたガラス製反応装置に水573.5部を仕込み攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した。続いて表1に示す単量体(b−3)545.7部、メタクリル酸108.0部、48%水酸化ナトリウム水溶液11.8部、3−メルカプトプロピオン酸9.76部及び蒸留水148.6部を混合したモノマー水溶液を4時間で、3.7%過酸化水素水50部及び4.7%L−アスコルビン酸水溶液50部をそれぞれ5時間で滴下した。その後1時間引き続いて60℃を維持し、重合を完結させ、重量平均分子量13100のポリカルボン酸系重合体(B−4)の水溶液(固形分濃度45重量%)を得た。
【0128】
(実施例1〜3)
製造例1で製造したポリカルボン酸系重合体(A−1)および製造例2〜5で製造したポリカルボン酸系重合体(B−1)〜(B−4)および表2に示す構造のセメント混和剤(A)、(B)を、表3に示す配合で混合し、本発明のセメント混和剤(1)〜(3)を得た。これら本発明のセメント混和剤(1)〜(3)を用い、コンクリート試験を行い、添加量と経時後のスランプおよびスランプフローの変化を評価した。結果を表4に示した。
【0129】
(比較例1)
製造例1で製造したポリカルボン酸系重合体(A−1)のみからなる比較セメント混和剤(1)を用い、コンクリート試験を行ない、添加量と経時後のスランプおよびスランプフローの変化を評価した。結果を表4に示した。
【0130】
(比較例2)
製造例2で製造したポリカルボン酸系重合体(B−1)のみからなる比較セメント混和剤(2)を用い、コンクリート試験を行ない、添加量と経時後のスランプおよびスランプフローの変化を評価した。結果を表4に示した。
【0131】
(比較例3)
製造例3で製造したポリカルボン酸系重合体(B−2)のみからなる比較セメント混和剤(3)を用い、コンクリート試験を行ない、添加量と経時後のスランプおよびスランプフローの変化を評価した。結果を表4に示した。
【0132】
上記実施例1〜3及び比較例1〜3において、コンクリート試験は、下記の方法に従って行なわれた。
【0133】
〔コンクリート試験方法〕
実施例1〜3、及び比較例1で示したセメント混和剤を用いて、下記に示す配合でコンクリートを調合・混練し、所定のスランプフロー値を得るための混和剤添加量と、混練直後(すなわち0分後)、混練30分後および混練60分後のスランプ値およびスランプフロー値を評価した。
【0134】
(コンクリート配合)
配合単位量は、水175kg/m、セメント389kg/m、粗骨材941kg/m、細骨材791kg/mとした。
【0135】
消泡剤であるMA404(ポゾリス物産製)をセメント重量に対して0.003%を配合した。
【0136】
セメント:下記3種類のセメントを重量比1対1対1で混合して使用。
【0137】
宇部三菱セメント社製普通ポルトランドセメント
住友大阪セメント社製普通ポルトランドセメント
太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント
粗骨材:青森県八戸産石灰砕石
細骨材:千葉県君津産山砂
消泡剤であるMA404(ポゾリス物産製)をセメント重量に対して0.005%配合した。
【0138】
セメント重量に対するセメント混和剤の配合量は、混和剤の固形分量で計算し、%(重量%)表示で表4に示した。
【0139】
(コンクリート製造条件)
上記配合で、50L強制練りミキサーにセメント、細骨材、粗骨材を投入して10秒間空練を行い、次いで、セメント混和剤を配合した水を加えて更に120秒間混練を行い、コンクリートを製造した。
【0140】
(評価方法および評価基準)
得られたコンクリートのスランプ値およびスランプフロー値測定は日本工業規格(JIS A1101、1128、6204)に準拠して行った。
【0141】
【表2】

【0142】
【表3】

【0143】
【表4】

【0144】
(評価結果)
上記表4から、実施例1〜3で使用した本発明のセメント混和剤(1)〜(3)を用いたコンクリートはいずれも、比較例2及び3で使用した比較セメント混和剤(1)及び(3)を用いたコンクリートに比して、少ない添加量で所定のスランプフロー値になるまでセメントを分散・流動させることができており、優れた減水性を示している。なおかつ、比較例1及び2で使用した比較セメント混和剤(1)及び(2)を用いたコンクリートより混練30分後および混練60分後のスランプ値およびスランプフロー値の低下が少ないので、経時後の流動性が悪化しにくくなっていることが判る。
【0145】
上記に加えて、実施例2で使用した本発明のセメント混和剤(2)は、比較例1及び3で使用した比較セメント混和剤(1)及び(3)を組合わせて使用したものであるが、比較例1及び3より少ない量のセメント混和剤を使用しているにもかかわらず、比較例1及び3で使用した比較セメント混和剤(1)及び(3)より混錬60分の値のスランプフロー値の低下が少ない。これから、本発明のセメント混和剤は、より少ない量で経時的な流動性の低下を有効に抑制・防止できることが分かる。なお、比較例1で使用した比較セメント混和剤(1)は、本発明に係るポリカルボン酸系重合体(A)の一種であり、比較例3で使用した比較セメント混和剤(3)は、本発明に係るポリカルボン酸系重合体(B)の一種である。上記点及び上記結果から、本発明によるようにポリカルボン酸系重合体(A)及びポリカルボン酸系重合体(B)を組合わせて使用することによって、それぞれを単独で使用した場合に比して、より少ない量でかつ経時的な流動性の低下を有意に抑制・防止できることが示される。この結果は、使用量を少なくする効果に優れる本発明に係るポリカルボン酸系重合体(A)と、経時的な流動性の低下の抑制・防止する効果に優れる本発明に係るポリカルボン酸系重合体(B)とを特定の割合で混合することによって、ポリカルボン酸系重合体(A)及び(B)による相乗効果が発揮されて、使用量の低減ならびに経時的な流動性の低下の抑制・防止という相反する性能を両立することができるためであると考察される。
【0146】
産業上の利用可能性
本発明のセメント混和剤は優れた減水性を有し、なおかつ経時的にセメント組成物の流動性が低下してスランプおよびスランプフローが小さくなるのを抑制するため、本発明のセメント混和剤を用いることにより、セメント硬化物が作業効率よく形成・製造できるので、強度および耐久性に優れた土木建造物や建築建造物を構築する上で、多大な役割を果たすものである。
【0147】
本出願は、2005年3月30日に出願された日本特許出願番号2005−100055号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のポリカルボン酸系重合体を含んでなるセメント混和剤であって、該セメント混和剤は、ポリカルボン酸系重合体として、下記式(1):
【化1】

ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルケニル基、または炭素数6〜12のアリール基を表わし;Aは、炭素数1〜30のアルキレン基または炭素数6〜12のアリーレン基を表わし;aは、0または1であり;ORは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ORは同一であってもまたは異なるものであってもよく、ORが2種以上の混合物の形態である場合には、各ORはブロック状に付加していてもまたはランダム状に付加していてもよく;Rは、水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わし;mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300である、
で表される構成単位を有する少なくとも一のポリカルボン酸系重合体(A)、および下記式(2):
【化2】

ただし、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表わし;xは、0〜2の整数であり、yは、0または1であり、この際、x及びyが双方とも0である場合を除く;ORは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ORは同一であってもまたは異なるものであってもよく、ORが2種以上の混合物の形態である場合には、各ORはブロック状に付加していてもまたはランダム状に付加していてもよく;Rは、水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を表わし;nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300である、
で表される構成単位を有する少なくとも一のポリカルボン酸系重合体(B)を含み、かつ上記ポリカルボン酸系重合体(A)と上記ポリカルボン酸系重合体(B)との重量比[(A)/(B)の重量比]が1/99〜99/1である、セメント混和剤。
【請求項2】
上記式(2)において、nが1〜10である、請求項1に記載のセメント混和剤。
【請求項3】
上記式(2)において、ORは下記式(3):
【化3】

ただし、Rは、炭素数3〜18のアルキレン基を表わし;o及びqは、それぞれ、オキシエチレン基の平均付加モル数を表わし、0〜300であり、この際、oまたはqのいずれか一方が0である場合には、他方は1〜300であり;pは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜50の数であり;o、p及びqの合計(o+p+q)は、2〜300である、
で表わされる、請求項1または2に記載のセメント混和剤。
【請求項4】
上記ポリカルボン酸系重合体(A)と上記ポリカルボン酸系重合体(B)との重量比[(A)/(B)の重量比]が1/99〜90/10である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセメント混和剤。

【公表番号】特表2008−534412(P2008−534412A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527191(P2006−527191)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【国際出願番号】PCT/JP2006/307180
【国際公開番号】WO2006/107069
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】