説明

セメント混和剤

【課題】スランプ保持性を優れたものとして流動性が保持されるようにするとともに、セメント組成物等を取り扱う現場において作業しやすくなるような粘性とすることができ、セメント組成物等の状態を良好にでき、しかもセメント混和剤添加量を低減できるセメント混和剤を提供する。



【解決手段】炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするポリアルキレングリコール側鎖をもつポリカルボン酸系共重合体を含むセメント混和剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント混和剤に関する。より詳しくは、高い減水性能を発揮することができるうえに取り扱いやすいので、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等に好適に用いることができるセメント混和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント混和剤は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等に対して減水剤等として広く用いられており、セメント組成物から土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。このようなセメント混和剤は、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を有することになる。このような減水剤の中でもポリカルボン酸系重合体を含むものは、従来のナフタレン系等の減水剤に比べて高い減水性能を発揮するため、高性能AE減水剤として多くの実績がある。
【0003】
このようなセメント混和剤においては、セメント組成物に対する減水性能に加えて、セメント組成物を取り扱う現場において作業しやすくなるように、その粘性を良好にすることができるものが求められている。すなわち減水剤として用いられるセメント混和剤は、セメント組成物の粘性を低下させることによる減水性能を発揮することになるが、このような性能を発揮すると共に、それを取り扱う現場において作業しやすくなるような粘性とすることができるものが土木・建築構造物等の製造現場において求められている。セメント混和剤がこのような性能を発揮すると、土木・建築構造物等の構築における作業効率等が改善されることとなる。
【0004】
ところで、無機粉体用分散剤に関し、オキシプロピレン基及び/又はオキシブチレン基とオキシエチレン基とのランダム重合鎖(A)を導入した、水溶性共縮合体又は水溶性共重合体を必須成分として含有するものが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、セメント組成物等に用いる場合、製造現場においてコンクリート等の流動性の保持性を向上させるとともに、コンクリート等の状態がより作業しやすい状態となるようにすることにより、土木・建築構造物等の構築現場における作業効率等を更に改善するための工夫の余地があった。
【0005】
また、ポリエチレングリコール鎖を有するポリカルボン酸系重合体のポリエチレングリコール鎖の特定部位である中間部位に炭素数3以上のアルキレンオキシド部位を導入することで、セメント組成物等の減水性を向上してその硬化物の強度や耐久性を優れたものとし、しかもそれを取り扱う現場において作業しやすい粘性とすることができるセメント混和剤が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながらそのようなセメント混和剤では、セメント混和剤の疎水性が強すぎるためにセメントへの吸着力が弱まっており、セメント分散能力を上げるためにセメント混和剤添加量が比較的多くなってしまい、経済的不利益が生ずるという問題点が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−248438号公報(第2頁)
【特許文献2】特願2003−128594号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、スランプ保持性を優れたものとして流動性が保持されるようにするとともに、セメント組成物等を取り扱う現場において作業しやすくなるような粘性とすることができ、セメント組成物等の状態を良好にでき、しかもセメント混和剤添加量を低減できるセメント混和剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、土木・建築構造物等の構築現場において求められているセメント混和剤について、流動性が保持されて作業性に優れたセメント組成物等を形成することができるものを検討するうち、ポリアルキレングリコールを側鎖に有するポリカルボン酸系共重合体を必須とするセメント混和剤がセメント組成物等に対して優れた減水性能を発揮することができることに着目した。このようなポリカルボン酸系共重合体において、ポリアルキレングリコール鎖が炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするものとすることにより、セメント組成物等の粘性を低減させることが可能となり、(1)酸量が異なる2種類以上の共重合体により構成されてなるもの及び/又は(2)重量平均分子量が特定された2種類以上の共重合体により構成されてなるものとすることにより、それぞれの共重合体の優れる特性を併せもつとともに、コンクリート等のセメント組成物の状態が良好で、スランプ保持性に優れるものとできるセメント混和剤とできることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。例えば、酸量の多い方の共重合体に起因して、セメント組成物の分散性をより向上させることを可能とし、酸量の少ない方の共重合体に起因して、セメント組成物等のスランプ保持性をより向上させることを可能とし、これらの作用効果が相まって、セメント組成物を作業しやすい状態とすることができることを見いだした。また、セメント混和剤をこのような形態とすることにより、セメント組成物等の分散性を向上させることができることから、該セメント混和剤の添加量を低減したり、セメント組成物等より得られる硬化物の圧縮強度を向上したりすることが可能となる。
【0009】
また本発者等は、減水性や作業性及び添加量に優れたセメント混和剤を検討するうち、炭素数2〜18のポリアルキレングリコール鎖であってその中の0.01〜49モル%が炭素数3〜18のポリアルキレングリコール鎖を有する部位と、ポリエチレングリコール鎖を有する部位とを併せ持つポリカルボン酸系共重合体がセメント組成物の作業性及び添加量低減を同時に改善するのに有効であることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち本発明は、ポリアルキレングリコール側鎖をもつポリカルボン酸系共重合体を含むセメント混和剤であって、上記ポリカルボン酸系共重合体は、酸量の異なる2種類以上の共重合体により構成されるものであり、上記酸量の異なる2種類以上の共重合体のうち少なくとも1つは、炭素数3以上のオキシアルキレン基を有するポリアルキレングリコール側鎖をもつものであるセメント混和剤である。
本発明はまた、炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするポリアルキレングリコール側鎖をもつポリカルボン酸系共重合体を含むセメント混和剤であって、上記ポリカルボン酸系共重合体は、重量平均分子量が20000以下であ
る2種類以上の共重合体により構成されるものであるセメント混和剤でもある。
【0011】
本発明は更に、ポリカルボン酸系共重合体を含んでなるセメント混和剤であって、上記ポリカルボン酸系共重合体は、下記一般式(1)で表される部位、及び、下記一般式(2)で表される部位を有するセメント混和剤でもある。
【0012】
【化1】

【0013】
式中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素又はメチル基を表す。xは、0〜2の数を表す。yは、0又は1を表す。ROは、同一若しくは異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表し、オキシアルキレン基の平均付加モル数の0.01〜49モル%が炭素数3〜18のオキシアルキレン基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、3〜300の数を表す。
【0014】
【化2】

【0015】
式中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素又はメチル基を表す。zは、0〜2の数を表す。wは、0又は1を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、nは、オキシエチレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
以下に本発明を詳述する。
【0016】
本発明のセメント混和剤は、炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするポリアルキレングリコール側鎖をもつポリカルボン酸系共重合体を含むものである。
上記ポリカルボン酸系共重合体は、(1)酸量の異なる2種類以上の共重合体により構成される形態、及び/又は、(2)重量平均分子量が20000以下である2種類以上の共重合体により構成される形態となるものを含有することになる。2種類以上の共重合体とは、特定の性質を有することにより1つの共重合体であると評価されるものが2種類以上含有されてなる共重合体である。
上記共重合体としては、ポリアルキレングリコール系不飽和単量体を含有する単量体成分を重合してなるものであることが好ましい。より好ましくは、単量体成分に不飽和カルボン酸系単量体を含有することである。また必要に応じて、その他の共重合可能な単量体を含有していてもよい。共重合体がこのような単量体成分を重合してなるものである場合に、2種類以上の共重合体の形態としては、(A)炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするポリアルキレングリコール鎖の構造が異なる形態、(B)単量体成分における各単量体の種類や使用量が異なる形態、(C)重合で得られた共重合体の分子量が異なる形態、(D)これらを組み合わせた形態等を挙げることができる。(A)の場合における構造としては、例えば、炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするポリアルキレングリコール側鎖がランダム重合の形態、ブロック重合の形態、交互重合の形態等であることが挙げられる。また(B)の場合においては、例えば、上述のその他の共重合可能な単量体の種類や使用量が異なる形態等が挙げられる。このような2種類以上の共重合体は、例えば、共重合体を別々に2種類以上調製した後に、それらの共重合体を混合したり、共重合体が2種類以上生成することになるように製造したりすることにより得ることができる。
【0017】
上記(1)の形態において、酸量の異なる2種類の共重合体により構成される場合には、これらの共重合体の酸量が異なることとなり、3種類以上の共重合体により構成される場合には、それぞれ共重合体の酸量が異なる形態であってもよく、同じ酸量を有する共重合体が少なくとも2種含まれる形態であってもよい。このように、炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするポリアルキレングリコール側鎖をもつポリカルボン酸系共重合体を含むセメント混和剤であって、上記ポリカルボン酸系共重合体は、酸量の異なる2種類以上の共重合体により構成されるものであるセメント混和剤は、本発明の好ましい形態の一つである。
【0018】
上記2種類以上の共重合体の酸量の比としては、1.2〜5倍であることが好ましい。1.2倍未満であったり、5倍を超えたりすると、セメント組成物等の分散性やスランプ保持性を充分には向上できなくなるおそれがある。より好ましくは、下限値が1.3倍、更に好ましくは、1.5倍である。また、より好ましくは、上限値が4倍、更に好ましくは、3倍である。より好ましい範囲としては、1.3〜4倍であり、更に好ましくは、1.5〜3倍である。
上記酸量の比としては、上記共重合体が2種類の場合には、多い方の酸量をA、少ない方の酸量をBとすると、A/Bとなり、上記共重合体が3種類以上の場合には、その中で最も多い酸量をC、最も少ない酸量をDとすると、C/Dとなる。
【0019】
上記2種類以上の共重合体のそれぞれの酸量は、酸量の最も多い共重合体においては、下限値が、10%であることが好ましい。より好ましくは、12%であり、更に好ましくは、15%である。上限値としては40%が好ましい。より好ましくは、35%であり、更に好ましくは、30%である。また、好ましい範囲としては、10〜40%であり、より好ましくは、12〜35%であり、更に好ましくは、15〜30%である。10%未満であったり、40%を超えたりすると、セメント組成物等の分散性が充分に向上されなくなるおそれがある。
上記酸量の最も少ない共重合体においては、下限値が、5%が好ましい。より好ましくは、7%であり、更に好ましくは、8%である。上限値としては30%が好ましい。より好ましくは、25%であり、更に好ましくは、20%である。また、好ましい範囲としては、5〜30%であり、より好ましくは、7〜25%であり、更に好ましくは、8〜20%である。5%未満であったり、30%を超えたりすると、セメント組成物等のスランプ保持性が充分に向上されなくなるおそれがある。
【0020】
上記酸量とは、酸基及び/又はその酸基が水酸化ナトリウムで完全中和されたナトリウム塩基を有する単量体の単量体成分中における含有割合(%)を意味する。例えば、上記共重合体が、単量体成分を重合することにより得られる場合に、該単量体成分中の酸基を有する単量体の配合質量をaとし、酸基を有さない単量体の配合質量をbとすると、酸量Aは下記式で求めることができる。
酸量A=100×a/(a+b)
例えば、全単量体成分を100質量%とする場合に、該単量体成分が、ポリアルキレングリコール系単量体75質量%、及び、酸基としてカルボキシル基を有するメタクリル酸ナトリウム25質量%からなる場合における酸量は25%となり、ポリアルキレングリコール系単量体60質量%、メタクリル酸ナトリウム30質量%及びメタクリル酸メチル10質量%からなる場合における酸量は30%となる。
上記酸基としては、カルボキシル基、スルホン基等が好適である。
【0021】
上記(1)の形態における2種類以上の共重合体のそれぞれの重量平均分子量としては、GPCによるポリエチレングリコール換算で1000以上が好ましい。より好ましくは、3000以上であり、更に好ましくは、5000以上であり、特に好ましくは、7000以上である。また、500000以下が好ましい。より好ましくは、300000以下であり、更に好ましくは、100000以下であり、特に好ましくは、80000以下である。重量平均分子量が1000未満であったり、500000を越えたりすると、分散性能が低下するおそれがある。
【0022】
上記(2)の形態において、2種類以上の共重合体の少なくとも1種類の重量平均分子量が20000を超えると、セメント組成物のスランプ保持性を充分には向上できず、また、充分にはセメント組成物を作業しやすい状態とすることができなくなる。好ましくは、19000以下であり、より好ましくは、18000以下である。
上記重量平均分子量としては、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」という)によるポリエチレングリコール換算により測定することができ、例えば以下のような測定条件により測定することができる。
【0023】
〔GPC分子量測定条件〕
使用カラム:東ソー社製TSKguardColumn SWXL+TSKge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に、酢酸でpH6.0に調整した溶離液溶液を用いる。
打込み量:0.5%溶離液溶液100μL
溶離液流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 MILLENNIUM Ver.3.21
【0024】
本発明のセメント混和剤においては、炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするポリアルキレングリコール側鎖をもつポリカルボン酸系共重合体を含有するものであるが、このような共重合体以外の重合体を含有していてもよく、本発明のセメント混和剤に含有される全重合体を100質量%とすると、炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするポリアルキレングリコール側鎖をもつポリカルボン酸系共重合体の含有量としては、50質量%以上であることが好ましい。50質量%未満であると、セメント組成物等の分散性を充分に向上することができなくなるおそれがある。より好ましくは、60質量%以上であり、更に好ましくは、70質量%以上である。
【0025】
上記セメント混和剤に含有される重合体全体の酸価としては、下限値が20mgKOH/gであることが好ましい。より好ましくは、40mgKOH/gであり、更に好ましくは、60mgKOH/gである。上限値としては140mgKOH/gが好ましい。より好ましくは、120mgKOH/gであり、更に好ましくは、100mgKOH/gである。また、好ましい範囲としては、20〜140mgKOH/gであり、より好ましくは、40〜120mgKOH/gであり、更に好ましくは、60〜100mgKOH/gである。20mgKOH/g未満であると、セメント分散性能が著しく低下するおそれがあり、140mgKOH/gを超えると、スランプ保持性能が著しく低下するおそれがある。
【0026】
上記酸価は、1gの重合体を水酸化カリウム(KOH)によって中和した場合に、該中和で消費された水酸化カリウムの量(mgKOH/g)を意味し、例えば、以下のようにして求めることができる。
〔酸価測定方法〕
酸価を求めようとする重合体溶液0.5〜1gに、アセトン80ml及び水10mlを加えて攪拌して均一に溶解させ、0.1mol/L KOH水溶液を滴定液として、自動滴定装置(平沼産業社製、「COM−555」)を用いて滴定し、溶液の酸価を測定する。他方、上記重合体溶液1.0gにアセトン2mlを加えて溶解させた溶液を、常温で自然乾燥させ、更に、5時間減圧乾燥(160℃/5mmHg)した後、デシケータ内で放冷し、質量を測定する。そして、溶液の酸価と溶液の樹脂固形分から重合体の酸価(mgKOH/g)を計算する。
【0027】
本発明のセメント混和剤を用いた場合におけるコンクリートのフローストップ値としては、15秒以下が好ましい。15秒を超えると、セメント組成物等を取り扱う現場において充分に作業しやすくできなくなるおそれがある。より好ましくは、14秒以下であり、更に好ましくは、13秒以下である。
上記フローストップ値は、以下のように測定することができる。
下記組成のコンクリートを調製し、セメント混和剤をコンクリート100質量%に対して0.25質量%程度添加し、空気量を3〜4%に調整したものの、初期(0min)のスランプフロー値の測定を行う場合に、フローが流れて止まるまでの時間を測定することにより求めることができる。上記スランプフロー値、空気量の測定は日本工業規格(JIS
A 1101、1128、6204)に準拠して行うことができる。
〔コンクリート配合〕
水:172kg/m
セメント(太平洋セメント社製、住友大阪セメント社製、宇部三菱セメント社製:普通ポルトランドセメント):491kg/m
細骨材(大井川系川砂):744.5kg/m
粗骨材(青梅産砕石):909.8kg/m
W/C:35%
【0028】
本発明における共重合体は、上述のように、ポリアルキレングリコール系不飽和単量体を単量体成分として重合して得られるものであることが好適である。また、単量体成分としては、不飽和カルボン酸系単量体を含有していることが好ましく、必要に応じて、これらの単量体と共重合可能な単量体を含有していてもよい。
上記共重合体をカルボン酸塩とする場合は、例えば、アルカル金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が用いられ、カルボン酸塩となっている単量体を重合してもよいし、カルボン酸の単量体を重合した後、塩形成させてもよい。
上記単量体成分におけるポリアルキレングリコール系不飽和単量体と不飽和カルボン酸系単量体との含有割合としては、ポリアルキレングリコール系不飽和単量体/不飽和カルボン酸系単量体(モル比)とすると、0.1以上であり、また、2以下であることが好ましい。より好ましくは、0.3以上であり、また、1.2以下である。
【0029】
上記ポリアルキレングリコール系不飽和単量体としては、炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするものであることが好ましい。このようなポリアルキレングリコール系不飽和単量体としては、例えば、下記一般式(3)で表される単量体が好ましい。
【0030】
【化3】

【0031】
上記一般式(3)中、R、R10及びR11は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。R12は、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。Rは、同一又は異なって、炭素数2〜18のアルキレン基を表す。Rは、少なくとも1つが炭素数3以上のアルキレン基である。p1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜300の数である。Xは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基、−CO−結合、又は、−R−CO−結合、若しくは、直接結合を表す。Xが直接結合を表す場合においては、Xに結合している炭素原子、酸素原子同士が直接結合していることとなる。Rは、炭素数1〜5の2価のアルキレン基を表す。
【0032】
上記一般式(3)における−(RO)−で表されるオキシアルキレン基は、少なくとも1種が炭素数3以上のオキシアルキレン基であり、同一の単量体にオキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、−(RO)−で表されるオキシアルキレン基がランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。
上記−(RO)−で表されるオキシアルキレン基は、炭素数2〜18のアルキレンオキシド付加物であり、炭素数3以上のアルキレンオキシドが少なくとも1種付加しているものである。このようなアルキレンオキシド付加物の構造は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド等のアルキレンオキシドの1種又は2種以上により形成される構造である。このようなアルキレンオキシド付加物の中でも、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが付加したものであることが好ましい。より好ましくは、エチレンオキシドが付加したものであることである。すなわちオキシプロピレン基及び/又はオキシブチレン基を必須として有し、オキシエチレン基を有するものであることがより好ましい。この場合、オキシエチレン基としては、全オキシアルキレン基100モル%中に50〜98モル%であることが好ましい。50モル%未満であると、オキシアルキレン基の親水性が不足しセメント粒子の分散性能が低下するおそれがある。より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、特に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
【0033】
上記ROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であるp1は、1〜300の数であることが好ましい。p1が300を超えると、単量体の重合性が低下するおそれがある。優れた流動性を得るには、p1の範囲としては、3以上が好ましく、また、280以下が好ましい。より好ましくは、5以上、更に好ましくは、10以上、特に好ましくは、20以上である。また、より好ましくは、250以下、特に好ましくは、150以下である。また、粘性の低いコンクリートを得るためには、p1の範囲としては、好ましくは、3以上であり、より好ましくは、4以上であり、更に好ましくは、5以上である。また、好ましくは、100以下であり、より好ましくは、50以下であり、更に好ましくは、30以下であり、特に好ましくは、25以下である。
【0034】
上記一般式(3)における−(RO)p1−の中で、炭素数3以上のオキシアルキレン基の平均付加モル数としては、0.2以上が好ましい。より好ましくは、0.5以上であり、また、10以下である。更に好ましくは、1以上であり、また、7以下である。このような範囲とすることにより、セメント組成物等の粘性を充分に低減させることができることになる。
またオキシエチレン基の平均付加モル数としては、2以上であることが好ましい。オキシエチレン基の平均付加モル数が2未満であると、セメント粒子等を分散させるために充分な親水性が得られないおそれがあるため、優れた流動性を得ることができないおそれがある。より好ましくは、3以上であり、更に好ましくは、5以上であり、特に好ましくは、10以上である。また、より好ましくは、280以下であり、更に好ましくは、250以下であり、特に好ましくは、200以下であり、最も好ましくは150以下である。
なお、平均付加モル数とは、オキシアルキレン基により形成される基1モル中において付加している当該オキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。
【0035】
上記一般式(3)で表される単量体としては、オキシアルキレン基の平均付加モル数p1の異なる2種類以上の単量体を組み合わせて用いることができる。好適な組み合わせとして、例えば、p1の差が10以下の組み合わせ(好ましくは5以下)、p1の差が10以上(好ましくはp1の差が15以上)の2種類の単量体の組み合わせ、又は、各々の平均付加モル数p1の差が10以上(好ましくはp1の差が15以上)の3種類以上の単量体の組み合わせ等が挙げられる。更に、組み合わせるp1の範囲としては、平均付加モル数p1が40〜300の範囲の単量体と、1〜40の範囲の単量体との組み合わせ(但しp1の差は10以上、好ましくは15以上)、平均付加モル数p1が20〜300の範囲の単量体と、1〜20の範囲の単量体との組み合わせ(但しp1の差は10以上、好ましくは15以上)等が可能である。
【0036】
また上記一般式(3)で表される単量体がポリアルキレングリコールエステル系単量体の場合には、−(RO)p1−で表されるオキシアルキレン基としては、(メタ)アクリル酸系単量体(R11C=CR10−COOH)とのエステル結合部分にエチレンオキシド部分が付加していることが(メタ)アクリル酸系単量体とのエステル化の生産性の向上の点から好ましい。
【0037】
上記R12は、炭素数が30を超えると、本発明のセメント混和剤の疎水性が強くなりすぎるために、良好な分散性を得ることができなくなるおそれがある。R12の好ましい形態としては、分散性の点から、炭素数1〜20の炭化水素基又は水素である。より好ましくは、炭素数10以下、更に好ましくは、炭素数5以下、より更に好ましくは、炭素数3以下、特に好ましくは、炭素数2以下の炭化水素基である。炭化水素基の中でも、飽和アルキル基、不飽和アルキル基が好ましい。これらのアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、優れた材料分離防止性能の発現や、セメント組成物中に連行される空気量を適度なものとするためには、炭素数5以上の炭化水素基とすることが好ましく、また、炭素数20以下の炭化水素基とすることが好ましい。より好ましくは、炭素数5〜10の炭化水素基である。炭化水素基の中でも、飽和アルキル基、不飽和アルキル基が好ましい。これらのアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0038】
上記ポリアルキレングリコール系不飽和単量体は、上述のように同一の単量体にオキシアルキレン基が2種以上存在する場合には、−(RO)−で表されるオキシアルキレン基がランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよく、例えば、ブロック付加の形態である場合においては、下記一般式(4)で表される単量体であることが好ましい。
【0039】
【化4】

【0040】
式中、R及びR10は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。R13は、同一若しくは異なって、炭素数3〜18のアルキレン基を表す。x1は、0〜2の数を表す。y1は、0又は1を表す。n1及びkは、オキシエチレン基の平均付加モル数を表し、n1は、1〜200、kは、1〜200の数である。m1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜50の数である。n1+m1+kは、3〜200の数である。R12は、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
【0041】
上記一般式(4)におけるn1及びkは、同一若しくは異なって、1〜200の数であり、200を超えると粘性が高くなり、作業性に劣ることがあり、好ましくは1〜60であり、より好ましくは1〜20である。m1は、1〜50の数であり、50を超えると減水性が低下したり、疎水性が高くなってセメントに配合する練水と相溶かせずに作業性に劣る場合がある。m1の範囲は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜5であり、更に好ましくは1〜3である。n1、m1及びkの総数であるn1+m1+kは、3〜200の数であり、200を超えると粘性が高くなり、作業性に劣ることがあり、好ましくは5〜120であり、より好ましくは5〜100であり、更に好ましくは5〜50である。R13は、同一若しくは異なって、炭素数3〜18のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数3である2−メチルエチレン基(一般にプロピレンオキシドが前駆体である)である。R12は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、好ましくはメチル基である。
【0042】
上記一般式(4)で表される単量体としては、不飽和アルコール及び/又は不飽和カルボン酸に所定の繰り返し数となる量のエチレンオキシドを付加し、その後、所定の繰り返し数となる量の炭素数3〜18のアルキレンオキシドを付加し、続いて、所定の繰り返し数となる量のエチレンオキシドを付加することによって得ることができる。また、炭素数1〜20の炭化水素基を有するアルコールやフェノール類に所定の繰り返し数となる量のエチレンオキシドを付加し、その後、所定の繰り返し数となる量の炭素数3〜18のアルキレンオキシドを付加し、続いて、所定の繰り返し数となる量のエチレンオキシドを付加することによって得られるアルコールと不飽和カルボン酸とのエステル反応、及び/又は、不飽和カルボン酸エステルとのエステル交換反応させることによっても得ることができる。
【0043】
上記不飽和アルコールとしては、ビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール等が好適である。また不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が好適である。更に、不飽和カルボン酸エステルは、これらの不飽和カルボン酸のアルキルエステル等を用いることができる。炭素数3〜18のアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、不飽和炭化水素のエポキシ化物等が好適であり、これらの中でも、プロピレンオキシドが好ましい。
上記炭素数1〜20の炭化水素基を有するアルコールやフェノール類としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルキルアルコール;ベンジルアルコール等のアリール基を有するアルコール;フェノール、パラメチルフェノール等のフェノール類等が好適であり、これらの中でも、メタノール、エタノール、ブタノール等の炭素数1〜3のアルコールが好ましい。
【0044】
上記共重合体の総重量に対する一般式(4)で表される化合物により形成される単量体単位の占める割合としては、10〜95質量%が好ましく、より好ましくは50〜90質量%であり、更に好ましくは65〜85質量%である。また、上記一般式(4)で表される単量体(X)と不飽和カルボン酸系単量体(Y)とを共重合して該共重合体を得る場合、(X)と(Y)の総重量を100質量%として、(X)は10〜95質量%が好ましく、より好ましくは50〜90質量%であり、更に好ましくは65〜85質量%である。また、(X)及び(Y)以外の共重合可能な単量体を共重合成分として用いてもよく、その使用量は(X)と(Y)の総重量を100質量%として、0〜50質量%である。
【0045】
上記ポリアルキレングリコール系不飽和単量体には、炭素数3以上のオキシアルキレン基を有しない単量体を併用してもよい。すなわち上記一般式(3)における−(RO)−で表されるオキシアルキレン基が、すべてオキシエチレン基であるものを用いてもよい。このようなポリアルキレングリコール系不飽和単量体は、上述のポリアルキレングリコール系不飽和単量体において、炭素数3以上のオキシアルキレン基を有しない以外は同様である。
【0046】
上記ポリアルキレングリコール系不飽和単量体、すなわち炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするポリアルキレングリコール系不飽和単量体や、炭素数3以上のオキシアルキレン基を有しないポリアルキレングリコール系不飽和単量体としては、例えば、不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコールエステル系単量体が好ましい。
上記不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物としては、不飽和基を有するアルコールにポリアルキレングリコール鎖が付加した構造を有する化合物であればよく、また、上記ポリアルキレングリコールエステル系単量体としては、不飽和基とポリアルキレングリコール鎖とがエステル結合を介して結合された構造を有する単量体であればよく、不飽和カルボン酸ポリアルキレングリコールエステル系化合物が好適であり、中でも、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好適である。
【0047】
上記不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物としては、例えば、ビニルアルコールアルキレンオキシド付加物、(メタ)アリルアルコールアルキレンオキシド付加物、3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、イソプレンアルコール(3−メチル−3−ブテン−1−オール)アルキレンオキシド付加物、3−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−2−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−2−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物、2−メチル−3−ブテン−1−オールアルキレンオキシド付加物が好適である。
【0048】
上記不飽和アルコールポリアルキレングリコール付加物としてはまた、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(1,1−ジメチル−2−プロペニル)エーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、エトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、シクロヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、1−オクチルオキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ノニルアルコキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ラウリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ステアリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ナフトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、
メトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、エトキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、エトキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテルが好適である。
【0049】
上記(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数1〜30の脂肪族アルコール類、シクロヘキサノール等の炭素数3〜30の脂環族アルコール類、(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の炭素数3〜30の不飽和アルコール類のいずれかに、炭素数2〜18のアルキレンオキシド基を1〜300モル付加したアルコキシポリアルキレングリコール類、特にエチレンオキシドが主体であるアルコキシポリアルキレングリコール類と、(メタ)アクリル酸とのエステル化物が好適である。
【0050】
上記エステル化物としては、以下に示す(アルコキシ)ポリエチレングリコール(ポリ)(炭素数2〜4のアルキレングリコール)(メタ)アクリル酸エステル類等が好適である。
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、メトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、エトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、プロポキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート。
【0051】
ブトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ブトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ブトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ペントキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペントキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ペントキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ペントキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ヘキソキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘキソキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ヘキソキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ヘキソキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート。
【0052】
ヘプトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘプトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ヘプトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ヘプトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、オクトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、オクトキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ノナノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノナノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ノナノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ノナノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート。
【0053】
デカノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、デカナノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、デカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、デカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ウンデカノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ウンデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ウンデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ウンデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ドデカノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ドデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ドデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ドデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート。
【0054】
トリデカノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、トリデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、トリデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、テトラデカノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、テトラデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、テトラデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ペンタデカノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ペンタデカナノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ペンタデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ペンタデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート。
【0055】
ヘキサデカノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ヘキサデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ヘキサデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ヘプタデカノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘプタデカナノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ヘプタデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ヘプタデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、オクタデカノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクタデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、オクタデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、オクタデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート。
【0056】
ノナデカノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノナデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ノナデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、ノナデカノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、シクロペントキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロペントキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、シクロペントキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、シクロペントキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、シクロヘキソキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキソキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、シクロヘキソキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、シクロヘキソキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート。
【0057】
上記(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、上述した化合物の他にも、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、フェノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、フェノキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルオキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルオキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルオキシ{ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール}モノ(メタ)アクリレートが好適である。
【0058】
上記ポリアルキレングリコール系不飽和単量体としては、上述したものの他にも、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノマレイン酸エステル、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールジマレイン酸エステル等が好適である。このような単量体としては、以下のもの等が好適である。
炭素数1〜30個のアルコールや炭素数1〜30のアミンに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上述のような不飽和ジカルボン酸系単量体とのハーフエステル、ジエステル;不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜18のグリコールの平均付加モル数が2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル;マレアミン酸と炭素数2〜18のグリコールの平均付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類。
【0059】
上記不飽和カルボン酸系単量体としては、重合性不飽和基とカルボアニオンを形成しうる基とを有する単量体であればよく、好ましくは、下記一般式(5)で表される化合物である。
【0060】
【化5】

【0061】
式中、R14、R15及びR16は、同一若しくは異なって、水素原子、メチル基、又は−(CH)z1COOMを表し、z1は0〜2の数を表す。−(CH)z1COOMは、−COOM又は他の−(CH)z1COOMと無水物を形成していてもよい。M及びMは、同一若しくは異なって、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基(有機アンモニウム基)を表す。
【0062】
上記一般式(5)のM及びMにおける金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適である。また、有機アミン基としては、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基が好適である。更に、アンモニウム基であってもよい。
【0063】
上記不飽和カルボン酸系単量体としては、不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体等が好適であり、不飽和モノカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基とカルボアニオンを形成しうる基とを1つずつ有する単量体であればよく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が好ましい。これらの中でも、セメント分散性能の向上の面から、メタクリル酸;その1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩を用いることがより好ましい。
上記不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基を1つとカルボアニオンを形成しうる基を2つとを有する単量体であればよく、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、又は、それらの無水物が好ましい。
【0064】
上記不飽和カルボン酸系単量体としてはまた、これらの他にも、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸類と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜4のグリコールとのハーフエステル、マレアミン酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフアミド等を用いることもできる。
【0065】
上記単量体と共重合可能な単量体としては、以下のような化合物を用いることができる。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチルエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物類;上述のような不飽和モノカルボン酸系単量体と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類。
【0066】
上述のような不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素原子数2〜18のグリコールとのハーフエステル、ジエステル類;マレアミン酸と炭素原子数2〜18のグリコールとのハーフアミド類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;スチレン、α−メチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;ヘキセン、ヘプテン、デセン等のα−オレフィン類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;アリルアルコール等のアリル類。
【0067】
1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体。
【0068】
上記共重合可能な単量体としてはまた、重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するポリアルキレンイミン系単量体、多価アルコール残基にオキシアルキレン基が結合した構造を有する単量体等を用いてもよく、例えば、(1)ポリアルキレンイミンにアルキレンオキシドを付加させた多分岐ポリマーにグリシジルメタクリレートを付加させたマクロマー、(2)ポリアルキレンイミンにアルキレンオキシドを付加させた多分岐ポリマーの(メタ)アクリル酸エステルマクロマー、(3)ポリアルキレンイミンにアルキレンオキシドを付加させた多分岐ポリマーのマレイン酸エステルマクロマー等の(1)〜(3)の多分岐ポリオキシアルキレン基を有するエチレン系単量体を挙げることができる。上記多分岐ポリマーとしては、ポリアミドポリアミン、多価アルコールにアルキレンオキシド付加させたものを用いてもよい。
【0069】
上記ポリアルキレンイミンとしては、例えば、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、1,1−ジメチルエチレンイミン等の炭素数2〜8アルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られる単独重合体や共重合体が挙げられ、エチレンイミンを主体として形成されるものであることが好ましい。このようなポリアルキレンイミンは、直鎖状の構造、分枝状の構造、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。更に、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等であってもよい。このようなポリアルキレンイミンでは、通常、構造中に第3級アミノ基の他、活性水素原子をもつ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有することになる。
上記ポリアルキレンイミンの重量平均分子量としては、100〜100000が好ましく、より好ましくは、300〜50000、更に好ましくは、600〜10000である。
【0070】
上記ポリアルキレンイミンに付加させるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、トリメチルエチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラメチルエチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、オクチレンオキシド等の炭素数2〜8のアルキレンオキシドの他、ジペンタンエチレンオキシド、ジヘキサンエチレンオキシド等の脂肪族エポキシド;トリメチレンオキシド、テトラメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オクチレンオキシド等の脂環エポキシド;スチレンオキシド、1,1−ジフェニルエチレンオキシド等の芳香族エポキシド等が好適である。これらの中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが好ましい。更にエチレンオキシドを主成分とするものがより好ましい。
【0071】
上記アルキレンオキシド付加物において、オキシアルキレン基の平均付加モル数としては、例えば、0.5以上、300以下とすることが好ましい。より好ましくは、1以上であり、更に好ましくは、1.5以上、特に好ましくは、2以上、最も好ましくは、3以上である。また、より好ましくは、200以下であり、更に好ましくは、150以下、特に好ましくは、100以下、最も好ましくは、50以下である。アルキレンオキシド付加物における平均付加モル数がこのような範囲を外れると、セメント組成物等の流動性を優れたものとする共重合体の作用効果が充分に発揮されないおそれがある。
【0072】
本発明のセメント混和剤においては、炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするポリアルキレングリコール側鎖をもつポリカルボン酸系共重合体以外の重合体を1種又は2種以上含有していてもよい場合、該重合体としては、上記一般式(3)における−(RO)−で表されるオキシアルキレン基が、すべてオキシエチレン基であるポリアルキレングリコール系不飽和単量体を含有する単量体成分を重合して得られるものであることが好適である。好ましくは、単量体成分に不飽和カルボン酸系単量体を含有することであり、必要に応じて、その他の共重合可能な単量体を含有していてもよい。このような、ポリアルキレングリコール系不飽和単量体、不飽和カルボン酸系単量体及びその他の共重合可能な単量体としては、上述のものと同様である。また、重量平均分子量としては、上記(1)の形態における共重合体と同様である。
【0073】
本発明のセメント混和剤はまた、炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするポリアルキレングリコール側鎖をもつポリカルボン酸系共重合体が、上記一般式(1)で表される部位と上記一般式(2)で表される部位とが異なる場合において、上記一般式(1)で表される部位、及び、上記一般式(2)で表される部位を有する共重合体を、上記酸量の異なる共重合体の少なくとも1種として含むものであってもよい。このように、上記共重合体が、上記一般式(1)で表される部位、及び、上記一般式(2)で表される部位を有するものを必須とするものである形態は、本発明の好ましい形態の一つである。
【0074】
上記共重合体は、重合体中の上記一般式(1)で表される部位と上記一般式(2)で表される部位とのモル比(A)/(B)が、1/99〜99/1であることが好ましく、また、上記共重合体は、上記一般式(1)中のROが下記一般式(6)となっている部位、及び、上記一般式(2)で表される部位を有するものであってもよい。
【0075】
【化6】

【0076】
式中、Rは、炭素数3〜18のアルキレン基を表す。r及びqは、オキシエチレン基の平均付加モル数であって、0〜300の数を表すが、どちらか一方が0である場合はもう一方は2〜300の数となる。pは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜50の数である。r+p+qは、3〜300の数である。
【0077】
上記共重合体としてはまた、上記一般式(1)中のROが上記一般式(6)となっている部位と上記一般式(2)で表される部位とのモル比(C)/(B)が、1/99〜99/1であるものが好適である。
【0078】
本発明はまた、ポリカルボン酸系共重合体を含んでなるセメント混和剤であって、上記ポリカルボン酸系共重合体は、上記一般式(1)で表される部位、及び、上記一般式(2)で表される部位を有するセメント混和剤でもある。なお、本明細書において、「一般式(1)で表される部位、及び、一般式(2)で表される部位を有する」とは、「一般式(1)と一般式(2)とが異なる場合であって、両者を含む」ことを意味する。
【0079】
本発明において、ポリカルボン酸系共重合体は、一分子中に2個以上のカルボン酸、及び/又は、カルボン酸塩を有する重合体であり、その重合体を構成する部位に上記一般式(1)及び上記一般式(2)で示される特定の構造が導入されたもの、又は、上記一般式(1)中のROが上記一般式(6)となっている特定の構造及び上記一般式(2)で表される特定の構造が導入されたものが好適に用いられる。
上記ポリカルボン酸系共重合体の重量平均分子量としては、GPCによるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量(Mw)が3000〜100000が好ましく、より好ましくは5000〜80000、さらに好ましくは7000〜40000である。
【0080】
上記一般式(1)におけるmの繰り返し数で表されるポリオキシアルキレン鎖は、その中の一部として疎水性の高い炭素数3以上のオキシアルキレン基を0.01〜49モル%含んでおり、それ以外の部分は親水性の高い炭素数2のオキシアルキレン基すなわちオキシエチレン基となることが好ましい。この特定の構造が、減水性に優れ、かつ、作業性に優れる一因である。本発明においては、この親水性を有する鎖の内部に疎水部位を有することに特徴があり、これにより、減水性と作業性の両方を発現することができるものである。
【0081】
本発明において、上記一般式(1)で示される構造の中で疎水性の高い炭素数3以上のオキシアルキレン基の含有率は、0.01〜49モル%の間の任意の含有率とすることができるが、0.1〜40モル%であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜30モル%、特に好ましくは1〜25モル%、最も好ましくは2〜20モル%である。
更に上記一般式(2)におけるnの繰り返し数で表されるポリオキシエチレン鎖を含む場合において、この親水性の高い鎖を併せ持つことに特徴があり、これにより、すぐれた分散性能を発揮するのでセメント混和剤添加量が比較的多くならないのである。
【0082】
上記一般式(1)で示される構造と上記一般式(2)で示される構造のモル比:(1)/(2)としては、99/1〜1/99の間で任意の割合とすることができる。しかしながら、特にセメントの作業性を重視する場合には上記一般式(1)で示される構造を多く含むものが好ましく、他方、特にセメント混和剤の添加量を重視する場合には上記一般式(2)で示される構造を多く含むものが好ましい。
すなわち、特にセメントの作業性を重視する場合には、上記一般式(1)で示される構造と前一般式(2)で示される構造のモル比:(1)/(2)は、99/1〜10/90であることが好ましく、更に好ましくは99/1〜20/80、特に好ましくは99/1〜30/70、最も好ましくは99/1〜40/60である。
他方、特にセメント混和剤の添加量を重視する場合には、上記一般式(1)で示される構造と上記一般式(2)で示される構造のモル比:(1)/(2)は、1/99〜90/10であることが好ましく、更に好ましくは1/99〜80/20、特に好ましくは1/99〜70/30、最も好ましくは1/99〜60/40である。
上記一般式(6)におけるr、p及びqの繰り返し数で表されるポリオキシアルキレン鎖は、いわゆるA−B−A型のブロック共重合の形式であり、この特定の構造が含まれると親水性ブロックが減水性を強く発現し、疎水性ブロックが作業性をより多く付与するので、より優れたセメント混和剤が得られることとなる。
【0083】
上記一般式(1)におけるmは、1〜300の数であり、300を超えると粘性が高くなり、作業性に劣ることがあり、好ましくは1〜200であり、より好ましくは1〜100、更に好ましくは1〜60、最も好ましくは1〜40である。Rは同一若しくは異なって炭素数2〜18のアルキレン基を表し、そのアルキレン基の0.01〜49モル%は炭素数3〜18のアルキレン基であるが、好ましくはRの中の0.01〜49モル%が炭素数3である2−メチルエチレン基(一般にプロピレンオキシドが前躯体である)である。
またROは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物を表し、そのオキシアルキレン基の0.01〜49モル%は炭素数3〜18のオキシアルキレン基である。炭素数2〜18のオキシアルキレン基が2種以上の場合はブロック状に付加していても、ランダム状に付加していてもよい。
上記一般式(1)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、好ましくはメチル基である。
上記一般式(2)におけるnは1〜300の数であり、300を超えると粘性が高くなり、作業性に劣ることがあり、好ましくは1〜200であり、より好ましくは1〜100、更に好ましくは1〜60、最も好ましくは1〜40である。Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、好ましくはメチル基である。
【0084】
上記一般式(6)におけるr及びqは、同一若しくは異なって0〜300の数であり、300を超えると粘性が高くなり、作業性に劣ることがあり、好ましくは0〜200であり、より好ましくは1〜100、更に好ましくは1〜60、最も好ましくは1〜40である。pは1〜50の数であり、50を超えると減水性が低下したり、疎水性が高くなってセメントに配合する練水と相溶せずに作業性に劣る場合がある。pの範囲は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、更に好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜4である。r、p及びqの総数であるr+p+qは、3〜300の数であり、300を超えると粘性が高くなり、作業性に劣ることがあり、好ましくは4〜200であり、より好ましくは6〜100であり、更に好ましくは6〜60、最も好ましくは10〜40である。Rは同一若しくは異なって炭素数3〜18のアルキレン基を表し、好ましくは炭素数3である2−メチルエチレン基(一般にプロピレンオキシドが前躯体である)である。
【0085】
本発明の必須成分であるポリカルボン酸系共重合体は、下記2タイプの重合体であることが好ましく、その合成経路は特に限定されるものではない。
重合体タイプI:上記一般式(1)及び上記一般式(2)に示す部位と一分子中に2個以上のカルボン酸及び/又はカルボン酸塩を有する重合体。
重合体タイプII:上記一般式(1)中のROが上記一般式(6)となっている部位及び上記一般式(2)で表される部位と一分子中に2個以上のカルボン酸及び/又はカルボン酸塩を有する重合体。
上記一般式(1)で表される部位又は上記一般式(1)のROが上記一般式(6)となっている部位と、上記一般式(2)で表される部位の合計が、ポリカルボン酸系共重合体の総重量に対して占める割合は、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは50〜90重量%であり、更に好ましくは65〜85重量%である。
【0086】
上記合成経路の1例を挙げるとすれば、例えば、次の2経路を挙げることができる。
合成経路A:一分子中にカルボン酸又はカルボン酸塩と重合性二重結合を有する単量体の1種又は2種以上と下記一般式(7)で表される単量体(a)の1種又は2種以上、及び下記一般式(8)で表される単量体(b)の1種又は2種以上を重合することにより得ることができる。カルボン酸塩の場合は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が用いられ、これらのカルボン酸塩の単量体を重合してもよいし、カルボン酸の単量体を重合した後、塩形成させてもよい。
【0087】
【化7】

【0088】
但し、式中R及びRは、同一若しくは異なって、水素又はメチル基を表す。xは0〜2の数を表す。yは0又は1を表す。ROは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物を表し、そのオキシアルキレン基の0.01〜49モル%は炭素数3〜18のオキシアルキレン基である。炭素数2〜18のオキシアルキレン基が2種以上の場合はブロック状に付加していても、ランダム状に付加していてもよい。R
は水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり3〜300の数を表す。
【0089】
【化8】

【0090】
但し、式中R及びRは、同一若しくは異なって、水素又はメチル基を表す。Zは0〜2の数を表す。wは0又は1を表す。Rは水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、nはオキシエチレン基の平均付加モル数であり1〜300の数を表す。
合成経路B:一分子中にカルボン酸又はカルボン酸塩と重合性二重結合を有する単量体の1種又は2種以上と下記一般式(9)で表される単量体(c)の1種又は2種以上、及び上記一般式(8)で表される単量体(b)の1種又は2種以上を重合することにより得ることができる。カルボン酸塩の場合は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が用いられ、これらのカルボン酸塩の単量体を重合してもよいし、カルボン酸の単量体を重合した後、塩形成させてもよい。
【0091】
【化9】

【0092】
但し、Rは、炭素数3〜18のアルキレン基を表す。r及びqはオキシエチレン基の平均付加モル数であり0〜300の数を表すが、どちらか一方が0である場合はもう一方は2〜300の数となる。pは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜50の数である。r+p+qは、3〜300の数である。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。
【0093】
上記一般式(7)で表される単量体(a)は、不飽和アルコール及び/又は不飽和カルボン酸に所定の繰り返し数となる量のエチレンオキシド及び所定の繰り返し数となる量の炭素数3〜18のアルキレンオキシドを付加することによって得ることができる。また、炭素数1〜20の炭化水素基を有するアルコールやフェノール類に所定の繰り返し数となる量のエチレンオキシド及び所定の繰り返し数となる量の炭素数3〜18のアルキレンオキシドを付加することによって得られるアルコールと不飽和カルボン酸とのエステル反応、及び/又は、不飽和カルボン酸エステルとのエステル交換反応させることによっても得ることができる。
【0094】
上記一般式(8)で表される単量体(b)は、不飽和アルコール及び/又は不飽和カルボン酸に所定の繰り返し数となる量のエチレンオキシドを付加することによって得ることができる。また、炭素数1〜20の炭化水素基を有するアルコールやフェノール類に所定の繰り返し数となる量のエチレンオキシドを付加することによって得られるアルコールと不飽和カルボン酸とのエステル反応、及び/又は、不飽和カルボン酸エステルとのエステル交換反応させることによっても得ることができる。
【0095】
上記一般式(9)で表される単量体(c)としては、上記一般式(4)で述べた方法により得ることができる。
【0096】
上記一般式(7)〜(9)で表される単量体と共重合する一分子中にカルボン酸又はカルボン酸塩と重合性二重結合を有する単量体としては、例えば、上記一般式(5)で表される単量体(d)が挙げられる。
【0097】
上記一般式(7)で表される単量体(a)又は上記一般式(9)で表される単量体(c)と、上記一般式(8)で表される単量体(b)と上記一般式(5)で表される単量体(d)とを共重合して、該ポリカルボン酸系共重合体を得る場合、総重量を100重量%として、(a)又は(c)と(b)の合計は10〜95重量%が好ましく、より好ましくは50〜90重量%であり、更に好ましくは65〜85重量%である。また、(a)、(b)、(c)、(d)以外の単量体を共重合成分として用いてもよく、その使用量は(a)又は(c)と(b)及び(d)の総重量を100重量%として、0〜50重量%であり、その他の単量体としては、上述の共重合可能な単量体が好適に用いられる。
【0098】
本発明のセメント混和剤の製造方法としては、(i)ポリカルボン酸系共重合体を構成することになる2種類以上の共重合体をそれぞれ別々に調製した後に、それらの共重合体を混合して製造する方法、(ii)重合途中において単量体の比率を変化させる等によって、一連の重合工程で、酸量が異なったり、重量平均分子量が20000以下であったりする2種類以上の共重合体を調製することにより製造する方法等が好適である。好ましくは(i)の製造方法である。
【0099】
上記共重合体の製造方法としては、例えば、単量体成分と重合開始剤を用いて、水溶液重合、有機溶媒中での重合、エマルション重合、塊状重合等の方法により行うことができる。
上記重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;アゾビス−2メチルプロピオンアミジン塩酸塩、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のパーオキシドが好適である。また、促進剤として、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、モール塩、ピロ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、アスコルビン酸、エリソルビン酸等の還元剤;エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、グリシン等のアミン化合物を併用することもできる。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
上記重合方法においては、連鎖移動剤も必要に応じて使用することができる。このような連鎖移動剤としては、公知のものを1種又は2種以上使用できるが、疎水性連鎖移動剤としては、炭素数3以上の炭化水素基をもつチオール化合物又は25℃の水に対する溶解度が10%以下の化合物が好適であり、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2−メルカプトプロピオン酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシルエステル、オクタン酸2−メルカプトエチルエステル、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;α−メチルスチレンダイマー、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、ターピノーレン等の不飽和炭化水素化合物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、親水性連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;2−アミノプロパン−1−オール等の1級アルコール;イソプロパノール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物及びその塩等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0101】
上記連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入してもよく、単量体や溶媒等と予め混合しておいてもよい。上記重合方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。また、重合の際、必要に応じて使用される溶媒としては、公知のものを使用でき、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の芳香族又は脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、単量体及び得られる共重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることが好ましい。
【0102】
上記重合方法において、単量体や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に添加することによって重合を行う方法、反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体と重合開始剤の全量を添加する方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、セメント組成物等の流動性を高める作用であるセメント分散性を向上することができることから、重合開始剤と単量体を反応容器に逐次滴下する方法で重合を行うことが好ましい。また、単量体の重合性が向上して得られる共重合体の保存安定性がより向上することから、重合中の反応容器内の溶媒の濃度を80%以下に維持して共重合反応を行うことが好ましい。より好ましくは、70%以下であり、更に好ましくは、60%以下である。また、重合中の反応容器内の溶媒の濃度を50%以下に維持して共重合反応を行うことも好ましい。より好ましくは、40%以下であり、更に好ましくは、30%以下である。
【0103】
上記重合方法において、重合温度等の重合条件としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、重合温度としては、通常0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40〜120℃の範囲である。更に好ましくは、50〜100℃であり、特に好ましくは、60〜85℃である。
【0104】
上記の方法により得られる共重合体は、そのままでもセメント混和剤の主成分として用いられるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミンを用いることが好ましい。
【0105】
本発明のセメント混和剤としては、消泡剤として、分子内に少なくとも1つの窒素原子を有すると共に、オキシエチレン基と炭素数3以上のオキシアルキレン基とを有し、炭素原子が5個以上連続して結合している脂肪族炭化水素構造を有するポリオキシアルキレン系化合物を含有していてもよく、このような消泡剤を含有するセメント混和剤もまた、本発明の好ましい実施形態の一つである。このような消泡剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0106】
上記ポリオキシアルキレン系化合物は、窒素原子を、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸又は酢酸、プロピオン酸、(メタ)アクリル酸等の酸性物質で中和して用いてもよい。このようなポリオキシアルキレン系化合物と本発明のセメント混和剤とをブレンドすることにより、セメント混和剤における共重合体の水溶性が向上し、ポリオキシアルキレン系化合物と共重合体のブレンド物の水媒体液の保存安定性は非常に良好なものとなる。
【0107】
上記オキシエチレン基と炭素数3以上のオキシアルキレン基とは、付加した状態でポリオキシアルキレン基としてポリオキシアルキレン系化合物中に存在することが好ましいが、ポリオキシアルキレン系化合物が1分子中にポリオキシアルキレン基を複数有する場合、これらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記炭素数3以上のオキシアルキレン基としては、炭素数が8以下であることが好ましい。より好ましくは、6以下であり、更に好ましくは、4以下である。また、2種類以上のアルキレンオキシド、すなわちエチレンオキシドと、炭素数3以上のアルキレンオキシドとが付加した形態となっているオキシアルキレン基の付加形態としては、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれであってもよい。好ましい形態としては、オキシエチレン基−炭素数3以上のオキシアルキレン基がブロック状に付加しているものである。
【0108】
上記ポリオキシアルキレン系化合物は、炭素原子が5個以上連続して結合している脂肪族炭化水素構造を少なくとも1つ有するものである。炭素原子が5個以上連続して結合している脂肪族炭化水素構造としては、炭素原子が5個以上連続して結合している構造を有する脂肪族炭化水素基、炭素原子が5個以上連続して結合している構造を有するオキシアルキレン基が挙げられるが、このような構造が分子中に存在することになる限り特に限定されるものではない。例えば、炭素数3以上のオキシアルキレン基中に炭素原子が5個以上連続して結合している脂肪族炭化水素構造が含まれていてもよく、また、末端の炭化水素中に炭素原子が5個以上連続して結合している脂肪族炭化水素構造が含まれていてもよい。また、このような脂肪族炭化水素構造としては、炭素原子が8個以上連続して結合しているものが好ましい。また、10個以上がより好ましい。また、12個を超えるものが更に好ましい。炭素数が12個よりも長い脂肪族炭化水素構造を有するポリオキシアルキレン系化合物を用いると、コンクリート組成物中の空気の質をより良好にすることができる。また、30個以下が好ましい。より好ましくは、22個以下である。
【0109】
上記ポリオキシアルキレン系化合物としては、下記一般式(10);
Z−〔(AO)s−R17〕t (10)
(式中、Zは、活性水素を有する化合物残基を表す。R17は、同一若しくは異なって、水素原子、炭化水素基、−Y−NR1819、−COR20又は−CHCHNHCO−R21を表す。Yは、炭素数1〜10のアルキレン基を表す。R18及びR19は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R20及びR21は、炭素数1〜30の炭化水素基又は少なくとも1個以上のカルボキシル基若しくはスルホニル基又はこれらの塩を有する基を表す。AOは、同一若しくは異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。sは、同一若しくは異なって、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜300である。tは、1〜300である。上記オキシアルキレン基におけるオキシエチレン基の合計付加モル数をuとし、炭素数3以上のオキシアルキレン基の合計付加モル数をvとすると、0.1<u/(u+v)<0.9、1<u+v<300の関係を満たす。)で表される化合物を用いることが好適である。なお、一般式(10)で表されるポリオキシアルキレン系化合物では、Zで表される基及び/又はR17で表される基が窒素原子を有することになる。
【0110】
上記一般式(10)において、Zは、活性水素を有する化合物残基を表す。活性水素を有する化合物残基とは、活性水素を有する化合物から活性水素を除いた構造を有する基を意味するが、活性水素を有する化合物との反応により形成される基に特に限定されるものではない。また、ポリオキシアルキレン系化合物において、活性水素を有する化合物残基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。このような基としては、アルコールの水酸基から活性水素を除いた構造を有するアルコールの残基、カルボン酸のカルボキシル基から活性水素を除いた構造を有するカルボン酸の残基、アミンのアミノ基から活性水素を除いた構造を有するアミンの残基、イミンのイミノ基から活性水素を除いた構造を有するイミンの残基、チオールのチオール基から活性水素を除いた構造を有する残基が好適である。これらの中でも、アルコールの残基やアミン、イミンの残基であることが好ましい。また、活性水素を有する化合物残基の形態としては、鎖状、分岐状、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。
上記活性水素を有する化合物残基の好ましい形態において、アルコールの残基としては、一価アルコールや、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリンやソルビトール等の多価アルコールから活性水素を除いた構造を有する残基が好適であり、アミンの残基としては、一価アミンや多価アミンから活性水素を除いた構造を有する残基が好適であり、イミンの残基としては、ジエチレンイミンやポリエチレンイミンから活性水素を除いた構造を有する残基が好適である。
【0111】
上記一般式(10)において、R17は、同一若しくは異なって、水素原子、炭化水素基、−Y−NR1819、−COR20又は−CHCHNHCO−R21を表す。炭化水素基としては、炭素数1〜30の直鎖又は分岐アルキル基;炭素数6〜30のフェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基;炭素数2〜30のアルケニル基;炭素数2〜30のアルキニル基が好適である。また、炭化水素基の炭素数は1以上であるが、ポリオキシアルキレン系化合物が高い消泡性能を有するためには、2以上が好ましい。より好ましくは、5以上である。また、12を超えるものが更に好ましい。また、30以下が好ましい。より好ましくは、22以下であり、更に好ましくは、18以下である。更に、炭化水素基の中でも、直鎖、分岐アルキル基、アルケニル基が特に好ましい。
【0112】
上記Yは、炭素数1〜10のアルキレン基を表すが、炭素数としては、2以上が好ましく、また、8以下が好ましい。上記R18及びR19は、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表すが、一般式(10)中のZ又はAOに炭素原子が5個以上結合している脂肪族炭化水素構造がない場合は、R18及びR19における炭化水素基の炭素数としては、5以上が好ましい。より好ましくは、8以上であり、更に好ましくは、10以上である。また、12を超えるものが更に好ましい。また、22以下が好ましい。また、逆にZ又はAOに炭素原子が5個以上連続して結合している脂肪族炭化水素構造が存在する場合は、R18及びR19は水素原子が好ましい。R20及びR21は、炭素数1〜30の炭化水素基又は少なくとも1個以上のカルボキシル基若しくはスルホニル基又はこれらの塩を有する基を表すが、一般式(10)中のZ又はAOに炭素原子が5個以上連続して結合している脂肪族炭化水素構造がない場合は、炭素数5以上の炭化水素基が好ましい。また、逆にZ又はAOに炭素原子が5個以上連続して結合している脂肪族炭化水素構造が存在する場合は、少なくとも1個以上のカルボキシル基若しくはスルホニル基又はこれらの塩を有する基であることが好ましい。炭化水素基の中でも直鎖、分岐アルキル基、アルケニル基が特に好ましい。
【0113】
上記AOは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表すが、炭素数としては、8以下が好ましい。より好ましくは、6以下であり、更に好ましくは、4以下である。オキシエチレン基と炭素数3以上のオキシアルキレン基の付加形態としては、ランダム状、ブロック状、交互付加等のいずれであってもよい。より好ましい形態としては、ブロック状である。また、上記u及びvは、それぞれオキシエチレン基の合計付加モル数及び炭素数3以上のオキシアルキレン基の合計付加モル数を表し、0.1<u/(u+v)<0.9、1<u+v<300の関係を満たすことが好ましい。(u+v)は、5を超えることがより好ましく、10を超えることが更に好ましい。また、200未満が好ましく、150未満がより好ましく、100未満が更に好ましく、80未満が特に好ましく、50未満が最も好ましい。なお一般式(10)において、平均付加モル数sは、〔(AO)s−R17〕で表される単位のうち同一の単位1モル中において付加しているオキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。
【0114】
また、オキシエチレン基の合計付加モル数uのアルキレンオキシド総付加モル数(u+v)に対するu/(u+v)は、0.1<u/(u+v)<0.9の関係を満たすことが好ましい。0.9以上であると、親水性が強くなりすぎて消泡性が充分でなくなるおそれがあり、0.1以下であると、消泡性を持続することができなくなるおそれがあり、いずれの場合にも硬化物の強度が低下することになる。u/(u+v)の値としては、0.15を超えることがより好ましく、0.2を超えることが更に好ましく、0.3を超えることが特に好ましい。また、0.8未満がより好ましい。更に好ましくは、0.7未満である。特に好ましくは、0.55未満であり、最も好ましくは、0.5未満である。
【0115】
また(u+v)は、1<u+v<300の関係を満たすことが好ましい。(u+v)は、5を超えることがより好ましく、10を超えることが更に好ましい。また、200未満が好ましく、150未満がより好ましく、100未満が更に好ましく、80未満が特に好ましく、50未満が最も好ましい。
【0116】
上記tは、1〜300であるが、200以下が好ましい。より好ましくは、100以下である。tが2以上の場合、すなわちZに−〔(AO)s−R17〕で表される基が複数結合する場合、−〔(AO)s−R17〕で表される基は、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0117】
上記一般式(10)におけるポリオキシアルキレン系化合物は、分子内に炭素原子が5個以上連続して結合している脂肪族炭化水素構造を少なくとも一つ有するものであるため、一般式(10)において、ポリオキシアルキレン系化合物を構成するR17、Z、R17−AO及びAOで表される構造の少なくとも1つにおいて、炭素原子が5個以上連続して結合している脂肪族炭化水素構造が存在することになる。また、このような脂肪族炭化水素構造としては、炭素原子が10個以上連続して結合しているものがより好ましい。また、30個以下が好ましい。より好ましくは、22個以下である。
【0118】
本発明におけるポリオキシアルキレン系化合物の分子量は、10000以下であることが好ましい。より好ましくは、5000以下である。また、100以上であることが好ましい。より好ましくは、200以上である。
【0119】
上記一般式(10)で表される化合物としては、(ジ)メチルアミン、(ジ)エチルアミン、(ジ)プロピルアミン、(ジ)ブチルアミン、(ジ)ペンチルアミン、(ジ)ヘキシルアミン、(ジ)ヘプチルアミン、(ジ)オクチルアミン、(ジ)ノニルアミン、(ジ)デカアミン、(ジ)ウンデカアミン、(ジ)ドデカアミン、(ジ)テトラデカアミン、(ジ)ペンタデカアミン、(ジ)ヘキサデカアミン、(ジ)ヘプタデカアミン、(ジ)オクタデカアミン、(ジ)ノナデカアミン、(ジ)イコサンアミン等の炭素数1〜30の直鎖、分岐アルキル基を有する1級アミン、同種類のアルキル基、又は異なる種類のアルキル基を有する2級アミン類;ヤシ油から得られる脂肪酸由来の1級アミン、オレイン酸由来の1級アミン、大豆油から得られる脂肪酸由来の1級アミン、牛脂から得られる脂肪酸由来の1級アミン、硬化牛脂から得られる脂肪酸由来の1級アミン等の炭素数1〜30の直鎖、分岐アルキル基を有し、かつ異なる種類のアルキル基が混合された1級アミン類;ヤシ油から得られる脂肪酸由来の2級アミン、オレイン酸由来の2級アミン、大豆油から得られる脂肪酸由来の2級アミン、牛脂から得られる脂肪酸由来の2級アミン、硬化牛脂から得られる脂肪酸由来の2級アミン等の炭素数1〜30の直鎖、分岐アルキル基を有し、かつ異なる種類のアルキル基が混合された2級アミン類;炭素数6〜30のフェニル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基を有する1級又は2級アミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類等のアミン類にエチレンオキシドと炭素数3〜18のアルキレンオキシドを付加して得られる付加物が好適である。
【0120】
また、上記一般式(10)で表される化合物のうち、窒素原子が2以上の化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレントリアミン、テトラプロピレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン類と酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ヤシ油から得られる脂肪酸、大豆油から得られる脂肪酸、牛脂から得られる脂肪酸、硬化牛脂から得られる脂肪酸等の脂肪酸類と脱水縮合して得られるアミドアミン類のエチレンオキシド及び炭素数3〜18のアルキレンオキシド付加物;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレントリアミン、テトラプロピレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン類と酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ヤシ油から得られる脂肪酸、大豆油から得られる脂肪酸、牛脂から得られる脂肪酸、硬化牛脂から得られる脂肪酸等の脂肪酸類と脱水縮合して得られるアミドアミン類を更に脱水して得られるイミダゾリン類のエチレンオキシド及び炭素数3〜18のアルキレンオキシド付加物;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレントリアミン、テトラプロピレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン類のエチレンオキシド及び炭素数3〜18のアルキレンオキシド付加物;炭素数1〜30の炭化水素基で変性されたエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジプロピレントリアミン、テトラプロピレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミン類のエチレンオキシド及び炭素数3〜18のアルキレンオキシド付加物;エチレンイミン、プロピレンイミン等のアルキレンイミンを重合して得られたポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン類のエチレンオキシド及び炭素数3〜18のアルキレンオキシド付加物;炭素数1〜30の炭化水素基で変性されたエチレンイミン、プロピレンイミン等のアルキレンイミンを重合して得られたポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミン類のエチレンオキシド及び炭素数3〜18のアルキレンオキシド付加物;炭素数1〜30の炭化水素基を有する1級アミンや2級アミン類にアクリロニトリルを付加させた後に還元して得られるようなアルキルアミノプロピルアミン類のエチレンオキシド及び炭素数3〜18のアルキレンオキシド付加物が好適である。
【0121】
また窒素原子含有ポリオキシアルキレン系化合物としては、下記に記載する化合物も好適である。
炭素数1〜30の炭化水素基を有する1価アルコール類にエチレンオキシド及び炭素数3〜18のアルキレンオキシドを付加して得られるポリオキシアルキレン類にアミノ基を導入したアミン類;両末端に水酸基を有するポリオキシエチレンポリオキシアルキレン類にアミノ基を導入したアミン類;分子内に3個以上の水酸基を有する多価アルコールにエチレンオキシド及び炭素数3〜18のアルキレンオキシドを付加して得られるポリオキシアルキレン類にアミノ基を導入したアミン類;分子内にアセチレン基を有するアルコール類にエチレンオキシド及び炭素数3〜18のアルキレンオキシドを付加して得られるポリオキシアルキレン類にアミノ基を導入したアミン類。
アミノ基の導入方法にはいろいろのものが考えられるが、水酸基自身を種々のアミノ化試薬でアミノ基へ変換する方法や、水酸基へエチレンイミンやプロピレンイミン等のアルキレンイミンを付加させる方法が好適である。
【0122】
上記炭素数1〜30の炭化水素基を有する1価アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、炭素数12〜14の直鎖、分岐アルコール等の直鎖、分岐飽和アルコール類;アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、オレイルアルコール等の不飽和アルコール類;フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコールが好適である。
【0123】
上記両末端に水酸基を有するポリオキシエチレンポリオキシアルキレン類としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンポリオキシブチレン等のAB型ブロックタイプ;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンポリオキシエチレン等のABAブロックタイプが好適である。
【0124】
上記分子内に3個以上の水酸基を有する多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリンやソルビトールが好適である。
【0125】
上記分子内にアセチレン基を有するアルコール類としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル1−ブチン−3−オールが好適である。
【0126】
なお、上記のポリオキシアルキレン系化合物の中で、分子内に炭素原子が5個以上連続して結合している脂肪族炭化水素構造が一切含まれていない場合は、合成中又は合成後に、炭素数5以上のアルキレンオキサイドを一部付加させたり、炭素数5以上のアルキルハライドを反応させたりすることで、脂肪族炭化水素構造を適宜導入することもできる。
【0127】
また、これまでに述べてきたポリオキシアルキレン系化合物の末端官能基に、更にエチレンオキシド等のようなアルキレンオキシド類やエチレンイミン等のようなアルキレンイミン類を更に付加させて得られる化合物も、ポリオキシアルキレン系化合物として用いることができる。
【0128】
更に、これまでに述べてきたポリオキシアルキレン系化合物の末端官能基に、無水酢酸、無水酪酸等の酸無水物を反応させて得られる化合物も、本発明におけるポリオキシアルキレン系化合物として用いることができる。
【0129】
またポリオキシアルキレン系化合物としては、下記のようなものも好適である。
これまでに述べてきたポリオキシアルキレン系化合物と、2個以上のカルボキシル基を有する化合物とが、少なくとも1個のカルボキシル基を残してエステル結合した化合物;上記ポリオキシアルキレン系化合物と、カルボキシル基とスルホニル基とを有する化合物とが、少なくとも1個のスルホニル基を残してエステル結合した化合物;上記ポリオキシアルキレン系化合物と、2個以上のカルボキシル基を有する化合物とが、少なくとも1個のカルボキシル基を残してアミド結合した化合物;上記ポリオキシアルキレン系化合物と、カルボキシル基とスルホニル基とを有する化合物とが、少なくとも1個のスルホニル基を残してアミド結合した化合物。
このようなポリオキシアルキレン系化合物において、残されたカルボキシル基又はスルホニル基は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の塩基で中和されたナトリウム塩やカルシウム塩等の各種金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等でもよい。
【0130】
上記2個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類及びそれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩;コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸等の飽和ジカルボン酸類及びそれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩;アクリル酸オリゴマー、メタクリル酸オリゴマー、マレイン酸オリゴマー等の不飽和モノカルボン酸又は不飽和ジカルボン酸類の低分子量の重合体及びそれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩が好適である。
【0131】
上記ポリオキシアルキレン系化合物は、例えば、水酸基を末端に有するポリオキシアルキレン系化合物と、無水マレイン酸又は無水コハク酸等の酸無水物を無溶媒中又は適当な溶媒中で反応させることで得ることができる。このとき適当な塩基触媒を用いると好ましい。その他に、水酸基を末端に有するポリオキシアルキレン系化合物とカルボン酸との脱水反応によるエステル化、また、水酸基を末端に有するポリオキシアルキレン系化合物とエステル化合物とのエステル交換反応によっても得ることができる。
【0132】
本発明においては、一般式(10)で表されるポリオキシアルキレン系化合物の中でも、R17が水素原子の場合や、Zが−OHや−NHを有する場合、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸とエステル化又はアミド化を行うことにより、消泡性を有する不飽和単量体を合成することができる。この消泡性を有する不飽和単量体を、上述した単量体成分と共重合することにより重合体骨格に消泡成分を組み込むことができる。本発明のセメント混和剤に、このような消泡成分が組み込まれた重合体を含有してなるセメント混和剤もまた、本発明の実施形態の1つである。
【0133】
上記ポリオキシアルキレン系化合物を含有する本発明のセメント混和剤をセメント組成物に用いる場合における、ポリオキシアルキレン系化合物の配合割合としては、セメント質量の0.0001質量%以上が好ましく、また、1.0質量%以下が好ましい。上記配合割合が0.0001質量%未満であると、性能的に不充分となるおそれがあり、1.0質量%を超える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.0005質量%以上であり、更に好ましくは0.001質量%以上である。また、より好ましくは0.5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下であり、このような比率となる量を添加すればよい。この添加により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされることとなる。
【0134】
本発明のセメント混和剤は、取り扱い上、水溶液の形態が好ましく、また、他の添加剤を本発明のセメント混和剤に含有していてもよいし、又は、本発明のセメント混和剤をセメントと混合する際に、添加することもできる。他の添加剤としては、公知のセメント添加剤を用いることができ、例えば、以下のようなものを1種又は2種以上用いることができる。
【0135】
(ア)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシエチレン及び/又はポリオキシプロピレンのポリマー又はそれらのコポリマー;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1,3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状の何れでもよく、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
【0136】
(イ)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(ウ)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸並びにその塩;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖等の単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又はデキストリン等のオリゴ糖、又はデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0137】
(エ)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(オ)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(カ)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(キ)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(ク)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0138】
(ケ)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0139】
(コ)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(サ)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(シ)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(ス)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(セ)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
(ソ)AE剤:樹脂石鹸、飽和及び/又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0140】
(タ)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシル基を置換基として有してもよい、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0141】
(チ)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(ツ)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(テ)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル類;2−メチル−2,4−ペンタンジオール等のアルカンジオール類等。
(ト)膨張材:エトリンガイト系、石炭系等。
【0142】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石膏等も用いることができる。
【0143】
更に本発明のセメント混和剤には、公知のセメント分散剤を併用することができ、例えば、以下のものを1種又は2種以上用いることができる。
リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;特開平1−113419号公報に記載の如くアミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系;特開平7−267705号公報に記載の如く(a)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系化合物と(メタ)アクリル酸系化合物との共重合体及び/又はその塩と、(b)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と無水マレイン酸との共重合体及び/若しくはその加水分解物、並びに/又は、その塩と、(c)成分として、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系化合物と、ポリアルキレングリコール系化合物のマレイン酸エステルとの共重合体及び/又はその塩とを含むセメント分散剤;特許第2508113号明細書に記載の如くA成分として、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステルと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体、B成分として、特定のポリエチレングリコールポリプロピレングリコール系化合物、C成分として、特定の界面活性剤からなるコンクリート混和剤;特開昭62−216950号公報に記載の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル若しくはポリエチレン(プロピレン)グリコールモノ(メタ)アリルエーテル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、並びに、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体。
【0144】
特開平1−226757号公報に記載の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、及び、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特公平5−36377号公報に記載の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレン(プロピレン)グリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)若しくはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)、並びに、(メタ)アクリル酸(塩)からなる共重合体;特開平4−149056号公報に記載の如くポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体;特開平5−170501号公報に記載の如く(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)、アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及び、分子中にアミド基を有するα,β−不飽和単量体からなる共重合体;特開平6−191918号公報に記載の如くポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸(塩)、並びに、(メタ)アリルスルホン酸(塩)若しくはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)からなる共重合体;特開平5−43288号公報に記載の如くアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、若しくは、その加水分解物、又は、その塩;特公昭58−38380号公報に記載の如くポリエチレングリコールモノアリルエーテル、マレイン酸、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、若しくは、その塩、又は、そのエステル。
【0145】
特公昭59−18338号公報に記載の如くポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体;特開昭62−119147号公報に記載の如くスルホン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び必要によりこれと共重合可能な単量体からなる共重合体、又は、その塩;特開平6−271347号公報に記載の如くアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端にアルケニル基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物;特開平6−298555号公報に記載の如くアルコキシポリアルキレングリコールモノアリルエーテルと無水マレイン酸との共重合体と、末端に水酸基を有するポリオキシアルキレン誘導体とのエステル化反応物;特開昭62−68806号公報に記載の如く3−メチル−3ブテン−1−オール等の特定の不飽和アルコールにエチレンオキシド等を付加したアルケニルエーテル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体、又は、その塩等のポリカルボン酸(塩)。
【0146】
国際公開WO 02053611号公報に記載の如くポリアルキレンイミン不飽和単量体と不飽和カルボン酸単量体を含む単量体成分を共重合して得られるポリカルボン酸系共重合体;特願2003−341953公報に記載の如くポリオキシアルキレンを有する不飽和単量体と(メタ)アクリル酸系単量体を必須とし、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミドなどの単量体及び多分岐ポリアルキレンオキシド鎖を有する単量体を共重合して得られるポリカルボン酸系共重合体;特開2000−109357号公報に記載の如くポリアルキレンポリアミンに含まれる活性水素含有アミノ基に対して当該アミノ基の活性水素の当量を越えるアルキレンオキサイドを付加重合してなるポリオキシアルキレン系化合物。これらセメント分散剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0147】
上記セメント分散剤の中でも、国際公開WO 02053611号公報(国際公開第02/053611号パンフレット)に記載の如くポリアルキレンイミン不飽和単量体と不飽和カルボン酸単量体を含む単量体成分を共重合して得られるポリカルボン酸系共重合体及び/又は特願2003−341953公報に記載の如くポリオキシアルキレンを有する不飽和単量体と(メタ)アクリル酸系単量体を必須とし、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミドなどの単量体及び多分岐ポリアルキレンオキシド鎖を有する単量体を共重合して得られるポリカルボン酸系共重合体及び/又は特開2000−109357号公報に記載の如くポリアルキレンポリアミンに含まれる活性水素含有アミノ基に対して当該アミノ基の活性水素の当量を越えるアルキレンオキサイドを付加重合してなるポリオキシアルキレン系化合物を本発明のセメント混和剤と共に用いた場合(使用時に混合、使用前にあらかじめ混合)には、セメントの作業性が著しくよくなるとともに、セメント流動性の経時変化も少なくなるので特に好ましい。
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。これら公知のセメント添加剤(材)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0148】
上記セメント組成物において、セメント及び水以外の成分についての特に好適な実施形態としては、次の(1)〜(7)が挙げられる。
【0149】
(1)<1>本発明のセメント混和剤と<2>オキシアルキレン系消泡剤との2成分を必須とする組み合わせ。オキシアルキレン系消泡剤としては、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類等が使用可能であるが、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が特に好適である。尚、<2>のオキシアルキレン系消泡剤の配合質量比としては、<1>のセメント混和剤に対して0.01〜20質量%の範囲が好ましい。
【0150】
(2)<1>本発明のセメント混和剤、<2>オキシアルキレン系消泡剤及び<3>AE剤の3成分を必須とする組み合わせ。オキシアルキレン系消泡剤としては、ポリオキシアルキレン類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類等が使用可能であるが、ポリオキシアルキレンアルキルアミン類が特に好適である。一方、AE剤としては、樹脂酸石鹸、アルキル硫酸エステル類、アルキルリン酸エステル類が特に好適である。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の消泡剤の配合質量比としては、<1>のセメント混和剤に対して0.01〜20質量%が好ましい。一方、<3>のAE剤の配合質量比としては、セメントに対して0.001〜2質量%が好ましい。
【0151】
(3)<1>本発明のセメント混和剤、<2>炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、(メタ)アクリル酸系単量体及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体(特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報、特開平9−241056号公報等に記載)、及び、<3>オキシアルキレン系消泡剤の3成分を必須とする組み合わせ。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の共重合体との配合質量比としては、5/95〜95/5の範囲が好ましく、10/90〜90/10の範囲がより好ましい。<3>のオキシアルキレン系消泡剤の配合質量比としては、<1>のセメント混和剤と<2>の共重合体との合計量に対して0.01〜20質量%の範囲が好ましい。
【0152】
(4)<1>本発明のセメント混和剤と<2>遅延剤との2成分を必須とする組み合わせ。遅延剤としては、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類等が使用可能である。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の遅延剤との配合比としては、共重合体(A)及び/又は共重合体(B)と<2>の遅延剤との質量比で、50/50〜99.9/0.1の範囲が好ましく、70/30〜99/1の範囲がより好ましい。
【0153】
(5)<1>本発明のセメント混和剤と<2>促進剤との2成分を必須とする組み合わせ。促進剤としては、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類等が使用可能である。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の促進剤との配合質量比としては、10/90〜99.9/0.1が好ましく、20/80〜99/1がより好ましい。
【0154】
(6)<1>本発明のセメント混和剤と<2>材料分離低減剤との2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、非イオン性セルロースエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素原子数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等が使用可能である。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の材料分離低減剤との配合質量比としては、10/90〜99.99/0.01が好ましく、50/50〜99.9/0.1がより好ましい。この組み合わせのセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
【0155】
(7)<1>本発明のセメント混和剤と<2>分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤との2成分を必須とする組み合わせ。スルホン酸系分散剤としては、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系の分散剤等が使用可能である。尚、<1>のセメント混和剤と<2>の分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤との配合比としては、<1>のセメント混和剤と<2>の分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤との質量比で、5/95〜95/5が好ましく、10/90〜90/10がより好ましい。
【0156】
本発明のセメント混和剤は、公知のセメント混和剤と同様に、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物に加えて用いることができる。また、超高強度コンクリートにも用いることができる。上記セメント組成物としては、セメント、水、細骨材、粗骨材等を含む通常用いられるものが好適である。また、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカヒューム、石灰石等の微粉体を添加したものであってもよい。なお、超高強度コンクリートとは、セメント組成物の分野で一般的にそのように称されているもの、すなわち従来のコンクリートに比べて水/セメント比を小さくしてもその硬化物が従来と同等又はより高い強度となるようなコンクリートを意味し、例えば、水/セメント比が25質量%以下、更に20質量%以下、特に18質量%以下、特に14質量%以下、特に12質量%程度であっても通常の使用に支障をきたすことのない作業性を有するコンクリートとなり、その硬化物が60N/mm以上、更に80N/mm以上、より更に100N/mm以上、特に120N/mm以上、特に160N/mm以上、特に200N/mm以上の圧縮強度を示すことになるものである。
【0157】
上記セメントとしては、普通、早強、超早強、中庸熱、白色等のポルトランドセメント;アルミナセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、シリカセメント等の混合ポルトランドセメントが好適である。上記セメントのコンクリート1m当たりの配合量及び単位水量としては、例えば、高耐久性・高強度のコンクリートを製造するためには、単位水量100〜185kg/m、水/セメント比=10〜70%とすることが好ましい。より好ましくは、単位水量120〜175kg/m、水/セメント比=20〜65%である。
【0158】
本発明のセメント混和剤のセメント組成物中の添加量割合としては、ポリカルボン酸系共重合体が、セメント質量の全量100質量%に対して、0.01質量%以上となるようにすることが好ましく、10質量%以下となるようにすることが好ましい。0.01質量%未満であると、性能的に不充分となるおそれがあり、10質量%を超えると、経済性が劣ることとなる。より好ましくは、0.05質量%以上であり、8質量%以下であり、更に好ましくは、0.1質量%以上であり、5質量%以下である。なお、上記質量%は、固形分換算の値である。
【発明の効果】
【0159】
本発明のセメント混和剤は、上述の構成よりなり、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等の減水性を向上してその硬化物の強度や耐久性を優れたものとし、セメント組成物等のスランプ保持性を高めて流動性が保持されるようにし、しかもそれを取り扱う現場において作業しやすくなるような粘性とすることができることから、基本性能に優れた土木・建築構造物等の構築において作業効率等を改善することができ、強度や耐久性に優れたセメント硬化物が効率よく形成・製造できるので、優れたセメント分散性能、減水性能を発揮して、各種のセメント組成物等に好適に適用することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0160】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0161】
〔GPC分子量測定条件〕
使用カラム:東ソー社製TSKguardColumn SWXL+TSKge1 G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に、酢酸でpH6.0に調整した溶離液溶液を用いた。
打込み量:0.5%溶離液溶液100μL
溶離液流速:0.8mL/min
カラム温度:40℃
標準物質:ポリエチレングリコール、ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470
検量線次数:三次式
検出器:日本Waters社製 410 示差屈折検出器
解析ソフト:日本Waters社製 MILLENNIUM Ver.3.21
【0162】
製造例1(H−(OC13−(OC−(OC10−OCHの製造)
温度計、攪拌機、原料導入菅、及び窒素導入管を備えた反応装置にポリ(n=10)エチレングリコールモノメチルエーテル1100g、水酸化カリウム0.5gを仕込み、反応器内を窒素置換した後、120℃に昇温して、この温度を保ちながらプロピレンオキシド235gを3時間かけて投入した。投入後、更に120℃で2時間熟成した後、再び反応器内を窒素置換してから、120℃に保ちながらエチレンオキシド1165gを3時間かけて投入した。投入後更に120℃で1時間熟成して、水酸基価48mg・KOH/gのアルキレングリコールモノメチルエーテルを得た。
【0163】
製造例2(エステル化物(a)の製造)
温度計、攪拌機、窒素導入菅、及び縮合水分離菅を備えた反応器に、製造例1で得られたポリアルキレングリコールモノメチルエーテル2083g、メタクリル酸350g、パラトルエンスルホン酸1水和物54g、フェノチアジン0.5g、及び、共沸溶媒としてシクロヘキサン243gを仕込み、115℃に保ちながら縮合水を分離して28時間加熱してエステル化を行った。エステル化率99%(ポリアルキレングリコールモノメチルエーテルの転化率)で、蒸留水510gと30%水酸化ナトリウム溶液41gを加えた後、再び昇温して、共沸によりシクロヘキサンを除去してから、蒸留水を加えて、エステル化物(a)を72%と未反応のメタクリル酸8%を含む混合物の水溶液を得た。
【0164】
製造例3
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入菅、及び冷却菅を備えた反応器に、蒸留水50gを仕込み、80℃に昇温した。続いて、製造例2で得たエステル化物(a)とメタクリル酸の混合物の水溶液200.0g、メタクリル酸25.2g、蒸留水71.3g、及び3−メルカプトプロピオン酸3.5gを混合した溶液を4時間、並びに蒸留水47.9gと過硫酸アンモニウム2.1gを混合した溶液を5時間かけて滴下した。その後、80℃に保ったままで1時間熟成してから冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、PH7に調整し、更に蒸留水を加えて、重量平均分子量14000であり、エステル化物(a)由来の部位を75%有する共重合体(A)を得た。表1に、共重合体(A)の組成と重量平均分子量を示す。
【0165】
製造例4
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入菅、及び冷却菅を備えた反応器に、蒸留水50gを仕込み、80℃に昇温した。続いて、製造例2で得たエステル化物(a)とメタクリル酸の混合物の水溶液211.1g、メタクリル酸16.6g、蒸留水69.8g、及び3−メルカプトプロピオン酸2.5gを混合した溶液を4時間、並びに蒸留水47.9gと過硫酸アンモニウム2.1gを混合した溶液を5時間かけて滴下した。その後、80℃に保ったままで1時間熟成してから冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、PH7に調整し、更に蒸留水を加えて、重量平均分子量18000であり、エステル化物(a)由来の部位を80%有する共重合体(B)を得た。表1に、共重合体(B)の組成と重量平均分子量を示す。
【0166】
製造例5
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入菅、及び冷却菅を備えた反応器に、蒸留水60gを仕込み、80℃に昇温した。続いて、製造例2で得たエステル化物(a)とメタクリル酸の混合物の水溶液230.4g、メタクリル酸1.6g、蒸留水4.0g、30%水酸化ナトリウム水溶液1.3g、及び3−メルカプトプロピオン酸2.7gを混合した溶液を4時間、並びに蒸留水49.1gと30%過酸化水素水溶液0.87gを混合した溶液と蒸留水49.7gとL−アスコルビン酸0.34gを混合した溶液をそれぞれ5時間かけて滴下した。その後、80℃に保ったままで1時間熟成してから冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、PH7に調整し、更に蒸留水を加えて、重量平均分子量11000であり、エステル化物(a)由来の部位を89%有する共重合体(C)を得た。表1に、共重合体(C)の組成と重量平均分子量を示す。
【0167】
製造例6(エステル化物(b)の製造)
温度計、攪拌機、窒素導入菅、及び縮合水分離菅を備えた反応器に、ポリ(n=25)エチレングリコールモノメチルエーテル2033g、メタクリル酸400g、パラトルエンスルホン酸1水和物54g、フェノチアジン0.5g、及び、共沸溶媒としてシクロヘキサン243gを仕込み、115℃に保ちながら縮合水を分離して20時間加熱してエステル化を行った。エステル化率99%(ポリエチレングリコールモノメチルエーテルの転化率)で、蒸留水509gと30%水酸化ナトリウム溶液42gを加えた後、再び昇温して、共沸によりシクロヘキサンを除去してから、蒸留水を加えて、エステル化物(b)を70%と未反応のメタクリル酸10%を含む混合物の水溶液を得た。
【0168】
製造例7
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入菅、及び冷却菅を備えた反応器に、蒸留水50gを仕込み、80℃に昇温した。続いて、製造例6で得たエステル化物(b)とメタクリル酸の混合物の水溶液215.9g、メタクリル酸12.8g、蒸留水69.8g、及び3−メルカプトプロピオン酸1.5gを混合した溶液を4時間、並びに蒸留水47.9gと過硫酸アンモニウム2.1gを混合した溶液を5時間かけて滴下した。その後、80℃に保ったままで1時間熟成してから冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、PH7に調整し、更に蒸留水を加えて、重量平均分子量22000であり、エステル化物(b)由来の部位を80%有する共重合体(D)を得た。表1に、共重合体(D)の組成と重量平均分子量を示す。
【0169】
製造例8
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入菅、及び冷却菅を備えた反応器に、蒸留水50gを仕込み、80℃に昇温した。続いて、製造例6で得たエステル化物(b)とメタクリル酸の混合物の水溶液232.5g、蒸留水66.5g、及び3−メルカプトプロピオン酸1.1gを混合した溶液を4時間、並びに蒸留水47.9gと過硫酸アンモニウム2.1gを混合した溶液を5時間かけて滴下した。その後、80℃に保ったままで1時間熟成してから冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、PH7に調整し、更に蒸留水を加えて、重量平均分子量22000であり、エステル化物(b)由来の部位を87.5%有する共重合体(E)を得た。表1に、共重合体(E)の組成と重量平均分子量を示す。
【0170】
【表1】

【0171】
表1において、「SMAA」とは、メタクリル酸ナトリウムであり、「PGM−10E2P13E」とは、エステル化合物(a)であり、「PGM−25E」とは、エステル化合物(b)である。
【0172】
実施例1、2及び比較例1
製造例で得られた共重合体(A)〜(E)を表2に示す割合で混合して、下記のようにコンクリート試験方法により評価した。表2に結果を示す。添加量はセメント質量に対する混和剤の固形分質量%を、混和剤の混合比率は固形分質量比を表している。
【0173】
〔コンクリート試験方法〕
コンクリート配合は、以下のような組成とした。
水:172kg/m
セメント(太平洋セメント社製、住友大阪セメント社製、宇部三菱セメント社製:普通ポルトランドセメント):491kg/m
細骨材(大井川系川砂):744.6kg/m
粗骨材(青梅産砕石):909.8kg/m
W/C:35%
上記配合で、セメント混和剤は練り水にあらかじめ混合し、50L強制練りミキサーに30Lのコンクリート材料を投入し、60秒間練り混ぜた。得られたコンクリートのスランプフロー値、空気量の測定は日本工業規格(JIS
A 1101、1128、6204)に準拠して行った。
【0174】
〔フローストップ値の測定方法〕
フローストップ値は、上述の初期(0min)のスランプフロー値の測定を行う際に、フローが流れて止まるまでの時間を測定することにより求めた。
【0175】
【表2】

【0176】
表2におけるコンクリートの状態について、スコップを用いて練り返したときの感覚を示し、軽い感じで抵抗が少なくて良好な状態を〇、重い感じで抵抗が大きくて悪い状態を×とした。軽い感じで抵抗が少ない状態の方が扱いやすいコンクリートである。
【0177】
製造例9(単量体(c)の製造)
温度計、攪拌機、窒素導入菅、及び縮合水分離菅を備えた反応器に、製造例1で得られたアルキレングリコールモノメチルエーテル2203部、メタクリル酸450部、パラトルエンスルホン酸1水和物59部、フェノチアジン0.5部、及び、共沸溶媒としてシクロヘキサン265部を仕込み、115℃に保ちながら縮合水を分離して20時間加熱してエステル化を行った。エステル化率99%(アルキレングリコールモノメチルエーテルの転化率)で、蒸留水556部と30%水酸化ナトリウム溶液46部を加えた後、再び昇温して、共沸によりシクロヘキサンを除去してから、蒸留水を加えて、単量体(c)の構造を有するエステル化物(c−1)を70%と未反応のメタクリル酸10%を含む混合物の水溶液を得た。
【0178】
製造例10(単量体(d)の製造)
温度計、攪拌機、窒素導入菅、コンデンサ、及び縮合水分離菅を備えたガラス製反応器(容量30L)に、メトキシポリ(n=25)エチレングリコール16500部、メタクリル酸4740部、パラトルエンスルホン酸1水和物235部、フェノチアジン5部、及び、共沸溶媒としてシクロヘキサン1060部を仕込み、120℃に保ちながら縮合水を分離して20時間加熱してエステル化を行った。エステル化率99%(メトキシポリエチレングリコールの転化率)で、蒸留水5857部と30%水酸化ナトリウム溶液485部を加えた後、再び昇温して、共沸によりシクロヘキサンを除去してから、蒸留水を加えて、単量体(d)の構造を有するエステル化物(d−1)を70%と未反応のメタクリル酸10%を含む混合物の水溶液を得た。
【0179】
実施例3
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入菅、及び冷却菅を備えた反応器に、蒸留水240部を仕込み、80℃に昇温した。続いて、製造例9で得たエステル化物(c−1)とメタクリル酸の混合物の水溶液279部、製造例10で得たエステル化物(d−1)とメタクリル酸の混合物の水溶液319.8部、メタクリル酸57.8部、蒸留水27.4部g、及びβ−メルカプトプロピオン酸9.72部を混合した溶液を4時間、並びに蒸留水115.5部と過酸化水素4.5部を混合した溶液を5時間、並びに蒸留水118.2部とL−アスコルビン酸1.8部を混合した溶液を5時間かけて滴下した。その後、80℃に保ったままで1時間熟成してから冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、PH7に調整し、更に蒸留水を加えて、重量平均分子量13200であり、エステル化物(c−1)由来の部位を37.5%とエステル化物(d−1)由来の部位を37.5%有する重合体を含有する固形分濃度45%のセメント混和剤(1)を得た。
【0180】
製造例11
製造例1と同様にしてH−(OC13−(OC−(OC10−OCHの合成を経てメタクリル酸とエステル化し、エステル化物(c−2)70%と未反応のメタクリル酸10%を含む混合物の水溶液を得た。
【0181】
実施例4
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入菅、及び冷却菅を備えた反応器に、蒸留水160部を仕込み、80℃に昇温した。続いて、製造例11で得たエステル化物(c−2)とメタクリル酸の混合物の水溶液204部、製造例10で得たエステル化物(d−1)とメタクリル酸の混合物の水溶液213.2部、メタクリル酸20.9部、蒸留水18.2部、及びβ−メルカプトプロピオン酸6.07部を混合した溶液を4時間、並びに蒸留水77.0部と過酸化水素3.0部を混合した溶液を5時間、並びに蒸留水78.92部とL−アスコルビン酸1.2部を混合した溶液を5時間かけて滴下した。その後、80℃に保ったままで1時間熟成してから冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、PH7に調整し、更に蒸留水を加えて、重量平均分子量14700であり、エステル化物(c−2)由来の部位を37.5%とエステル化物(d−1)由来の部位を37.5%有する重合体を含有する固形分濃度45%のセメント混和剤(2)を得た。
【0182】
実施例5
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入菅、及び冷却菅を備えた反応器に、蒸留水240部を仕込み、80℃に昇温した。続いて、製造例11で得たエステル化物(c−2)とメタクリル酸の混合物の水溶液153.0部、製造例10で得たエステル化物(d−1)とメタクリル酸の混合物の水溶液479.7部、メタクリル酸29.9部、蒸留水21.9部g、及びβ−メルカプトプロピオン酸9.16部を混合した溶液を4時間、並びに蒸留水115.5部と過酸化水素4.5部を混合した溶液を5時間、並びに蒸留水78.9部とL−アスコルビン酸1.2部を混合した溶液を5時間かけて滴下した。その後、80℃に保ったままで1時間熟成してから冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、PH7に調整し、更に蒸留水を加えて、重量平均分子量14700であり、エステル化物(c−2)由来の部位を18.8%とエステル化物(d−1)由来の部位を56.2%有する重合体を含有する固形分濃度45%のセメント混和剤(3)を得た。
【0183】
比較例2
実施例4においてエステル化物(d−1)とメタクリル酸の混合物の水溶液を全てエステル化物(c−2)とメタクリル酸の混合物の水溶液に置き換えて同様に重合を行い、冷却後、酸化ナトリウム水溶液を加え、PH7に調整し、更に蒸留水を加えて、重量平均分子量14100であり、エステル化物(c−2)由来の部位を75%有する重合体を含有する固形分濃度45%の比較セメント混和剤(A)を得た。
【0184】
比較例3
実施例4においてエステル化物(c−2)とメタクリル酸の混合物の水溶液を全てエステル化物(d−1)とメタクリル酸の混合物の水溶液に置き換えて同様に重合を行い、冷却後、酸化ナトリウム水溶液を加え、PH7に調整し、更に蒸留水を加えて、重量平均分子量14300であり、エステル化物(d−1)由来の部位を75%有する重合体を含有する固形分濃度45%の比較セメント混和剤(B)を得た。
【0185】
〔モルタル試験方法〕
実施例3〜5、及び比較例2〜3で示したセメント混和剤を用いて、表3に示す配合でモルタルを調合・混練し、所定の流動性(フロー値)を得るための混和剤添加量と、スコップかき混ぜ時の粘性と作業性を評価した。結果を表4に示した。
(モルタル配合)
【0186】
【表3】

【0187】
セメント:太平洋セメント社製:普通ポルトランドセメント
細骨材:セメント強さ試験用標準砂(JIS R 5201準拠)
セメント質量に対するセメント混和剤配合量は、混和剤の固形分量で計算し、%表示で表4に示した。
(混練条件)
上記配合で、HOBARTミキサーにセメントとセメント混和剤を配合した水を加えて回転1で30秒混練し、次いで細骨材を投入して回転1で60秒混練し、更に回転2で60秒間混練した後に、壁面付着物を掻き落としてから回転2で60秒混練することで、モルタルを製造した。
【0188】
(評価方法及び評価基準)
得られたモルタルのスランプフロー値は日本工業規格(JIS A 1101、1128、6204)に準拠して行った。モルタルの粘性は、スコップを用いて練り返ししたときの感覚を示し、1点〜5点の点数で評価した。すなわち、粘性の最も大きいものが5点で、粘性の最も小さいものが1点である。
モルタルの作業性は、粘性が適度で作業性(モルタルの取り扱い性)の良好なものを○とし、粘性が大きすぎてベタついたり、粘性が低すぎて流れすぎたりするなど、作業性の悪いものを×とした。
(評価結果)
【0189】
【表4】

【0190】
実施例3〜5で使用した本発明のセメント混和剤(1)〜(3)は優れた減水性を有するために、スランプフロー値を約220mmにするための混和剤添加量が比較的少なくてよかったが、比較例2で使用した比較セメント混和剤(A)ではもっと多くの混和剤を添加しなければならなかった。また、本発明のセメント混和剤(1)〜(3)を使用した実施例3〜5ではモルタルの粘性が適度であったために作業性が良好であったが、比較セメント混和剤(A)を使用した比較例2ではモルタルの粘性が高すぎるために、練り返そうとしてもベタつき作業性は極めて悪かった。更に、比較セメント混和剤(B)を使用した比較例3ではモルタルの粘性が低いために練り返そうとしてもモルタルが流れて行ってしまうので、作業性が不充分であった。
【0191】
製造例12
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応器に蒸留水995部を仕込み、70℃に昇温した。続いてメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数6)1067部、メタクリル酸283部、48%水酸化ナトリウム水溶液41.2部、3−メルカプトプロピオン酸20部及び蒸留水354部を混合した溶液を5時間、並びに、6.5%過硫酸アンモニウム水溶液240部を6時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を70℃に1時間維持した。冷却後30%水酸化ナトリウム水溶液を加えpH7に調整し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリエチレングリコール換算で重量平均分子量14000のセメント混和剤(i)を得た。
【0192】
製造例13
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却管を備えたガラス製反応装置に水344部を仕込み攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で70℃まで昇温した。メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数4)1076部、メタクリル酸190部、表5に示す単量体(e)の43%水溶液754.6部、48%水酸化ナトリウム水溶液21.7部、3−メルカプトプロピオン酸44.6部及び蒸留水287部を混合したモノマー水溶液を5時間で、2.0%過酸化水素水240部及び2.5%L−アスコルビン酸水溶液240部をそれぞれ6時間で滴下した。その後1時間引き続いて70℃を維持し、重合を完結させ、重量平均分子量10000のポリカルボン酸系セメント混和剤(ii)を得た。
【0193】
【表5】

【0194】
製造例14(単量体(f)の製造例)
製造例1と同様にして、H−(OC−(OC−(OC−OCHの合成を経てメタクリル酸とエステル化し、単量体(f)90%と未反応のメタクリル酸10%を含む混合物のエステル化物水溶液(f)を得た。
【0195】
製造例15
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却管を備えたガラス製反応装置に水740部を仕込み攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した。製造例14で得られたエステル化物水溶液(f)1698.17部、メタクリル酸30.65部、30%水酸化ナトリウム水溶液32.04部、3−メルカプトプロピオン酸8.98部及び蒸留水10.15部を混合した溶液を4時間、並びに、1.1%過酸化水素水溶液240部、1.4%L−アスコルビン酸水溶液240部を6時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を60℃に1時間維持した。冷却後30%水酸化ナトリウム水溶液を加えpH7に調整し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリエチレングリコール換算で重量平均分子量22000のセメント混和剤(iii)を得た。
【0196】
製造例16
〔マクロマー水溶液の製造〕
温度計、攪拌機、滴下装置及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置にポリエチレンイミンエチレンオキシド付加物(分子量600のポリエチレンイミンの活性水素にエチレンオキシドを平均付加モル数20で付加した化合物)754部、酢酸1.27部及びp−メトキシフェノール0.15部を仕込み、攪拌下に90℃まで昇温した。反応系内を90℃に保持した後に、反応系内を90℃に保持したままグリシジルメタクリレート12.5部を30分で添加した。添加終了後1時間90℃で攪拌を続けた後、60℃まで降温し、水768部、酢酸14.3部を加え、ポリエチレンイミンエチレンオキシド付加物のマクロマー水溶液を得た。
〔セメント混和剤(iv)の製造〕
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応器に蒸留水700部を仕込み70℃に昇温した。続いてメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数10)832.5部、メタクリル酸260.5部、メタクリル酸メチル154.1部、48%水溶液の水酸化ナトウリム36.2部、3−メルカプトプロピオン酸40.2部及び蒸留水243部を混合した溶液を5時間、並びに、2.1%の過酸化水素水240部を6時間、2.7%のL−アスコルビン酸水溶液240部を6時間かけて滴下した。これらの溶液の滴下開始から4時間5分後に、上記マクロマー水溶液208部を3.78部/分で滴下開始した。全ての溶液の滴下終了後、反応混合液を70℃に1時間維持した。冷却後30%水酸化ナトリウム水溶液を加えpH7に調整し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリエチレングリコール換算で重量平均分子量6000のセメント混和剤(iv)を得た。
【0197】
実施例6〜10
実施例3で製造したセメント混和剤(1)及び製造例12〜15で製造したセメント混和剤(i)〜(iv)及び表6に示すセメント混和剤(v)、(vi)を、表7に示す配合で混合し、本発明のセメント混和剤(4)〜(8)を得た。これら本発明のセメント混和剤(4)〜(8)を用い、コンクリート試験を行い、スコップかき混ぜ時の粘性と作業性を評価した。結果を表8に示した。
【0198】
【表6】

【0199】
【表7】

【0200】
比較例4及び比較例5
比較例2及び比較例3で製造した比較セメント混和剤(A)及び比較セメント混和剤(B)を用い、コンクリート試験を行い、スコップかき混ぜ時の粘性と作業性を評価した。結果を表8に示した。
【0201】
〔コンクリート試験方法〕
実施例6〜10、及び比較例2〜3で示したセメント混和剤を用いて、下記に示す配合でコンクリートを調合・混練し、所定の流動性(フロー値)を得るための混和剤添加量と、スコップかき混ぜ時の粘性と作業性を評価した。
(コンクリート配合)
配合単位量は、水、セメント(住友大阪セメント社製)及び粗骨材は上述と同様であり、細骨材は、744.5kg/mとした。
消泡剤であるMA404(ポゾリス物産製)をセメント質量に対して0.003%、及び、AE剤であるMA303A(ポゾリス物産製)をセメント質量に対して0.01%を配合した。
セメント質量に対するセメント混和剤の配合量は、混和剤の固形分量で計算し、%(質量%)表示で表8に示した。
【0202】
(コンクリート製造条件)
上記配合で、50L強制練りミキサーにセメント、細骨材、粗骨材を投入して10秒間空練を行い、次いで、セメント混和剤を配合した水を加えて更に60秒間混練を行い、コンクリートを製造した。
(評価方法及び評価基準)
得られたコンクリートのスランプフロー値、空気量の測定は上述と同様に行った。コンクリートの粘性は、スコップを用いて練り返ししたときの感覚を示し、1点〜5点の点数で評価した。すなわち、粘性の最も大きいものが5点で、粘性の最も小さいものが1点である。
コンクリートの作業性は、粘性が適度で作業性(コンクリートの取り扱い性)が特に良好なものを◎、良好なものを○とし、粘性が大きすぎてベタついたり、粘性が低すぎて流れすぎたりするなど、作業性の悪いものを×とした。
(評価結果)
【0203】
【表8】

【0204】
実施例6〜10で使用した本発明のセメント混和剤(4)〜(8)は優れた減水性を有するために、スランプフロー値を約600mmにするための混和剤添加量が比較的少なくてよかったが、比較例4で使用した比較セメント混和剤(A)ではもっと多くの混和剤を添加しなければならなかった。また、本発明のセメント混和剤(4)〜(8)を使用した実施例6〜10ではコンクリートの粘性が適度であったために作業性が良好であったが、比較セメント混和剤(A)を使用した比較例4ではコンクリートの粘性が高すぎてスコップにベタつき、作業性は悪かった。更に、比較セメント混和剤(B)を使用した比較例4ではコンクリートの粘性が低いためにスコップで練り返そうとしてもコンクリートが流れて行ってしまうので、作業性が不充分であった。
【0205】
製造例17 (単量体(g)の製造例)
製造例1と同様にして、H−(OC−OCHの合成を経てメタクリル酸とエステル化し、単量体(g)90%と未反応のメタクリル酸10%を含む混合物のエステル化物水溶液(g)を得た。
【0206】
製造例18
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却管を備えたガラス製反応装置に水635.4部を仕込み攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した。製造例14で得られたエステル化物水溶液(f)1029.9部及び製造例17で得られたエステル化物水溶液(g)569.9部、メタクリル酸92.9部、30%水酸化ナトリウム水溶液28.3部、3−メルカプトプロピオン酸24.1部を混合した溶液を4時間、並びに、1.17%過酸化水素水溶液300部を5時間、1.51%L−アスコルビン酸水溶液300部を5時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を60℃に1時間維持した。冷却後30%水酸化ナトリウム水溶液を加えpH7に調整し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリエチレングリコール換算で重量平均分子量10000のセメント混和剤(vii)を得た。
【0207】
製造例19
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却管を備えたガラス製反応装置に水635.4部を仕込み攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した。製造例14で得られたエステル化物水溶液(f)1539.5部及びメタクリル酸92.9部、30%水酸化ナトリウム水溶液28.3部、3−メルカプトプロピオン酸25.7部を混合した溶液を4時間、並びに、1.02%過酸化水素水溶液300部を5時間、1.31%L−アスコルビン酸水溶液300部を5時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を60℃に1時間維持した。冷却後30%水酸化ナトリウム水溶液を加えpH7に調整し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリエチレングリコール換算で重量平均分子量10000のセメント混和剤(viii)を得た。
【0208】
製造例20
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却管を備えたガラス製反応装置に水635.4部を仕込み攪拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃まで昇温した。製造例17で得られたエステル化物水溶液(g)569.9部及びメタクリル酸92.9部、30%水酸化ナトリウム水溶液28.3部、3−メルカプトプロピオン酸17.8部を混合した溶液を5時間、並びに、1.17%過酸化水素水溶液300部を6時間、1.51%L−アスコルビン酸水溶液300部を6時間かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を60℃に1時間維持した。冷却後30%水酸化ナトリウム水溶液を加えpH7に調整し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリエチレングリコール換算で重量平均分子量10000のセメント混和剤(ix)を得た。
【0209】
実施例11〜13
製造例3で製造した共重合体(A)及び製造例18〜20で製造したセメント混和剤(vii)〜(ix)を、表9に示す配合で混合し、本発明のセメント混和剤(9)〜(11)を得た。これらのセメント混和剤を用い、コンクリート試験を行い、スコップかき混ぜ時の粘性と作業性を評価した。
【0210】
【表9】

【0211】
〔コンクリート試験方法〕
表9に示すセメント混和剤(9)〜(11)を用いて、表10に示す配合でコンクリートを調合し、各性能を評価した。
【0212】
【表10】

【0213】
表10の記載は、以下のとおりである。
W/C(質量%):水/セメント×100
細骨材比(体積%):細骨材量/(粗骨材+細骨材)×100
セメント:太平洋セメント社製、住友大阪セメント社製、宇部三菱セメント社製の普通ポルトランドセメント3種混合
粗骨材:青森県八戸産石灰破石
細骨材:千葉県山砂
【0214】
(コンクリート製造条件)
上記配合で、ミキサーとして、パン型強制練りミキサー(回転40rpm:容量50L)を用いて混練を行った。混練方法は、下記の方法で、1バッチあたり30リットル練り上げた。
W/C45(W/Cが45質量%の場合):粗骨材・細骨材・セメントを一括投入し、10秒空練りした後、セメント混和剤を配合した水を加えて、90秒間混練を行い、コンクリートを製造した。
W/C30(W/Cが30質量%の場合):細骨材・セメントを一括投入し、10秒空練りした後、セメント混和剤を配合した水を加えて、60秒間混練を行い、次いで粗骨材を投入し、さらに60秒間混練を行い、コンクリートを製造した。
【0215】
(評価方法及び評価基準)
得られたコンクリートのスランプフロー値、空気量の測定は上述と同様に行った。コンクリートの粘性は、スコップを用いて練り返ししたときの感覚を示し、1点〜5点の点数で評価した。すなわち、粘性の最も大きいものが5点で、粘性の最も小さいものが1点である。
コンクリートの作業性は、粘性が適度で作業性(コンクリートの取り扱い性)が特に良好なものを◎、良好なものを○とし、粘性が大きすぎてベタついたり、粘性が低すぎて流れすぎたりするなど、作業性の悪いものを×とした。
(評価結果)
【0216】
【表11】

【0217】
実施例11で使用した、本発明のセメント混和剤(9)はコンクリートの粘性のバランスが非常によく、さらに添加量とスランプ保持性のバランスが非常に良好であり、セメント混和剤として優れたものである。実施例12で使用した、セメント混和剤(10)は−(CO)−ユニットを含む単量体(f)のみを使用したものである。実施例11に比べて、添加量は少なくてすみ、コンクリートの粘性も、少し高く感じられる程度で、作業性に関しては良好であったが、スランプ保持性に関しては、劣る結果となった。実施例13で使用した、セメント混和剤(11)は−(CO)−ユニットを含まない単量体(g)のみを使用したものである。実施例11に比べ、スランプ保持性は非常に良好であり、コンクリートの粘性も、少し低く感じられる程度で、作業性に関しては良好であったが、添加量が多く必要であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数3以上のオキシアルキレン基を必須とするポリアルキレングリコール側鎖をもつポリカルボン酸系共重合体を含むセメント混和剤であって、該ポリカルボン酸系共重合体は、重量平均分子量が20000以下である2種類以上の共重合体により構成されるものであることを特徴とするセメント混和剤。
【請求項2】
前記2種類以上の共重合体は、下記一般式(1)で表される部位、及び、下記一般式(2)で表される部位を有する共重合体を必須とすることを特徴とする請求項1記載のセメント混和剤。
【化1】

式中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素又はメチル基を表す。xは、0〜2の数を表す。yは、0又は1を表す。ROは、同一若しくは異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表し、オキシアルキレン基の平均付加モル数の0.01〜49モル%が、炭素数3〜18のオキシアルキレン基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、3〜300の数を表す。
【化2】

式中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素又はメチル基を表す。zは、0〜2の数を表す。wは、0又は1を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、nは、オキシエチレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
【請求項3】
ポリカルボン酸系共重合体を含んでなるセメント混和剤であって、該ポリカルボン酸系共重合体は、下記一般式(1)で表される部位、及び、下記一般式(2)で表される部位を有することを特徴とするセメント混和剤。
【化3】

式中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素又はメチル基を表す。xは、0〜2の数を表す。yは、0又は1を表す。ROは、同一若しくは異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表し、オキシアルキレン基の平均付加モル数の0.01〜49モル%が、炭素数3〜18のオキシアルキレン基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、3〜300の数を表す。
【化4】

式中、R及びRは、同一若しくは異なって、水素又はメチル基を表す。zは、0〜2の数を表す。wは、0又は1を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、nは、オキシエチレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
【請求項4】
前記ポリカルボン酸系共重合体中の前記一般式(1)で表される部位と前記一般式(2)で表される部位とのモル比(A)/(B)が、1/99〜99/1であることを特徴とする請求項3記載のセメント混和剤。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸系共重合体は、前記一般式(1)中のROが下記一般式(6)となっている部位、及び、前記一般式(2)で表される部位を有することを特徴とする請求項3又は4記載のセメント混和剤。
【化5】

式中、Rは、炭素数3〜18のアルキレン基を表す。r及びqは、オキシエチレン基の平均付加モル数であって、0〜300の数を表すが、どちらか一方が0である場合はもう一方は2〜300の数となる。pは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜50の数である。r+p+qは、3〜300の数である。
【請求項6】
前記一般式(1)中のROが前記一般式(6)となっている部位と前記一般式(2)で表される部位とのモル比(C)/(B)が、1/99〜99/1であることを特徴とする請求項5記載のセメント混和剤。

【公開番号】特開2010−202512(P2010−202512A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104460(P2010−104460)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【分割の表示】特願2004−319770(P2004−319770)の分割
【原出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】