説明

セメント用分散剤組成物

【課題】乾燥収縮低減剤とポリカルボン酸系分散剤の分離を抑制するため、長期保存安定性に優れ、凝結遅延に影響を与えずに乾燥収縮を抑制するセメント用分散剤組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物(a)及びポリカルボン酸系分散剤(b)を含有するセメント用分散剤組成物。
R−O−(AO)−(AO)−X−O−(AO)−(AO)−R ・・・(1)
[Xは炭素数2〜6のアルカンジオールから水酸基を除いた残基であり、RおよびRは水素原子またはメチル基であり、AOは炭素数4〜6のオキシアルキレン基からなり、AOはオキシエチレン基からなり、mおよびnはオキシエチレン基の平均付加モル数で、m+nは2〜10であり、yおよびzは炭素数4〜6のオキシアルキレン基の平均付加モル数で、y+zは1〜4であり、(m+n)/(y+z)で示されるオキシチレン基の平均付加モル数と炭素数4〜6のオキシアルキレン基の平均付加モル数の比は1.5〜4.0である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に土木、建築分野において使用されるセメント用分散剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物に対して耐震性、高層化などが求められる中で、高強度、超高強度コンクリートの要求が高まり、コンクリート等のセメント組成物の単位水量を少なくする必要性が増している。単位水量を少なくするためにはセメント用分散剤が主に使用されているが、特にポリカルボン酸系分散剤は単位水量を大幅に少なくすることができるだけでなく、セメント組成物に優れた流動性を与え、得られた硬化体に優れた圧縮強度を発現させるセメント用分散剤として知られている。
【0003】
このような高強度、超高強度コンクリートの要求が高まる中で、コンクリート等のセメント組成物のひび割れは、セメント組成物の早期劣化を引き起こすため、大きな課題になっている。こうしたセメント組成物のひび割れを起こす原因の一つとして、セメント組成物の水分の蒸散に伴う乾燥収縮が知られている。乾燥収縮を防止するための方法としては、セメント類とその他の添加剤及び水との混練の際に、乾燥収縮低減剤を添加する方法が知られており、セメント組成物を調整する際にはポリカルボン酸系分散剤と乾燥収縮低減剤を併用する試みがなされてきた。
【0004】
ポリカルボン酸系分散剤と乾燥収縮低減剤を併用する際の乾燥収縮低減剤を添加する方法は、レディミクストコンクリート工場のミキサー内にポリカルボン酸系分散剤と乾燥収縮低減剤を別添加する方法等が挙げられるが、別添加するための設備を備えたレディミクストコンクリート工場は限られているという課題があった。また、別添加するための設備を導入する場合には、新たにタンクを新設することや、タンクの置き場を確保するなど多大な費用が生じるという課題があった。
【0005】
そのため、ポリカルボン酸系分散剤と乾燥収縮低減剤を別添加する必要がなく、予め、ポリカルボン酸系分散剤と乾燥収縮低減剤が混合されたセメント用分散剤組成物が開発された。
【0006】
この乾燥収縮低減剤とポリカルボン酸系分散剤が混合されたセメント用分散剤組成物は、多くの場合、水に溶解させて使用される。ポリカルボン酸系分散剤および乾燥収縮低減剤よりなるセメント用分散剤組成物と水の混合物は、分離するとポリカルボン酸系分散剤及び、乾燥収縮低減剤の効果がバッチごとに異なるため、分離せず、長期保存安定性が求められている。
【0007】
乾燥収縮低減剤とポリカルボン酸系分散剤および水の相溶性に優れるセメント用分散剤組成物として、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルとポリカルボン酸系分散剤の混合物やポリオキシエチレンモノアリルエーテル、ポリカルボン酸系分散剤および水の混合物などが挙げられる(例えば特許文献1(特開2001−302307号公報)、特許文献2(特開2008−50255号公報))。しかし、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリカルボン酸系分散剤および水の混合物は、凝結遅延を起こすといった課題があった。また、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、ポリカルボン酸系分散剤および水の混合物は、所望の乾燥収縮を抑制する効果を得るためには、ポリカルボン酸系分散剤に対して多量の乾燥収縮低減剤を混合する必要があり、乾燥収縮低減剤を多量に配合されたセメント用分散剤は、強度低下を起こすだけでなく、凝結遅延を起こすといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−302307号公報
【特許文献2】特開2008−50255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を改善し、乾燥収縮低減剤とポリカルボン酸系分散剤の分離を抑制するため、長期保存安定性に優れ、凝結遅延に影響を与えずに乾燥収縮を抑制するセメント用分散剤組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、
[1] 式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物(a)及びポリカルボン酸系分散剤(b)を含有することを特徴とするセメント用分散剤組成物である。

R−O−(AO)−(AO)−X−O−(AO)−(AO)−R ・・・(1)
[ただし、Xは炭素数2〜6のアルカンジオールから水酸基を除いた残基であり、RおよびRは水素原子またはメチル基であり、AOは炭素数4〜6のオキシアルキレン基からなり、AOはオキシエチレン基からなり、mおよびnはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、m+nは2〜10であり、yおよびzは炭素数4〜6のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、y+zは1〜4であり、(m+n)/(y+z)で示されるオキシチレン基の平均付加モル数と炭素数4〜6のオキシアルキレン基の平均付加モル数の比は1.5〜4.0である。]
【0011】
[2] 前記ポリカルボン酸系分散剤(b)が式(2)で示されるポリアルキレングリコールエーテルに基づく構成単位(A)50〜99質量%、無水マレイン酸または(メタ)アクリル酸または式(3)で示される不飽和カルボン酸系化合物に基づく構成単位(B)1〜50質量%および他の単量体に基づく構成単位(C)0〜30質量%を有する共重合体である[1]記載の組成物である。
【化1】


[R、RおよびRは,それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。
Rは、炭素数1〜4のアルキレン基を表す。
Rは、水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基を表す。
AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上であり、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良い。
pは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数で、p=1〜150である。]
【化2】


[Jは、−OM2または−Y−(AO)rR〔式(4)〕を表す。
M1およびM2はそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す。
Yは、エーテル基またはイミノ基を表す。
Rは、水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基を表す。
AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上であり、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良い。
rは,炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数で、r=1〜150である。]

【0012】
[3] 前記ポリカルボン酸系分散剤(b)が、式(5)で示されるポリアルキレングリコールエステルに基づく構成単位(D)50〜99質量%、式(6)で示される不飽和カルボン酸系化合物に基づく構成単位(E)1〜50質量%および他の単量体に基づく構成単位(F)0〜30質量%を有する共重合体である[1]記載の組成物である。
【化3】


[Rは、水素原子またはメチル基を表す。
10は、水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基を表す。
Oは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上であり、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良い。
sは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数で、s=1〜150である。]
【化4】


[R11は、水素原子またはメチル基を表す。
Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す。]
【0013】
[4] 前記式(1)で示される(AO)が1,2−オキシブチレン基である[1]〜[3]記載の組成物。
【0014】
[5] 前記式(1)で示されるR、Rが水素原子である[1]〜[4]記載の組成物である。
【0015】
[6] 前記式(1)で示されるXが1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオールから水酸基を除いた残基である[1]〜[5]記載の組成物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のセメント用分散剤組成物は乾燥収縮低減剤とポリカルボン酸系分散剤が分離しないため、長期保存安定性に優れ、圧縮強度の低下が起こらず、優れた強度発現性を示し、凝結遅延への影響が小さいため、促進剤を添加するなど凝結遅延を抑制する必要がない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
式(1)において、Xは炭素数2〜6のアルカンジオールから水酸基を除いた残基である。アルカンジオールとしては1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−2,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ブタンジオール、2−(n−プロピル)−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールであり、好ましくは1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2,2‐ジメチル‐1,3‐プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールであり、より好ましくは1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオールである。
【0018】
式(1)において、AOで示される炭素数4〜6のオキシアルキレン基としては例えば、1,2−オキシブチレン基、2,3−オキシブチレン基、1,4−オキシテトラメチレン基、1,2−オキシペンチレン基、2、3−オキシペンチレン基、1、2−オキシヘキシレン基、2、3−オキシヘキシレン基、3、4−オキシヘキシレン基などを挙げることができ、好ましくは1,2−オキシブチレン基、1、2−オキシペンチレン基、1、2−オキシヘキシレン基であり、さらに好ましくは1,2−オキシブチレン基である。炭素数4〜6のオキシアルキレン基は1種または2種以上を併用してもよく、2種以上の場合、その付加形式はランダム状であってもブロック状であってもよい。
式(1)においてy+zで示される炭素数4〜6のオキシアルキレン基の平均付加モル数は1〜4である(更に好ましくは2以上である)。この範囲より小さいと乾燥収縮を抑制する効果が小さくなり、この範囲より大きいと乾燥収縮を抑制する効果が小さくなる、または空気連行性が大きくなる。
また、y、zは、それぞれ1〜2が好ましい。
【0019】
式(1)において、AOはオキシエチレン基である。式(1)においてm+nで示されるオキシエチレン基の平均付加モル数は2〜10である。この範囲より小さいとポリカルボン酸系分散剤との相溶性が低下し、セメント用分散剤組成物の長期保存安定性に劣り、この範囲より大きいと乾燥収縮を抑制する効果が小さくなる。この観点からは、m+nは、3以上が好ましく、4以上が更に好ましい。
また、m、nは、それぞれ2〜5が好ましい。
【0020】
式(1)において(m+n)/(y+z)で示されるオキシエチレン基の平均付加モル数と炭素数4〜6のオキシアルキレン基の平均付加モル数の比は、1.5〜4.0であり、好ましくは1.5〜3.0である。この範囲より小さいとポリカルボン酸系分散剤と相溶性が低下し、セメント用分散剤組成物の長期保存安定性に劣り、この範囲より大きいと乾燥収縮を抑制する効果が小さくなる。
【0021】
式(1)においてRおよびRは水素原子またはメチル基であり、好ましくは水素原子である。
RおよびRが水素原子である式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物の製造方法としては、炭素数2〜6のアルカンジオールに炭素数4〜6のアルキレンオキシドを付加重合した後、エチレンオキシドを付加重合することにより製造することができる。
炭素数4〜6のアルキレンオキシドおよびエチレンオキシドを付加重合する際の触媒としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属やそれらの水酸化物、アルコラート等のアルカリ触媒やルイス酸触媒が用いられ、好ましくはアルカリ触媒である。アルカリ触媒としては例えばナトリウム、カリウム、ナトリウムカリウムアマルガム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムハイドライド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等を挙げることができ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドであり、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。ルイス酸触媒としては例えば四塩化錫、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジn−ブチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン錯体、三フッ化ホウ素フェノール錯体、三フッ化ホウ素酢酸錯体等の三フッ化ホウ素化合物などが挙げられる。触媒の添加量は、式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物および反応に供したアルキレンオキシドの総質量に対して0.01〜10質量%、より好ましくは0.01〜1質量%である。
【0022】
これらの触媒と前記アルカンジオールとの混合物に、不活性ガス雰囲気下で炭素数4〜6のアルキレンオキシド、続いてエチレンオキシドを付加した後、使用した触媒を取り除くことにより、式(1)で示されるRおよびRが水素原子のポリオキシアルキレン化合物を得ることができる。アルキレンオキシドを付加重合する際の温度としては50〜150℃であり、好ましくは60〜140℃であり、より好ましくは80〜140℃である。
【0023】
RおよびRがメチル基である式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物の製造方法としては、式(1)においてRおよびRが水素原子であるポリオキシアルキレン化合物の製造後にハロゲン化メチルと反応することにより製造することができる。ハロゲン化メチルと反応する際の触媒としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属やそれらの水酸化物、アルコラート等のアルカリ触媒が用いられる。具体的には、例えばナトリウム、カリウム、ナトリウムカリウムアマルガム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムハイドライド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等を挙げることができる。ハロゲン化メチルとしては、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチルを挙げることができる。
【0024】
これら触媒の存在下でハロゲン化メチルとRおよびRが水素原子である式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物を不活性ガス雰囲気下で反応し、RおよびRがメチル基である式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物を得ることができる。ポリオキシアルキレン化合物は、未中和で使用しても、中和後に使用しても、中和後に生じた塩や触媒の除去後に使用しても良い。ハロゲン化メチルと反応する際の温度としては40〜150℃、好ましくは50〜140℃であり、より好ましくは60〜130℃である。RおよびRがメチル基となる割合は調整することができる。
【0025】
本発明の式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物は1種または2種以上を混合して使用しても良い。
【0026】
本発明に用いるポリカルボン酸系分散剤(b)としては、構成成分とする単量体としてマレイン酸またはその誘導体、アクリル酸、メタクリル酸またはその誘導体を有する共重合体が挙げられ、例えば、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合物またはその塩、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アリルエーテル−マレイン酸共重合物またはその塩、ポリオキシアルキレンモノアルキルモノ(メタ)アリルエーテル−無水マレイン酸共重合物、その加水分解物またはその塩、ポリオキシアルキレンモノアルキルモノ−3−メチル−3−ブテニルエーテル−(メタ)アクリル酸共重合物またはその塩、ポリオキシアルキレンモノアルキルモノ−3−メチル−3−ブテニルエーテル−無水マレイン酸共重合物、その加水分解物またはその塩、ポリオキシアルキレンモノアルキルモノ−3−メチル−3−ブテニルエーテル−マレイン酸共重合物またはその塩、が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して使用しても良い。
【0027】
この中でも以下のポリカルボン酸系分散剤(b)を用いることが好ましい。ポリカルボン酸系分散剤(b)としては式(2)で示されるポリアルキレングリコールエーテルに基づく構成単位(A)を50〜99質量%、好ましくは70〜97質量%であり、より好ましくは85〜97質量%であり、無水マレイン酸または(メタ)アクリル酸または式(3)で示される不飽和カルボン酸系化合物に基づく構成単位(B)を1〜50質量%であり、好ましくは3〜30質量%であり、より好ましくは3〜15質量%、および他の単量体に基づく構成単位(C)を0〜30質量%を有する共重合体や式(5)で示されるポリアルキレングリコールエステルに基づく構成単位(D)を50〜99質量%であり、好ましくは70〜97質量%であり、より好ましくは85〜97質量%であり、式(6)で示される不飽和カルボン酸系化合物に基づく構成単位(E)を1〜50質量%であり、好ましくは3〜30質量%であり、より好ましくは3〜15質量%、および他の単量体に基づく構成単位(F)を0〜30質量%を有する共重合体である。
【0028】
式(2)においてR、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキレン基を表す。Rは水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良い。AOで示される炭素数2〜4のオキシアルキレン基としてはオキシエチレン基、1,2−オキシプロピレン基、1,2−オキシブチレン基、2,3−オキシブチレン基、1,4−オキシテトラメチレン基が挙げられ、好ましくはオキシエチレン基、1,2−オキシプロピレン基、1,2−オキシブチレン基であり、より好ましくはオキシエチレン基、1,2−オキシプロピレン基である。pは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜150であり、好ましくは10〜100であり、より好ましくは10〜80であり、さらに好ましくは10〜40である。AOにおけるオキシエチレン基の割合は80〜100モル%であり、好ましくは90〜100モル%である。
【0029】
式(3)において、Jは−OM2または−Y−(AO)rR〔式(4)〕を表す。M1およびM2はそれぞれ独立に水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムが挙げられる。有機アンモニウムとしては、有機アミン由来の有機アンモニウムであり、有機アミンとしては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミンが挙げられる。
Yはエーテル基またはイミノ基を表す。
【0030】
Rは水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良い。AOで示される炭素数2〜4のオキシアルキレン基としてはオキシエチレン基、1,2−オキシプロピレン基、1,2−オキシブチレン基、2,3−オキシブチレン基、1,4−オキシテトラメチレン基が挙げられ、好ましくはオキシエチレン基、1,2−オキシプロピレン基、1,2−オキシブチレン基であり、より好ましくはオキシエチレン基、1,2−オキシプロピレン基である。rは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜150である。
【0031】
式(5)においてRは水素原子またはメチル基を表す。R10は水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上で、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良い。AOで示される炭素数2〜4のオキシアルキレン基としてはオキシエチレン基、1,2−オキシプロピレン基、1,2−オキシブチレン基、2,3−オキシブチレン基、1,4−オキシテトラメチレン基が挙げられ、好ましくはオキシエチレン基、1,2−オキシプロピレン基、1,2−オキシブチレン基であり、より好ましくはオキシエチレン基、1,2−オキシプロピレン基である。sは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜150であり、好ましくは10〜100であり、より好ましくは10〜80であり、さらに好ましくは10〜40である。AOにおけるオキシエチレン基の割合は80〜100モル%であり、好ましくは90〜100モル%である。
【0032】
式(6)においてR11は水素原子またはメチル基を表す。Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムが挙げられる。有機アンモニウムとしては、有機アミン由来の有機アンモニウムであり、有機アミンとしては、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミンが挙げられる。
【0033】
構成単位(C)や構成単位(F)の由来となる共重合可能な他の単量体としては、アリルスルホン酸及びその塩、メタリルスルホン酸及びその塩、p−スチレンスルホン酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル、イソブチレン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等が挙げられる。共重合可能な他の単量体は加えても加えなくとも良い。これらは単独でも2種以上用いても良い。
【0034】
本発明におけるポリカルボン酸系分散剤(b)は、構成単位(A)及び構成単位(B)、並びに構成単位(C)をラジカル重合することにより得られる共重合体や構成単位(D)及び構成単位(E)、並びに構成単位(F)をラジカル重合することにより得られる共重合体である。ラジカル重合反応には重合開始剤を用いて行う。通常反応温度0〜120℃であり、好ましくは反応温度20〜100℃で行う。反応時間は重合開始剤の種類や反応温度により、適宜選択することができる。
【0035】
ラジカル重合反応に用いる重合開始剤としては、ラジカルを発生するものであれば特に限定されないが、クメンハイドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルハイドロペルオキシドなどの有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系化合物が挙げられる。
【0036】
重合開始剤の仕込量は単量体の合計仕込量に対して通常0.1〜10モル%であり、好ましくは0.5〜10モル%である。また、必要に応じて連鎖移動剤、還元剤を併用して重合を行うこともできる。
【0037】
ラジカル重合は塊状重合または溶液重合で行う。溶液重合における溶媒は1種または2種以上を混合しても良く、適宜溶媒を選択することができる。
ポリカルボン酸系分散剤(b)の構成単位(B)として、無水マレイン酸を使用する場合の溶液重合における溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンおよびトリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびデカリンなどの脂肪族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、水が挙げられる。
【0038】
ポリカルボン酸系分散剤(b)の構成単位(B)として、(メタ)アクリル酸または式(3)で示される不飽和カルボン酸系化合物を使用する場合や、構成単位(E)として式(6)で示される不飽和カルボン酸系化合物を使用する場合の溶液重合における溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコールおよびイソプロピルアルコールなどのアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンおよびトリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびデカリンなどの脂肪族炭化水素、酢酸エチルなどのエステル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、水が挙げられる。
【0039】
得られたポリカルボン酸系分散剤(b)は必要に応じてカルボン酸の一部または全部をアルカリで中和、およびアルコール系化合物でエステル化することができる。無水マレイン酸を用いる場合、無水マレイン酸単位の一部または全部を加水分解により開環してマレイン酸単位とし、さらにマレイン酸単位の一部または全部をアルカリで中和、およびアルコール系化合物でエステル化または有機アミン系化合物でアミド化することができる。中和の際に用いるアルカリとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩、マグネシウム、カルシウムなどアルカリ土類金属の水酸化物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン等のアルカノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミンなどやアンモニアを挙げることができ、これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。また、エステル化の際に用いるアルコール系化合物としては、例えば、メタノール、エタノール等の飽和アルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコール、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル等のポリアルキレングリコール誘導体を挙げることができ、これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。アミド化の際に用いる有機アミン系化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミンなどのアルキルアミンが挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して、使用することができる。
【0040】
また、本発明の製造方法によって得られたポリカルボン酸系分散剤(b)は所望の特性を発揮できるものであればその重量平均分子量などは特に制限されないが、好ましくは、共重合体の重量平均分子量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と呼ぶ)による分析においてポリエチレングリコール換算で、5,000〜300,000の範囲であり、好ましくは5,000〜100,000の範囲であり、より好ましくは7,000〜80,000の範囲であり、さらに好ましくは10,000〜40,000の範囲である。
【0041】
本発明のセメント用分散剤組成物は、上述のポリオキシアルキレン化合物(a)及びポリカルボン酸系分散剤(b)を含有する。本発明のセメント用分散剤組成物を製造する方法としては、(a)に水を添加、混合した後に(b)を添加、混合する方法、(b)に水を添加、混合した後に(a)を添加、混合する方法、(a)に水を添加、混合した後に(b)および水を添加、混合する方法、(b)に水を添加、混合した後に(a)および水を添加、混合する方法、(b)に水を添加、混合したものと(a)に水を添加、混合したものを混合する方法があり、好ましくは(b)に水を添加、混合した後に(a)を添加、混合する方法、(b)に水を添加、混合した後に(a)および水を添加、混合する方法、(b)に水を添加、混合したものと(a)に水を添加、混合したものを混合する方法である。
【0042】
ポリオキシアルキレン化合物(a)とポリカルボン酸系分散剤(b)の混合比率は、得られるセメント配合物の乾燥収縮を抑制する効果を加味した上で、分散性も損なわない程度に適宜調整することができる。(a)と(b)の混合比率を表す(a)/(b)は、質量比で0.5〜4.0であり、好ましくは1.0〜4.0である。この範囲より小さいと乾燥収縮を抑制する効果が小さくなり、この範囲より大きいと減水効果が小さくなる。
【0043】
本発明のセメント用分散剤組成物はセメント又はセメント配合物に添加して使用する。セメント配合物としてはモルタル、コンクリートなどが挙げられる。

【0044】
本発明のセメント用分散剤組成物を適用することができるセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、中庸熱及び耐硫酸塩等のポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、エコセメント、アルミナセメント、速硬セメント、白色セメントなどが挙げられる。
【0045】
本発明のセメント用分散剤組成物を適用することができる骨材としては、通常のモルタルやコンクリートに使用できるものであれば特に限定されるものではなく、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂及びケイ砂等の細骨材や、川砂利、山砂利、陸砂利、海砂利、砕石、人工軽量骨材、高炉スラグ砕石及び再生骨材等の粗骨材が挙げられる。
【0046】
本発明のセメント用分散剤組成物の使用量は特に限定されないがセメント、モルタル又はコンクリート等の配合に添加するに際し、セメント100質量部に対し0.05〜10質量部であり、好ましくは0.1〜6質量部であり、より好ましくは0.1〜4質量部である。この範囲より小さいと減水効果や乾燥収縮を抑制する効果が小さくなる。
【0047】
本発明のセメント用分散剤組成物の使用方法は、特に限定されない。セメント用分散剤組成物をモルタルやコンクリートなどのセメント組成物に使用する水に予め溶解させて使用することができ、注水と同時に添加して使用することができ、注水から練り上がりまでの間に添加して使用することができ、一旦練り上がったセメント組成物に後から添加して使用することもできる。
【0048】
本発明のセメント用分散剤組成物は効果を阻害しない範囲で、他の添加剤と併用し、使用することができる。他の添加剤としては、減水剤、AE剤、AE減水剤、消泡剤、空気量調節剤、凝結遅延剤、収縮低減剤、凝結促進剤、膨張剤、流動化剤、起泡剤、保水剤、増粘剤、防水剤等が挙げられる。減水剤としては例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、リグニンスルホン酸の塩、芳香族アミノスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩、ポリカルボン酸系分散剤などを挙げることができる。
【0049】
セメント配合物における骨材の量は、配合用途に応じて定めることができるが、一般的にはセメント100質量部に対して50〜1200質量部が好ましい。
【0050】
セメント配合物における水の量は配合用途に応じて定めることができるが一般的にはセメント100質量部に対して10〜70質量部であり、好ましくは10〜55質量部であり、より好ましくは20〜40質量部である。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
[合成例1(ポリオキシアルキレン化合物(ア)の合成)]
撹拌機、圧力計、温度計、安全弁、ガス吹き込み管、排気管、冷却用コイルおよび蒸気ジャケットを装備したステンレス製5Lの高圧反応装置に、1,2−プロパンジオール76g(1.0モル)および水酸化ナトリウム1.0gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。攪拌下、100〜120℃、0.05〜0.5MPa(ゲージ圧)の条件で、別に用意した耐圧容器より1,2−ブチレンオキシド144g(2.0モル)を窒素ガス圧により加圧添加した。添加終了後、同条件で内圧が一定となるまで反応させ、窒素ガスを吹き込みながら、70〜80℃、13kPa(ゲージ圧)以下で1.0時間処理を行なった後、窒素ガスで0.05MPa(ゲージ圧)まで加圧した。加圧後、100〜120℃、0.05〜0.5MPa(ゲージ圧)の条件で、別に用意した耐圧容器よりエチレンオキシド176g(4.0モル)を窒素ガス圧により加圧添加した。添加終了後、同条件で内圧が一定になるまで反応させた後、窒素ガスを吹き込みながら、70〜80℃、13kPa(ゲージ圧)以下で1.0時間処理を行なった後、窒素ガスで0.05MPa(ゲージ圧)まで加圧し、反応物317g(0.80モル)を1Lナスフラスコに抜き取った。その後、1%塩酸で中和し、水や副生した塩を除いて目的とするポリオキシアルキレン化合物(ア)を得た。
【0052】
[合成例2〜3(ポリオキシアルキレン化合物(イ)〜(ウ)の合成)]
合成例1と同様の方法で表1のポリオキシアルキレン化合物(イ)〜(ウ)を得た。
【0053】
[合成例4(ポリカルボン酸系分散剤(P)の合成)]
温度計、攪拌機、冷却管および窒素導入管を装着した3リットル四つ口フラスコに、ポリオキシエチレン(平均付加モル数;33)アリルメチルエーテル767g、無水マレイン酸53.9g、メタクリル酸メチル2.45g、メルカプトエタノール2.7gおよびトルエン150gを秤取り、開始剤としてジ−t−ブチルペルオキシド4.7gをトルエン50gに溶解させて滴下して、80〜85℃で8時間反応させた。続いて80〜90℃の範囲で、窒素ガスを吹き込みながら27kPa以下の減圧下でトルエンを除去した。反応物を60℃まで冷却後、イオン交換水1240gを加え、ポリカルボン酸系分散剤(P)を含む水溶液を得た。水溶液10gを120±2℃に調整した恒温槽で2時間放置後の質量変化により求めた水溶液の揮発残分は40質量%であり、GPC(ポリエチレングリコールを標準体として換算)により求めた重量平均分子量は19,800であった。
【0054】
[合成例5(ポリカルボン酸系分散剤(Q)の合成)]
温度計、攪拌機、冷却管および窒素導入管を装着した3リットル四つ口フラスコに、ポリオキシエチレン(平均付加モル数;23)メチルエーテルメタクリレート762gとイオン交換水870gを秤取り、窒素ガス雰囲気下、60〜65℃に加温し、均一に溶解させた。メタクリル酸73.3gをイオン交換水200gに溶解させたモノマー溶液と、過硫酸アンモニウム12.0gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を、それぞれ滴下漏斗にとり、60〜65℃で6時間かけて滴下した。滴下終了後さらに3時間撹拌反応させ、得られた反応物を40%水酸化ナトリウム水溶液で中和してポリカルボン酸系分散剤(Q)を含む水溶液を得た。水溶液10gを120±2℃に調整した恒温槽で2時間放置後の質量変化により求めた水溶液の揮発残分は40質量%であり、GPC(ポリエチレングリコールを標準体として換算)により求めた重量平均分子量23,500であった。
【0055】
[相溶性確認試験]
(実施例1)
500mLビーカーに150g(揮発残分:40質量%)のポリカルボン酸系分散剤(P)を入れた後、水浴中で20〜25℃に調整し、攪拌羽根(3枚マリンプロペラ翼、翼径20mm)を使用して200rpmで攪拌を行った。攪拌中に90gのポリオキシアルキレン化合物(ア)、60gの水の順で添加し、10分間攪拌を行った。攪拌終了後、直ちに300mLサンプル瓶に全量を入れ、密栓し、セメント用分散剤組成物を得た。攪拌終了直後、20℃の恒温槽内に7日間保存後、28日間保存後の相溶性確認試験を行った。浮遊物、沈殿物、分離等を生じないものを相溶性良好(○)とし、それ以外のものを(×)とした。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例2〜12)
ポリカルボン酸系分散剤(b)の種類、質量比、ポリオキシアルキレン化合物(a)の種類、質量比、水の質量比を表1の通りにした以外は実施例1と同様にセメント用分散剤組成物を得て、相溶性確認試験を行った。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
(比較例1〜2、13〜14)
500mlビーカーに150g(揮発残分:40質量%)のポリカルボン酸系分散剤(P)を入れた後、水浴中で20〜25℃に調整し、攪拌羽根(3枚マリンプロペラ翼、翼径20mm)を使用して200rpmで攪拌を行った。攪拌中に150gの水を添加し、10分間攪拌を行った。攪拌終了後、直ちに300mLサンプル瓶に全量を入れ、密栓し、セメント用分散剤組成物を得た。攪拌終了直後、20℃の恒温槽内に7日間保存後、28日間保存後の相溶性確認試験を行った。浮遊物、沈殿物、分離等を生じないものを相溶性良好(○)とし、それ以外のものを(×)とした。結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
(比較例3〜12、15〜24)
ポリカルボン酸系分散剤の種類、質量比、ポリオキシアルキレン化合物の種類、質量比、水の質量比を表2の通りにした以外は実施例1と同様に相溶性確認試験を行った。結果を表2に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
[コンクリート物性確認試験]
(実施例13)
表3の配合割合で0.05mのコンクリート組成物を調整した。20±2℃で細骨材(山砂)、粗骨材(砕石)、普通ポルトランドセメント(3種等量混合)を2軸強制練りミキサで混練を15秒行った後、混練を中止し、配合No.1の質量比で配合されたセメント用分散剤組成物、AE剤、消泡剤の混合された水を添加した。水添加後、混練を90秒行い、コンクリート組成物を得た。配合No.1の質量比で配合されたセメント用分散剤組成物はセメントに対し、1.0質量%、AE剤や消泡剤はコンクリート組成物に含まれる空気量を5.0±1.0%とするために予め水に添加した。スランプ試験方法はJIS
A 1101(コンクリートのスランプ試験方法)に準拠し、空気量はJIS A 1128(フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法−空気室圧力方法) に準拠した方法で測定を行った。結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
(長さ変化試験)
調製したコンクリート組成物を10cm×10cm×40cmの型枠に詰めた後、20±2℃、湿度80%以上で24時間、気中養生を行った後に脱型を行い、硬化物供試体を得た。得られた硬化物供試体は20±2℃の水中で7日間、水中養生を行った。
【0065】
上記のようにして得た硬化物供試体を、水中養生終了後にJIS A1129−3(モルタル及びコンクリート長さ変化試験方法、ダイヤルゲージ方法)に基づいて硬化物供試体の長さを測定した。測定後に温度20±2℃、湿度60±5%で保存し、水中養生終了後42日後の長さを測定した。測定結果と式(8)によって乾燥収縮比を算出した。得られた結果を表4に示す。
【0066】
【数1】

【0067】
(凝結試験)
調整したコンクリート組成物をJIS A1147(コンクリートの凝結時間試験方法)に準拠し、凝結の始発時間と終結時間の測定を行った。結果を表4に示す。
【0068】
(圧縮強度試験)
JIS A1132(コンクリートの強度試験用供試体の作り方)に準拠して、調製したコンクリート組成物から硬化物供試体を作製した。得られた硬化物供試体は20±2℃の水中で、材齢28日となるまで養生を行い、その後、圧縮強度試験を行った。圧縮強度試験はJIS
A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)に準拠した方法で測定を行った。結果を表4に示す。
【0069】
(実施例14〜15、比較例25〜29)
セメント用分散剤組成物の配合No.を表4の通りにした以外は実施例13と同様にコンクリート組成物、硬化物供試体を作成し、長さ変化試験、凝結試験、圧縮強度試験を行った。結果を表4に示す。
【0070】
ポリオキシアルキレン化合物(エ)を配合した比較例3、4、15、16のセメント用分散剤組成物は相溶性が悪いため、長期保存安定性が悪いのに対し、本発明のセメント用分散剤組成物である実施例1〜12は相溶性が良好であるため、長期保存安定性が良好である。ポリオキシアルキレン化合物(オ)、(カ)、(キ)、(ク)を配合した比較例5〜12、17〜24は相溶性が良好であるため、長期保存安定性が良好である。しかし、比較例26よりポリオキシアルキレン化合物(オ)を配合したセメント用分散剤組成物は圧縮強度低下や凝結遅延が著しく、比較例27〜29より、ポリオキシアルキレン化合物(カ)、(キ)、(ク)を配合したセメント用分散剤組成物は乾燥収縮比が大きいため、乾燥収縮を抑制する効果が低い。一方で、ポリオキシアルキレン化合物(ア)、(イ)、(ウ)を配合した本発明のセメント用分散剤組成物である実施例13〜15は乾燥収縮比が小さいため、乾燥収縮を抑制する効果が高く、圧縮強度低下や凝結遅延を起こさないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるポリオキシアルキレン化合物(a)及びポリカルボン酸系分散剤(b)を含有することを特徴とする、セメント用分散剤組成物。

R−O−(AO)−(AO)−X−O−(AO)−(AO)−R ・・・(1)
[Xは、炭素数2〜6のアルカンジオールから水酸基を除いた残基である。
RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である。
AOは、炭素数4〜6のオキシアルキレン基からなる。
Oは、オキシエチレン基からなる。
mおよびnは、オキシエチレン基の平均付加モル数であり、m+nは2〜10である。
yおよびzは、炭素数4〜6のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、y+zは1〜4である。
(m+n)/(y+z)は1.5〜4.0である。]
【請求項2】
前記ポリカルボン酸系分散剤(b)が、式(2)で示されるポリアルキレングリコールエーテルに基づく構成単位(A)50〜99質量%、無水マレイン酸または(メタ)アクリル酸または式(3)で示される不飽和カルボン酸系化合物に基づく構成単位(B)1〜50質量%および他の単量体に基づく構成単位(C)0〜30質量%を有する共重合体である、請求項1記載の組成物。
【化5】


[R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表す。
Rは、炭素数1〜4のアルキレン基を表す。
Rは、水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基である。
AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上であり、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良い。
pは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数で、p=1〜150である。]
【化6】


[Jは、−OM2または−Y−(AO)rR〔式(4)〕を表す。
M1およびM2は、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す。
Yは、エーテル基またはイミノ基を表す。
Rは、水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基である。
AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上であり、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良い。
rは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、r=1〜150である。]
【請求項3】
前記ポリカルボン酸系分散剤(b)が、式(5)で示されるポリアルキレングリコールエステルに基づく構成単位(D)50〜99質量%、式(6)で示される不飽和カルボン酸系化合物に基づく構成単位(E)1〜50質量%および他の単量体に基づく構成単位(F)0〜30質量%を有する共重合体である、請求項1記載の組成物。
【化7】


[Rは、水素原子またはメチル基を表す。
10は、水素原子または炭素数1〜22の炭化水素基を表す。
Oは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上であり、2種以上の場合はブロック状でもランダム状でも良い。
sは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、s=1〜150である。]
【化8】

[R11は、水素原子またはメチル基を表す。
Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたは有機アンモニウムを表す。]

【請求項4】
前記式(1)で示される(AO)が1,2−オキシブチレン基である、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)で示されるRおよびRがそれぞれ水素原子である、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(1)で示されるXが、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオールまたは1,3−ブタンジオールから水酸基を除いた残基である、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の組成物。

【公開番号】特開2011−207698(P2011−207698A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78643(P2010−78643)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】