説明

セメント用顔料分散液及び黒減水剤

【課題】アミノシラン化合物で表面処理されたカーボンブラック及びポリカルボン酸系減水剤を含む顔料分散液及びこれを用いた黒減水剤を提供する。
【解決手段】本発明は、ナフタレン系減水剤よりも高性能のポリカルボン酸系減水剤を分散剤として用いてアミノシラン化合物で表面改質されたカーボンブラックを水分散させることにより、減水剤とセメントの黒色が同時に得られるだけでなく、ナノ粒子のカーボンブラックによりセメントの流動性が向上して超高強度のコンクリートを製造できるという特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノシラン化合物で表面処理されたカーボンブラック及びポリカルボン酸系減水剤を含むことを特徴とする顔料分散液及びこれを用いた黒減水剤に関する。
【背景技術】
【0002】
減水剤(water−reducing agent)とは、コンクリートのワーカビリティーの改善を主目的とする混合剤であって、これを用いてコンクリートの量を低減でき、耐久性を改善し、強度を向上させてセメントを節約できる物質である。このようなセメントの減水剤は、リグニン系、ナフタレン系、及びポリカルボン酸系減水剤に分けられ、上記の順に流動性と持続性に優れた特徴がある。これら減水剤は根本的にセメントの減水性能を向上させることを目標とする。
【0003】
最近、ナフタレン系減水剤をカーボンブラックの分散剤として用いてセメントの減水に効果があることを証明したが、ナフタレン系減水剤の場合、減水効果がポリカルボン酸系減水剤に比べて劣るという短所があって、高性能を発現するには限界があった。
【0004】
特許文献1は、ポリカルボン酸系の分散剤を用いて酸化鉄及びカーボンブラックを浮遊させる方法を開示しているが、上記特許は、複雑な高分子合成工程により合成された一部の特殊な分散剤にだけ顔料が効果的に導入されるため、実用的でない。
【0005】
したがって、通常のポリカルボン酸系減水剤をカーボンブラック顔料の分散剤として使用できる方法に関する研究が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国公開公報第2004−0231567号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは性能に優れた通常のポリカルボン酸系減水剤をカーボンブラックの分散剤として使用するために研究した結果、カーボンブラックの表面をアミノシラン化合物で処理して官能基を導入し、これをポリカルボン酸系減水剤と共に用いて顔料分散液を製造する場合、分散性に優れ、減水剤とセメントの黒色が同時に得られるだけでなく、超高強度のコンクリートを製造できるということを明らかにして本発明の完成に至った。
【0008】
したがって、本発明は、分散性及び強度に優れた顔料分散液を提供することをその目的とする。
【0009】
また、本発明は、上記顔料分散液を用いて黒色を示し、分散安定性に優れ、流動性に優れたセメント用黒減水剤を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、顔料としてアミノシラン化合物を用いて表面処理したカーボンブラックと、顔料分散剤としてポリカルボン酸系減水剤と、を含むことを特徴とする顔料分散液に関する。ポリカルボン酸系減水剤は、化学構造中にポリカルボン酸を含む。
【0011】
また、本発明は、上記顔料分散液を含むことを特徴とするセメント用黒減水剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ナフタレン系減水剤よりも性能に優れたポリカルボン酸系減水剤を分散剤として使用し、アミノシラン化合物により表面改質されたカーボンブラックを水分散させることにより、減水剤とセメントの黒色が同時に得られるだけでなく、ナノ粒子のカーボンブラックが存在するため、セメントの流動性が向上して超高強度のコンクリートを製造できるという特徴がある。また、上記のような方法を用いた場合、通常のポリカルボン酸系減水剤をカーボンブラックの分散剤として使用可能であるという長所がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、顔料としてアミノシラン化合物で表面処理されたカーボンブラックと、顔料分散剤としてポリカルボン酸系減水剤と、を含む顔料分散液をその特徴とする。
【0014】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0015】
本発明に係るアミノシラン化合物で表面処理されたカーボンブラックは、ポリカルボン酸系減水剤によく分散されるように表面官能基が調節されたカーボンブラックを意味する。本発明ではカーボンブラックの表面処理剤としてアミノシラン化合物を使用する。アミン官能基は、カーボンブラックの表面に容易に付着して増幅するため、所望する量だけ官能基を導入できるという長所がある。水溶液状態ではシラン基はシラノール基に転換し、アミン官能基はそのまま残っているため、アミノシリカカーボンブラックを形成することになる。
【0016】
本発明では、アミノシラン化合物の使用量を調節することにより、カーボンブラックの表面に結合されるアミン官能基の含量を調節することができる。アミノシラン化合物の使用量はカーボンブラック100重量部を基準として0.1〜50重量部の範囲で使用することが好ましく、効率的な表面特性を発揮するためには0.2〜30重量部を使用することがさらに好ましい。アミノシラン化合物の使用量が上記範囲を超えて過量使用されると、未反応のアミノシラン化合物の量が増加して経済性が低下する問題がある。使用可能なアミノシラン化合物の種類は制限されることはないが、反応性のあるアルコキシ官能基が1つ以上存在することが好ましく、アルコキシ官能基が3つ以上存在することがさらに好ましい。このようなアミノシラン化合物は、アミノシラン化合物間の縮合反応を促進させる化合物であって、例えば3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−アミノエチル−3−プロピルトリアルコキシシラン、またはN−アルキル−3−アミノプロピルトリアルコキシシランなどを用いることができる。
【0017】
上記カーボンブラックに導入されたアミン官能基は、0.1〜30%範囲で存在することが分散に好ましく、1〜20%範囲で存在することがさらに好ましい。上記カーボンブラックの表面に導入されたアミン官能基が0.1%未満である場合、分散効果が低下し、30%を超える場合、架橋が激しくなって大きい塊りのカーボン粒子が生成され経済的負担を増やすという短所がある。
【0018】
上記アミノシラン化合物で表面処理されたカーボンブラックは、本発明者の既存の韓国登録特許第758,314号及び第744,829号を参考として製造してもよい。例えば、アルコールのような有機溶媒中でカーボンブラックとアミノシラン化合物を混合して溶媒を除去することにより表面処理反応させる。アミノシラン化合物のシラン基はシラノール基に転換され、アミン官能基はそのまま残っているため、アミノシリカカーボンブラックになる。
【0019】
好ましくはシリカ含量を増加させるために、上記表面処理剤に下記一般式(1)で表される化合物をさらに添加して使用してもよい。アミノシラン化合物とSi(OR)4は架橋結合を生成するからである。
【0020】
【化1】

【0021】
上記一般式(1)で表される化合物の添加量は、カーボンブラック100重量部を基準として0.1〜50重量部の範囲で使用することが好ましく、0.2〜30重量部を使用することがさらに好ましい。
【0022】
Si(OR)4の量が高くなれば、シリカの含量も高くなるが、アミンが存在しなければアミノシラン化合物とSi(OR)4との架橋が起こらないため、Si(OR)4の量をアミノシラン化合物と共に調節して使用しなければならない。アミン官能基なしに架橋を行うためには酸、塩基などの他の触媒剤が入らなければならない短所があるからである。アミノシラン化合物:Si(OR)4を1〜99.99重量%:99〜0.01重量%の分子比の範囲で使用することが好ましい。
【0023】
本発明で顔料分散剤としてポリカルボン酸系減水剤を使用する。ポリカルボン酸系減水剤は、性能に優れるため、超高強度のコンクリートに必須であり、ナノ粒子の物質がセメントの配合に入る場合、ナノベアリングボールの役割をするため、流動性がさらに向上する。このために本発明によるアミノシラン化合物で表面処理されたカーボンブラックは、高性能のポリカルボン酸系減水剤を分散剤として用いてナノ粒子化させる。本発明のポリカルボン酸系減水剤の種類は、当業界で使用しているものを制限なしに使用でき、例えば、ポリアクリル系高分子やポリエチレングリコールのエステル化反応による櫛構造の高分子形態からなるポリカルボン酸系減水剤を用いてもよい。上記ポリカルボン酸系減水剤は、アミノシラン化合物で表面処理されたカーボンブラック100重量部に対して10〜100重量部の範囲で使用することが好ましく、10重量部未満であれば、分散性に問題があり、100重量部を超えると、経済性に問題がある。
【0024】
本発明による顔料分散液は、上記顔料と顔料分散剤をミリングして製造してもよい。通常、カーボンブラックのジブチルフタレート(dibutyl phthalate、以下、DBP)の吸油量が大きいほど分散剤が多く必要になる。本発明の表面処理されたカーボンブラックは、ジブチルフタレートの吸油量が20〜200ml/100gであることが好ましい。また、本発明で使用するカーボンブラックは、表面積が5〜500m2/gであることが好ましい。
【0025】
上記表面処理されたカーボンブラックの含量は、全顔料分散液に対して0.1〜40重量%を使用することが好ましく、優れた分散性のためには5〜20重量%を使用することがさらに好ましい。上記アミノシラン化合物で表面処理されたカーボンブラックが0.1重量%未満であれば、粒子数が少なすぎる問題があり、40重量%を超えると、分散しにくい問題がある。
【0026】
従来の一般的なカーボンブラックは、ポリカルボン酸系減水剤を顔料分散剤として用いる場合、反応結合親和性がないため、分散できない問題があった。本発明によれば、上記のような問題を解決するために、表面が改質されたカーボンブラックをポリカルボン酸系減水剤と共に使用することをその特徴とする。ポリカルボン酸系減水剤をカーボンブラックの分散剤として使用するためにはカーボンブラックの表面改質が重要である。ポリカルボン酸系減水剤には、カルボキシル官能基が存在し、その一部は鎖状になり、櫛のような形態の高分子からなる。本発明によれば、ポリカルボン酸系減水剤の官能基は、カーボンブラックのアミン官能基と酸−塩基反応により反応するため、カーボンブラックの表面にアミン官能基を導入する場合、様々な種類のポリカルボン酸系減水剤をカーボンブラックの分散剤として使用できるという長所がある。
【0027】
本発明は、上記のようにアミノシラン化合物でカーボンブラックの表面を処理して官能基を調節した後、これをポリカルボン酸系減水剤と反応させることにより、セメントの黒色が得られるだけでなく、ナノ粒子のカーボンブラックが存在するため、セメントの流動性を向上させて超高強度のコンクリートを製造できるという特徴がある。
【0028】
また、本発明は、上記のように製造された顔料分散液をセメントに添加して流動性に優れたセメント用黒減水剤を製造することができる。この時、顔料分散液の添加量は0.1〜20重量%が好ましく、黒減水剤の使用量が0.1重量%未満であれば、減水性能が低下して黒色度が不充分であり、20重量%を超えると、減水性能に優れ、黒色度も向上するが、経済性に劣るという問題がある。
【0029】
上述したような本発明を下記の実施例を通してより詳しく説明するが、下記の実施例は本発明に対する理解を助けるためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0030】
<実施例1>顔料分散液の製造
カーボンブラック(OCI製品、N220)へのアミノシリカの導入は、本発明者の既存の韓国登録特許第758,314号の方法により行われた。上記により製造された5%のアミン官能基が導入されたカーボンブラック20重量部に、ポリカルボン酸系減水剤(東洋メジャー社製品、HRA700、固体含量40%)10重量部及び水70重量部を添加してインラインミキサー(K&S社製品)に入れた後、3000rpmで1時間作動させて顔料分散液を得た。
【0031】
<実施例2>顔料分散液の製造
カーボンブラック(OCI製品、N220)へのアミノシリカの導入は、本発明者の既存の韓国登録特許第758,314号の方法により行われた。上記により製造された5%のアミン官能基が導入されたカーボンブラック20重量部に、ポリカルボン酸系減水剤(東洋メジャー社製品、WR700、固体含量40%)10重量部及び水70重量部を添加してインラインミキサー(K&S社製品)に入れた後、3000rpmで1時間作動させて顔料分散液を得た。
【0032】
<実施例3〜5>顔料分散液の製造
下記表1の市販のポリカルボン酸系減水剤(固体含量40%)を適用して実施例1と同様の方法で処理し、顔料分散液を得た。
【0033】
【表1】

【0034】
上記減水剤は通常のポリカルボン酸系減水剤であり、東洋メジャー社の製品を使用し、実施例1〜5で得られた顔料分散剤は、室温で約1週間良好な分散安定性を維持した。
【0035】
<比較例1>顔料分散液の製造
表面処理していないカーボンブラック(N220)を用いたことを除いては、上記実施例1と同様の方法で顔料分散液を製造した。
【0036】
<試験例1>顔料分散液の平均粒度及び粒度分析
上記実施例1〜5及び比較例1で製造した顔料分散液を比較するために、平均粒度及び室温で1週間放置した後の粒度を分析し、その結果を下記表2に示した。
【0037】
平均粒度は粒度計(大塚社製造、ELS−Z)を用いて測定し、分散性の程度は1週間放置した後に粒度計で再測定して観察した。
【0038】
【表2】

【0039】
上記結果から分かるように、実施例1〜4による顔料分散液は分散性に優れ、平均粒度は180nmであり、室温で1週間放置後の粒度を分析した結果に変化がないことを確認することができた。実施例5の場合、実施例1〜4に比して低い物理的性質が得られたが、優れた物性を示している。反面、比較例1の顔料分散液は、分散程度が不良で、平均粒度は400nm水準であり、1週間の室温放置時、沈殿物が多量発生してセメントとの混合が困難である。
【0040】
<試験例2>黒減水剤の製造及び流動性の測定
通常、セメントは、その粒度(nm)とスランプ測定器を用いて広がる長さの平均を測定してその性能を評価する。本試験例では、上記実施例1で製造された顔料分散液のスランプを測定するために、セメント(東洋セメント製品)100g、上記実施例1で製造された顔料分散液2.5g、及び水43gを添加して3分間攪拌してセメント用黒減水剤を製造し、これを100ml容量のスランプ測定器に入れてスランプを測定した。ここで、スランプ測定は、セメントの流動性を測定するために行われるが、黒減水剤が広がる長さの平均(mm)を測定し、3日間固めた後に各セメント試料のスランプを測定した結果、155mmの値が得られた。これを比較するためにポリカルボン酸減水剤だけを適用して測定した結果、150mmの値が得られ、カーボンブラックを添加したものが優れた結果を示すことが分かった。また、スランプロスの経時変化を測定した結果、比較例と同等以上の結果が得られ、これによって、カーボンブラックを添加しても減水剤としてのワーカビリティは充分であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理剤としてアミノシラン化合物を用いて表面処理されたカーボンブラックと、
ポリカルボン酸系減水剤と、
を含むことを特徴とする顔料分散液。
【請求項2】
前記表面処理剤に下記一般式(1)で表される化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の顔料分散液。
【化1】

【請求項3】
前記アミノシラン化合物で表面処理されたカーボンブラックの表面に導入されたアミン官能基は0.1〜30%範囲で存在することを特徴とする請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項4】
前記アミノシラン化合物と一般式(1)で表される化合物は、アミノシラン化合物:一般式(1)で表される化合物が1〜99.99重量%:99〜0.01重量%の比の範囲で使用されることを特徴とする請求項2に記載の顔料分散液。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸系減水剤は、前記アミノシラン化合物で表面処理されたカーボンブラック100重量部に対して10〜100重量部の範囲で使用されることを特徴とする請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項6】
前記アミノシラン化合物で表面処理されたカーボンブラックの含量は、全顔料分散液に対して0.1〜40重量%であることを特徴とする請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項7】
前記アミノシラン化合物は、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−アミノエチル−3−プロピルトリアルコキシシラン、またはN−アルキル−3−アミノプロピルトリアルコキシシランであることを特徴とする請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の顔料分散液を含むことを特徴とするセメント用黒減水剤。
【請求項9】
前記顔料分散液の含量が0.1〜20重量%であることを特徴とする請求項8に記載のセメント用黒減水剤。

【公開番号】特開2012−96985(P2012−96985A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232363(P2011−232363)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(511256901)オーシーアイ カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】