説明

セメント組成物

【課題】共重合により生成する重合体の分子量を高めることができ、しかも、着色の少ない、所定の分子量の重合体を再現性良く製造することができる方法を提供する。
【解決手段】不飽和ポリアルキレングリコールエーテルと(メタ)アクリル酸(塩)および特定のマレイン酸系単量体からなる群から選ばれる少なくとも一種の不飽和カルボン酸を含む単量体成分を溶媒存在下で共重合することによる重合体の製造方法において、溶存酸素濃度を5ppm以下にすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合、特にラジカル共重合により重合体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶媒の存在下でのラジカル重合反応、例えばメトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合は、通常、ラジカル重合反応を行う反応容器内に不活性ガスを通じて行われている。
このラジカル重合反応により生成した重合体の分子量は合成ロットごとに大きくばらつき、所定の分子量の重合体を再現性良く製造することが難しかった。また、重合体の色も合成ロットごとに大きく異なるという不具合もあった。そして、ユーザーの要求する水準に達していない分子量や色を有する重合体は廃棄されており、非常に無駄が多かった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、不飽和ポリアルキレングリコールと不飽和カルボン酸を含む単量体成分の共重合により所定の分子量を有し、着色の少ない重合体を再現性良く製造することができる重合体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するために、溶媒の存在下でのラジカル共重合を種々検討した結果、共重合を行う溶媒中に溶存している酸素が重合体の分子量および着色の原因であることを突き止め、この溶存酸素濃度を低くすることにより重合体の分子量が再現性よく得られ、着色も少ないことを見いだして、本発明を完成した。
すなわち、本発明の重合体の製造方法は、不飽和ポリアルキレングリコールと不飽和カルボン酸を含む単量体成分を溶媒存在下で共重合することによる重合体の製造方法において、溶存酸素濃度を5ppm以下にすることを特徴とする。
前記溶媒を入れた密閉容器内に不活性ガスを加圧充填した後、密閉容器内の圧力を下げることにより、溶存酸素濃度を0.01〜4ppmの範囲にすると好ましく、密閉容器内の圧力を下げる操作を2〜10回繰り返して行うとよい。不活性ガスの充填圧力としては、0.1〜10kgf/cmが好ましく、その種類としては、窒素ガスが好ましい。
【0005】
前記共重合としては、以下の(a)や(b)が好ましい。
(a)アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸(塩)を含む単量体成分の溶媒存在下での共重合。
(b)下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体と、下記一般式(2)で示されるマレイン酸系単量体を含む単量体成分の溶媒存在下での共重合。
【0006】
【化1】

【0007】
(但し、式中R、R、Rはそれぞれ独立に水素又はメチル基を表わし、ROは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物を表わし、2種以上の場合はブロック状に付加していてもランダム状に付加していても良く、Rは水素又は炭素数1〜22のアルキル基、フェニル基又はアルキルフェニル基(アルキルフェニル基中のアルキル基の炭素数は1〜22である)を表わし、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり1〜300の整数を表わす。)
【0008】
【化2】

【0009】
(但し、式中M、Mはそれぞれ独立に水素、一価金属、二価金属、アンモニウム又は有機アミンを表わし、Xは−OM又は−Y−(RO)を表わし、Yは−O−又は−NH−を表わし、ROは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物を表わし、2種以上の場合はブロック状に付加していてもランダム状に付加していても良く、Rは水素、炭素数1〜22のアルキル基、フェニル基、アミノアルキル基、アルキルフェニル基又はヒドロキシルアルキル基(アミノアルキル基、アルキルフェニル基、ヒドロキシルアルキル基中のアルキル基の炭素数は1〜22である)を表わし、qはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0〜300の整数を表わす。但し、Mが結合している酸素と、Xが結合している炭素とが結合して酸無水物基(−CO−O−CO−)を構成しているものを含む。この場合MとXは存在しない。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の重合体の製造方法によれば、共重合により生成する重合体の分子量を高めることができ、しかも、所定の分子量の重合体を再現性良く製造することができる。このため、ユーザーの要求する水準に達していない分子量の重合体が生成しにくくなり、廃棄されて無駄になる重合体を大きく減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、溶媒の存在下に(ラジカル)共重合を行うにあたり、この溶媒の溶存酸素濃度を5ppm以下の範囲、好ましくは0.01〜4ppmの範囲、さらに好ましくは0.01〜2ppmの範囲、最も好ましくは0.01〜1ppmの範囲にすることにより生成する重合体の分子量を高める。溶存酸素濃度が5ppmよりも大きいと重合体の分子量が低くなり、また、所定の分子量の重合体が再現性良く製造できない。また、重合体の着色も大きい傾向がある。
溶存酸素濃度を5ppm以下にすることは、たとえば、下記(1) 〜(4) のいずれか1つにより行われる。
【0012】
(1) 共重合用の溶媒を入れた密閉容器内に不活性ガスを加圧充填後、密閉容器内の圧力を下げることで溶媒中の酸素の分圧を低くして溶媒中の酸素を追い出す。窒素気流下で、密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2) 共重合用の溶媒を入れた反応容器内の気相部分を不活性ガスで置換したまま液相部分を長時間激しく攪拌することで溶媒中の酸素を追い出す。
(3) 反応容器内に入れた共重合用の溶媒に不活性ガスを長時間かけてバブリングすることで溶媒中の酸素を追い出す。
(4) 共重合用の溶媒を一旦沸騰させた後、窒素雰囲気下で冷却することで溶媒中の酸素を追い出す。
【0013】
上記(1) 〜(4) の中でも、生産効率が良い、攪拌モーターへの負担が少ない等の点で、上記(1) の方法が最も好ましい。
上記(1) の方法は、不活性ガスを加圧充填した密閉容器内の圧力を下げた後、この容器を密閉して不活性ガスを加圧充填するという工程を、好ましくは2〜10回、さらに好ましくは2〜5回繰り返す。この工程の繰り返し回数が多いほど溶存酸素濃度が低くなるが、10回を超えると溶存酸素濃度があまり低下しなくなり効率が悪くなる。
不活性ガスを密閉容器内に加圧充填する場合、たとえば0.1〜10kgf/cm、好ましくは1〜5kgf/cmの圧力で充填する。この範囲よりも低い圧力のときには溶存酸素濃度を5ppm以下にするのに繰り返し回数が多くなったりあるいは5ppm以下にすることができない恐れがある。10kgf/cm超にするときは、不活性ガスの高圧タンクを用意する必要があり、不経済である。ここでいう圧力とは絶対圧力を意味するのではなく、常圧を0kgf/cmにした差圧をいう。なお、不活性ガスを密閉容器内に加圧充填する場合には、密閉容器として、オートクレーブのような耐圧容器を使用するのが良い。密閉容器はラジカル共重合を行う反応容器であってもよいし、反応容器とは別の容器(たとえば、共重合用の溶媒を調製するためだけの耐圧容器、あるいは、単量体としてメトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合には、この単量体を生成するためのエステル化用反応容器)であってもよい。
【0014】
本発明で用いられる不活性ガスとしては、窒素ガスや、ヘリウム、アルゴン等の希ガスを挙げることができ、これらを1種または2種以上混合して用いてもよい。不活性ガスの純度は、通常、95%以上、好ましくは98%以上である。不活性ガスの種類としては、窒素ガスが好ましい。
共重合用の溶媒としては、特に制限されないが、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル、メタクリル酸メチル等のエステル化合物などが挙げられ、これらの中のいずれか1種または2種以上が使用される。原料単量体及び得られる重合体の溶解性から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、その中でも水を溶媒に用いるのが、脱溶媒工程を省略できる点で更に好ましい。
【0015】
共重合に用いられる単量体成分は、不飽和ポリアルキレングリコールと不飽和カルボン酸を含み、後述するアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸(塩)を含む単量体成分や、一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体と、下記一般式(2)で示されるマレイン酸系単量体を含む単量体成分が好ましい。
本発明で用いる前記不飽和ポリアルキレングリコールとしては、特に限定されないが、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。このアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステルとは、たとえば、アルコキシアルキレングリコールとアクリル酸および/またはメタクリル酸とから得られたモノエステルであり、下記一般式(3)の反応によって得られるものである。
【0016】
【化3】

【0017】
上記で、アルキレングリコールは、一般式RO(RO)Hで示される化合物である。
上記一般式RO(RO)Hにおいて、Rは、炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。Rが炭素原子数30を超える炭化水素基である場合には、一般式RO(RO)Hで示される化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸とから得られたモノエステルを、たとえば、(メタ)アクリル酸とのエステルと共重合して得られる共重合体の水溶性が低下し、用途性能、たとえば、セメント分散性能等が低下する。Rの好ましい範囲は、その使用用途により異なり、たとえば、セメント分散剤の原料として用いる場合には、Rは、炭素原子数1〜18の直鎖または枝分かれ鎖のアルキル基、および、アリール基が好ましい。Rとしては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基、ノニルフェニル基等のアルキルフェニル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;アルケニル基;アルキニル基等が挙げられる。これらのうちでも、セメント分散剤の原料として用いる場合には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基が好ましい。
【0018】
また、ROは、炭素原子数2〜18、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基である。ROが炭素原子数18を超えるオキシアルキレン基である場合には、一般式RO(RO)Hの化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸とから得られたモノエステルを、たとえば、(メタ)アクリル酸とのエステルと共重合して得られる共重合体の水溶性が低下し、用途性能、たとえば、セメント分散性能等が低下する。ROとしては、たとえば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等が挙げられる。これらのうちでも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が好ましい。ROの繰り返し単位は、同一であっても、異なっていてもよい。ROの繰り返し単位が異なる場合、すなわち、2種以上の異なる繰り返し単位を有する場合には、各ROの繰り返し単位はブロック状またはランダム状に付加していてもよい。
【0019】
上記一般式でnは、1〜300の数であり、RO(オキシアルキレン基)の繰り返し単位の平均付加モル数を表す。nが300を超える場合には、一般式RO(RO)Hの化合物とアクリル酸および/またはメタクリル酸とから得られたモノエステルの重合性が低下する。この平均付加モル数nも、エステル化反応により得られるモノエステルの使用目的に応じて、その最適範囲は異なるものであり、たとえば、セメント分散剤の原料として用いる場合には、平均付加モル数nは、5〜200の数が好ましく、より好ましくは8〜150である。また、増粘剤等として用いる場合には、平均付加モル数nは、10〜250の数が好ましく、より好ましくは50〜200である。
【0020】
一般式RO(RO)Hの化合物として、1種のものを単独で使用してもよく、また、2種以上の混合物の形態で使用してもよい。2種以上の混合物の形態としては、特に限定されるものではなく、R、ROおよびnのうちの少なくとも1つが異なる混合物であればよい。混合物の形態としては、好ましくは、(i)Rがメチル基とブチル基の2種で構成されている場合、(ii)ROがオキシエチレン基とオキシプロピレン基の2種で構成されている場合、(iii)nが1〜10のものと、11〜100のものの2種で構成されている場合、および(i)〜(iii)を適宜組み合わせたもの等が挙げられる。
上記のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
本発明で用いる前記不飽和カルボン酸としては、下記一般式(4)で示されるものであり、好ましくは(メタ)アクリル酸およびその塩である。
【0022】
【化4】

【0023】
(ここで、Rは水素またはメチル基を表す。)
前記単量体成分は、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル(単量体A)および不飽和カルボン酸(単量体B)のみからなっていてもよく、あるいは、これらと必要に応じて配合される他の共重合可能な単量体(以下、「他の単量体」と言う。)とを含んでいてもよい。他の単量体としては、炭素数1〜20個の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸(不飽和ジカルボン酸の無水物を用いてもよい。)ならびにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸と炭素数1〜20個の脂肪族アルコールまたは炭素数2〜4のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜300の(アルコキシ)ポリアルキレングリコールとのモノエステルあるいはジエステル;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミドなどの不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレンなどの芳香族ビニル類;(メタ)アリルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸などの不飽和スルホン酸類ならびにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。ここで、有機アミン塩とは、モノエタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミンである。
【0024】
単量体成分の配合は、共重合体塩の用途に応じて適宜設定される。共重合体塩がセメント混和剤として使用される場合には、単量体成分は、たとえば、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルを5〜98重量%、不飽和カルボン酸を95〜2重量%、および他の単量体を0〜50重量%(ただし、これら3者の合計は100重量%である。)含むのが好ましく、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルを25〜96重量%、不飽和カルボン酸を75〜4重量%、および他の単量体を0〜30重量%(ただし、これら3者の合計は100重量%である。)含むのがより好ましい。さらに好ましくは、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルを40〜94重量%、不飽和カルボン酸を60〜6重量%、および他の単量体を0〜20重量%(ただし、これら3者の合計は100重量%である。)含むのがより好ましい。共重合体塩が増粘剤として使用される場合には、単量体成分は、たとえば、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステルを2〜95重量%、不飽和カルボン酸を5〜98重量%、および他の単量体を0〜60重量%(ただし、これら3者の合計は100重量%である。)含むのが好ましい。
【0025】
本発明の重合で用いる単量体は、また、不飽和ポリアルキレングリコールとしての上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体と、不飽和カルボン酸としての上記一般式(2)で示されるマレイン酸系単量体を単量体成分として含むことも、好ましい態様である。
上記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体の具体例としては、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドを1〜300モル付加した化合物を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
高い減水性能を得る為には、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体が含有するポリアルキレングリコール鎖による立体反発と親水性でセメント粒子を分散させることが重要である。その為には、ポリアルキレングリコール鎖にはオキシエチレン基が多く導入されることが好ましい。また、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜300のポリアルキレングリコール鎖を用いることが最も好ましいが、重合性と親水性の面からは、ポリアルキレングリコール鎖が、2〜300であると好ましく、5〜200であるとさらに好ましく、8〜150であると最も好ましい。
上記一般式(2)で示されるマレイン酸系単量体の具体例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸と炭素数1〜22のアルコールとのハーフエステル、マレイン酸と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、マレイン酸と炭素数1〜22のアミノアルコールとのハーフアミドもしくはハーフエステル、これらのアルコールに炭素数2〜4のオキシアルキレンを1〜300モル付加させた化合物(C)とマレイン酸とのハーフエステル、該化合物(C)の片末端の水酸基をアミノ化した化合物とマレイン酸とのハーフアミド、マレイン酸と炭素数2〜4のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜100のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、マレアミン酸と炭素数2〜4のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜100のポリアルキレングリコールとのハーフアミド、並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩、等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0027】
前記単量体成分は、また、一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体および一般式(2)で示されるマレイン酸系単量体のみからなっていてもよく、必要に応じて、これらと共重合可能な他の単量体を含んでいてもよい。このような共重合可能な他の単量体の例としては、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類並びにこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩およびこれらの酸と炭素数1〜20のアルキルアルコールおよび炭素数2〜4のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜100のポリアルキレングリコールとのモノエステル類、ジエステル類、また、これらの酸と炭素数1〜20のアルキルアミンおよび炭素数2〜4のグリコールの片末端アミノ化物、もしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜100のポリアルキレングリコールの片末端アミノ化物とのモノアミド、ジアミド類;マレイン酸と炭素数1〜20のアルキルアルコールおよび炭素数2〜4のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜100のポリアルキレングリコールとのジエステル類、また、これらの酸と炭素数1〜20のアルキルアミンおよび炭素数2〜4のグリコールの片末端アミノ化物、もしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜100のポリアルキレングリコールの片末端アミノ化物とのジアミド類;(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸類ならびにこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩およびこれらの酸と炭素数1〜20のアルキルアルコールおよび炭素数2〜4のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜100のポリアルキレングリコールとのエステル類、また、炭素数2〜4のグリコールの片末端アミノ化物、もしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜100のポリアルキレングリコールの片末端アミノ化物とのアミド類;スルホエチル(メタ)アクリレート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びにこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド等の不飽和アミド類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン等の芳香族ビニル類;メチルポリエチレングリコール−モノビニルエーテル等のビニルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタアクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタアクリレート)等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
本発明の共重合はラジカル重合であり、溶液重合、乳化重合などの公知の方法で行なうことができ、また、回分式でも連続式でも行うことができる。
共重合用の溶媒として水を用いる場合は、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、たとえば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2, 2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩、2, 2’−アゾビス−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩、2, 2’−アゾビス−2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン塩酸塩、2, 2’−アゾビス−N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩、2, 2’−アゾビス−N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩、2, 2’−アゾビス−2−メチル−N−フェニルメチルプロピオンアミジン塩酸塩、2, 2’−アゾビス−2−メチル−N−2−プロペニルプロピオンアミジン塩酸塩、2, 2’−アゾビス−2−メチル−N−[(1,1−ビスヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミジン、2, 2’−アゾビス−2−メチル−N−[(1,1−ビスヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミジン、2, 2’−アゾビス−2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミジン、2, 2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン2水和物等のアゾアミジン化合物、2, 2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩、2, 2’−アゾビス−2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩、2, 2’−アゾビス−2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩、2, 2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン、2, 2’−アゾビス−2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン塩酸塩、2, 2’−アゾビス−2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン塩酸塩、2, 2’−アゾビス−2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤等が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、アスコルビン酸、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素等の促進剤を併用することもできる。
【0029】
ここで、「水溶性」とは、25℃においてトルエンに対する溶解度よりも水に対する溶解度の方が大きいことを意味し、具体的には、たとえば、25℃における水に対する溶解度が、通常0.5g以上、好ましくは1g以上、さらに好ましくは2g以上、特に好ましくは3g以上であるものを指す。
また、低級アルコール、ケトン化合物芳香族あるいは脂肪族炭化水素、エステル化合物または環状エーテル化合物を溶媒とする溶液重合には、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等がラジカル重合開始剤として用いられる。この際、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。
【0030】
更に、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤或いはラジカル重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
共重合を行う温度は特に限定されないが、たとえば30〜100℃、好ましくは40〜80℃、さらに 好ましくは50〜70℃の温度である。共重合をこのような温度範囲で行う場合に、再現性よく、着色の少ない重合体が製造できるので有効である。
以上の各種の重合において、必要に応じて、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸などの連鎖移動剤の1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
本発明の製造方法により得られる重合体の重量平均分子量は、たとえば下記測定条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」と呼ぶ)によるポリエチレングリコール換算で、好ましくは5,000〜10,000,000、さらに好ましくは8,000〜500,000、よりさらに好ましくは10,000〜100,000、最も好ましくは10,000〜80,000の範囲であり、製造ロットによる重量平均分子量の変動が±10%程度と非常に少なくものとなっている。重量平均分子量の測定条件は、以下のとおり。
<重量平均分子量測定条件>
機種 :Waters LCM1
検出器:Waters 410
溶離液:種類 アセトニトリル/水=40/60Vol% pH6.0
流量 0.6ml/min
カラム:種類 東ソー(株)製
TSK-GEL G4000SWXL+G4000SWXL+G4000SWXL+GUARD COLUMN
各 7.8×300mm、6.0×40mm
検量線:ポリエチレングリコール基準
本発明では、溶存酸素濃度は、堀場製作所製の溶存酸素濃度測定装置「HORIBA ハンディ溶存酸素メーターOM−14」、セントラル科学「UC−2」を用いて測定した。
【0032】
本発明の製造方法により得られる重合体は、たとえば、セメント分散剤、増粘剤等の有効成分として用いられるが、特にセメント分散剤として好適に用いられる。
この重合体は、単独または混合物の形態や、水溶液の形態でそのままセメント分散剤として使用することができる。また、この重合体を他の公知のセメント混和剤と組み合わせて使用してもよく、このような公知のセメント混和剤としては、たとえば、従来のセメント分散剤、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、急結剤、水溶性高分子物質、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、および消泡剤等を挙げることができる。
【0033】
本発明で得られる重合体を必須とするセメント分散剤は、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ビーライト高含有セメントや各種混合セメント等の水硬セメント、または、石膏等のセメント以外の水硬材料等に用いることができる。
上記セメント分散剤は、たとえば、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリートに使用する場合には、セメント重量の0.01〜1.0%、好ましくは、0.02〜0.5%程度の比率の量を添加すれば良い。この添加によってスランプ保持性能の向上、単位水量の低減、コンクリート強度の増大、およびモルタルまたはコンクリートの耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。セメント分散剤の添加量が0.01%未満では性能的に不十分であり、逆に、1.0%を超えた量を使用しても、その効果は実質上、頭打ちとなり、経済性の面から不利である。
【0034】
上記セメント分散剤を用いてなるセメント組成物は、少なくともセメント、水および上記セメント分散剤を含有する組成物である。セメント分散剤の配合割合は、セメント固形分100重量部に対して、0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部である。セメント分散剤が上記範囲を満たすように配合されて調製されたセメント組成物では、たとえば、スランプ保持時間がはるかに向上する他、単位水量の低減、コンクリート強度の増大、およびモルタルまたはコンクリートの耐久性の向上等の各種好ましい諸効果がもたらされる。なお、セメント組成物に配合し得るセメントとしては、特に制限はなく、たとえば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ビーライト高含有セメントや各種混合セメント等の水硬セメントが挙げられる。また、セメント組成物に配合し得る細骨材および粗骨材においても、特に制限されるものではなく、現在使用されている数多くの種類の細骨材および粗骨材から適宜選択して使用することができる。また、セメント組成物中への細骨材および粗骨材の配合量等に関して特に制限されるものではなく、使用する材料等に応じて、適宜決定される。
【0035】
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の実施例と、本発明の範囲を外れた比較例とを示すが、本発明は下記実施例に限定されない。以下では、特に断らない限り、「部」および「%」は、それぞれ、「重量部」および「重量%」を表す。
まず、ラジカル共重合用の溶媒の調製例を説明する。
(調製例1)
密閉容器として1Lのオートクレーブを使用した。この容器に25℃の水(溶存酸素濃度8.7ppm)500gを入れて密閉し、密閉容器内の水を150rpmで攪拌しながら4.0kgf/cmまで窒素ガスを約5分間で充填した。充填後すぐに圧力を下げ、約5分間で容器内を常圧に戻した。以上の操作を3回繰り返した後、窒素気流下で容器内の水の溶存酸素濃度を測定したところ、0.4ppmになっていた。以上の操作の間、容器を外部から加熱も冷却もしなかった。
【0037】
(調製例2)
密閉容器として1Lのオートクレーブを使用した。この容器に25℃の水(溶存酸素濃度8.7ppm)400gを入れて密閉し、密閉容器内の水を150rpmで攪拌しながら2.0kgf/cmまで窒素ガスを約1分間で充填した。充填後7分間保持した後に圧力を下げ、約2分間で容器内を常圧に戻した。以上の操作を3回繰り返した後、窒素気流下で容器内の水の溶存酸素濃度を測定したところ、0.8ppmになっていた。以上の操作の間、容器を外部から加熱も冷却もしなかった。
(調製例3)
2Lの反応容器に25℃の水(溶存酸素濃度8.1ppm)1000mLを入れ、この水を4mL/minの窒素気流下で150rpmで攪拌しながら溶存酸素濃度を測定した。5時間後、溶存酸素濃度は6.0ppmであった。
【0038】
(調製例4)
2Lの反応容器に23℃の水(溶存酸素濃度8.4ppm)800mLを入れ、この水を20mL/minの窒素気流下で150rpmで攪拌しながら溶存酸素濃度を測定した。3時間後、溶存酸素濃度は4.5ppmであった。
以上のことから、調製例3、4の方法(上記(2) の方法)よりも調製例1、2の方法(上記(1) の方法)の方が効率良く、短時間で溶存酸素濃度を低下させることができるのがわかった。
(実施例1)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えた反応容器に調製例1で得られた溶存酸素濃度0.4ppmの水105部を仕込み、窒素雰囲気下で50℃まで加熱した後、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレングリコールの平均付加モル数n=10)53.8部、メタクリル酸16.2部、および調製例1で得られた溶存酸素濃度0.4ppmの水105部からなる単量体混合物水溶液を4時間かけて滴下するとともに、10%過硫酸アンモニウム水溶液35部および5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液35部をそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間引き続いて反応温度を50℃に維持し、ラジカル共重合を完結させた。得られたポリマー水溶液(1)中の重合体の重量平均分子量は30,600であった。この重合方法で合計6バッチ繰り返した時の重量平均分子量を表1に示す。
【0039】
(比較例1)
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えた反応容器に水(溶存酸素濃度8.2ppm)105部を仕込み、窒素雰囲気下で50℃まで加熱した後、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレングリコールの平均付加モル数n=10)53.8部、メタクリル酸16.2部、および水(溶存酸素濃度8.2ppm)105部からなる単量体混合物水溶液を4時間かけて滴下するとともに、10%過硫酸アンモニウム水溶液35部および5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液35部をそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間引き続いて反応温度を50℃に維持し、ラジカル共重合を完結させた。得られた比較ポリマー水溶液(1)中の比較重合体の重量平均分子量は26,000であった。この重合方法で合計3バッチ繰り返した時の重量平均分子量を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例1と比較例1とを比べることにより、液相部分の溶存酸素濃度を充分に低くすることで、得られる重合体の重量平均分子量が安定し、重合体が再現性良く得られることがわかった。
(実施例2)
この実施例では、ラジカル共重合を行う反応容器内で溶存酸素濃度を低下させる操作を行った。
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えた耐圧性反応容器に水(溶存酸素濃度8.8ppm)1350部を仕込んで密閉した後、この水を150rpmで攪拌しながら2.0kgf/cmまで窒素ガスを約5分間で充填した。充填後すぐに圧力を下げ、約5分間で容器内を常圧に戻した。常圧に戻った時点で、ただちに窒素ガスを流し、反応容器に空気が入らないようにした。以上の操作を3回繰り返した後、窒素気流下で容器内の水の溶存酸素濃度を測定したところ、0.9ppmになっていた。以上の操作の間、容器を外部から加熱も冷却もしなかった。
【0042】
次に、反応容器内を窒素雰囲気下で50℃まで加熱した後、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレングリコールの平均付加モル数n=10)691部、メタクリル酸209部からなる単量体混合物水溶液を4時間かけて滴下するとともに、10%過硫酸アンモニウム水溶液450部および5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液450部をそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間引き続いて反応温度を50℃に維持し、ラジカル共重合を完結させた。得られたポリマー水溶液(2)中の重合体の重量平均分子量は30,000であった。
(実施例3)
この実施例でも、ラジカル共重合を行う反応容器内で溶存酸素濃度を低下させる操作を行った。
【0043】
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えた耐圧性反応容器にイオン交換水(溶存酸素濃度8.8ppm)170g、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール(以下、「IPN−50」と称する)400g、マレイン酸47gを仕込んで密閉した後、これらの混合物を150rpmで攪拌しながら2.0kgf/cmまで窒素ガスを約5分間で充填した。充填後すぐに圧力を下げ、約5分間で容器内を常圧に戻した。常圧に戻った時点で、ただちに窒素ガスを流し、反応容器に空気が入らないようにした。以上の操作を3回繰り返した後、窒素気流下で容器内の水溶液の溶存酸素濃度を測定したところ、0.8ppmになっていた。以上の操作の間、容器を外部から加熱も冷却もしなかった。
【0044】
次に、反応容器内を窒素雰囲気下で60℃まで昇温した後、NC−32w(日宝化学社製の2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩90%品)の水溶液(溶存酸素濃度0.8ppm)8gを加えて5時間攪拌した後、もう一度NC−32wの水溶液(溶存酸素濃度0.8ppm)8gを加えて更に5時間攪拌し、更に80℃で1時間攪拌してラジカル共重合を完結させた。得られたポリマー水溶液(3)中の重合体の重量平均分子量は28,000であった。この重合体はセメント添加剤として好適なものであった。さらに得られた重合体は無色透明であった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともセメント、水およびセメント分散剤を含有するセメント組成物において、
前記セメント分散剤は、不飽和ポリアルキレングリコールと、(メタ)アクリル酸(塩)および下記一般式(2)で示されるマレイン酸系単量体からなる群から選ばれる少なくとも一種の不飽和カルボン酸系単量体とを含む単量体成分を溶媒存在下で共重合して得られたものであり、
前記溶媒として、前記溶媒を入れた密閉容器内に不活性ガスを加圧充填した後、密閉容器内の圧力を下げ、容器内を常圧に戻すことにより、溶媒の25℃での溶存酸素濃度を0.01〜4ppmの範囲にしたものを用いることを特徴とする、セメント組成物。
【化1】

(但し、式中M、Mはそれぞれ独立に水素、一価金属、二価金属、アンモニウム又は有機アミンを表わし、Xは−OM又は−Y−(RO)を表わし、Yは−O−又は−NH−を表わし、ROは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物を表わし、2種以上の場合はブロック状に付加していてもランダム状に付加していても良く、Rは水素、炭素数1〜22のアルキル基、フェニル基、アミノアルキル基、アルキルフェニル基又はヒドロキシルアルキル基(アミノアルキル基、アルキルフェニル基、ヒドロキシルアルキル基中のアルキル基の炭素数は1〜22である)を表わし、qはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0〜300の整数を表わす。但し、Mが結合している酸素と、Xが結合している炭素とが結合して酸無水物基(−CO−O−CO−)を構成しているものを含む。この場合MとXは存在しない。)
【請求項2】
前記溶媒を入れた密閉容器内に不活性ガスを加圧充填した後、密閉容器内の圧力を下げ、容器内を常圧に戻す操作を2〜10回繰り返す、請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
前記溶媒を入れた密閉容器内に不活性ガスを加圧充填した後、密閉容器内の圧力を下げ、容器内を常圧に戻す操作を2〜5回繰り返す、請求項2に記載のセメント組成物。
【請求項4】
前記不活性ガスを、常圧を0kgf/cm2にした差圧が0.1〜10kgf/cm2の圧力で充填する、請求項1から3までのいずれかに記載のセメント組成物。
【請求項5】
前記不活性ガスが窒素ガスである、請求項1から4までのいずれかに記載のセメント組成物。
【請求項6】
前記共重合が、アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸(塩)を含む単量体成分の溶媒存在下での共重合である、請求項1から5までのいずれかに記載のセメント組成物。
【請求項7】
前記共重合が、下記一般式(1)で示される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体と、前記一般式(2)で示されるマレイン酸系単量体を含む単量体成分の溶媒存在下での共重合である、請求項1から5までのいずれかに記載のセメント組成物。
【化2】

(但し、式中R、R、Rはそれぞれ独立に水素又はメチル基を表わし、ROは炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種又は2種以上の混合物を表わし、2種以上の場合はブロック状に付加していてもランダム状に付加していても良く、Rは水素又は炭素数1〜22のアルキル基、フェニル基又はアルキルフェニル基(アルキルフェニル基中のアルキル基の炭素数は1〜22である)を表わし、pはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり1〜300の整数を表わす。)
【請求項8】
前記共重合が連鎖移動剤の存在下で行われる、請求項1から7までのいずれかに記載のセメント組成物。



【公開番号】特開2006−52132(P2006−52132A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231129(P2005−231129)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【分割の表示】特願平11−203772の分割
【原出願日】平成11年7月16日(1999.7.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】