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セメント組成物
説明

セメント組成物

【課題】低い水/セメント比のコンクリートやモルタル等を製造する場合に、セメントと水の反応によって発生する水和発熱を抑制しつつ、流動性確保のために添加した分散剤の効果を低減させることがないセメント組成物を提供することを課題とする
【解決手段】水/セメント比が40%以下で用いられるセメント組成物であって、マメ科植物タラ(Caesalpinia spinosa)から抽出されたタンニン、又はミラボラム(Terminalia chebula)から抽出されたタンニンを含む水和発熱抑制剤と、分散剤とを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやモルタル等のセメント硬化体を製造する際に、セメントと水の反応によって発生する水和発熱を抑制しつつ、硬化前のセメントペーストの流動性を確保するためのセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリートやモルタルの水和発熱が大きい場合は、コンクリートやモルタルの温度上昇に伴う温度ひび割れが発生する場合がある。特に、部材寸法の大きな構造物では、内部の温度上昇に放熱が間に合わず、構造物表面と内部での温度差が著しく大きくなり、温度ひび割れを生じることとなる。
【0003】
このような水和熱を抑制する対策のひとつとして、低熱ポルトランドセメントの使用が挙げられる。低熱ポルトランドセメントはセメントクリンカーの組成を調整することによって、セメントの水和発熱量を普通ポルトランドセメントよりも少なくしたセメントである。低熱ポルトランドセメントの使用により水和発熱量は少なくなり、また、その組成的な特徴から、一般的に硬化前の流動性も良好である。このように低熱ポルトランドセメントの使用は構造物の温度上昇を抑制するのに有効な手法であるので、低熱ポルトランドセメントを対象とする特許出願も数多くなされている(たとえば下記特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、低熱ポルトランドセメントを使用する場合には、普通ポルトランドセメントとは種類が異なるために、生コンクリート工場において、別にサイロを準備することが必要となる。工場において余剰サイロがない場合は、使用しているサイロを空にした上で低熱ポルトランドセメントを入れる必要があり、このようなサイロ繰りができない工場では、低熱ポルトランドセメントが使用できないこととなる。また、低熱ポルトランドセメントを製造するセメント工場は、普通ポルトランドセメントを製造するセメント工場に比べると非常に少なく、生コンクリート工場の立地条件によっては、低熱ポルトランドセメントが供給できず、また供給できたとしても著しく輸送コストが増大する場合がある。
【0005】
このような場合、低熱ポルトランドセメントを用いずに、普通ポルトランドセメントの混和剤として水和発熱抑制剤を使用する方法が考えられる。水和発熱抑制剤は、セメントに添加することでセメントと水の水和速度を制御する混和剤で、セメントの水和速度を抑えることで温度上昇を抑制するものである。水和発熱抑制剤は混和剤としてコンクリートに少量添加すれば良く、低熱ポルトランドセメントを使用する場合のように別にサイロを準備し、或いは供給不可若しくは供給時の輸送コストの増大等の問題が生じることもない。水和発熱抑制剤としては、たとえば下記特許文献2に示すような加水分解型タンニンとオキシカルボン酸塩を主成分とするものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−120787号公報
【特許文献2】特開昭63−117941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような水和発熱抑制剤を併用して用いるとき、水/セメント比が低いコンクリートを製造する場合に、流動性確保のために添加した分散剤の効果を低減させるという新たな問題点が生じることとなった。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、低い水/セメント比のコンクリートやモルタル等を製造する場合に、流動性確保のために添加した分散剤の効果を低減させることがないセメント組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記のような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水和発熱抑制剤として、マメ科植物タラ(Caesalpinia spinosa)から抽出されたタンニン、又はミラボラム(Terminalia chebula)から抽出されたタンニンを含む水和発熱抑制剤であれば、低い水/セメント比のセメントペーストに分散剤とともに混合して用いる場合にも、その分散剤の効果を低減することがないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、水/セメント比が40%以下で用いられるセメント組成物であって、マメ科植物タラ(Caesalpinia spinosa)から抽出されたタンニン、又はミラボラム(Terminalia chebula)から抽出されたタンニンを含む水和発熱抑制剤と、分散剤とを含有することを特徴とするものである。
【0011】
水和発熱抑制剤には、オキシカルボン酸塩を含ませることも可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低い水/セメント比においても、分散剤の種類によらず水和発熱抑制効果と、流動性を併せ持ったモルタル、コンクリートを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のセメント組成物は、上述のように、水/セメント比が40%以下で用いられるセメント組成物であって、マメ科植物タラ(Caesalpinia spinosa)から抽出されたタンニン(以下、タラタンニンともいう)、又はミラボラム(Terminalia chebula)から抽出されたタンニンを含む水和発熱抑制剤と、分散剤とを含有するものである。
【0014】
タラ(Caesalpinia spinosa)は、主に南米大陸西部の乾燥地帯に生育するマメ科多年生木本植物であって、その豆果がタンニンの抽出原料として利用されている。タラから抽出されるタンニンは加水分解型のタンニンであり、トリガロイルキナ酸が含まれている。
【0015】
タンニンをタラから抽出するには、タラの幹、枝、豆果または果皮を、そのまま又は乾燥させたのち、適当な大きさに粉砕し、水、親水性有機溶媒またはこれらの混合物で抽出処理する。抽出用親水性有機溶媒として好ましいものの具体例としては、メタノール、エタノール等の低級アルコール;グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール等、炭素原子数2〜4の多価アルコール;アセトン等が例示される。
【0016】
水、エタノール、またはこれらの混合物による抽出は、抽出溶媒が製品に残留しても毒性を示すおそれがないので特に好ましい。抽出方法は特に制限がなく、室温ないし還流加熱下で、任意の装置を用いて抽出することができる。簡単には、抽出溶媒を満たした処理槽に抽出原料を投入し、必要に応じてときどき撹拌して、可溶性成分を溶出させる。
【0017】
また、タラタンニンとして、市販品(たとえば富士化学株式会社製、川村通商株式会社製)を用いることも可能である。
【0018】
さらに、ミラボラム(Terminalia chebula)は、インド、スリランカ等に分布する木本植物であって、その果肉がタンニンの抽出原料として利用されている。ミラボラムから抽出されるタンニンも、タラタンニンと同様に加水分解型のタンニンであり、タラタンニンと同様に抽出処理することができる。
【0019】
さらに、上記水和発熱抑制剤には、オキシカルボン酸若しくはその塩を含ませることも可能である。オキシカルボン酸若しくはその塩は、分子内に水酸基とカルボキシル基若しくはその塩を有する化合物である。オキシカルボン酸若しくはその塩としては、炭素原子数4〜10のオキシカルボン酸若しくはその塩を用いることが好ましい。例えば、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン、若しくはこれらの無機塩又は有機塩等の1種又は2種以上が例示される。これらの中でも、グルコン若しくはその塩を用いることが好ましい。
【0020】
一方、分散剤としては、下記一般式(1);
【化1】

で表される繰り返し単位と、下記一般式(2);
【化2】

で表される繰り返し単位とを有する共重合体(以下には、ポリエチレンオキシド鎖を持つポリアクリル酸系共重合体、又は、単にポリアクリル酸系共重合体等ともいう)を含むものである。
【0021】
上記一般式(1)において、R1は、水素原子、炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表す。R1としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基が例示され、これらの中でも、水素原子が好適である。オキシエチレン基の平均付加モル数nは、10〜300の数であり、好ましくは、15〜200であり、更に好ましくは、25〜100である。
【0022】
また上記一般式(2)において、Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。一価の金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等が例示され、二価金属原子としては、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等が例示される。また、有機アミン基としては、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基、有機アンモニウム基等が例示される。これらの中でも、ナトリウム、カルシウムであることが好ましい。
すなわち、上記一般式(2)で表される単量体は、ナトリウム塩、カルシウム塩であることが好ましい。
【0023】
また上記分散剤は、上記一般式(1)、(2)とは別の構成単位(繰り返し単位であってもなくてもよい)を更に含んでいてもよい。尚、上記ポリアクリル酸系共重合体において、一般式(1)、(2)の繰り返し単位、及び必要に応じて含まれることになる構成単位の共重合の形態としては、ランダム共重合、ブロック共重合、交互共重合等のいずれであってもよい。
【0024】
上記ポリアクリル酸系共重合体において、一般式(1)の繰り返し単位、一般式(2)の繰り返し単位、及びその他の繰り返し単位の比率は、質量比で、一般式(1)の繰り返し単位/一般式(2)の繰り返し単位/その他の繰り返し単位=98〜2/2〜98/0〜50であることが好ましい。より好ましくは、95〜50/5〜50/0〜50であり、更に好ましくは、95〜70/5〜30/0〜50である。ただし、一般式(1)の繰り返し単位、一般式(2)の繰り返し単位、及びその他の繰り返し単位の合計は100質量%である。
【0025】
一般式(1)の繰り返し単位を与える単量体としては、3−メチル−2−ブテン−1−オールにエチレンオキシドの10〜300モル重合体を付加した化合物、3−メチル−2−ブテン−1−オールにエチレンオキシドの10〜300モル重合体を付加させた後、末端の水酸基をアルキル基で置換した化合物、3−メチル−2−ブテン−1−オールにポリエチレングリコールモノアルキルエーテルを反応させた化合物が挙げられる。
【0026】
また一般式(2)の繰り返し単位を与える単量体としては、アクリル酸が挙げられる。
【0027】
さらに、その他の繰り返し単位を与える単量体としては、他の単量体の少なくとも1つと共重合可能な単量体であればよく、たとえば下記のものが例示される。
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜4のアルコールとのハーフエステル、ジエステル;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜300のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル。
【0028】
マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜300のポリアルキレングリコールとのハーフアミド;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類。
【0029】
ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びにそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等不飽和モノカルボン酸系類、並びにそれらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩。
【0030】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜4のアルコールとのエステル;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類。
【0031】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテル又はアリルエーテル類。
【0032】
ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;2−アクリロイロキシエチルホスフェート、2−メタクリロイロキシエチルホスフェート等の不飽和リン酸エステル類。
【0033】
ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン等のポリアルキレンポリアミンとマロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバチン酸、又はこれらと炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物等の二塩基酸又は二塩基酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステルとの縮合物に更に(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等の不飽和エポキシ化合物等とを特定の割合で縮合させたポリアマイドポリアミンにアルキレンオキシドを特定量付加させた化合物;ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン等のポリアルキレンイミンの活性水素にエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加した化合物と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルコールとのエステル化物又は(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等の不飽和エポキシ化物との縮合物等の窒素原子を有するカチオン性単量体。
【0034】
上記ポリアクリル酸系共重合体を得るには、重合開始剤を用いて上記単量体成分を重合させればよい。重合は、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行うことができる。溶媒中での重合は回分式でも連続式でも行うことができ、その際使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物の1種又は2種以上が例示される。原料単量体及び得られるポリアクリル酸系共重合体の溶解性並びにポリアクリル酸系共重合体の使用時の便宜性からは、水及び炭素原子数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。その場合、炭素原子数1〜4の低級アルコールの中でも、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等が特に好ましい。
【0035】
上記ポリアクリル酸系共重合体を得るために水媒体中で重合を行うときには、重合開始剤としてアンモニウム若しくはアルカリ金属の過硫酸塩又は過酸化水素等の水溶性の重合開始剤を使用することが好ましい。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩、アスコルビン酸(塩)、ロンガリット等の促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物又はケトン化合物を溶媒とする重合には、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が重合開始剤として用いることが好ましい。この際、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。更に、水−低級アルコール混合溶剤を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤又は重合開始剤と促進剤との組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。重合温度は、用いる溶媒や重合開始剤により適宜定められるが、通常0〜120℃であり、30℃以上が好ましい。より好ましくは50℃以上である。また、100℃以下が好ましい。より好ましくは95℃以下である。
【0036】
また塊状重合を行うときには、通常では重合開始剤としてベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を用い、50〜200℃で行なわれる。
【0037】
更に得られるポリアクリル酸系共重合体の分子量調節のために、次亜リン酸(塩)やチオール系連鎖移動剤を併用することもできる。この際に用いられるチオール系連鎖移動剤は、一般式HS−R2−Eg(式中、R2は、炭素原子数1〜2のアルキル基を表す。Eは、−OH、−COOM、−COOR3又はSO3M基を表す。Mは、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。R3は、炭素原子数1〜30のアルキル基を表す。gは、1〜2の整数を表す。)で表され、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチルが好適である。また、水酸基やカルボキシル基等の官能基をもたない炭素数3以上の炭化水素基をもつチオール化合物を連鎖移動剤として用いてもよい。ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノールがそのようなチオール化合物として好適である。また、四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;α−メチルスチレンダイマー、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン等の不飽和炭化水素化合物を連鎖移動剤として用いてもよい。これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、ポリアクリル酸系共重合体の分子量調整のためには、単量体として(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0038】
上記ポリアクリル酸系共重合体は、そのままでも用いることができるが、水に対する溶解性が不足するような場合には、水に対する溶解性を向上させて有機溶媒を含まない水媒体液の形態で取り扱うために、更に一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭素塩等の無機物;アンモニア;有機アミン等(好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の一価金属の水酸化物)のアルカリ性物質で中和して得られる重合体塩として用いることが好ましい。
【0039】
上記ポリアクリル酸系共重合体の重量平均分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」という)によるポリエチレングリコール換算で、5000〜1000000が適当である。重量平均分子量が5000未満であると、材料分離低減性能が低下するおそれがあり、1000000を超えると、分散性能が低下するおそれがあるからである。この観点からは、10000以上500000以下であることが好ましく、10000以上300000以下であることがより好ましい。
【0040】
(重量平均分子量測定条件)
機種:Waters LCM1
検出器:Waters 410 示差屈折検出器
解析ソフト:Waters MILLENNIUM Ver.2.18
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合液に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に30%水酸化ナトリウム水溶液でpH6.0に調整した溶離液を用いる。
溶離液流速:0.8ml/min
カラム温度:35℃
カラム:東ソー製 TSKgel GuardColumnSWXL+G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470
【0041】
また、上記一般式(1)、(2)の繰り返し単位、及びその他の構成単位を与える単量体を含むポリアクリル酸系共重合体以外の構造のポリアクリル酸系共重合体を用いることも可能である。
【0042】
さらに、ポリアクリル酸系以外のセメント分散剤を用いることも可能である。ポリアクリル酸系以外のセメント分散剤の具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸塩系;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸塩系;リグニンスルホン酸塩、変成リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系;等の各種スルホン酸系セメント分散剤が挙げられる。
【0043】
さらに、本発明のセメント組成物に含まれるセメントの種類は特に限定されるものではないが、普通ポルトランドセメントであることが好ましい。普通ポルトランドセメントであれば、生コンクリート工場で別途サイロを準備するような必要がなく、また生コンクリート工場の立地条件によって供給不可若しくは輸送コストが増大するようなことがないからである。
【0044】
尚、本発明のセメント組成物には、上記のようなセメント、水和発熱抑制剤、分散剤の他に、石膏、消包剤、AE剤、促進剤、増粘剤、膨張材等の成分を含有させることも可能である。また、細骨材及び粗骨材等の骨材を含有させることも可能である。細骨材としては、砂が好適であり、粗骨材としては、川砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記のような水和発熱抑制剤をセメント組成物に配合する場合、セメント100質量部に対し0.1質量部以上が好ましく、また、1.5質量部以下が好ましい。水和発熱抑制剤がセメント100質量部に対して0.1質量部未満であると、性能面で不十分となるおそれがあり、1.5質量部を超える量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。かかる観点から、セメント100質量部に対して0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることが更に好ましい。また、セメント100質量部に対して1.0質量部以下であることがより好ましく、0.8質量部以下であることが更に好ましい。
【0046】
また、上記のような分散剤をセメント組成物に配合する場合、セメント100質量部に対し、0.1質量部以上が好ましく、また、2.0質量部以下が好ましい。分散剤がセメント100質量部に対して0.1質量部未満であると、性能面で不十分となるおそれがあり、2.0質量部を超える量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。かかる観点からは、セメント100質量部に対して0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることが更に好ましい。また、セメント100質量部に対して1.6質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以下であることが更に好ましい。
【0047】
さらに、細骨材や粗骨材をセメント組成物に配合する場合、セメント100質量部に対して細骨材100〜500質量部、粗骨材200〜400質量部配合されることが望ましい。
【0048】
またコンクリートやモルタル等のセメント硬化体を製造する場合の水/セメント比は40%以下であり、好ましくは35%以下である。このような低い水/セメント比においては、流動性が阻害されにくいという本発明のセメント組成物の効果が顕著に発揮されるからである。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0050】
(実施例1)
本実施例では、タラタンニンからなる水和発熱抑制剤と、上記ポリエチレンオキシド鎖を持つポリアクリル酸系共重合体からなる分散剤とをそれぞれポルトランドセメントに添加してセメント組成物を調製した。セメント組成物の配合は、ポルトランドセメント100質量部に対し、水和発熱抑制剤0.4質量部、分散剤0.47質量部とした。
【0051】
ポルトランドセメントとしては、住友大阪セメント株式会社製のものを用いた。またタラタンニンとしては、富士化学社製のものを用いた。
【0052】
ポリエチレンオキシド鎖を持つポリアクリル酸系共重合体からなる分散剤は、次のようにして調製した。すなわち、温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応器に、水76.91g、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル149.28gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換して窒素雰囲気下で60℃まで加熱した。内温が60℃で安定したところで、過酸化水素0.23gと水11.01gとを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸20.17gを3時間、並びに、水40.74gにL−アスコルビン酸0.3g、3−メルカプトプロピオン酸0.79gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持し、重合反応を終了した。重合終了後、水酸化ナトリウムで中和、水で希釈し重合成分の濃度が40質量%になるように調整した。得られたポリアクリル酸系共重合体の重量平均分子量を下記の条件により求めたところ、37000であった。
【0053】
重量平均分子量測定条件
機種:Waters LCM1
検出器:Waters 410示差屈折検出器
解析ソフト:Waters MILLENNIUM Ver.2.18
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合液に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、更に30%水酸化ナトリウムでpH6に調整した溶離液を用いる。
溶離液流速:0.8ml/min
カラム温度:35℃
カラム:東ソー製 TSKgel GuardColumnSWXL+G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
標準物質:ポリエチレングリコール、重量平均分子量(Mw)272500、219300、85000、46000、24000、12600、4250、7100、1470
【0054】
(実施例2)
本実施例のセメント組成物においては、水和発熱抑制剤及びセメントとしては実施例1と同じものを配合したが、分散剤としては実施例1のポリアクリル酸系共重合体からなるものに代えて、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物からなるナフタレン系分散剤(商品名マイティ150:花王株式会社製)を配合した。セメント組成物の配合は、ポルトランドセメント100質量部に対し、水和発熱抑制剤0.4質量部とし、分散剤2.0質量部とした。
【0055】
(比較例1)
比較例1として、五倍子タンニン(富士化学社製)からなる水和発熱抑制剤を用いることを除き、他は上記実施例1と同様にしてセメント組成物を調製した。
【0056】
(比較例2)
比較例2として、五倍子タンニン(同上)からなる水和発熱抑制剤を用いることを除き、他は上記実施例2と同様にしてセメント組成物を調製した。
【0057】
[試験例1]
上記実施例1、実施例2、比較例1、比較例2のセメント組成物について、流動性の評価を行うべく、フロー値を測定した。水/セメント比は40%とした。各セメント組成物の各成分を、上記配合比で常温(20℃)下、ホバートミキサーで3分間混合し、フロー値(0打フロー値及び15打フロー値)を測定した。フロー値はJIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準じて測定した。試験結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1からも明らかなように、実施例1では0打フロー値、15打フロー値ともに300mmという良好な結果が得られた。また実施例2においても、0打フロー値が300mm、15打フロー値が291mmという良好な結果が得られた。
【0060】
これに対して、比較例1では0打フロー値が250mm、15打フロー値が208mmと実施例1、2に比べてフロー値が低く、比較例2では0打フロー値が129mm、15打フロー値が100mmと、さらにフロー値が低く、流動性が不良であることがわかった。特に比較例1、2では0打フロー値に比べて15打フロー値にかなりの低下が認められたのに対して、実施例1、2では0打フロー値に比べて15打フロー値がさほど低下しなかった。
【0061】
このような試験結果から、水和発熱抑制剤として比較例1、2の五倍子タンニンを用いた場合には、フロー値が低く、特に分散剤としてナフタレン系分散剤を用いた場合には流動性が不良となるが、水和発熱抑制剤として実施例1、2のタラタンニンを用いた場合には、分散剤の種類によらず良好なフロー値が得られ、流動性が良好となることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水/セメント比が40%以下で用いられるセメント組成物であって、マメ科植物タラ(Caesalpinia spinosa)から抽出されたタンニン、又はミラボラム(Terminalia chebula)から抽出されたタンニンを含む水和発熱抑制剤と、分散剤とを含有することを特徴とするセメント組成物。
【請求項2】
オキシカルボン酸塩が水和発熱抑制剤に含まれている請求項1記載のセメント組成物。

【公開番号】特開2012−148933(P2012−148933A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9838(P2011−9838)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】