説明

セラミックがコートされた自動車用熱交換器部品

セラミックがコートされた熱交換器部品と、アルミニウム表面上への金属酸化物のプラズマ電気化学的堆積によって熱交換器部品のアルミニウム表面上に多孔性金属酸化物コーティングを設け、多孔性金属酸化物セラミックコーティング上に臭気中和剤を積層し、熱交換器上に臭気改善セラミックコーティングを形成する、セラミックがコートされた熱交換器部品の作製。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電気化学的堆積法を使用して自動車用熱交換器部品を金属酸化物セラミックコーティングでコートする方法と、それより製造されるセラミックがコートされた自動車用熱交換器部品とに関する。
【背景技術】
【0002】
本セクションは、本開示に関連する必ずしも先行技術ではない背景情報を提供する。
【0003】
アルミニウムまたはアルミニウム合金を含む熱交換チューブおよびフィンを有する従来の熱交換器は、大部分が、限られた空間において優れた熱放射および冷却効果を得るために、熱放射部分および冷却部分の表面積が可能な限り大きくなるように設計されている。従って、フィンの間のギャップは非常に小さい。また、熱交換器の空気抵抗を可能な限り低くまで低減するために、フィンにはノッチが施されている。ノッチが施されたフィンは、フィンルーバーと呼ばれる。
【0004】
上述の熱交換器を冷却のために使用する場合、空気に含有される水分が熱交換器の表面上で凝縮されて水滴を形成し、該水滴はフィンの間のギャップを充填し、熱交換器の空気抵抗を増加させ、よって、熱交換器の熱交換効率が低下する。また、凝縮された水滴は熱交換器におけるアルミニウムまたはアルミニウム合金の腐食も引き起こし、よって、フィンの表面上に酸化アルミニウムの微白色粉が発生する。フィンの間のギャップ内に残存する水滴によって熱交換が遮断されるのを防ぐために、フィンの表面に高い親水性を付与する処理方法、およびフィン表面の水−濡れ特性を高める処理方法が開発されてきた。
【0005】
アルミニウムまたはアルミニウム合金熱交換器の腐食を防ぐ目的のための表面処理として、クロム酸−クロム酸塩化成処理、リン酸−クロム酸塩化成処理および非クロム酸塩化成処理が既知である。およそ1950年よりクロム酸−クロム酸塩化成処理は実用的に利用されたものであり、依然として広く熱交換器のフィン材料などのために使用されている。この化成処理液は、主成分として、クロム酸(CrO)およびフッ化水素(HF)、および更に、促進剤を含有しており、少量の六価クロムを含有する化成コーティングを形成することができる。リン酸−クロム酸塩化成処理は米国特許第2,438,877号明細書(特許文献1)の発明を基礎としており、その処理液は、クロム酸(CrO)、リン酸(HPO)およびフッ化水素(HF)を含む。結果として得られる化成コーティングは、主成分として、リン酸クロム水和物(CrPO・4HO)を含有する。
【0006】
この方法は、しかしながら、コーティング手法によって廃棄されるべき六価クロム(Cr6+)を含有する廃液が生じる点において不利である。クロム酸塩タイプの表面処理は有害な六価クロムを含有する水性処理液を使用するため、環境汚染を防ぐために、六価クロムを含有しない新しい処理液に対する強い要求がある。また、上述の廃液は六価クロムを除去する処理をせずに廃棄できないため、処理試薬を使用する処理装置によって廃液を処理しなければならず、このため、結果として得られる製品が高額となる。
【0007】
車両は、それらを使用する寿命の間に、しばしば、それらの客室内に臭気を蓄積する。そのような臭気は、さまざまな方法で、さまざまな発生源によって生じ得る。例えば、車両内に残された物品、客室の室内材料からの揮発性有機化合物(VOC:volatile organic compound)、喫煙および食事などの活動、および、空気中に浮遊する粉塵および他の汚染物質の蓄積の全てが臭気の蓄積に寄与し得る。最終的には、車両内の臭気は支障を来たすようになり、場合によっては、臭気の発生源がバクテリア、カビ(菌類)または他の微生物に関与する場合、臭気が健康上のリスクとなることがある。
【0008】
目につかない汚染物質が増加および/または蓄積する場所の1つは、空調システムの内側である。典型的な空調ユニットは、蒸発器コアとしても既知の冷媒サーペンタインが組み込まれているチャンバーを含む。適切に機能している空調システムの正常な動作条件下においては、車両の内側および外側の温度、露点および相対湿度の間の相互作用によって、サーペンタインがチャンバー内に入ってくる水分を凝縮する。このプロセスにおいては、システムに侵入してくる空気がシステムの冷涼な内側の部品に接触し、該部品が空気より湿度を保持および凝縮する。より冷涼で乾燥した空気がシステムより出て行き、通風し、車両の客室に進入すれば、乗客を心地よくする。
【0009】
自動車の内側で生成されたタバコの煙は、最終的には、自動車の熱交換器システムを通して導かれることとなる。しばしば、臭気は除去に抵抗して残存し、自動車の価値を下げ、乗客を不快にする。
【0010】
加えて、幾つかの汚染物質はシステムを通過し、客室の内側表面上に堆積していくこともある。蒸発器の湿潤な表面上の蓄積された粒子は、特に、太陽からのUV光がない場合、微生物が増殖し得る環境を与える。蒸発器の内部における微生物性の汚染物質の増大は、送風機によって生成される気流内において客室に侵入し得る汚染物質および臭気の量を更に増加させる。
【0011】
カビは、客室内部の空気中に浮遊することとなり得る胞子を生成し得る。次いで、これらの胞子は、空調システムを通して、再び循環し得る。蒸発器の内部における水分および温度の活性および光がないために、これらの汚染物および粒子の多くは、「泥」のようなものの層を形成して蒸発器ユニットの内部に蓄積する傾向がある。空調のスイッチを入れると、特定個人にとっては実際に健康上のリスクを生じ得るシステム内の胞子が客室中へ吹き出され得る。良くても、この状況では、A/Cおよび/またはヒーターのスイッチを入れるたびに不快な悪臭の臭気が発生する。
【0012】
これらの蒸発器および換気システムの内部におけるカビ、バクテリアおよび臭気を除去または処理する方法が開発されてきた。1つの方法は、蒸発器の排水孔を通して発泡エアロゾル溶液を噴霧する。次いで、泡は蒸発器の内部の泡内に広がっていく。しかしながら、エアロゾルから泡の状態に急速に広がるため、泡が蒸発器の上部リセスに効果的に達することが妨げられる。加えて、排水孔に届くためには蒸発器を取り外すか車両をリフトの上で持ち上げるかの何れかが必要であり、または、蒸発器のケース内にドリルで穴を開けることでストロータイプのエアロゾル注入器を到達可能にする必要があるため、該方法は複雑である。これらは、全て、エアロゾル缶の内容物を放出するバルブを押し下げながら、車両を適切に配置しエアロゾル缶を保持することを作業者に要求する、多大な労働力を要する操作である。
【0013】
もう一つの方法は、送風機モニターを動作しながら外側に配置されている吸気口内に非発泡エアロゾル溶液を噴霧する。しかしながら、噴霧のエアロゾル液滴は空気より重く、約40〜100ミクロンの大きさと著しく大きいため、液滴は効果的には進まず、蒸発器の内部または換気システム全体に到達するのに充分という訳ではない。これらの溶液は、いずれも、微生物および汚染物のために内側の客室表面を処理するようには設計されておらず、エアロゾル缶の内容物を放出するためには、操作者がエアロゾル缶上のバルブを連続して押し下げなければならない点において両者とも多大な労働力を要する。Airsept,Inc.は、その様な製品を提供している。あるいは、蒸発器の乾燥を保つために、電子機器を使用できる。米国特許第5,899,082号明細書(特許文献2)および米国特許第6,840,051号明細書(特許文献3)を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第2,438,877号明細書
【特許文献2】米国特許第5,899,082号明細書
【特許文献3】米国特許第6,840,051号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、臭気改善コーティングを含む自動車用熱交換器部品のための耐腐食性コーティングと、比較的高いレベルの耐腐食性が要求される熱交換器部品の表面を作製するための、少なくとも従来のクロム酸塩および非クロム酸塩化成コーティング法によって提供されるものと同等の信頼性がある、そのような熱交換器部品を作製する方法とを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本セクションは開示の一般的な要旨を提供し、開示の全範囲または開示の全ての態様の包括的な開示ではない。
【0017】
本出願人らは、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含有する表面を含む自動車用熱交換器部品(自動車用熱交換器部品としては、熱交換器、蒸発器、加熱器コア、凝縮器、放熱器、または、それらの組み合わせが挙げられる)を、金属酸化物セラミックコーティングおよび臭気中和剤で容易にコートして、耐腐食性で臭気改善特性を保有する保護コーティングを形成できることを発見した。熱交換器部品は、金属(チタン、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウム、スズ、ゲルマニウム、ニオブおよびホウ素が挙げられる。)の酸化物、錯体フッ化物および/または錯体酸化フッ化物を含有する水性陽極酸化溶液によって陽極酸化できる。陽極酸化溶液は亜鉛を含有せず、該方法は、クロム、過マンガン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、遊離フッ化物および遊離塩化物を実質的に欠いており、より好ましくは含まない。陽極酸化溶液は、1種類以上の水溶性および/または水分散性アニオン種(金属、半金属および/または非金属元素が挙げられる。)を含有する。また、熱交換器のアルミニウムを含有する表面上に配置される金属酸化物セラミックコーティングを、セラミックコーティングの表面に結合する臭気中和剤によってもコートする(その上には細孔を含む)。
【0018】
本技術の1つの態様において、自動車用熱交換器部品は、
(A)アルミニウム表面を有する熱交換器部品と、
(B)アルミニウム表面の少なくとも一部分上に配置される金属酸化物セラミックコーティングと、および
(C)セラミックコーティング上にコートされる臭気中和剤(それにより、熱交換器部品上に臭気中和セラミックコーティングが形成される。)
とを含む。
【0019】
本技術の更なる態様においては、自動車用の金属酸化物セラミックがコートされた熱交換器部品が提供される。熱交換器部品は、アルミニウム表面を有する熱交換器部品と、アルミニウムの表面に少なくとも部分的に配置されるセラミックコーティングと、部品に接触する表面および外側表面を有する金属酸化物セラミックコーティングとを含む。セラミックコーティングは、プラズマ電気化学的堆積を使用してアルミニウム表面に塗工する。セラミックコーティングの外側表面は、電気化学的堆積の結果として複数の細孔を有する。セラミックコーティングは、更に、セラミックコーティングの外側表面上で少なくとも部分的に複数の細孔内に配置される臭気中和剤を含む。
【0020】
実施形態によっては、熱交換器部品は、自動車において見出される部品であり、そのような自動車としては、乗用車、ピックアップトラック、ミニバン、スポーツ用多目的車(SUV:sport−utility vehicle)、バス、配達トラック、重量級トラック、セミトレーラートラック、オフ・ハイウェー建設車両、例えば、掘削機、ブルドーザー、地ならし機、スクレーパーなど、乗用バン、路上での使用のために設計された二輪または三輪オートバイ、全地形万能車(atvs:all−terrain vehicle)、ゴルフ・カーおよび他のレクリエーション車両が挙げられる。実施形態によっては、熱交換器部品は主にアルミニウムまたはアルミニウム合金から作製でき、本質的に酸化チタンより作製されるセラミックコーティング(ただし、酸化チタンコーティングは、更に、臭気中和剤でコートされる。)によってコートする。あるいは、1種類以上の鉄、鋼、チタン、ニッケル、コバルト、ニオブ、バナジウム、アルミニウム、タンタル、銅、マグネシウム、マンガン、クロム、ハフニウム、スズ、および、それらの合金、炭素およびセラミック焼結材料を含む複合材料より熱交換器部品を作製し、ただし、熱交換器部品は、本質的にアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む少なくとも1つの表面を有する。
【0021】
本技術の更なる態様において、セラミックがコートされた熱交換器を形成する方法は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、スズ、アルミニウム、ゲルマニウムおよびホウ素の1種類以上より選択される金属イオンのフッ化物および/または酸化フッ化物の水性水溶性錯体を含む陽極酸化溶液を提供することと、陽極酸化溶液中に陰極と、陽極酸化溶液中に陽極としてアルミニウム表面を有する熱交換器部品とを配置することと、アルミニウム表面の表面上に少なくとも部分的にアルミニウムの表面を金属酸化物によってコートするのに有効な時間、陽極酸化溶液を介し陰極および陽極に対してパルス電流を印加してセラミックコーティングを形成することと、陽極酸化溶液より熱交換器部品を取り除き、臭気中和剤をセラミックコーティングの表面に塗工して、セラミックコーティング上に抗臭気コーティングを形成することとを含む。
【0022】
陰極、陽極および陽極酸化溶液を通過するために使用される電流としては、パルス直流、非パルス直流および/または交流を挙げることができる。パルス電流は、500ボルト以下、または、450ボルト以下、より好ましくは400ボルト以下の平均電圧でよい。望ましくは、少なくともコーティング時間およびコストを低減するために、パルス直流の平均電圧は、少なくとも75ボルト、望ましくは少なくとも100ボルトである。パルス電流が使用されている場合、ピーク電圧は、好ましくは600ボルト以下、好ましくは500ボルト以下、最も好ましくは400ボルト以下である。より高いピーク電圧を使用してもよいが、より多くの熱が発生し、上記の電圧よりも経済的ではない傾向にある。実施形態によっては、パルス電流用のピーク電圧は、600ボルト以下、575ボルト以下、550ボルト以下、525ボルト以下、500ボルト以下であり、独立して、200ボルト以上、250ボルト以上、300ボルト以上、310ボルト以上、320ボルト以上、330ボルト以上、340ボルト以上、350ボルト以上、360ボルト以上、370ボルト以上、380ボルト以上、390ボルト以上、400ボルト以上である。より低いピーク電圧を使用してもよいが、ピーク電圧を低下するほど、コーティングの質が悪影響を受けることがある。パルス直流に対する前述の電圧は、任意のリン含有成分の存在下または非存在下の何れにも適用できる。交流が使用されている場合、電圧は200〜600ボルトの範囲でよい。実施形態によっては、交流電圧を、600ボルト未満、575ボルト未満、550ボルト未満、525ボルト未満、500ボルト未満であってもよく、独立して、300ボルト以上、310ボルト以上、320ボルト以上、330ボルト以上、340ボルト以上、350ボルト以上、360ボルト以上、370ボルト以上、380ボルト以上、390ボルト以上、400ボルト以上であってもよい。リン含有成分の存在下においては、直線直流としても既知の非パルス直流を200〜600ボルトの電圧で使用してもよい。非パルス直流は、望ましくは、好適度が増加する順で、600ボルト、575ボルト、550ボルト、525ボルト、500ボルト、および独立して、300ボルト以上、310ボルト以上、320ボルト以上、330ボルト以上、340ボルト以上、350ボルト以上、360ボルト以上、370ボルト以上、380ボルト以上、390ボルト以上、400ボルト以上の電圧を有する。
【0023】
もう一つの態様において、本技術はセラミック臭気中和コーティングを有する熱交換器を形成する方法を提供し、該方法は、水、リン含有酸および/または塩、および、TiおよびZrから成る群より選択される元素の水溶性錯体フッ化物、水溶性錯体酸化フッ化物、水分散性錯体フッ化物および水分散性錯体酸化フッ化物から成る群より選択される1種類以上の追加成分を含む陽極酸化溶液を提供することと、陽極酸化溶液中に陰極と、陽極酸化溶液中に陽極としてアルミニウムまたはアルミニウム合金の表面を有する熱交換器部品とを配置することと、該物品の少なくとも1つの表面上にセラミックTiまたはZr金属酸化物コーティング(例えば、TiO)を形成するのに有効な時間、陽極酸化溶液を介し陰極および陽極に対してパルス電流を通過させることと、保護TiまたはZr金属酸化物コーティングを臭気中和剤によってコートすることとを含む。
【0024】
その上にセラミック臭気中和コーティングを有するアルミニウムを含む表面を有する熱交換器部品を形成する方法を提供することを本技術の目的とし、該方法は、陽極酸化溶液(該陽極酸化溶液は、チタンおよび/またはジルコニウムの1種類以上の水溶性錯体フッ化物またはそれらの塩と、リン含有オキシ酸および/または塩と、任意成分として、チタンおよび/またはジルコニウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩またはアルコキシドとを組み合わせて調製されたものである。)を提供することと、陰極を陽極酸化溶液に接触させることと、陽極酸化溶液中に陽極としてアルミニウムを含む熱交換器部品を配置することと、熱交換器部品の表面上にセラミック臭気中和コーティングを形成するのに有効な時間、陽極および陰極の間に直流または交流を通過させることと、陽極酸化溶液よりセラミック臭気中和コーティングを有する熱交換器部品を取り除き、該物品を乾燥させることと、セラミック臭気中和コーティングを有する熱交換器部品に臭気改善コーティング材料の1つ以上の層(該層の少なくとも1つは臭気中和剤を含む。)を塗工して、臭気改善コーティングを形成することとを含む。
【0025】
熱交換器部品(ただし、該物品の表面は主にアルミニウムを含む。)を金属酸化物セラミックコーティングでコートする方法を提供することを本技術の更なる目的とする。熱交換器がセラミックコーティングでコートされるべきアルミニウムの表面を少なくとも有するという条件で、熱交換器部品は、任意の材料[金属(例えば、鉄、鋼、チタン、ニッケル、コバルト、ニオブ、アルミニウム、タンタル、銅、マグネシウム、マンガン、バナジウム、クロム、ハフニウム、スズ、および、それらの合金)、および、熱交換器部品の製造において使用されるセラミック材料が挙げられる。]より製造できる。セラミックコーティングが1種類以上のTi、Zr、Hf、Sn、Geおよび/またはBの酸化物(例えば、O、O)を主に含む方法を提供することを本技術の更なる目的とする。熱交換器部品がアルミニウムを主に含有する表面を含み、セラミックコーティングが主に酸化チタン(TiO)である方法を提供することを更なる目的とする。
【0026】
電流が200ボルト以下の平均電圧を有するパルス直流である方法を提供することを更なる目的とする。実施形態によっては、保護コーティングは主に酸化チタンを含む。保護コーティングは、好ましくは、毎分少なくとも1ミクロン厚の速度で形成され、電流は、好ましくは、パルス直流または交流である。実施形態によっては、陽極酸化溶液は、水、リン含有酸、および、Tiおよび/またはZrの水溶性および/または水分散性錯体フッ化物を含む。好ましくは、陽極酸化溶液のpHは1〜6である。
【0027】
セラミックコーティングは、更に、臭気中和剤でコートされる。臭気中和剤としては、1種類以上の臭気捕捉剤、芳香剤、抗菌剤を挙げることができ、それにより、臭気中和セラミックコーティングを形成する。
【0028】
適用性のある更なる分野は、本明細書で提供される記載より明らかとなるであろう。本要旨における記載および特定の例は例示目的のみを意図し、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0029】
本明細書で記載される図面は、選択された実施形態のみで全ての可能な実施ではない図解を目的し、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本技術による熱交換器の表面上でチタン金属酸化物によってコートされた熱交換器の透過電子写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
技術の以下の記載は、主題の性質、1つ以上の本発明の製造および使用についての単なる例示であり、本出願または本出願に対して優先権を主張して出願されることもあるような他の出願、または、それらより発行される特許において請求される任意の特定の発明の範囲、適用または使用を限定することを意図しない。本明細書で述べられる技術の記載を精査する際には、以下の定義および非限定的な指針を考慮しなければならない。
【0032】
本明細書において使用される見出し(「背景技術」および「発明の概要」など)および小見出しは、本技術内における題目の一般的な構成化のみを意図するものであって、本技術またはその任意の態様の開示を限定することを意図しない。特に、「背景技術」において開示される主題が新規の技術を含むことがあり、先行技術の列挙を構成しないことがある。「発明の概要」において開示される主題は、技術の全範囲またはそれの任意の実施形態の網羅的または完全な開示ではない。本明細書のセクション内における材料が特定の有用性を有するとして分類または考察が便宜上行われるが、任意の所与の組成において材料が使用される場合、材料は必然的に、または唯一に本明細書の材料の分類に従って機能しなければならないという推論は引き出されるべきではない。
【0033】
記載および具体例は、技術の実施形態を示す一方で、例示の目的のみを意図するものであり、技術の範囲を限定することを意図しない。更に、提示される特徴を有する複数の実施形態の列挙は、追加の特徴を有する他の実施形態または提示される特徴の異なる組み合わせを組み込む他の実施形態を排除することを意図しない。具体例は本技術の組成物および方法を如何にして作製および使用するかを例示する目的で提供され、他に明示されない限り、本技術の所与の実施形態が作製または検討された、または作製または検討されなかったという表現であることを意図しない。
【0034】
本明細書において使用される場合、単語「好適な(preferred)」および「好ましくは(preferably)」は、特定の状況下において特定の利益を生じる技術の実施形態を言う。しかしながら、また、同一または他の状況下においても他の実施形態が好適なことがある。更に、1つ以上の好適な実施形態の列挙は他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、技術の範囲から他の実施形態を排除することを意図しない。
【0035】
本明細書において言及される場合、組成に関するパーセンテージは全て、特に特定されない限り、全組成の重量による。本明細書において使用される場合、単語「挙げられる、含む(include)」およびその変形は、リスト中の項目の列挙が、本技術の材料、組成物、装置および方法において有用であってもよい他の類似の項目の排除ではないように非限定的であることを意図する。同様に、用語「できる(can)」および「てもよい(may)」およびそれらの変形は、実施形態が特定の構成要素または特徴を含むことができるまたは含んでもよい列挙が、これらの構成要素または特徴を含有しない本技術の他の実施形態を排除しないように非限定的であることを意図する。
【0036】
具体的なパラメータ(温度、分子量、重量パーセンテージなど)についての値および値の範囲の開示は、本明細書における有用な他の値および値の範囲を排除しない。所与のパラメータに対する2つ以上の具体的な例示値は、パラメータについて特許請求されてもよい値の範囲についての端点を定義してもよいと想定される。例えば、パラメータXが値Aを有するように本明細書で例示され、また、値Zを有するようにも例示されるのであれば、パラメータXは約A〜約Zの値の範囲を有してもよいと想定される。同様に、パラメータについての値の2つ以上の範囲(そのような範囲は入れ子、重複または識別可能である)の開示は、開示された範囲の端点を用いて特許請求されてもよい値についての範囲の可能な組み合わせ全てを包含すると想定される。例えば、パラメータXが1〜10または2〜9または3〜8の範囲における値を有するように本明細書で例示されるのであれば、パラメータXは、1〜9、1〜8、1〜3、1〜2、2〜10、2〜8、2〜3、3〜10および3〜9を含む値の他の範囲を有してもよいと想定される。
【0037】
含む(including)、含有する(containing)または有する(having)などの非限定的な用語の同義語として非限定的な用語「含む(comprising)」を本明細書で用いて本技術の実施形態を記載および特許請求するが、「から成る(consisting of)」または「から実質的に成る(consisting essentially of)」などの、より限定的な用語を使用して代替的に実施形態を記載することもある。よって、成分、構成要素または方法工程を列挙する任意の所与の実施形態については、そのような追加の成分、構成要素または方法が本出願において明白に列挙されていなくても、追加の成分、構成要素または方法を排除して(から成るについて)、および、実施形態の新規の特性に影響を及ぼす追加の成分、構成要素または方法を排除して(から本質的に成るについて)、そのような成分、構成要素または方法から成る、または、それらから本質的に成る実施形態を、本出願者らは具体的に想定する。例えば、構成要素A、BおよびCを列挙する組成物または方法の列挙は、構成要素Dが本明細書において排除されるとして明白に記載されていないとしても、当該技術において列挙されてもよい構成要素Dを排除して、A、BおよびCから成るおよびそれらから本質的に成る実施形態を具体的に想定する。
【0038】
<自動車用熱交換器部品>
本技術は、金属酸化物セラミックでコートされたアルミニウム表面を有する自動車用熱交換器部品を作製する方法を提供する。金属酸化物セラミックコーティング、好ましくは、酸化チタンまたは酸化ジルコニウムで、水性陽極酸化溶液中におけるチタンおよびジルコニウム金属イオンの電気化学的堆積を使用して、アルミニウム表面をコートする。次いで、熱交換器部品のアルミニウム表面上に形成されたチタンまたはジルコニウム金属酸化物コーティングを臭気中和剤でコートし、それにより、臭気中和セラミックコーティングでコートする。本明細書において使用する場合、本技術の方法によって調製された酸化チタンコーティングまたは酸化ジルコニウムコーティングを、本明細書においては、金属酸化物セラミックコーティングおよびセラミックコーティングと呼ぶ(これらは、本明細書において互換可能に使用される)。
【0039】
本技術による陽極酸化を施されるアルミニウムまたはアルミニウム熱交換器部品について特定の制限はない。熱交換器部品の少なくとも一部分が、50重量%以上、より好ましくは、70重量%以上のアルミニウムを含有する金属より製造されていることが望ましい。好ましくは、該物品は、好適度が増加する順で、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、100重量%以上のアルミニウムを含有する金属より製造される。好ましくは、熱交換機部品は、少なくとも50重量%のアルミニウムを含有する表面を有する。
【0040】
本技術の自動車用熱交換器部品としては、道路使用の自動車車両において使用される熱交換器、蒸発器、凝縮器、放熱器および給気冷却器が挙げられ、該車両としては、制限することなく、乗用車、ピックアップトラック、ミニバン、スポーツ用多目的車(SUV:sport−utility vehicle)、バス、軽量級、中級および重量級トラック、乗用バン、路上での使用のために設計された二輪または三輪オートバイ、全地形万能車(atvs:all−terrain vehicle)、および、ゴルフ・カーが挙げられる。
【0041】
<熱交換器部品を臭気中和セラミックコーティングでコーティングする方法>
実施形態によっては、臭気中和セラミックコートされた熱交換器部品を作製する一般化された方法は、
1.熱水、または、任意成分として、酸、アルカリを含有する水溶液、または、溶媒系システムで脱脂することによる表面調製と、
2.脱イオン水でリンスすることと、
3.本技術による陽極酸化溶液におけるプラズマ電気化学的堆積で熱交換器部品を表面処理する(ただし、処理温度は周囲温度から約80℃であり、プラズマ電気化学的堆積処理時間範囲は、一般に、少なくとも約30秒および約30分以下であり、望ましくは、約60秒から約20分であり、実施形態によっては、約1分から約5分であり、好ましくは、約2分から約4分である。)ことと、
4.セラミックコートされた熱交換器部品を空気乾燥することと、
5.セラミックコートされた熱交換器部品を臭気中和剤でコートすることと、
6.任意工程として、セラミックコートされた熱交換器部品を脱イオン水でリンスすることと、
7.臭気中和セラミックコートされた熱交換器部品を周囲温度において乾燥することとを含む。
【0042】
臭気中和剤が電解堆積の条件に対して安定であり、該剤が電解堆積を過度に妨げないという条件で、任意工程として、臭気中和剤を電解槽に加えることができる。このプロセスにおいては、上の工程5を本発明による方法に含めても除外してもよい。
【0043】
<表面調製>
本技術による陽極酸化処理を施す前に、熱水を使用して、好ましくは、熱交換器部品のアルミニウム含有表面に洗浄工程および/または脱脂工程を施す。また、実施形態によっては、例えば、PARCO Cleaner 305(ミシガン州マディソン・ハイツ市、ヘンケル社、ヘンケル表面技術部門の製品)の希釈溶液などのアルカリ洗浄剤に曝露することで熱交換器部品を化学的に脱脂することもできる。洗浄後、好ましくは、該物品を水でリンスする。そのような陽極酸化前処理は、当該技術においてよく知られている。
【0044】
<金属酸化物セラミックコーティングの電気化学的堆積>
熱交換器部品は、プラズマ電気化学的堆積を使用して金属酸化物でコートされる。本技術において利用されるアルミニウム合金表面を含有する金属物品上に金属酸化物を形成する方法は、米国特許第7,452,454号明細書、出願第10/972,951号、2008年11月18日発行、米国特許出願公開第2005/0115840号公報、出願第10/972,592号、2005年6月2日公開、米国特許出願公開第2005/0061680号公報、出願第10/972,594号、2005年3月24日公開、および、米国特許出願公開第2006/0013986号公報、出願第11/156,425号、2006年1月19日公開に記載されている。4つの引用文献の全ては、本明細書によって、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0045】
実施形態によっては、熱交換器部品の陽極酸化は、0℃および90℃の間の温度に維持された陽極酸化溶液を含む。陽極酸化溶液の温度は、少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃であり、90℃以下、88℃以下、86℃以下、84℃以下、82℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下であることが望ましい。陽極酸化プロセスは、好ましくは、浴、タンクまたは他のそのような容器内に収容される陽極酸化溶液中に熱交換器部品の少なくとも一部分を浸漬する工程を含む。熱交換器部品は陽極として機能する。また、熱交換器部品に対して陰極性である第2の金属物品も、陽極酸化溶液中に配置する。あるいは、熱交換器部品(陽極)に対して、それ自体が陰極性である容器内に陽極酸化溶液を配置する。パルス電流を使用する場合、1つの実施形態においては、次いで、陽極酸化溶液と接触している熱交換器部品のアルミニウム表面上に所望の厚さのコーティングが形成されるまで、250ボルト、200ボルト、175ボルト、150ボルト、125ボルトを超えない平均電圧電位を電極間に印加する。特定の陽極酸化溶液組成を使用する場合、100ボルトを超えない平均電圧であっても良好な結果が得られることがある。金属酸化物セラミックコーティングの形成は、可視光発光放電(この用語の使用は真のプラズマが存在することを意味するものではないが、本明細書においては「プラズマ」と呼ぶときがある)を熱交換器部品のアルミニウム表面上に(連続的または断続的または周期的にのいずれかで)生成させ、よって、プラズマ電気化学的堆積が進行させるのに有効な陽極酸化条件と関連することが、しばしば観察されてきた。
【0046】
実施形態によっては、直流(DC:direct current)は、10〜400アンペア/平方フィートおよび150〜600ボルトで使用する。もう一つの実施形態においては、電流は、パルス化された電流またはパルスする電流である。非パルス直流は、望ましくは、200〜600ボルトの範囲で使用され、好ましくは、電圧は、少なくとも約200ボルト、少なくとも約250ボルト、少なくとも約300ボルト、少なくとも約350ボルト、または、少なくとも約400ボルトであり、少なくとも約700ボルト以下、少なくとも約650ボルト以下、少なくとも約600ボルト以下、少なくとも約550ボルト以下である。直流を使用できるが、また、交流も利用することもできる(しかしながら、条件によっては、ACを使用すると、コーティングの形成速度がより低いことがある)。周波数は10〜10,000ヘルツの範囲でよく、より高い周波数を使用してもよい。それぞれの連続電圧パルス間の「オフ」タイムは、好ましくは、電圧パルスが続く長さの10%および電圧パルスが続く長さの1000%の間で継続する。「オフ」期間の間、電圧をゼロに下げる必要はない(即ち、電圧は、相対的に低いベースライン電圧と相対的に高い上限電圧との間でサイクルされてよい)。ベースライン電圧は、ピーク印加上限電圧の0〜99.9%である電圧に調節できる。低いベースライン電圧(例えば、ピーク上限電圧の30%未満)は、周期的または断続的な可視光発光放電の生成に有利な傾向にあり、一方、より高いベースライン電圧(例えば、ピーク上限電圧の60%を超える)は、連続的なプラズマ陽極酸化(人間の眼のフレームリフレッシュ速度である0.1〜0.2秒に対して)を生じる傾向がある。電流は、周波数生成器によって活性化される電子的スイッチまたは機械的スイッチのいずれかで、パルス化できる。平均アンペア/平方フィートは、少なくとも10アンペア、少なくとも20アンペア、少なくとも30アンペア、少なくとも40アンペア、少なくとも50アンペア、少なくとも60アンペア、少なくとも70アンペア、少なくとも80アンペア、少なくとも90アンペア、少なくとも100アンペア、少なくとも105アンペア、少なくとも110アンペア、少なくとも115アンペアであり、少なくとも300アンペア以下、少なくとも275アンペア以下、少なくとも250アンペア以下、少なくとも225アンペア以下、少なくとも200アンペア以下、少なくとも180アンペア以下、少なくとも170アンペア以下、少なくとも160アンペア以下、少なくとも150アンペア以下、少なくとも140アンペア以下、少なくとも130アンペア以下、少なくとも125アンペア以下である。また、より複雑な波形、例えば、AC成分を有するDC信号も用いることができる。また、望ましくは200および600ボルトの間の電圧を有する交流も使用してよい。陽極酸化溶液中の電解質の濃度が高いほど、より低い電圧で、依然として満足できる金属酸化物コーティングを堆積できる。
【0047】
より詳細に以降で記載する通り、多数の異なるタイプの陽極酸化溶液を本技術の方法において成功裏に使用できる。しかしながら、金属、半金属および/または非金属元素を含有する多種多様な水溶性または水分散性のアニオン種が、陽極酸化溶液の成分として使用するのに適していると考えられる。代表的な元素としては、例えば、リン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、スズ、ゲルマニウム、ホウ素、バナジウム、フッ化物、亜鉛、ニオブ、モリブデン、マンガン、タングステン、タンタル、ケイ素、スカンジウム、セリウム、イットリウム、カルシウム、マグネシウムなど(そのような元素の組み合わせを含む)が挙げられる。本技術の実施形態によっては、陽極酸化溶液の成分はチタンおよび/またはジルコニウムである。
【0048】
理論に束縛されることを望まないが、引き続いて更に詳細に記載される錯体フッ化物または酸化フッ化物種の存在下において、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面を有する熱交換器部品の陽極酸化することによって、金属/半金属酸化物セラミック、例えば、酸化チタンまたはジルコニウム(O、OHおよび/またはF配位子を含有する部分加水分解されたガラスを含む)または金属/非金属化合物を含む表面コーティングまたはフィルムが形成されると考えられ、ただし、表面フィルムを含む金属は、錯体フッ化物または酸化フッ化物種からの金属および物品からの幾つかの金属を含む。本技術による陽極酸化中にしばしば発生するプラズマまたは火花放電はアニオン種を不安定にし、それが原因となって、そのような種の上の特定の配位子または置換基が加水分解されるか、Oおよび/またはOHによって置換されるか、または、金属−有機結合が金属−Oまたは金属−OH結合によって置き換えられると考えられる。そのような加水分解および置換反応によって、化学種の水溶性または水分散性が低くなり、それにより、第2の保護コーティングを形成する酸化物の表面コーティングの形成が促進される。pH調整剤が陽極酸化溶液中に存在してもよく、適切なpH調整剤としては、非制限的な例の態様により、アンモニア、アミンまたは他の塩基が挙げられる。pH調整剤の量は、1〜6.5、好ましくは2〜6、最も好ましくは3〜5のpHを達成するのに必要な量に限定され、陽極酸化浴において使用される電解質のタイプに依存する。好ましい実施形態において、pH調整剤の量は、1重量/容量%未満である。
【0049】
本技術の実施形態によっては、陽極酸化溶液は本質的に(より好ましくは、完全に)クロム、過マンガン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、遊離フッ化物および/または遊離塩化物を含有しない。
【0050】
使用される陽極酸化溶液は、好ましくは、水と、Ti、Zr、Hf、Sn、Al、GeおよびB(好ましくは、Tiおよび/またはZr)から成る群より選択される元素の少なくとも1種類の錯体フッ化物または酸化フッ化物とを含む。錯体フッ化物または酸化フッ化物化合物は水溶性または水分散性でなければならず、好ましくは、少なくとも1個のフッ素原子と、Ti、Zr、Hf、Sn、Al、GeまたはBから成る群より選択される元素の少なくとも1個の原子とを含むアニオンを含む。錯体フッ化物および酸化フッ化物(当業者には「フルオロメタレート(fluorometallate)」と呼ばれるときがある)は、好ましくは、以下の一般的な実験式(I):H(I)(式中、p、q、rおよびsのそれぞれは、負ではない整数を表し;Tは、Ti、Zr、Hf、Sn、Al、GeおよびBから成る群より選択される化学的原子記号を表し;rは少なくとも1であり;qは少なくとも1であり;および、TがBを表さない限り、(r+s)は少なくとも6である。)を有する分子を有する物質である。1個以上のH原子は、アンモニウム、金属、アルカリ土類金属またはアルカリ金属陽イオンなどの適切なカチオンによって置き換えられていてもよい(例えば、錯体フッ化物は、そのような塩が水溶性または水分散性であるという条件で、塩の状態でもよい)。
【0051】
適切な錯体フッ化物の例示的な例としては、限定することなく、HTiF、HZrF、HHfF、HGeF、HSnF、HAlFおよびHBF、およびそれらの塩(完全および部分的に中和された)および混合物が挙げられる。適切な錯体フッ化物塩の例としては、SrZrF、MgZrF、NaZrFおよびLiZrF、SrTiF、MgTiF、NaTiFおよびLiTiFが挙げられる。陽極酸化溶液における錯体フッ化物および錯体酸化フッ化物の総濃度は、好ましくは、少なくとも0.005Mである。一般に、当然のことながら任意の溶解性の制約を除いては、好ましい濃度上限はない。陽極酸化溶液における錯体フッ化物および錯体酸化フッ化物の総濃度は、少なくとも0.005M、少なくとも0.010M、少なくとも0.020M、少なくとも0.030M、少なくとも0.040M、少なくとも0.050M、少なくとも0.060M、少なくとも0.070M、少なくとも0.080M、少なくとも0.090M、少なくとも0.10M、少なくとも0.20M、少なくとも0.30M、少なくとも0.40M、少なくとも0.50M、少なくとも0.60Mであり、2.0M以下、1.5M以下、1.0M以下、0.80M以下であることが望ましい。
【0052】
特に、より高いpHにおいて錯体フッ化物または酸化フッ化物の溶解性を向上するために、フッ素を含有するが、Ti、Zr、Hf、Sn、Al、GeまたはBのいずれの元素も含有しない無機酸(またはその塩)を電解質組成物中に含むことが望ましいことがある。好ましくは、フッ化水素アンモニウムなどのフッ化水素酸またはフッ化水素酸の塩を無機酸として使用する。無機酸は、錯体フッ化物または酸化フッ化物の早過ぎる重合または縮合を防ぐか遅らせ、そうでなければ(特に、Tに対するフッ素の原子比が6である錯体フッ化物の場合において)、遅い自発的な分解を受けやすく、水不溶性の酸化物を形成することがあると考えられる。ヘキサフルオロチタン酸およびヘキサフルオロジルコニウム酸の特定の商業的な供給源は無機酸またはその塩を伴って供給されるが、本技術の特定の実施形態においては、更に多くの無機酸または無機塩を添加することが望ましい。
【0053】
また、キレート剤、特に、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、N−ヒドロキシエチル−エチレンジアミン三酢酸またはジエチレン−トリアミン五酢酸またはそれらの塩などの1分子につき2個以上のカルボン酸基を含有するキレート剤も、陽極酸化溶液に含有され得る。他の第IV族化合物、例えば、Tiおよび/またはZrシュウ酸塩および/または酢酸塩、ならびに、アセチルアセトネート、グルコヘプタネートなどの他の安定化配位子、および、陽極酸化溶液の陽極堆積および通常の浴の寿命を妨げず、堆積条件下の浴において適切な安定性を有する当該技術で既知の他のキレート剤を使用できる。特に、通電された陽極酸化溶液において分解するか、好ましくなく重合するかのいずれかである有機材料を避ける必要がある。
【0054】
迅速なコーティングの形成は、一般に、パルスDCを使用して、100〜400ボルト、好ましくは、150〜350ボルトにおける平均電圧で観察される。平均電圧は、少なくとも毎分1ミクロン厚、好ましくは、3分で少なくとも3〜8ミクロンの速度で本技術のコーティングを生成するのに充分な大きさであることが望ましい。実施形態によっては、平均電圧は、300ボルト未満、200ボルト未満、150ボルト未満、140ボルト未満、130ボルト未満、125ボルト未満、120ボルト未満、115ボルト未満、110ボルト未満、100ボルト未満、90ボルト未満であることが望ましい。望ましくは、パルス直流に対する最小平均電圧は、少なくとも50ボルト、少なくとも60ボルト、少なくとも70ボルト、少なくとも80ボルトである。選択された厚さのコーティングを堆積するのに必要な時間は、陽極酸化浴の濃度および使用される電流の量、アンペア/平方フィートに反比例する。例示的な例によっては、300アンペア/平方フィート〜2000アンペア/平方フィートに増加することにより、5〜30g/lの範囲のHTiFおよび1〜10g/Lの範囲のHPOの濃度において速ければ10〜15秒で、アルミニウム表面を有する熱交換器部品を8ミクロン厚の金属(TiまたはZr)酸化物層でコートできる。所与の時間で最適な部分をコーティングするための正確な濃度および正確な量の決定は、日常的な実験によって、本明細書における教示に基づき当業者が行える。
【0055】
本技術の金属酸化物セラミックコーティングは、典型的には、きめ細かく、望ましくは少なくとも1ミクロン厚であり、1〜20ミクロン、1〜10ミクロンの範囲である。金属酸化物セラミックコーティングのモルフォロジーはアモルファスであっても、結晶領域を含有していてもよい。結晶構造が存在しているか存在していないかは、セラミックコーティングの性能に影響しない。実施形態によっては、セラミックコーティングは、約1ミクロンから約20ミクロン、または、約1ミクロンから約15ミクロン、または、約1ミクロンから約10ミクロン、または、約1ミクロンから約5ミクロン、または、約2ミクロンから約20ミクロン、または、約5ミクロンから約20ミクロン、または、約7ミクロンから約20ミクロン、または、約10ミクロンから約20ミクロンの範囲の厚みを有してよい。1ミクロンより薄いコーティングでは物品の所望の被覆が提供されないことがあるが、より薄いまたはより厚いコーティングを塗工してもよい。任意の特定の理論に束縛されることなく、特に断熱酸化物フィルムについては、コーティング厚が増加するにしたがって、フィルムの堆積速度は、最終的に、漸近的にゼロに近づく速度まで低下すると考えられる。本技術のコーティングの付加質量は、およそ5〜200g/m以上の範囲であり、コーティング厚とコーティング組成との関数である。コーティングの付加質量は、少なくとも5g/m、少なくとも10g/m、少なくとも11g/m、少なくとも12g/m、少なくとも14g/m、少なくとも16g/m、少なくとも18g/m、少なくとも20g/m、少なくとも25g/m、少なくとも30g/m、少なくとも35g/m、少なくとも40g/m、少なくとも45g/m、少なくとも50g/mであることが望ましい。予測に反して更なる堆積に対するセラミックコーティングの断熱性に関わらず、セラミック酸化物コーティングの断熱特徴は、同様の非コートの熱交換器と比較して、実質的に、コートされた熱交換器の熱交換を低下させない。単一の理論に束縛されることなく、出願者らは、セラミック酸化物コーティングによって提供される増加された表面積がセラミック材料の任意の断熱特性を補償すると考えている。
【0056】
本技術の実施形態によっては、使用される陽極酸化溶液は、水、水溶性および/または水分散性のリンオキシ酸または塩、例えば、リン酸塩アニオンを含有する酸または塩、および、HTiFおよびHZrFの少なくとも一方を含む。好ましくは、陽極酸化溶液のpHは中性〜酸性(より好ましくは、6.5〜2の範囲のpH)である。
【0057】
驚くべきことに、陽極酸化溶液においてリン含有酸および/または塩と錯体フッ化物とを組み合わせることによって、異なるタイプの陽極堆積された金属酸化物コーティングが生成されることが見出された。堆積される金属酸化物コーティングは、主に、陽極の任意の溶解に先立って陽極酸化溶液中に存在するアニオンの酸化物を含む。即ち、このプロセスの結果、陽極体から引き出されない物質の堆積からの結果で主に生じるコーティングが生じ、結果として陽極酸化される熱交換器部品の基体への変化が少なくなる。また、リン含有電解質より堆積される金属酸化物コーティング中にも、通常、金属リン酸塩の形式でリンが存在し、例えば、本発明によるチタニアコーティングにおいて、ある程度のリン酸チタンが見出される。実施形態によっては、陽極酸化溶液は、少なくとも1種類の錯体フッ化物、例えば、HTiFおよび/またはHZrFを、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.4重量%、少なくとも0.6重量%、少なくとも0.8重量%、少なくとも1.0重量%、少なくとも1.2重量%、少なくとも1.3重量%、少なくとも1.4重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2.0重量%、少なくとも2.5重量%、少なくとも3.0重量%、少なくとも3.5重量%、および、10重量%以下、9.5重量%以下、9.0重量%以下、8.5重量%以下、8.0重量%以下、7.5重量%以下、7.0重量%以下、6.5重量%以下、6.0重量%以下、5.5重量%以下、5.0重量%以下、4.5重量%以下、4.0重量%以下の量で含有することが望ましい。少なくとも1種類の錯体フッ化物を、任意の適切な供給源、例えば、当該技術で既知の種々の水溶液より供給できる。HTiFについては、商業的に入手可能な溶液は、典型的には、50〜60重量%の濃度範囲であり、一方、HZrFについては、そのような溶液は、20〜50重量%の間の濃度範囲である。
【0058】
リンオキシ塩は、任意の適切な供給源、例えば、オルトリン酸、ピロリン酸、トリリン酸、メタリン酸、ポリリン酸、および、リン酸の他の組み合わされた形態、ならびに、亜リン酸および次亜リン酸より供給でき、部分的または完全に中和された形態(例えば、対イオン(1種類または多種類)がアルカリ金属カチオン、アンモニウムまたはリンオキシ塩に水溶性を付与する他のそのような化学種である塩として)で、陽極酸化溶液中に存在できる。また、有機成分が陽極堆積を妨げないという条件で、ホスホン酸塩などの有機リン酸塩なども使用してよい(例えば、種々のホスホン酸塩が、Rhodia社およびSolutia社より入手可能である)。
【0059】
酸の状態でリンオキシ塩を使用するのが特に好ましい。陽極酸化溶液中のリン濃度は、少なくとも0.01Mである。陽極酸化溶液中のリン濃度は、少なくとも0.01M、少なくとも0.015M、少なくとも0.02M、少なくとも0.03M、少なくとも0.04M、少なくとも0.05M、少なくとも0.07M、少なくとも0.09M、少なくとも0.10M、少なくとも0.12M、少なくとも0.14M、少なくとも0.16Mであることが好ましい。陽極酸化溶液のpHが酸性(pH<7)である実施形態においては、リン濃度は、0.2M以上、0.3M以上、好ましくは、1.0M以下、0.9M以下、0.8M以下、0.7M以下、0.6M以下である。pHが中性〜塩基性である実施形態においては、陽極酸化溶液中のリンの濃度は、0.40M以下、0.30M以下、0.25M以下、0.20M以下である。
【0060】
実施形態によっては、熱交換器部品のアルミニウムまたはアルミニウム合金を含有する表面上に、この実施形態によるセラミックコーティングを形成するのに使用される陽極酸化溶液の例示的な例は、以下の成分:HTiF(0.05〜10重量%)、HPO(0.1〜0.6重量%)、100%にバランスする水を使用して調製できる。アンモニア、アミンまたは他の塩基を使用して、pHを2〜6の範囲に調整する。
【0061】
上記の陽極酸化溶液で、50〜600ボルト以下の平均電圧を有するパルスDCを使用して、陽極酸化の間に継続する「プラズマ」(可視光発光放電)の生成が一般に得られる。実施形態によっては、平均パルス電圧は100〜500ボルトの範囲でよい。また、300〜600ボルトの範囲の平均電圧を有する非パルス直流、所謂「直線DC」または交流も使用できる。
【0062】
任意の特定の理論に束縛されることなく、そのような化学種の存在下において、低電圧のパルス電流を使用するアルミニウム含有金属の陽極酸化によって、金属/半金属酸化物セラミック(O、OHおよび/またはF配位子を含有する部分加水分解されたガラスを含む)または軽金属/非金属化合物を含む表面コーティングが形成すると考えられる。陽極酸化中に発生する低電圧プラズマまたは火花放電はアニオン種を不安定にし、それが原因となって、そのような種の上の特定の配位子または置換基が加水分解されるか、別では配位子交換として既知の通り、Oおよび/またはOHによって置換されるか、または、金属−有機結合が金属−Oまたは金属−OH結合によって置き換えられると考えられる。そのような加水分解および配位子交換反応によって、化学種の水溶性または水分散性が低くなり、それにより、金属酸化物セラミックコーティングの形成が促進される。
【0063】
本発明のある実施形態においては、陽極酸化溶液は本質的に(より好ましくは、完全に)アンモニア、クロム、過マンガン酸亜鉛、ホウ酸塩、硫酸塩、遊離フッ化物および/または遊離塩化物を含有しない。
【0064】
本発明に従って製造される陽極酸化コーティングの色は、典型的には、コーティング厚およびコーティングにおけるTiおよび/またはZrの相対量に応じて、ブルーグレーおよびライトグレーからチャコールグレーまでの範囲である。金属酸化物セラミックコーティングは、1〜20ミクロンのコーティング厚において高い隠蔽力を示し、自動車用熱交換器の製造分野において既知の種々の試験を使用して、優れた耐腐食性を示す。表1に、非クロム酸塩化成プロセス評価を使用する比較試料を、本技術の方法によりプラズマ電気化学的にコートされ、結果として、酸化チタンを主に含むセラミックの3ミクロン厚のコーティング層を生じた熱交換器部品に対して示す。図1に示すチタンコートされた基体はライトグレーの色であったが、良好な隠蔽力を提供した。金属酸化物セラミックコーティングにわたって分布する複数の細孔を、図1において容易に観察できる。実施形態によっては、複数の細孔を、金属酸化物セラミックコーティングの表面に沿って形成できる。
【0065】
<臭気中和コーティング>
本技術は、耐腐食性および臭気改善の両者に関する特性を有するセラミックコーティングを提供する熱交換器部品を提供する。本技術は、先行技術のクロム酸塩および非クロム酸塩化成コーティング法と比較して幾つかの利点、例えば、プロセス廃棄物流の低減(排出される酸、有機樹脂、溶媒および金属イオンの低減が挙げられる。)を備えている。本技術のプラズマ電気化学的堆積コーティング法は、先行技術の表面処理法において使用される通りの苛性酸、VOC、および、有機および親水性樹脂で熱交換器部品をコートする必要を未然に無くし、プロセス廃棄物、環境的損害および資源の実質的に低減する。本技術の熱交換器部品は、金属酸化物セラミックコーティングの表面上にコートされた1種類以上の臭気中和剤を含む臭気改善コーティングを含む。臭気中和剤としては、臭気捕捉剤、芳香剤および抗菌剤を挙げることができる。それぞれの臭気中和剤の臭気改善コーティング中における濃度は、0.0001重量%〜約40重量%の範囲とできる。実施形態によっては、約0.1〜約1mg/m以上、約5〜約10mg/m以上、約10〜約50mg/m以上、約100〜約300mg/m以上、約300〜約3,000mg/m以上の範囲の量において、本方法に従って形成された金属酸化物コーティング上に、臭気中和剤をコートできる。また、実施形態によっては、臭気改善コーティングは、1種類以上のキャリア、賦形剤、コーティング促進剤、臭気改善コーティング技術の分野で既知のものなども含むことができる。臭気中和剤と相溶性があり、臭気中和剤の香りまたは活性を過度にはマスクせず、金属酸化物セラミックコーティングの表面に臭気中和剤が保持されることを助ける1種類以上のキャリアを、臭気改善コーティングは含有できる。
【0066】
実施形態によっては、同一でも異なっていてもよい臭気中和剤を含む1つ以上の層を、臭気改善コーティングは含むことができる。臭気中和剤の化学的適合性に応じて、親水性または疎水性の何れかのキャリアと臭気中和剤を配合および塗工できる。臭気中和剤が親油性の場合、塗工に先立ち、親油性臭気中和剤を可溶化するために有機溶媒または他の疎水性キャリアを使用できる。
【0067】
<臭気捕捉剤>
プラズマ電気化学的堆積を使用して熱交換器上に堆積される金属酸化物セラミックコーティングを覆ってコートするために配合される1種類以上の臭気捕捉剤を、臭気中和剤は含むことができる。用語「臭気捕捉剤」とは、臭気発生化合物(アミン、硫化物、チオールおよび揮発性有機化合物が挙げられる。)に結合できる任意の分子を言う。
【0068】
そのような1つのクラスで本技術において利用が見出される臭気捕捉剤としては、シクロデキストリンが挙げられる。シクロデキストリンはトロイダル構造を有し、その内側は疎水性である。このトロイダル構造の外側は親水性であり、それにより、シクロデキストリンは水溶性となる。疎水性の臭気発生化合物はシクロデキストリン・トロイドの疎水的な内側に進入し、ファン・デル・ワールス力の相互作用、水素結合の効果、およびシクロデキストリンの内側および臭気発生分子に共通の疎水性とによって、シクロデキストリン構造と安定な錯体を形成することが見出された。臭気発生分子と安定な錯体を形成することにより、シクロデキストリンは臭気発生分子を閉じ込め、それにより、臭気発生分子によって発生する臭気が低減される。
【0069】
本明細書において使用する場合、用語「シクロデキストリン」としては、任意の既知のシクロデキストリン、例えば、6〜12個のグルコース単位を含有する無置換のシクロデキストリン、特に、α、βおよびγ−シクロデキストリン、および/または、それらの誘導体、および/または、それらの混合物が挙げられる。α−シクロデキストリンはドーナツ形状の環の中に配置された6個のグルコース単位から成り、β−シクロデキストリンは7個のグルコース単位から成り、γ−シクロデキストリンは8個のグルコース単位から成る。グルコース単位の特定のカップリングおよびコンホメーションによって、シクロデキストリンに、特定の容量の中空な内部を有し剛直で円錐状の分子構造が与えられる。それぞれの内部キャビティの「ライニング」が水素原子およびグリコシドを架橋する酸素原子によって形成され、従って、この表面は極めて疎水性である。当該キャビティの独特の形状および物理化学的特性のために、シクロデキストリン分子は、キャビティ内に適合できる有機分子または有機分子の一部分を吸収(有機分子と包接複合体を形成)できる。多くの臭気分子(多くの悪臭分子および香料分子が挙げられる。)がキャビティに適合できる。従って、シクロデキストリン、特に異なる大きさのキャビティを有するシクロデキストリンの混合物は、広いスペクトルの有機臭気材料(該材料は、反応性の官能基を含有していても含有していなくてもよい。)によって生じる臭気を制御するために使用できる。シクロデキストリンおよび臭気分子の間の錯体形成は、水の存在下で迅速に起きる。しかしながら、また、錯体形成の程度は吸収される分子の極性にも依存する。水溶液中では、強い親水性の分子(高度に水溶性のもの)は、吸収されるとしても、部分的に吸収されるに過ぎない。従って、非常に低分子量の有機アミンおよび酸によっては、湿った織物上に低レベルで存在する場合、シクロデキストリンは、それらと効果的に錯体を形成しない。しかしながら、水を除去した場合、例えば、織物を乾かした場合では、非常に低分子量の有機アミンおよび酸によっては、より高い親和性を有し、より容易にシクロデキストリンと錯体を形成するようになる。「包接複合体」の形成に適する大きさを有する有機分子の全てまたは一部分によって、これらのキャビティを充填できる。α、βおよびγ−シクロデキストリンは、とりわけ、American Maize−Products社(Amaizo社)、Hammond市、インディアナ州より入手できる。
【0070】
シクロデキストリン誘導体は、米国特許第3,426,011号明細書、Parmerterら、1969年2月4日発行;米国特許第3,453,257号明細書、米国特許第3,453,258号明細書、米国特許第3,453,259号明細書および米国特許第3,453,260号明細書、全てParmerterら名で、また、全て1969年7月1日発行;米国特許第3,459,731号明細書、Grameraら、1969年8月5日発行;米国特許第3,553,191号明細書、Parmerterら、1971年1月5日発行;米国特許第3,565,887号明細書、Parmerterら、1971年2月23日発行;米国特許第4,535,152号明細書、Szejtliら、1985年8月13日発行;米国特許第4,616,008号明細書、Hiraiら、1986年10月7日発行;米国特許第4,638,058号明細書、Brandtら、1987年1月20日発行;米国特許第4,746,734号明細書、Tsuchiyamaら、1988年5月24日発行;および、米国特許第4,678,598号明細書、Oginoら、1987年7月7日発行に記載されており、前記特許は引用によって本明細書に組み込まれる。臭気捕捉剤としての使用に適するシクロデキストリン誘導体の例としては、異なる置換度(D.S.:degrees of substitution)のメチル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリンおよびヒドロキシプロプル−β−シクロデキストリン(Amaizo社;Wacker Chemicals(米国)社;および、Aldrich Chemical社より入手可能である。)を挙げることができる。また、水溶性誘導体も非常に望ましい。
【0071】
また、例えば、多官能剤を使用してオリゴマー、ポリマーなどを形成し、個々のシクロデキストリンを共に連結することもできる。そのような材料の例は、Amaizo社およびAldrich Chemical社(β−シクロデキストリン/エピクロルヒドリンのコポリマー)より商業的に入手可能である。
【0072】
臭気捕捉剤としては、シクロデキストリンの特定の配合物、例えば、Febreze(商標)を挙げることができる。また、Febreze(商標)は、シクロデキストリンのレベルが組成物の約3重量%〜約20重量%、より好ましくは約5重量%〜約10重量%である濃縮組成物にも関し、該組成物を希釈して、「使用条件」として以上で与えられる通り、例えば、希釈された組成物の約0.1重量%〜約5重量%のシクロデキストリンの使用濃度を有する組成物を形成する。
【0073】
臭気捕捉剤がセラミックコーティングの多孔性表面に塗工されている場合、シクロデキストリンが種々の臭気分子を吸収できるために、本技術の臭気捕捉剤溶液におけるシクロデキストリン中のキャビティは、溶液中にある際、本質的に充填されていないまま(シクロデキストリンが錯体を形成していないまま)でなければならない。誘導体化されていない(通常の)β−シクロデキストリンは、室温において、約1.85%(100グラムの水中に約1.85グラム)の溶解度の限界までのレベルで存在できる。
【0074】
実施形態によっては、Febreze(商標)を含む臭気捕捉剤は、α−シクロデキストリンおよび/またはその誘導体、γ−シクロデキストリンおよび/またはその誘導体、誘導体化されたβ−シクロデキストリン、および/または、それらの混合物などの高水溶性なシクロデキストリンを有する。シクロデキストリンの誘導体は、主に、OH基の幾つかがOR基に変換された分子から成る。シクロデキストリン誘導体としては、例えば、メチル化シクロデキストリンおよびエチル化シクロデキストリンなどの短鎖アルキル基(ただし、Rはメチルまたはエチル基である。)を有するもの;ヒドロキシプロピルシクロデキストリンおよび/またはヒドロキシエチルシクロデキストリンなどのヒドロキシアルキル置換基(ただし、Rは、−CH−CH(OH)−CHまたは−CHCH−OH基である。)を有するもの;マルトースが結合したシクロデキストリンなどの分枝状シクロデキストリン;2−ヒドロキシ−3−(ジメチルアミノ)プロピルエーテル(ただし、RはCH−CH(OH)−CH−N(CHで、低いpHにおいてカチオンである。)を含有するものなどのカチオン性シクロデキストリン;4級アンモニウム、例えば、2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピルエーテルクロリド基(ただし、RはCH−CH(OH)−CH−N(CHClである。);カルボキシメチルシクロデキストリン、シクロデキストリンサルフェートおよびシクロデキストリンスクシニレートなどのアニオン性シクロデキストリン;カルボキシメチル/4級アンモニウムシクロデキストリンなどの両性シクロデキストリン;少なくとも1個のグルコピラノース単位が3−6−無水−シクロマルト構造を有するシクロデキストリン、例えば、モノ−3−6−無水シクロデキストリンが挙げられる。
【0075】
高い水溶性のシクロデキストリンとは、室温において100mLの水中で少なくとも約10g、好ましくは100mLの水中で少なくとも約20g、より好ましくは室温において100mLの水中で少なくとも約25gの水溶性を有するものである。可溶化された非錯体シクロデキストリンを入手できることが、効果的で効率的な臭気の制御性能のために好ましい。
【0076】
本明細書における使用に適切な水溶性シクロデキストリン誘導体の非限定的な例としては、ヒドロキシプロピルα−シクロデキストリン、メチル化α−シクロデキストリン、メチル化β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチルβ−シクロデキストリンおよびヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンが挙げられる。ヒドロキシアルキルシクロデキストリン誘導体は、好ましくは約1〜約14、より好ましくは約1.5〜約7の置換度を有し、ただし、シクロデキストリン当りのOR基の総数が置換度として定義される。メチル化シクロデキストリン誘導体は、典型的には、約1〜約18、好ましくは約3〜約16の置換度を有する。既知のメチル化β−シクロデキストリンは、一般にDIMEBとして既知のヘプタキス−2,6−ジ−O−メチル−β−シクロデキストリンであり、ただし、それぞれのグルコース単位は、約14の置換度で約2個のメチル基を有する。好ましく、より商業的に入手可能なメチル化β−シクロデキストリンは、通常、約12.6の異なる置換度を有し、一般にRAMEBとして既知の、ランダムにメチル化されたβ−シクロデキストリンである。DIMEBは、好ましい界面活性剤の表面活性にRAMEBよりも大きく影響するので、RAMEBの方がDIMEBよりも好ましい。好ましいシクロデキストリンは、例えば、米国Cerestar社およびWacker Chemicals(米国)社より入手可能である。
【0077】
実施形態によっては、臭気捕捉剤としてシクロデキストリンの混合物を挙げることができる。そのような混合物は、より広い範囲の分子の大きさを有する更に広い範囲の臭気分子と錯体を形成することによって、より幅広く臭気を吸収する。好ましくは、シクロデキストリンの少なくとも一部分は、α−シクロデキストリンおよびその誘導体、γ−シクロデキストリンおよびその誘導体、および/または、誘導体化されたβ−シクロデキストリン、より好ましくは、α−シクロデキストリンまたはα−シクロデキストリン誘導体と、誘導体化されたβ−シクロデキストリンとの混合物、さらに好ましくは、誘導体化されたα−シクロデキストリンと誘導体化されたβ−シクロデキストリンとの混合物、最も好ましくは、ヒドロキシプロピルα−シクロデキストリンとヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンとの混合物、および/または、メチル化α−シクロデキストリンとメチル化β−シクロデキストリンとの混合物である。
【0078】
臭気捕捉剤としての利用が見出される他の臭気捕捉剤としては、α、β不飽和モノカルボン酸のエステル、シクロヘキシルアルコールおよびエステル誘導体、フマル酸エステル、シクロヘキシルアルキルケトン、酢酸およびプロピオン酸、4−シクロヘキシル−4−メチル−2−ペンタノン、Belle−Aire Fragrance社製Ordenone(商標)、米国Flavor and Fragrance社製Odor Trap(商標)、Innovative Chemical Technology社製Flexisorb OD−100、Prentiss社製Meelium(商標)、Goldschmidt Chemical社製Tego Sorb(商標)Conc.50、ウンデシレン酸およびその誘導体、ゼオライトなどを挙げることができる。
【0079】
また、臭気捕捉剤としては単純な金属炭酸塩を挙げることもでき、また、金属炭酸水素塩も水溶液の塗工および乾燥によるコーティングによって吸収できる。また、活性炭(水性または非水性)の分散液を臭気捕捉剤として表面上で乾燥することもでき(および、充分に小さい炭素分散粒子が選択されている場合、コーティングの細孔の内側に塗工できる)。
【0080】
<芳香剤>
臭気中和剤としては、当該技術において既知の1種類以上の芳香剤または香料剤を挙げることができる。任意の芳香剤またはコーティング組成物における芳香剤の量の選択は、当業者にとっては最小限の試験実験で容易に決定できる官能性、機能性および審美的な考慮に基づく。本技術において有用な芳香剤としては、高揮発性および中揮発性の芳香剤、より好ましくは、高揮発性の低沸点芳香剤を挙げることができる。
【0081】
高揮発性の低沸点芳香剤は、典型的には、約250℃以下の沸点を有する。中揮発性の芳香剤は、約250℃〜約300℃の沸点を有するものである。以降で議論する通りの多くの芳香剤は、それらの臭気特性、および、沸点および分子量などのそれらの物理的および化学的特性と共に、「Perfume and Flavor Chemicals(Aroma Chemicals)」Steffen Arctander自費出版、1969年において与えられ、引用によって本明細書に組み込まれる。
【0082】
高揮発性の低沸点芳香剤の非限定的な例としては、アネトール、ベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルホルメート、イソ−ボルニルアセテート、カンフェン、シス−シトラール(ネラール)、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルアセテート、パラ−シメン、デカナール、ジヒドロリナロール、ジヒドロミルセノール、ジメチルフェニルカルビノール、ユーカリプトール、ゲラニアール、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、ゲラニルニトリル、シス−3−ヘキセニルアセテート、ヒドロキシシトロネラール、d−リモネン、リナロール、リナロールオキシド、リナリルアセテート、リナリルプロピオネート、メチルアントラニレート、α−メチルイオノン、メチルノニルアセトアルデヒド、メチルフェニルカルビニルアセテート、左旋性メチルアセテート、メントン、イソ−メントン、ミルセン、ミルセニルアセテート、ミルセノール、ネロール、ネリルアセテート、ノニルアセテート、フェニルエチルアルコール、α−ピネン、β−ピネン、γ−テルピネン、α−テルピネオール、β−テルピネオール、テルピニルアセテートおよびバーテネックス(パラ−三級−ブチル)シクロヘキシルアセテートが挙げられる。また、幾つかの天然油類も、高いパーセンテージの高揮発性芳香剤を含有する。例えば、ラバンジンは、主要な成分として、リナロール、リナリルアセテート、ゲラニオールおよびシトロネロールを含有する。レモン油およびオレンジテルペン類の両者は、約95%のd−リモネンを含有する。
【0083】
中揮発性の芳香剤成分の非限定的な例としては、アミルシンナミックアルデヒド、イソ−アミルサリチレート、β−カリオフィレン、セドレン、桂皮アルコール、クマリン、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、エチルバニリン、オイゲノール、イソ−オイゲノール、フロールアセテート、ヘリオトロピン、3−シス−ヘキセニルサリチレート、ヘキシルサリチレート、リリアール(パラ−三級ブチル−α−メチルヒドロ桂皮酸アルデヒド)、γ−メチルイオノン、ネロリドール、パチュリアルコール、フェニルヘキサノール、β−セリネン、トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート、トリエチルシトレート、バニリンおよびベラトルムアルデヒドが挙げられる。シダーウッドテルペン類は、主に、α−セドレン、β−セドレンおよび他のC1524セスキテルペン類から構成されている。
【0084】
本技術において利用される他の既知の芳香剤としては、1種類以上のアカレアTBHQ、アリルアミルグリコレート、α−テルピネオール、アンブレットリド、アミルシンナミックアルデヒド、アミルフェニルアセテート、アミルサリチレート、アンドラン、アネトール21/22、アネトールUSP、アフェルメート、アポパッチョン、Bacdanol(登録商標)、ベンジルブチレート、ベンジルプロピオネート、ベンジルサリチレート、ベルガマル、β−イオノンエポキシド、β−ナフチルイソ−ブチルエーテル、ビシクロノナラクトン、Bornafix(登録商標)、カントキサール、Cashmeran(登録商標)、Cassiffix(登録商標)、セドラフィックス、Cedramber(登録商標)、セドリルアセテート、セレストリド、シンナマルバ、シトラルジメチルアセタール、シトロナルバ、シトロネロール700JAX、シトロネロール750、シトロネロール950、シトロネロールクール、シトロネリルアセテートA、シトロネリルアセテートクール、シトロネリルアセテートピュア、シトロネリルホルメート、クラリセット、クロナール、コニフェラン、コルテクスアルデヒド50ペオモサ、シクラブテ、Cyclacet(登録商標)、Cyclaprop(登録商標)、シクレモンA、シクロブタネート、Cyclogalbaniff(商標)、シクロヘキシルエチルアセテート、シクロヘキシルエチルアルコール、ダマスコル4、デシルメチルエーテル、δダマスコン、ジヒドロシクラセット、ジヒドロフロラレート、ジヒドロフロラロール、ジヒドロミルセニルアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピニルアセテート、ジヒドロテルピニルアセテートDSA、ジメチルベンジルカルビノール、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルブチレート、ジメチルシクロルモール、ジメチルオクタノールPQ、ジメチルフェニルエチルカルビニルアセテート、ジミルセトール、ジオラ、ジペンテン5100、再結晶化Dulcinyl(登録商標)、エチルオルトメトキシベンゾエート、エチルフェニルグリシデート、フレーラモン、フレーラニル、フローラルスーパー、フロラレート、フロラロール、フロラロゾン、フロリフォール、フレストン、フルクトン、Galaxolide(登録商標)50BB、Galaxolide(登録商標)50DEP、Galaxolide(登録商標)50DPG、Galaxolide(登録商標)50IPM、ガルバナムクール、ガルバスコーン、ガルバスコーンハイアルファ、ゲルソン、ゲラルデヒド、ゲラニオール5020、ゲラニオール7030、ゲラニオール980ピュア、ゲラニオールクール、ゲラニルアセテートA、ゲラニルアセテートエクストラ、ゲラニルアセテートピュア、グリサルバ、グアイルアセテート、Helional(商標)、ヘルバック、ヘキサデカノリド、ヘキサロン、ヘキセニルサリチレート、cis−3,ヘキシルアセテート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘキシルサリチレート、ヒヤシンスボディ、ヒヤシンスボディNo.3、ハイドラトロピックアルデヒドジメチルアセタール、ヒドロキシオール、ハイポ−レム、インドラローム、インドレン50、イントレレベンアルデヒド、イントレレベンアルデヒドスペシャル、イオノン100%、イオノンアルファ、イオノンアルファベータレギュラー、イオノンベータ、イソアミルブチレート、イソアミルサリチレート、イソボルニルプロピオネート、イソブチルフェニルアセテート、イソブチルキノリン、イソシクレモンE、イソシクロシトラル、イソシクロゲラニオール、Iso E Super(登録商標)、イソプロクセン、ジャスマル、ジャスメリア、Jessemal(登録商標)、Kharismal(登録商標)、クフシニル、Koavone(登録商標)、Kohinool(登録商標)、ラブダナックス、ラボナックス、レムシン、Liffarome(商標)、Lindenol(商標)、リモレン、Lyral(登録商標)、リレイム、リレイムスーパー、マリティマ、Meijiff(商標)、メラフレール、メチルアントラニレート、メチルセドリルケトンチャイニーズ、メチルシンナミックアルデヒドアルファ、メチルイオノンガンマA、メチルイオノンガンマクール、メチルイオノンガンマエクストラ、メチルイオノンガンマピュア、メチルイオノンN、メチルラベンダーケトン、Montaverdi(登録商標)、ミュゲシア、ミュゲアルデヒド50、ミュゲアルデヒド50BB、ムスクZ4、ミラックアルデヒド、ミルセノールスーパー、ミルセニルアセテート、ネオプロキセン、ネロール800、ネロール850、ネロール900、ネリルアセテートJAX、New Car Smell芳香剤(例えば、コーティング海狸香およびカバノキタール油として)、オシメン、オシメニルアセテート、オクタセタール、オレンジフラワーエーテル、オリボン、Orriniff(商標)25%IPM、オキサスピラン、オゾフレール、Pamplefleur(登録商標)、ペオモサ、Phenafleur(登録商標)、Phenoxanol(登録商標)、フェノキシエチルイソブチレート、フェノキシエチルプロピオネート、フェニルエチルアセテート、フェニルエチルベンゾエート、フェニルエチルホルメート、フェニルエチルイソブチレート、フェニルエチルフェニルアセテート、フェニルエチルサリチレート、ピコニア、プレシクレモンB、プレニルアセテート、プロフローラ、シュードリナリルアセテート、レセダボディ、ロザルバ、ロザムスク、ローズィット、ローズマーレル、サリシナルバ、サンジノール、Santaliff(商標)、スピロデカン、Strawberiff(登録商標)、スチルアリルプロピオネート、シベルタール、テルピネオール900、テルピネオールアルファJAX、テルピネオールエクストラ、テルピノレン20、テルピノレン90、テルピノレン90PQ、テルピニルアセテートエキストラ、テルピニルアセテートJAX、テトラヒドロMuguol(登録商標)、テトラヒドロMuguol(登録商標)クール、テトラヒドロミルセノール、テトラメラン、トバカロール、Triplal(登録商標)、Trisamber(登録商標)、Unipine(登録商標)60、Unipine(登録商標)85、Vandor(登録商標)B、バノリス、ベルドール、Verdox(商標)、Verdox(商標)HC、ベルデュラルBエクストラ、ベルデュラルエクストラ、Vertenex(登録商標)、Vertenex(登録商標)HC、Vertofix(登録商標)クール、ベルトリフ、ベルトリフイソ、ビゴフロール、ビオリフ、ビバルディエ、ゼノリド、4,5−ジメチル−2−エチル−3−チアゾリン、6−メチルクマリン、アリルカプロエート、アサフェティダ油イングリッシュディスティルドSAS、黒コショウ油、ブッコノキサルファーフラクション(Buchu Sulfur Fraction)、酪酸、カルダモン油イングリッシュディスティルドSAS、カシア油、再蒸留カシア油、シナモンバーク油、精白シナモンリーフ油、クローブバッド油イングリッシュディスティルドSAS、再蒸留クローブリーフ油、Cocal(商標)、蒸留ココア(天然品)、ココアエッセンスダーク、ココアエッセンスホワイト、コーヒーエンハンサーベース、コーヒーエンハンサーW/S、コーヒー抽出物、コーヒー抽出物イタリアンローストM3881天然品、コーヒー抽出物Nce Iiim天然品、コーヒー抽出物Nce Iv天然品、コリアンダー油、シクロジタルファロール−705、δ−デカラクトン、ジメチルスルフィド、ジチオン865、エチル−2−メチルブチレート、エチル−3−ヒドロキシブチレート、エチルブチレート、エチルイソブチレート、エチルイソバレレート、エチルオキサノエート369、ファルネセン1%PG/ETOH、ファーフロール302、γ−デカラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ドデカラクトン、ジンジャー油チャイニーズ、ジンジャー油ナイジェリアンイングリッシュディスティルドSAS、グレープフルーツキー、グリル香味剤O/S、グリル香味剤W/D、ヘプタン−2−オン(天然品)、ヘキセン−3−オン−4、ヘキシルアセテート、ホモシクロシトラルベータ、蒸留蜂蜜天然品、イオノンベータ、イソアミルイソバレレート、イソブチルカプロエート、イソブチルフリルプロピオネート、イソフラガロン−030、イソフラガロン1%ETOH(商標)、イソ吉草酸、ジュニパーベリー油イングリッシュディスティルドSAS、ケトン混合物、Kumarone(商標)、レモンレスレモンキー、ライム油テルペンレス、リナロオール、リナリルアセテート(天然品)、Mangone5%ETOH(商標)、メチオナール、メチル酪酸(2)、メチルケトン類(天然品)、メチルオキシシクロスルフィド719、再蒸留ミント油ヤキマタイプ、ミントタイプ油特別留分、マッシュルーム抽出物、天然香味剤(99%バニリン)、天然ココアバター蒸留物、ノナン−2−オン(天然品)、ナツメグ油イーストインディアン、オクタナール35%(天然品)、オクテン−4−オン−2、脱色15倍オレンジ油M3706、オレンジ油950(10倍)、オレンジ油テルペンレス2501、オキサロメート−884、Paradiff(商標)0.01%ETOHGR、Paradiff(商標)0.01%グレープフルーツ油、ピーチ香味剤キー、フェニルエチル2−メチルブチレート、フェニルエチルアセテート、フェニルエチルアルコール、フェニルオキサロメート−681、ピメントベリー油イングリッシュディスティルドSAS、ピメントリーフ油、精白ピメントリーフ油、パイナップル化合物15%ETOH GR、パイナップル化合物15%PG、ポップコーン化学物質(Popcorn Chemicals)、プロピオン酸、ラズベリー香味剤キー、ラズベリー香味剤キー、ラズベリー香味剤キー、Robustone 1.0%ETOH(商標)、Robustone(商標)、シヌスモレ油、スクラレオリド、蒸留ゴマ天然品、シネンサルス(天然品)、スターター蒸留物15倍W/S、ストローベリフ、ストローベリーベース、ストローベリー香味剤キー、コハク酸、スルフローム−015、甘味修飾物質、Tetrahydro Terrazine−014(商標)、チオノール−935、チオノール−966、trans−2−ヘキセナール、Trimenal Acetate399 1%ETOH(商標)、トロピカルフルーツキーベース、トロピカルフルーツキーベース、ウンデカン−2−オン(天然品)、バラモール−106 10%ETOH、バラモール−106 10%NEBM5およびバラモール−106 10%PGを挙げることができる。これらの芳香剤は、International Flavors and Fragrances社(ニューヨーク市、ニューヨーク州、米国)より商業的に入手可能である。
【0085】
有用であると考えられる他の芳香剤としては、バクテリア、菌、ウイルス、カビおよび細菌に関連する悪臭、および、タバコの煙によって生成されるものなどの不快な化学物質臭をマスクする能力がある植物性抽出物が挙げられる。本技術において芳香剤としての利用が見出される植物性抽出物としては、米国特許出願番号12/230,746号、Pinney、V.R.、2009年1月8日発行に記載される1種類以上の植物抽出物を挙げることができ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0086】
<抗菌剤>
臭気中和剤は、単独または1種類以上の臭気捕捉剤および芳香剤と組み合わせて、1種類以上の抗菌剤を含むことができる。本明細書で使用する場合、抗菌剤は、1種類以上の殺生物剤、制生剤、殺菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗細菌剤およびそれらの組み合わせを含むことができる。実施形態によっては、臭気中和剤が抗菌剤を含む場合、臭気中和剤は、また、少なくとも1種類の臭気捕捉剤および芳香剤も含んでもよい。
【0087】
実施形態によっては、抗菌剤は、単独またはもう1種類の臭気中和剤と併せて使用される、第4級化合物を含むことができる。有用な第4級化合物の非限定的な例としては、(1)商業的に入手可能なBarquat(登録商標)(Lonza社より入手可能)、Maquat(登録商標)(Mason社より入手可能)、Variquat(登録商標)(Witco/Sherex社より入手可能)およびHyamine(登録商標)(Lonza社より入手可能)などの塩化ベンザルコニウムおよび/または置換塩化ベンザルコニウム;(2)Lonza社の製品、Bardac(登録商標)などのジ(C〜C14)アルキルジ短鎖(C1〜4アルキルおよび/またはヒドロキシアルキル)第4級物;(3)Dow社(ミッドランド市、ミシガン州、米国)より入手可能なDowicide(登録商標)およびDowicil(登録商標)などの塩化N−(3−クロロアリル)ヘキサミニウム;(4)Rohm&Haas社より入手可能なHyamine(登録商標)などの塩化ベンゼトニウム;(5)Rohm&Haas社により供給されるHyamine(登録商標)10Xに代表される塩化メチルベンゼトニウム;および、(6)Merrell Labs社より入手可能なCepacol塩化物などの塩化セチルピリジニウムを挙げることができる。好ましいジアルキル第4級化合物の例は、塩化ジデシルジメチルアンモニウム(Bardac22)および塩化ジオクチルジメチルアンモニウム(Bardac2050)などの塩化ジ(C〜C12)ジアルキルジメチルアンモニウムである。
【0088】
臭気改善コーティング組成物におけるこれらの第4級化合物の抗菌効果に対する典型的な濃度は、臭気中和剤組成物の約0.001重量%〜約5重量%、好ましくは約0.005重量%〜約1重量%、より好ましくは約0.01重量%〜約0.2重量%、更に好ましくは約0.03重量%〜約0.1重量%の範囲とできる。臭気改善コーティングにおいて使用するための抗菌剤の対応する濃度は、臭気中和剤組成物の約0.003重量%〜約2重量%、好ましくは約0.006重量%〜約1.2重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約0.8重量%の範囲とできる。
【0089】
臭気中和剤の強さおよび揮発度に応じて、0.1〜1mg/m、5〜10mg/m、10〜50mg/mおよび100〜300mg/m、および、300〜3000mg/m以上の範囲の量で臭気中和剤を添加してよい。既知の抗菌化合物、殺生物剤化合物または制生剤化合物を、一般に、この範囲の下限において塗工することとなるが、それらの有効性に応じて、それらを上のリスト範囲の何れかで添加できる。抗菌剤の例示的な例としては、1種類以上の環境保護庁登録殺生物剤、例えば、Tektamer(登録商標)の製品などの殺生物剤が挙げられる。
【0090】
これらの化合物の典型的なキャリアは油性キャリアでよいが、しばしば、キャリアとしてアルコールおよび水などの極性分子を使用することが望ましい。芳香剤をキャリア中に分散または溶解でき、抗菌剤、芳香剤または臭気捕捉剤をキャリアによって浸漬または噴霧塗工後、キャリアを蒸発除去できる。前記熱交換器部品が、更に、前記剤の持続放出を提供するために選択される臭気中和剤送達システムを含む請求項1のセラミックコートされた熱交換器部品。
【0091】
実施形態によっては、より長く持続する芳香剤、臭気捕捉剤または抗菌剤の効果が望まれることがあり、蒸発しないが、むしろマイクロカプセル材として機能し、芳香剤、臭気捕捉剤または抗菌剤と共に残留するキャリアを使用することが可能である。実施形態によっては、また、セラミックコートされた熱交換器部品は、臭気中和剤の持続放出を提供するための臭気中和剤送達システムも含むことができる。送達システムとしては、1種類以上の臭気中和剤を含有するマイクロカプセル材と、貯蔵容器より臭気中和剤を提供する機械式送達装置とを挙げることができる。マイクロカプセル材によって、少量の1種類以上の芳香剤、臭気捕捉剤または抗菌剤が、コーティング自体の固有な3次元的ナノおよびミクロ構造からの拡散によって当該剤が制限される(即ち、コーティング自体が、その固有な構造のために、ある程度のマイクロカプセル材である)よりも長時間にわたり徐々に滲み出される。
【0092】
添加されるマイクロカプセル材は、水中における単純な油性エマルション(または逆相エマルション)、または、セラミック、ガラス、ポリスチレンなどのプラスチックまたはワックスなどの固体のナノ粒子(該マイクロカプセル材は、それらの内側に閉じ込められている芳香分子、殺生物剤分子および臭気吸収分子を含有する。)でよい。これらのマイクロカプセル材はセラミックコーティングの細孔内に格納されるのに充分小さく、また、芳香分子、殺生物剤分子および臭気吸収分子がより長く送達されるために、セラミックの表面上に吸収されてもよい。マイクロカプセル材を含有する送達システムを、特定の芳香剤、臭気捕捉剤および抗菌剤またはそれらの組み合わせに対して調整できる。また、送達システムとしては、機械式送達装置、例えば、当該技術において既知のスプレー、エアロゾル、固定または可変量のカプセル化された臭気中和剤を送達できる液体または固体塗工器も挙げられる。マイクロカプセル材は熱交換器部品の表面に隣接接触している貯蔵容器内に保管できるか、あるいは、貯蔵容器を他の場所に保管でき、チューブに接続できる(該チューブは、駆動システム、例えば、強制流体、真空または加圧推進を経由してマイクロカプセル材を送達するために動作可能である)。
【0093】
実施形態によっては、本技術は、熱交換機部品に、または、熱交換器部品の近位にある自動車構造に加えられた追加の構成要素を提供し、例えば、ポンプ、チューブ、スプレーノズルを有するスプレー塗工器を有する(所定または望ましいレベルの芳香が客室中に維持されるように、更に多くの臭気中和剤、例えば、芳香剤を、金属酸化物セラミックコートされた熱交換器部品の上および/または中へ周期的に霧化する。)ことが更に利点である。加えて、所望により、分配装置に新しい補充カートリッジを配置することで異なる臭気中和剤に交換でき、それにより、自動的に芳香を変える(空気を押し込んで蒸発器に通す送風機の使用に応答して、芳香ポンプのサブシステムが作動および停止される)ように、スプレー塗工器は交換可能な芳香補充カートリッジを含むことができる。加えて、自動車の所有者は、芳香分配ポンプに芳香剤よりも臭気捕捉剤(シクロデキストリンおよび当該技術において既知で今日一般に使用されている該目的のために使用される他の臭気捕捉剤など)を入れてもよい。
【0094】
<セラミックコーティング>
本技術の金属酸化物セラミックコーティングを調製する方法は、本明細書に記載される陽極酸化法を使用する、熱交換器部品のアルミニウム含有表面上への金属酸化物電気化学的堆積を含む。次いで、約0.1〜約1mg/m、約5〜約10mg/m、約10〜約50mg/m、約100〜約300mg/m、約300〜約3,000mg/mの範囲の量でコートされ、電気化学的に堆積されたセラミックコーティングの複雑な3次元構造の上および中に吸収された臭気中和剤によって、金属酸化物コーティング、例えば、酸化チタンをコートする。図1より見て取れる通り、セラミックコーティングの表面上に形成された複数の細孔を含み、コーティングにわたって複数の細孔を形成できる。細孔には、臭気中和剤が凝集する空間的な余裕がある。細孔の大きさは、約10nm〜約3000nmの範囲とできる。
【0095】
<セラミックコーティングの抗菌効果>
実施形態によっては、短波長放射、例えば、紫外(UV:ultraviolet)光の存在下において光触媒化される場合、熱交換器部品上に形成された金属酸化物セラミックコーティングが、抗菌剤としての機能を果たすことができる。この代替の実施形態においては、酸化チタンでコートされた熱交換器部品の外側表面が、約210〜700nmの範囲の波長を有する紫外光または可視光によって照射される。熱交換器の表面上および周辺の空気中の臭気分子、酸素および/または水分の間の反応を促進するために、紫外光によって該光触媒が活性化される。実施形態によっては、二酸化チタンでコートされた熱交換器部品の表面が、熱交換器部品に接近して取り付けられたUV光LEDより生じることができるUV光に曝露される。水が存在する場合、二酸化チタンがコートされた熱交換器表面に伝わる紫外光が二酸化チタンコーティングを活性化し過酸化物を生成し、それにより、熱交換器表面に接触する臭気の除去が促進され、任意の微生物を絶命させるように、紫外光放射のソースが二酸化チタンでコートされた熱交換器表面に対して充分に近接して配置される。加えて、熱交換器部品の表面上におけるウイルス、細菌およびカビの増殖の予防または低減を促進するために、二酸化チタンでコートされた熱交換器部品は滅菌特性を含んでよい。
【0096】
ここで、多数の例を参照して本技術を更に記載するが、例は単に例示として見なされるべきであり、本教示の範囲を制限するものとしては見なされない。
【実施例】
【0097】
<例1>
<比較試料1>
非クロム酸塩化成法を使用して熱交換器部品上に保護コーティングを調製する方法が、当該技術において既知である。例えば、米国特許第7,353,863号明細書、出願第10/844,610号、デンソー社に対して2008年4月8日発行(その全体が本明細書に組み込まれる)においては、熱交換器の基体をアルカリ性水溶液を含むエッチング剤で前処理し、引き続いて、エッチングされた基体に対して化成または親水性向上処理を行う非クロム酸塩化成法が用いられる。それぞれ互いに真空ろう付け手法で接合されたマグネシウム含有アルミニウム合金の複数のフィンおよびチューブを含む熱交換器のアルミニウム基体を、水性前処理液に接触させた。下に示す通りの様式によって、アルカリ性水溶液を使用するエッチング手法を前処理された基体に施し、次いで、下に示す通りの様式によって、スマット除去(酸洗浄)手法を施した。その後、エッチングされた基体に非クロム酸塩化成処理を施し、次いで、下に示す通りの様式によって、親水性向上処理を施す。
【0098】
<比較試料1の非クロム酸塩化成コーティングを調製する工程>
(1)スマット除去(酸洗浄)処理:比較試料1において、アルミニウム熱交換器基体、例えば、米国ミシガン州デンソー社によって製造されたRS蒸発器(BA4343−400シリーズアルミニウム製のライナーを有するフィン、DA3913S−300シリーズアルミニウム製のコアおよびDA1197アルミニウム製のチューブを有する)を、酸の水溶液(0.15〜0.3%のHNO)中に室温において10秒間浸漬し、基体表面よりスマットを除去し、次いで、水でリンスする。
【0099】
(2)化成処理:次いで、比較試料1の熱交換器部品のスマット除去された基体を、水中に30%フッ化ジルコン酸および1%フッ化水素酸を含む化成処理液に浸漬し、50℃の温度で60秒間保持し、それにより、基体表面上にジルコニウム化成コーティングを形成する。
【0100】
(3)親水性向上処理:比較試料1において、熱交換器の化成処理された基体を水でリンスし、次いで、ジルコンタイプ有機−無機複合剤の発泡性親水性向上処理液、例えば、Surfalcoat(商標)2400(日本ペイント株式会社、日本)に浸漬し、25℃の温度で30秒間保持する。基体を処理液より取り出し、液切りをして基体表面に付着している処理液の過剰分を除去し、150℃の温度に設定されたに熱風循環オーブン内で2〜20分間硬化して、基体表面上に親水性コーティングを形成する。
【0101】
<酸化チタンのプラズマ電気化学的堆積を使用して熱交換器を調製する手法>
(A)熱水洗浄/熱交換器の脱脂、
(B)チタン金属塩を含む陽極酸化溶液を使用するプラズマ電気化学的堆積、
(C)空気乾燥、
(D)臭気中和剤でのコーティング、および
(E)リンスおよび/または空気乾燥(任意工程−工程Eを除去して、現場で臭気中和剤を乾燥してもよい)。
【0102】
熱交換器部品(米国ミシガン州デンソー社によって製造されたRS蒸発器(BA4343−400シリーズアルミニウム製のライナーを有するフィン、DA3913S−300シリーズアルミニウム製のコアおよびDA1197アルミニウム製のチューブを有する。))を、6%のAlodine ECC 9000(ヘンケル社より商業的に入手可能な電解質水溶液であり、製造者によって、フッ化チタン酸、リン含有組成物、および、種々のフッ化物およびチタン化合物を含有すると記載されている。)に浸漬した。処理浴のpHは2.7であった。該溶液の電解セル中において陽極として、熱交換器を3分〜20分間接続し、それにより、主にリン酸チタニアおよびチタンを1g〜10g/m堆積した。電解質溶液よりコアを取り除き、脱イオン水でリンスし、乾燥させた。臭気中和剤を、上の範囲で添加した。例えば、3ミリリットルのハッカ油を1リットルの25%メタノールおよび水の溶液に添加し、この添加混合物中に熱交換器を30秒間浸漬し、次いで、空気中で乾燥した。試験された他の芳香剤は、オレンジ・エキス、レモン・エキスおよび商業的に入手可能な桜芳香、ならびに、オートミール/ミルク/蜂蜜臭であった。ハッカ臭の手順に従って芳香剤を塗工し、それらの匂いは、空気乾燥後もコーティング上に保持された。
【0103】
450ボルトのピーク電圧および136ボルトの平均電圧において、DCパルス電流で3個の試料をコートした。10分の処理の結果として3ミクロン厚のコーティングが生じ、15分の処理の結果として5ミクロン厚のコーティングが生じ、20分の処理の結果として10ミクロン厚のコーティングが生じた。
【0104】
上記の実験手順に従い、3ミクロン厚のコーティングを有し臭気改善コーティング処理がされていない試験において使用された試験試料1および下の蒸発器を製造した。
【0105】
<試験および評価>
非クロム酸塩液化成法を使用する比較試料1と、プラズマ電気化学的堆積を使用する試験試料1とを使用して得られたコーティングの耐腐食性を試験および評価するために、それぞれの各種試験において、同一の熱交換器部品を使用した。
【0106】
(i)冷却性能
比較試料1および試験試料1に従って製造された蒸発器に、冷却流体を充填する。100〜1000m/時以上の空気流速において、蒸発器を動作する。蒸発器内の空気流の種々の位置において、冷却性能を測定する。冷却性能結果をワットで表す。結果を表1にまとめる。
【0107】
(ii)接触角(親水能/撥水性)
比較試料1において記載される方法でコートされ、8〜9ミクロンのコーティング厚を有する蒸発器からの試験片(フィン)と、試験試料1において記載される様式でコートされ、3ミクロンの酸化チタンコーティングを有するフィンとを、0.5リットル/分の流速で流れる純水流中に72時間浸漬した。それぞれのフィン試験片について、水とのフィン表面の接触角を、接触角計(協和界面科学株式会社、日本、モデルCA−X)を使用して測定した。フィン表面上における試験点数は12であった。フィン表面の親水性を、結果として得られた最高および最低接触角によって表した。結果を表1にまとめる。
【0108】
(iii)破裂(耐久性)
比較試料1の非クロム酸塩化成コーティング法に従うか、試験試料1において記載される通りのプラズマ電気化学的堆積によって調製された保護コーティングを有するコートされた熱交換器部品の耐久性を、この試験は測定する。比較試料1の方法に従って調製された蒸発器と、試験試料1の方法に従って調製された蒸発器とを、それぞれオイルで充填し、次いで、それぞれの蒸発器を耐圧仕様(17kg重/cm)に加圧する。蒸発器を監視し、変形および漏洩は認められない。蒸発器が破裂するまで、更に蒸発器を加圧する。耐破裂性は30kg重/cmを超えなければならない。比較試料1の方法および本技術(試験試料1)の方法を使用して塗工された耐腐食性コーティングを、破裂(耐久性)試験によって、直接、比較および評価できる。結果を表1にまとめる。
【0109】
(iv)耐白錆性(耐腐食性)
水中に50g/リットルの塩化ナトリウムを含む腐食塩水溶液を使用し、240時間の試験期間で、アルミニウム合金熱交換器のフィン部分に塩水噴霧試験を施す。次いで、上の比較試料1について記載される方法を使用して保護コーティングでコートされた蒸発器と、試験試料1について記載される方法を使用して調製された第2の蒸発器との1つの面上に5kgの重りを配置することで、フィン上の白錆(酸化アルミニウム)の量を直接定量する。次いで、塩水噴霧に240時間曝露され、重りが乗せられた蒸発器の底表面(重りは置かれていない)を、接触されて落下された蒸発器の表面上に存在する任意の白錆を回収するように動作可能な基体上に、80mmの高さから落下させる。白錆を定量化するこの方法を使用すれば、耐腐食性に乏しいコーティングほど多量の白錆が生じることとなり、落下時に、より良好な耐腐食性コーティングと比較して、より多量の白錆が回収基体に溜まることとなる。よって、基体上に回収される白錆の量は、塩水噴霧曝露後の試験された熱交換器部品上のコーティングの耐腐食性能と逆相関する。結果を表1にまとめる。
【0110】
(v)ミスト噴霧(ASTM−B117−03と同等の耐腐食性)
(比較試料1)および(試験試料1)のコーティングの耐腐食性を比較するために、ミスト噴霧耐腐食性試験を使用できる。当該試験は、概して、米国材料試験協会(ASTM:American Society for Testing and Materials)ASTM B117−03試験と同等である。Clイオンを6060ppmで、SO2−を200ppmで、Cu2+を10ppmで含むミストを提供するミスト噴霧器を有するチャンバーを調製する。比較試料1に従って調製された熱交換器部品(熱交換器)と試験試料1に従って調製された熱交換器上に、塩水噴霧を散布する。チャンバー内部の湿度は、およそ95%以上であり、チャンバーの内部を50℃の温度に設定した。それぞれの熱交換器の表面上に縦線を罫書き、次いで、塩水ミスト噴霧に10,000時間を超える期間で曝露した。2個の熱交換器の定期検査を行い、罫書線より広がる表面の腐食および/または錆の存在および程度を測定した。図2に、塩水噴霧に少なくとも4000時間曝露した後、罫書線に沿って熱交換器部品上に腐食が実質的に存在しないことを示す結果を示す。結果を表1にまとめる。
【0111】
(vi)臭気凝着
1つの特定の理論に束縛されることなく、長時間の曝露後に熱交換器に悪臭を生じさせ得る最も不快で有害な臭気の1つはタバコの煙であると考えられる。本発明者らは、予期せず、熱交換器部品、例えば、蒸発器用の臭気改善コーティングでコートされた金属酸化物セラミックコーティングを含み、タバコの煙の臭気を改善する表面コーティングを見出した。
【0112】
当該臭気凝着試験を行うために、タバコの煙を回収および試験する装置を作製した。空気を流れ込ませる空気入口と、チャンバー内にタバコの煙を導入する気流の流れの近傍に開口部とを有する密閉されたチャンバー内において試験を行う。平均的な喫煙者によって典型的に消費されるのと、ほぼ同一の速度でタバコを消費し、タバコの煙の流れを熱交換器部品の表面に提供した。次いで、比較試料1および試験試料1に従って調製された蒸発器の表面に、タバコの煙を導いた。曝露された表面を手動で検臭することで、蒸発器の曝露された表面に凝着したタバコの臭気の量を評価し、決定された臭気を、臭気のしないときを0.0から最も強い臭気のときを1.0として格付けした。該評価スケールを使用して2つのパラメータ(1つは不具合さ(有害さ(質))に関し、1つは強さ(数量)に関する。)を決定した。結果を表1にまとめる。
【0113】
【表1】

【0114】
上の耐腐食性能の比較および試験試料分析からの結果は、プラズマ電気化学的堆積を用いる本技術によって、自動車用熱交換器の腐食保護の分野において使用される他のコーティング法に勝る耐腐食性が著しく向上したコーティングが提供されることを示唆しているようである。有毒および有害なエッチング、洗浄および樹脂の化学薬品の低減に加えて、非クロム酸塩化成コーティングと比較する場合、本技術の金属酸化物臭気改善コーティングは腐食に対する保証性能において優れる。本技術において使用される材料および方法は、桁違いに環境に対する影響が低減されており、一般に、より安価である。更に、本技術の熱交換器部品を作製する方法は、これらの熱交換器部品を作製するための生産必要高に時間および物資を加える、熱を多量に消費する硬化またはアニール工程を必要としない。金属酸化物セラミックコーティングを有する当該熱交換器部品の作製に関与する工程の殆どは、周囲温度において行うことができる。また、当該方法によって、揮発性有機化合物の使用が、非クロム酸塩化成コーティング法と比較して100%まで低減される。
【0115】
実施形態の前述の記載は、例示および説明の目的のために提供されたものである。本発明を網羅または限定することを意図していない。特定の実施形態の個々の構成要素および態様は、一般に、当該特定の実施形態に限定されないが、適用可能な場合には互換可能であり、具体的に示されないか記載されていない場合であっても、選択された実施形態において使用できる。また、同事項は多くの様式に改変してもよい。そのような改変は本発明から逸脱しているとは見なされず、そのような全ての変法は本発明の範囲内に含まれるよう意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルミニウム表面を有する熱交換器部品、
(B)前記アルミニウム表面の少なくとも一部分上に配置されるセラミックコーティング、および
(C)前記セラミックコーティング上にコートされる臭気中和剤
を含む、セラミックコートされた熱交換器部品。
【請求項2】
前記アルミニウム表面上に配置される前記セラミックコーティングが、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化マグネシウム、酸化タングステン、および、それらの組み合わせから成る群より選択されるセラミックを含む、請求項1に記載のセラミックコートされた熱交換器部品。
【請求項3】
前記セラミックコーティングが複数の細孔を更に含み、前記複数の細孔の少なくとも一部分は前記臭気中和剤を含有する、請求項1または2に記載のセラミックコートされた熱交換器部品。
【請求項4】
前記臭気中和剤が、臭気捕捉剤、芳香剤、抗菌剤、または、それらの組み合わせである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミックコートされた熱交換器部品。
【請求項5】
前記熱交換器部品が、更に、前記剤の持続放出を提供するために選択される臭気中和剤送達システムを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセラミックコートされた熱交換器部品。
【請求項6】
前記送達システムが、前記臭気中和剤を含有するマイクロカプセル材、および、貯蔵容器より臭気中和剤を提供する機械式送達装置より選択される、請求項5に記載のセラミックコートされた熱交換器部品。
【請求項7】
前記熱交換器部品が、更に、約200〜約700nmの波長範囲を有する紫外光または可視光を放射する放射発光装置を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミックコートされた熱交換器部品。
【請求項8】
a)セラミックコーティングは前記アルミニウム表面上に少なくとも部分的に配置される少なくとも50重量%の酸化チタンを含み、前記酸化チタンセラミックコーティングは部品接触表面および外側表面を有し、前記セラミックコーティングはプラズマ電気化学的堆積を使用して前記アルミニウム表面に塗工され、前記セラミック外側表面は複数の細孔を有しており、および
b)臭気中和剤は前記酸化チタンセラミックコーティング外側表面上および少なくとも部分的に前記複数の細孔中に配置される、
請求項1〜7のいずれか一項に記載のセラミックコートされた熱交換器部品。
【請求項9】
セラミックコートされた臭気改善熱交換器部品を作製する方法であって、
a)Ti、Zr、Hf、Sn、Al、GeおよびBおよびそれらの組み合わせから成る群より選択される元素の少なくとも1種類のフッ化物および酸化フッ化物を有する水溶液を含む陽極酸化溶液を準備することと、
b)前記陽極酸化溶液中に陰極と、前記陽極酸化溶液中に陽極としてアルミニウム表面を有する熱交換器部品とを配置することと、
c)前記アルミニウム表面上に少なくとも部分的にセラミックコーティングによって前記アルミニウム表面をコートするのに有効な時間、前記陽極酸化溶液を介し前記陰極および前記陽極に対してパルス電流を印加することと、
d)前記陽極酸化溶液より前記セラミックコートされた熱交換器部品を取り除き、任意工程として乾燥することと、および
e)臭気中和剤を前記セラミックコーティング上に塗工して、セラミックコートされた臭気改善熱交換器部品を形成すること
を含む方法。
【請求項10】
セラミックコートされた臭気改善熱交換器部品が約1〜約5ミクロンの範囲の厚みのセラミックコーティングを含み、前記熱交換器部品は、ASTM B117−03試験方法を使用して少なくとも4,000時間のミスト噴霧耐腐食性を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記陽極酸化溶液を介し前記陰極および前記陽極に対してパルス電流を印加することが、400ボルト以下の平均電圧を有するパルス直流を含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記臭気中和剤が、臭気捕捉剤、芳香剤、抗菌剤、または、それらの組み合わせを含む、前記請求項9、10、および11のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−522965(P2012−522965A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503698(P2012−503698)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/029608
【国際公開番号】WO2010/114988
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】