説明

セラミックグリーンテープおよびセラミックシートの製造方法

【課題】セラミックグリーンテープを巻き取る際の周回部分同士の接合防止と樹脂フィルムの再利用を図ることができるセラミックグリーンテープの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のセラミックグリーンテープの製造方法は、第1の樹脂フィルム2上にセラミック粒子を含むスラリー30を塗工する工程と、塗工されたスラリー30を乾燥させる工程と、生成されたセラミックグリーンテープ3Aから第1の樹脂フィルム2を剥離して巻き取る工程と、セラミックグリーンテープ3Aをスリッター5でスリットする工程と、スリットされたセラミックグリーンテープ3Bに第2の樹脂フィルム7を貼り合わせる工程と、第2の樹脂フィルム7付のセラミックグリーンテープ3Bを巻き取る工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンテープを製造する方法、およびセラミックグリーンテープを用いてセラミックシートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックシートを製造する方法としては、セラミックグリーンシートと多孔質のスペーサシートとを交互に積み重ねて積層体を形成し、この積層体を焼成炉内に入れることによって多数のセラミックグリーンシートを一度に焼成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のセラミックグリーンシートは、例えば特許文献2に開示されているように、長尺状のセラミックグリーンテープから打ち抜かれる。このセラミックグリーンテープの製造には、例えば特許文献3に開示された製造装置を用いることができる。
【0004】
特許文献3に開示された製造装置は、樹脂フィルムを走行させながらセラミックグリーンテープを製造する。具体的には、まず、ロールから繰り出された樹脂フィルム上にセラミック粒子を含むスラリーを塗工し、ついで、塗工されたスラリーを乾燥させて幅広のセラミックグリーンテープを生成する。その後、セラミックグリーンテープから樹脂フィルムを剥離して巻き取る。一方、樹脂フィルムが剥離されたセラミックグリーンテープは、スリッターにより長手方向に沿ってスリットされる。スリットされた幅狭のセラミックグリーンテープは、個々に巻き取られる。
【0005】
また、特許文献4には、セラミックグリーンテープを樹脂フィルムごとスリッターでスリットすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−215102号公報
【特許文献2】特開2011−82149号公報
【特許文献3】特開平9−66512号公報
【特許文献4】特開平9−216193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えばジルコニア系などの粘着性の高いセラミックグリーンテープでは、セラミックグリーンテープを単体で巻き取ってロールを形成すると、周回部分同士が接合してしまう。そのため、セラミックグリーンシートを打ち抜く際にロールからセラミックグリーンテープを繰り出すことが困難になる。この問題を解決するには、特許文献4に開示されているようにセラミックグリーンテープをスリッターで樹脂フィルムごとスリットし、樹脂フィルム付のセラミックグリーンテープを巻き取ることが考えられる。
【0008】
しかしながら、そのような方法では、樹脂フィルムが幅広から幅狭にスリットされてしまうために、樹脂フィルムを再利用することができない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、セラミックグリーンテープを巻き取る際の周回部分同士の接合防止と樹脂フィルムの再利用を図ることができるセラミックグリーンテープの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、その製造方法により得られたセラミックグリーンテープを用いたセラミックシートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明のセラミックグリーンテープの製造方法は、第1の樹脂フィルムを繰り出しながら前記第1の樹脂フィルム上にセラミック粒子を含むスラリーを塗工する工程と、塗工された前記スラリーを乾燥させてセラミックグリーンテープを生成する工程と、前記セラミックグリーンテープから前記第1の樹脂フィルムを剥離して巻き取る工程と、前記第1の樹脂フィルムが剥離された前記セラミックグリーンテープをスリッターでスリットする工程と、第2の樹脂フィルムを繰り出しながらスリットされた前記セラミックグリーンテープに前記第2の樹脂フィルムを貼り合わせる工程と、前記第2の樹脂フィルム付の前記セラミックグリーンテープを巻き取る工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のセラミックシートの製造方法は、上記のセラミックグリーンテープの製造方法により得られた前記第2の樹脂フィルム付の前記セラミックグリーンテープが巻き回されたロールから前記第2の樹脂フィルム付の前記セラミックグリーンテープを繰り出しながら当該セラミックグリーンテープから前記第2の樹脂フィルムを剥離する工程と、前記第2の樹脂フィルムが剥離された前記セラミックグリーンテープから所定形状のセラミックグリーンシートを打ち抜く工程と、前記セラミックグリーンシートとスペーサシートとを交互に積み重ねて積層体を形成する工程と、前記積層体を焼成炉に入れて当該積層体中の前記セラミックグリーンシートを焼成する工程と、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセラミックグリーンテープの製造方法によれば、セラミックグリーンテープを巻き取る際の周回部分同士の接合防止と樹脂フィルムの再利用を図ることができる。
【0013】
また、本発明のセラミックシートの製造方法によれば、ロールからのセラミックグリーンテープの繰り出しを良好に行うことができ、セラミックシートの品質向上や保管期間の短縮を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)および(b)は、本発明の一実施形態に係るセラミックグリーンテープの製造方法を実行する製造装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るセラミックグリーンテープの製造方法を実行する製造装置1の概略構成図である。本実施形態の製造方法は、塗工工程、乾燥工程、剥離工程、スリット工程、貼合工程および巻取工程を含む。さらに、スリット工程と貼合工程の間にバッファ工程および是正工程を必要に応じて設けてもよい。以下、各工程ごとに詳細に説明する。
【0017】
(1)塗工工程
塗工工程では、ロール21から帯状の第1の樹脂フィルム2を繰り出しながら、第1の樹脂フィルム2上にセラミック粒子を含むスラリー30を塗工する。塗工方法は特に限定されず、ドクターブレード法やカレンダーロール法を用いることができる。本実施形態では、ドクターブレード法が採用されている。具体的には、樹脂フィルム用ガイドローラ11上に配置された塗工ダム31にスラリーを投入し、ドクターブレード32により塗工されるスラリー30の膜厚を規定する。
【0018】
セラミック粒子の材料は、特に制限されるものではないが、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化クロム等の金属酸化物;コージェライト、βスポンジューメン、チタン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、ムライト、スピネル等の複合酸化物;炭化珪素等の金属炭化物;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の金属窒化物;酸化ニッケル、酸化鉄等の遷移金属酸化物;ランタンマンガネート、ランタンコバルタイト、ランタンクロマイト等のペロブスカイト構造酸化物を挙げることができ、これらから1種を選択するか、2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
特に、燃料電池の電解質膜として利用されるセラミックシートを製造する場合は、セラミック粒子の材料として、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化セリウム、酸化イッテリビウム等で安定化されたジルコニア;イットリア、サマリア、ガドリア等がドープされたセリア;ランタンガレート、およびランタンガレートのランタンまたはガリウムの一部が、ストロチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、コバルト、鉄、ニッケル、銅などで置換されたランタンガレート型ペロブスカイト構造酸化物などを使用することができる。
【0020】
また、燃料電池のセパレータとして利用されるセラミックシートを製造する場合は、導電性の材料が好適である。例えば、ランタンクロマイトや、ランタンクロマイトのランタンまたはクロムの一部が、ストロンチウム、カルシウム、ニッケル、コバルト、アルミニウム、マグネシウム、チタンなどで置換されたランタンクロマイトペロブスカイト構造酸化物を使用することができる。
【0021】
また、電子部品用等のセラミック基板として利用されるセラミックシートを製造する場合は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等の金属酸化物;コージェライト、βスポンジューメン、チタン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、ムライト、スピネル等の複合酸化物;炭化珪素等の金属炭化物;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の金属窒化物導電性の材料などを1種または1種以上使用することができる。
【0022】
上述した材料の中でも、本実施形態の製造方法は、セラミック粒子が酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化セリウム、酸化イッテリビウム等で安定化されたジルコニアである場合に特に有用である。あるいは、セラミック粒子は、安定化ジルコニア粉末と他のセラミック粉末との混合物であってもよい。この場合、セラミック粒子中の安定化ジルコニア粉末の含有率は、95質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましい。
【0023】
安定化ジルコニアとしては、MgO、CaO、SrO、BaOなどのアルカリ土類金属酸化物;Y23、La23、CeO2、Pr23、Nd23、Sm23、Eu23、Gd23、Tb23、Dy23、Ho23、Er23、Yb23などの希土類元素酸化物;Sc23、Bi23、In23等の酸化物を安定化剤として1種もしくは2種以上含有するジルコニアを例示することができる。さらにその他の添加剤として、SiO2、Ge23、B23、SnO2、Ta25、Nb25等が含まれていてもよい。中でも、より高レベルの酸素イオン伝導性と、強度や靭性を確保する上で好ましいのは安定化剤としてスカンジアまたはイットリアを含有する安定化ジルコニアであり、特に酸素イオン伝導性が一段と優れていることから、スカンジアを含む安定化ジルコニアが好ましい。
【0024】
セラミック粒子の平均粒子径は、0.2μm以上0.8μm以下であることが好ましい。ここで、「平均粒子径」とは、粒度分布から求められるメジアン径、すなわち50体積%(D50)をいう。平均粒子径が0.2μm未満だと、スラリーの粘度が上昇しセラミックグリーンテープの表面に斑や気泡が出来易くなり、0.8μmを超えると、セラミックグリーンテープに粗大粒子が斑点となって現れたり、スジ模様が出易くなるからである。平均粒子径は、より好ましくは0.30μm以上0.70μm以下であり、さらに好ましくは0.40μm以上0.60μm以下である。
【0025】
スラリー30は、セラミック粒子の他に、溶媒、バインダー、可塑剤、分散剤などを含む。スラリー30を調製する際には、上記の要素を混合した後に、濃縮脱泡することが好ましい。また、スラリー30の粘度は、25℃で1900〜2700Pa・sが好ましく、2100〜2500Pa・sがより好ましい。
【0026】
スラリー30の調製に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類等を例示することができ、これらから適宜選択して使用する。これらの溶媒は単独で使用し得る他、2種以上を混合して使用することができる。
【0027】
スラリー30の調製に用いられるバインダーは、後のセラミックシートを製造する際の焼成により分解したり燃焼することで除去されるものであれば格別の制限はなく、従来から知られた有機質のバインダーを適宜選択して使用することができる。有機質バインダーとしては、例えばエチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系及びメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセルロース等のセルロース類等が例示される。
【0028】
スラリー30に占めるバインダーの割合は、セラミック粒子100質量部に対して15質量部以上25質量部以下であることが好ましい。バインダーの割合が15質量部未満だと、塗工・乾燥後のセラミックグリーンテープがヒビ割れを起こしたり、クラックが発生する場合があり、25質量部を超えると、セラミックグリーンテープが柔らかくなり、打抜きなどの工程での作業が困難になったり変形を起こし易くなったりするからである。バインダーの割合は、より好ましくは16質量部以上23質量部以下であり、さらに好ましくは17質量部以上20質量部以下である。
【0029】
スラリー30の調製に用いられる可塑剤は、セラミックグリーンテープに柔軟性を付与するために添加する。可塑剤としては、例えば、低分子可塑剤、コオリゴマー可塑剤および高分子可塑剤がある。低分子可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチルやフタル酸ジオクチルなどフタル酸エステル類を挙げることができる。
【0030】
スラリー30の調製に用いられる分散剤は、スラリー中でのセラミック粒子の沈降を抑制するために添加する。分散剤としては、例えば、Uniqema社製のKD−4,9、共栄化学工業社製のフローレンG700やG900、ビックケミー社製のBYK−220Sなどのアニオン系分散剤;Uniqema社製のKD−1やDOPA−22、ビックケミー社製のDisperbyk108、112、116などのカチオン系分散剤;ダイセル社製のナラクセルFM−1D、Uniqema社製のB246SF、共栄化学工業社製のNC−500などのノニオン系分散剤を挙げることができる。さらには界面活性剤や消泡剤などを必要に応じて添加することができる。なお、スラリー中の水分量は、できるだけ少ない方が望ましい。
【0031】
第1の樹脂フィルム2を構成する樹脂は特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが好ましい。第1の樹脂フィルム2の幅は、例えば500〜1500mmである。
【0032】
第1の樹脂フィルム2の走行速度は、0.25〜1.5m/分が好ましく、0.35〜1.0m/分がより好ましい。
【0033】
(2)乾燥工程
乾燥工程では、塗工されたスラリー30を乾燥させてセラミックグリーンテープ3Aを生成する。スラリー30を乾燥させる方法は特に限定されないが、本実施形態では、スラリー30が塗工された第1の樹脂フィルム2を3つの乾燥室を通過させることにより乾燥工程を行う。3つの乾燥室は、常温の空気を循環させる自然乾燥室41、比較的に高い温度に加熱した空気を循環させる第1加熱乾燥室42、および第1加熱乾燥室42よりもさらに高い温度に加熱した空気を循環させる第2加熱乾燥室43である。第1加熱乾燥室42を循環する空気の温度は、75〜110℃が好ましく、85〜100℃がより好ましい。第2加熱乾燥室43を循環する空気の温度は、85〜120℃が好ましく、95〜110℃がより好ましい。
【0034】
(3)剥離工程
剥離工程では、ガイドローラ12上でセラミックグリーンテープ3Aから第1の樹脂フィルム2を剥離し、剥離した第1の樹脂フィルム2をロール22に巻き取る。ロール22は芯材の回りに第1の樹脂フィルム2が巻き回されたものであり、その芯材が図略のモータにより回転させられる。
【0035】
(4)スリット工程
スリット工程では、第1の樹脂フィルム2が剥離されたセラミックグリーンテープ3Aをその長手方向に沿ってスリッター5でスリットする。スリッター5は、セラミックグリーンテープ3Aの幅方向に所定間隔で配置されている。前記所定間隔は、最終的に得るべき幅狭のセラミックグリーンテープの幅を規定するものであり、例えば50〜300mmである。
【0036】
スリット工程では、セラミックグリーンテープ3Aの両耳部を切り落とすことが好ましい。この場合、スリッター5は、最終的に得るべき幅狭のセラミックグリーンテープの本数に1を加えた数だけ設置される。例えば、3本の幅狭のセラミックグリーンテープを得るためには、4つのスリッター5が設置される。
【0037】
スリッター5は、例えばハイス鋼製の上下一対の回転刃からなる。スリットを安定的に行うために、スリッター5の前後でセラミックグリーンテープを支持する、例えばステンレスからなる支持板を設置することが好ましい。また、セラミックグリーンテープのスリット面にバリやクズが出ないように、スリッター5の上流側にセラミックグリーンテープを温める加熱ヒータを設置することが好ましい。
【0038】
(5)バッファ工程
本実施形態では、前述した塗工工程、乾燥工程、剥離工程およびスリット工程が連続的に行われる一方、後述する貼合工程および巻取工程が所定のインターバルで断続的に行われる。バッファ工程では、前記所定のインターバルの間、スリットされたセラミックグリーンテープ3Bを当該セラミックグリーンテープ3Bに張力をかけながら蓄える。
【0039】
具体的には、一対のグリーンテープ用ガイドローラ13,15間にテンションローラ14が配置されている。テンションローラ14は、前記所定のインターバルに第1の樹脂フィルム2の走行速度をかけた距離を吸収可能なストロークで上下動できるように構成されている。この構成により、後述するコンベア6が停止している間でも、テンションローラ14の自重によりセラミックグリーンテープ3Aに一定のテンションが掛かり、スリッター5によるスリットが連続的に行われる。
【0040】
(6)是正工程
是正工程では、後述する第2の樹脂フィルム7に対するスリットされたセラミックグリーンテープ3Bのズレを是正する。本実施形態では、是正工程がスリットされたセラミックグリーンテープ3Bを搬送するコンベア6を用いて行われる。コンベア6は、ベルト式であってもよいしローラ式であってもよい。コンベア6は、後述する貼合装置8の移動チャック83による移送に同期して稼働する。
【0041】
具体的には、光センサ61でセラミックグリーンテープ3Bの幅方向の位置を検出し、第2の樹脂フィルム7に対してスリットされたセラミックグリーンテープ3Bが所定量以上ずれたときに、そのズレを打ち消すようにコンベア6を搬送方向と直交する方向に移動する。
【0042】
(7)貼合工程
貼合工程では、ロール71から帯状の第2の樹脂フィルム7を繰り出しながら、スリットされたセラミックグリーンテープ3Bに第2の樹脂フィルム7を貼り合わせる。
【0043】
第2の樹脂フィルム7を構成する樹脂は特に限定されないが、例えばPETを用いることが好ましい。第2の樹脂フィルム7の幅は、第1の樹脂フィルム2の幅よりも小さく、例えば54〜304mmである。
【0044】
スリットされたセラミックグリーンテープ3Bに第2の樹脂フィルム7を貼り合わせる方法は特に限定されるものではないが、本実施形態では貼合装置8を用いて行う。具体的には、まず樹脂フィルム用ガイドローラ16を用いてスリットされたセラミックグリーンテープ3Bに第2の樹脂フィルム7を下側から重ね合わせ、この複合体を貼合装置8に供給する。
【0045】
貼合装置8は、一対のローラ82に掛け渡されたエンドレスベルト81と、前記複合体をエンドレスベルト81と共に挟み込んで移送する移動チャック83とを含む。
【0046】
移動チャック83は、上流側の第1位置と下流側の第2位置との間で移動可能に構成されており、第1位置で前記複合体をクランプし、第2位置に移動して前記複合体のクランプを解除する。移動チャック83の移動速度は、バッファ工程で蓄えられたセラミックグリーンテープ3Bを全て送り出すために、当然に第1の樹脂フィルム2の走行速度よりも速い。
【0047】
また、移動チャック83には、当該移動チャック83が第2位置から第1位置に戻るときに、前記複合体におけるセラミックグリーンテープ3B上を転動するローラ84が設けられている。このローラ84は、例えばゴムからなる。ローラ84により、スリットされたセラミックグリーンテープ3Bと第2の樹脂フィルム7との間に閉じ込められた空気が押し出されるため、それらを弛みのない状態で完全に密着させることができる。
【0048】
さらに、貼合装置8は、前記複合体が移動チャック83によりクランプされていないときにテンションローラ14の自重により逆走することを防止するために、移動チャック83が前記複合体のクランプを解除してから再度前記複合体をクランプするまで前記複合体をクランプする固定チャック85を含む。
【0049】
なお、スリットされたセラミックグリーンテープ3Bに第2の樹脂フィルム7を貼り合わせるだけであれば、ローラ84は必ずしも必要ではなく、移動チャック84と固定チャック85だけで貼り合わせを行うことも可能である。
【0050】
(8)巻取工程
巻取工程では、第2の樹脂フィルム7付のセラミックグリーンテープ3Bをロール9に巻き取る。ロール9は芯材の回りに第2の樹脂フィルム7付のセラミックグリーンテープ3Bが巻き回されたものであり、その芯材が図略のモータにより回転させられる。なお、モータの駆動は、第2の樹脂フィルム7付のセラミックグリーンテープ3Bに過剰なテンションがかからないように、トルクリミッターを用いて制御される。
【0051】
ロール9への巻き取りは、第2の樹脂フィルム7付のセラミックグリーンテープ3Bの搬送面(貼合装置8のベルト面)よりも下方で行われてもよいが、搬送面よりも上方で行われることが好ましい。この場合、図1に示すように、ロール9の上流側に押えローラ17が配置されていることが好ましい。
【0052】
以上の工程により、第2の樹脂フィルム7付のセラミックグリーンテープ3Bが巻き回されたロール9が得られる。このロール9では、第2の樹脂フィルム7付のセラミックグリーンテープ3Bを繰り出したときに、2の樹脂フィルム7付のセラミックグリーンテープ3Bに幅方向の反りがなく、その後のセラミックグリーンシートの打ち抜きを良好に行うことができる。
【0053】
特許文献4に開示されているように、セラミックグリーンテープをスリッターで樹脂フィルムごとスリットし、樹脂フィルム付のセラミックグリーンシートを巻き取った場合には、ロールからセラミックグリーンテープを繰り出したときに、セラミックグリーンテープに幅方向の反りが観察される。これは、スラリーが乾燥されるときの収縮が樹脂フィルムで拘束されて、セラミックグリーンテープに幅方向の引張応力が残存するためである。
【0054】
これに対し、本実施形態の製造方法では、セラミックグリーンテープから樹脂フィルムがいったん剥離されるために、セラミックグリーンテープが幅方向に収縮し、引張応力が残存しない。従って、セラミックグリーンテープが幅方向に反ることを防止することができる。
【0055】
<セラミックシートの製造>
上記のロール9を用いてセラミックシートを製造するには、まず、ロール9から第2の樹脂フィルム7付のセラミックグリーンテープ3Bを繰り出しながら当該セラミックグリーンテープ3Bから第2の樹脂フィルム7を剥離する。ついで、第2の樹脂フィルム7が剥離されたセラミックグリーンテープ3Bから所定形状のセラミックグリーンシートを打ち抜く。打ち抜かれるセラミックグリーンシートの形状は、特に限定されるものではなく、円形、楕円形、矩形、角が丸められた矩形などの何れであってもよい。
【0056】
その後、打ち抜いたセラミックグリーンシートと別途用意したスペーサシートとを交互に積み重ねて積層体を形成する。このとき、セラミックグリーンシートとスペーサシートの表面に、それらの接合を抑制する粉体を散布することが好ましい。最後に、形成した積層体を焼成炉に入れて当該積層体中のセラミックグリーンシートを焼成する。これにより、セラミックシートが得られる。
【0057】
<変形例>
本発明の製造方法は、上述した工程のうちで少なくとも塗工工程、乾燥工程、剥離工程、スリット工程、貼合工程および巻取工程を含めばよく、前記実施形態から種々の変形が可能である。また、各工程における具体的な方法も、必ずしも前記実施形態のとおりである必要はない。
【0058】
例えば、貼合工程および巻取工程を連続的に行うために、貼合装置8の代わりに、第2の樹脂フィルム7付のセラミックグリーンテープ3Bを挟み込む一対のローラを採用してもよい。この構成であれば、バッファ工程が不要になる。さらには製造ラインが短くなるために、是正工程も省略できる可能性がある。
【0059】
また、例えば、テンションローラ14の下流側のグリーンテープ用ガイドローラ15に逆転防止機構を設ければ、貼合装置8の固定チャック85を省略することもできる。
【0060】
また、是正工程は、コンベア6の代わりに搬送ローラを用いて、その搬送ローラを平面視でセラミックグリーンテープ3Bの進行方向に対して傾けることによって行ってもよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら制限されるものではない。
【0062】
本実施例では、図1に示す製造装置1を用いてセラミックグリーンテープの製造を行った。
【0063】
まず、スラリーを以下のように調製した。市販の8モル%イットリア安定化ジルコニア粉末(東ソー株式会社製、商品名「TZ−8YS」、平均粒子径:0.52μm、比表面積:8.5m2/g、以下8YSZと記す)99.5質量部とアルミナ粉末(昭和電工社製、商品名「AL−160SG」)0.5質量部(すなわち、セラミック粒子100質量部)、溶媒であるトルエン/イソプロパノール混合液(トルエン/イソプロパノール質量比=3/2)50質量部、および分散剤であるソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤2質量部との混合物を、ボールミルを用いて粉砕しつつ混合した。当該混合物へ、バインダーとしてメタクリレート系共重合体(数平均分子量:100,000、ガラス転位温度:−8℃、固形分濃度:50%)を固形分換算で15質量部と、可塑剤であるジブチルフタレート3質量部を添加し、さらにボールミルにより混合した。得られた混合物を濃縮脱泡し、25℃での粘度を3Pa・sに調整し、スラリーを得た。
【0064】
第1の樹脂フィルムとして、片面に剥離剤がコーティングされた、幅580mm、厚さ188μmのPETフィルムを用い、これを0.35m/分の速度で走行させながら、その上に調製したスラリーを塗工した。スラリーが塗工されたPETフィルムを、温度35℃の空気を循環させる自然乾燥室、温度80℃の空気を循環させる第1加熱乾燥室、温度100℃の空気を循環させる第2加熱乾燥室を通過させ、厚さ250μmのPETフィルム付のセラミックグリーンテープを得た。
【0065】
セラミックグリーンテープからPETフィルムを剥離した後に、セラミックグリーンテープを180mm間隔で配置されたスリッターでスリットし、幅180mmのセラミックグリーンテープを得た。
【0066】
その後、実施形態の欄で説明したように、バッファ工程、是正工程および貼合工程を行った。貼合工程では、第2の樹脂フィルムとして幅164mm、厚さ125μmのPETフィルムを用いた。最後に、巻取工程を行い、PETフィルム付のセラミックグリーンテープが巻き回されたロールを得た。
【符号の説明】
【0067】
1 製造装置
2 第1の樹脂フィルム
3A,3B セラミックグリーンテープ
5 スリッター
6 コンベア
7 第2の樹脂フィルム
8 貼合装置
81 エンドレスベルト
82 ローラ
83 移動チャック
84 ローラ
85 固定チャック
9 ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂フィルムを繰り出しながら前記第1の樹脂フィルム上にセラミック粒子を含むスラリーを塗工する工程と、
塗工された前記スラリーを乾燥させてセラミックグリーンテープを生成する工程と、
前記セラミックグリーンテープから前記第1の樹脂フィルムを剥離して巻き取る工程と、
前記第1の樹脂フィルムが剥離された前記セラミックグリーンテープをスリッターでスリットする工程と、
第2の樹脂フィルムを繰り出しながらスリットされた前記セラミックグリーンテープに前記第2の樹脂フィルムを貼り合わせる工程と、
前記第2の樹脂フィルム付の前記セラミックグリーンテープを巻き取る工程と、
を含む、セラミックグリーンテープの製造方法。
【請求項2】
前記第2の樹脂フィルムの幅は、前記第1の樹脂フィルムの幅よりも小さい、請求項1に記載のセラミックグリーンテープの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセラミックグリーンテープの製造方法により得られた前記第2の樹脂フィルム付の前記セラミックグリーンテープが巻き回されたロールから前記第2の樹脂フィルム付の前記セラミックグリーンテープを繰り出しながら当該セラミックグリーンテープから前記第2の樹脂フィルムを剥離する工程と、
前記第2の樹脂フィルムが剥離された前記セラミックグリーンテープから所定形状のセラミックグリーンシートを打ち抜く工程と、
前記セラミックグリーンシートとスペーサシートとを交互に積み重ねて積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成炉に入れて当該積層体中の前記セラミックグリーンシートを焼成する工程と、
を含む、セラミックシートの製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−82094(P2013−82094A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222232(P2011−222232)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(391028052)共立エレックス株式会社 (15)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】