説明

セラミックコンデンサ、セラミックコンデンサの製造方法及びセラミックグリーンシート

【課題】簡易な製造工程を経て製造することができ、生産性が高いセラミックコンデンサ、セラミックコンデンサの製造方法及びセラミックグリーンシートを提供する。
【解決手段】磁性及び導電性を有するナノファイバー4又はナノチューブを含有するシート状のセラミック焼結体2と、前記セラミック焼結体2のシート面上に形成された外部電極3とからなるセラミックコンデンサ1であって、前記セラミック焼結体2において、前記磁性及び導電性を有するナノファイバー4又はナノチューブは、前記外部電極3が形成されたシート面に対して垂直方向に配向しており、かつ、少なくとも一部の前記磁性及び導電性を有するナノファイバー4又はナノチューブは、一方の端が前記外部電極3と接しているセラミックコンデンサ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な製造工程を経て製造することができ、生産性が高いセラミックコンデンサ、セラミックコンデンサの製造方法及びセラミックグリーンシートに関する。
【背景技術】
【0002】
積層型の電子部品、例えばセラミックコンデンサは、多数の誘電体層と、これらの誘電体層の間に配置され、一端が対向する側面に交互に露出する内部電極と、対向する側面にそれぞれ設けられた一対の外部電極とから構成されている。
【0003】
従来の積層セラミックコンデンサの誘電体層及び内部電極は、一般に次のような工程を経て製造される。ポリビニルブチラール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加え、ボールミル等により均一に混合し、脱泡後に一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。このスラリー組成物をドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム又はSUSプレート等の支持体面に流延成形する。これを加熱等により、溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
【0004】
次に、得られたセラミックグリーンシート上に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗工したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を得る。この積層体中に含まれるバインダー成分等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行った後、焼成して得られるセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結する工程を経て積層セラミックコンデンサが得られる。
このように、積層セラミックコンデンサの製造には、極めて複雑かつ煩雑な工程を要する。
【0005】
また、近年では、積層型セラミックコンデンサの小型化、大容量化が求められており、誘電体及び内部電極の薄膜化、多層化が進められている。
しかしながら、このような積層セラミックコンデンサにおいては、セラミックグリーンシートの表面に所定のパターンで電極層が形成された領域と、電極層が形成されていない領域との間に生じた段差が累積することによって、積層体を圧着する工程で、均一に圧力を加えることができず、デラミネーションと呼ばれる層間剥離が発生するという問題があった。
【0006】
これに対して、例えば、特許文献1には、電極層が形成されていない領域に誘電体ペーストを印刷することにより段差を解消する方法が検討されている。しかしながら、この方法では、セラミックコンデンサの製造工程や構造が更に複雑になるという問題があった。
【特許文献1】特開2005−171177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、簡易な製造工程を経て製造することができ、生産性が高いセラミックコンデンサ、セラミックコンデンサの製造方法及びセラミックグリーンシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを含有するシート状のセラミック焼結体と、前記セラミック焼結体のシート面上に形成された外部電極とからなるセラミックコンデンサであって、前記セラミック焼結体において、前記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、前記外部電極が形成されたシート面に対して垂直方向に配向しており、かつ、少なくとも一部の前記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、一方の端が前記外部電極と接しているセラミックコンデンサである。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、シート状のセラミック焼結体及び前記セラミック焼結体のシート面上に形成された外部電極からなるセラミックコンデンサにおいて、前記セラミック焼結体が磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを含有し、更に、この磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブが、前記外部電極が形成されているシート面に対して垂直方向に配向しており、かつ、少なくとも一部の磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、一方の端が前記外部電極に接していることによって、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブが内部電極として機能するセラミックコンデンサを得ることができることを見出した。これにより、セラミックコンデンサの製造工程において、誘電体と内部電極とを別々に製造して積層させる必要がなくなり、製造工程が簡素化され、生産性を向上させることが可能となるとともに、デラミネーションが発生することがないセラミックコンデンサを作製することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明のセラミックコンデンサの一例を図1に示す。
図1aは、本発明のセラミックコンデンサの電圧印加前の状態を示す断面図であり、図1bは、本発明のセラミックコンデンサの電圧印加後の状態を示す断面図である。
図1aに示すように、セラミックコンデンサ1は、セラミック焼結体2と、セラミック焼結体2のシート面上に形成された外部電極3とからなる。セラミック焼結体2は、磁性及び導電性を有するナノファイバー4を含有しており、磁性及び導電性を有するナノファイバー4は、外部電極2が形成されたシート面に対して垂直方向に配向しており、少なくとも一部の磁性及び導電性を有するナノファイバー4は、一方の端が外部電極2と接している。磁性及び導電性を有するナノファイバー4同士は、ナノファイバー連鎖部4aを形成し、電気的に接続されている。
このようなセラミックコンデンサ1に電圧を印加すると、図1bに示すように、シート上面に形成された負電極3aとシート下面に形成された正電極3bとが、セラミック焼結体2を介して電気的に接続されている。
【0011】
本発明のセラミックコンデンサは、シート状のセラミック焼結体と、前記セラミック焼結体のシート面上に形成された外部電極とからなる。
【0012】
上記セラミック焼結体は、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを含有する。
本明細書において、上記磁性及び導電性を有するナノファイバーとは、磁性及び導電性を有する材料からなる極細繊維のことを意味する。また、上記磁性及び導電性を有するナノチューブとは、磁性及び導電性を有する材料からなる極細中空繊維のことを意味する。
【0013】
上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを構成する磁性及び導電性を有する材料としては特に限定されないが、例えば、ニッケル、アルミニウム、鉄、コバルト、クロム、フェライト、マグネシウム、パラジウム、ジルコニウム、又は、その合金、その化合物等が挙げられる。
このようなナノファイバー又はナノチューブを用いることによって、本発明のセラミックコンデンサにおいて、上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを内部電極とすることができ、電気特性に優れたコンデンサを得ることができる。
【0014】
上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、繊維長又はチューブ長の好ましい下限は1μm、好ましい上限は100μmである。1μm未満であると、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブ同士が電気的に接続されないことがある。100μmを超えると、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブをシート面に垂直方向に配向させる際に、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブが絡み合って、充分に整列しないことがある。
【0015】
上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、高アスペクト比構造を有することが好ましく、アスペクト比(繊維径又はチューブ径/繊維長又はチューブ長)の好ましい下限は20である。アスペクト比が20未満であると、充分な異方導電性が得られず、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブが内部電極として機能しないことがある。
【0016】
上記セラミック焼結体において、上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、上記外部電極が形成されたシート面に対して垂直方向に配向しており、かつ、少なくとも一部の磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、一方の端が外部電極と接している。
このように配向していることによって、本発明のセラミックコンデンサにおいて、上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを内部電極とすることができ、電気特性に優れたセラミックコンデンサを得ることができる。
【0017】
上記セラミック焼結体において、上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、ナノファイバー連鎖部又はナノチューブ連鎖部を有することが好ましい。
なお、上記ナノファイバー連鎖部又はナノチューブ連鎖部とは、上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブ同士が電気的に接続している部分のことを意味する。
このような連鎖部を有することによって、本発明のセラミックコンデンサにおいて、上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブ同士が電気的に導通して、内部電極となることにより、優れた電気特性を有するセラミックコンデンサが得られる。
【0018】
上記磁性及び導電性を有するナノファイバーを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、磁性及び導電性を有する材料をアルカリ溶液に浸漬し、温度を20℃から200℃まで昇温することによって製造する方法が挙げられる。
【0019】
上記磁性及び導電性を有するナノチューブを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、有機物からなる極細繊維を、無電解めっき浴に浸漬することによって磁性及び導電性を有する材料によるめっきを施し、得られた磁性及び導電性を有する材料で被覆された有機物繊維を、アルカリ溶液に浸漬し、有機物繊維を溶解させることによって製造する方法が挙げられる。
【0020】
上記セラミック焼結体は、例えば、セラミック粉末を有機バインダー中に分散したセラミックペーストを成形した後、焼成及び脱脂して得ることができる。
上記セラミック粉末としては、誘電性を示すものであれば特に限定されず、複合酸化物又は酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等、又は、これらを混合した粉末を用いることができる。具体的には、例えば、チタン酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化マンガン等の粉末が挙げられる。これらのセラミック粉末は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記外部電極は、上記セラミック焼結体のシート面上に形成されている。
上記外部電極としては特に限定されず、例えば、導電体粉末、有機バインダー等を含有する外部電極用ペーストを用いて形成することができる。
【0022】
上記導電体粉末としては、導電性を示すものであれば特に限定されないが、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅、又は、これらの合金等からなる微粒子等が挙げられる。これらの導電粉末は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記有機バインダーとしては特に限定されないが、例えば、エチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これらの有機バインダーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明のセラミックコンデンサを製造する方法としては特に限定されないが、例えば、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブ、セラミック粉末、及び、有機バインダーを含有するセラミックグリーンシート用組成物をシート状に成形してシート成形体を作製する工程、前記シート成形体に磁場を印加することによって前記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを前記シート成形体のシート面に対して垂直方向に配向させてセラミックグリーンシートを作製する工程、前記セラミックグリーンシートを焼成してシート状のセラミック焼結体を作製する工程、及び、前記セラミック焼結体のシート面上に外部電極を形成する工程を有するセラミックコンデンサの製造方法を用いることができる。このようなセラミックコンデンサの製造方法もまた、本発明の一つである。
このような製造方法によって、セラミック焼結体のシート面に対して垂直方向に配向した磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを含有するセラミックコンデンサを得ることができ、上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、セラミックコンデンサにおいて内部電極とすることができるため、セラミックコンデンサの製造工程を簡易化し、生産性を向上させることが可能となる。
【0025】
本発明のセラミックコンデンサの製造方法としては、具体的には、例えば、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブ、セラミック粉末、有機バインダー、及び、有機溶剤を含有する原材料を混合して得られたセラミックグリーンシート用組成物を、ポリエチレンテレフタレート等の支持体上に塗工し、シート状に成形してシート成形体を作製し、このシート成形体に磁場を印加することによって、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブをシート成形体のシート面に対して垂直方向に配向させ、その後、乾燥することによりセラミックグリーンシートを作製する。または、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブ、セラミック粉末、及び、熱可塑性バインダーを含有するセラミックグリーンシート用組成物を、シート状に成形し、得られたシートに熱を加えることによって、シートの粘度を低下させた状態で磁場を印加し、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブをセラミックグリーンシートのシート面に対して垂直方向に配向させ後に、冷却してセラミックグリーンシートを作製する。次いで、得られたセラミックグリーンシートに含有される有機成分を熱分解する処理、いわゆる脱脂処理を行った後、焼成してシート状のセラミック焼結体を得た後、導電ペーストを塗工し、めっき処理を行い、導電版の貼り合せ等を行うことによって外部電極をセラミック焼結体のシート面上に形成する方法等を用いることができる。
【0026】
本発明のセラミックコンデンサの製造方法は、セラミックグリーンシート用組成物をシート状に成形してシート成形体を作製する工程を有する。
上記セラミックグリーンシート用組成物は、上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブ、セラミック粉末、及び、有機バインダーを含有する。
【0027】
上記セラミックグリーンシート用組成物において、上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブの含有量は、上記セラミック粉末100重量部に対して、好ましい下限が5重量部、好ましい上限が40重量部である。5重量部未満であると、内部電極として機能する面積が不充分となり、充分な電気特性が得られないとなることがある。40重量部を超えると、磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブ同士の絡み合いが多くなる為に良好な分散が困難になると同時に、磁場によってシート面に対して垂直方向に配向させることも困難になることがある。
【0028】
上記セラミック粉末としては、誘電性を示すものであれば特に限定されず、複合酸化物又は酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等、又は、これらを混合した粉末を用いることができる。具体的には、例えば、チタン酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化マンガン等の粉末が挙げられる。これらのセラミック粉末は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記有機バインダーとしては特に限定されず、例えば、エチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これらの有機バインダーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記セラミックグリーンシート用組成物は、有機溶剤を含有してもよい。
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酪酸2−エチルヘキシル等のエステル類;メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、α−テルピネオール、ターピニルアセテート、ジヒドロテルピネオール、ジヒドロテルピネオールアセテート、ブチルセルソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記セラミックグリーンシート用組成物は、更に、分散剤を含有してもよい。
上記分散剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪酸、脂肪族アミン、アルカノールアミド、リン酸エステルを好適に用いることができる。
【0032】
上記脂肪酸としては特に限定されず、例えば、ベヘニン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸、ヤシ脂肪酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸、牛脂脂肪酸、ヒマシ硬化脂肪酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。なかでも、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が好適である。
上記脂肪族アミンとしては特に限定されず、例えば、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アルキル(ヤシ)アミン、アルキル(硬化牛脂)アミン、アルキル(牛脂)アミン、アルキル(大豆)アミン等が挙げられる。
上記アルカノールアミドとしては特に限定されず、例えば、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
上記リン酸エステルとしては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステルが挙げられる。
【0033】
上記セラミックグリーンシート用組成物は、更に、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0034】
上記シート状に成形する方法としては、例えば、セラミックグリーンシート用組成物をポリエチレンテレフタレート等の支持体上に塗工する方法、成形機を用いる方法等が挙げられる。
上記セラミックグリーンシート用組成物をポリエチレンテレフタレート等の支持体上に塗工する方法としては特に限定されず、例えば、ドクターブレード、エクストルージョンコーター、ワイヤーバーコーター等やスクリーン印刷機、グラビア印刷機等を用いる方法が挙げられる。
上記成形機を用いる方法としては特に限定されず、例えば、カレンダ成形、Tダイ等を用いる方法が挙げられる。
【0035】
本発明のセラミックコンデンサの製造方法は、上記シート成形体に磁場を印加することによって上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを上記シート成形体のシート面に対して垂直方向に配向させてセラミックグリーンシートを作製する工程を有する。
【0036】
上記磁場を印加する方法としては特に限定されず、例えば、所定の電流、電圧を印加したソレノイドコイル上に載置する方法、超伝導磁石、永久磁石等の磁石上に載置する方法等が挙げられる。
【0037】
上記セラミックグリーンシート用組成物をシート状に成形してシート成形体を作製する工程において、上記ポリエチレンテレフタレート等の支持体上に塗工する方法を用いた場合には、上記磁場を印加した後に、シート成形体を乾燥させることによって、セラミックグリーンシートを得ることができる。
【0038】
上記セラミックグリーンシート用組成物をシート状に成形してシート成形体を作製する工程において、上記成形機を用いる方法を使用した場合には、上記磁場を印加する前に、成形したシートに熱を加えることによって、シート成形体の粘度を低下させることが好ましい。これにより、上記シート成形体において上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを上記シート成形体のシート面に対して垂直方向に配向させることが更に容易となる。
【0039】
上記磁場を印加することによって上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを上記シート成形体のシート面に対して垂直方向に配向させてセラミックグリーンシートを作製する工程において、上記シート成形体は、回転式粘度計(英弘精機社製)を用いて測定した粘度が10万Pa・s未満であることが好ましい。10万Pa・s以上であると、磁場を印加した際に、上記シート成形体において上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを上記シート成形体のシート面に対して垂直方向に配向させることが困難となることがある。
【0040】
上記粘度を測定する際の温度としては特に限定されず、粘度が10万Pa・s未満になる温度となるように熱を加えてよいが、好ましい上限は90℃である。90℃を超えると、シート成形体含有物の揮発や熱分解が起こり易くなり、シート内にボイドが発生するため、均一なシート成形体が得られないことがある。
【0041】
本発明のセラミックコンデンサの製造方法において、上記導電性を有する磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブ、上記セラミック粉末、及び、上記有機バインダーを含有するセラミックグリーンシートであって、上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、上記セラミックグリーンシートのシート面に対して垂直方向に配向されているセラミックグリーンシートを中間生成物として得ることができる。
このようなセラミックグリーンシートもまた、本発明の一つである。
【0042】
本発明のセラミックコンデンサの製造方法は、上記セラミックグリーンシートを焼成してセラミック焼結体を作製する工程を有する。
上記セラミックグリーンシートを焼成する方法としては特に限定されず、例えば、まず大気雰囲気下において200〜500℃にて徐々に脱バインダーを行い、その後、還元雰囲気下において950〜1350℃の高温で焼成してセラミックを焼結させる方法等が挙げられる。
【0043】
本発明のセラミックコンデンサの製造方法は、上記セラミック焼結体に両面研磨を施す工程を有していてもよい。
このような両面研磨を施すことによって、少なくとも一部の上記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブの一方の端が、セラミック焼結体のシート面に露出し、外部電極と接続するため、内部電極として機能することができる。
上記両面研磨の方法としては特に限定特に限定されず、例えば、バレル研磨、バフ研磨、ガラ研磨、ベルト研磨、ブラスト研磨等が挙げられる。
【0044】
本発明のセラミックコンデンサの製造方法は、上記セラミック焼結体のシート面上に外部電極を形成する工程を有する。
上記外部電極を形成する方法としては特に限定されず、例えば、上記導電粉末、上記有機バインダー等を混合して得られた外部電極用ペーストを塗工し、窒素雰囲気下で焼結することによって形成する方法が挙げられる。
【0045】
上記外部電極は、上記セラミックグリーンシートのシート面上に上記外部電極用ペーストを塗工し、上記セラミック焼結体と上記外部電極とを、同時に焼成及び焼結することによって形成してもよい。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、セラミックコンデンサの製造において、誘電体と内部電極とを別々に製造し複数枚積層する必要がないため、簡易な製造工程を経て製造することができ、生産性が高く、かつ、デラミネーションが発生することがないセラミックコンデンサ、セラミックコンデンサの製造方法及びセラミックグリーンシートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
(実施例)
(磁性ナノチューブの作製)
6−{2−sec−ブチル−4−(4−ピリジルアゾ)フェノキシ}ヘキサン酸の粉末1gをpH12の水酸化ナトリウム水溶液1000mlに溶解し、均質な水溶液を調製した。この水溶液に二酸化炭素を3時間吹き込み(吹き込み量:100ml/min)、軸径1μm、長さ約20μmの有機物繊維を得た。
【0049】
得られた有機物繊維を、脱イオン水で洗浄し、6×10-3質量%の塩化パラジウム及び0.6質量%の塩化ナトリウムを溶解した酢酸緩衝液(pH5、0.1モルdm-3)500mlに浸漬した。室温で30分間静置した後、脱イオン水で洗浄を行った。次いで、脱イオン水による洗浄を行った有機物繊維を、1.5質量%の次亜リン酸ニッケル6水和物、1.2質量%のホウ酸、0.24質量%の酢酸ナトリウム及び0.12質量%の硫酸アンモニウムを含むpH5.5の無電解ニッケルめっき浴に浸漬し、室温で30分静置した。更に、4.5質量%の次亜リン酸ニッケル6水和物、1.2質量%のホウ酸、0.24質量%の酢酸ナトリウム及び0.12質量%の硫酸アンモニウムを含むpH5.5の無電解めっき浴に浸漬し、室温で24時間静置した後、脱イオン水で洗浄を行い、金属ニッケルで被覆された有機物繊維を得た。
【0050】
得られた金属ニッケルで被覆された有機物繊維を、pH14の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、室温で24時間静置し、有機物繊維を溶解させ、PTFEメンブランフィルター(ポアサイズ:0.2μm)を用いてろ過し、脱イオン水で洗浄し、中空状のニッケルチューブを得た。
【0051】
(セラミックスラリー組成物の調製)
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックB「BM−S」、重合度800、積水化学工業社製)6重量部を、トルエン70重量部とエタノール70重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解した。更に、この樹脂溶液に可塑剤としてジブチルフタレート3重量部を加え、攪拌溶解した。こうして得られた樹脂溶液に、得られたニッケルチューブ20重量部、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(BT−01、平均粒径0.1μm、堺化学工業社製)100重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。
【0052】
(磁性ナノチューブ配向セラミックグリーンシートの作製)
得られたセラミックスラリー組成物を、減圧オーブンを用いて、40℃で、1時間、有機溶剤を揮発させた後に、PETフィルム上に乾燥後の膜厚が150μmになるように塗工し、電流20A、電圧30Vを印加した直流ソレノイドコイル(玉川製作所社製)の上に10分間放置し、常温で1時間風乾し、更に熱風乾燥機を用いて80℃で3時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
【0053】
(セラミックコンデンサの作製)
得られたセラミックグリーンシートを5cm角の大きさに切断し、窒素雰囲気下において、昇温速度3℃/分で450℃まで昇温し、5時間保持後、更に昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温し、10時間保持してセラミック焼結体を得た。このようにして得られたセラミック焼結体に、両面研磨を施した後、図2に示すように外部電極用ペーストを両面にパターン印刷をした。
次いで、窒素雰囲気下において、昇温速度10℃/分で700℃まで昇温し、10分間保持後、冷却して外部電極を形成した。更に、形成した外部電極上にめっきを施して、セラミックコンデンサを作製した。
【0054】
(比較例)
(セラミックグリーンシートの作製)
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックB「BM−S」、重合度800、積水化学工業社製)6重量部を、トルエン70重量部とエタノール70重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解した。この樹脂溶液に可塑剤としてジブチルフタレート3重量部を加え、攪拌溶解した。更に、この樹脂溶液に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(BT−01、平均粒径0.1μm、堺化学工業社製)100重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。
得られたセラミックスラリー組成物を、剥離層を形成した基材シート上に、乾燥後の厚みが約1μmになるように塗布し、常温で1時間風乾し、更に熱風乾燥機、80℃で3時間、続いて120℃で2時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
【0055】
(導電ペーストの作製)
導電粉末としてのニッケル微粒子(2020SS、三井金属社製)100重量部に対して、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックB「BM−S」、積水化学工業社製)7重量部とα−テルピネオール60重量部とを加え、三本ロールで混練して導電ペーストを得た。混練は光学顕微鏡にて凝集物(未解砕物)が認められなくなるまでロールを通すことにより行った。
【0056】
(セラミックコンデンサの作製)
得られた導電ペーストをセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷により導電パターンを印刷した。印刷速度は約4m/分であった。導電パターンが形成されることによって生じた段差を吸収するための誘電層用ペーストは40℃で加熱し、撹拌して余剰のエタノール及びトルエンを揮発させて調整し、セラミックグリーンシート上の導電パターンが形成されていない部分にスクリーン印刷を行った。
得られた電極層を形成したグリーンシートを50層積層し、カットした後に焼結させた。これを研磨した後に外部電極用ペーストを両端にディップ法にて塗布し、実施例と同様に焼成、めっきを施してセラミックコンデンサを作製した。
【0057】
(評価)
実施例で得られたセラミックコンデンサに電気信号を加えたところ、コンデンサとしての応答が認められた。
また、実施例では、従来必要とされていた内部電極のスクリーン印刷工程、セラミックグリーンシートと内部電極とからなるユニットの積層工程等を省くことができるため、比較例に比して、セラミックコンデンサの製造に要する時間を40%以上も短縮することができた。
更に、実施例で得られたセラミックコンデンサは、積層体ではないため、従来、生産効率を考える上で大きな問題となっていたデラミネーションが発生することなく、極めて効率的にセラミックコンデンサを作製し得ることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、簡易な製造工程を経て製造することができ、生産性が高いセラミックコンデンサ、セラミックコンデンサの製造方法及びセラミックグリーンシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1a】本発明のセラミックコンデンサの一例を示す模式断面図である。
【図1b】本発明のセラミックコンデンサの一例を示す模式断面図である。
【図2】実施例で作製したセラミックコンデンサにおける外部電極の配置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0060】
1 セラミックコンデンサ
2 セラミック焼結体
3 外部電極
3a 負電極
3b 正電極
4 磁性及び導電性を有するナノファイバー
4a ナノファイバー連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを含有するシート状のセラミック焼結体と、前記セラミック焼結体のシート面上に形成された外部電極とからなるセラミックコンデンサであって、
前記セラミック焼結体において、前記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、前記外部電極が形成されたシート面に対して垂直方向に配向しており、かつ、少なくとも一部の前記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、一方の端が前記外部電極と接している
ことを特徴とするセラミックコンデンサ。
【請求項2】
磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブ、セラミック粉末、及び、有機バインダーを含有するセラミックグリーンシート用組成物をシート状に成形してシート成形体を作製する工程、
前記シート成形体に磁場を印加することによって前記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを前記シート成形体のシート面に対して垂直方向に配向させてセラミックグリーンシートを作製する工程、
前記セラミックグリーンシートを焼成してシート状のセラミック焼結体を作製する工程、及び、
前記セラミック焼結体のシート面上に外部電極を形成する工程を有する
ことを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法。
【請求項3】
シート成形体に磁場を印加することによって磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブを前記シート成形体のシート面に対して垂直方向に配向させてセラミックグリーンシートを作製する工程において、前記シート成形体は、回転式粘度計を用いて測定した粘度が10万Pa・s未満であることを特徴とする請求項2記載のセラミックコンデンサの製造方法。
【請求項4】
磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブ、セラミック粉末、及び、有機バインダーを含有するセラミックグリーンシートであって、前記磁性及び導電性を有するナノファイバー又はナノチューブは、前記セラミックグリーンシートのシート面に対して垂直方向に配向されていることを特徴とするセラミックグリーンシート。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−149975(P2007−149975A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342454(P2005−342454)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】