説明

セラミックス成形体の製造方法およびこれを用いたセラミックス焼結体の製造方法

【課題】本発明は、表面がきれいな複雑形状成形体を乾燥時の割れや変形がなく、また焼結体としたときの物性が優れたセラミックス成形体の製造方法を提供するものである。
【解決手段】セラミックス粉体、分散剤、硬化性樹脂および溶媒を含む混合物を溶媒可溶性の成形型内に注入する工程、注入した該混合物を硬化させて成形し、含溶媒セラミックス成形体とする工程、該成形型を溶剤で溶解除去する脱型工程、該脱型工程によって得られた含溶媒セラミックス成形体を乾燥させる工程を有するセラミックス成形体の製造方法において、該成形型として内側表面に撥水処理を施した成形型を用いることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複雑形状のセラミックス製品を容易に製造するためのセラミック成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複雑形状のセラミックス部品を要求されるようになり、射出成形、鋳込み成形、押出し成形等で検討がなされている。中でも複雑で大物形状の成形に適している鋳込み成形方法は、それに適する樹脂バインダーや成形型の検討がなされ、様々な提案がされている(特許文献1、2、3、4、5、6)。
【0003】
しかしながら、これらの成形方法で複雑形状物を成形する場合において、成形型に課題がある。複雑形状物を成形するためには、成形型は崩壊性の型である必要がある。素材としてはロストワックス、発泡スチロールが好適である。しかしロストワックスは成形後の脱型工程において溶解させる際、成形体から完全には取れず、表面に薄い膜を形成する。そのため、その後の乾燥工程で不均一な乾燥がおこり、成形体が割れてしまうという現象が発生する。一方発泡スチロールはリモネン等の溶剤できれいに溶解するため乾燥等に影響はないが、成形体表面に発泡スチロールの表面形状が転写してしまうため表面がざらざらな成形体となってしまい、成形体の後加工に長時間を費やす必要が生じたり、製品に出来ないという問題が発生する。また、発泡体樹脂表面に有機溶媒に対して不溶な樹脂の被覆を施した中子型を使用するスリップキャスティングが提案されている(特許文献7)。しかしながら表面粗度は向上するが、発泡体樹脂溶解後に有機溶媒に不溶な樹脂膜を成形体から外す際、うまく成形体から外せなかったり、有機溶媒に不溶な樹脂を被覆することにより複雑形状部の寸法や形状が正確に作成できないという問題が発生している。
【特許文献1】特公平7−22931号公報
【特許文献2】特許第3692682号公報
【特許文献3】特開平2001−278673号公報
【特許文献4】特開2005−53716号公報
【特許文献5】特開2007−136912号公報
【特許文献6】特開2004−034572号公報
【特許文献7】特開平5−111907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、表面状態がきれいで寸法精度の良い複雑形状成形体を、乾燥割れや変形がなく簡単に製造でき、また焼結体としたときの物性に優れたセラミックス成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するために以下のような手段を採用するものである。すなわち、セラミックス粉体、分散剤、硬化性樹脂および溶媒を含む混合物を溶媒可溶性の成形型内に注入する工程、注入した該混合物を硬化させて成形し、含溶媒セラミックス成形体とする工程、該成形型を溶剤で溶解除去する脱型工程、該脱型工程によって得られた含溶媒セラミックス成形体を乾燥させる工程を有するセラミックス成形体の製造方法において、該成形型として内側表面に撥水処理を施した成形型を用いることを特徴とするセラミックス成形体の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、表面状態がきれいで寸法精度の良い複雑形状の成形体を、乾燥割れや変形がなく簡単に製造でき、また焼結体としたときの物性に優れたセラミックス成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
セラミックス粉体、分散剤、硬化性樹脂、ならびに溶媒を含む混合物を溶媒可溶性の成形型内に注入する工程、注入した該混合物を硬化させて成形し、含溶媒セラミックス成形体とする工程、該成形型を溶剤で溶解除去する脱型工程、該脱型工程によって得られた含溶媒セラミックス成形体を乾燥させる工程を有するセラミックス成形体の製造方法において、該成形型として内側表面に撥水処理を施した成形型を特徴とするセラミックス成形体の製造方法である。
【0008】
ここで、セラミックス粉体とは、その種類を限定されるものではないが、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウム、SIALONなどの粉末があげられる。これらは単独で使用してもよいし、適宜混合してもよい。
【0009】
石膏型等の吸水性の成形型を用いない鋳込み方法はセラミックス粉体、分散剤、硬化性樹脂および溶媒を含む混合物を作成し、成形型内に注入する工程、注入した前記混合物を成形し含溶媒セラミックス成形体とする工程、前記成形型を取り除く脱型工程、前記含溶媒セラミックス成形体を乾燥させる工程で成り立っている。しかし、複雑形状の成形体を製造するためには、成形型は崩壊性の型である必要がある。成形型を取り除く脱型工程としてはロストワックス等を用いて加熱することによって溶融除去する方法、発泡性樹脂等の溶剤に可溶な型を用いて溶剤によって溶解除去する方法が挙げられる。しかし、ロストワックス等の熱で融解する成形型は、成形後の脱型工程において融解させる際、成形体から完全には取れず、表面に薄い膜を形成する。そのため、その後の乾燥工程で不均一な乾燥がおこり、成形体が割れてしまうという現象が発生するため、焼結割れが発生する場合がある。そのため、本発明においては、焼結割れ抑制の観点から、溶剤に可溶な型を用いて溶媒で溶解除去する方法が好ましい。溶剤に可溶な型に用いる樹脂は発泡性樹脂が好ましい。特に発泡スチロールはリモネン等により容易に溶解するのでより好ましい。しかし発泡スチロールは表面が平坦でないため、発泡スチロールの面を転写した成形体の表面は表面粗さの大きなざらざらな面となってしまうという欠点がある。この問題を解決するために本発明においては成形型である発砲体表面に撥水処理を施すことが重要である。本発明において撥水処理とは撥水性の樹脂を塗布し、処理後の水に対する接触角を120°以上、好ましくは140°以上にすることをいう。
【0010】
一般に、セラミックス成形体の製造に用いるスラリーは水系であり、発泡体表面を撥水状態にすることにより、表面の凹部にスラリーが浸入することを防止し、平坦できれいな面を有する成形体を作成することができる。撥水処理にはフッ素系樹脂の塗布やシリコーン系樹脂の塗布等が挙げられる。フッ素系樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDE)等が挙げられる。シリコーン系樹脂としてはポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン等を挙げることができる。これら単独でも混合でも良いが、フッ素系樹脂は効果が高く含有しているとより好ましい。塗布する方法は刷毛等で塗っても良いし、ディップコートしても良いし、スプレーのように吹き付けても良い。
【0011】
本発明において用いる硬化性樹脂は重合反応により3次元網目構造を形成するものであればよいが混合物の流動性を高め、成形型への注入を良好にするという点から液状であることが望ましい。硬化性樹脂と溶媒の親和性についても、親和性が悪いと分離して成形体内部で偏析し、焼結時にポアなどの欠陥の原因となる恐れがあるので、溶媒との親和性のよい硬化性樹脂を選択することが望ましい。かかる硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル酸樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。中でもエポキシ樹脂は成形体の保形性を高めるために、好適に用いられる。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のビスフェノール類のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、メチルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、シクロヘキセンオキサイド型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂などが挙げられる。環境への影響から溶媒は水系が好ましく、そのため硬化性樹脂も水溶性が好ましく、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、メチルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、シクロヘキセンオキサイド型エポキシ樹脂が好ましく、中でもグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が室温でも円滑に硬化が起こるのでより好ましい。
エポキシ樹脂の平均分子量は20〜30000が好ましく、平均分子量50〜3000が粉体との混合が容易であり、かつ一定の機械強度が得られることから、より好ましい。さらに好ましくは50〜2500である。かかるエポキシ樹脂は単独で、または複数を組み合わせて用いることもできる。
【0012】
本発明の製造方法において、含溶媒セラミックス成形体の形成に用いる混合物に含まれる硬化性樹脂は、前記混合物中5〜15体積%が好ましい。硬化性樹脂の含有量が前記混合物中、5体積%未満であると含溶媒成形体及び乾燥成形体の強度が不十分な場合があり、15体積%を超えると含溶媒成形体を乾燥工程中に割れが発生したり、乾燥成形体を焼結体とするための脱脂工程や焼結工程など、硬化樹脂を除去する工程において、割れ等の問題が発生するという場合があり好ましくない。
【0013】
本発明の製造方法において、含溶媒セラミックス成形体の形成に用いる混合物は、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、例えばアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミド系硬化剤等を用いることができる。アミン系硬化剤は反応が迅速であるという点で好ましく、酸無水物系硬化剤は耐熱衝撃性にすぐれた硬化物が得られるという点で好ましく用いられる。中でもアミン系硬化剤は室温において硬化可能なことから型の耐熱性などに自由度が増すため好ましい。アミン系硬化剤としては、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミンなどが挙げられ、モノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミンのいずれも用いることができる。
【0014】
このように硬化剤を添加する場合、その添加量は硬化性樹脂との組合せにより適宜決めることができる。すなわち硬化性樹脂の官能基当量と硬化剤の活性基当量により、好ましい配合比は異なるが、例えば、硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を、硬化剤としてポリアミン系硬化剤を用いる場合には、エポキシ当量に対するアミン系硬化剤の活性水素当量の比が0.8〜1.5程度とすることが硬化性の点から好ましい。
【0015】
混合物を成形型内に注入した後、注入した混合物を硬化させて成形し、含溶媒セラミックス成形体を得る。硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を、硬化剤としてポリアミン系硬化剤を用いた常温硬化型のスラリーの場合、室温近辺の常温で好ましくは0.5〜50時間、さらに好ましくは1〜5時間放置して硬化させることによって、含溶媒セラミックス成形体を得ることができる。
【0016】
混合物を硬化させ含溶媒セラミックス成形体を得た後、成形型を溶剤で溶解除去して脱型する。上述のように成形型に発泡スチロールを用いる場合、溶剤としてはリモネンを用いることが特に好ましい。
【0017】
作成した含溶媒セラミックス成形体はこれに使用した粉末や成形体の形状によってそれぞれ適した条件で乾燥することによって、良好な形状を有するセラミックス成形体を得ることができる。さらに、このようにして得られたセラミックス成形体を、これに使用した粉末や成形体の形状によってそれぞれ適した条件で脱脂、焼結することにより、クラックや反りなどのない良好な焼成体を得ることができる。
【0018】
また、乾燥時間を短縮するために脱型工程と乾燥工程の間に熱処理を行っても良い。本発明において熱処理とは含溶媒成形体を乾燥させずに熱をかけることをいう。混合物に使用したものと同成分の溶媒中に含溶媒セラミックス成形体を入れて含溶媒セラミックス成形体に熱をかける方法や高温蒸気中に含溶媒成形体を入れる方法等がある。硬化し脱型した含溶媒成形体を熱処理すると硬化性樹脂が収縮し、含溶媒成形体中の溶媒を絞り出すため、含有する溶媒量を減少させることができる。そのため、含溶媒成形体の弾性率が高くなり乾燥速度を上げることができ、また含有溶媒量が少なく、乾燥時間を短くすることが出来るようになる。熱処理の方法は溶媒中に含溶媒成形体を入れる方法が簡単であり好ましい。
【0019】
本発明の製造方法において、含溶媒セラミックス成形体の形成に用いる混合物は、分散剤を含むことが必要である。特に、分散剤がポリカルボン酸塩であり、分散剤の量がセラミックス粉体に対し、0.2〜1.0重量%の範囲内であることがよい。分散剤は水等の溶媒で希釈されている場合が多く、実際の含有量を用いる。鋳込みに適した混合物を作るためには粉末を溶媒中に分散する必要がある。そのためにpHを調整するものや、分散剤としてヘキサメタリン酸等の無機塩や、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の有機の界面活性剤等を用いることができる。中でもポリカルボン酸系は分散効果が高く、また熱処理により硬化させる効果が高く望ましい。
【0020】
分散剤の含有量がセラミックス粉体に対して0.2重量%未満では分散効果が小さく、1.0重量%を超えると凝集が起こる可能性がある。好ましくは0.3〜0.7重量%である。
【0021】
本発明において前記混合物の粘度が5Pa・s以下であるとよい。粘度は粘度計で測定することができる。セラミックス粉末を含む混合物は非ニュートン流体であり、剪断速度により粘度は変化するため、本発明ではせん断速度1.9(1/s)のときの値とする。5Pa・sを超えると流動性が悪く、複雑形状の成形型に上手く鋳込めなかったり、また混合物に大きな泡がかみこみ、欠陥となることがある。好ましくは3Pa・s以下、より好ましくは1Pa・s以下が望ましい。
【0022】
本発明の製造方法において、含溶媒セラミックス成形体の形成に用いる混合物中のセラミックス粉体の量は70〜90重量%の範囲内が好ましい。セラミックス粉体が70重量%未満の場合では、流動性が高く鋳込みやすいが、含溶媒セラミックスの弾性率が低くて保形性が悪く、また乾燥に時間がかかってしまうため好ましくない。また90重量%を超える場合では、流動性が劣るため好ましくない。
得られたセラミックス成形体を焼結体にするために脱脂、焼結を行う。脱脂条件はバインダーの種類、量、成形体の形状等、焼結温度は使用するセラミックス素材及びセラミックス成形体の形状等により適宜決定すると良い。特に大型成形体や肉厚成形体は脱脂による割れが発生しないように600℃程度まで30℃/時間以下の速度で昇温してバインダーを取り除くと良い。焼結条件は例えば酸化ジルコニウムの場合は大気雰囲気下で1350〜1500℃で2時間〜3時間保持し、700℃程度まで200℃/時間程度で降温後、室温まで100℃/時間以下で降温し、酸化アルミニウムの場合も同様であるが、1550〜1650℃で2時間〜3時間保持すると良い。
【実施例】
【0023】
以下実施例について述べる。
【0024】
実施例の物性の測定、評価は以下のように行った。
(1)BET比表面積
BET比表面積の測定はJIS−R1626(1996)「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に則り、BET1点法で行った。
(2)混合物の粘度
作成した硬化剤添加前の混合物を粘度計によって粘度を測定した。粘度計は株式会社トキメック製E型粘度計DVU−EII型を用いた。測定条件は、ローターは標準1°34′R24を用い、温度20℃、回転数0.5rpm(剪断速度1.9(1/s))とした。
(3)乾燥時の割れ
作製した100mm×70mm、厚さ20mmの含溶媒成形体サンプルを恒温恒湿乾燥機を用いて温度30℃、相対湿度90%で48時間キープした後、30℃、相対湿度70%で48時間キープして割れの有無を確認した。サンプル数は10個とした。
(4)焼結体の相対密度
焼結体の焼結密度をアルキメデス法により測定した。焼結密度を理論密度(組成比)で除した値を百分率で表した値を相対密度(%)とした。ここで、それぞれの理論密度は以下の値を用いた。
酸化アルミニウム:3.98g/cm
酸化ジルコニウム:6.08g/cm
炭化珪素:3.21g/cm
窒化珪素:3.24g/cm
(5)表面粗さ
JISB0601に則り触針法で、焼結体の表面粗さを測定した。測定長は4mmとし、カットオフ値は0.8μmとした。算術平均高さRa(μm)をそれぞれの表面粗さとした。
(6)成形型の水に対する接触角
成形型に純水を滴下して水滴を作り、接触角を測定した。測定には協和界面科学(株)製接触角計CA−Dを使用した。測定は5回行い、上下の値を除いた3点の平均を接触角の値とした。
【0025】
実施例1
表1の実施例1の欄に示す処方の混合物をボールミルに入れ24時間混合した。
セラミックス粉末:酸化アルミニウム(比表面積:BET値 4m/g)
硬化性樹脂:水溶性エポキシ樹脂(グリシジルエーテル型)(ナガセケムテックス製“EX−313”)
溶媒:イオン交換水
分散剤:ポリカルボン酸塩(中京油脂製“D−305”(含有量40%))
次に、ボールミルから混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターで硬化剤を混合し、成形型に流し込み、20℃で24時間放置して硬化させ含溶媒成形体を得た。硬化剤は1−(2−アミノエチル)ピペラジンを使用した。成形型は発泡スチロール製100mm×70mm、厚さ20mmの内面にフッ素塗料撥水スプレー(NTTアドバウステクノロジー製“HIREC1450”)を塗布して乾燥させたものを用いた。水に対する接触角は151°であった。
【0026】
リモネンを用いて脱型後、イオン交換水に浸漬し、溶液を加熱し、80℃で120分保持後含溶媒成形体サンプルを得た。含溶媒成形体サンプルは温度30℃相対湿度90%で48時間加湿乾燥し、割れの有無を確認した。また、100mm×70mm、厚さ20mmの含溶媒成形体サンプルを温度30℃相対湿度90%で5日間加湿乾燥後、100℃で24時間熱風乾燥し、乾燥成形体を得、さらに電気炉で600℃まで25℃/時間で昇温後、さらに昇温し1600℃で2時間焼結し焼結体サンプルを得た。得られた焼結体サンプルで密度、表面粗さを測定した。結果は表1に示す。乾燥割れは発生しなかった。また、焼結体の相対密度は99%以上であり、焼結体の表面粗さはRa0.9μmと小さな値であった。
【0027】
実施例2
表1の実施例2の欄に示す処方の混合物をボールミルに入れ24時間混合した。
セラミックス粉末:酸化ジルコニウム(BET値 12m/g)
硬化性樹脂:水溶性エポキシ樹脂(グリシジルエーテル型)(坂本薬品工業製“SR−PG”)
溶媒:イオン交換水
分散剤:ポリカルボン酸塩(中京油脂製“D−305”(含有量40%))
次に、ボールミルから混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターで硬化剤を混合し、成形型に流し込み、20℃で15時間放置して硬化させ含溶媒成形体を得た。硬化剤は1−(2−アミノエチル)ピペラジンを使用した。成形型は発泡スチロール製100mm×70mm、厚さ20mmにフッ素系防水スプレー(ライカ製“HYDRO−TECH”)を塗布して乾燥させたものを用いた。水に対する接触角は140°であった。リモネンを用いて脱型後、イオン交換水に浸漬し、溶液を加熱し、90℃で60分保持後、室温まで冷却し、含溶媒成形体サンプルを得た。実施例1と同様にして各測定を実施した。なお焼結は1400℃で2時間保持した。結果は表1に示すとおり、混合物の粘度は少し高めであったが乾燥割れは発生しなかった。焼結体の相対密度は98.8%と高い値であり、表面粗さはRa1.6μmと小さな値であった。
【0028】
実施例3
表1の実施例3の欄に示す処方の混合物をボールミルに入れ24時間混合した。
セラミックス粉末:炭化珪素(BET値 15m/g)
硬化性樹脂:水溶性エポキシ樹脂(グリシジルエーテル型)(坂本薬品工業製“SR−PG”)
溶媒:イオン交換水
分散剤:ポリカルボン酸塩(中京油脂製“D−305”(含有量40%)
次に、ボールミルから混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターで硬化剤を混合しながら脱泡し、成形型に流し込み、20℃で15時間放置して硬化させ含溶媒成形体を得た。硬化剤は1−(2−アミノエチル)ピペラジンを使用した。成形型は発泡スチロール製100mm×70mm、厚さ20mmにシリコン系樹脂(中京化成製ペリコートAL−H)を塗布して乾燥させたものを用いた。水に対する接触角は123°であった。リモネンを用いて脱型後、イオン交換水に浸漬し、溶液を加熱し、100℃で30分保持後室温まで冷却し、含溶媒成形体サンプルを得た。実施例1と同様にして各測定を実施した。なお焼結は真空焼結炉を用い、1450℃で2時間保持した。結果は表1に示すとおり乾燥割れは発生しなかった。焼結体の相対密度は99.0%と高く、表面粗さはRa2.4μmであった。
【0029】
実施例4
表1の実施例4の欄に示す処方の混合物をボールミルに入れ24時間混合した。処方の窒化珪素には焼結助剤として酸化ジルコニウム、スピネル(MgAlO)をそれぞれ3.5重量%添加している。
セラミックス粉末:窒化珪素 (BET値6m/g)
硬化性樹脂:水溶性エポキシ樹脂(グリシジルエーテル型)(ナガセケムテックス製“EX−314”)
溶媒:イオン交換水
分散剤:ポリカルボン酸塩(中京油脂製“D−735(含有量20%))
次に、ボールミルから混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターで硬化剤を混合し、成形型に流し込み、20℃で15時間放置して硬化させ含溶媒成形体を得た。硬化剤は1−(2−アミノエチル)ピペラジンを使用した。成形型は発泡スチロール製100mm×70mm、厚さ20mmにシリコン樹脂スプレー(東レ・ダウコーニング製“リリエース”)を塗布して乾燥させたものを用いた。水に対する接触角は120°であった。リモネンを用いて脱型後、イオン交換水に浸漬し、溶液を加熱し、100℃で30分保持後室温まで冷却し、含溶媒成形体サンプルを得た。実施例1と同様にして各測定を実施した。なお焼結は雰囲気焼結炉を用い窒素雰囲気で2000℃2時間保持した。結果は表1に示すとおり乾燥割れは発生しなかった。焼結体の相対密度は99%と高く、表面粗さはRa3.2μmであった。
【0030】
比較例1
表1の比較例1の欄に示す処方の混合物をボールミルに入れ24時間混合した。
セラミックス粉末:酸化アルミニウム(BET値 4m/g)
硬化性樹脂:水溶性エポキシ樹脂(グリシジルエーテル型)(ナガセケムテックス製“EX−313”)
溶媒:イオン交換水
分散剤:ポリカルボン酸塩(中京油脂製“D−305”(含有量40%))
次に、ボールミルから混合物を取り出し、ロータリーエバポレーターで硬化剤を混合し、成形型に流し込み、20℃で24時間放置して硬化させ含溶媒成形体を得た。硬化剤は1−(2−アミノエチル)ピペラジンを使用した。成形型は発泡スチロール製100mm×70mm、厚さ20mmとした。水に対する接触角は110°であった。リモネンを用いて脱型後、含溶媒成形体サンプルを実施例1と同様にして各測定を実施した。結果は表1に示すとおり割れの発生が無く、焼結体密度も99.2%と高かったが、表面粗さがRa12.9μmと高い値であった。
【0031】
比較例2
成形型はロストワックス製100mm×70mm、厚さ20mmを使用した以外は比較例1と同様に実施した。水に対する接触角は106°であった。ロストワックスを湯で溶解させたが成形型表面に付着したワックスは取れきれなかった。結果は表1に示すとおり焼結体密度も99.2%と高く、表面粗さもRa1.5μmと小さな値であったがサンプル10個中6個が乾燥割れを起こした。
【0032】
比較例3
成形型は発泡スチロール製100mm×70mm、厚さ20mmの表面にウレタンエマルジョン(三洋化成製“パーマリンUA−300”)を刷毛で塗布し乾燥させたものを使用した以外は比較例1と同様に実施した。水に対する接触角は69°であった。発泡スチロールを溶解した後、含溶媒セラミックスからウレタン樹脂の膜をはぎ取った。樹脂を塗布した分だけ形状が変わってしまった。結果は表1に示すとおり焼結体密度も99.2%と高かったが表面粗さはRa4.5μmと大きな値であった。
【0033】
【表1】

【0034】
表1の実施例1〜4の欄に示す通り、本発明のセラミックス成形体の製造方法によると、表面粗さが小さく寸法精度が良く、また割れがなく、焼結体とした場合の特性に優れた成形体を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明による成形体の製造方法は、複雑形状物、大型複雑形状物等を好適に提供できるため、大型構造用部品、半導体部品、各種精密部品などに応用することができるが、その応用範囲がこれらに限られるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス粉体、分散剤、硬化性樹脂および溶媒を含む混合物を溶媒可溶性の成形型内に注入する工程、注入した該混合物を硬化させて成形し、含溶媒セラミックス成形体とする工程、該成形型を溶剤で溶解除去する脱型工程、該脱型工程によって得られた含溶媒セラミックス成形体を乾燥させる工程を有するセラミックス成形体の製造方法において、該成形型として内側表面に撥水処理を施した成形型を用いることを特徴とするセラミックス成形体の製造方法。
【請求項2】
前記成形型が発泡スチロールを主成分とする請求項1に記載のセラミックス成形体の製造方法。
【請求項3】
前記撥水処理が前記成形型の内側表面にフッ素系樹脂を塗布することにより施されている請求項1または2に記載のセラミックス成形体の製造方法。
【請求項4】
前記硬化性樹脂が水溶性のエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス成形体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの製造方法によって得られたセラミックス成形体を焼結することを特徴とするセラミック焼結体の製造方法。

【公開番号】特開2009−202451(P2009−202451A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47548(P2008−47548)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】