説明

セラミックス組成物及び電子部品

【課題】低温焼成が可能で、高周波領域での誘電損失が低く、メッキ耐食性に優れた焼結体を得ることが可能なセラミックス組成物及び電子部品を提供する。
【解決手段】Ba(Re(1−x),Bi9.33Ti1854で現わされる主相成分と、主相成分100質量部に対し酸化物換算で、B成分を0.3〜1.4質量部、Li成分を0.1〜0.3質量部、Zn成分を1.5〜7質量部及びAg成分を1.5〜2質量部含有する第1副成分と、主相成分100質量部に対し酸化物換算で、Si成分を0〜1.25質量部、Al成分を0〜1.25質量部、Bi成分を0〜5質量部含有する第2副成分とを含むセラミックス組成物。該セラミックス組成物を焼成して得られるセラミックス層と、該セラミックス層の表面及び/又は内部にあって、セラミックス組成物と同時焼成して得られる導体層とを有する電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温焼成が可能で、高周波領域での誘電損失が低く、メッキ耐食性に優れた焼結体を得ることが可能なセラミックス組成物及び、高周波領域での誘電損失が低く、マイグレーションが改善された電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報の大容量化、情報通信の高速化に伴い、高周波信号を損失なく伝送することが求められている。このため、これらの機器に搭載される回路基板等の電子部品は、高周波領域での誘電損失が低いことが求められている。
【0003】
そこで、これらの電子部品に用いられるセラミックス組成物においては、誘電率εが大きいこと、Q×f値が大きいこと、共振周波数の温度特性τfがゼロに近いこと、といった特性が求められている。
【0004】
しかしながら、誘電率εが高いものほど温度特性τfが悪くなり、Q×f値が小さくなる傾向にある。したがって、誘電率ε及びQ×f値が大きく、温度係数τfが小さいセラミックス組成物を実現することは難しく、各方面でこれら特性を満たす材料開発が進められている。
【0005】
このような材料の一つとして、特許文献1に記載された、Ba6−3x(R1−y,Bi8+2xTi1854で表されるタングステンブロンズ型擬似固溶体からなるセラミックス組成物がある。このセラミックス組成物は、いわゆるタングステンブロンズ型疑似固溶体にBiを一部置換処理したことにより、誘電率εが大きく、ゼロ近傍の共振周波数の温度係数τfを有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−321973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1のセラミックス組成物は、1200℃以上に加熱しなくては焼結しないので、Ag等の低抵抗金属と同時焼成することができず、低抵抗金属を用いて導体層を形成することができなかった。
【0008】
低温焼結助剤等を添加することでセラミックス組成物の焼結温度を低下できるものの、得られる焼結体の電気特性が低下したり、粒界の化学耐久性が低下する問題があった。焼結体の粒界の化学耐久性が低下すると、セラミックス層上に形成された導体層をメッキ処理する際に、セラミックス層がメッキ液によって浸食され易くなり、マイグレーションが発生し易い電子部品となり易かった。
【0009】
よって、本発明の目的は、低温焼成が可能で、高周波領域での誘電損失が低く、メッキ耐食性に優れた焼結体を得ることが可能なセラミックス組成物及び、高周波領域での誘電損失が低く、マイグレーションが改善された電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のセラミックス組成物は、
下式(1)で現わされる主相成分と、
B成分、Li成分、Zn成分及びAg成分からなる第1副成分と、
Si成分、Al成分及びBi成分から選ばれる少なくとも1種以上を含有する第2副成分とを含み、
前記第1副成分は、前記主相成分100質量部に対し酸化物換算で、B成分を0.3〜1.4質量部、Li成分を0.1〜0.3質量部、Zn成分を1.5〜7質量部及びAg成分を1.5〜2質量部含有し、
前記第2副成分は、前記主相成分100質量部に対し酸化物換算で、Si成分を0〜1.25質量部、Al成分を0〜1.25質量部、Bi成分を0〜5質量部含有し、
Si成分のみを単独で含む場合、Si成分の含有量が0.4〜1質量部であり、
Al成分のみを単独で含む場合、Al成分の含有量が0.5〜1質量部であり、
Bi成分のみを単独で含む場合、Bi成分の含有量が4〜5質量部であり、
Bi成分を含まずSi成分とAl成分とを含む場合、Si成分とAl成分の合計含有量が0.9質量部以下であり、
Si成分又はAl成分と、Bi成分とを含む場合、Si成分の含有量が1.25質量部以下、Al成分の含有量が1.25質量部以下、Bi成分の含有量が4〜5質量部であり、
Si成分とAl成分とBi成分とを含む場合、Si成分とAl成分との合計含有量が1.15質量部以下、Bi成分の含有量が4〜5質量部であることを特徴とする。
Ba(Re(1−x),Bi9.33Ti1854 ・・・(1)
(式(1)中、Reは希土類元素であり、xは0〜0.15である)
【0011】
また、本発明の電子部品は、上記セラミックス組成物を焼成して得られるセラミックス層と、該セラミックス層の表面及び/又は内部にあって、前記セラミックス組成物と同時焼成して得られる導体層とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の電子部品は、前記導体層が、Ag及び/又はAg合金で形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の電子部品は、前記導体層の表面が湿式メッキ処理されていることが好ましい。
【0014】
本発明の電子部品は、基板として好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセラミックス組成物は、上式(1)で現わされる主相成分を含むので、誘電率ε及びQ×f値が大きく、温度係数τfが小さい。そして、B成分、Li成分、Zn成分及びAg成分からなる第1副成分と、Si成分、Al成分及びBi成分から選ばれる少なくとも1種以上を含有する第2副成分とを、それぞれ所定量含有するので、930℃以下での焼結が可能で、電気特性に優れた焼結体を得ることができる。また、Si成分、Al成分及びBi成分から選ばれる少なくとも1種以上を含有する第2副成分を所定量含有することにより、焼結後の粒界構造が強固となり、粒界の化学耐久性が向上し、耐メッキ性に優れた焼結体を得ることができる。また、930℃以下で焼結できるので、Ag等の低抵抗金属と同時焼成することができ、低抵抗金属からなる導体層を備えた電子部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例の焼結体の導電層パターンを示す図面である。
【図2】試料No21,23の焼結体の耐湿試験結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[セラミックス組成物]
本発明のセラミックス組成物は、下式(1)で現わされる主相成分と、B成分、Li成分、Zn成分及びAg成分からなる第1副成分と、Si成分、Al成分及びBi成分から選ばれる少なくとも1種以上を含有する第2副成分とを含む組成物である。
Ba(Re(1−x),Bi9.33Ti1854 ・・・(1)
以下、各成分について説明する。
【0018】
本発明のセラミックス組成物に用いられる主相成分は、上式(1)で現わされるタングステンブロンズ型疑似固溶体である。このタングステンブロンズ型疑似固溶体は、Ba、Ti、Bi、Re(希土類元素)のモル比が、式(1)に示される値となるように、Ba、Ti、Bi、Re(希土類元素)の酸化物、炭酸塩等の原料粉末を混合し、700〜1200℃で仮焼し、その後本焼成することで得られる。
【0019】
式(1)において、Reは、希土類元素であり、Sm、Nd、Pr及びLaから選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0020】
式(1)において、xは0〜0.15であり、0.10〜0.14が好ましい。xが0〜0.15であれば、温度係数τfがゼロもしくは、その範囲外よりもゼロに近い。特にxが0.10〜0.14の場合、温度係数τfがゼロもしくは、xが0〜0.15の場合と同じか、よりゼロに近づけることができる。また、xが大きくなるに従って誘電率εが増大してQ×f値が減少し、xが小さくなるに従って誘電率εが減少してQ×f値が増大する。このため、誘電率εを大きくしたい場合は、xの値を上記範囲内で大きくし、Q×f値を大きくしたい場合は、xの値を上記範囲内で小さくすればよい。
【0021】
本発明のセラミックス組成物は、第1副成分として、B成分、Li成分、Zn成分及びAg成分を含有する。
【0022】
B成分は、主相成分100質量部に対し酸化物換算で0.3〜1.4質量部含有し、0.3〜0.6質量部が好ましい。0.3質量部未満であると、930℃以下で焼結しない。1.4質量部を超えると、Q×f値が低下し、温度特性τfが増加する傾向にある。
【0023】
Li成分は、主相成分100質量部に対し酸化物換算で0.1〜0.3質量部含有する。0.1質量部未満であると、930℃以下で焼結しない。0.3質量部を超えると、Q×f値が低下し、温度特性τfが増加する傾向にある。
【0024】
Zn成分は、主相成分100質量部に対し酸化物換算で1.5〜7質量部含有し、1.5〜3.0質量部が好ましい。1.5質量部未満であると、930℃以下で焼結しない。7質量部を超えると、Q×f値が低下する傾向にある。
【0025】
Ag成分は、主相成分100質量部に対し酸化物換算で1.5〜2質量部含有する。1.5質量部未満であると、導体層材料としてAg及び/又はAg合金を用いた場合、導体層材料がセラミックス層に拡散してしまう。2質量部を超えると、材料コストが嵩む。更には、耐メッキ性が低下する傾向にある。
【0026】
B成分、Li成分、Zn成分及びAg成分をそれぞれ上記割合で含有することにより、誘電特性を損なうことなく、焼結温度を低下でき、930℃以下で焼結が可能となる。
【0027】
B成分、Li成分、Zn成分及びAg成分の材料としては、酸化物、炭酸塩等のセラミックス粉末が用いられる。
【0028】
本発明のセラミックス組成物は、第2副成分として、Si成分、Al成分及びBi成分から選ばれる少なくとも1種以上を含有する。
【0029】
第2副成分は、主相成分100質量部に対し酸化物換算で、Si成分を0〜1.25質量部、Al成分を0〜1.25質量部、Bi成分を0〜5質量部含有する。
【0030】
具体的には、Si成分のみを単独で含む場合は、Si成分を0.4〜1質量部含有する。
また、Al成分のみを単独で含む場合は、Al成分を0.5〜1質量部含有する。
また、Bi成分のみを単独で含む場合は、Bi成分を4〜5質量部含有する。
また、Bi成分を含まずSi成分とAl成分とを含む場合は、Si成分とAl成分とを合計で0.9質量部以下(好ましくは0.4〜0.7質量部)含有する。
また、Si成分又はAl成分と、Bi成分とを含む場合は、Si成分を1.25質量部以下(好ましくは0.4〜0.75質量部)、Al成分を1.25質量部以下(好ましくは0.4〜0.75質量部)、Bi成分を4〜5質量部含有する。
また、Si成分とAl成分とBi成分とを含む場合は、Si成分とAl成分とを合計で1.15質量部以下(好ましくは0.4〜0.75質量部)、Bi成分を4〜5質量部含有する。
【0031】
Si成分、Al成分、Bi成分を含有することで、焼結後の粒界構造が強固となり、粒界の化学耐久性が向上する。Si成分、Al成分は添加し過ぎると、セラミックス組成物の焼結性が低下し、低温焼結が困難となる。Bi成分は添加量を増やしても焼結性はさほど低下しないが、Q×f値が低下する傾向にある。Si成分、Al成分、Bi成分を上記範囲で含有させることで、低温焼結が可能で、粒界の化学耐久性が良好な焼結体を得ることができる。
【0032】
Si成分、Al成分、Bi成分の材料としては、酸化物、炭酸塩等のセラミックス粉末が用いられる。
【0033】
本発明のセラミックス組成物は、上記のような組成となるように配合された原料を、ZrOボールなどを用いて、水などの湿式下で混合し、必要に応じて結合剤、可塑剤、溶剤等を添加し、所定形状に成形して、焼成することによって焼結体を製造することができる。
【0034】
結合剤としては、ポリビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、メタアクリル酸樹脂等を用いることができる。また、可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等を用いることができる。また、溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン等を用いることができる。
【0035】
成形は、各種の公知の成形方法、例えばプレス法、ドクターブレード法、射出成形法、テープ成形等により任意の形状に成形する。また、グリーンシート化した成形体を複数積層し、更に圧着して積層体としてもよい。
【0036】
焼成は、酸素雰囲気中又は非酸化性雰囲気において、870℃〜930℃で0.5〜3時間焼成することが好ましい。焼成温度は、930℃以上であってもよいが、Agなどの低抵抗金属と同時焼成して導体層を形成することが困難となるので、上限は930℃が好ましい。
【0037】
このようにして得られる焼結体は、誘電率εが75以上、Q×f値が1500以上、−30〜85℃の範囲における共振周波数の温度係数τfが±30×10−6/℃の範囲にあり、耐食性に優れ、メッキプロセスによる基材侵食がきわめて少ない。
【0038】
誘電率εを高めるには、主相成分(式1)のBi比率を高める(x率上げる)、あるいは副成分の調整すなわちSi成分又はAl成分の減量、又はBi成分の増量とすればよく、上記範囲で小さくするには、主相成分(式1)のBi比率を下げる(x率下げる)、あるいは副成分の調整すなわちSi成分又はAl成分の増量、又はBi成分の減量とすればよい。また、Q×f値を上記範囲で高めるには、主相成分(式1)のBi比率を下げればよい(x率下げる)。また、温度係数τfをゼロに近づけるには、主相成分(式1)のBi比率x=0.10〜0.14とすればよい。
【0039】
[電子部品]
次に、本発明の電子部品について説明する。
【0040】
本発明の電子部品は、上記セラミックス組成物を焼成して得られるセラミックス層と、該セラミックス層の表面及び/又は内部にあって、セラミックス組成物と同時焼成して得られる導体層とを有する。
【0041】
導体層を構成する材料としては、低抵抗材料が好ましく、Ag及び/又はAg合金がより好ましい。Ag合金としては、Ag−Pd合金、Ag−Pt合金等が挙げられる。
【0042】
本発明の電子部品としては、例えば単層基板、積層基板、コンデンサ、フィルタ等が挙げられる。
【0043】
以下、本発明の電子部品を積層基板として使用する場合の製造例について説明する。
【0044】
本発明のセラミックス組成物に、結合剤、溶剤、可塑剤などを加えてスラリー状に調整し、ドクターブレード法等の方法で薄膜状に成形してグリーンシートを製造する。
【0045】
次いで、得られたグリーンシート上に、Ag、Ag合金等の導体金属を含む導体ペーストを、スクリーン印刷法等により印刷し、所定パターンの未焼成内部導体層を形成する。
【0046】
次いで、未焼成内部導体層が形成された各グリーンシートを複数重ね合せ、圧着して未焼成積層体を製造する。
【0047】
次いで、未焼成積層体を脱バインダー処理し、所定形状に切断して、未焼成内部導体層を未焼成積層体の端部に露出させる。そして、未焼成積層体の端面に、Ag、Ag合金等の導体金属を含む導体ペーストをスクリーン印刷法等の方法により印刷して、未焼成下地金属を形成する。
【0048】
次いで、未焼成下地金属が形成された未焼成積層体を、酸素雰囲気中又は非酸化性雰囲気において、870℃〜930℃で0.5〜3時間焼成し、未焼成積層体と未焼成下地金属とを同時焼成する。
【0049】
そして、未焼成下地金属を焼成して得られた下地金属の表面を、電解メッキ等の湿式メッキ処理を施してメッキ層を形成して外部電極を形成する。こうすることで、セラミックス層の層間及びセラミックス層の外側に導体層が形成された積層基板が得られる。
【0050】
本発明の電子部品は、セラミックス層の誘電率εが75以上、Q×f値が1500以上、−30〜85℃の範囲における共振周波数の温度係数τfが±30×10−6/℃の範囲にあり、高周波領域の誘電特性に優れている。また、セラミックス層は、Ag、Ag合金などの低抵抗金属との同時焼成が可能な温度で焼結ができるので、導体金属として、Ag、Ag合金などの低抵抗金属を用いることができる。
【実施例】
【0051】
Ba、Ti、Bi、Ndのモル比が、下式(2−1)〜(2−5)に示される値となるように、BaCO粉末、TiO粉末、Bi粉末及びNd粉末をそれぞれ秤量し、15時間湿式混合した後、120℃で乾燥し、乾燥した粉体を1100℃で2時間仮焼して、主相成分を調製した。
【0052】
Ba(Nd9.33Ti1854 ・・・(2−1)
Ba(Nd0.9,Bi0.19.33Ti1854 ・・・(2−2)
Ba(Nd0.865,Bi0.1359.33Ti1854 ・・・(2−3)
Ba(Nd0.85,Bi0.159.33Ti1854 ・・・(2−4)
Ba(Nd0.84,Bi0.169.33Ti1854 ・・・(2−5)
【0053】
次に、この主相成分に、表1〜6の副成分欄に示す値となるように、B粉末、LiO粉末、ZnO粉末、AgO粉末、SiO粉末、Al粉末及びBi粉末をそれぞれ秤量して添加し、15時間湿式混合後、120℃で乾燥した。この乾燥物にPVA系バインダーを適量添加し、造粒、プレス成型後、大気中500℃に加熱して脱バインダー処理し、成型体を得た。この成型体を、大気中930℃で2時間焼成して、試料No1〜94の焼結体を得た。
各焼結体の焼結性、嵩密度、誘電率ε、Q×f値、温度係数τfを評価した。結果を表1〜6にまとめて記す。なお、焼結性は、930℃で焼結したものを○、焼結しなかったものを×として評価した。また、嵩密度は、アルキメデス法に基づき測定した。また、誘電率ε、Q×f値、温度係数τfは、JIS R1627に準拠し、3GHz〜5GHzの共振周波数における値を測定した。また、温度係数τfは、3GHz〜5GHzの共振周波数の−30℃〜85℃間における温度変化率を測定した。
【0054】
また、上記成形体の表面に、図1に示すようにAgペーストを印刷し、大気中930℃で2時間焼成して、セラミックス層上にAg導電層が形成された焼結体を得た。得られた焼結体を、通常電子部品向けのNi、Cu、Snで電解メッキしてAg導電層をメッキ層で被覆した。この焼結体のセラミックス層のメッキ浸食距離を評価した。結果を表1〜6にまとめて記す。なお、メッキ浸食距離は、焼結体またはチップを破断し、破断面を電子顕微鏡を用いて観察し、破断面で見られる表面から焼結体内部方向に、粒界破断モードを呈する部分の深さを、メッキ浸食距離として測定した。
【0055】
また、試料No21,23の焼結体を用いて、耐湿試験を行った。結果を図2に示す。なお、耐湿試験は、図1に示すように、温度85℃、湿度85%の環境下にて、DC5Vの電圧を印加し、抵抗値の経時変化を測定した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
【表5】

【0061】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で現わされる主相成分と、
B成分、Li成分、Zn成分及びAg成分からなる第1副成分と、
Si成分、Al成分及びBi成分から選ばれる少なくとも1種以上を含有する第2副成分とを含み、
前記第1副成分は、前記主相成分100質量部に対し酸化物換算で、B成分を0.3〜1.4質量部、Li成分を0.1〜0.3質量部、Zn成分を1.5〜7質量部及びAg成分を1.5〜2質量部含有し、
前記第2副成分は、前記主相成分100質量部に対し酸化物換算で、Si成分を0〜1.25質量部、Al成分を0〜1.25質量部、Bi成分を0〜5質量部含有し、
Si成分のみを単独で含む場合、Si成分の含有量が0.4〜1質量部であり、
Al成分のみを単独で含む場合、Al成分の含有量が0.5〜1質量部であり、
Bi成分のみを単独で含む場合、Bi成分の含有量が4〜5質量部であり、
Bi成分を含まずSi成分とAl成分とを含む場合、Si成分とAl成分の合計含有量が0.9質量部以下であり、
Si成分又はAl成分と、Bi成分とを含む場合、Si成分の含有量が1.25質量部以下、Al成分の含有量が1.25質量部以下、Bi成分の含有量が4〜5質量部であり、
Si成分とAl成分とBi成分とを含む場合、Si成分とAl成分との合計含有量が1.15質量部以下、Bi成分の含有量が4〜5質量部であることを特徴とするセラミックス組成物。
Ba(Re(1−x),Bi9.33Ti1854 ・・・(1)
(式(1)中、Reは希土類元素であり、xは0〜0.15である)
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックス組成物を焼成して得られるセラミックス層と、該セラミックス層の表面及び/又は内部にあって、前記セラミックス組成物と同時焼成して得られる導体層とを有することを特徴とする電子部品。
【請求項3】
前記導体層が、Ag及び/又はAg合金で形成されている請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記導体層の表面が湿式メッキ処理されている請求項2又は3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記電子部品が基板である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の電子部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−148919(P2012−148919A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8463(P2011−8463)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】