説明

セラミックメタルハライドランプ

【課題】一つの発光管が破裂や破損した場合に、その発光管に接続されていたリード線が異電位の導電線に接触することを防止する。
【解決手段】 選択的に1本の発光管が点灯する複数の発光管を備えるセラミックメタルハライドランプであり、各発光管の一方の端部に接続された第1導電線及び他方の端部に接続された第2導電線と、複数の発光管の各々の周囲に配置された複数の保護スリーブと、複数の発光管及び保護スリーブを保持するフレームと、発光管、第1導電線、第2導電線、保護スリーブ及びフレームを収容する外球とを備え、第2導電線がフレームに電気的に接続され、さらに、フレームと第1導電線とが電気的に外部の駆動回路を経由して電力源に接続されており、さらに、複数の保護スリーブをフレームに固定する固定部材を設けており、固定部材が、第1導電線から離隔された位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックメタルハライドランプに関する。詳しくは、複数の発光管を有し、各発光管の周囲に外球保護のための保護スリーブを備えるセラミックメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ及びセラミックメタルハライドランプのような高輝度放電ランプ(HIDランプ:High Intensity Discharge Lamp)は、電極間の放電を利用して発光する。このため、白熱電球と比べて、光束が大きく大規模な空間の照明に適し、エネルギー効率が良いといった種々の特徴を備えている。
【0003】
その特徴から、高輝度放電ランプは、道路、店舗、工場、ホール、スポーツ施設等の照明、テレビや映画のロケーション照明、自動車や鉄道車両の前照灯のみならず、半導体、液晶、プリント基板等の製造工程における露光用光源のような光応用分野の光源としても使用されている。
【0004】
特に、HIDランプにおける、発光物質として金属ハロゲン化物を採用したメタルハライドランプは、青白い光線を放つ水銀ランプに比較して白色光(自然光)に近く優れた演色性と、また高い発光効率といった長所を有している。
【0005】
メタルハライドランプの発光管として、従来は石英製発光管が使用されていた。最近では、透光性セラミックス製発光管(この材質は透光性の多結晶アルミナ PCA)が使用されている。透光性セラミックス製発光管は、石英製発光管に比較して、格段に長寿命化が図れ、例えば、1本で約2万4000時間の寿命が確保できる(長寿命)。更に、石英は、発光管内に封入した金属ハロゲン化物と反応し易いが、セラミックスはこれと反応せず、且つ耐熱性が良好である、といった長所を有している。このため、発光管内の封入物として、種々の金属ハロゲン化物を使用できる利点がある。
【0006】
メタルハライドランプにおいて、透光性セラミックス製発光管を使用している場合は、特に、「セラミックメタルハライドランプ」と呼ばれ、水銀ランプだけで無く石英製発光管のメタルハライドランプと比較しても高効率で、例えば120 lm/W(ルーメン/ワット)以上の明るさを達成できるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-228582 特許文献1の第1実施例に係るセラミックメタルハライドランプの一部断面図を図9に示す。このセラミックメタルハライドランプは、透光性外管107の内部に発光管101を収容する。発光管101は一対の電極111a,111bを内包する。電極111aは、金属線114を経てフレーム113に電気的に接続され、さらにステム102に封止された一方の導入線に接続されている。他方の電極111bは、口金側リード線115、口金側金属線110を経て、ステム102に封止された他方の導入線に電気的に接続されている。
【0008】
また、発光管101の周囲には透光性スリーブ106が設けられており、フレーム113に溶接された金属製の固定部材105a、105bにより固定されている。この透光性スリーブ106は発光管101が破裂した際、外管107の破損を防止する効果がある。
【0009】
また、フレーム113及び透光性スリーブ106の外側には、金属線112が2回巻き付けられている。金属線112の両端部は溶接点113a,113bにおいてフレーム113に溶接されて固定されている。
【0010】
発光管101の電極111a,111bのそれぞれへの電力の供給は、ステム102に封止された導入線を介してなされる。
【0011】
特許文献1のセラミックメタルハライドランプでは、発光管101が破裂や破損して口金側リード線115及びそれに接続された電極111bが、発光管101から外れ、固定部材105bや金属線112に接触する可能性がある。この場合、固定部材105及び金属線112は、フレーム113に溶接されているためそれと同電位であり、口金側リード線115及びそれに接続された電極111bとは異電位であるため、口金側リード線115及びそれに接続された電極111bと固定部材105及び金属線112との間で電気的短絡が発生する可能性がある。
【0012】
特許文献1のセラミックメタルハライドランプでは、発光管が破損した時点でランプ自体の寿命が終了しているので、そのような電気的な短絡は問題にはならない。しかし、本発明では、以下のような課題が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
一般に、ランプに対して、更なる長寿命化の要請がある。例えば、最近広く使用され始めたLEDランプの寿命は、公称4万時間と言われている。
【0014】
本発明者等は、LEDランプに対し発光効率は勝っているものの寿命が劣っているセラミックメタルハライドランプに関して、LEDランプの寿命に対抗できるように、複数本の発光管を用いて長寿命化を達成する研究・開発を行っている。セラミックメタルハライドランプにおいて、例えば、2本の発光管を使用して点灯し易い方が選択的に点灯するランプにすると、1本の発光管の寿命を2万4,000時間として、理論上、2本の発光管では4万8,000時間の長寿命化が期待できる。3本以上の発光管の場合も、同様に比例的に長寿命化が期待できる。それらの複数の発光管は固定部材によってフレームに固定する必要がある。
【0015】
複数本の発光管を用いてランプの長寿命化を実現するためには、点灯中の一の発光管の寿命終了時点において、他の発光管が、(例えば、2〜3分後に)正常に点灯することが必要となる。
【0016】
しかし、セラミックメタルハライドランプは、発光管の寿命末期において、発光管の内部ガスがリークしたり、発光管が破裂したりすることがある。即ち、セラミックメタルハライドランプでは、演色性向上のため発光管内を従来のHIDランプよりも高温にしており、点灯時の発光管内の圧力がより高く、水銀ランプや高圧ナトリウムランプなど他の一般照明用HIDランプに比較して、発光管の破裂のおそれが高くなる傾向にある。そのため、発光管の周囲を保護スリーブで保護する必要があり、それらの保護スリーブは固定部材によってフレームに固定する必要があると考えられている。
【0017】
ただし、複数本の発光管を用いたランプにおいて、一の発光管が破裂した場合、破裂の威力が高いため発光管を覆っている保護スリーブが損傷し、更には稀にではあるが、他の発光管や外球も損傷するおそれが有る。その場合、隣り合う発光管の保護スリーブ同士が接触していると、一の発光管の破裂の衝撃が他の接触する保護スリーブに直接伝わり、その保護スリーブも破損する可能性がある。
【0018】
一方、保護スリーブ同士の間に隙間を設けた場合、輸送などの振動により、保護スリーブ同士が衝突してそれらが破損する可能性がある。
【0019】
また、電力がステムに封止された導入線を介してランプに供給されている場合、口金からステムに封止されている一方の導入線及びリード線を経由して電気的に接続された電極までの電位と、他方の電極からフレーム及びステムに封止されている他方の導入線までの電位とは異なっている。そのため、一の発光管が破損した場合に、口金からステムに封止されている一方の導入線に電気的に接続されたリード線が、その破損の衝撃で曲がり、異なる電位の例えば保護スリーブの固定部材やフレームに接触する可能性がある。そうすると、そのリード線とフレームとが電気的に短絡してしまい、他の発光管が点灯できなくなる。
【0020】
以上の観点から、本発明は、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、一つの発光管が破裂や破損した場合に、ステムに封止された一方の導入線からその発光管の一方の電極に接続された導電線が、ステムに封止された他方の導入線からその発光管の他方の電極に接続された導電線に電気的に接触することを防ぐセラミックメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【0021】
より具体的には、本発明は、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、一つの発光管が破裂や破損した場合に、口金側の発光管のリード線が、異なる電位の保護スリーブの固定部材に接触することのないセラミックメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【0022】
また、本発明は、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、一つの発光管が破裂や破損した場合に、口金側の発光管のリード線が、異なる電位のフレームに接触することを防ぐセラミックメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【0023】
また、本発明は、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、一つの発光管が破裂や破損した場合に、隣り合う発光管の保護スリーブがその破裂や破損の衝撃によって破損することを防ぐセラミックメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【0024】
また、本発明は、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、各発光管を覆う保護スリーブ同士が衝突して破損することを防ぐセラミックメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【0025】
なお、上記のとおり、従来の1本の発光管のセラミックメタルハライドランプでは、その発光管が破損した時点でランプ自体の寿命が終了しているので、上記の点は問題とならなかった。従って、上記のさまざまな問題は、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、新たに発生した問題である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
そこで、本発明に係るセラミックメタルハライドランプは、選択的に1本の発光管が点灯する複数の発光管と、各発光管の一方の端部に接続された第1導電線及び他方の端部に接続された第2導電線と、該複数の発光管の各々の周囲に配置された複数の保護スリーブと、前記複数の発光管及び保護スリーブを保持するフレームと、前記発光管、前記第1導電線、前記第2導電線、前記保護スリーブ及び前記フレームを収容する外球とを備え、前記第2導電線が前記フレームに電気的に接続され、さらに、該フレームと前記第1導電線とが電気的に外部の駆動回路を経由して電力源に接続されており、さらに、前記複数の保護スリーブを前記フレームに固定する固定部材を設けており、該固定部材が、前記第1導電線から離隔された位置に配置されていることを特徴とする。
【0027】
そのセラミックメタルハライドランプにおいて、前記複数の保護スリーブの前記固定部材を取り付けていない位置であって、隣り合う該保護スリーブ同士の間の位置に離隔材を設け、それにより、該隣り合う保護スリーブ同士を所定間隔だけ離隔するようにしてもよい。
【0028】
そのセラミックメタルハライドランプにおいて、前記複数の保護スリーブ及び前記フレームの周囲に非導電性の保持部材を捲回してもよい。
【0029】
そのセラミックメタルハライドランプにおいて、前記フレームの支柱の一部を非導電性の保持部材によって覆ってもよい。
【0030】
そのセラミックメタルハライドランプにおいて、前記第1導電線に移動方向制御部材を設け、第1導電線が異電位部材方向に移動することを抑制するようにしてもよい。
【0031】
そのセラミックメタルハライドランプにおいて、前記保護スリーブは、両端開放型、両端封止の密封型、一端開放の他端封止型のいずれでもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、一つの発光管が破裂や破損した場合に、ステムに封止された一方の導入線からその発光管の一方の電極に接続された導電線が、ステムに封止された他方の導入線からその発光管の他方の電極に接続された導電線に電気的に接触することを防ぐセラミックメタルハライドランプを提供することができる。
【0033】
より具体的には、本発明によれば、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、一つの発光管が破裂や破損した場合に、口金側の発光管のリード線が、異なる電位の保護スリーブの固定部材に接触することのないセラミックメタルハライドランプを提供することができる。
【0034】
また、本発明によれば、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、一つの発光管が破裂や破損した場合に、口金側の発光管のリード線が、異なる電位のフレームに接触することを防ぐセラミックメタルハライドランプを提供することができる。
【0035】
また、本発明によれば、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、一つの発光管が破裂や破損した場合に、隣り合う発光管の保護スリーブがその破裂や破損の衝撃によって破損することを防ぐセラミックメタルハライドランプを提供することができる。
【0036】
また、本発明によれば、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプにおいて、各発光管を覆う保護スリーブ同士が衝突して破損することを防ぐセラミックメタルハライドランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るセラミックメタルハライドランプの構成を説明するための正面図である。
【図2】図2は、図1に示す本発明の第1実施形態に係るセラミックメタルハライドランプの構成を説明するための側面図である。
【図3A】図3Aは、セラミックメタルハライドランプの駆動回路を説明するための簡略化した図である。
【図3B】図3Bは、セラミックメタルハライドランプのステムの導入線と発光管とフレームとの電気的な接続関係を説明するための概念図である。
【図4】図4は、本発明の第2実施形態に係るセラミックメタルハライドランプの構成を説明するための側面図である。
【図5】図5は、本発明の第3実施形態に係るセラミックメタルハライドランプの構成を説明するための側面図である。
【図6】図6は、本発明の第4実施形態に係るセラミックメタルハライドランプの構成を説明するための側面図である。
【図7】図7は、本発明の第5実施形態に係るセラミックメタルハライドランプの構成を説明するための側面図である。
【図8】図8は、種々のタイプの保護スリーブを説明するための図であり、(A)は両端密封型保護スリーブを示し、(B)は片端密封型保護スリーブを示し、(C)は片端密封の他端半開放型保護スリーブを示し、(D)は両端開放型保護スリーブを示す。
【図9】図9は、従来のセラミックメタルハライドランプの一実施例を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る、複数の発光管を備え、各発光管の周囲に保護スリーブを配置したセラミックメタルハライドランプの各実施形態を説明する。なお、全図において、各部材の厚さ、長さ、形状、部材同士の間隔、隙間等は、理解の容易のために、適宜、拡大・縮小・変形・簡略化等をしている。図の説明の際の上下・左右の表現は、その図を鉛直面内に置いた状態でのその図面の面に沿った方向を表すものとする。また、図中、同じ要素に対しては同じ参照符号を付して、重複した説明を省略する。
【0039】
また、本発明に係る、2本の発光管を備えるセラミックメタルハライドランプにおいては、点灯時には、2本の発光管の内、その時点で点灯し易い状態の1本の発光管が点灯する。消灯後、次に点灯する時も、2本の発光管の内、その時点で点灯し易い状態の1本の発光管が点灯する。以後、これを繰り返す。本出願書類では、このような状態を、「選択的に点灯する2本の発光管」と説明する。更に、点灯中であり且つ寿命末期に至ったランプを「一方の発光管」と呼び、一方の発光管の寿命終了後に点灯する発光管を「他方の発光管」と呼ぶこととする。
【0040】
なお、本発明は、複数本の発光管を有するセラミックメタルハライドランプに関するが、ランプの構成を簡単にして分かり易くするため、2本の発光管の場合を代表例として説明する。
【0041】
ただし、3本以上の発光管の場合は、2本の発光管の場合と同様の技術的手段により、本発明を実現できることを承知されたい。
【0042】
[第1実施形態]
図1及び図2は、それぞれ、本発明の第1実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ10の構成を説明するための正面図及び側面図である。
【0043】
セラミックメタルハライドランプ10は、外球(「外管」、「管球」又は「外管バルブ」とも言う。)2の内部に2つの発光管4A,4Bを備える。発光管4A,4Bの周囲は、それぞれ、保護スリーブ17A,17Bによって囲まれている。
【0044】
発光管4A,4Bの各々は、中央の太管部及び両端の細管部の形状をもつ透光性セラミックス製の容器である。各発光管においては、第2導電線のリード線5A(5B)及び第1導電線のリード線7A(7B)が、細管部のそれぞれを通って太管部まで延びて、タングステン(W)製の電極(図示せず。)の両端に接続されている。
【0045】
また、発光管4A(4B)の容器内には、発光及び放電媒体として、所定量の水銀と、金属ハロゲン化物と、希ガスとして所定圧力のアルゴン(Ar)ガスが封入されている。希ガスとして、アルゴン(Ar)ガス以外に、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の他の希ガスや、それらの混合ガスでもよい。金属ハロゲン化物としては、よう素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)等のハロゲンと、ナトリウム(Na)、ツリウム(Tm)、セシウム(Cs)、ディスプロシウム(Dy)等の少なくとも一種の発光金属とが封入され、発光効率、演色性や色温度等の特性の向上が図られている。
【0046】
保護スリーブ17A,17Bの周囲には、それぞれ、金属製の固定部材6A,6Bが捲回されており、金属製の固定部材6A,6Bは、フレーム8に溶接され固定されている。また、各保護スリーブ17A,17Bは、2つの石英製の円筒を組み合わせたもので、両端にリード線5A(5B)又はリード線7A(7B)が貫通する小さな開孔が形成されている。
【0047】
フレーム8は、モリブデン(Mo),ステンレス(SUS),ニッケルメッキ鉄線等の線材や略長四角形状の枠状に成形した丸棒体から成る支柱からなる。
【0048】
保護スリーブ17Aにおいては、リード線5A,7Aが、開孔を貫通して、発光管4Aの電極(図示せず。)に接続されている。リード線5Aは、フレーム8に接続されており、フレーム8の下側は、ステム20の導入線22に接続されている。リード線7Aは、ステム20の導入線21に接続されている。それぞれの導入線は、口金のシェル1又はアイレット3を経由して外部の電力供給源に電気的に接続される。
【0049】
図3Aは、本発明の第1実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ10の駆動回路を示す。その回路は、従来使用されていたセラミックメタルハライドランプの回路と同じであり、また、本発明の他の実施形態に係るセラミックメタルハライドランプの駆動回路としても用いられる。
【0050】
図3Aに示すように、駆動回路は、商用交流電源(100/200 V, 50/60Hz)34から安定器36を経由してセラミックメタルハライドランプ10,40,50,60,70に電力を供給する。安定器36は、チョークコイル37及びイグナイター(始動回路)38を備える。ランプ内の発光管4A,4Bは、電源34に対し電気的に並列に接続されている。発光管4A,4Bの一方の端部に接続された導電線が第1導電線であり、他方の端部に接続された導電線が第2導電線である。この明細書において、第1導電線及び第2導電線と呼ぶときには、それぞれにおいて電気的に接続されていて同電位のもののすべてを差す。
【0051】
図3Aから明らかなように、セラミックメタルハライドランプ自体には始動回路は無く、安定器36からのパルスが2つの発光管4A,4Bに供給されたときに、点灯し易い状態の1個の発光管が点灯する。
【0052】
但し、安定器36にイグナイター(始動回路)を有し、セラミックメタルハライドランプ自体には始動回路の無いものを説明してきたが、ここでは図示しないものの、言うまでもなくイグナイターの内蔵していない安定器とランプ自体にグロースターターなどの始動器を内蔵したものでも同様に用いる事が出来る。
【0053】
図3Bは、セラミックメタルハライドランプのステム20の導入線21,22と発光管4Aと金属製のフレーム8との電気的な接続関係を説明するための概念図である。図に示すように、発光管4Aの両端には、リード線5A,7Aを経由して、それぞれ、フレーム8及びステム20の導入線21に接続されている。フレーム8は、電気的に、仮想の導電線33を経由してステム20の導入線22に接続されている。
【0054】
図3Bに示す概念図においては、リード線5A、フレーム8及びステム20の導入線22の間では同電位である。一方、リード線7A及びそれに接続されたタングステン電極及びステム20の導入線21の間でも同電位である。しかし、リード線5A、フレーム8及びステム20の導入線22と、リード線7A及びそれに接続されたタングステン電極及びステム20の導入線21との間には、発光管4A(4B)が接続されているため、それらの間では異電位である。
【0055】
その結果、例えば、ランプに電力が供給されている状態で、発光管4Aが破裂や破損した衝撃により、リード線7A及びそれに接続されたタングステン電極が、導入線21と電気的に接続されたまま発光管4Aの端部から外れ、異電位のリード線5A、フレーム8又はステム20の導入線22に接触すると、ステム20の導入線21,22の間で電気的な短絡が生じることになる。それにより、他方の発光管4Bには電力が供給されなくなり、発光管4Bは点灯することができなくなる。
【0056】
図1に示す本発明の第1実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ10では、発光管4A,4Bの周囲の保護スリーブ17A,17Bは、固定部材6A,6Bによってフレーム8に固定されている。固定部材6A,6Bは金属製でありフレーム8に溶接されている。このため、固定部材6A,6Bは、電気的に、フレーム8と同電位になる。
【0057】
一方、リード線7Aの上端部は、固定部材6A,6Bから離れており、それらに接触することはない。また、保護スリーブ17A,17Bの下方の位置、つまり、リード線7Aが引き出されている位置の近くには、固定部材6A,6Bのような固定部材は設けられていない。
【0058】
従って、本発明の第1実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ10では、例えば、発光管4Aが破裂や破損し、さらに、その保護スリーブ17も破損して、リード線7A及びそれに接続されたタングステン電極が導入線21と電気的に接続されたまま発光管4Aから外れたとしても、リード線7A及びそれに接続されたタングステン電極が到達する空間に固定部材6A,6Bが存在しないため接触して短絡回路を形成することはない。
【0059】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ40の構成を説明するための側面図である。セラミックメタルハライドランプ40は、本発明の第2実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ10とは、離隔材42を備える点で相違する。
【0060】
離隔材42は、金属製の細長いプレートからなり、保護スリーブ17Aと保護スリーブ17Bとの間に配置されていて、フレーム8に固定されている。離隔材42が固定されている位置は、保護スリーブ17A,17Bの固定部材6A,6Bから離れた位置である。
【0061】
保護スリーブ17A,17Bの上方部分は、固定部材6A,6Bが巻き付けられていてフレーム8に固定されている。そのため、離隔材42がない場合には、保護スリーブ17A,17Bの下方部分は、互いに押し付けられて接触しているか、又は、一定距離離隔された位置に保持されている。
【0062】
保護スリーブ17A,17Bの下方部分が互いに接触している場合には、保護スリーブ17A,17Bの一方の側の発光管4A又は4Bが破裂や破損すると、その衝撃が他方の保護スリーブに直接に伝わり、その他方の保護スリーブを破損する可能性がある。
【0063】
一方、保護スリーブ17A,17Bの下方部分が一定距離離隔された位置に保持されている場合には、ランプの輸送時の振動により、それらの保護スリーブの下方部分同士が衝突して破損する可能性がある。
【0064】
そのため、離隔材42を用いて、保護スリーブ17Aと保護スリーブ17Bとを所定の距離離隔させるとともに、固定部材6A,6Bによって、保護スリーブ17A,17Bを互いに押し付けるようにすると、保護スリーブ17A,17Bを、互いに、所定の距離離隔された位置に固定することができるようになる。それにより、隣り合う保護スリーブが互いに衝突したり、一方の破裂や破損等の衝撃が他方に直接伝わり、他方の保護スリーブまで破損するのを防ぐことができる。
【0065】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ50の構成を説明するための側面図である。セラミックメタルハライドランプ50は、本発明の第2実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ40とは、発光管4Aの下方端部に接続されているリード線7Aに、板状部材52が取り付けられている点で相違する。
【0066】
板状部材52は、保護スリーブ17A内にあるリード線7Aの側面に固定されていて、その面の向きは、図5に示すように、フレーム8の両側の2本の支柱を通る平面と平行である。これにより、発光管4Aが破裂や破損した場合には、板状部材52は、その衝撃を受けて、図5において、紙面の表側又は裏側に向かって曲がる可能性が高い。その結果、リード線7Aは、フレーム8の両側の2本の支柱の間の空間を移動することになるため、異電位のフレーム8の支柱に接触することを防ぐことができる。
【0067】
すなわち、板状部材52は、発光管4Aの破裂等の際の衝撃を受けた際に、リード線7Aの曲がる方向を制御して、リード線7Aが、異電位のフレーム8等の部材の方向に移動することを抑制することができる。
【0068】
図5では、板状部材52は矩形であるがそれに限定されるものではなく、発光管の破裂や破損の際の衝撃を受けてリード線の移動方向を制御できるものであればどのような形状のものでもよい。
【0069】
[第4実施形態]
図6は、本発明の第4実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ60の構成を説明するための側面図である。セラミックメタルハライドランプ60は、本発明の第2実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ40とは、発光管4Aを囲む保護スリーブ17Aの下側部分及びフレーム8の周囲に、非導電性の線状部材62が捲回されている点で相違する。
【0070】
線状部材62は、非導電性の部材、例えば、ガラスファイバーから形成されていて、フレーム8の両側の2本の支柱とその間にある保護スリーブ17A,17Bとの外側に、例えば、5回ほど捲回されている。これにより、保護スリーブ17A,17Bをフレーム8に強固に固定することが可能であり、また、例えば、発光管4Aが破裂や破損した場合にも、それを囲む保護スリーブ17Aをその位置に保持するように機能する。これにより、発光管4Aが完全に破損した場合であっても、保護スリーブ17A及びリード線7Aをその位置にとどめることによってそのリード線がフレーム8に接触することを防止することができる。
【0071】
尚、非導電性材料は線状部材に限られず、セラミックやプラスチック等の板状部材でも良く、また、複数の保護スリーブに捲回できてそれらを強固に固定できるものであれば、ベルト形状、紐形状等どのような形状のものであってもよい。
[第5実施形態]
図7は、本発明の第5実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ70の構成を説明するための側面図である。セラミックメタルハライドランプ70は、本発明の第2実施形態に係るセラミックメタルハライドランプ40とは、フレーム8の両側の2本の支柱のそれぞれの周囲に、非導電性部材72を設けている点で相違する。
【0072】
非導電性部材72は非導電性材料のセラミック、ガラス、プラスチックから形成された筒状のものであり、フレーム8の2本の支柱のそれぞれを覆っている。コーティングによって形成してもよい。その位置は、ほぼ、発光管4A,4Bの下方端部にリード線7A,7Bが接続されている高さに対応する位置である。
【0073】
非導電性部材72がその位置に固定されているのは次の理由による。例えば、発光管4Aが破裂や破損すると、それを囲む保護スリーブ17Aも破損する可能性がある。そのときに、フレーム8の支柱のその位置に非導電性部材72が設けられていないと、発光管4Aの下方の端部に接続されていたリード線7Aが折れ曲がって、フレーム8の支柱のその位置に接触する可能性もあるからである。
そのため、その位置に非導電性部材72を設けて、リード線7Aが異電位のフレーム8の支柱に直接に接触することを防いでいる。
【0074】
[代替保護スリーブの例]
図8は、種々のタイプの保護スリーブを説明するための図であり、(A)は両端密封型保護スリーブを示し、(B)は片端密封型保護スリーブを示し、(C)は片端密封の他端半開放型保護スリーブを示し、(D)は両端開放型保護スリーブを示す。
【0075】
図1から図7までに示すセラミックメタルハライドランプは、保護スリーブ17A,17Bを備えており、各々は、2つの石英製の円筒を組み合わせたもので、両端にリード線5A(5B)又はリード線7A(7B)が貫通する小さな開孔が形成されたものである。その保護スリーブ17A,17Bに代えて、図8に示すように、他の種類の保護スリーブ18A−18Dを用いることができ、そのときには、それぞれの保護スリーブの上方の部分、すなわち、フレーム8に接続されているリード線5Aが接続された側の部分を、固定部材6Aによってフレーム8に固定し、他方のリード線7Aが接続された側には固定部材は設けない。
【0076】
[変形例等]
以上、本発明に係る複数の発光管を備えるセラミックメタルハライドランプのいくつかの実施形態を説明したが、これらは例示であって、本発明の範囲を制限するものではない。当業者が、本実施形態に対して容易になしえる追加・削除・変更・改良等は、本発明の範囲内にある。本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。
【符号の説明】
【0077】
10,40,50,60,70・・・セラミックメタルハライドランプ
1・・・シェル
2・・・外球
3・・・アイレット
4A,4B・・・発光管
5A,5B,7A,7B・・・リード線
6A,6B・・・固定部材
8・・・フレーム
17A,17B・・・保護スリーブ
20・・・ステム
21,22・・・導入線
30・・・駆動回路
42・・・離隔部材
52・・・板状部材
62・・・線状部材
72・・・筒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックメタルハライドランプにおいて、
選択的に1本の発光管が点灯する複数の発光管と、
各発光管の一方の端部に接続された第1導電線及び他方の端部に接続された第2導電線と、
該複数の発光管の各々の周囲に配置された複数の保護スリーブと、
前記複数の発光管及び保護スリーブを保持するフレームと、
前記発光管、前記第1導電線、前記第2導電線、前記保護スリーブ及び前記フレームを収容する外球とを備え、
前記第2導電線が前記フレームに電気的に接続され、さらに、該フレームと前記第1導電線とが電気的に外部の駆動回路を経由して電力源に接続されており、さらに、
前記複数の保護スリーブを前記フレームに固定する固定部材を設けており、該固定部材が、前記第1導電線から離隔された位置に配置されている、セラミックメタルハライドランプ。
【請求項2】
請求項1のセラミックメタルハライドランプにおいて、
前記複数の保護スリーブの前記固定部材を取り付けていない位置であって、隣り合う該保護スリーブ同士の間の位置に離隔材を設け、それにより、該隣り合う保護スリーブ同士を所定間隔だけ離隔する、セラミックメタルハライドランプ。
【請求項3】
請求項1又は2のセラミックメタルハライドランプにおいて、
前記複数の保護スリーブ及び前記フレームの周囲に非導電性の保持部材を捲回した、セラミックメタルハライドランプ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかのセラミックメタルハライドランプにおいて、
前記フレームの支柱の一部を非導電性の保持部材によって覆った、セラミックメタルハライドランプ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかのセラミックメタルハライドランプにおいて、
前記第1導電線に移動方向制御部材を設け、第1導電線が異電位部材方向に移動することを抑制した、セラミックメタルハライドランプ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかのセラミックメタルハライドランプにおいて、
前記保護スリーブは、両端開放型、両端封止の密封型、一端開放の他端封止型のいずれかである、セラミックメタルハライドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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