説明

セラミック成形部品を作成するための方法、装置、およびその使用

少なくとも1つのセラミック成形部品を作成するための方法および装置であって、少なくとも1つの雌型と少なくとも1つの雄型との間に空洞を設けることと、Si含有粉末組成物を空洞にもたらすことと、Si粉末組成物を反応ガス雰囲気中で反応によって境界付けられたセラミック成形部品が得られる温度へと加熱することとを含んでいる方法および装置、ならびにその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのセラミック成形部品を作成するための方法、少なくとも1つの前記セラミック成形部品を作成するための装置、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック成形部品に関して、必要とされる寸法を有する型(特に、大型の成形部品の)であって、数回の再使用が可能な型を製造することが、今日の課題である。さらには、大型のセラミック成形部品が、例えば太陽電池産業へのシリコンインゴットの作成など、いくつかの分野において必要とされている。今日では、シリコンウエハのさらなる製造のためのシリコンインゴットの作成時に、シリカからなる成形部品が使用される。太陽電池の目的のためのシリコンの作成時に必要とされる高温において、シリカからなる成形部品、いわゆる、シリカるつぼは、最大で1500℃もの温度に曝される。シリカるつぼは、1500℃などの高温で軟化する。シリカるつぼが室温へと冷却されるとき、割れの形成が生じ、るつぼの再使用が不可能になる。いくつかの製造プロセスにおいて、1回しか使用できないるつぼが、かなりのコストを生じさせている。
【0003】
セラミック成形部品を作成するためのいくつかの知られている技法は、種々の成型方法を含んでいる。そのようなプロセスにおいては、主として好ましい粉末および適切な結合剤からなる水性の組成物であるスリッカ/分散液が作成される。スリッカ/分散液は、エタノールおよび他のアルコールなど、水以外の他の液体をベースにしてもよい。スリッカが、型(典型的には、石こう型)へと注がれる。スリッカの液体が型において抽出され、しばらくしてから型が取り壊される。粉末を結合剤によって結合させてなる未焼成体が得られる。次いで、未焼成体が、乾燥、結合剤の除去、およびチッ化/焼結などといったいくつかのプロセスにて処理され、所望の製品が得られる。未焼成体は、強度が低いため、さらなる処理および取り扱いにおいて容易に形状の変化および割れを生じる可能性がある。これは、より大型かつより複雑な形状の部品を作成する場合に、より問題になる。
【0004】
加圧鋳造が、もう1つの知られている技法である。基本は、主として、粉末、結合剤、および何らかの液体からなる組成物である。組成物が、所望の形状の未焼成体へと種々の方法によって圧縮される。大型かつ/または複雑な形状の圧縮は、きわめて困難であり、現時点では技術的に解決されていない。未焼成体は、上述と同じ問題を抱える。
【0005】
シリコンのチッ化ケイ素へのチッ化は、以下の反応に従って、典型的には摂氏1150から1400度の高温で行われる。
【0006】
(1)3Si(s)+2N(g)=Si(s)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
反応は、きわめて発熱性であり、したがって過熱領域を生じさせる可能性があり、続く激化反応を生じさせる可能性がある。そのような場合、液体シリコンの形成の可能性がきわめて大である。液体シリコンは、チッ化ケイ素へと変換されず、したがって材料の弱体化につながる。これは、チッ化ケイ素の作成時のよく知られている問題点であり、大型の成形部品の作成時に回避が特に困難である。
【0008】
本発明は、上述の問題を解決し、または少なくとも軽減することを目的とする。特に、本発明の目的は、太陽電池産業のためのシリコンインゴットの作成時に使用されるセラミック成形部品の作成によく適した方法を提供することにある。さらには、本発明の目的は、前記セラミック成形部品を数回にわたって再使用することができる方法を提供することにある。作成されるセラミック成形部品の変形および割れなどの問題が、本発明において回避される。さらに、結合剤または液体が、本発明においては使用されず、したがって乾燥および結合剤の除去のための余分なプロセスステップが不要である。チッ化プロセスの際のセラミック成形部品の温度を一様にする形状も使用され、これにより、液体シリコンの形成の可能性が最小化される。この技術分野の従来技術と比較して、本発明は、簡素化され、大型の成型部品の作成に適しており、プロセスステップの数がより少なく、変形が回避され、かつ経済的に有利である方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも1つのセラミック成形部品を作成するための方法であって:
少なくとも1つの雌型と少なくとも1つの雄型との間に空洞が設けられ、
Si含有粉末組成物が、空洞に配置され、
Si粉末組成物が、反応ガス雰囲気中で、反応によって境界付けられたセラミック成形部品が得られる温度へと加熱される方法を提供する。さらに、雌型の少なくとも1つに孔が設けられ、雄型の少なくとも1つにも孔が設けられることを、述べておかなければならない。有孔の型は、比較的一様な反応ガス雰囲気をもたらす。さらに、反応結合によるセラミック成形部品の作成のための反応が、所望のガス雰囲気の供給を保証する有孔の型にもとづいて迅速に生じる。本発明による雄型は、耐熱性の変形可能材料を挿入することによって互いに隔てられ、耐熱性の変形可能材料は、グラファイトフェルト、グラファイトウール、またはグラファイト棒から選択される。上述のように少なくとも雌型と雄型との間に設けられる空洞は、空洞が設けられる前にスラリで被覆される。本発明によれば、スラリによる被覆に先立って、少なくとも1つの雌型と前記スラリとの間に箔が適用される。さらに、スラリによる被覆に先立って、少なくとも1つの雄型と前記スラリとの間に箔が適用される。耐熱性かつ有孔の箔が、スラリによる被覆に先立って適用される。前記スラリは、100μ以下、80μ以下、60μ以下、40μ以下、20μ以下、10μ以下、5μ以下、または1μ以下の粒子サイズのチッ化ケイ素含有の粉末を含んでいる。
【0010】
本発明による上述のSi含有粉末組成物は、以下の成分、すなわちケイ素、炭化ケイ素、およびチッ化ケイ素のうちの少なくとも1つから選択される。反応ガス雰囲気は、少なくともチッ素を含む。さらには、他のガス雰囲気またはガス組成を、本発明を実行するときに使用することができる。本発明による少なくとも1つの雌型および少なくとも1つの雄型は、グラファイト含有材料を含んでいる。
【0011】
さらに、本発明は、少なくとも1つのセラミック成形部品を作成するための装置であって:
少なくとも1つの雌型と少なくとも1つの雄型との間の少なくとも空洞と、
Si含有粉末組成物を挿入するための手段と、
反応ガス雰囲気中での加熱のための手段とを備えている装置を含む。
【0012】
本発明による装置は、雌型および雄型の少なくとも1つに孔が設けられていることを含む。さらには、上述のように、熱応力へと曝されたときに元の寸法を維持しかつ割れの形成も回避できる装置を提供することが望ましい。これに関し、本発明が、先行して述べたとおりの装置であって、少なくとも雄型が、反応によって境界付けられるセラミック成形部品の熱膨張係数よりも大きい熱膨張係数を有しており、少なくとも雌型が、反応によって境界付けられるセラミック成形部品の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数を有している装置を含むことを、述べておかなければならない。反応によって境界付けられるセラミック成形部品よりも小さい熱膨張係数を有する雄型が使用される場合には、少なくとも2つの雄型を、耐熱性の変形可能材料で隔てるべきである。耐熱性の変形可能材料は、グラファイトフェルト、グラファイトウール、またはグラファイト棒から選択される。
【0013】
さらに本発明は、少なくとも1つの雌型と少なくとも1つの雄型との間に設けられる空洞の使用であって、Si含有粉末組成物を空洞にもたらし、その後に粉末組成物を反応ガス雰囲気中でセラミック成形部品が作成される温度へと加熱するという使用を含む。前記空洞が、空洞を設ける前にスラリを含むチッ化ケイ素で被覆される。スラリによる被覆に先立って、少なくとも1つの雌型と前記スラリとの間に箔が使用される。さらに、スラリによる被覆に先立って、少なくとも1つの雄型と前記スラリとの間に箔が使用される。箔は、耐熱性かつ有孔の箔で構成される。本発明の使用は、チッ素を含むガス雰囲気またはチッ素含有ガス雰囲気で行われる。
【0014】
少なくとも1つのセラミック成形部品の形成は、セラミック成形部品の目的および用途に依存する。太陽電池産業へのシリコンインゴットの作成においては、形成が、多くの場合に正方形または矩形の成型部品の形態である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】種々の部品で構成された型の断面を示している。
【図2】正方形の型の側面から見た断面を示している。
【図3】上方から見た正方形の型の断面を示している。
【図4】円形の雄型を上方から見て示している。
【図5】円形の雄型の断面を示している。
【図6】円形の型全体を上方から見て示している。
【図7】円形の雌型の断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施例1:
本実施例においては、グラファイト含有材料からなる種々の部品で構成された型を使用した。型は、図1に示されているとおり、雄型(A)、雌型(B)、ベース板(底板)(C)、およびプレート(D)で構成されている。グラファイト含有部品には、ベース板を除き、孔が設けられている。4つの比較的類似したグラファイト含有部品からなる雄型が、互いに固定され、かつベース板に固定されている。前記部品は、特にねじの形態の適切な固定装置によって互いに固定されている。雄型の部品の間のすき間には、グラファイト棒、グラファイトフェルト、またはグラファイトウールの形態の耐熱性の変形可能材料(E)が適用されている。有孔のグラファイト箔が、グラファイト含有の雄型に適用されている。箔の孔は、好ましくはグラファイト含有部品の孔に一致すべきでない。雌型が、4つの比較的類似したグラファイト含有板で構成されている。有孔のグラファイト箔が、グラファイト含有の雌型に適用されている。グラファイト箔で覆われた表面が、チッ化ケイ素含有スラリでさらに覆われている。スラリは、室温で乾燥させられている。グラファイト含有の雌型が、ベース板に組み付けられている(図1)。さらに、前記グラファイト含有の雌型の部品は、雄型の上方に位置してベース板へと固定されている。1つ以上の範囲内の好ましいサイズが以下のとおり、すなわち<10ミクロン、<20ミクロン、<40ミクロン、<60ミクロン、<75ミクロン、<100ミクロン、<120ミクロン、<150ミクロン、<180ミクロン、<200ミクロンであるケイ素含有の粉末を、雄型と雌型との間にもたらされた空洞(図1のF)に配置した。さらに、ケイ素含有の粉末を、振動によって圧縮成形させた。上述のとおりのサイズ範囲にあるケイ素含有の粉末を、最後に前記空洞の上部領域に配置した。粉末を、振動および機械的な圧縮によってさらに圧縮成形させた。堅固に取り付けられた型を、本実施例では、図1に示されるように180度回転させた。さらに、ベース板を取り外した。堅固に取り付けられた型を、チッ素雰囲気の炉に配置した。炉を、1100から1200℃まで素早く加熱し、さらに40から60時間にわたって1400から1500℃へとゆっくりと加熱した。次いで、取り付けられた型を、室温まで冷ました。炉のサイクルの全体(すなわち、加熱、少なくとも1つのセラミック成形部品の作成、および冷却)を、低温の取り付けられた型の出発点にて、1400から1500℃へと加熱された型を介し、最終的に冷やされた/低温の取り付けられた型まで、60から90時間の時間間隔にて行った。上述の型を、冷却後に炉から取り出した。グラファイト含有の雌型および雄型を分解し、グラファイト含有の雌型および雄型の間の空洞と同じ寸法を有する反応によって境界付けられたチッ化ケイ素成形部品/セラミック成形部品を得た。グラファイト含有の型からセラミック成形部品に残る可能性があるスラリは、ドライアイスブラスト(torrisblasing)または機械的な摩擦/仕上げによって、簡単な方法で取り除くことができる。グラファイト含有の部品を清掃布で清掃し、すぐに再使用できるようにした。
【0017】
実施例2:
実施例2では、粉末の組成を除き、実施例1と同じ手順を使用した。本実施例では、ケイ素(70重量%、<150ミクロン)と炭化ケイ素(30重量%、<150ミクロン)とを含む粉末の組成を使用した。グラファイト部品の分解後に、チッ化物で境界付けられた炭化ケイ素の成形部品が得られた。
【0018】
実施例3:
実施例3では、粉末の組成を除き、実施例1で説明したとおりの方法を使用した。本実施例では、ケイ素(70重量%、<150ミクロン)とチッ化ケイ素(30重量%、<10ミクロン)とを含む粉末の組成を選択した。グラファイト含有部品の分解後に、チッ化物で境界付けられたチッ化ケイ素の成形部品が得られた。
【0019】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、これらの概念を含む他の実施形態を使用できることは、当業者にとって明らかである。上述した本発明によるこれらの実施例および他の実施例は、あくまでも例として示されているにすぎず、本発明の技術的範囲は、以下の特許請求の範囲に記載される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのセラミック成形部品を作成するための方法であって、
少なくとも1つの雌型と少なくとも1つの雄型との間に空洞が設けられることと、
Si含有粉末組成物が、空洞に配置されることと、
Si粉末組成物が、反応ガス雰囲気中で、反応によって境界付けられたセラミック成形部品が得られる温度へと加熱されることとを特徴とする、方法。
【請求項2】
雌型のうちの少なくとも1つに、孔が設けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
雄型のうちの少なくとも1つに、孔が設けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2つの雄型が、耐熱性の変形可能材料を挿入することによって互いに隔てられている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
耐熱性の変形可能材料が、グラファイトフェルト、グラファイトウール、およびグラファイト棒のうちの少なくとも1つから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
空洞が、空洞を設ける前にスラリで被覆される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
スラリによる被覆に先立って、少なくとも1つの雌型と前記スラリとの間に箔が適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
スラリによる被覆に先立って、少なくとも1つの雄型と前記スラリとの間に箔が適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
耐熱性かつ有孔の箔が、スラリによる被覆に先立って適用される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
スラリが、100μ以下の粒子サイズのチッ化ケイ素含有の粉末を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
Si含有粉末組成物が、以下の成分、すなわちケイ素、炭化ケイ素、およびチッ化ケイ素のうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
反応ガス雰囲気が、少なくともチッ素を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの雌型および少なくとも1つの雄型が、グラファイト含有材料を含んでいる、請求項1、2、3、7および8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
セラミック成形部品を少なくとも作成するための装置であって、
少なくとも1つの雌型と少なくとも1つの雄型との間の少なくとも空洞と、
Si含有粉末組成物を挿入するための手段と、
反応ガス雰囲気中での加熱のための手段とを備えている、装置。
【請求項15】
雌型のうちの少なくとも1つに、孔が設けられている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
雌型のうちの少なくとも1つに、孔が設けられている、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
少なくとも雄型が、反応によって境界付けられるセラミック成形部品の熱膨張係数よりも大きい熱膨張係数を有しており、少なくとも雌型が、反応によって境界付けられるセラミック成形部品の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数を有している、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
少なくとも1つの耐熱性の変形可能材料が、少なくとも2つの雄型を隔てている、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
少なくとも1つの耐熱性の変形可能材料が、グラファイトフェルト、グラファイトウール、またはグラファイト棒から選択される、請求項14に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも1つの雌型と少なくとも1つの雄型との間に設けられる空洞の使用であって、
Si含有粉末組成物を空洞にもたらし、その後に粉末組成物を反応ガス雰囲気中でセラミック成形部品が作成される温度へと加熱する、使用。
【請求項21】
空洞が、空洞を設ける前にスラリで被覆される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
スラリによる被覆に先立って、少なくとも1つの雌型と前記スラリとの間に箔を使用する、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
スラリによる被覆に先立って、少なくとも1つの雄型と前記スラリとの間に箔を使用する、請求項20に記載の使用。
【請求項24】
耐熱性かつ有孔の箔を使用する、請求項22または23に記載の使用。
【請求項25】
チッ化ケイ素含有の粉末を含むスラリを使用する、請求項20に記載の使用。
【請求項26】
チッ素を含むガス雰囲気を使用する、請求項20に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−524706(P2012−524706A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507175(P2012−507175)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/NO2010/000149
【国際公開番号】WO2010/123379
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511255731)サン−ゴバン・インダストリエ・ケラミク・レーデンタール・ゲー・エム・ベー・ハー (4)
【Fターム(参考)】