説明

セラミック放電ランプ点灯装置

【課題】
調光点灯時におけるセラミック放電灯をアークのちらつきや立ち消えを効果的に抑制にしたセラミック放電灯点灯装を提供する。
【解決手段】
セラミック放電ランプ点灯装置は、包囲部の両端に配置された一対の小径筒部を有する透光性セラミック放電容器、小径筒部の内面との間にわずかな隙間を形成しながら内部に挿通され電極先端面積がS(mm)の一対の電極、給電部材、シール材、ならびに金属ハロゲン化物および希ガスを少なくとも含みセラミックス放電容器内に封入された放電媒体を有している発光管と、発光管を内部に収納する外管とを備えているセラミック放電ランプと、供給する電力を変化できる点灯回路とを具備し、定格ランプ電力の少なくとも40%までの調光点灯において、ランプ電流値I(A)と電極先端面積S(mm)の比I/S(A/mm)が式3.0≦I/Sを満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性セラミックス放電容器を備えたセラミック放電ランプを調光可能に点灯するセラミック放電ランプ点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
効率(90〜130lm/W)、相関色温度(3500〜5000K)、演色性(平均演色評価数(Ra)75〜90)や寿命などの種々の発光特性が優れた白色発光をなすメタルハライドランプなどの高圧放電ランプおよびこの放電ランプを装着した照明装置の発明は、本発明者によりなされ、既知である(特許文献1参照。)。上記高圧放電ランプには、封入する金属ハロゲン化物としてNa、Tl、InおよびTmのハロゲン化物を封入している。
【0003】
また、特許文献1は、上記高圧放電ランプを調光点灯することが可能であることも明らかにしている。
【特許文献1】特開2004−349242公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、調光時にアークのちらつきや点灯中のアークに立ち消えを生じることがあった。本発明者は、この問題を徹底的に調査した結果、電極の先端部とランプ電流が関係していて、両者の関係如何によっては上記の問題の発生が抑制されることが分かった。本発明は、上記知見に基づいてなされたものである。
【0005】
本発明は、調光点灯時におけるセラミック放電ランプをアークのちらつきや立ち消えを効果的に抑制にしたセラミック放電ランプ点灯装置を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、セラミック放電ランプをその電極を調光時のランプ電流との関係において改良することにより、調光点灯時におけるセラミック放電ランプをアークのちらつきや立ち消えを効果的に抑制にしたセラミック放電ランプ点灯装置を提供することを具体的な目的とする。
【0007】
さらに、本発明は、調光点灯時におけるセラミック放電ランプの明るさ(全光束値)、色温度、平均演色評価数が安定したセラミック放電ランプ点灯装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明のセラミック放電ランプ点灯装置は、放電空間を包囲する包囲部および包囲部の両端に配置され包囲部より内径が小さい一対の小径筒部を有する透光性セラミック放電容器、透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内面との間にわずかな隙間を形成しながら小径筒部内に挿通されて放電空間に臨むとともに電極先端面積がS(mm)の一対の電極、先端部が小径筒部内に挿通されて電極の基端に接続し基端部が小径筒部から外部へ露出する給電部材、給電部材と小径筒部の間に進入して透光性セラミック放電容器を気密にシールするシール材、ならびに金属ハロゲン化物および希ガスを少なくとも含みセラミックス放電容器内に封入された放電媒体を有している発光管と、発光管を内部に収納する外管とを備えているセラミック放電ランプと;セラミック放電ランプを点灯するとともにセラミック放電ランプに供給する電力を変化できるように構成されている点灯回路と;を具備し、セラミック放電ランプがその定格ランプ電力の少なくとも40%までの調光点灯において、ランプ電流値I(A)と電極先端面積S(mm)の比I/S(A/mm)が下式を満足することを特徴としている。
【0009】
3.0≦I/S
本発明は、セラミック放電ランプおよび点灯回路を具備して構成されており、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
〔セラミック放電ランプについて〕
セラミック放電ランプは、発光管および外管を具備している。
【0010】
<発光管について> 発光管は、透光性セラミックス放電容器、一対の電極、給電部材および放電媒体を備えている。
【0011】
(透光性セラミックス放電容器について) 透光性セラミックス放電容器は、単結晶の金属酸化物、例えばサファイヤと、多結晶の金属酸化物、例えば半透明の気密性アルミニウム酸化物、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)と、多結晶非酸化物、例えばアルミニウム窒化物(AlN)のような光透過性および耐熱性を備えた材料からなる放電容器である。なお、透光性とは、少なくとも放電によって発生した可視光を透過して外部に導出できる程度に光透過性であればよく、透明であるのが好ましいが、要すれば光拡散性であってもよい。そして、少なくとも包囲部が透光性を備えていればよく、要すれば小径筒部は半透光性ないし遮光性であってもよい。
【0012】
また、透光性セラミックス放電容器は、放電空間を包囲する包囲部と包囲部の端部に連通して配設された小径筒部とを備えている。そして、包囲部と小径筒部とを一体的に成形して一体化することが好ましい。そうすれば、材料断面の熱的または光学的な不均質構造が存在しなくなる。しかし、材料断面の熱的または光学的な不均質構造を特に問題としないのであれば、焼き嵌め構造であってもよい。
【0013】
包囲部は、その内部に放電空間を画成して放電を包囲するために、包囲部の内面を連続的な曲面に形成することが許容される。さらに、包囲部内部の主要部を俵形、楕円球状や球状の中空にすることができる。なお、包囲部の「主要部」とは、小径筒部と接している側の端部近傍を除いた残余の大部分であって、放電による発光が主として透過する部分を備えた中空状であることをいう。
【0014】
次に、小径筒部は、その内部に後述する電極および電極に接続する給電部材が挿通し、電極の軸部の周囲にキャピラリーと称するわずかな隙間を形成すれば、その内部に蒸発しない液相状態で滞留する金属ハロゲン化物や水銀などの放電媒体が入り込み、その放電空間側の表面部に最冷部を形成することができる。また、キャピラリーは、その長さ方向に温度勾配が形成されることにより、シール部の温度を所要値まで低下するように構成することができるので、透光性セラミックス放電容器の封止に対して効果的に寄与する。なお、小径筒部の断面は、好ましくはほぼ円形である。
【0015】
さらに、透光性セラミックス放電容器は、その点灯中の外表面における温度が850〜1200℃になるように設計されているのが好ましい。
【0016】
(一対の電極について) 一対の電極は、その基端側が小径筒部内に挿入されて先端部が放電空間に臨むように透光性セラミックス放電容器の内部に封装されている。そして、タングステン(W)あるいはレニウム(Re)などの耐ハロゲン性および耐火性を有する金属からなる。
【0017】
また、本発明においては、電極先端面積をS(mm)として、この電極先端面積Sを調光点灯時におけるランプ電流との関係が所定の条件を満足するように構成する。なお、この点については後述する。また、電極先端面積Sとは、電極の先端を構成する部位を電極軸と直交する面に投影したときの面積をいう。したがって、電極の先端部が丸棒で、その先端面が半球状に突出しているような場合および先端面が垂直に切断された平面状である場合のいずれも、電極先端面積Sは、垂直な平面における円の面積に等しくなる。
【0018】
さらに、電極を電極軸および電極コイルを備えた構造とすることができる。この場合、電極軸は、その基端が電極の基端を構成する。電極コイルは、電極軸の先端部分の周囲に巻回されることで電極軸の先端部近傍に配設される。この場合、電極軸の先端が電極コイルの先端から放電空間に向けて突出した突出部を形成することにより、調光点灯時のアークのちらつきや立ち消えがより一層効果的に抑制される。
【0019】
さらにまた、上記電極コイルを3ターン以上にするとともに、上記突出部の突出長をL(mm)としたとき、数式0.05≦L<0.5を満足するように構成されていれば、なお一層好ましい結果が得られることが分かった。しかし、Lが0.05mm未満であると、寿命中の電極先端部が侵食されて、電極コイルからアークが発し、調光時におけるアークのちらつきや立ち消えが生じやすくなる。また、Lが0.5mm以上になると、突出部によって構成される電極先端部が電極コイルによる冷却作用を受けにくくなって、局部的に電極先端部の温度が上昇し、光束維持率が悪くなるばかりか、初期の光束値が突出長0.05mm未満のものに比べて低下する傾向を示す。
【0020】
さらにまた、電極の小径筒部内に挿通されている電極軸部分の周囲に電極軸コイルを巻回して備えることができる。この場合、電極軸コイルは、キャピラリー内部に位置する。
【0021】
(給電部材について) 給電部材は、電極に給電するための機能、小径筒部およびシール部材と協働して透光性セラミックス放電容器を封止する機能および電極を支持するための機能を有する部材である。そして、その基端部が点灯回路に接続し、先端部が電極に接続する。給電部材が電極に接続するために、先端部は透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内部に挿入され、さらに小径筒部の内部において電極の基端に接続している。
【0022】
また、給電部材は、その全体を封着性導電部材により形成してもよいし、また封着性導電部材および耐ハロゲン性導電部材からなる直列接続構体により形成することができる。給電部材の全体を封着性導電部材により形成する場合には、当然ながら封着性導電部材が上記3機能を奏するように配慮して給電部材を構成することを要する。これに対して、給電部材が上述のように封着性導電部材および耐ハロゲン性導電部材の直列接続構体により形成される場合には、封着性導電部材が小径筒部およびシール部材と協働して透光性セラミックス放電容器を封止する機能を担当し、耐ハロゲン性導電部材が電極を支持するため機能を担当し、さらに両部材はともに電極に給電するための機能を併せて担当する。
【0023】
封着性導電部材としては、電極の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有する導電性部材を用いるのがよい。例えば、透光性セラミックスの種類に応じてニオブ、タンタルおよび白金などを選択して用いることができる。なお、透光性セラミックス放電容器が透光性アルミナセラミックスからなる場合にはニオブが好適である。
【0024】
耐ハロゲン性導電部材としては、電極からの強い伝熱に耐える耐火性と電極構成物質に接近した熱膨張係数を有している部材を用いるのがよい。例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)およびサーメットなどから選択することができる。なお、サーメットは、セラミックス粒子と金属(例えば、MoやW)粉末の混合体を焼成して形成される。
【0025】
給電部材に電極を接続して電極を支持し、かつ、透光性セラミック放電容器に対する組立を容易にするために、例えば両者を突合せ溶接により予め一体化させて電極マウントを構成することができる。また、給電部材を封着性導電部材および耐ハロゲン性導電部材により形成する場合にもこれらを突合せ溶接して一体化することができる。
【0026】
(シール材について) シール材は、高融点フリットガラスなどからなり、高温溶融時に透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内面と給電部材との間に進入して透光性セラミックス放電容器を気密にシールする。シールを行うには、一般的な方法として採用されているように、小径筒部の端部において、給電部材の周囲にシール材のペレットを施与して、加熱溶融させることができる。そうすると、溶融したシール材が小径筒部の内面と給電部材との間に形成されるわずかな隙間に進入して固化するので、所望のシールが形成される。なお、シール材は、給電部材のシールに機能する部位を被覆するので、ニオブのように耐ハロゲン性の劣る物質であっても差し支えない。
【0027】
(放電媒体について) 放電媒体は、金属ハロゲン化物および希ガスを少なくとも含んで構成されている。また、ランプ電圧形成用の媒体として水銀を含めることができる。
【0028】
金属ハロゲン化物には、ランプ電圧形成用の媒体として水銀を用いる場合、主として発光金属のハロゲン化物が用いられる。
【0029】
また、ランプ電圧形成用の媒体として水銀を用いないで、いわゆる水銀フリーにする場合には、金属ハロゲン化物に発光金属のハロゲン化物に加えて、蒸気圧が高くて可視光領域の発光が少ない金属、例えば亜鉛(Zn)やアルミニウム(Al)などのハロゲン化物を水銀に代えて封入することができる。
【0030】
本発明において、発光金属のハロゲン化物は、特段限定されない。しかし、金属ハロゲン化物がナトリウム(Na)、タリウム(Tl)およびツリウム(Tm)のハロゲン化物を発光金属ハロゲン化物の主成分として含むことができる。上記金属ハロゲン化物を封入すると、安定した発光特性を得ることができる。この場合、Na、TlおよびTmのハロゲン化物の封入比率については比較的自由に設定することができる。なお、ナトリウム(Na)、タリウム(Tl)およびツリウム(Tm)のハロゲン化物については、特許文献1の記載にしたがって封入することができる。
【0031】
また、金属ハロゲン化物としてカルシウム(Ca)ハロゲン化物を上記発光金属またはその他の発光金属のハロゲン化物と一緒に封入することができる。この場合の封入比率は、1〜40質量%とする。カルシウム(Ca)ハロゲン化物は、これを添加することにより、赤および青の色度を調整するのに効果的である。なお、Caに加えるか、またはこれに代えてインジウム(In)、リチウム(Li)およびルビジウム(Rb)のいずれか一種または複数種のハロゲン化物を適量添加して発光の色度を調整することも許容される。
【0032】
希ガスは、始動ガスおよび緩衝ガスとして作用し、本発明において、特定の希ガスに限定されないが、所望によりネオン(Ne)とアルゴン(Ar)の混合ガスを用いることができる。この場合、一般には60〜600Torr程度を封入することが好ましい。60Torr未満では、パッシェン曲線にもあるように放電開始が困難となる。600Torr超では、始動電圧が高くなり、口金の耐圧を超えてしまう。
【0033】
<外管について> 外管は、その内部に主として発光管を気密に収納するための手段である。外管内雰囲気として、真空または不活性ガス、例えば窒素やアルゴンなどを封入することができる。
【0034】
外管の材質としては、硬質ガラス、半硬質ガラスまたは石英ガラスを用いるのが一般である。しかし、要すれば、発光管と同じ透光性セラミックス製の外管であってもよい。
【0035】
また、外管には常法にしたがって口金などを装着し、また内部に収納する発光管を支持するための支持枠などを適宜配設することが許容される。
〔点灯回路について〕
点灯回路は、セラミック放電ランプに給電して、これを点灯する手段であり、本発明においては定格ランプ電力以下のランプ電力をセラミック放電ランプに供給して、これを調光点灯できるように構成される。また、所望により、上記構成に加えて定格ランプ電力を給電してセラミック放電ランプを全光点灯できるようにも構成することができる。なお、調光の態様としては、連続的および段階的のいずれであってもよい。
【0036】
また、点灯回路は、定格ランプ電力の少なくとも40%まで供給電力を低減させることが可能であるように構成されているのが好ましい。そうすれば、セラミック放電ランプは、既述のように少なくとも40%まで調光点灯してもアークのちらつきや立ち消えが抑制されるように構成されているので、セラミック放電ランプを定格ランプ電力の40%まで調光点灯させることができる。もちろん、40%より絞った調光点灯が可能であるように構成することを否定するものではない。
【0037】
点灯回路からセラミック放電ランプに給電するランプ電力を変化させる手段は、本発明において特段限定されない。例えば、ランプ電力を変化させる手段が主としてランプ電流を変化させる手段からなるように構成することができる。このような構成であれば、ランプ再点弧電圧以上のランプ電圧で調光を行うことが可能になり、したがって制御が容易になる。なお、上記において、「主として」とは、電圧を変動することでランプ電力を変化する態様も含むものであって、ランプ電力の変化率が電圧よりランプ電流による方が大きいことを意味する。しかし、所望により主として出力電圧を変化させることによりランプ電力を変化させるように構成することもできる。また、出力電圧を変化させるために、例えば電圧調整機能を付設することができる。
【0038】
さらに、点灯回路は、その出力電圧の波形および周波数が特段限定されない。しかし、好適には波形は矩形波である。出力電圧波形を矩形波にすることによって、ランプ点灯中の再点弧電圧によるアークの立ち消え防止作用を得ることができる。また、矩形波は、点灯回路電子化することによって容易にこれを得ることができる。なお、所望により、出力電圧の波形として正弦波および三角波などを用いることができる。次に、周波数は、50〜500Hzの範囲で点灯するのが効果的である。50Hz以下ではその周波数が人間の目でちらつきを感じてしまい、500Hz以上では一般にアークが揺れる音響共鳴現象が発生しやすくなる。
【0039】
さらにまた、点灯回路は、電子化点灯回路および鉄心形点灯回路のいずれであってもよい。しかし、調光動作が円滑で、しかも構成が比較的簡単になるので、前者であるのが好ましい。
【0040】
電子化点灯回路の場合、直流電源、直流−直流変換回路および直流−交流変換回路を具備しているのが好ましい構成である。直流電源としては、交流−直流変換回路を用いて構成することができる。交流−直流変換回路は、商用電源などの低周波交流電圧を整流して直流電圧を得る。直流−直流変換回路としては、直流電源電圧を所望の値の直流電圧に変換する。例えば、昇圧チョッパや降圧チョッパなどを採用することができる。直流−交流変換回路としては、フルブリッジ形インバータまたはハーフブリッジ形インバータなどを採用することができる。
【0041】
<比I/Sについて> 比I/S(A/mm)は、単位電極先端面積当たりのランプ電流を意味する。電極先端面積S(mm)は、前記<一対の電極について>の項において既に説明したとおりである。
【0042】
ランプ電流I(A)は、前記セラミック放電ランプが定格ランプ電力の40%までの調光点灯時におけるランプ電流が該当する。このランプ電流は、点灯中にセラミック放電ランプと直列に接続された電流計によって測定できる値を用いて計算する。
【0043】
本発明において、比I/S(A/mm)は、数式3.0≦I/Sを満足する。この範囲内であれば、本発明の目的を達成することができる。しかしながら、比I/Sが3.0(A/mm)未満であると、調光点灯中にアークのちらつきや立ち消えが発生しやすくなる。好ましくは比I/S(A/mm)が数式3.5≦I/Sを満足するように構成されているのがよい。そうすれば、調光点灯中アークのちらつきや立ち消えの発生確率が極端に小さくなり、すこぶる高い信頼性を得ることができる。
【0044】
<定格電力について> 本発明において、セラミック放電ランプの定格電力は特段限定されないが、好ましくは10W〜1000Wの範囲である。
〔本発明の作用について〕
本発明においては、少なくとも定格ランプ電力の40%までの調光点灯において比I/S(A/mm)が数式3.0≦I/Sを満足することによって、アークのちらつきや立ち消えが効果的に抑制されるようになり、安定した調光点灯を行うことができる。
【0045】
なお、少なくとも定格ランプ電力の40%(40%調光)までの調光点灯を規定した理由は、次のとおりである。すなわち、40%調光までの調光が可能であれば、店舗用を始め殆どの用途において、調光機能としてほぼ満足できるからである。また、本発明においては、40%より絞った調光(例えば、30%や20%など)が可能であってもよい。この場合、調光可能範囲内における所望割合の調光点灯において、数式3.0≦I/Sを満足することによって、上記と同様の作用、効果を奏することができる。しかし、本発明においては、40%未満すなわちランプ電力を定格ランプ電力の40%より小さく絞った調光が可能であっても、40%までは数式3.0≦I/Sを満足するように構成されているのであれば、40%未満の調光のときには3.0≦I/Sを満足しない構成であってもよい。なぜなら、上記の構成であれば、40%までは本発明の作用、効果を奏するからである。
【0046】
また、例えば放電媒体にNa、TlおよびTmのハロゲン化物を、発光金属のハロゲン化物の主成分として封入しているなどの場合には、定格ランプ電力の少なくとも40%までの調光点灯において、全光点灯における発光と比較して、最大色温度変動値が600K以下(好ましくは400K以下)、平均演色評価数の最大変動値が8ポイント以内(好ましくは6ポイント以内)および全光束値が40%以上の少なくともいずれか一を満足する発光を得ることが可能になる。なお、全光点灯とは、定格ランプ電力時の点灯を意味する。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、調光点灯時におけるセラミック放電灯をアークのちらつきや立ち消えを効果的に抑制にしたセラミック放電灯点灯装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0049】
図1ないし図4は、本発明のセラミック放電ランプ点灯装置を実施するための第1の形態を示し、図1はセラミック放電ランプの概略正面図および点灯回路のブロック図、図2は発光管の拡大断面正面図、図3は電極の拡大正面図および電極先端の斜視図、図4は点灯回路のブロック図である。各図において、セラミック放電ランプ点灯装置は、セラミック放電ランプCDLおよび点灯回路LOCを具備している。なお、図中の符号ACは、商用電源などの低周波交流電源である。
【0050】
図1に示すセラミック放電ランプCDLは、400W形であり、発光管IT、外管OT、シュラウドガラスSG、発光管支持部材SF、UVエンハンサUVE、ゲッタGa、Gbおよび口金Bを具備している。
【0051】
発光管ITは、図2に示すように、透光性セラミックス放電容器1、一対の電極2、2、一対の給電部材3、3、一対のシール材4、4および透光性放電容器1の内部に封入された放電媒体を備えている。
【0052】
透光性セラミックス放電容器1は、図2にその詳細を示すように、包囲部1aおよび包囲部1aの両端に連通して配設された一対の小径筒部1b、1bを備え、内部に放電空間1cを有している。そして、包囲部1aおよび小径筒部1b、1bは、鋳込み成形により一体化されている。包囲部1aは、2つの球体が、その一部が互いに重なるように軸方向に離間して両端部の半球状の部分を形成し、半球状の部分の間を直線で結んでなるほぼ俵形の形状をなしている。一対の小径筒部1b、1bは、それぞれ細長いパイプ状をなし、先端が対応する包囲部1aの半球状部分の中央部に接続している。なお、包囲部1aおよび一対の小径筒部1b、1bの境界部は、その内外両面が曲面によって形成されている。
【0053】
一対の電極2、2は、図3にその詳細を示すように、電極軸2a、電極コイル2bおよび電極軸コイル2cを備えて構成されている。電極軸2aは、タングステン棒からなり、基端側が小径筒部1b、1b内に挿通されていて、先端側が放電空間1c内に望んでいる。そして、電極軸2aと小径筒部1b、1bの内面との間にキャピラリーと称される0.1mm以下のわずかな隙間が形成されている。
【0054】
電極コイル2bは、電極軸2aの先端部に長さL(mm)の突出部2a1が形成されるように電極軸2aの先端から少し後退した位置において、タングステン細線を3ターン以上密ピッチで巻回することによって形成されていて、包囲部1a内に位置している。また、電極軸2aの先端は、電極軸2aの軸心に直交する平坦面を形成していて、その電極先端面積をS(mm)とする。なお、突出部2a1の長さLは、電極コイル2bの先端を基準とした数値である。また、電極先端面を斜視図の部分において網目を付して示すことで理解しやすくしている。
【0055】
電極軸コイル2cは、電極軸2aの小径筒部1b内に挿入されている領域において、電極軸2aの周囲に適当なピッチで装着されている。
【0056】
一対の給電部材3、3は、図2に示すように、封着性導電部材3aおよび耐ハロゲン性導電部材3bの直列接続構体によって構成されている。封着性導電部材3aは、ニオブ棒状体からなる。耐ハロゲン性導電部材3bは、サーメット棒状体からなる。サーメット棒状体は、モリブデン−アルミナの焼結体により形成されている。封着性導電部材3aは、先端が小径筒部1bの端部からその内部に挿入して後述するシール材により被覆され、基端が小径筒部1bの外部へ露出している。耐ハロゲン性導電部材3bは、その基端が封着性導電部材3aの先端に突合せ溶接されていて、その先端が電極軸2aの基端に突合せ溶接されている。
【0057】
したがって、上記の電極2および給電部材3は、予め直線状に一体化された電極マウントを形成している。
【0058】
一対のシール材4、4は、それぞれDy−SiO−Alからなるフリットガラスと称されるセラミックス封止用コンパウンドを加熱して溶融し、固化することにより形成されている。そうして、一対のシール材4、4は、透光性セラミックス放電容器1の小径筒部1b、1bの端面側の部分と、これに対向する給電部材3、3の封着性導電部材3aと、の間に介在して透光性セラミックス放電容器1を気密に封止していて、いわゆる給電部材挿入封止構造を提供する。そして、一対の給電部材3、3が透光性セラミックス放電容器1の内部に露出しないように小径筒部1b、1b内に挿入されている部分の全体を被覆している。以上の構成によって透光性セラミックス放電容器1は封止されるとともに、電極2、2が透光性セラミックス放電容器1内の所定の位置に固定されている。
【0059】
また、シール材4を形成するには、常法にしたがうことができ、まず透光性放電容器1を縦位置にセットする。次に、セラミックス封止用コンパウンドのリング状フリットガラス(図示しない。)を、そのとき上側に位置して封止しようとする例えば小径筒部1b側において、封着性導電部材3aの外部露出部に挿通させてから、小径筒部1bの端面上に載置させ、リング状ペレットを加熱して溶融させる。そうすれば、溶融したシール材4が給電部材3の封着性導電部材3aと小径筒部1bの内面との間のわずかな隙間に進入して固化する。そして、シール材4は、給電部材3の封着性導電部材3aの小径筒部1b内に挿入されている部分の全体および耐ハロゲン性導電部材3bの基端側の一部を被覆する。次に、透光性セラミックス放電容器1を180°反転して、他方の小径筒部1b側についても上記と同様の手順でシール材4を形成する。なお、後者の封止の前に、後述する放電媒体が透光性の内部に封入される。
【0060】
放電媒体は、希ガス、金属ハロゲン化物および水銀からなり、透光性セラミックス放電容器1内に封入されている。なお、金属ハロゲン化物および水銀は、蒸発する分より過剰に封入されているので、その一部が点灯時に小径筒部1b、1b内に形成されるわずかな隙間内に液相状態で滞留している。そして、点灯中下側となる例えば小径筒部1b内に液相状態で滞留している放電媒体の表層部付近に最冷部が形成される。ハロゲン化金属は、いずれも主として発光金属のハロゲン化物であり、例えばNaI、TlI、InIおよびTmIからなる。
【0061】
外管OTは、図1に示すように、硬質ガラスからなるBT形バルブを用いている。そして、内部に発光管IT、シュラウドガラスSGおよび発光管支持部材SFなどの部材を所定の位置に収納している。また、外管OTは、図1において下部に位置するネック部にフレアステム5を封着して備えている。フレアステム5は、一対の内部導入線6a、6bを外管OT内へ気密に突出させて備えている。
【0062】
発光管ITは、その上部の給電部材3が後述する発光管支持部材SFに支持されるとともに、発光管支持部材SFを介して内部導入線6aに接続している。また、発光管ITは、その下部の給電部材3が、接続導体7、8に接続して支持されているとともに、接続導体7、8を介して内部導入線6bに接続している。
【0063】
シュラウドガラスSGは、石英ガラス製の円筒体からなり、発光管ITの周囲を離間状態にして包囲するとともに、後述のように光管支持部材SFに支持されている。支持体9は、シュラウドガラスSGの上下端面に嵌合するとるとともに、発光管支持部材SFに固定される。
【0064】
発光管支持部材SFは、支持枠11、一対の支持プレート12a、12bおよび一対のスプリング片13、13からなる。支持枠11は、ステンレス鋼棒を縦長の変形ロ字形に屈曲し、さらにバンド状導体11aをブリッジ状に溶接してなり、内部導入線6aに接続している。一対の支持プレート12a、12bは、ステンレス鋼板をほぼ円盤状に形成してなり、周縁に形成した係止爪を利用してシュラウドガラスSGの上下両端面を上下から挟持し、かつ、図1において左右から突出する取付爪を利用して支持枠11に固定されている。また、一対の支持プレート12a、12bの中央部には通孔が形成されており、透光性セラミックス放電容器1の一対の小径筒部1b、1bを上記通孔に挿通させることにより、発光管ITを外管OTの管軸位置に定置しているとともに、発光管ITを主としてその管軸に直交する方向に支持している。一対のスプリング片13、13は、支持枠11の図1において上部に左右に分かれて溶接されていて、外管OTの頭部内面に弾性的に接触することにより、支持枠11の上部を外管OTの頭部内面に対して弾性的に支持する。
【0065】
以上から明らかなように、発光管支持部材SFは、発光管ITおよび中管SGを外管OTに対して所定位置に機械的に支持している。
【0066】
UVエンハンサUVEは、セラミック放電ランプCDLの始動に先立って作動して紫外線を放射して発光管ITを照射することで、セラミック放電ランプCDLの発光管IT内の電子放射を促進してセラミック放電ランプCDLの始動を容易にする手段である。そして、原理的には既知であるので、詳細構造については図示を省略するが、気密容器、導入線、内部電極、放電媒体および外部電極を具備して構成されている。気密容器は、石英ガラスなどの紫外線透過性ガラス製で、内部に細長い放電空間が形成されている。導入線は、モリブデンからなり、先端が後述する内部電極に溶接し、図1に示すように、基端が発光管支持部材SFに溶接され、したがって発光管支持部材SFを介して内部導入線6aに接続している。上記内部電極は、モリブデン製で板状をなしていて、気密容器の放電空間内に封装されている。放電媒体は、アルゴン約1.3kPaからなり、気密容器の内部に封入されている。上記外部電極は、外径0.4mmのモリブデン線からなり、気密容器の外周に密着して5ターンほど巻き付けられているとともに、導体16を介して接続導体8に接続している。以上から明らかなように、UVエンハンサUVEは、発光管ITに並列接続している。
【0067】
ゲッタGaは、発光管支持部材SFおよび接続導体8間に接続してフレアステム5の近傍に位置するイニシャルゲッタである。ゲッタGbは、発光管支持部材SFの上部に支持されたパフォーマンスゲッタである。
【0068】
口金Bは、E39形ねじ口金からなり、外管OTのネック部に装着されていて、前記一対の外部導入線が接続している。
【0069】
次に、点灯回路LOCは、その入力端が低周波交流電源ACに接続し、出力端がセラミック放電ランプCDLの口金Bのセンターコンタクトおよびシェルに接続している。そして、低周波の矩形波交流電圧を出力してセラミック放電ランプCDLを点灯する。
【0070】
また、点灯回路LOCは、図4に示すように、フィルタ回路F、交流−直流変換回路AC-DC、直流−直流変換回路DC-DC、直流−交流変換回路DC-AC、制御回路CC、調光制御回路DIMおよびイグナイタIGを具備して構成されている。
【0071】
フィルタ回路Fは、点灯回路LOCから雑音電圧が低周波交流電源AC側へ流出されないように阻止する。
【0072】
交流−直流変換回路AC-DCは、整流回路を主体として構成されていて、低周波交流電圧を直流電圧に変換する。
【0073】
直流−直流変換回路DC-DCは、交流−直流変換回路AC-DCから出力される直流電圧を異なる値の直流に変換する回路手段であり、例えば昇圧チョッパからなり、セラミック放電ランプCDLを点灯するのに適した値に昇圧された直流出力電圧を得る。また、昇圧された直流出力電圧は、調光信号に応じてその値を上下に変化させることができるように制御可能である。
【0074】
直流−交流変換回路DC-ACは、昇圧された直流電圧を矩形波の交流電圧に変換する回路手段であり、例えばフルブリッジ形インバータからなる。
【0075】
制御回路CCは、直流−直流変換回路DC-DCおよび直流−交流変換回路DC-ACを制御する回路手段であり、上記各変換回路に備えられたスイッチング素子に対して所要に制御された駆動信号などの制御信号を供給する。また、制御回路CCは、後述する調光制御回路DIMから送出された調光制御信号に応動して、所望の調光度に対応した制御信号を発生して直流−直流変換回路DC-DCを制御し、その直流出力電圧を調光度に対応した値に変化させる。
【0076】
調光制御回路DIMは、外部の調光操作部(図示しない。)から送出された調光操作信号を受信して、調光制御信号を発生し、これを制御回路CCに制御入力する。
【0077】
イグナイタIGは、セラミック放電ランプCDLの始動時に高電圧パルスを発生する回路手段であり、発生した高電圧パルスをセラミック放電ランプCDLの一対の電極2、2間に印加してセラミック放電ランプCDLを始動させる。
【0078】
そうして、低周波交流電源ACを投入すると、低周波交流電源ACから供給される低周波交流電圧は、フィルタ回路Fを経由して交流−直流変換回路ADCにより直流電圧に変換され、さらに直流−直流変換回路DCCにより所要値の直流電圧に昇圧されてから、直流−交流変換回路DACにより矩形波の低周波交流電圧に変換されてセラミック放電ランプCDLの一対の電極2、2間に印加される。上記の回路動作を通じて、制御回路CCは、直流−直流変換回路DCCおよび直流−交流変換回路DACのスイッチング素子に対して駆動信号を供給する。
【0079】
また、低周波交流電源ACを投入して直流−交流変換回路DACの出力端から矩形波交流電圧が出力すると、この電圧を電源電圧としてイグナイタIGが作動し、高電圧パルスを発生する。この高電圧パルスは、セラミック放電ランプCDLの一対の電極2、2間に印加される。この高電圧パルスが印加されると、セラミック放電ランプCDLは始動して点灯する。
【0080】
始動後の点灯のときには、セラミック放電ランプCDLが全光点灯を行うように、制御回路CCは、直流−直流変換回路DCCの直流出力電圧を制御する。そのため、セラミック放電ランプCDLが早く安定点灯状態に移行する。
【0081】
その後、外部からの調光操作信号が調光制御回路DIMに到来すると、調光制御回路DIMは、調光操作信号に応じた調光制御信号を発生する。この調光制御信号は、制御回路CCに制御入力する。このとき制御回路CCは、調光制御信号に応じて直流−直流変換回路DCCを制御するので、直流出力電圧の値が調光操作信号に応じて低下する。このため、セラミック放電ランプCDLは、調光点灯状態に移行する。
【0082】
図5は、本発明のセラミック放電ランプ点灯装置を実施するための第2の形態におけるセラミック放電ランプを示す正面図である。なお、図中、図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0083】
セラミック放電ランプCDLは、100W形であり、基本的には図1と同様の構造を有しているが、主として発光管支持部材SFなどが若干相違している。すなわち、支持枠11´は、逆コ字状であり、UVエンハンサが備えられていない。
【0084】
点灯回路(図示しない。)は、第1の形態おけるのと同様な構成である。
【実施例1】
【0085】
セラミック放電ランプは図1に示す構造であり、定格ランプ電力は250Wである。
【0086】
(発光管)
透光性セラミックス放電容器:透光性アルミナセラミックス製、全長約60mm、
包囲部の最大外径約16.6mm、内径14.0mm、内容積1.5cc、
小径筒部の外径約3mm、内径約1.2mm
一対の電極 :電極軸の外径約0.6mm、長さ約8mm、電極コイル;外径
約0.2mmのW線を密ピッチでターン数約3、電極間距離15mm
給電部材 :封着性導電部材が外径約0.9mm、長さ約12mmのNb棒、
耐ハロゲン性導電部材が外径約0.9mm、長さ12mmのサーメッ ト棒、電極軸コイルが接続部材の周囲にMo線を疎ピッチ で巻回
放電媒体 :金属ハロゲン化物がNaI-TlI-InI-TmI3を約10mg
(30-15-5-50質量%)、Hg約13mg、希ガスAr約24kPa
外管 :BT形バルブ、最大外径約90mm、最大内径約86mm、
全長約240mm
点灯回路 :図4に示す回路構成である。
【実施例2】
【0087】
セラミック放電ランプは図5に示す構造であり、定格ランプ電力は100Wである。
【0088】
(発光管)
透光性セラミックス放電容器:透光性アルミナセラミックス製、全長約45mm、
包囲部の最大外径約11mm、内径9mm、内容積1.0cc、
小径筒部の外径約2.6mm、内径約1.0mm
一対の電極 :電極軸の外径約0.4mm、長さ約7mm、電極コイル;外径約
0.15mmのW線を密ピッチでターン数約3、電極間距離15mm
給電部材 :封着性導電部材が外径約0.9mm、長さ約102mmのNb棒、
対ハロゲン性導電部材が外径約0.9mm、長さ12mmのサーメッ ト棒、電極軸コイルが対ハロゲン性導電部材の周囲にMo 線を疎ピッチで巻回
放電媒体 :金属ハロゲン化物がNaI-TlI-InI-TmI3を約10mg
(30-15-5-50質量%)、Hg約13mg、希ガスAr約24kPa
外管 :BT形バルブ、最大外径約40mm、最大内径約38mm、
全長約140mm
点灯回 :図4に示す回路構成である。

次に、定格ランプ電力が異なる複数種のセラミック放電ランプにおいて、電極軸径が種々変化した電極を備えた各種試作ランプを製作した。そして、上記試作ランプを定格ランプ電力に対して10%づつ低下させた調光度でそれぞれ1時間の点灯試験を行った結果として、アークの立ち消えの有無と比I/S(A/mm)との関係を求め、表1ないし表6を作成した。以下、表1ないし表6に基づいて説明する。
【0089】
なお、表中、比I/Sのうち、I(A)はランプ電流、S(mm)は電極先端面積である。表中の灰色地の欄は調光度を変化させている途中ないし点灯1時間中に立ち消えを起こした場合を示している。また、セラミック放電ランプの始動直後には定格ランプ電力を投入し、5分後にランプ電力を所定の調光度になるように制御している。表中、「定格電力」は定格ランプ電力を、「定格時I/S」は定格ランプ電力時のI/Sを、調光点灯時のI/S(A/mm2)は定格ランプ電力に対するそれぞれの割合における調光点灯時におけるI/S(A/mm2)を、それぞれ意味する。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
【表5】

【0095】
【表6】

表1ないし表6は、本発明においては、少なくともランプ電力40%までの調光点灯において、ランプ電流I(A)と電極先端面積S(mm)の比I/Sが3.0を超えていれば、点灯中アークの立ち消えが発生しないことを示している。
【0096】
次に、図6ないし図8を参照して、本発明における比I/Sと光束の変化率、平均演色評価数および色温度との関係について説明する。各図は、100Wおよび250Wのセラミック放電ランプについて求めたものである。なお、各図において、横軸はいずれも比I/S(A/mm)を示し、曲線Aは100Wの、また曲線Bは250Wのそれぞれのセラミック放電ランプについて求めたデータに基づくグラフである。
【0097】
図6は、比I/Sと光束の変化率の関係を示すグラフである。図において、縦軸は光束の変化率(%)を示している。
【0098】
図は、光束の変化率が比I/Sにほぼ比例して大きくなることを示している。したがって、本発明によれば、調光度と光束値がほぼ比例して変化することを理解できる。
【0099】
図7は、比I/Sと平均演色評価数の関係を示すグラフである。図において、縦軸は平均演色評価数Raを示している。
【0100】
図は、比I/Sが大きくなるにしたがって平均演色評価数が飽和傾向を示しながら大きくなるものの、その変化量は比較的少ないことを示している。したがって、本発明によれば、調光度の変化に対して平均演色評価数Raの変化が少ないことを理解できる。
【0101】
図8は、比I/Sと色温度の関係を示すグラフである。図において、縦軸はCCT(色温度)を示している。
【0102】
図は、比I/Sが大きくなるにしたがって色温度が飽和傾向を示しながら小さくなるものの、その変化量は比較的少ないことを示している。したがって、本発明によれば、調光度の変化に対して平均演色評価数Raの変化が少ないことを理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明のセラミック放電ランプ点灯装置を実施するための第1の形態におけるセラミック放電ランプの概略正面図および点灯回路のブロック図
【図2】同じく発光管の拡大断面正面図
【図3】同じく電極の拡大正面図および電極先端の斜視図
【図4】同じく点灯回路のブロック図
【図5】本発明のセラミック放電ランプ点灯装置を実施するための第2の形態におけるセラミック放電ランプを示す正面図
【図6】比I/Sと光束の変化率の関係を示すグラフ
【図7】比I/Sと平均演色評価数の関係を示すグラフ
【図8】比I/Sと色温度の関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0104】
1…透光性セラミックス放電容器、1a…包囲部、1b…小径筒部、1c…放電空間、2…電極、2a…電極軸、2a1…突出部、2b…電極コイル、2c…電極軸コイル、3…給電部材、3a…封着性導電部材、3b…耐ハロゲン性導電部材、4…シール材、IT…発光管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を包囲する包囲部および包囲部の両端に配置され包囲部より内径が小さい一対の小径筒部を有する透光性セラミック放電容器、透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内面との間にわずかな隙間を形成しながら小径筒部内に挿通されて放電空間に臨むとともに先端面積がS(mm)の一対の電極、先端部が小径筒部内に挿通されて電極の基端に接続し基端部が小径筒部から外部へ露出する給電部材、給電部材と小径筒部の間に進入して透光性セラミック放電容器を気密にシールするシール材、ならびに金属ハロゲン化物および始動性ガスを少なくとも含みセラミックス放電容器内に封入された放電媒体を有している発光管と、発光管を内部に収納する外管とを備えているセラミック放電ランプと;
セラミック放電ランプを点灯するとともにセラミック放電ランプに供給する電力を変化できるように構成されている点灯回路と;
を具備し、セラミック放電ランプがその定格ランプ電力の少なくとも40%までの調光点灯において、ランプ電流値I(A)と電極先端面積S(mm)の比I/S(A/mm)が下式を満足することを特徴とするセラミック放電ランプ点灯装置。
3.0≦I/S
【請求項2】
下式を満足することを特徴とする請求項1記載のセラミック放電ランプ点灯装置。
3.5≦I/S
【請求項3】
セラミック放電ランプは、その電極が、電極軸および電極軸の放電空間側の先端部近傍に3ターン以上巻回されている電極コイルを備え、かつ、電極軸の放電空間側の先端部が電極コイルから放電空間側へ突出していることを特徴とする請求項1または2記載のセラミック放電ランプ点灯装置。
【請求項4】
電極は、電極コイルから放電空間側へ突出している電極軸の突出部の長さL(mm)が下式を満足することを特徴とする請求項3記載のセラミック放電ランプ点灯装置。
0.05≦L<0.5
【請求項5】
点灯回路は、その出力がセラミック放電ランプの定格ランプ電力の少なくとも40%に達するまで可変であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載のセラミック放電ランプ点灯装置。
【請求項6】
セラミック放電ランプは、その放電媒体中の金属ハロゲン化物がNaハロゲン化物、Tlハロゲン化物およびTmハロゲン化物を少なくとも含んでいることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載のセラミック放電ランプ点灯装置。
【請求項7】
セラミック放電ランプは、その放電媒体中の金属ハロゲン化物がその総封入量に対して1〜40%の封入比率で封入されているCaハロゲン化物を含んでいることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一記載のセラミック放電ランプ点灯装置。
【請求項8】
点灯回路は、ランプ電力を変化させる手段が主としてランプ電流を変化させる手段であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一記載のセラミック放電ランプ点灯装置。
【請求項9】
点灯回路は、その出力が、波形が矩形波であるとともに周波数が50〜500Hzであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一記載のセラミック放電ランプ点灯装置。
【請求項10】
セラミック放電ランプの発光は、定格ランプ電力の40%までの調光点灯時に、全光点灯時における発光と比較して、最大色温度変動値が600K以下、平均演色評価数の最大変動値が8ポイント以内および全光束値が40%以上の少なくともいずれか一を満足することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一記載のセラミック放電ランプ点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−236815(P2006−236815A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50629(P2005−50629)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(301010951)オスラム・メルコ・東芝ライティング株式会社 (37)
【Fターム(参考)】