説明

セラミドの製造方法

【目的】 天然のセラミド中に見られるエリトロ配置をできるだけ多く有するセラミド生成物をもたらす効率的な合成法を提供する。
【構成】 2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートの2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエート中間体へのオキシムのアシル化及びオキシムエステル基のアミド基への還元による転化、そして前記中間体のケト及びエステル基のセラミドの1,3ジオールへの還元を含む、2段階プロセスによるセラミドの製造方法。オキシムのアシル化と最初の還元は連続的に又は同時に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、3−オキソ−アルカノエートから出発してセラミドを製造する方法に関する。より詳細には、本発明は2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートの2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエートへの転化とそれに続くセラミドへの還元によりセラミドを製造する方法に関する。また、本発明は、新規な2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエートと2−アルカノイロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートにも関する。
【0002】
【従来の技術】セラミドは皮膚の角質層の脂質フラクションの重要な構成成分であることが知られており、そこでセラミドは好ましくない雰囲気条件の影響下で皮膚が乾燥することを防ぐことを含む重要な機能を果たしていると考えられている。従って、セラミドは皮膚の保護機能を改善するか又は回復させる目的で種々の化粧用組成物に添加されてきた。そのようなセラミドは主に種々の動物性源から得られ、植物性源から比較的少ない。
【0003】セラミドの構造に関する多数の文献が存在するが、その中にはそれらの合成も記載されている。最近になって、合成セラミド及びセラミド類似物が欧州特許公開公報第 0 097 059号、第 0 420 722号及び第 0 500 437号に記載された。これらのセラミド及び類似物は対応するスフィンゴシン及びジヒドロスフィンゴシンから合成された。以下では、「スフィンゴシン」と「ジヒドロスフィンゴシン」をまとめて「スフィンゴシン」と呼ぶ。従って、欧州特許公開公報第 0 500 437号の実施例1〜4においては、2−アミノ−1,3−オクタデカンジオールから2−リノレイルアミド−1,3−オクタデカンジオールを製造する種々の方法が記載されている。一方、スフィンゴシンは、従来的に、2−アセトアミド−3−オキソ−アルカン酸エステルの硼化水素化ナトリウム還元(これによって、ケト基及びエステル基がヒドロキシル基まで還元され、同時にアセチル基が除去される)によって得られる。これについては、欧州特許公開公報第 0 500 437号を参照のこと。スフィンゴシンを得るための種々の方法が、D. Shapiroの“Chemistry of Sphingolipids”、Hermann、パリ(1969)にも記載されている。
【0004】スフィンゴシンの先駆体として2−アセトアミド−3−オキソ−アルカノエートを得る方法がG.I. GregoryとT. MalkinのJ. Chem. Soc.(1951)、2453〜2456頁に記載されており、この方法は、メチル 3−オキソ−アルカノエートを2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートにオキシム化すること、それに続いてオキシムを酢酸と無水酢酸の混合物中亜鉛末で還元的にアセチル化することを含む。
【0005】エチルアセトアセテートの硝酸ナトリウムによるオキシム化とそれに続く無水酢酸中Pd/C上での水素化によるラセミエチル2−アセトアミド−3−オキソ−ブチレートの合成は、M. SoukopらのHelv. Chim. Acta 70(1987)、232〜236頁に記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】合成セラミドは、大体において多量に得られ、天然の源に依存せず、及び微生物学的不純物を含まず高純度で得られるという利点を有している。しかしながら、天然のセラミド中に見られるエリトロ配置(erythro configuration)をできるだけ多く有する生成物をもたらす効率的な合成法に対する要望が存在する。
【0007】
【課題を解決するための手段】2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートからセラミドを製造する方法であって、(i) 以下の一般式Iの2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエート(式中、R1は10乃至23の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基であり、R1は所望により1つ以上のヒドロキシル又はアルカノイロキシ基で置換されていてもよい)を一般式IIの2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエート(式中、R1は上で定義した通りであり、R3は10乃至34の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基であり、R3は所望により1つ以上のヒドロキシル又はアルカノイロキシ基で置換されていてもよい)に転化する工程、
【0008】
【化5】


(ii) 工程(i)で得られた2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエートを一般式(III)のセラミド(式中、R1及びR3は上で定義した通りである)に還元する工程、を含む方法が発見された。
【0009】さらに、一般式(II)の2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエート(式中、R1及びR3は上で定義した通りである)は、高いエリトロ/トレオ比率(erythro/threo ratio)を有するセラミドの効率的な製造を可能にする有用な中間体であることが判明した。
【0010】R2基は水素でよく、或いは工程(i)で転化の妨害をせず工程(ii)の還元中に切断される有機基でもよい。低級アルコキシ基が非常に適しており、1〜6の炭素原子の低級アルコキシ基が好ましく、メトキシ及びエトキシ基が特に好ましい。R2基が式I及びIIの化合物中に存在する場合、本明細書中においては、通常の化合物の命名法とは異なる場合があるかもしれないが、そのような化合物は一貫してアルカノエートと呼ぶ。
【0011】適するR1は、例えば、以下のものである:CH3(CH212CH=CH−CH3(CH213CHOH−CH3(CH215CHOH−
【0012】
【化6】


【0013】R1は10乃至23の炭素原子のアルキル又はアルケニル基であって、所望によりヒドロキシル基で置換されているものが好ましい。R1がアルケニル基である場合、この基は工程(i)中に、部分的に又は完全に、対応するアルキル基まで水素化されるかもしれない。特に好ましいのは、R1がC1327−である2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエートである。
【0014】適するR3基は、例えば、以下のものである:CH3(CH222−CH3(CH213CHOH−CH3(CH221CHOH−CH3(CH223CHOH−CH3(CH24CH=CHCH2CH=CH(CH27−CO−O−(CH231−CH3(CH24CH=CHCH2CH=CH(CH27−CO−O−(CH229−CH3(CH221CH(OH)−CO−O−(CH229
【0015】R3は10〜34の炭素原子のアルキル又はアルケニル基であって、所望によりヒドロキシル基で置換されているものが好ましい。最も好ましいR3は10〜34の炭素原子のアルキル又はアルケニル基である。ここでも、R3がアルケニル基である場合、この基は工程(i)中に、部分的に又は完全に、対応するアルキル基まで水素化されるかもしれない。特に好ましいのは、R3がC1531−である2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエートである。
【0016】工程(i)はオキシムのアシル化及び還元を含む。これらの反応は連続的に又は同時に行うことができる。アシル化は、2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエート又はその誘導体と一般式R3−COX(式中、Xはアシル化剤用として本技術分野で公知の適する遊離する基である)のアシル化剤との反応によって適切に行うことができる。
【0017】より詳細に述べると、R3−COXはアシル塩化物のようなアシルハロゲン化物でよく、或いは対称性又は非対称性酸無水物でよい。この反応は、適当な還元剤によって、特に適当な担持体上の第VIII族金属のような適する水素添加触媒の存在下に水素を用いて行われる。適する触媒は炭素上のPt又はPdであり、Pd/C(炭素上のPd)が好ましい。これらの反応が同時に行われる場合、アシル化剤及び還元剤(そして必要な触媒)が同時に存在する。そのような場合、アシル化剤は酸無水物であるのが好ましく、特に式R3−CO−O−CO−R3のものであるのが好ましい。
【0018】好ましい実施態様において、2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートIを初めに、例えば一般式R4−COXのアシル化剤(式中R4は1乃至34の炭素原子のアルキル基であり、Xは上で定義した意味を有する)でアシル化して、一般式Ia:
【0019】
【化7】


の2−アルカノイロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートを形成する。好ましいR4は1〜4の炭素原子の低級アルキル基である。2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートは、アセチルクロリド、酢酸無水物、又はその他の適切なアセチル化剤でアセチル化されて、2−アセトキシイミノ−3−オキソ−アルカノエート(R4=メチル)を形成するのが最も好ましい。その後、化合物Iaを、水素添加触媒の存在下に、R3−COX、好ましくはR3−CO−O−CO−R3、及び水素と反応させる。
【0020】このように、R4が上述の意味を有する一般式Iaの2−アルカノイルオキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートは、セラミドの効率的な製造を可能にする有用な中間体であることが判明した。
【0021】もう1つの好ましい実施態様においては、2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートを、水素添加触媒の存在下に、酸無水物のR3−CO−O−CO−R3及び水素と同時に直接反応させる。
【0022】工程(ii)は、化合物IIにおいて化合物Iから誘導された両方のカルボニル基を還元することを含む。水素化物(hydride)還元剤、特に硼化水素化物がこの目的に大して好ましい。硼化水素化ナトリウムが特に好ましい。
【0023】2−アセチルアミド−3−オキソ−アルカノエートの硼化水素化ナトリウムによる還元は欧州特許公開公報第 0 500 437号に記載されているが、その場合はアミド基も同様に還元され、アセチル基の除去とアミンの形成をもたらし、所望のセラミドを得るためにはこれをその後アシル化しなければならない。
【0024】しかしながら、従来技術の2−アセチルアミド−3−オキソ−アルカノエートとは異なり、一般式IIの2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエートは、硼化水素化物による還元中にアミド基を保持することが判明した。従って、所望のセラミドが、さらにアシル化を行う必要なく、直接的に得られる。
【0025】R1及び/又はR2が鎖中にヒドロキシル基を含む場合、これらは本技術分野において公知の方法で工程(i)の終了後に二重結合に転化でき、これによって工程(i)中にそのような二重結合が望ましくない水素添加を受けるのを防ぐことができる。或いは、ヒドロキシル基を工程(ii)の終了後アルカン酸でエステル化して、エステル化されたR1及び/又はR2を得ることができる。
【0026】本発明のこのプロセスのための出発物質である2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートは本技術分野において公知の方法、特にGregoryとMalkinによって記載された方法又はSoukopによって記載された方法に類似の方法によって得られる(上を見よ)。いずれの方法も、適する3−オキソ−アルカノエートのニトロソ化(nitrosation)を含む。一方、3−オキソ−アルカノエートは本技術分野で公知の方法、例えば、R1−CO−CH3とジアルキルカルボネートとの反応によって、又はR1−COClとジアルキルマロネート又はアルキルアセトアセテートとの反応によって得られるが、これらは全て適当な塩基の存在下で行われる。
【0027】酸無水物のR3−CO−O−CO−R3は本技術分野で公知の方法、例えば、D.Holde、J. Ripper、及びF. ZadekのBer.57B、103(1924)に従って得られる。
【0028】本発明に従って、セラミドはラセミ混合物として得られ、一般に50:50以上のエリトロ/トレオ比率を有し、特に70:30以上のエリトロ/トレオ比率を有する。
【0029】本発明の方法に従う方法によって得られたセラミドは、そのような化合物に関して本技術分野で公知なように化粧用組成物及び皮膚用薬品組成物において使用でき、そのような組成物に関して本技術分野で公知なように種々の原材料と組み合わせることができる。欧州特許公開公報第 0 500 437号及び第 0 420 722号を参照のこと。水中に分散させると、セラミドは多層小胞状構造を形成する能力を有し、これは化粧用組成物の望ましい特性を改善する。
【0030】本発明を以下の実施例によって説明する。
【0031】
【実施例】
実施例12−ヘキサデカノイルアミド−1,3−ヘキサデカンジオールの調製段階1:ケトオキシムエステル(KOE)の調製攪拌機、滴下ロート、温度計、窒素用入口、及び凝縮器を備えた250mlの三つ首丸底フラスコに、メチル3−オキソ−ヘキサデカノエート(23.67g、0.083モル、融点39℃)を入れた。メタノール(79.1g、2.47モル)及び氷酢酸(14.5g、0.24モル)を添加して、得られた溶液を25℃で攪拌した。水(18.3g)中の水性亜硝酸ナトリウム溶液(12.0g、0.175モル)をこの攪拌されている溶液に1時間にわたって添加したが、必要に応じて外部から冷却して30℃より低い温度を保った。初め、白色の析出物が生成したが、これは後でゆっくりと溶解した。添加後、攪拌を25℃で18時間続けた。その後、透明で緑/黄色の溶液が生成したが、これを水(150g)中にゆっくりと入れて急冷(quench)し、1時間攪拌した。得られた固体生成物を暖かい(45℃)シクロヘキサンで数回抽出し、シクロヘキサン中の粗ケトオキシムエステルI(26g)の溶液を乾燥し、その後次の段階で使用した。
【0032】段階2:ケトオキシムアセテートエステル(KOAcE,Ia)の調製段階1で得られたシクロヘキサン(195g)中に溶解されたケトオキシムエステル(KOE)(60.0g、0.19モル)を、攪拌機、温度計、及び還流凝縮器を備えた500mlの三つ首丸底フラスコに入れた。酢酸ナトリウム(0.5g)を添加し、続いて無水酢酸(40.0g、0.39モル)を添加した。この混合物を50℃で1時間攪拌し、その後室温まで冷却した。この反応混合物を水で1回洗浄した。いくらかの酢酸を依然として含んでいる、シクロヘキサン中の粗ケトオキシムアセテートエステル(KOAcE)Iaをその後次の段階で使用した。
【0033】段階3:ケトアミドエステル(KAE,II)への水素添加/アミド化機械式攪拌機、温度計、水凝縮器及び気体の入口及び出口用の管を備えた6リットルの反応容器に、シクロヘキサン(780.0g)を入れた。パラジウム(チャコール上5%、4.0g)を添加し攪拌したが、その間装置を窒素でパージした。KOAcE(段階2で得た、500gのシクロヘキサン中の150g、0.423モル)を添加し、続いてシクロヘキサン(1460g)中のパルミチン酸無水物(250.0g、0.505モル)のスラリーを添加した。この懸濁液を室温で攪拌し窒素でさらにパージし、その後水素でパージしてから出口タップを密閉し水素雰囲気下に反応器を密閉した。水素の吸収がなくなるまでガス計量器を通して水素ガスを反応器に通し続けた(7時間に29.41リットルの水素が計量された。その後、反応混合物を攪拌しながら40℃まで加熱して存在した白色固体を溶解し、この高温の溶液をセライトの床(80.0g)に通して濾過して触媒を除去した。濾液を冷却すると、ケトアミドエステル(KAE)が晶出し、これを濾別し、シクロヘキサンで洗浄し、真空オーブン中で乾燥した。KAEの収量は89.0g(使用したKOAcEに基づいて40.0%の化学収率)であった。
【0034】段階4:セラミド(III)への還元純粋なケトアミドエステル(KAE)(2.0g、3.7×10-3モル、段階3で得られたもの)を、機械式攪拌機、温度計、滴下ロート、及び凝縮器を備えた250mlの三つ首丸底フラスコに入れた。シクロヘキサン(50.0g)を添加し、混合物を40℃まで暖めてケトアミドエステルを溶解したが、この温度はイソプロパノール(30ml)中に硼化水素化ナトリウム(0.62g)を含む溶液の添加中も維持した。この溶液は30分間にわたって添加した。添加中に温度は41℃から45℃まで上昇した。添加終了後、曇った懸濁液を45乃至50℃で2時間攪拌し、その後70℃でさらに2時間還流させ、そして室温まで冷却して一晩放置した。得られた無色透明の反応混合物は少量の不溶性の固体を含んでいた。この反応混合物を水(100ml)に入れて急冷した。これによって2つの層が形成したが、上の白色エマルジョン層と下の透明層であった(pH=8〜9)。下の水性層を分離し捨てた。20mlのイソプロパノールを有機層に添加すると無色で均一な溶液が形成した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去すると白色固体のセラミド(1.9g、NMRにより測定してエリトロ/トレオ比率=70/30)が残った。
【0035】この固体をイソプロパノールに溶解して再結晶化させ、真空中で乾燥した。これの収量は1.5gであり、即ち、KAEに基づいて79%であった。このセラミドは、エリトロ(80%)とトレオ(20%)の2つの異性体の混合物から成った。母液は0.4gの固体(エリトロ/トレオ比 40/60)を与えた。
【0036】パルミチン酸無水物の調製パルミチン酸(512.04g、2.00モル)と酢酸無水物(204.05g、2.00モル)を塔頂攪拌機、温度計、凝縮器、及び窒素用入口を備えた2リットル反応フラスコに入れた。混合物を攪拌しながらおだやかに加熱して固体のパルミチン酸を溶融させた(61乃至64℃)。還流温度(147℃)に達するまで加熱を続け、この温度を1時間保持した。得られた混合物を室温まで冷却して淡黄色の固体を形成させた。この固体をシクロヘキサン(100ml)中で攪拌し、濾過し、そして石油エーテル60−80から再結晶化させた。再結晶化させた湿った固体を40℃の真空オーブン中に入れて、残留酢酸を蒸発させた。得られた白色粉末状固体をシリカゲルの存在下真空中に保存した。パルミチン酸無水物の収量は458.49gであり、これは92.8%の化学収率に相当する。
【0037】実施例2メチル3−オキソ−ヘキサデカノエートを実施例1に記載したようにして亜硝酸ナトリウムで処理し、得られたケトオキシムエステルをさらにその後に記載されたようにして転化したが、別法として、ケトオキシムエステルは以下の方法によっても得られた。
【0038】攪拌機、滴下ロート、温度計、及び凝縮器を備えた5リットルの三つ首丸底フラスコに、メチル3−オキソ−ヘキサデカノエート(500g、1.76モル、融点39℃)を入れた。メタノール(1250.0g、40.32モル)及び氷酢酸(306.0g、5.1モル)を添加して、得られた溶液を40℃で攪拌した。水(386.6g)中の亜硝酸ナトリウム(253.5g、3.67モル)をこの攪拌されている溶液に45分間にわたって添加したが、必要に応じて外部から冷却して発熱を制御し45℃より低い温度を保った。添加後、攪拌を40〜45℃で1時間続けた。その後、透明で緑/黄色の溶液が生成したが、これを水(1250g)とヘキサン(702g)中にゆっくりと入れて急冷し、40℃で15分間攪拌した。相分離が生じ、低い方の水性層(2116.0g)を捨てた。上の有機層を40℃で水(948.0g)とメタノール(100g)で洗浄し、下の水性層を捨てた。曇った黄色の溶液である上の有機層を濾過して透明な溶液を得た。この溶液を蒸発乾固させて、淡黄色の固体である粗KOEを506.2g得た(収率=101.2%m/m、又は使用したKEに基づいて91.9%の化学収率)。
【0039】パルミチン酸(495.6g、1.936モル)と酢酸無水物(197.5g、1.936モル)を、温度計、攪拌機、及び還流凝縮器を備えた1リットルの三つ首丸底フラスコに入れた。混合物を145〜148℃で1時間攪拌し、その後110℃まで冷却した。その後、装置を蒸留用に組み立て、揮発性成分(酢酸及び過剰の酢酸無水物)を100℃のポット温度及び減圧下に反応器から除去した。溶融残液のパルミチン酸無水物(486g、0.983モル)をさらに精製することなくその後使用した。
【0040】機械式攪拌機、温度計、及び気体の入口及び出口用の管を備えた5リットルの反応容器に、シクロヘキサン(2.5リットル)中のケトオキシムエステル(粗生成物、300g,0.96モル)を入れた。パラジウム(チャコール上5%、6.0g)とパルミチン酸無水物(486.0g、0.983モル、上で調製したもの)を添加し、装置を窒素でパージしたが、その間温度は20〜25℃に保っていた。その後、装置を水素でパージしてから出口タップを密閉し水素雰囲気下に反応器を密閉した。水素の吸収がなくなるまでガス計量器を通して水素ガスを反応器に通し続けた(17.5時間に59.8リットルの水素が計量された。この添加の間に温度は徐々に上昇し反応の終了時には40℃に達した。反応混合物を40℃でセライトの床に通して濾過して触媒を除去し、濾液を冷却した。冷却すると、形成した白色の析出物を濾別し、少量のシクロヘキサンで洗浄し、真空オーブン中で乾燥した。KAEの収量は179.0g(60%w/wの収率、使用したKOEに基づいて35.0%の化学収率)であった。この物質をヘキサンからの再結晶によりさらに精製できた。
【0041】ケトアミドエステル(KAE)(100g、0.186モル)及び2−プロパノール(300g)を、温度計、攪拌機、及び還流凝縮器を備えた1000mlの丸底フラスコに入れ、55℃まで加熱して、透明で均一な溶液を得た。固体の硼化水素化ナトリウム(7.6g、186モル)を30分間にわたって添加した。反応はやや発熱的だった。得られた曇った懸濁液をさらに30分間攪拌した。その後40℃まで冷却し、アセトン(10.79g、0.186モル)を添加し、攪拌をさらに30分間続けて、過剰の水素化物を破壊した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、水(700ml)に入れて急冷した。曇った白色のエマルジョンを70℃まで加熱すると、2つの別れた透明な層が形成した。これらを分離し室温まで冷却すると、上層は湿った白色固体(153g)を形成した。この粗固体を90℃のロータリーエバポレーターで蒸発乾固させ、111.4gの乾燥固体を得た。この乾燥固体を250gの2−プロパノールから再結晶させた。このようにして、2−ヘキサデカノイルアミド−1,3−ヘキサデカンジオールが白色のふわふわした粉末として得られた(74.9g、使用したKAEに基づいて78.9%の収率)。この生成物はNMRで検査して純粋だった。
【0042】実施例32−(16′−ヒドロキシ−ヘキサデカノイルアミド)−1,3−ヘキサデカンジオールの調製この化合物は、16−ヒドロキシ−パルミチン酸無水物のジアセテートを使用して、実施例2の方法に従って調製した。無水ジエステルは上述の方法に従って16−ヒドロキシ−パルミチン酸と酢酸無水物から調製した。最終工程における硼化水素化ナトリウムによる還元は16′−ヒドロキシル基からアセチル基を除去した。このヒドロキシル基は、好ましくは本技術分野で公知の環式アセタール又はケタールとしての1,3−ジオール部分の保護の後、長鎖アルカン酸によってエステル化できる。
【0043】実施例42−ヘキサデカノイルアミド−1,3,11,12,18−オクタデカンペンタノールと2−ヘキサデカノイルアミド−1,3,18−オクタデカ−11−エントリオールの調製9,10,16−トリヒドロキシ−パルミチン酸(アレウリチン酸)をアセチルクロリドで処理して3つのヒドロキシル基を保護することによって、メチル11,12,18−トリヒドロキシ−3−オキソ−オクタデカノエートを調製した。前記酸を酸塩化物に転化し、これをメチルアセトアセテートと縮合させて、その後おだやかにアルカリ加水分解させた。このようにして、アセチル基によっ保護された3つのヒドロキシル基を有する、ケトエステルメチル11,12,18−トリヒドロキシ−3−オキソ−オクタデカノエートが得られた。この化合物を実施例1に従う方法において出発物質として使用して、所望のペンタオールを得た。この分子中の隣接するジオール基は本技術分野で公知の標準的方法で二重結合に転化でき、2−ヘキサデカノイルアミド−1,3,18−オクタデカ−11−エントリオールが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートからセラミドを製造する方法であって、(i) 以下の一般式Iの2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエート(式中、R1は10乃至23の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基であり、所望によりヒドロキシル又はアルカノイロキシ基で置換されていてもよく、R2は水素、又は有機基であって、工程(i)の転化を妨害せず、還元工程(ii)において切断できるものである)を一般式IIの2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエート(式中、R1及びR2は上で定義した通りであり、R3は10乃至34の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基であり、所望によりヒドロキシル又はアルカノイロキシ基で置換されていてもよい)に転化する工程、
【化1】


(ii) 工程(i)で得られた2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエートを一般式(III)のセラミド(式中、R1及びR3は上で定義した通りである)に還元する工程、を含む方法。
【請求項2】 R2が低級アルコキシ基である、請求項1の方法。
【請求項3】 R1が10乃至23の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基であり、所望により1つ以上のヒドロキシル基で置換されている、請求項1又は2の方法。
【請求項4】 R3が10乃至34の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基であり、所望により1つ以上のヒドロキシル基で置換されている、請求項1乃至3のいずれか1請求項の方法。
【請求項5】 2−ヒドロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートを初めに式Ia:
【化2】


(式中、R4は1乃至34の炭素原子のアルキル基である)の2−アルカノイロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエートに転化する、請求項1乃至4のいずれか1請求項の方法。
【請求項6】 R4が1乃至4の炭素原子のアルキル基である、請求項5の方法。
【請求項7】 工程(i)が第VIII族水素添加触媒の存在下の水素添加を含む、請求項1乃至6のいずれか1請求項の方法。
【請求項8】 水素添加を酸無水物R3−CO−O−CO−R3によるアシル化と同時に行う、請求項7の方法。
【請求項9】 2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエートを水素化物還元剤を使用してセラミドまで還元する、請求項1乃至8のいずれか1請求項の方法。
【請求項10】 水素化物還元剤が硼化水素化物である、請求項9の方法。
【請求項11】 一般式II:
【化3】


(式中、R1は10乃至23の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基であり、所望によりヒドロキシル又はアルカノイロキシ基で置換されていてもよく、R2は水素、又は有機基であって、工程(i)の転化を妨害せず、還元工程(ii)において切断できるものであり、R3は10乃至34の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基であり、所望によりヒドロキシル又はアルカノイロキシ基で置換されていてもよい)の2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエート。
【請求項12】 R2が低級アルコキシ基である、請求項11の2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエート。
【請求項13】 R1が10乃至23の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基であり、所望により1つ以上のヒドロキシル基で置換されている、請求項11又は12の2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエート。
【請求項14】 R3が10乃至34の炭素原子を有するアルキル又はアルケニル基であり、所望により1つ以上のヒドロキシル基で置換されている、請求項11乃至13のいずれか1請求項の2−アルカノイルアミド−3−オキソ−アルカノエート。
【請求項15】 式Ia:
【化4】


(式中、R4は1乃至34の炭素原子のアルキル基である)の2−アルカノイロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエート。
【請求項16】 R4が1乃至4の炭素原子のアルキル基である、請求項15の2−アルカノイロキシイミノ−3−オキソ−アルカノエート。

【公開番号】特開平7−179410
【公開日】平成7年(1995)7月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−264612
【出願日】平成6年(1994)10月4日
【出願人】(391020296)クエスト・インターナショナル・ビー・ブイ (7)
【氏名又は名称原語表記】QUEST INTERNATIONAL BESLOTEN VENNOOTSHAP