説明

セラミド分泌促進剤

【課題】肌荒れ改善又は抗老化用に好適な、皮膚外用剤の提供。
【解決手段】ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物に限外濾過等の精製操作を加え、セラミド分泌促進作用に優れる分子量5000以下の画分を得た後、当該成分を皮膚外用剤に含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物より得られる低分子量ロイヤルゼリ−画分の製造方法、及び、当該成分を含有する皮膚外用剤に関し、詳しくは、肌荒れ改善、又は、抗老化用に好適な皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
生体と外界を隔てる肌(皮膚)には、外的刺激から身体を守るバリアの役割(バリア機能)、更には、生体内の水分蒸散を防ぐ役割(保湿機能)が存する。肌(皮膚)の最外層には、角層と角層細胞間脂質が存在し、前記のバリア機能及び保湿機能の中心的な役割を担っている。角層細胞間脂質は、おおよそ、約95%のセラミドを含有するスフィンゴ脂質が50%、残りは、30%のコレステロ−ル、20%の脂肪酸により構成される。特に、セラミドは、一定方向に隙間なく並び、積み重なった層状構造(ラメラ構造)を形成し、その層間に水分が保持するのに役立っている。角層におけるセラミド含量は、年齢と共に減少し、これに伴い角層間に隙間が生じ、表皮の保湿能力及びバリア機能が低下することが知られている。この様なセラミド含有量の減少は、肌荒れの原因となるほか、シワ、たるみをはじめとする皮膚老化現象、更には、その症状が進むと老人性乾皮症、アトピ−性皮膚炎等を発症することが知られている。
【0003】
セラミドは、スフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合したスフィンゴ脂質であり、顆粒細胞(granular cell)が角化細胞(Keratinocytes)になる直前にラメラボディより細胞外に放出されたグリコシルセラミドやスフィンゴミエリンが、角層において酵素反応によりセラミドへと変換され、角層細胞間脂質成分となる。詳しくは、角化細胞におけるラメラボディには、リン脂質、グリコシルセラミド、スフィンゴミエリン、コレステロ−ルなどの脂質に加え、スフィンゴミエリナ−ゼやβ−グルコセラプロシダ−ゼ等の酵素が存在し、これらが角化細胞外に放出され、角層細胞間において酵素変換を受けることにより細胞間脂質であるセラミドが供給される(例えば、非特許文献1を参照)。この様な過程では、角化細胞内において合成されるセラミドの標的部位への配向が阻害されることなどの理由により、角化細胞内におけるセラミド合成、細胞間脂質のセラミド供給量、更には、肌改善作用との間には直線的な関係が存在しない。また、角層細胞間脂質中におけるセラミド量の減少は、バリア機能又は保湿機能の機能低下に深く関与するため、皮膚外用剤などの形態によりセラミドを直接的に補給する試みも行われている(例えば、特許文献1を参照)が、いずれの方法においても、前記皮膚症状に対する満足のいく予防又は改善効果が得られておらず、新たな作用機序を介し予防又は改善効果を発揮する物質が求められていた。
【0004】
タイトジャンクション(TJ)は、細胞の周囲にベルト状に存在し、隣り合った細胞同士を密着させ隙間を塞ぐと共に、連続的に細胞を繋ぎ止める役割を果たしている。表皮の顆粒層に存在し細胞同士を密着させるTJは、水や物質が細胞間隙を透過するのを防ぎ、バリア機能を維持するために重要な役割を果たしている(例えば、非特許文献2、非特許文献3を参照)。また、TJには、前記の物理的機能に加え、TJを介する物質の移送調節に関わる生物活性、例えば、カルシウムイオン透過性を調節しイオン分布の均衡を保つことにより、表皮細胞の分化、成熟、更には、肌状態に影響を及ぼすことなどが知られている(例えば、非特許文献4を参照)。しかしながら、セラミドの移送との関わりに付いては全く知られていないし、TJの機能を促進することにより、角層細胞間脂質の構成成分、取り分け、セラミド分泌量が増加すること、更には、肌荒れ又は抗老化現象に対する予防又は改善に有効であることは全く知られていなかった。
【0005】
また、角層細胞間脂質中のセラミド量を増加させる成分としては、ニコチン酸及びその誘導体(例えば、特許文献1を参照)、α−トコフェリルリン酸誘導体(例えば、特許文献2を参照)、コメ、クズ、アンズ、スイカズラ、ユキノシタ等より得られる植物抽出物(例えば、特許文献3を参照)、マンネンダケより得られる抽出物(例えば、特許文献4を参照)等にセラミド合成促進作用が存することが知られている。しかしながら、表皮細胞のラメラボディに存するセラミド、並びに、グリコシルセラミドやスフィンゴミエリン等のセラミド関連物質の分泌を促進することにより角層細胞間脂質中におけるセラミド量を増加させる作用を有する成分、即ち、セラミド分泌促進剤に関しては、全く知られていなかった。さらに、ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物に角質細胞間脂質中におけるセラミド量を増加させるセラミド分泌促進作用が存すること、加えて、ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を精製することによりその効果が高められるとこは全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−209285号公報
【特許文献2】特開2006−232769号公報
【特許文献3】特開2006−111560号公報
【特許文献4】特開2005−194240号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kenneth R. Feingold、Journal of Lipid Research、48、2531−2546(2007)
【非特許文献2】Furuse M.,Biocimica et Biophysica Acta(BBA) Biomembranes,1788(4),813−819(2009)
【非特許文献3】Furuse M. et al.,J. Cell. Biol.,156,1099−1111(2002)
【非特許文献4】Kurasawa M., Biochem. Biophys. Res Commun.,381(2),171−175(2009)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこの様な状況下において為されたものであり、肌荒れ改善又は抗老化用に好適な、低分子ロイヤルゼリ−画分を含有する皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この様な状況に鑑みて、本発明者等は、肌荒れ改善又は抗老化用に好適な、新規なセラミド分泌促進剤を求めて鋭意努力を重ねた結果、ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物に優れたセラミド分泌促進作用が存することを見出した。また、限外濾過等の方法によりロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を精製することにより、分子量5000以下の画分に優れたセラミド分泌促進作用が存することを見出した。また、このロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物が有するセラミド分泌促進作用は、顆粒層に存在するTJの機能促進作用と深く関係していることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明の内容は、以下に示す通りである。
<1> ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物であって、画分分子量が5000以下の画分であることを特徴とする、低分子量ロイヤルゼリ−画分。
<2> ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物が、分画分子量が5000以下の限外濾過膜を用いて得られるものであることを特徴とする、請求項1に記載の低分子ロイヤルゼリ−画分。
<3> 前記低分子ロイヤルゼリ−画分からなるセラミド分泌促進剤。
<4> 前記セラミド分泌促進作用が、角化細胞から細胞間脂質へのセラミド分泌促進作用によるものであることを特徴とする、<3>に記載のセラミド分泌促進剤。
<5> 前記セラミド分泌促進作用が、タイトジャンクション機能促進作用によりものであることを特徴とする、<3>又は<4>に記載のセラミド分泌促進剤。
<6> タイトジャンクション機能促進作用が、経上皮細胞電気抵抗値(TER:transepithelial electrical resistance)を向上せしめる作用であることを特徴とする、<5>に記載のセラミド分泌促進剤。
<7> <1>〜<6>の何れか一項に記載のセラミド分泌促進剤を含有する皮膚外用剤。
<8> <1>〜<6>の何れか一項に記載のセラミド分泌促進剤を皮膚外用剤全量に対し、0.00001質量%〜10質量%含有することを特徴とする、<7>に記載の皮膚外用剤。
<9> 肌荒れ改善、又は、抗老化用であることを特徴とする、<7>又は<8>に記載の皮膚外用剤。
<10> 前記セラミドロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を含有する皮膚外用剤の製造方法であって、ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を限外濾過し、分画分子量が5000以下の画分を得た後、当該画分を皮膚外用剤に含有させることを特徴とする、皮膚外用剤の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物より得られる分子量5,000以下の分画、又は、分子量5,000より大きい分画のTER値測定の結果に関する図である。
【図2】本発明のロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物より得られる分子量5,000以下の分画、又は、分子量5,000より大きい分画の分画のセラミド分泌促進作用評価の測定結果に関する図である。
【0011】
<本発明のセラミド分泌促進剤>
本発明の皮膚外用剤は、ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を精製した分子量5000以下の分画を含有することを特徴とする。セラミドは、スフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合したスフィンゴ脂質の一種であり、角層細胞間脂質の重要な構成成分である。本発明のセラミド分泌促進剤であるロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を精製することにより得られる分子量5000以下の分画は、角層細胞間脂質におけるセラミド含有量を増加させる作用を有する。本発明のセラミド分泌促進剤としては、角化細胞内のラメラボディに存在するセラミド関連物質(セラミド、並びに、グルコシルセラミド及びスフィンゴミエリン等のセラミド前駆体)の分泌促進作用を有する物質が好ましく、具体的には、後述する「正常ヒト表皮細胞を用いたセラミド分泌量の評価」において、ベヒクルに比較し、セラミド分泌量が増加した物質が好適に例示出来、さらに好ましいものとしては、ベヒクルに比較し、セラミド分泌量が統計的に有意に増加している物質が好適に例示出来る。また、前記の角化細胞のラメラボディに存在するセラミド関連物質の分泌促進作用は、TJ機能促進作用により誘導されるものであることが好ましい。TJの機能促進作用は、経上皮細胞電気抵抗値(TER:transepithelial electrical resistance)を測定し、当該測定値を指標として推定することが出来る。
【0012】
前記のTJ機能促進作用は、例えば、特開2007−176830号公報に記載の「表皮角化細胞層膜を介しての物質移動の抑制による皮膚バリア機能の測定」に記載された方法に従い、正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)を用い、経上皮細胞電気抵抗値(TER:transepithelial electrical resistance)を測定することにより評価することが出来る。また、該方法以外にTJ機能促進作用を評価する方法としては、前記非特許文献4に記載の3次元表皮モデル又は生体皮膚を用いたビオチン標識拡散トレ−サ−による物質移動確認法、培養細胞シ−トを用いたFITC-dextran透過性試験法、フリ−ズフラクチャ−法によるTJストランド観察にてストランドの出来具合を判別する等により機能を類推する方法などが存するが、操作の簡便性、測定感度及び精度等を考慮した場合、前記のTER値測定が好ましい。本発明におけるTJ機能促進作用を有する物質を具体的に挙げれば、後述する「ヒト表皮角化細胞を用いたTJ機能の評価」において、各TER値測定時間の何れかにおいて、被検試料を添加したサンプルのTER値が、コントロ−ルのTER値に比較し高い物質などが好適に例示出来る。前記TJ機能促進作用を有する物質の内、より好ましいものとしては、TER値を測定した何れかの濃度において、全ての測定時間(初期値を除く)において、被検試料を添加したサンプルのTER値が、コントロ−ルのTER値に比較し高い物質が好適に例示出来る。後述の通り、当該試験方法をはじめとするTJ機能評価系によりTJ機能促進作用が認められた物質には、セラミド分泌促進作用も認められる。この様な角化細胞内のラメラボディから角層細胞間脂質へのセラミド関連物質の分泌促進作用は、カルシウムイオンなどの様々な情報伝達物質等の透過性を調節し、細胞内情報伝達系に影響を与えることにより発揮されると考えられる。従って、TJの機能促進作用を以って、角化細胞のラメラボディより角層細胞間脂質に分泌されセラミド含有量が上がる作用を推定すること、即ち、セラミドの分泌促進作用の代替値として、前記のTJの機能促進作用を用いることも出来る。かかる作用を有する成分を、TJ機能促進作用を機作とするセラミド分泌促進剤と見なすことが出来る。
【0013】
前記のTJ機能促進作用を作用機序とするセラミド分泌促進剤としては、ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を精製した分子量5,000以下の分画が好適に例示出来る。ロイヤルゼリ−蛋白質の化学的組成は、生産地により、多少の差異はあるが、水分65〜70%、蛋白質15〜20%、炭水化物10〜15%、脂肪1.7〜6%、灰分0.7〜2%含むとされている。ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物の生物学的・薬理学的作用に付いては、老化予防作用、酵素作用、抗菌作用、抗腫瘍作用、血液・循環器に対する作用などが知られている。本発明のセラミド分泌促進剤であるロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を精製した分子量5,000以下の分画は、ロイヤルゼリ−、乾燥ロイヤルゼリ−等のあらゆるロイヤルゼリ−から調整することが可能である。特に、ロイヤルゼリ−加水分解物は、ロイヤルゼリ−、乾燥ロルイヤルゼリ−等よりアルコ−ル、多価アルコ−ル、水又はそれらの混合物を使用し蛋白質を抽出後、プロテア−ゼなどの蛋白質分解酵素、塩酸、硫酸等の酸溶液で加水分解して調整することが可能である。ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物は、それらを溶液状で使用することも出来るし、それらを乾燥し粉体状にして使用することも出来る。さらに、前記のロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物は、濾過(限外濾過を含む)、遠心分離等の工程を加え精製することが好ましい。使用するプロテア−ゼには、特段の限定はなく、微生物由来や植物由来のプロテア−ゼ、中性プロテア−ゼ、アルカリプロテア−ゼをはじめ、ペプシン、トリプシンなどの動物由来のプロテア−ゼなど、通常工業的に使用されているものを広く利用することが出来、これらのプロテア−ゼを数種類組み合わせて使用することも可能である。本発明のロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物としては、前述したロイヤルゼリ−及び/又はその加水分解物を精製した分子量5,000以下の分画であれば、特段の限定なく適応することが出来るが、より好ましいものとしては、ロイヤルゼリ−水溶液を酵素により処理し、酵素を失活させた後、精製、滅菌濾過したロイヤルゼリ−由来の糖蛋白質の加水分解物(以下、片倉チッカリン株式会社製のものに限って、「ロイヤルビオサイト」と称する場合も存する)を精製した分子量5,000以下の分画が好適に例示出来る。また、該ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物は、前述した方法に従い製造することも出来るし、山田養蜂場(岡山県苫田郡)、片倉チッカリン株式会社等より市販されているロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を使用することも出来る。
【0014】
本発明のセラミド分泌促進剤であるロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を精製した分子量500以下の分画は、皮膚外用剤全量に対し、0.00001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.0001質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.001質量〜3質量%含有させることが好ましい。これは、セラミド分泌促進剤の含有量が、少なすぎると角化細胞内のラメラボディに存在するセラミド関連物質の分泌を促進する作用が発揮されず、多すぎても、効果が頭打ちになり、この系の自由度を損なう場合が存するためである。また、かかる成分は、表皮の角化細胞内のラメラボディに存するセラミド関連物質の分泌を促進する作用、標的部位への集積性及び選択性に優れ、高い安全性及び安定性を有するために、医薬、食品、化粧料などへの使用が好ましい。
【0015】
<本発明のセラミド分泌促進剤を含有する皮膚外用剤>
本発明の皮膚外用剤は、必須成分としてセラミド分泌促進剤であるロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を精製した分子量5,000以下の分画を含有することを特徴とする。本発明におけるセラミド分泌促進剤は、角層細胞間脂質におけるセラミド含有量を増加させる作用を有する物質を意味する。本発明のセラミド分泌促進剤としては、角化細胞内のラメラボディに存在するセラミド関連物質(セラミド、並びに、グルコシルセラミド及びスフィンゴミエリン等のセラミド前駆体)の分泌促進作用を有する物質が好ましく、具体的には、後述する「正常ヒト表皮細胞を用いたセラミド分泌量の評価」において、ベヒクルに比較し、セラミド分泌量が増加した物質が好適に例示出来、さらに好ましいものとしては、べヒクルに比較し、セラミド分泌量が統計的に有意に増加している物質が好適に例示出来る。また、前記の角化細胞のラメラボディに存在するセラミド関連物質の分泌促進作用は、TJ機能促進作用により誘導されるものであることが好ましい。言い換えれば、角化細胞におけるセラミド合成を阻害するものであってはならないし、角層細胞間脂質におけるセラミド量を増加させるものでなければならない。TJの機能促進作用は、経上皮細胞電気抵抗値(TER:transepithelial electrical resistance)を測定し、当該測定値を指標として推定することが出来る。本発明のセラミド分泌促進剤は、単純な化学物質、動植物由来の抽出物とその分画精製物などの混合精製物のいずれでもよい。本発明の皮膚外用剤には、前記セラミド分泌促進剤を、唯1種含有させることも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。本発明の皮膚外用剤は、セラミド分泌促進剤を配合することにより、肌荒れ改善、並びに、老化現象に対する予防又は改善効果を発揮する。
【0016】
本発明の皮膚外用剤においては、前記必須成分以外に、通常化粧料で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシルなどのエステル類、オリ−ブ油、牛脂、椰子油などのトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル等の高級アルコ−ル、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、1,3−ブタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を含有することができる。製造は、常法に従い、これらの成分を処理することにより、困難なく、為しうる。
【0017】
これらの必須成分、任意成分を常法に従って処理し、ロ−ション、乳液、エッセンス、クリ−ム、パック化粧料、洗浄料などに加工することにより、本発明の皮膚外用剤は製造できる。皮膚に適応させることの出来る剤型であれば、いずれの剤型でも可能であるが、有効成分が皮膚に浸透して効果を発揮することから、皮膚への馴染みの良い、ロ−ション、乳液、クリ−ム、エッセンスなどの剤型がより好ましい。
【0018】
以下に、実施例をあげて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0019】
<本発明の低分子ロイヤルゼリ−画分の製造方法>
本発明における精製前のロヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物は、例えば、特開2002−20226号公報に記載の方法に従い製造することも出来るし、片倉チッカリン株式会等により市販されているロイヤルセリ−蛋白質及び/又はその加水分解物として入手することも出来る。また、本発明のロイヤルゼリ−及び/又はその加水分解物を精製した分子量5,000以下、又は、分子量5,000より大きい画分は、前記精製前のロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を、市販の限外濾過膜(例えば、ミリポア社製)により限外濾過等の精製方法により分子量5,000以下及び分子量5,000より大きい画分に分離することが出来る。本発明の実施例においては、片倉チッカリン株式会社より購入したロイヤルゼリ−蛋白質由来の加水分解物を用い、市販の限外濾過膜(Centricut、コスモバイオ社製)を使用し、分子量5,000以下及び分子量5,000より大きい画分に分画濾過したものを被験物質として用いた。
【実施例2】
【0020】
<ヒト表皮角化細胞を用いたTJ機能の評価1>
凍結正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)(倉敷紡績株式会社製)を解凍し、0.15mM−Ca2+含有培養液(Humadia−KG2:倉敷紡績株式会社製)にて、37℃、5%二酸化炭素雰囲気下にて培養した。この正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)をMillicell Tissue Culture Plate(ミリポア社製)にコ−ニング社製トランズウェル(直径12mm、ポリエチレンテレフタレ−ト0.4μmポア)をセットし、上層0.5ml、下層1.5mlの前記培養液を入れ、1×10cells/cmで播種し、さらに72時間培養した。サブコンフルエントになったことを確認し、1.45mM−Ca2+含有Humedia−KG2培地に交換し、その後96時間培養した。その後、前記ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物より得られる分子量5000以下(図1A中、「ロイヤルビオサイト(MW5,000以下)」と記載)、又は、分子量5,000以上(図1B中、「ロイヤルビオサイト(MW5,000以上)」と記載)の分画を含有する培養液に交換して、培養を継続し、一定時間後にTER(Transepitherial Electrical Resistance)値(Ω・cm)を測定する。また、前記のロイヤルゼリ−蛋白質由来の加水分解物を含有しない培養液にて培養したサンプルをコントロ−ル(図1A及び図1B中、水と記載)とし、TER値を測定した。ロイヤルゼリ−由来の加水分解物より精製された分子量5,000以下、又は、分子量5,000より大きい分画の濃度は、(v/v%)で表示する。結果を図1A及び図1Bに示す。図1A及び図1Bにおいて、縦軸は、TER値(Ω・cm))、横軸は、測定時間を表す。発明におけるTJ機能促進作用を有する物質とは、本評価系において、各TER値測定時間の何れかにおいて、被験物質を添加したサンプルのTER値が、コントロ−ルのTER値に比較し高い物質を意味する。図1A及び図1Bの結果より、ロイヤルゼリ−蛋白質由来の加水分解物より限外濾過操作を経て精製された本発明のロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物の分子量5000以下の分画(図1A、「「ロイヤルビオサイト」(MW 5,000以下の画分)」と記載)は、顕著なタイトジャンクション機能促進作用が認められた。一方、ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物の分子量5,000より大きい画分(図1B中、「ロイヤルビオサイト(MW5,000より大きい画分)」と記載)には、タイトジャンクション機能促進作用はほとんど認められなかった。
【実施例3】
【0021】
<正常ヒト表皮細胞を用いたセラミド分泌量の評価1>
凍結正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)(倉敷紡績株式会社製)を解凍し、培養液(Humadia−KG2:倉敷紡績株式会社製)にて、サブコンフルエントになるまで培養した。トリプシン処理により、48well plate(0.75cm/well)に1×10cells/cmとなるように播種した。その際、バックグランド補正のため、Cer-FL非導入用の細胞も用意した。播種3日目に培養培地を1.45mM Ca2+ Humedia-KG2培地に置換し、分化誘導を行った。Ca2+添加後3日目にCer-FL導入細胞のみ培地を7.5μM Cer-FLを含有する1.45mM Ca2+ Humedia KG2 150μL/wellに置換し、4℃にて30分間静置し、Cer-FLを細胞膜に吸着させた。Cer-FL溶液を抜き取り、1.45mM Ca2+ Humedia KG2 200μL/wellで2回洗浄した後、37℃、5%−COで30分間培養し、エンドサイト−シスにより細胞内にCer-FLを取り込ませた。5% defatted BSAを含有した1.45mM Ca2+ Humedia KG2 200μL/wellに置換し、4℃にて10分間静置する操作を2回〜4回繰り返し、細胞膜に吸着した残存Cer-FLを除去した。1mM C10を含有する1.45mM Ca2+ Humedia KG2 300μL/wellに置換し、37℃、5%−COで4時間培養した。それぞれの培地を回収し、96well plateに200μLずつ加え、蛍光プレ−トリ−ダ−にて蛍光強度(励起485nm/蛍光535nm)を測定した。1mM C10を含有する1.45mM Ca2+ Humedia KG2 300μL/wellにロイヤルゼリ−蛋白質由来の加水分解物を限外濾過により精製した分子量5,000以下の画分(図2中、「ロイヤルビオサイト(MW5,000以下の画分)」と記載)、又は、分子量5,000より大きい画分(図2中、「ロイヤルビオサイト(MW5,000以より大きい画分)」と記載)を含有させた溶液を調整し、培地を回収した後の細胞に300μL/wellを加え、培養を続けた。16時間後にそれぞれ培地を回収し、蛍光強度を測定した。結果を図2に示す。図2の縦軸は、限外濾過により精製した分子量5000以下及び分子量5000より大きい画分の「ロイヤルビオサイト」分画のセラミド分泌量(単位:counts)を評価し、コントロ−ル群の値を1000としてその各群の相対値として表示した。本発明におけるセラミド分泌量を促進する作用がある物質とは、ベヒクルに比較し、セラミド分泌量が増加した物質を意味する。
【0022】
図2の結果より、本発明のセラミド分泌促進剤であるロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物より得られる各分画(図2中、「ロイヤルビオサイトMW5,000以下の画分」、並びに、「ロイヤルビオサイト MW5,000より大きい画分」の各分画)のセラミド分泌促進作用を評価したところ、0.0001(v/v%)の濃度において、分子量5000以下の分画に統計的に有意なセラミド分泌促進作用が認められた。前記結果より、TJの機能促進作用を有する物質は、角化細胞のラメラボディより角層細胞間脂質に分泌されたセラミド含量を増加させることが認められた。
【実施例4】
【0023】
<本発明の皮膚外用剤の製造>
表1に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤であるロ−ション化粧料を作製した。即ち、処方成分を80℃で攪拌し、可溶化し、しかる後に、攪拌下冷却して、ロ−ション化粧料(化粧料1)を得た。また、同様の操作を行い、本発明のセラミド分泌促進剤である「ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物より得られる精製物(「ロイヤルビオサイトMW5,000以下の画分」)を「ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物より得られる精製物(ロイヤルビオサイトMW5,000より大きい画分)に置換した比較例1、及び、本発明のセラミド分泌促進剤である「ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物より得られる精製物(「ロイヤルビオサイトMW5,000以下の画分」)を「水」に置換した比較例2も作製した。
【0024】
【表1】

【実施例5】
【0025】
<本発明の皮膚外用剤の肌荒れ改善試験>
パネラ−を使用し、化粧料1、比較例1及び比較例2に付いて、テ−プストリッピングによって作成した肌荒れモデルでの、肌荒れ改善作用を評価した。即ち、左右の前腕に3cm×5cmの部位を6つずつ作成し、テ−プストリッピングを各部位15回行い、経皮的散逸水分量(TEWL)をインテグラル社製の「テヴァメ−タ−」で計測した。その後、一日一度検体を50μL塗布し、この作業を6日間続け、7日目に再度TEWLを計測した。最初の日のTEWL値から7日目のTEWL値を減じ、最初の日のTEWL値で除し、100を乗じてTEWL改善率(%)を算出した。n数は15とした。結果を表2に示す。これより、本発明の皮膚外用剤は肌荒れ改善作用に優れることがわかる。
【0026】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に応用出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物であって、画分分子量が5000以下の画分であることを特徴とする、低分子量ロイヤルゼリ−画分。
【請求項2】
ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物が、分画分子量が5000以下の限外濾過膜を用いて得られるものであることを特徴とする、請求項1に記載の低分子ロイヤルゼリ−画分。
【請求項3】
前記低分子ロイヤルゼリ−画分からなるセラミド分泌促進剤。
【請求項4】
前記セラミド分泌促進作用が、角化細胞から細胞間脂質へのセラミド分泌促進作用によるものであることを特徴とする、請求項3に記載のセラミド分泌促進剤。
【請求項5】
前記セラミド分泌促進作用が、タイトジャンクション機能促進作用によりものであることを特徴とする、請求項3又は4に記載のセラミド分泌促進剤。
【請求項6】
タイトジャンクション機能促進作用が、経上皮細胞電気抵抗値(TER:transepithelial electrical resistance)を向上せしめる作用であることを特徴とする、請求項5に記載のセラミド分泌促進剤。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のセラミド分泌促進剤を含有する皮膚外用剤。
【請求項8】
請求項1〜6の何れか一項に記載のセラミド分泌促進剤を皮膚外用剤全量に対し、0.00001質量%〜10質量%含有することを特徴とする、請求項7に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
肌荒れ改善、又は、抗老化用であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
前記セラミドロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を含有する皮膚外用剤の製造方法であって、ロイヤルゼリ−蛋白質及び/又はその加水分解物を限外濾過し、分画分子量が5000以下の画分を得た後、当該画分を皮膚外用剤に含有させることを特徴とする、皮膚外用剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−116718(P2011−116718A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277359(P2009−277359)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】