説明

セラミド合成促進剤、並びに皮膚外用剤及び飲食品

【課題】優れたセラミド合成促進作用(セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用等)を有し、かつ、安全性の高いセラミド合成促進剤、並びに、前記セラミド合成促進剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品を提供すること。
【解決手段】アシタバの抽出物、イラクサの抽出物、インチンコウの抽出物、クマザサの抽出物、ゲンチアナの抽出物、及びトウニンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするセラミド合成促進剤、並びに、前記セラミド合成促進剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤及び飲食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物抽出物を含有するセラミド合成促進剤、並びに、前記セラミド合成促進剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、表皮細胞の角化の過程において、セリンとパルミトイル−CoAを基に、セラミド合成の律速酵素として知られるセリンパルミトイルトランスフェラーゼをはじめとした酵素の働きにより生成される。セラミドは、皮膚の最外層を覆う角層細胞間脂質の主成分として特異的に存在し、皮膚本来がもつ生体と外界とのバリア膜としての機能維持に重要な役割を果たしている。角層の構造はレンガとモルタルに例えられ、約15層ほどに積み重なった角層細胞を細胞間脂質が繋ぎ止める形で強固なバリア膜を形成している。角層細胞は、アミノ酸を主成分とする天然保湿因子を細胞内に含有することによって水分を保持し、一方、角質細胞間脂質は、約50%のセラミドを主成分とし、コレステロール、脂肪酸等の両親媒性脂質から構成されており、疎水性部分と親水性部分が交互に繰り返される層板構造、いわゆるラメラ構造を特徴としている。
【0003】
様々な内的・外的要因によるバリア機能の低下は、経表皮水分蒸散量を増加させ、皮膚のかさつき、落屑、掻痒感などを惹き起こし、いわゆる乾燥肌に陥る。バリア障害は炎症を増大させ、外界からの様々な刺激に対する防御機能が低下するという悪循環に陥る。最近の研究において、加齢、或いはバリア障害として知られるアトピー性皮膚炎患者で、角層セラミド成分、いわゆる細胞間脂質の減少や組成変化が報告されており(非特許文献1参照)、バリア機能の維持、改善にセラミドが重要であることが広く認識されるようになった。
【0004】
このような背景から、バリア機能を改善する方法として、セラミドを外部から補う方法(非特許文献2参照)や、皮膚内部においてセラミド産生能を高める方法(非特許文献3参照)が種々検討されている。
皮膚内部におけるセラミドの合成を促進し、セラミドの産生能を高めることのできる方法は、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、乾癬など、様々な皮膚症状の予防・改善に有効であると考えられ、そのため、より効果的で、かつ安全なセラミド合成促進剤の開発が、未だ望まれているのが現状である。
【0005】
【非特許文献1】Akimoto K et al.,J.Dermatol.(1993)20,1
【非特許文献2】Kenya I et al.,フレグランスジャーナル(2004)11;23−32
【非特許文献3】Tanno O et al.,Br.J.Dermatol.(2000)143,524
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れたセラミド合成促進作用(セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用等)を有し、かつ、安全性の高いセラミド合成促進剤、並びに、前記セラミド合成促進剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために種々検討を行ったところ、アシタバ、イラクサ、インチンコウ、クマザサ、ゲンチアナ、及びトウニンの各植物抽出物が、セラミド合成の律速酵素として知られるセリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用に基づく、優れたセラミド合成促進作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
前記各植物の抽出物を用い、表皮細胞におけるセリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNAの発現を促進させることにより、表皮細胞自身のセラミド合成を活発化させることができ、例えば、加齢、乾燥肌、荒れ肌、紫外線曝露、アトピー性皮膚炎などによって減少した角層中のセラミドを増加させ、皮膚のバリア機能及び保湿機能を回復させることが可能となる。したがって、本発明によれば、例えば、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、乾癬など、様々な皮膚症状の予防・改善を、効果的に行えるようになることが期待される。
【0008】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> アシタバの抽出物、イラクサの抽出物、インチンコウの抽出物、クマザサの抽出物、ゲンチアナの抽出物、及びトウニンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするセラミド合成促進剤である。
<2> セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用を有する前記<1>に記載のセラミド合成促進剤である。
<3> 前記<1>から<2>のいずれかに記載のセラミド合成促進剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
<4> 前記<1>から<2>のいずれかに記載のセラミド合成促進剤を含有することを特徴とする飲食品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたセラミド合成促進作用(セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用等)を有し、かつ、安全性の高いセラミド合成促進剤、並びに、前記セラミド合成促進剤を利用した皮膚外用剤及び飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(セラミド合成促進剤)
本発明のセラミド合成促進剤は、アシタバの抽出物、イラクサの抽出物、インチンコウの抽出物、クマザサの抽出物、ゲンチアナの抽出物、及びトウニンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0011】
前記セラミド合成促進剤は、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用に基づくセラミド合成促進作用を、少なくとも有するものである。前記アシタバ、イラクサ、インチンコウ、クマザサ、ゲンチアナ、及びトウニン(本明細書中において、単に「植物」と総称することがある)の各抽出物が含有する、セラミド合成促進作用を発揮する物質の詳細については不明であるが、前記各抽出物がこのような優れた作用を有し、セラミド合成促進剤として有用であることは、従来には全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0012】
前記アシタバは、セリ科(Umbelliferae)の植物であり、学名はAngelica keiskei Koidzumiである。抽出に供する部位としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、葉、茎、花、蕾、果実、果皮、果核、地上部、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉、茎が好ましい。
前記イラクサは、イラクサ科(Urticaceae)の植物であり、学名はUrtica thubergiana Siebold et Zuccariniである。抽出に供する部位としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、葉、茎、花、蕾、果実、果皮、果核、地上部、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
前記インチンコウは、キク科(Compositae)の植物であり、学名はArtemisia capillaris Thunb.である。抽出に供する部位としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、葉、茎、花、頭花、蕾、果実、果皮、果核、地上部、全草、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、頭花が好ましい。
前記クマザサは、イネ科(Gramineae)の植物であり、学名はSasa albo−marginata Makinoである。抽出に供する部位としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、葉、茎、花、根、根皮、地上部、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
前記ゲンチアナは、リンドウ科(Gentianaceae)の植物であり、学名はGentiana lutea L.である。抽出に供する部位としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、葉、茎、枝、花、蕾、果実、果皮、果核、根、根茎、地上部、全草、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、根、根茎が好ましい。
前記トウニンは、バラ科(Rosaceae)の植物であり、学名はPrunus persica B.である。抽出に供する部位としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、葉、茎、根、花、種子、地上部、全草、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、種子が好ましい。
【0013】
抽出原料である前記各植物は、例えば、乾燥した後に、そのままの状態で又は粗砕機等を用いて粉砕した状態で、溶媒抽出に供することができる。中でも、前記抽出原料としては、採取後ただちに乾燥し、粉砕したものが好ましい。前記乾燥は、例えば、天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。なお、前記各植物は、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、前記各植物の極性溶媒による抽出処理を、効率よく行うことができる。
【0014】
前記各植物の抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法を利用することによって、容易に得ることができる。また、前記各植物の抽出物としては、市販品を使用してもよい。なお、前記各植物の抽出物には、前記各植物の抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又は、これらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0015】
前記抽出に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性有機溶媒、又は、これらの混合溶媒を、室温又は溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。前記各植物に含まれるセラミド合成促進作用を示す成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって、容易に抽出することができる。
【0016】
前記抽出溶媒として使用し得る水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。したがって、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0017】
前記抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、該親水性有機溶媒と水との混合溶媒なども用いることができる。なお、前記水と前記親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する際には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して1〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して1〜40質量部を混合したものを使用することが好ましい。また、多価アルコールの場合は水10質量部に対して1〜90質量部を混合したものを使用することが好ましい。
【0018】
抽出原料である前記各植物から、セラミド合成促進作用を少なくとも有する抽出物を抽出するにあたって、特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出することができる。
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽内に、前記各抽出原料を投入し、更に必要に応じて時々攪拌しながら、30分〜4時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物を得ることができる。抽出溶媒量は通常、抽出原料の5〜15倍量(質量比)である。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50〜95℃にて1〜4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常40〜80℃にて30分間〜4時間程度である。なお、溶媒で抽出することにより得られる抽出液は、抽出溶媒が安全性の高いものであれば、そのまま本発明のセラミド合成促進剤の有効成分として用いることができる。
【0019】
抽出により得られる前記各植物の抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るため、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。なお、得られる前記各植物の抽出液は、そのままでもセラミド合成促進剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又はその乾燥物としたものの方が利用しやすい。抽出液の乾燥物を得るにあたっては、常法を利用することができ、また、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。また、抽出原料である前記各植物は特有の匂いと味を有しているため、前記各植物の抽出物に対しては、生理活性の低下を招かない範囲で、脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、例えば皮膚化粧料に添加する場合などには大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。なお、精製は、具体的には、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0020】
以上のようにして得られる前記各植物の抽出物は、セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用を少なくとも有し、この作用に基づき、本発明のセラミド合成促進剤の有効成分として好適に利用可能なものである。
なお、前記セラミド合成促進剤中の前記各植物の抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、また、前記セラミド合成促進剤は、前記各植物の抽出物そのものであってもよい。
また、前記セラミド合成促進剤中、前記各植物の抽出物は、いずれか1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。前記セラミド合成促進剤中に2種以上の植物抽出物が含まれる場合の、各々の含有量比としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
また、前記セラミド合成促進剤中に含まれ得る、前記各植物の抽出物以外のその他の成分としても、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記各植物の抽出物を所望の濃度に希釈等するための、生理食塩液などが挙げられる。また、前記セラミド合成促進剤中の前記その他の成分の含有量にも、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記セラミド合成促進剤は、必要に応じて製剤化することにより、粉末状、顆粒状、錠剤状等、任意の剤形とすることができる。
【0022】
本発明のセラミド合成促進剤は、セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用に基づく優れたセラミド合成促進作用を有すると共に、安全性に優れるため、例えば、後述する本発明の皮膚外用剤、本発明の飲食品などへの利用に好適である。
【0023】
(皮膚外用剤)
本発明の皮膚外用剤は、前記した本発明のセラミド合成促進剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記皮膚外用剤とは、皮膚に適用される各種の薬剤を意味し、その区分としては特に制限されるものではなく、例えば、皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものである。
前記皮膚外用剤は、前記各植物の抽出物を、その活性を妨げないように任意の皮膚外用剤に配合したものであってもよいし、前記各植物の抽出物を主成分とした皮膚外用剤であってもよい。また、前記皮膚外用剤は、前記各植物の抽出物そのものであってもよい。
【0024】
前記皮膚外用剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプーなどが挙げられる。
【0025】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、皮膚外用剤を製造するにあたって通常用いられる成分、例えば、収斂剤、殺菌、抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、抗老化剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料などが挙げられる。
【0026】
前記皮膚外用剤中の、前記セラミド合成促進剤の含有量としては、特に制限はなく、皮膚外用剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、例えば、前記各植物の抽出物の量として、0.0001〜10質量%が好ましく、0.001〜5質量%がより好ましい。
【0027】
(飲食品)
本発明の飲食品は、前記した本発明のセラミド合成促進剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
前記飲食品は、前記各植物の抽出物を、その活性を妨げないように任意の飲食物に配合したものであってもよいし、前記各植物の抽出物を主成分とする栄養補助食品であってもよい。また、前記飲食品は、前記各植物の抽出物そのものであってもよい。
【0028】
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康食品や栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。
【0029】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、飲食品を製造するにあたって通常用いられる、補助的原料又は添加物などが挙げられる。
前記補助的原料又は添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
【0030】
前記飲食品中の、前記セラミド合成促進剤の含有量としては、対象となる飲食品の種類に応じて異なり、一概には規定することができないが、例えば、飲食品本来の味を損なわない範囲で任意の飲食物に配合することを目的とする場合には、有効成分である前記各植物の抽出物の量として、0.001質量%〜50質量%が好ましく、0.01質量%〜20質量%がより好ましい。また、例えば、前記各植物の抽出物を主成分とする顆粒、錠剤、カプセル形態等の栄養補助飲食品を製造することを目的とする場合には、有効成分である前記各植物の抽出物の量として、0.01質量%〜100質量%が好ましく、5質量%〜100質量%がより好ましい。
【0031】
(効果)
本発明のセラミド合成促進剤、並びに皮膚外用剤及び飲食品は、日常的に使用することが可能であり、有効成分である前記各植物の抽出物の働きによって、少なくともセリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用に基づくセラミド合成促進作用を、極めて効果的に発揮させることができるものである。そのため、本発明のセラミド合成促進剤、並びに皮膚外用剤及び飲食品は、表皮細胞自身のセラミド合成を活発化させ、セラミド産生機能を健常に戻すことができ、例えば、加齢、乾燥肌、荒れ肌、紫外線曝露、アトピー性皮膚炎などによって減少した角層中のセラミドを増加させ、高いバリア機能及び保湿機能を有する皮膚を取り戻すことを目的とした皮膚外用剤や飲食品に、好適に利用可能である。このような皮膚外用剤や飲食品を利用することにより、例えば、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、乾癬など、様々な皮膚症状の予防・改善を効果的に行えるようになることが期待される。
なお、本発明のセラミド合成促進剤、並びに皮膚外用剤及び飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、その作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することも可能である。また、本発明のセラミド合成促進剤、並びに皮膚外用剤及び飲食品は、天然由来の各植物の抽出物を有効成分としたものであり、安全性に優れる点でも、有利である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、本実施例では、アシタバの抽出物として、アシタバ抽出液BG(丸善製薬株式会社製);イラクサの抽出物として、イラクサ抽出液BG(丸善製薬株式会社製);インチコウの抽出物として、インチンコウ抽出液BG(丸善製薬株式会社製);クマザサの抽出物として、クマザサ抽出液(丸善製薬株式会社製);ゲンチアナの抽出物として、ゲンチアナ抽出液BG−J(丸善製薬株式会社製);及び、トウニンの抽出物として、トウニン抽出液−J(丸善製薬株式会社製);の各凍結乾燥品を用いた。
【0033】
(実施例1:セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用試験)
前記各抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりセリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNA発現促進作用を試験した。
【0034】
(1)一本鎖DNAの調製
ヒト正常新生児表皮角化細胞(NHEK)を35mmディッシュに播種し、37℃、5%CO−95%空気の条件下にて24時間培養を行った。培養終了後、所定濃度の被験試料添加培地に交換し、更に24時間培養した。培養終了後、常法により総RNAを調製した。また、「被験試料無添加」で培養した細胞に関しても、同様に総RNAを調製した。総RNA調製は下記の方法を用いて行った。細胞を1mLのRNA抽出用試薬(ISOGEN:株式会社ニッポンジーン)で溶解し、クロロホルムを200μL添加後、遠心(12,000回転、4℃、15分間)により上層RNA層を単離し、更にイソプロパノールで濃縮を行った。濃縮沈殿させた総RNAをTE溶液(10mM Tris−HCl/1mM EDTA,pH8.0)に溶解して総RNA標品とし、PCR装置(TaKaRa PCR Thermal Cycler MP:タカラバイオ社)及びリアルタイムPCRキット(TaKaRa ExScriptTM RT reagent Kit,RR035A:タカラバイオ社)を用いて、SPTmRNA発現量を測定するための鋳型に使用する一本鎖DNAを合成した。
【0035】
(2)サイバーグリーン法を用いたリアルタイム−PCR反応
SPT遺伝子増幅用プライマーとして、下記の配列を有するセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを作製した(タカラバイオ社)。
SPTセンスプライマー:5’−CCAGACTGTCAGGAGCAACCATTA―3’(配列番号:1)
SPTアンチセンスプライマー:5’−CGTGTCCGAGGCTGACCATA―3’(配列番号:2)
また、内部標準としてのG3PDH遺伝子増幅用プライマーとして、下記の配列を有するセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを作製した(タカラバイオ社)。
G3PDHセンスプライマー:5’−GCACCGTCAAGGCTGAGAAC−3’(配列番号:3)
G3PDHアンチセンスプライマー:5’−ATGGTGGTGAAGACGCCAGT−3’(配列番号:4)
「被験試料無添加」、「被験試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基に調製した一本鎖DNA、及び検量線作成用一本鎖DNA溶液を用いて、リアルタイムPCR装置(Real Time PCR System Smart Cycler II:Cepheid社)及びリアルタイムPCRキット(SYBR(登録商標)Premix Ex TaqTM,RR041A:タカラバイオ社)でリアルタイムPCR反応を行った。なお、検量線作成用一本鎖DNA溶液は、原液濃度の相対値を便宜的に「100,000」とし、以降10倍希釈を繰り返して、濃度値「100,000」、「10,000」、「1,000」、「100」、及び、「10」の5段階の希釈系列とした。リアルタイムPCR反応は、95℃で10秒間保温の後、95℃で5秒間、60℃で20秒間の反応を45サイクル繰り返し、1サイクル毎にサイバーグリーン色素の発光量を測定した。
【0036】
(3)解析
各サイクルのサイバーグリーン色素の発光量を基に、SPT及びG3PDHのそれぞれをコードするDNA断片の増幅曲線を作成した。検量線作成用一本鎖DNA溶液の希釈系列の増幅曲線から、横軸に濃度、縦軸に増幅曲線の、2次導関数が最大となるサイクル数をとった検量線を作成した。各発現定量用サンプルについては、増幅曲線の2次導関数が最大となるサイクル数を検量線上にプロットし、相対的な発現量を算出した。SPTの発現量は、同一サンプルにおけるG3PDHの発現量の値で補正を行った後、更に「被験試料無添加」の補正値を100とした時の「被験試料添加」の補正値を算出した。
SPTmRNA発現促進率(%)は以下の式により求めた。結果を表1〜6に示す。
SPTmRNA発現促進率(%)=A/B×100
A:「被験試料添加」の補正値
B:「被験試料無添加(コントロール)」の補正値
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
【表6】

【0043】
表1〜6の結果から、アシタバ、イラクサ、インチンコウ、クマザサ、ゲンチアナ、及びトウニンの各抽出物は、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)mRNAの発現を促進する作用を有することが確認された。
【0044】
(配合例1)
−乳液−
下記組成に従い、乳液を常法により製造した。
・アシタバ抽出物・・・0.10g
・ホホバオイル・・・4.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.00g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)・・・2.50g
・オリーブオイル・・・2.00g
・スクワラン・・・2.00g
・セタノール・・・2.00g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・2.00g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・0.15g
・黄杞エキス・・・0.10g
・グリチルリチン酸ジカリウム・・・0.10g
・イチョウ葉エキス・・・0.10g
・コンキオリン・・・0.10g
・オウバクエキス・・・0.10g
・カツミレエキス・・・0.10g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計100.00g)
【0045】
(配合例2)
−化粧水−
下記組成に従い、化粧水を常法により製造した。
・イラクサ抽出物・・・0.10g
・グリセリン・・・3.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・2.00g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・0.15g
・クエン酸・・・0.10g
・クエン酸ソーダ・・・0.10g
・油溶性甘草エキス・・・0.10g
・海藻エキス・・・0.10g
・クジンエキス・・・0.10g
・キシロビオースミクスチャー・・・0.05g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0046】
(配合例3)
−クリーム−
下記組成に従い、クリームを常法により製造した。
・インチンコウ抽出物・・・0.10g
・スクワラン・・・10.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・6.00g
・流動パラフィン・・・5.00g
・サラシミツロウ・・・4.00g
・セタノール・・・3.00g
・モノステアリン酸グリセリル・・・3.00g
・ラノリン・・・2.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・1.50g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・1.50g
・ステアリン酸・・・1.00g
・酵母抽出液・・・0.10g
・シソ抽出液・・・0.10g
・シナノキ抽出液・・・0.10g
・ジユ抽出液・・・0.10g
・香料・・・0.10g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0047】
(配合例4)
−パック−
下記組成に従い、パックを常法により製造した。
・クマザサ抽出物・・・0.20g
・ポリビニルアルコール・・・15.00g
・エタノール・・・10.00g
・プロピレングリコール・・・7.00g
・ポリエチレングリコール・・・3.00g
・セージ抽出液・・・0.10g
・トウキ抽出液・・・0.10g
・ニンジン抽出液・・・0.10g
・パラオキシ安息香酸エチル・・・0.05g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0048】
(配合例5)
−錠剤状栄養補助食品−
下記の混合物を打錠して、錠剤状栄養補助食品を製造した。
・ゲンチアナ抽出物・・・30g
・粉糖(ショ糖)・・・178g
・ソルビット・・・10g
・グリセリン脂肪酸エステル・・・12g
【0049】
(配合例6)
−顆粒状栄養補助食品−
下記の混合物を顆粒状に形成して、顆粒状栄養補助食品を製造した。
・トウニン抽出物・・・20g
・ビートオリゴ糖・・・1000g
・ビタミンC・・・167g
・ステビア抽出物・・・10g
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のセラミド合成促進剤、並びに皮膚外用剤及び飲食品は、表皮細胞自身のセラミド合成を活発化させ、セラミド産生機能を健常に戻すことができるので、例えば、加齢、乾燥肌、荒れ肌、紫外線曝露、アトピー性皮膚炎などによって減少した角層中のセラミドを増加させ、高いバリア機能及び保湿機能を有する皮膚を取り戻すことを目的とした皮膚外用剤や飲食品に、好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシタバの抽出物、イラクサの抽出物、インチンコウの抽出物、クマザサの抽出物、ゲンチアナの抽出物、及びトウニンの抽出物から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするセラミド合成促進剤。
【請求項2】
セリンパルミトイルトランスフェラーゼmRNA発現促進作用を有する請求項1に記載のセラミド合成促進剤。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載のセラミド合成促進剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項4】
請求項1から2のいずれかに記載のセラミド合成促進剤を含有することを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2009−107965(P2009−107965A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281707(P2007−281707)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】