説明

セラミド含有乳化組成物及びその製造方法

【課題】 セラミド結晶の析出を抑え、幅広い官能を要求される化粧品などに使用できるセラミド含有乳化組成物を提供する。
【解決手段】 成分(a)としてセラミド、成分(b)としてグリセリンと炭素数8〜30の脂肪酸と脂肪族飽和二塩基酸とのエステル化生成物、成分(c)としてポリグリセリン脂肪酸エステル、成分(d)として油、及び成分(e)として多価アルコールを含む混合物を500〜2000kg/cm2の圧力で乳化して得られ、特に多価アルコールがグリセリンであるセラミド含有乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミド含有乳化組成物及びその製造方法に関し、特に保湿性の高いセラミドを含有し、かつ経時安定性としっとり感などの官能面において優れ、化粧品や医療品として用いることができるセラミド含有乳化組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドはスフィンゴシンに脂肪酸がアミド結合したもので細胞間脂質の重要な成分であり、保湿性、すなわち水分保持力が高く、皮膚の角質層の保護に非常に有用な物質である。また、加齢変化に伴う皮膚の変化や免疫機能低下、アレルギー疾患の改善にも期待の持たれる物質である。このため、様々な外的要因から肌を守るためのセラミドを配合した化粧品や外用剤などが年齢性別を問わず使用されている。
しかしながら、セラミドは、水にも油にも溶解しにくいため、化粧品や外用剤などへの製剤化が困難である。このため、セラミドを乳化させる方法が開発されている。
例えば、コロイド性含水ケイ酸塩とポリエチレングリコールとセラミドとを含む水性成分と、スクワラン、脂肪酸トリグリセライド、蝋類、高級アルコール及び高級脂肪酸よりなる群より選んだ少なくとも1種の油性成分とをマイクロフルイダイザーにより乳化する方法が知られている(特許文献1)。
また、セラミド類と、アルキロイル乳酸及び/またはその塩と、グリセリン及び/または重合度2以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとを配合させる方法が知られている(特許文献2)。
また、セラミド類とソルビタンモノラウレートとを配合させる方法が知られている(特許文献3)。
一方、常温で液状を呈するアルコール類、エステル類、炭化水素類等の有機液体を少量の添加でゲル状固形化物となすゲル化剤として、グリセリンまたはその縮合物と、炭素数2〜28の直鎖状飽和脂肪酸と、炭素数12〜28の脂肪族飽和二塩基酸とのエステル化生成物が知られている(特許文献4)。
【0003】
しかしながら、従来の技術ではセラミド結晶の析出を完全に抑制できないという問題がある。特に、製造時にもさることながら、製造後時間を置いた後もセラミド結晶の析出の抑制を維持することに限界があった。化粧品や医療品は、製造後、消費者の手に渡るまで、また実際に開封され使用することとなるその期間や環境を考えると、長期的かつ様々な環境の下での成分の安定性が求められる。また従来の技術で作られたセラミド配合の製品では、実際に使用した際に、しっとり感が足りない、べたつくなど官能面での特性に限界があり劣っていた。
【特許文献1】特開平08−217666号公報
【特許文献2】特開2001−199872号公報
【特許文献3】特開2005−8580号公報
【特許文献4】特許第2700377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、セラミド結晶の析出を抑えることができ、安定性に優れた製剤を得ることができるセラミド含有乳化組成物の提供を目的とする。また、ローションなど、肌にしっとり感といったような保湿性を与える乳液の要素を持ちながら、化粧水のように透明でさらっとした使用感を持つなど、幅広い官能を要求される化粧品などに使用できるセラミド含有乳化組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、セラミドと所定のグリセリン誘導体を含む混合物を500〜2000kg/cm2の圧力で乳化することにより、セラミド結晶の析出を抑え、経時的にも安定したセラミド含有乳化組成物が得られることを見出した。
すなわち、本発明のセラミド含有乳化組成物は、以下の成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)及び成分(e)を含む混合物を500〜2000kg/cm2の圧力で乳化して得られることを特徴とする。
成分(a)はセラミドであり、成分(b)はグリセリンと炭素数8〜30の脂肪酸と脂肪族飽和二塩基酸とのエステル化生成物であり、成分(c)はポリグリセリン脂肪酸エステルであり、成分(d)は油であり、成分(e)は多価アルコールである。
また、上記成分(e)の多価アルコールがグリセリンであることを特徴とする。
【0006】
本発明のセラミド含有乳化組成物の製造方法は、上記成分(a)、成分(b)、及び成分(d)を含有する配合物を、成分(c)及び成分(e)を含有する配合物に混合して混合物を得た後、該混合物を、500〜2000kg/cm2の圧力で乳化処理することを特徴とする。
また、更に上記方法で得られた乳化処理物に水を混合、攪拌することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセラミド含有乳化組成物は、セラミドとグリセリン誘導体類と高圧乳化するので、従来のセラミド配合組成物に比較して、セラミド結晶の析出を抑えることができる。そのため、化粧品などに使用したとき、しっとり感やべたつき感などの官能特性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に使用できる成分(a)のセラミドは、天然セラミド類、合成セラミド類及び合成等により得られるそれらの類縁体(合成擬似セラミド)等、セラミド類として知られている種々の物質が利用できる。
例えば、セラミドとして、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド7、動物の脳抽出物、フィトセラミド、グリコスフィンゴリィピド(植物セラミド)、セラミノール、セラミドコンプレクスなどの植物抽出物;セラミド−スフィンゴシンコンプレックス、セラプレックスなどの天然セラミド及びその混合物;光学活性セラミド2(セラミドTIC−001)、光学活性セラミド3などの合成光学活性セラミド;O-アシルセラミド、ステアロイルジヒドロスフィンゴシン、ステアロイルフィトスフィンゴシン、ヒドロキシエチルパルミチルオキシヒドロキシルプロピルパルミタミド(セラミドSL)、トリヒドロキシパルミタミドヒドロキシプロピルミリスチルエーテル(セラミドH03)、N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルデカナミド、N−(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)−N−ヒドロキシエチルヘキサデカナミドなどを挙げることができる。
上記セラミドは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、上記セラミドの中では糖セラミドが特に好ましく、糖セラミドは動物由来のセラミドに多く含有されている。
【0009】
本発明に使用できる成分(b)は、グリセリンと炭素数8〜30の脂肪酸と脂肪族飽和二塩基酸とのエステル化生成物である。
炭素数8〜30の脂肪酸は、好ましくは炭素数14〜26の脂肪酸である。脂肪酸としては、直鎖、分岐、飽和、不飽和より1種またはは2種以上の脂肪酸を用いることができる。脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、10−ケトステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸等を例として挙げることができる。
本発明において好ましい脂肪酸としては、セラミドを高圧乳化しやすいベヘン酸が挙げられる。
【0010】
脂肪族飽和二塩基酸は、好ましくは炭素数9〜20で、ノナン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等の二塩基酸を単独または任意に混合して使用できる。これらのうち好ましいものはエイコサン二酸である。
成分(b)を得るために、炭素数8〜30の脂肪酸と脂肪族飽和二塩基酸との割合は、1(モル):0.1〜0.5(モル)が適当である。また、グリセリンと上記脂肪酸合計量とのエステル交換反応の割合は、前者1モルに対して1〜5モルが適当である。エステル化反応を行わせる場合の触媒は酵素でも化学触媒でもどちらでもよい。
成分(b)は、グリセリンと、上記脂肪酸及び上記脂肪族飽和二塩基酸とを同時にオリゴエステル化反応させるか、グリセリンと脂肪酸とをまずエステル化せしめ、これをさらに脂肪族飽和二塩基酸とオリゴエステル化反応あるいはエステル交換反応させるか、グリセリンと脂肪族飽和二塩基酸とをまずオリゴエステル化せしめ、次いでこれを脂肪酸とエステル化反応させる方法、例えば特許第2700377号公報に記載の方法で製造することができる。また、成分(b)は、日清オイリオグループ(株)より商品名ノムコートHK−Gとして市販されているエステル化生成物を好適に用いることができる。
【0011】
本発明に使用できる成分(c)は、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステルである。
ポリグリセリンは、グリセリンの第一級炭素原子に結合した水酸基同士が脱水縮合によりエーテル結合で連結される構造を有するグリセリン重合体である。グリセリンの重合度は脂肪酸の種類やエステルの種類によって異なるが、平均重合度が3〜20である。トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン等を例示でき、これらは単独もしくは混合物として使用できる。本発明に好ましい重合グリセリンはデカグリセリンである。
【0012】
成分(c)を構成する脂肪酸は、成分(b)で例示した炭素数8〜30の脂肪酸を使用することができ、好適な脂肪酸はセラミドを高圧乳化しやすいベヘン酸である。
成分(c)におけるポリグリセリンと脂肪酸のモル比は、ポリグリセリン1に対して、平均0.8〜3.0程度にすることが好ましい。
成分(c)の好ましい例としては、モノステアリン酸ポリグリセリン、ジステアリン酸ポリグリセリン等が挙げられる。
【0013】
成分(d)を構成する油は、油状物質であり、セラミドの乳化作用に寄与できる油であれば特に制限はない。使用できる油としては、炭化水素類、エステル類、油脂類、ワックス類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン系物質、ステロール類、樹脂類などが挙げられる。より具体的には、流動パラフィン、イソパラフィン、ワセリン、スクワラン、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソオクチル酸セチル(2−エチルヘキサン酸セチル)、トリイソオクチル酸グリセリル(トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル)、トリカプリル酸グリセリル、ジイソオクチル酸ネオペンチルグリコールエステル(ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールエステル)、リンゴ酸ジイソステアリル、イソノナン酸イソノニル(3,5,5−トリメチルヘキサン酸3,5,5−トリメチルヘキシルアルコールエステル)、ステアリン酸硬化ヒマシ油、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、エメリー社製イソステアリン酸を用いるモノないしヘキサイソステアリン酸ジペンタエリスリトールエステル、o、mまたはp−メトキシケイ皮酸イソオクチル、ユーカリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、米胚芽油、米ヌカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、パーム油、オリーブ油、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、アボカド油、ヒマシ油、月見草油、タートル油、ミンク油、オレンジラフィー油、ラノリン、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリンアルコール、オレイルアルコール、セタノール、ラノリンアルコール、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、セラックロウ、大豆硬化油、菜種硬化油、トリステアリン酸グリセリル、ロジン、コレステロール、フィトステロール、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、及び動植物起源の精油成分などがある。これらは単独であるいは混合して用いることができる。
【0014】
成分(e)の多価アルコールとしては、特に制限はないが、例えば、グリセリン、1,3ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ソルビトール、エリスリトール、マルトース、マルチトール、キシリトール、キシロース、トレハロース、グルコース、マンニトール、ペンタエリスリトール、ペンチレングリコール、へキシレングリコール、ジグリセリン、平均重合度3以上のポリグリセリンなどを挙げることができる。これら多価アルコールの単独でまたは2種以上を混合して用いることができ、これらの中では3価アルコールが好ましく、特にグリセリンを含むことが好ましい。
成分(f)の水としては、精製水、上水、温泉水、深層水等が例示できる。
【0015】
さらに増粘剤を用いることは安定性への寄与や官能に変化をつけるために有効である。 増粘剤として特に限定はないが、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、セルロース、アクリル酸アミド及びその誘導体、ケラチン及びコラーゲンまたはその誘導体、アルギン酸カルシウム、プルラン、寒天、ゼラチン、タマリンド種子多糖類、キサンタンガム、カラギーナン、ハイメトキシルペクチン、ローメトキシルペクチン、グァーガム、アラビアゴム、結晶セルロース、アラビノガラクタン、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸、アルブミン、カゼイン、カードラン、ジェランガム、デキストラン等が例示できる。
【0016】
また、このほかにも本発明の主旨に反しない範囲で、通常、化粧料、医薬部外品及び外用医薬品等の製剤に使用される成分、すなわち、アルコール類、界面活性剤、粉体、増粘剤、紫外線防止剤、抗菌剤、着香料、pH調整剤、清涼剤、植物・動物・微生物由来抽出物、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、美白剤、抗炎症剤、抗シワ剤、活性酸素消去剤、抗酸化剤、細胞賦活剤、保湿剤またはキレート剤等の1種または2種以上を加えることができる。
【0017】
セラミド含有乳化組成物の配合割合は、例えば、グリセリンとのエステル化生成物やポリグリセリン脂肪酸エステルの量によって変化するが、組成物全体を基準として、成分(a)のセラミドが0.001〜1.0重量%、好ましくは0.005〜1.0重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%、成分(b)のエステル化生成物が0.1〜2重量%である。また、成分(a)のセラミドと成分(d)の油との合計量が0.01〜30重量%である。また、油とセラミドとの重量比率は、油1に対してセラミドが0.001〜0.1であり、油とセラミドとの合計量1に対してポリグリセリン脂肪酸エステルが0.05〜0.5である。
【0018】
セラミド含有乳化組成物は、上記原材料を配合し高圧乳化することで得られる。
高圧乳化は高圧処理ができる乳化機であれば特に限定されるものではない。既存の高圧乳化機としては、例えば、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディスク社製)、ナノマイザー(ナノマイザー(株)社製)、アルティマイザー((株)スギノマシン社製)、HOMOGENAIZER(Manton−Gaulin社製)等が挙げられる。
処理圧は成分の種類や量、或いは処理回数によって異なるが、500〜2000kg/cm2、好ましくは800〜2000kg/cm2で処理することがよい。
高圧乳化は全ての原材料を配合した処方全体で行う必要はなく、必要な一部の原材料の配合部分に関して高圧乳化を行い、残部は通常の攪拌で混合することも可能であり、配合原料等によって選択できる。このことは、効率的に乳化を行うことのメリットのほかに、一部の粘剤等、高圧乳化処理をすべきでない場合に選択する。
【0019】
本発明のセラミド含有乳化組成物は、セラミドの結晶の析出がなく安定した乳化組成物が得られるので、化粧料組成物、皮膚外用剤組成物、浴用剤組成物等に利用することができる。
【実施例】
【0020】
実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例4
表1に示す配合を用いて、以下の方法でセラミド含有乳化組成物を作製した。なお、数値は重量比である。配合物Aを90℃に加温し、攪拌しつつ配合物Bに加えた。特に、グリセリンがこの段階で入っていることが本発明において有用である。これをマイクロフルイダイザー(みづほ工業(株)製M−110EH)を用いて、1265.5kg/cm2(18000psi)の圧力で、導入時温度は70℃で1回処理した。その後、配合物Cを通常の攪拌(大気圧、回転数2000rpm、攪拌時間10分、及び攪拌温度30℃)で加えた。
表1に示す配合に用いた原料は以下の通りである。
配合物A
(A−1):セラミド2(Ceramide TIC−001(日光ケミカルズ(株)社製))
(A−2):動物抽出セラミド(ビオセラミドCH(山川貿易(株)社製))
(A−3):セラミド6(Ceramide VI(日光ケミカルズ(株)社製))
(A−4):グリセリン脂肪酸エステルエイコサン二酸エステル化生成物(ノムコートHK−G(日清オイリオグループ(株)社製))
(A−5):スクワラン
(A−6):トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル
(A−7):ステアリン酸硬化ヒマシ油(キャストライトMS(ナショナル美松(株)社製))
(A−8):パルミチン酸デキストリン(千葉製粉社製、商品名レオパールKS)
配合物B
(B−1):モノステアリン酸ポリグリセリンA(デカグリン1−SV(日光ケミカルズ(株)社製))
(B−2):モノステアリン酸ポリグリセリンB(サラコスPGMSV(日清オイリオグループ(株)社製))
(B−3):ジステアリン酸ポリグリセリン(デカグリン2−SV(日光ケミカルズ(株)社製))
(B−4):グリセリン
(B−5):1,3ブチレングリコール
(B−6):精製水
配合物C
(C−1):カルボキシビニルポリマー1%水溶液(pH7.0中和)(ハイビスワコー104(グッドリッチ社製))
(C−2):キサンタンガム(サンエースC(三栄源エフ・エフ・アイ(株)社製))
(C−3):精製水
【0021】
各実施例及び比較例で得られたセラミド含有乳化組成物の粘度をBH型粘度計を用いて、25℃で測定した。なお、実施例1及び4は3号ローターを用いて10rpmで、実施例2及び3は2号ローターを用いて20rpmでそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
また、各実施例及び各比較例を試験容器に密閉収納して、40℃の恒温槽に1週間放置後、乳化組成物の状態を目視にて確認したところ、実施例はすべて変化がなかったが、比較例はすべて結晶が析出していた。なお、グリセリン脂肪酸エステルエイコサン二酸エステル化生成物またはパルミチン酸デキストリンのいずれも配合しない場合は、乳化できないためはじめから結晶の析出をみた。
【0022】
各実施例及び各比較例で得られたセラミド含有乳化組成物を用いて、官能検査用クリーム(配合は重量%)を以下の方法で作製した。
A:スクワラン 10.0
カプリルカプロン酸トリグリセライド 10.0
ゲイロウ 5.0
ミツロウ 5.0
シリコーン 0.5
B:精製水 41.3
セラミド含有乳化組成物 0.5
6%コロイド性含水ケイ酸塩水溶液 15.0
グリセリン 10.0
ポリエチレングリコール(平均分子量4000) 2.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
ヒアルロン酸Na 0.5
A、Bをそれぞれ計量し加温溶解する。撹拌しつつAとBとを混合して官能検査用クリームを得た。
女性5名づつの顔面を左右に分け、一方を各実施例のクリーム、もう一方を各比較例のクリームとして毎日、1回以上使用してもらって3月後アンケートを実施した。なお、実施例1に対して比較例1、実施例2に対して比較例2、実施例3に対して比較例3、実施例4に対して比較例4をそれぞれ用いた。
評価は、肌に対するしっとり感がありべたつき感がなく実施例の方が比較例よりも非常によい場合を+++点、差がない場合を+点とした。結果を表1に示す。
各実施例は、しっとり感が非常によいことをはじめ良好な結果を得た。
【0023】
【表1】

表1において、各実施例は結晶の析出が見られず、また官能検査においても優れていた。各比較例は、マイクロフルイダイザーで処理した後にすでに乳化が正常に行われておらず、セラミドが析出している状態であった。また、各比較例の粘度そのものは各実施例と比べて略同じであった。また、実施例1〜4と同じ配合物をマイクロフルイダイザーで処理の替わりにホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製T.K.オートホモミクサーMARK II 40型)で5000rpm、10分間処理したものは結晶の析出を見た。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のセラミド含有乳化組成物は、従来のセラミド類配合組成物に比較してセラミドの結晶の析出がなく、官能面でも非常に有効であるので、化粧料組成物、皮膚外用剤組成物、浴用剤組成物などへの応用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)及び成分(e)を含む混合物を500〜2000kg/cm2の圧力で乳化することを特徴とするセラミド含有乳化組成物。
(a) セラミド
(b) グリセリンと、炭素数8〜30の脂肪酸と、脂肪族飽和二塩基酸とのエステル化生成物
(c) ポリグリセリン脂肪酸エステル
(d) 油
(e) 多価アルコール
【請求項2】
前記多価アルコールがグリセリンである請求項1に記載のセラミド含有乳化組成物。
【請求項3】
以下の成分(a)、成分(b)、及び成分(d)を含有する配合物を、成分(c)及び成分(e)を含有する配合物に混合して混合物を得た後、該混合物を、500〜2000kg/cm2の圧力で乳化処理するセラミド含有乳化組成物の製造方法。
(a) セラミド
(b) グリセリンと、炭素数8〜30の脂肪酸と、脂肪族飽和二塩基酸とのエステル化生成物
(c) ポリグリセリン脂肪酸エステル
(d) 油
(e) 多価アルコール
【請求項4】
以下の成分(a)、成分(b)、及び成分(d)を含有する配合物を、成分(c)、成分(e)及び成分(f)の一部を含有する配合物に混合して混合物を得た後、該混合物を、500〜2000kg/cm2の圧力で乳化処理し、得られた乳化処理物に成分(f)を混合、攪拌することにより得られるセラミド含有乳化組成物の製造方法。
(a) セラミド
(b) グリセリンと、炭素数8〜30の脂肪酸と、脂肪族飽和二塩基酸とのエステル化生成物
(c) ポリグリセリン脂肪酸エステル
(d) 油
(e) 多価アルコール
(f) 水

【公開番号】特開2007−31381(P2007−31381A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218912(P2005−218912)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000166959)御木本製薬株式会社 (66)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】