セラミド産生促進剤

【課題】皮膚の老化や乾燥や外界からの異物の進入の抑制に有効なセラミド産生促進剤、ならびに飲食品、化粧品、医薬品を提供する。
【解決手段】本発明のセラミド産生促進剤は、スフィンゴイド類、またはスフィンゴ脂質を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミド産生促進剤、ならびにそれを含有する飲食品、医薬品、ペットフードおよび化粧品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚の老化、特に乾燥は中高年以降、加齢と共に進行し、従来から、美容における大きな悩みとなっている(例えば、非特許文献1)。皮膚の乾燥の原因は様々であるが、その一因として挙げられるのは、角質間細胞脂質の一つであるセラミドの減少である。セラミドは、水分を保持する働きを示す角質の細胞間に含まれているものであり、体内の水分の蒸発を抑えるという役割を担っている。しかしながら、加齢とともにセラミドの分泌量が減少することが知られている(例えば、非特許文献2)。このセラミドの減少が、皮膚の乾燥の一因となると考えられている。
【0003】
皮膚は表皮と、表皮の下部に存在する真皮より構成されており、真皮に含まれるコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンなどが体の形態の維持をつかさどっている。一方、表皮は、外界からの異物の侵入を阻止したり、体内に含まれる水分の外界への蒸散を抑制したりするなどの機能を有している。
【0004】
表皮の中でも、最も外側に位置する角質層は、水分の蒸散抑制に重要な働きを示している。角質層の間における脂質(つまり、角質間細胞脂質)の分泌が損なわれると水分を保てなくなり、アトピー性皮膚炎など、水分不足に起因して様々な皮膚疾患を発症する。
【0005】
角質間細胞脂質の主要成分はセラミドであり、上述のように、皮膚の水分不足を抑制するという役割を担っている。セラミドは脂肪酸と長鎖塩基であるスフィンゴシンが酸アミド結合をしたものの総称である。セラミドの種類としては、スフィンゴシンや脂肪酸鎖の構造によって、いくつかの種類があることが確認されている(例えば、非特許文献3)。このセラミドが、角質層で脂溶性成分の層を作り出すことで、外部からの異物の侵入や、内部からの水分の蒸発を抑制している。しかしながら、前述の通り、セラミド量は加齢によって減少する傾向にある。
【0006】
このような状況に鑑み、従来から、表皮中に存在するセラミドを補ったり、セラミドの産生を促進したりすることが検討されてきた。具体的には、皮膚にセラミド又はセラミド類似体を塗布することで、経皮吸収によってセラミドを補う方法(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)や、皮膚にセラミドの産生を促進する物質を塗布する方法(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6)などが挙げられる。
【0007】
しかしながら、上述したセラミド、その類似体等を有効成分とするセラミド産生促進用経皮吸収剤は、植物由来であり、一般的に高価であるという問題があった。これに加え、経皮吸収を促進するために乳化剤を使用するため、保湿性に問題を引き起こす場合があった。また、植物由来のセラミドではなく合成品のセラミドを用いた場合は、反応中間体の除去や合成に使用した溶媒の残存の問題などから、長期間塗布することは好ましくない場合があった。これらの現状を踏まえて、安全で、長期間使用しても問題なく表皮のセラミド量を増やすことの出来る材料が求められていた。
【0008】
一方、スフィンゴ脂質は、皮膚組織や神経系の組織に多く存在し、細胞のシグナル伝達やアポトーシス等の生理現象に対して重要な役割を果たしていることが明らかとなってきつつあり、近年、注目されている。
【0009】
例えば、代表的なスフィンゴ脂質であるグルコシルセラミドは、そのままの形態で吸収されることにより皮膚における保湿性向上や美肌効果を有することが知られている(例えば、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。また、グルコシルセラミドは、アトピー性皮膚炎改善作用(例えば、非特許文献7、8)を有することが知られている。さらにまた、セラミドは脳機能改善作用(例えば、特許文献7)や筋肉損傷抑制作用(例えば、特許文献8)を有することが知られている。しかしながら、スフィンゴ脂質にセラミド産生促進作用があることは、これまで報告されていなかった。
【0010】
また、スフィンゴ脂質の構成成分であるスフィンゴイド類(スフィンゴイド塩基)については、ヒト結腸ガン細胞でのアポトーシス誘導作用(例えば、非特許文献9)や、マウスにおける大腸線腫抑制作用(例えば、非特許文献10)を有することが知られている。
【0011】
このようなスフィンゴイド類には、表皮の下部に存在する真皮にてコラーゲン産生促進作用があることが報告されている(例えば、特許文献9)。しかしながら、スフィンゴイド類や、その他のコラーゲン産生促進作用を有する物質(例えばクロセチン、パッションフルーツの種子抽出物、マメ科シカクマメ属に属する植物の抽出物など)に、表皮にてセラミド産生促進作用があることは、これまで報告されていなかった(例えば、特許文献10、特許文献11、特許文献12)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表平8−508742号公報
【特許文献2】特開2003−238508号公報
【特許文献3】特表2010−513221号公報
【特許文献4】特開2000−169359号公報
【特許文献5】特開2001−55325号公報
【特許文献6】特開2004−161648号公報
【特許文献7】特許第4040069号公報
【特許文献8】特許第4040070号公報
【特許文献9】特開2010−95499号公報
【特許文献10】特開平7−285846号公報
【特許文献11】特開2009−102299号公報
【特許文献12】特開2010−24222号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】エイジングケア開発トレンドデータ2008−2009、富士経済
【非特許文献2】Analysis of beta-glucocrebrosidase and ceramidase activies in atopic and aged dry skin. Acta Derm Venereol 1994 Sep;74(5):337−40
【非特許文献3】科学と工業、77(5)、233〜239(2003)
【非特許文献4】食品と開発、Vol.35、No.9、56−59(2000)
【非特許文献5】食品と開発、Vol.36、No.8、9−11(2001)
【非特許文献6】バイオインダストリー、Vol.19、No.8、16−26(2002)
【非特許文献7】Pediatric Dermatology、Vol.23、No.4、386−389(2006)
【非特許文献8】Fragrance Journal、Vol.27、29−33(1999−10)
【非特許文献9】オレオサイエンス、Vol.7、No.4(2007)
【非特許文献10】Schmelz et al.、J.Nutr.、130、522−527(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の問題を解決するために、本発明は、安価かつ安全であり、効果的に表皮中のセラミドを増加させることが可能なセラミド産生促進剤を提供することを目的とする。さらに、本発明は、該セラミド産生促進剤を含有する飲食品、化粧品、医薬品、ペットフード等を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討した結果、意外にもスフィンゴイド類に高いセラミド産生促進効果があることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の趣旨は下記の通りである。
(1)スフィンゴイド類を含有することを特徴とするセラミド産生促進剤。
(2)スフィンゴイド類が植物素材由来であることを特徴とする(1)のセラミド産生促進剤。
(3)スフィンゴイド類が、4−ヒドロキシスフィンガニン、4−ヒドロキシ−8−スフィンゲニン、スフィンガニン、8−スフィンゲニン、4−スフィンゲニンおよび4、8−スフィンガジエニンから選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)または(2)のセラミド産生促進剤。
(4)スフィンゴ脂質を含有することを特徴とするセラミド産生促進剤。
(5)経口摂取後、生体内でスフィンゴイド類に分解されるスフィンゴ脂質を含有することを特徴とする(4)のセラミド産生促進剤。
(6)スフィンゴ脂質が植物素材由来のものである(4)または(5)のセラミド産生促進剤。
(7)(1)〜(6)いずれかのセラミド産生促進剤を含有することを特徴とする飲食品。
(8)(1)〜(6)のいずれかのセラミド産生促進剤を含有することを特徴とする医薬品。
(9)(1)〜(6)のいずれかのセラミド産生促進剤を含有することを特徴とするペットフード。
(10)(1)〜(3)のいずれかのセラミド産生促進剤を含有することを特徴とする化粧品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安価かつ安全であり、効果的に表皮中のセラミドを増加させることが可能なセラミド産生促進剤を提供することができる。さらに、本発明によれば、該セラミド産生促進剤を含有する飲食品、化粧品、医薬品、ペットフード等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について説明する。
本発明のセラミド産生促進剤は、有効成分として、スフィンゴイド類、またはスフィンゴ脂質を含有する。スフィンゴイド類、またはスフィンゴ脂質を有効成分とする本発明のセラミド産生促進剤を経口摂取したり、皮膚に塗布したりすることにより、表皮中のセラミドの産生を効果的に促進することが可能となる。
【0018】
なお、スフィンゴイド類は、スフィンゴ脂質構造中に存在するものであり、スフィンゴ脂質を構成成分に分解することにより調製できる。つまり、スフィンゴ脂質を含有させたセラミド産生促進剤を経口投与する場合には、生体内中でスフィンゴ脂質を分解させることにより、有効成分として機能するスフィンゴイド類が生成される。
【0019】
スフィンゴ脂質について、以下に述べる。
本発明に用いられるスフィンゴ脂質は、本発明の効果を損なうものでない限り、特に制限されない。例えば、天然素材由来(植物素材由来や動物素材由来)のセラミドやグルコシルセラミドなどのスフィンゴ脂質が含有される素材から抽出されたスフィンゴ脂質;化学合成されたスフィンゴ脂質;あるいは酵素合成されたスフィンゴ脂質等を用いることができる。
【0020】
植物素材由来のスフィンゴ脂質は、植物素材を水や有機溶媒で抽出する方法により得ることができる。そして、植物素材由来のスフィンゴイド類は、植物素材由来のスフィンゴ脂質を分解することにより得られる。
【0021】
植物素材由来のスフィンゴ脂質を得る場合に、使用される植物素材は特に限定されない。例えばアーモンド、アオサ、アオノリ、アカザ、アカシア、アカネ、アカブドウ、アカマツ(松ヤニ、琥珀、コーパルを含む。以下マツ類については同じ)、アガリクス、アキノノゲシ、アケビ、アサガオ、アザレア、アジサイ、アシタバ、アズキ、アスパラガス、アセロラ、アセンヤク、アニス、アボガド、アマチャ、アマチャヅル、アマリリス、アルテア、アルニカ、アロエ、アンジェリカ、アンズ、アンソッコウ、イグサ、イザヨイバラ、イチイ、イチジク、イチョウ、イランイラン、ウイキョウ、ウーロン茶、ウコン、ウスベニアオイ、ウツボグサ、ウド、ウメ、ウラジロガシ、温州ミカン、エイジツ、エシャロット、エゾウコギ、エニシダ、エノキタケ、エルダーフラワー、エンドウ、オーキッド、オオバコ、オオヒレアザミ、オオムギ、オケラ、オスマンサス、オトギリソウ、オドリコソウ、オニドコロ、オリーブ、オレガノ、オレンジ(オレンジピールを含む)、カーネーション、カカオ、カキ、カキドオシ、カッコン、カシワ、カタクリ、カボチャ、カミツレ、カムカム、カモミール、カラスウリ、カラマツ、カリン、ガルシニア、カルダモン、キイチゴ、キウイ、キキョウ、キャベツ(ケールを含む)、キャラウェイ、キュウリ、キンカン、ギンナン、グァバ、クコ、クズ、クチナシ、クミン、クランベリー、クルミ、グレープフルーツ、クローブ、クロマツ、クロマメ、クロレラ、ケツメイシ、ゲンノショウコ、コケモモ、コショウ、コスモス、ゴボウ、コムギ(小麦胚芽を含む)、ゴマ、コマツナ、コメ(米糠を含む)、コリアンダー、コンニャク芋(コンニャクトビ粉を含む)、コンブ、サーモンベリー、サイプレス、ザクロ、サツマ芋、サト芋、サトウキビ、サトウダイコン、サフラン、ザボン、サンザシ、サンショウ、シイタケ、シクラメン、シソ、シメジ、ジャガ芋、シャクヤク、ジャスミン、ジュズダマ、シュンギク、ショウガ、ショウブ、シラカシ、ジンチョウゲ、シンナモン、スイカ、スイトピー、スギナ、スターアニス、スターアップル、スダチ、ステビア、スモモ、セージ(サルビア)、ゼニアオイ、セロリ、センキュウ、センブリ、ソバ、ソラマメ、ダイコン、ダイズ(おからを含む)、ダイダイ、タイム、タケノコ、タマネギ、タラゴン、タロイモ、タンジン、タンポポ、チコリ、ツキミソウ、ツクシ、ツバキ、ツボクサ、ツメクサ、ツルクサ、ツルナ、ツワブキ、ディル、テンジクアオイ(ゼラニウム)、トウガ、トウガラシ、トウキ、トウチュウカソウ、トウモロコシ、ドクダミ、トコン、トチュウ、トネリコ、ナガイモ、ナズナ、ナツメグ、ナンテン、ニガウリ、ニガヨモギ、ニラ、ニンジン、ニンニク、ネギ、ノコギリソウ、ノコギリヤシ、ノビル、バーベナ、パーム、パイナップル、ハイビスカス、ハコベ、バジル、パセリ、ハダカムギ、ハッカ、ハトムギ、バナナ、バナバ、バニラ、パプリカ、ハマメリス、ビート、ピーマン、ヒガンバナ、ヒシ、ヒジキ、ピスタチオ、ヒソップ(ヤナギハッカ)、ヒナギク、ヒナゲシ、ヒノキ、ヒバ、ヒマシ、ヒマワリ、ビワ、ファレノプシス、フェネグリーク、フキノトウ、ブラックベリー、プラム、ブルーベリー(ビルベリーを含む)、プルーン、ヘチマ、ベニバナ、ベラドンナ、ベルガモット、ホウセンカ、ホウレンソウ、ホオズキ、ボダイジュ、ボタン、ホップ、ホホバ、マイタケ、マオウ、マカ、マカデミアンナッツ、マタタビ、マリーゴールド、マンゴー、ミツバ、ミモザ、ミョウガ、ミルラ、ムラサキ、メース、メリッサ、メリロート、メロン、メン(綿実油粕を含む)、モヤシ、ヤグルマソウ、ヤマ芋、ヤマユリ、ヤマヨモギ、ユーカリ、ユキノシタ、ユズ、ユリ、ヨクイニン、ヨメナ(アスター)、ヨモギ、ライム、ライムギ、ライラック、ラズベリー、ラッカセイ、ラッキョウ、リンゴ(アップルファイバーを含む)、リンドウ、レイシ、レタス、レモン、レンゲソウ、レンコン、ローズヒップ、ローズマリー、ローリエ、ワケギ、ワサビ(セイヨウワサビを含む)などが挙げられる。
【0022】
なお、植物素材由来のスフィンゴ脂質のなかでも、セラミド産生促進効果の観点から、コンニャク芋(コンニャクトビ粉を含む)、温州ミカン由来のものが特に好ましい。
【0023】
上述の植物素材を抽出することにより、スフィンゴ脂質を得ることができる。抽出の際には、水や有機溶媒を用いることができる。使用する有機溶媒としては、本発明の効果を損なうものでなければ、いかなるものを用いても良く、特に制限されない。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類、ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ピリジン類等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記の有機溶媒の中でも、食品に対して使用する場合には、エタノール、ヘキサンが望ましい。また、抽出効率を上げるために、水、酵素、各種界面活性剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で使用することも可能である。
【0025】
植物素材からスフィンゴ脂質を抽出するには、公知の方法を用いればよく、抽出を複数回行うこともできる。また、近年注目を浴びている超臨界抽出法を使用することも可能である。
【0026】
このようにして得られた抽出液は、濃縮操作により濃縮物とすることができる。濃縮操作としては、例えば、エバポレーターのような減圧濃縮装置を用いたり、加熱したりして、溶媒を除去することが挙げられる。次いで、濃縮物を公知慣用の精製手段により精製することで、スフィンゴ脂質を得ることができる。例えば、該抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで数回精製したり、アルカリ処理や溶媒分画等により不純物を除去した後に、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製したりすることにより、スフィンゴ脂質を得ることができる。
【0027】
スフィンゴイド類について、以下に述べる。
本発明におけるスフィンゴイド類は、炭化水素化合物にアミノ基、水酸基が結合した長鎖アミノアルコール構造を持つ化合物の総称である。スフィンゴイド類は、主に、セラミドやグルコシルセラミド等のスフィンゴ脂質の構成成分として、動物、植物、真菌に広く分布している。スフィンゴイド類は、水酸基の数、二重結合の数や位置により多数の分子種が存在し、由来によって含まれる分子種や、その含有割合は異なる。例えば、4‐スフィンゲニン(スフィンゴシン)、スフィンガニン、4‐ヒドロキシ‐スフィンガニン(フィトスフィンゴシン)、8‐スフィンゲニン、4,8‐スフィンガジエニン、4‐ヒドロキシ‐8‐スフィンゲニンなどが挙げられる。
【0028】
本発明に用いられるスフィンゴイド類としては、天然素材由来であるものの他、化学合成品や酵素合成品を用いることも可能である。スフィンゴイド類としては、スフィンゴシン(スフィンゲニン)、ジヒドロスフィンゴシン(スフィンガニン)、フィトスフィンゴシン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン及びこれらのN−メチル体又はN,N−ジメチル体等が挙げられる。
【0029】
スフィンゴイド類の炭素数は、16〜22が好ましい。また、スフィンゴイド類としては、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のいずれでもよい。具体的には、8−スフィンゲニン、4,8−スフィンガジエニン、4−ヒドロキシ−スフィンゲニンなどや、4−スフィンゲニン(スフィンゴシン)、スフィンガニン、4−ヒドロキシ−スフィンガニン(フィトスフィンゴシン)などが挙げられる。
【0030】
なかでも、植物素材由来のスフィンゴイド類は、セラミド産生促進効果に優れているため好ましい。セラミド産生促進効果の観点からは、4,8−スフィンガジエニン、4−ヒドロキシ−8−スフィンゲニン、8−スフィンゲニンが特に好ましく、4−ヒドロキシ−8−スフィンゲニンが最も好ましい。
【0031】
本発明のセラミド産生促進剤において、セラミド産生促進効果の観点から、上記スフィンゴイド類に対する4,8−スフィンガジエニン、4−ヒドロキシ−8−スフィンゲニン及び8−スフィンゲニンの割合が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がいっそう好ましく、93質量%以上がよりいっそう好ましい。
【0032】
スフィンゴイド類を得る方法について、以下に述べる。
まず、上述のようにして得られたスフィンゴ脂質を、含水メタノール性塩酸などとともに加熱して構成成分に分解する。次いで溶媒抽出することにより、スフィンゴイド類を得ることができる。
【0033】
スフィンゴイド類は、そのまま多種類の分子種の混合物として、コラーゲン産生促進剤として使用してもよいし、クロマトグラフィー等で、さらに分画・精製して用いてもよい。
【0034】
スフィンゴ脂質を分解することにより得られたスフィンゴイド類は、スフィンゴ脂質よりも、セラミド産生促進効果により優れている。その理由はさだかではないが、スフィンゴ脂質を摂取した場合に比べ、スフィンゴイド類を摂取した方が、体内のセラミドを合成する酵素がより増加するためであると推測される。
【0035】
特に、本発明においては、スフィンゴイド類を含有させたセラミド産生促進剤であるか、あるいは、経口投与により摂取されるスフィンゴ脂質を含有させたセラミド産生促進剤であって、生体内中でスフィンゴ脂質を分解させることによりスフィンゴイド類を生成させうるセラミド産生促進剤であることが好ましい。生体内中で、スフィンゴ脂質を分解させることで、体内への吸収性などが向上したスフィンゴイド類が得られるため、より優れたセラミド産生促進効果を発現させることができる。
【0036】
セラミド産生促進剤の形態としては、特に限定されず、水又は油脂に分散させた液剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などが挙げられる。
【0037】
本発明におけるセラミド産生促進剤は、スフィンゴイド類又はスフィンゴ脂質として成人1日あたりの摂取量が0.01〜1000mgとなるように摂取することが好ましく、さらに0.1〜100mgが好ましく、0.1〜30mgが一層好ましい。なお、成人1日あたりの摂取量が0.01mg未満であると、前記のセラミド産生促進効果が低くなる場合がある。一方、成人1日あたりの摂取量が1000mgを超えると、セラミド産生促進効果に対して原料コストが高くなる場合がある。
【0038】
本発明のセラミド産生促進剤は、スフィンゴイド類又はスフィンゴ脂質以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、植物抽出エキス類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、アルコール、多価アルコール、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等の成分を、必要に応じて含有していてもよい。
【0039】
本発明の飲食品は、上記セラミド産生促進剤を配合したものであり、食品、飲料、嗜好品、サプリメントなど、経口で摂取しうるものである。その形態は特に限定されず、パン類、麺類等の主菜となりうるもの;チーズ、ハム、ウィンナー、魚介加工品等の副菜となりうるもの;果汁飲料、炭酸飲料、乳飲料等の飲料;クッキー、ケーキ、ゼリー、プリン、キャンディー、ヨーグルト等の嗜好品とすることが出来る。また、サプリメントとしての形態も特に限定されるものではなく、錠剤、カプセル、ソフトカプセル、栄養ドリンク状の形態が挙げられる。
【0040】
本発明の医薬品は、上記セラミド産生促進剤を配合したものである。その形態は特に限定されず、例えば、水又は油脂に分散させた液剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などが挙げられる。
【0041】
本発明のペットフードは、上記セラミド産生促進剤を配合したものである。その形態は特に限定されず、本発明のセラミド産生促進剤に、例えばトウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦などの穀類、ふすま、米ぬかなどのぬか類、コーングルテンミール、コーンジャムミールなどの粕類、脱脂粉乳、ホエー、魚粉、骨粉などの動物性飼料類、ビール酵母などの酵母類、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどのカルシウム類、ビタミン類、油脂類、アミノ酸類、糖類などを配合したものが挙げられる。
【0042】
本発明の化粧品は、上記セラミド産生促進剤を配合したものである。その形態は特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水(ローション)、パック、美容液、洗浄剤、メーキャップ化粧料などが挙げられる。
【0043】
本発明のセラミド産生促進剤、それを配合した飲食物、医薬品、ペットフードおよび化粧品には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、種々の機能性成分を配合することが出来る。機能性成分としては、例えば、ビタミンC、コラーゲン、スクワラン、ナイアシン、ナイアシンアミド、ヒアルロン酸、プラセンタエキス、ソルビトール、キチン、キトサンや、その他にも種々の植物抽出物等が挙げられる。これらの配合量については、本発明の効果を損なわない限り限定されない。
【0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
調製例1(スフィンゴイド類の調製)
コンニャクとび粉1Kgを撹拌糟に仕込み、そこにエタノール2Lを加え、常温で2時間撹拌して混合物を得た。得られた混合物をろ過し、抽出物(抽出溶液)と残渣とに分離した。抽出溶液をエバポレーターにより濃縮し、茶褐色の蝋状濃縮物を約10g得た。
【0045】
得られた濃縮物を、0.4NのKOHにより弱アルカリ分解した後、混合溶媒(クロロホルム/メタノール/水=8/4/3、体積比)で再抽出を行った。クロロホルム相を減圧下濃縮乾固して、脂質8.6gを得た。
【0046】
続いて、この脂質を4倍量のアセトンで2回洗浄した後、20倍量のエタノール、0.2倍量の活性炭を加え脱色処理し、黄白色固体1.4gを得た。この黄白色固体うち、1gをシリカゲルカラムに供給し、混合溶媒(酢酸エチル/エタノール=95/5、体積比)で共雑物を除き、混合溶媒(酢酸エチル/エタノール=90/10、体積比)で溶出してグルコシルセラミドを精製し、白色のグルコシルセラミド粉末0.6gを得た。得られたグルコシルセラミド粉末を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(島津製作所製、「CLASS−VP/LC−10」)を用い、また、TLC(Merck社製 「Silica gel 60」)を用いて検出を行った結果、他のピークやスポットなどがほとんど見られないことから、共離ピークで純度を求めた結果、98%以上であった。
【0047】
続いて、このグルコシルセラミド粉末を、1N含水メタノール性塩酸中で、70℃で18時間加熱した。次いで、ヘキサンで脂肪酸メチルエステルを抽出除去後、4NのNaOHで中和し、さらにクロロホルム、メタノールを添加して、混合溶媒(クロロホルム/メタノール/水=1/1/1、体積比)として抽出することによってセラミド産生促進剤であるスフィンゴイド類を調製した。得られたスフィンゴイド類を、トリメチルシリル化剤(東京化成工業社製、「C0306」)、トリメチルシリル化した。次いで、分析装置(Agilent社製、「6890N、5975C」)を用いてGC−MS分析を行ったところ、得られたスフィンゴイド類は、4,8‐スフィンガジエニン(66質量%)、4−ヒドロキシ‐8‐スフィンゲニン(22質量%)、8−スフィンゲニン(4質量%)及びその他の微量スフィンゴイド(8質量%)の混合物であることが確認された。
【0048】
実施例1(セラミド産生促進剤の調製)
調製例1で得られたコンニャクとび粉由来スフィンゴイド類5mgに、エタノール1mLを加え、撹拌・溶解して、液剤であるセラミド産生促進剤を調製した。
【0049】
実施例2[セラミド合成酵素セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)を用いた産生促進効果の評価]
正常ヒト表皮角化細胞(クラボウ社製、「NHEK」)を、2.5×10細胞/ウェルとなるように、24ウェルプレート(IWAKI社製)に播種した。その後、37℃、5%COの環境下で、インキュベーター(ESPEC社製)を用いて培養を行った。3日に一度培地(クラボウ社製)交換を行いながら、80%コンフレントな状態になるまで培養を継続した。
【0050】
調製例1で得たスフィンゴイド類を、1μg/ml、5μg/ml、10μg/mlの濃度となるようにエタノール(ナカライテスク社製)に溶解して得られた溶液を、上述の培地から血清を除いたものに添加し、細胞に培地を交換することで作用させた。
【0051】
対照群として、4種類を用いた。すなわち、溶媒であるエタノール、およびセラミド産生促進効果を有する材料として既に報告されているナイアシンアミド(Sigma Aldrich社製)を1μg/ml、5μg/ml、10μg/mlの濃度でエタノールに溶解させて得られた溶液を用いた。
【0052】
培地を交換した直後から、72時間培養を行なった。72時間経過後、該培地をプレートから除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄後、核酸抽出試薬であるISOGEN(ニッポンジーン社製)を各ウェル500μlずつ添加し懸濁することで細胞中のRNAを溶解させ、RNAを抽出した。次いで、逆転写酵素(タカラバイオ社製、RR037A)をRNA1000μgあたり1μl添加し、cDNAを得た。
【0053】
得られたcDNAを用い、リアルタイムPCR(アプライドシステムズジャパン社製)を使用して、SPTの遺伝子量の定量を行った。その定量結果を表1に示す。なお、表1においては、薬剤を添加せず、エタノール単独で定量を行ったものを基準値(100)として評価を行った。
【0054】
【表1】

【0055】
表1から明らかなように、こんにゃくとび粉由来スフィンゴイド類を含有した本発明のセラミド産生促進剤は、従来のセラミド産生促進成分であるナイアシンアミドと比較して、強いSPT産生促進活性があること(つまり、セラミド産生促進効果に優れること)が示された。
【0056】
実施例3(スフィンゴイドの分子種別のSPT産生促進効果)
調製例1で得られたスフィンゴイド類を、カラムを用いて分画し精製を行った。精製は、球状シリカゲル(富士シリシア化学社製、「MB−4B」)(100〜200mesh)を用いて、混合溶媒(クロロホルム/メタノール=50/50、60/40、70/30、80/20、90/10、100/0、体積比)のステップワイズ溶出により行った。精製したスフィンゴイド類を、試験管にフラクション別に分種した。
【0057】
得られたそれぞれの試験管を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(島津製作所製、「CLASS−VP/LC−10」)を用いて確認し、高純度であると思われるフラクションを回収した。その後、フラクションをエバポレーター(東京理化器械社製)を用いて乾固させることにより、スフィンゴイド類の各成分を得た。
【0058】
次いで、Agilent社製、「6890N、5975C」を用いてGC−MS分析を行ったところ、得られたスフィンゴイド類の単離物は、4、8−スフィンガジエニン、4−ヒドロキシ−8−スフィンゲニンであることが確認された。これに調製例1にて得られた精製前のスフィンゴイド類の混合物を加えた3種のスフィンゴイド類を、5μg/mlの濃度となるようにエタノールに添加し、実施例2と同様の定量を行った。その定量結果を表2に示す。なお、表2においては、薬剤を添加せず、エタノール単独で定量を行ったものを基準値(100)として評価を行った。
【0059】
【表2】

【0060】
表2から明らかなように、スフィンゴイド類の混合物であるスフィンゴイド類を用いた場合より、4、8−スフィンガジエニン単独、もしくは4−ヒドロキシ−8−スフィンゲニン単独であるスフィンゴイド類を用いた場合は、より優れたセラミド産生促進効果を示すことがわかった。なかでも、4−ヒドロキシ−8−スフィンゲニンは、特に優れたセラミド産生促進効果を示すことがわかった。
【0061】
実施例4(3次元皮膚モデルを使用したセラミド産生促進試験)
3次元皮膚モデルの角質バリア機能を向上させたモデルであるLSE−high(東洋紡社)を使用し、調製例1で得られたスフィンゴイド類のセラミド産生促進効果を確認した。
【0062】
LSE−highを、到着後、付属の培地にて培養した。ここで、調製例1で得られたスフィンゴイド類を、5μg/mlの濃度でエタノールに溶解させた溶液を培地に添加して、3日間培養を行った。なお、対照群としては、溶媒であるエタノール、およびナイアシンアミド(Sigma Aldrich社製)を、5μg/mlの濃度でエタノールに溶解させた溶液を用いた。
【0063】
3日間経過後、LSE−highより表皮をはがし、混合溶媒(クロロホルム/メタノール=1/2、体積比)にてセラミドの抽出を行った。その後溶媒を回収し、この溶媒よりセラミドの抽出を行った。抽出後の溶媒を、さらに混合溶媒(クロロホルム/メタノール=1/1、体積比)にて溶解し、以下に示すような条件で薄層クロマトグラフィー(TLC)を実施することで、セラミドの量を定量した。
【0064】
(薄層クロマトグラフィー)
TLC板(Merck社製、「HPTLC Plates Silica gel60」)を使用し、抽出液とセラミドの標準品(Avanti社製)を使用して、TLCを実施した。
【0065】
展開溶媒としては、以下の6種の溶媒を使用した。なお、以下の溶媒1〜6における、各々の溶媒の混合割合は体積比である。
溶媒1.クロロホルム
溶媒2.クロロホルム/アセトン/メタノール=76/8/16
溶媒3.クロロホルム/酢酸ヘキシル/アセトン/メタノール=86/1/10/4
溶媒4.クロロホルム/アセトン/メタノール=76/4/20
溶媒5.クロロホルム/ジエチルエーテル/酢酸ヘキシル/酢酸エチル/アセトン/メタノール=72/4/1/4/16/4
溶媒6.へキサン/ジエチルエーテル/酢酸エチル=80/16/4
【0066】
上記の溶媒を用いて展開を行い、その後、発色試薬混合溶媒に(酢酸/リン酸/水=5/2/95)に0.5質量%の濃度となるように硫酸銅を溶解させた水溶液を、TLC板に塗布し、ヒートブロックを使用して加熱することで発色させた。発色させたTLC板をスキャナーで取り込んだ後、TLC専用画像解析ソフトウェア(リポニクス社製、「Just TLC」)を使用して、セラミドのスポットを選択し、その濃さと大きさからセラミドの量を定量した。その定量結果を表3に示す。なお、表3においては、薬剤を添加せず、エタノール単独で定量を行ったものを基準値(100)として評価を行った。
【0067】
【表3】

【0068】
表3から明らかなように、5μg/mlの濃度でスフィンゴイド類を培地に添加することで、3次元皮膚モデルセラミドの産生を顕著に促進することが出来た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スフィンゴイド類を含有することを特徴とするセラミド産生促進剤。
【請求項2】
スフィンゴイド類が植物素材由来であることを特徴とする請求項1記載のセラミド産生促進剤。
【請求項3】
スフィンゴイド類が、4−ヒドロキシスフィンガニン、4−ヒドロキシ−8−スフィンゲニン、スフィンガニン、8−スフィンゲニン、4−スフィンゲニンおよび4、8−スフィンガジエニンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミド産生促進剤。
【請求項4】
スフィンゴ脂質を含有することを特徴とするセラミド産生促進剤。
【請求項5】
経口摂取後、生体内でスフィンゴイド類に分解されるスフィンゴ脂質を含有することを特徴とする請求項4に記載のセラミド産生促進剤。
【請求項6】
スフィンゴ脂質が植物素材由来のものである請求項4または5に記載のセラミド産生促進剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のセラミド産生促進剤を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のセラミド産生促進剤を含有することを特徴とする医薬品。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載のセラミド産生促進剤を含有することを特徴とするペットフード。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれかに記載のセラミド産生促進剤を含有することを特徴とする化粧品。

【公開番号】特開2012−92032(P2012−92032A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239832(P2010−239832)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】