説明

セラミド類含有組成物、セラミド類含有水性製剤及びこれらを含有する飲食料、化粧料、皮膚外用剤

【課題】 苦味等の不快な味を有さず、水系、油系の製剤に希釈・分散しても、セラミド類が安定に配合され、可溶化系・分散系の両方に使用できる汎用性に優れたセラミド類含有組成物;セラミド類含有水性製剤;これらを含有する飲食料、化粧料、皮膚外用剤を提供。
【解決手段】 セラミド類、油剤、及び乳化剤として構成脂肪酸の炭素数が12〜22であるグリセリン脂肪酸エステルを含有するセラミド類含有組成物であって、前記セラミド類含有組成物の系全体における前記グリセリン脂肪酸エステルのHLB値が、7〜16である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミド類含有組成物と該組成物を含有する飲食料、化粧料、並びに皮膚外用剤に関するものである。また、本発明は、セラミド類含有組成物及び水又は水溶性成分含有水溶液を含有するセラミド類含有水性製剤と、該水性製剤を含有する飲食料、化粧料、並びに皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、角質細胞間脂質の主要な構成成分として皮膚の角質層に存在し、脂質バリアを構築して角質細胞の表面を膜状に包み込んで、角質の接着を助け、また保水の働きをしている。角質層にあるセラミドは、皮膚中のセレブロシドがセレブロシダーゼにより分解し変化したもので、このセラミドの一部は、セラミダーゼによりスフィンゴシンに変化し、細胞の増殖及び分化の調節剤として重要な役割を果たすものである。人間の皮膚には、多種の異なる機能を有するセラミド類が存在しており、これらの特性を利用して飲食料、化粧料、及びその他皮膚外用剤に応用することが試みられている。
【0003】
しかし、セラミド類は結晶性の高い物質であり、水、油への溶解性が悪く、また溶解する油剤の種類が少ないため、飲食料、化粧料、皮膚外用剤等中に容易に配合できないことが知られている。
【0004】
このため、セラミド類を製剤化する技術として、高級脂肪酸を併用して溶解性を上げる方法や液晶状態を形成する界面活性剤を使用して溶解する方法等が一般的に利用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2001−316217号公報
【特許文献2】特開2003−113393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る高級脂肪酸を使用する方法は、セラミド類を製剤中に安定に溶解させるために過剰量の高級脂肪酸を配合する必要があり、特有の不快な味を有するだけでなく、安全性(化粧料や皮膚外用剤等に応用する場合の皮膚刺激等)の観点からも、その配合量におのずと制約があった。
また、可溶化系等の乳化系以外の系(分散系)に応用できないという配合上の制限もあった。
【0006】
また、特許文献2に係る液晶状態を形成する界面活性剤を使用する方法については、特定のポリオキシエチレン系界面活性剤やポリグリセリン脂肪酸エステル等を使って、セラミド類を安定に配合した技術が開発されている。これらの技術を使った製剤は、飲食料に使用できない成分を配合していることが多く、また食品に使用できる成分を配合しているものでも苦味等の不快な味を有し、飲食料に配合すると全体の味を損ねてしまうという問題があった。
特に、ポリオキシエチレン系界面活性剤や構成脂肪酸の炭素数が10以下のポリグリセリン脂肪酸エステルは、不快な味が強く、他の成分でマスキングしなければならないという問題があった。
また、化粧料やその他皮膚外用剤においても、顔や口唇に塗布する製品に応用する場合、口に入った時に不快な味を有するため、適当ではなかった。
【0007】
味以外の面に注目すると、可溶化系等の水系にセラミド類を含有させるという発明が数多く検討されているのに対し、油系にセラミド類を含有させるという検討はなされていなかった。実際に市販品や従来の発明に相当する製剤を、油及び油性組成物に希釈・分散すると、セラミド類の安定状態が壊れ、セラミド類自体が析出するという問題がある。
そのため水系、油系のどちらの製品にも分散できるという汎用性の高いセラミド類含有組成物は、顧客のニーズが高いにもかかわらず、開発されていなかった。
【0008】
また、水系にセラミド類を含有させたセラミド類含有水性製剤の場合、界面活性剤が濃厚な系であるため、長期間保存すると界面活性剤が加水分解してしまい、pHが低下し(酸味が増す)、系全体の安定性が損なわれてセラミド類が析出するという問題があった。
そのため、このような水系のセラミド類含有水性製剤を中間原料として流通させるにあたり、他の原料と比較して品質の保持が難しく、長期在庫できない等の課題があった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、苦味等の不快な味を有さず、水系、油系の製剤に希釈・分散しても、セラミド類が安定に配合され、可溶化系・分散系の両方に使用できる汎用性に優れたセラミド類含有組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上記セラミド類含有組成物を含有するセラミド類含有水性製剤、及びこれらを含有する飲食料、化粧料、皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記実状に鑑み、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、セラミド類、油剤、及び乳化剤として特定のグリセリン脂肪酸エステルを含有させることによって、苦味がなく、水系、油系に分散してもセラミド類の安定状態を維持することができるセラミド類含有組成物を開発し、上記目標を達した。
【0012】
すなわち、請求項1にかかる発明は、セラミド類、油剤、及び乳化剤として構成脂肪酸の炭素数が12〜22であるグリセリン脂肪酸エステルを含有するセラミド類含有組成物であって、前記セラミド類含有組成物の系全体における前記グリセリン脂肪酸エステルのHLB値が、7〜16であることを特徴とするセラミド類含有組成物である。
【0013】
請求項2にかかる発明は、前記グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の炭素数が16〜22であることを特徴とする請求項1に記載のセラミド類含有組成物である。
【0014】
請求項3にかかる発明は、前記グリセリン脂肪酸エステルの少なくとも1種が、HLB値4〜10であるグリセリン脂肪酸エステル(A)であって、他の少なくとも1種が、HLB値11〜16のグリセリン脂肪酸エステル(B)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミド類含有組成物である。
【0015】
請求項4にかかる発明は、前記HLB値4〜10であるグリセリン脂肪酸エステル(A)が、モノエステルを70質量%以上含有することを特徴とする請求項3に記載のセラミド類含有組成物である。
【0016】
請求項5にかかる発明は、前記油剤の誘電率が、1.7〜4.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセラミド類含有組成物である。
【0017】
請求項6にかかる発明は、前記セラミド類含有組成物全体に対して、前記セラミド類の含有量が、0.0001〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミド類含有組成物である。
【0018】
請求項7にかかる発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミド類含有組成物を含有することを特徴とする飲食料である。
【0019】
請求項8にかかる発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミド類含有組成物を含有することを特徴とする化粧料である。
【0020】
請求項9にかかる発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミド類含有組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
【0021】
請求項10にかかる発明は、水又は水溶性成分含有水溶液と、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミド類含有組成物を含有することを特徴とするセラミド類含有水性製剤である。
【0022】
請求項11にかかる発明は、請求項10に記載のセラミド類含有水性製剤を含有することを特徴とする飲食料である。
【0023】
請求項12にかかる発明は、請求項10に記載のセラミド類含有水性製剤を含有することを特徴とする化粧料である。
【0024】
請求項13にかかる発明は、請求項10に記載のセラミド類含有水性製剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、苦味がなく、水系、油系に希釈・分散してもセラミド類の安定状態を維持することができ、可溶化系・分散系の両方に使用できる汎用性に優れた品質特性を有するセラミド類含有組成物が得られる。
【0026】
また、本発明によれば、上記セラミド類含有組成物を配合することによって、セラミド類を安定に配合した水系可溶化物、油系可溶化物、水系分散物、油系分散物が得られ、苦味等の不快な味を有さない可溶化物、分散物を調製することが可能であり、飲食料、化粧料、皮膚外用剤にセラミド類を容易に配合することができる。
【0027】
また、本発明によれば、長期間保存しても一定の品質が保持されるという品質保証の面でも有用なセラミド類含有水性製剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
<セラミド類含有組成物>
本発明に用いるセラミド類とは、長鎖直鎖アルキル基、長鎖分岐アルキル基、長鎖直鎖アルケニル基、及び長鎖分岐アルケニル基からなる群から選択される少なくとも1種以上の長鎖炭化水素基を分子中に有し、かつ、水酸基を2個以上、アミド基又はアミノ基のいずれか一方又は両方を1個以上有する非イオン系両親媒性物質及びその誘導体である。
ここで、非イオン系両親媒性物質の誘導体とは、水酸基に、ホスファチジルコリン又は糖のいずれか一方又は両方が結合したものである。
【0030】
このようなセラミド類の例として、例えば、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6I、セラミド6II、スフィンゴリン脂質、スフィンゴ糖脂質、フィトスフィンゴ糖脂質、並びに発酵又は化学合成で得られたセラミド類似化合物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。また、セラミド類は市販品を使用することができる。
【0031】
ここで、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6I、セラミド6IIは、スフィンゴシン又はフィトスフィンゴシンの長鎖脂肪酸アマイドである。
また、スフィンゴリン脂質としては、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンのリン脂質誘導体であるスフィンゴミエリン、フィトスフィンゴミエリン等が挙げられ、スフィンゴ糖脂質又はフィトスフィンゴ糖脂質としては、スフィンゴシン又はフィトスフィンゴシンの配糖体であるセレブロシドやガングリオシド、コメ糠スフィンゴ糖脂質等が挙げられる。
そのなかでも、セラミド2、米糠スフィンゴ糖脂質が特に好ましい。
【0032】
本発明のセラミド類含有組成物全体に対して、セラミド類の含有量は、0.0001〜20質量%であるのが好ましく、0.001〜10質量%であるのがより好ましく、0.01〜10質量%であるのが特に好ましく、0.1〜10質量%であるのが最も好ましい。セラミド類の含有量が上記範囲内であれば、セラミド類含有組成物の保存安定性をより向上させることができるからである。
【0033】
本発明で用いられる油剤には、飲食料、化粧料、又は皮膚外用剤に通常配合される油剤を用いることができ、例えば、油脂類、炭化水素油、エステル合成油、シリコーン油、動植物や合成の精油成分、及び脂溶性ビタミン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、食用油の場合、食品添加物等を添加したものであってもよい。
そのなかでも、油脂類、炭化水素油、エステル合成油から選ばれる少なくとも1種以上の油剤が好ましい。
【0034】
油脂類とは、天然動植物油脂類及びこれらの油の水添油、分画油をいい、例えば、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、イワシ油、エゴマ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、鶏油、鯨油、カツオ油、肝油、カカオ脂、小麦胚芽油、ゴマ油、米胚芽油、米糠油、コーン油、サフラワー油、サバ油、サンマ油、シソ油、スクワレン、大豆油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、豚脂、菜種油、ニシン油、馬脂、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、ボラージ油、マカデミアナッツ油、マグロ油、ミツロウ、ミンク油、綿実油、ヤシ油、硬化ヤシ油、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、及びこれらの油の水添油並びに分画油等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
炭化水素油として、例えば、スクワラン、セレシン、パラフィン、流動パラフィン、ワセリン、及びポリブテン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
また、エステル合成油として、例えば、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2-エチルヘキサン酸セチル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジデカン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、パラメトキシケイ皮酸エステル、テトラロジン酸ペンタエリスリット、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、及びジ−p−メトキシケイ皮酸・モノイソオクチル酸グリセリル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
シリコーン油として、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変成シリコーン、アルキル変成シリコーン、及び高級脂肪酸エステル変性シリコーン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0038】
脂溶性ビタミンとして、例えば、トコフェロール及びその誘導体、レチノール及びその誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
また、本発明に使用する油剤は、誘電率が、1.7〜4.0であるのが好ましく、1.9〜3.5であるのがより好ましい。油剤の誘電率がこの範囲内であると、セラミド類含有組成物中のセラミド類の保存安定性がさらに向上するからである。これは、油剤の誘電率がこの範囲内であると、セラミド類含有組成物中にセラミド類の配向した液晶が形成されるためと考えられる。
【0040】
本発明のセラミド類含有組成物全体に対して、油剤の含有量は、1〜98.9質量%であるのが好ましく、10〜90質量%であるのがより好ましく、20〜80質量%であるのが最も好ましい。油剤の含有量がこの範囲内であれば、セラミド類含有組成物中のセラミド類の保存安定性をより向上させることができるからである。
【0041】
本発明では、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステルを用いる。ここで、グリセリン脂肪酸エステルとは、モノグリセリン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルのことをいう。
モノグリセリン脂肪酸エステルとは、1分子のグリセリンに脂肪酸がエステル化したものをいう。ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、平均重合度2以上のポリグリセリンに脂肪酸がエステル化したものをいう。平均重合度2以上のポリグリセリンとして、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン等が挙げられる。
なお、ポリグリセリンの平均重合度の測定方法として、一般に水酸基の末端分析法が使用されている。市販されているポリグリセリン脂肪酸エステル中のポリグリセリンの平均重合度についても、この方法で測定された値が用いられていることが多いが、この分析方法以外の分析方法で測定してもよい。
また、本発明において2種のグリセリン脂肪酸エステルといえば、2種類のモノグリセリン脂肪酸エステル、2種類のポリグリセリン脂肪酸エステル、又は1種類のモノグリセリン脂肪酸エステルと1種類のポリグリセリン脂肪酸エステルのことを示す。
【0042】
グリセリン脂肪酸エステルのエステル結合の数は、例えば1〜12のものが挙げられる。例えば、モノグリセリン脂肪酸エステルの場合、グリセリンの3つの水酸基がすべてエステル化したものは、乳化剤ではなく油脂であるから、これ自身は乳化剤としてのグリセリン脂肪酸エステルには含まれない。ただし、モノグリセリン脂肪酸エステル中に、グリセリンの3つの水酸基がすべてエステル化したものが、数質量%含まれていても、モノグリセリン脂肪酸エステルの乳化剤としての役割には問題はない。実際、市販の乳化剤であるモノグリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンの3つの水酸基がすべてエステル化したもの、すなわち油脂が数質量%含まれているものがある。
同様に、ポリグリセリン脂肪酸エステルについても、ポリグリセリンのすべての水酸基がエステル化したものは、乳化剤ではなく油剤であるから、これ自身は乳化剤としてのグリセリン脂肪酸エステルには含まれない。ただし、ポリグリセリン脂肪酸エステル中に、ポリグリセリンのすべての水酸基がすべてエステル化したものが、数質量%含まれていても、ポリグリセリン脂肪酸エステルの乳化剤としての役割には問題はない。実際、市販されている乳化剤のポリグリセリン脂肪酸エステルには、ポリグリセリンのすべての水酸基がすべてエステル化したものが数質量%含まれているものがある。
【0043】
グリセリン脂肪酸エステルのエステル結合の数は、例えばグリセリンのモノエステルの場合にはモノエステル、グリセリンのジエステルの場合にはジエステルのように記載する。
一般に、市場で流通しているポリグリセリン脂肪酸エステルで、例えばモノエステル、ジエステル、又はトリエステルと表示されたものは、そのポリグリセリン脂肪酸エステルの化学的な構造(それぞれモノエステル100質量%品、ジエステル100質量%品、又はトリエステル質量%品)を直接的に表すとは限らない。
例えば、成分がトリグリセリンジステアリン酸エステルと表示された商品であれば、仕込みモル比として、ステアリン酸/(平均重合度3のトリグリセリン)を約2でエステル化して得られたポリグリセリンの脂肪酸エステルを指していることが多い。したがって、実際にその商品を、液体クロマトグラフィで組成分析例を示すと、モノエステル17%、ジエステル、34.6%、トリエステル、31.0%、テトラエステル13.0%、ペンタエステル2.1%というように、ジエステル以外の成分も含まれるエステルの混合物であることが一般的であり、無差別分布則に近い状態でブロードに分布することが知られている(「ポリグリセリンエステル」、阪本薬品工業株式会社編集、1994年10月3日発行)。
また、他の分析例として、トリグリセリンモノステアリン酸エステルと表示された商品では、モノエステル41.0%、ジエステル、31.2%、トリエステル、10.5%、テトラエステル1.6%、ペンタエステル0.1%という組成が挙げられる(「ポリグリセリンエステル」、阪本薬品工業株式会社編集、1994年10月3日発行)。
【0044】
本発明で使用するポリグリセリン脂肪酸エステルは、一般に市販されているポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることができる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルの合成方法として、脂肪酸を出発とした直接エステル化法や、油脂やメチルエステルでエステル交換する方法が主流であるが、近年は脂肪酸の代わりに脂肪酸無水物や脂肪酸クロライドを出発物質として合成したもの市販されている。本発明に使用するポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法は特に限定せず、どの製造方法を使用してもよい。また、合成したポリグリセリン脂肪酸エステルを、蒸留やカラム分画処理を行うことで、ポリグリセリン脂肪酸エステルの部分エステルを濃縮したものも使用することができる。
【0045】
上記グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数(構成脂肪酸の炭素数)は、12〜22であり、16〜22であるのが好ましく、16〜18であるのがより好ましい。構成脂肪酸の炭素数が12未満のものを使用すると、苦味を生じ好ましくないからであり、また、構成脂肪酸の炭素数が22を超えるものは、入手が困難だからである。
炭素数12〜22の脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びベヘン酸等の飽和又は不飽和の脂肪酸が挙げられる。
【0046】
本発明のセラミド類含有組成物の系全体における構成脂肪酸の炭素数が16〜22であるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値は、7〜16であり、8〜15であるのが好ましい。セラミド類含有組成物の系全体における構成脂肪酸の炭素数が16〜22であるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が7未満であると、セラミド類含有組成物が水系及び油系へ可溶化又は分散化しにくくなるからであり、また、系全体における構成脂肪酸の炭素数が16〜22であるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が16を超えると、セラミド類含有組成物の保存安定性が低下してしまうからである。これは、系全体における構成脂肪酸の炭素数が16〜22であるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が上記範囲を外れてしまうと、セラミド類含有組成物中にセラミド類の配向した液晶が形成されにくくなるためと考えられる。
【0047】
ここで用いるHLB値は、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスをいい、一般的に用いられている計算式を使用して算出することができる。例えば、Griffinによって、提唱され、改良された下記の式(1)(アトラス法)が挙げられる。
HLB=20(1−S/A)・・・・・・(1)
式中、Sはエステルのケン化価、Aは脂肪酸の中和価を表す。
【0048】
また、J.T.Davisにより疎水基と親水基の各原子団の総和として算出した下記の式(2)が挙げられる。
HLB=Σ(親水基)−Σ(疎水基)+7・・・・・・(2)
また、市販品のカタログ等に記載されているHLB値の数値を使用してもよい。
【0049】
本発明のセラミド類含有組成物は、系全体における構成脂肪酸の炭素数が16〜22であるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が上記範囲内になるのであれば、乳化剤として使用する構成脂肪酸の炭素数が16〜22であるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が7〜16を外れるものであっても使用することができる。具体的には、HLB値が3〜17のグリセリン脂肪酸エステルを使用することができる。
【0050】
HLB値が7〜16のグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB値:7.4)、デカグリセリントリステアリン酸エステル(HLB値:9.8)、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB値:11.6)、ペンタグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB値:13.0)、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB値:13.5)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB値:13.9)、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB値:14.0)、デカグリセリンモノイソステアリン酸エステル(HLB値:14.9)等が挙げられる。
【0051】
HLB値が7〜16を外れるグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、デカグリセリンデカオレイン酸エステル(HLB値:3.5)、モノグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB値:4.3)、テトラグリセリントリステアリン酸エステル(HLB値:4.5)、ヘキサグリセリンペンタオレイン酸エステル(HLB値:4.9)、ジグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB値:6.0)、デカグリセリンモノn−デカン酸エステル(HLB値:16.5)等が挙げられる。
【0052】
さらに、2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを使用する場合には、少なくとも1種は、HLB値が4〜10であるグリセリン脂肪酸エステル(A)であって、他の少なくとも1種は、HLB値が11〜16のグリセリン脂肪酸エステル(B)であることが好ましい。
そのなかでも、少なくとも1種のグリセリン脂肪酸エステル(A)のHLB値は4〜10であり、好ましくは4〜9であり、他の少なくとも1種のグリセリン脂肪酸エステル(B)のHLB値は11〜16であり、好ましくは11〜15である。
【0053】
このようなグリセリン脂肪酸エステル(A)としては、モノグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB値:4.3)、テトラグリセリントリステアリン酸エステル(HLB値:4.5)、ヘキサグリセリンペンタオレイン酸エステル(HLB値:4.9)、ジグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB値:6.0)、ジグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB値:7.4)、デカグリセリントリステアリン酸エステル(HLB値:9.8)等が挙げられる。
また、グリセリン脂肪酸エステル(B)としては、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB値:11.6)、ペンタグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB値:13.0)、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB値:13.5)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB値:13.9)、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB値:14.0)、及びデカグリセリンモノイソステアリン酸エステル(HLB値:14.9)等が挙げられる。
【0054】
グリセリン脂肪酸エステル(A)とグリセリン脂肪酸エステル(B)とを組み合わせ、セラミド類含有組成物の系全体における構成脂肪酸の炭素数が16〜22であるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値を上記範囲内とすることで、1種のみのグリセリン脂肪酸エステルを使用した場合や、他のグリセリン脂肪酸エステルとの組み合わせを行った場合よりも、セラミド類含有組成物の水系及び油系への可溶性及び分散性をさらに向上させ、かつ、保存安定性をさらに向上させることができる。
これは、1種のみのグリセリン脂肪酸エステルを使用した場合や、他のグリセリン脂肪酸エステルとの組み合わせを行った場合より、セラミド類含有組成物中に形成されるセラミド類の配向した液晶の構造がより密になるため、セラミド類含有組成物の保存安定性がさらに向上したと考えられる。
【0055】
また、本発明のセラミド類含有組成物全体に対して、構成脂肪酸の炭素数が16〜22であるグリセリン脂肪酸エステルの含有量は1〜98.9質量%であるのが好ましく、10〜90質量%であるのがより好ましく、20〜80質量%であるのが最も好ましい。グリセリン脂肪酸エステルの含有量がこの範囲内であれば、セラミド類含有組成物中のセラミド類の保存安定性をより向上させることができるからである。
【0056】
特に、HLB値4〜10であるグリセリン脂肪酸エステル(A)が、モノエステルを70質量%以上含有するのが好ましく、80〜100質量%含有するのがより好ましく、85〜100質量%含有するのが最も好ましい。HLB値4〜10であるグリセリン脂肪酸エステル(A)が、モノエステルを70質量%以上含有すると、セラミド類含有組成物の水系への可溶性・分散性がさらに向上し、より安定なセラミド類含有水性製剤が得られるからである。
このようなグリセリン脂肪酸エステル(A)として、例えば、ジグリセリンとオレイン酸を脱水縮合によりエステル化したものを、さらに分子蒸留して得られるジグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB値:7.4、モノエステル含有量87質量%)、モノグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB値:5.0、モノエステル含有量98質量%)等が挙げられ、前者のジグリセリンモノオレイン酸エステルがより好適である。
前述したように、一般に流通しているグリセリン脂肪酸エステルは、エステル組成が広く分布しているものが多いが、分子蒸留やカラム分画処理等を行うことにより特定の部分エステル含有量を高くした商品が市販されている。本発明のグリセリン脂肪酸エステル(A)には、モノエステル含有量を高めた市販品を使用することができる。
【0057】
本発明のセラミド類含有組成物には、飲食料、化粧料、及び皮膚外用剤に配合される成分、例えば、乳化剤、水性成分、粉末成分、顔料、保湿成分、増粘剤、安定剤、pH調整剤、酸化防止剤、調味料、香料、酸、塩、糖、経皮吸収促進剤、染料、水溶性高分子、紫外線吸収剤、紫外線防御剤、生理活性成分、溶媒、及び防腐剤等を本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。
【0058】
本発明のセラミド類含有組成物に配合する乳化剤としては、レシチン、サポニン、ショ糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、水性成分としては、エデト酸2ナトリウム等が挙げられ、粉末成分としては、タルク、シリカ、カオリン、及び酸化マグネシウム等が挙げられる。
また、保湿成分としては、ソルビトール、プロピレングリコール、乳酸、及びポリエチレングリコール等が挙げられ、増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、及びカラギーナン等が挙げられ、pH調整剤としては、乳酸−乳酸ナトリウム、及びクエン酸−クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
また、酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン及び亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられ、防腐剤としては、メチルパラベン及び安息香酸ナトリウム等が挙げられ、紫外線防御剤としては、p−アミノ安息香酸及びオクチルシンナメート等が挙げられる。
【0059】
次に、本発明のセラミド類含有組成物の製造方法について説明する。
セラミド類、油剤、及びグリセリン脂肪酸エステルを、90〜130℃で、均一に混合・攪拌することにより製造することができる。
また、2種以上のグリセリン脂肪酸エステルを含有させる場合には、1種のグリセリン脂肪酸エステルと、セラミド類と、油剤とを混合・攪拌した後、他のグリセリン脂肪酸エステルをこれに混合・攪拌して製造することができる。
【0060】
また、セラミド類、油剤、及びグリセリン脂肪酸エステル以外の成分を含有させる場合には、セラミド類等と同時に混合して製造することができ、また、あらかじめセラミド類、油剤、及びグリセリン脂肪酸エステルの混合物を製造しておき、その後、他の成分を添加して製造してもよい。
【0061】
さらに、使用目的に適した油剤に、製造したセラミド類含有組成物を添加し、20〜120℃で、プロペラミキサー等を用いて撹拌することにより、使用目的に適した油剤を多く含有するセラミド類含有組成物を製造することもできる。
【0062】
撹拌には、プロペラミキサー以外にホモミキサー、ディスパミキサー等を使用することができる。また、撹拌時間に特に限定はなく、使用する製造装置にもよるが、小スケールでの製造では5〜20分撹拌するのが好ましく、10リットル以上の大スケールで製造を行う場合には、20分〜2時間撹拌するのが好ましい。
【0063】
<飲食料、化粧料、皮膚外用剤>
本発明のセラミド類含有組成物は、水系、油系のいずれの飲食料(食品又は飲料)、化粧料、及び皮膚外用剤に含有させることができる。
【0064】
食品としては、例えば、パン、ビスケット、キャンディー、ゼリー等のパン・菓子類;ヨーグルト、ハム等の乳肉加工食品;味噌、ソース、タレ、ドレッシング等の調味料;豆腐、麺類等の加工食品;食用油、調理用油等油脂類;マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等の油脂加工食品;粉末飲料、粉末スープ等の粉末食品;カプセル状、タブレット状、粉末状、顆粒状等の健康食品等を挙げることができる。
これらは、原料として、本発明のセラミド類含有組成物を使用する以外は、公知の方法により製造することができる。
【0065】
また、飲料としては、例えば、食塩等のミネラル、酸味料、甘味料、アルコール、ビタミン、フレーバー、及び果汁の中から選択される少なくとも1種以上を含む飲料が挙げられ、具体的には、スポーツ飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、アルコール飲料、ビタミン・ミネラル飲料等のほか、加工乳、豆乳、及び体質改善のための飲料等を挙げることができる。
これらは、原料として、本発明のセラミド類含有組成物を使用する以外は、公知の方法により製造することができる。
【0066】
化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、美容液、パック、化粧油、クレンジングオイル等の基礎化粧品;口紅、リップクリーム、リップグロス、ファンデーション等のメイクアップ化粧品;洗顔料、石けん、入浴剤、ヘアクリーム、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアカラー等のトイレタリー製品、及びアトピー用化粧品等の薬用化粧品等を挙げることができる。
これらは、原料として、本発明のセラミド類含有組成物を使用する以外は、公知の方法により製造することができる。
【0067】
また、皮膚外用剤としては、上記化粧品以外の育毛剤、軟膏剤、ゲル剤、パップ剤等の医薬品、及び医薬部外品等を挙げることができる。
これらは、原料として、本発明のセラミド類含有組成物を使用する以外は、公知の方法により製造することができる。
【0068】
食品全体に対して、セラミド類含有組成物の含有量は、食品の種類によっても異なるが、0.001〜99.99質量%であるのが好ましい。また、飲料全体に対して、セラミド類含有組成物の含有量は、飲料の種類によっても異なるが、0.001〜30質量%であるのが好ましい。
また、化粧料全体に対して、セラミド類含有組成物の含有量は、化粧料の種類によっても異なるが、0.001〜99.99質量%であるのが好ましい。
また、皮膚外用剤全体に対して、セラミド類含有組成物の含有量は、皮膚外用剤の種類によっても異なるが、0.001〜99.99質量%であるのが好ましい。
【0069】
<セラミド類含有水性製剤>
本発明のセラミド類含有水性製剤は、水又は水溶性成分含有水溶液と、上記セラミド類含有組成物を含有するものである。
このセラミド類含有水性製剤の水は、通常の飲料水や精製水、イオン交換水等の水であれば何でも良く、特に限定はしない。
また、水溶性成分とは、例えば、砂糖、食塩、異性化液糖、ブドウ糖、果糖、D-ソルビトール、アスパルテーム、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の水に溶解する成分のことをいい、水溶性成分含有水溶液とは、これらの水溶性成分を含有する水のことをいう。
【0070】
このセラミド類含有水性製剤全体に対して、セラミド類含有組成物の含有量は、0.001〜30質量%であるのが好ましく、0.01〜20質量%であるのがより好ましく、0.1〜10質量%であるのが最も好ましい。
また、セラミド類含有水性製剤全体に対して、水又は水溶性成分含有水溶液の含有量は、70〜99.999質量%であるのが好ましく、80〜99.99質量%であるのがより好ましく、90〜99.9質量%であるのが最も好ましい。
【0071】
本発明のセラミド類含有水性製剤には、飲食料、化粧料、及び皮膚外用剤に配合される成分、例えば、乳化剤、水性成分、粉末成分、顔料、保湿成分、増粘剤、安定剤、pH調整剤、酸化防止剤、調味料、香料、酸、塩、糖、経皮吸収促進剤、染料、水溶性高分子、紫外線吸収剤、紫外線防御剤、生理活性成分、溶媒、及び防腐剤等を本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。
このような乳化剤、水性成分、粉末成分、保湿成分、増粘剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、紫外線防御剤等としては、セラミド類含有組成物で述べたのと同様の成分を使用することができる。
【0072】
次に、本発明のセラミド類含有水性製剤の製造方法について説明する。
本発明のセラミド類含有水性製剤は、水又は水溶性成分含有水溶液に、上記セラミド類含有組成物を添加し、20〜90℃で、プロペラミキサー等を用いて撹拌することにより製造することができる。
【0073】
撹拌には、プロペラミキサー以外にホモミキサー、ディスパミキサー等を使用することができる。また、撹拌時間に特に限定はなく、使用する製造装置にもよるが、小スケールでの製造では5〜20分撹拌するのが好ましく、10リットル以上の大スケールで製造を行う場合には、20分〜2時間撹拌するのが好ましい。
【0074】
<飲食料、化粧料、皮膚外用剤>
本発明のセラミド類含有水性製剤は、水系、油系のいずれの飲食料(食品又は飲料)、化粧料、及び皮膚外用剤に含有させることができる。
このような食品、飲料、化粧料、皮膚外用剤としては、セラミド類含有組成物で述べたのと同様の成分を使用することができる。
また、これらは、原料として、本発明のセラミド類含有水性製剤を使用する以外は、公知の方法により製造することができる。
【0075】
食品全体に対して、セラミド類含有水性製剤の含有量は、食品の種類によっても異なるが、0.001〜99.99質量%であるのが好ましい。また、飲料全体に対して、セラミド類含有水性製剤の含有量は、飲料の種類によっても異なるが、0.001〜30質量%であるのが好ましい。
また、化粧料全体に対して、セラミド類含有水性製剤の含有量は、化粧料の種類によっても異なるが、0.001〜99.99質量%であるのが好ましい。
また、皮膚外用剤全体に対して、セラミド類含有水性製剤の含有量は、皮膚外用剤の種類によっても異なるが、0.001〜99.99質量%であるのが好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、下記実施例に何ら制限されるものではない。
【0077】
<セラミド類含有組成物の製造>
[実施例1〜15]
実施例1〜15のセラミド類含有組成物1〜15を、各々50g製造した。
まず、表1〜3に示す配合量の原料各成分をステンレスビーカーに入れ、100℃で30分間プロペラ攪拌しながら溶解させた。均一溶解した後、室温まで冷却し、セラミド類含有組成物1〜15を得た。
使用した原料はすべて市販品を使用した。なお、セラミド類は、(株)岡安商店製のコメ糠スフィンゴ糖脂質(商品名:RSL−90K)、高砂香料工業(株)製のセラミド2(商品名:Ceramide TIC−001)を使用した。
表1〜3に、各原料の配合量と得られたセラミド類含有組成物1〜15の系全体における構成脂肪酸の炭素数が16〜22であるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値を、各々示す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
また、使用したHLB値4〜10であるグリセリン脂肪酸エステル(A)中のモノエステルの含有量を、まとめて表4に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
[比較例1〜4]
比較例1〜4のセラミド類含有組成物比較品1〜4を、各々50g製造した。
表5に示す配合量の原料各成分を用いて、実施例1〜15と同様にして、セラミド類含有組成物比較品1〜4を得た。
使用した原料はすべて市販品を使用した。なお、コメ糠スフィンゴ糖脂質、ジグリセリンモノステアリン酸エステル、流動パラフィン、大豆油は、実施例1〜15で使用したのと同様のものを使用した。
表5に、各原料の配合量と得られたセラミド類含有組成物比較品1〜4の系全体におけるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値を、各々示す。
【0084】
【表5】

【0085】
<セラミド類含有組成物の評価試験>
得られたセラミド類含有組成物1〜15及びセラミド類含有組成物比較品1〜4について、(1)味覚試験(摂食試験)、(2)保存安定性試験、(3)水系での分散性試験、(4)油系での分散性試験を行った。各評価試験の方法について、次に説明する。
【0086】
(1)味覚試験(摂食試験)
セラミド類含有組成物1〜15及びセラミド類含有組成物比較品1〜4について、各々0.5gを10名のパネラーにそのまま摂食してもらい、表6の評価基準で味覚試験を行った。
【0087】
【表6】

【0088】
10人の結果の平均を四捨五入して採点し、3以下を合格とした。セラミド類含有組成物1〜15の味覚試験の試験結果を、表7〜9に、セラミド類含有組成物比較品1〜4の味覚試験の試験結果を、表10に、各々示す。
【0089】
【表7】

【0090】
【表8】

【0091】
【表9】

【0092】
【表10】

【0093】
表7〜10の味覚試験の試験結果から、セラミド類含有組成物1〜15(実施例1〜15の組成物)、セラミド類含有組成物比較品3(比較例3の組成物)のように構成脂肪酸の炭素数が12以上のグリセリン脂肪酸エステルのみを含有するセラミド類含有組成物では、不快な味を有さず、特に構成脂肪酸の炭素数が16以上のグリセリン脂肪酸エステルのみを含むセラミド類含有組成物1、3〜12、15では味がしないということがわかった。
【0094】
(2)保存安定性試験
セラミド類含有組成物1〜15及びセラミド類含有組成物比較品1〜4を、50℃、40℃、25℃、5℃で1ヶ月及び2ヶ月間保存した。保存後の状態を目視により観察し、表11の評価基準を用いてセラミド類含有組成物の保存安定性を評価した。
【0095】
【表11】

【0096】
セラミド類含有組成物1〜15の保存安定性試験の試験結果を、表12〜14に、セラミド類含有組成物比較品1〜4の保存安定性試験の試験結果を、表15に、各々示す。
【0097】
【表12】

【0098】
【表13】

【0099】
【表14】

【0100】
【表15】

【0101】
また、保存安定性の総合評価として、表16の評価基準を用いて採点し、3以下を合格とした。保存安定性試験の総合評価の結果を、表7〜10に各々示す。
【0102】
【表16】

【0103】
表7〜10、表12〜15の保存安定性試験の結果から、セラミド類含有組成物1〜15のように、セラミド類含有組成物の系全体における構成脂肪酸の炭素数が16〜22であるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が7〜16の範囲内にある場合、保存安定性に優れていることがわかった。また、セラミド類含有組成物比較品1、4のように、この範囲を超えるHLB値を持つグリセリン脂肪酸エステルや他の乳化剤を含有させた場合、保存安定性が経時的に劣化する傾向が見られた。
【0104】
(3)水系での分散性試験
セラミド類含有組成物1〜15及びセラミド類含有組成物比較品1〜4を、各々1質量%溶液となるようにイオン交換水に分散させ、セラミド類含有水性製剤を調製した。分散状態と調製後から1週間の状態を観察し、表17の評価基準を用いて、セラミド類含有組成物の水系での分散性・安定性の評価を行った。水系での分散性試験の試験結果を、表7〜10に各々示す。
【0105】
【表17】

【0106】
(4)油系での分散性試験
セラミド類含有組成物1〜15及びセラミド類含有組成物比較品1〜4を、各々1質量%溶液となるようにカプリル/カプリロイルトリグリセリド(製品名:O.D.O、日清オイリオ(株)製)に分散させ、その分散状態と調製後から1週間の状態を観察し、表18の評価基準を用いて、セラミド類含有組成物の油系での分散性・安定性を評価した。油系での分散性試験の試験結果を、表7〜10に各々示す。
【0107】
【表18】

【0108】
水系、油系への分散性に関しては、表7〜10の結果から、セラミド類含有組成物比較品1のように、セラミド類含有組成物の系全体におけるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が16以上であると、水系への分散性は良いが、油系への分散性が悪くなることがわかった。
また、セラミド類含有組成物比較品3のように、セラミド類含有組成物の系全体におけるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が7未満であると、油系への分散性は良いが、水系への分散性が悪くなることがわかった。
以上の結果から、セラミド類含有組成物の系全体における構成脂肪酸の炭素数が16〜22であるグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が7〜16の範囲を外れることによって、水系への分散性、油系への分散性という2つの機能を同時に満たすことができないのに対し、セラミド類含有組成物1〜15では、HLB値が7〜16の範囲内にあるため、水系への分散性、油系への分散性の両者に優れていることがわかった。
また、他の乳化剤を使ったセラミド類含有組成物比較品2は水系への分散性が悪く、またセラミド類含有組成物比較品1、4は、特に油系への分散性が悪いことがわかった。
【0109】
以上の結果から、本発明のセラミド類含有組成物1〜15は、セラミド類含有組成物比較品1〜4と比較して、不快な味を有さず、優れた保存安定性を持ち、水系、油系への分散性に優れている、という高い機能を併せ持つセラミド類含有組成物であることが確認された。
【0110】
<セラミド類含有飲食料の製造>
[実施例16]
本発明のセラミド類含有組成物1(実施例1の組成物)を用い、セラミド類含有組成物1以外の各成分を80℃で加温溶解させた後、セラミド類含有組成物1を添加して、20分間プロペラで攪拌して、冷却することによってセラミド類含有ゼリー飲料を得た。各原料の配合量を、表19に各々示す。
【0111】
【表19】

【0112】
得られたセラミド類含有ゼリー飲料の味を、セラミド類含有組成物を配合していない比較例6のブランク(対照品)と比較し、評価を行った。
また、調製時の分散性を、分散のし易さと、分離やセラミド類の析出等の有無により、比較例6のブランク(対照品)と比較して評価を行った。味、調製時の分散性の評価結果を、表19に各々示す。
【0113】
[比較例5〜6]
セラミド類含有組成物比較品2(比較例2の組成物)を用いた以外は、実施例16と同様にして、比較例5のセラミド類含有ゼリー飲料を製造し、実施例16と同様の方法で、味、調製時の分散性を評価した。
また、セラミド類含有組成物を含有しないこと以外は、実施例16と同様にして、比較例6のブランク(対照品)のゼリー飲料を製造し、評価に用いた。味、調製時の分散性の評価結果を、表19に示す。
【0114】
表19の結果から、実施例16のセラミド類含有ゼリー飲料は、比較例6のブランク(対照品)と比較すると、これと同等の味で、水に容易に分散し分離等は見られなかった。それに対し、比較例5のセラミド類含有ゼリー飲料は、構成脂肪酸の炭素数が12以下のグリセリン脂肪酸エステルを配合しているために、不快な味が強く、また、分離等の傾向が見られ、飲料としては不適当であった。
【0115】
<セラミド類含有化粧料の製造>
[実施例17]
本発明のセラミド類含有組成物1(実施例1の組成物)を用い、セラミド類含有組成物1以外の各成分を80℃で加温溶解させた後、セラミド類含有組成物1を添加して、20分間プロペラで攪拌して、冷却することによってセラミド類含有化粧料(ベビーオイル)を得た。各原料の配合量を、表20に各々示す。
【0116】
【表20】

【0117】
得られたセラミド類含有化粧料(ベビーオイル)の味を、セラミド類含有組成物を配合していない比較例8のブランク(対照品)と比較し、評価を行った。
また、調製時の安定性を、分散のし易さと、分離やセラミド類の析出等の有無により、比較例8のブランク(対照品)と比較して評価を行った。味、調製時の安定性の評価結果を、表20に各々示す。
【0118】
[比較例7〜8]
セラミド類含有組成物比較品4(比較例4の組成物)を用いた以外は、実施例17と同様にして、比較例7のセラミド類含有化粧料(ベビーオイル)を製造し、実施例17と同様の方法で、味、調製時の安定性を評価した。
また、セラミド類含有組成物を含有しないこと以外は、実施例17と同様にして、比較例8のブランク(対照品)の化粧料(ベビーオイル)を製造し、評価に用いた。味、調製時の安定性の評価結果を、表20に示す。
【0119】
表20の結果から、実施例17のセラミド類含有化粧料(ベビーオイル)は、比較例8のブランク(対照品)と比較すると、これと同等の味で、油に容易に分散し分離等は見られなかった。それに対し、比較例7のセラミド類含有化粧料(ベビーオイル)は、使用している他の乳化剤の影響で不快な味が強く、また、油系への分散性・安定性が悪く、ベビーオイルとしては不適当であった。
【0120】
以上の結果から、本発明のセラミド類含有組成物を含有するセラミド類含有飲食料及びセラミド類含有化粧料は、不快な味を有さず、水系、油系への分散性・安定性に優れていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のセラミド類含有組成物は、苦味等の不快な味を有さず、水系、油系への分散性・安定性が優れており、広く飲食品、化粧品、医薬品の分野に使用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミド類、油剤、及び乳化剤として構成脂肪酸の炭素数が12〜22であるグリセリン脂肪酸エステルを含有するセラミド類含有組成物であって、
前記セラミド類含有組成物の系全体における前記グリセリン脂肪酸エステルのHLB値が、7〜16であることを特徴とするセラミド類含有組成物。
【請求項2】
前記グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の炭素数が16〜22であることを特徴とする請求項1に記載のセラミド類含有組成物。
【請求項3】
前記グリセリン脂肪酸エステルの少なくとも1種が、HLB値4〜10であるグリセリン脂肪酸エステル(A)であって、
他の少なくとも1種が、HLB値11〜16のグリセリン脂肪酸エステル(B)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミド類含有組成物。
【請求項4】
前記HLB値4〜10であるグリセリン脂肪酸エステル(A)が、モノエステルを70質量%以上含有することを特徴とする請求項3に記載のセラミド類含有組成物。
【請求項5】
前記油剤の誘電率が、1.7〜4.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセラミド類含有組成物。
【請求項6】
前記セラミド類含有組成物全体に対して、前記セラミド類の含有量が、0.0001〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミド類含有組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミド類含有組成物を含有することを特徴とする飲食料。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミド類含有組成物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミド類含有組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項10】
水又は水溶性成分含有水溶液と、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミド類含有組成物を含有することを特徴とするセラミド類含有水性製剤。
【請求項11】
請求項10に記載のセラミド類含有水性製剤を含有することを特徴とする飲食料。
【請求項12】
請求項10に記載のセラミド類含有水性製剤を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項13】
請求項10に記載のセラミド類含有水性製剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。



【公開番号】特開2006−45061(P2006−45061A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223990(P2004−223990)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】