説明

セリウム錯体及び該セリウム錯体を含む有機電子素子

【課題】発光色が緑色〜黄色の範囲の領域にあり、かつ、酸素耐久性が優れたセリウム錯体の提供。
【解決手段】下式1で表されるセリウム錯体。


[式中、Mはセリウムイオン;Lは下式2:


で表される配位子を表し、Xは対イオン;L’は単座又は2座の配位子;aは1又は2;bは0〜5の整数;cは0〜5の整数である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリウム錯体及び該セリウム錯体を含む有機電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子の発光層に用いられる発光材料として、トリスピラゾリルホウ酸塩アニオンを用いた希土類錯体が知られている。希土類錯体のうち特にセリウム錯体では、紫外光で励起した場合、通常、青色光を発光することが知られている(特許文献1、非特許文献1参照)。
発光素子を用いたフルカラーディスプレイ装置を実現するためには、青色光を発光する発光材料の他に、例えば、緑色光を発光する材料が求められている。また、発光素子を用いた照明装置を実現するためには、青色光を発光する発光材料の他に、例えば、黄色光を発光する発光材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4083243号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sung-Ying Liu, et al., Inorganic Chemistry (1996), 35, 76-81.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、発光素子を用いたフルカラーディスプレイ用途に有用な緑色光を発光する発光材料、又は発光素子を用いた照明用途に有用な黄色光を発光する発光材料は、酸素耐久性が十分ではなかった。
そこで、本発明の目的は、紫外光で励起した場合に、発光色が緑色〜黄色の範囲の領域にあり、かつ、酸素耐久性に優れたセリウム錯体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記〔1〕〜〔7〕を提供する。
〔1〕 下記組成式(1)で表されるセリウム錯体。
【化1】

[組成式(1)中、Mはセリウムイオンを表し、Lは下記式(2):
【化2】

(式(2)中、Aは炭素原子又はホウ素原子を表す。Rは、水素原子、又は置換基を表す。環Aは、窒素原子を2つ含む5員環、又は窒素原子を2つ含む5員環と芳香族炭化水素環とが縮合した環である。環Dは窒素原子を1つ含む5員環、窒素原子を1つ含む5員環と芳香族炭化水素環とが縮合した環、窒素原子を1つ含む6員環、又は、窒素原子を1つ含む6員環と芳香族炭化水素環とが縮合した環である。環A及び環Dは、それぞれ独立に、窒素原子の他にヘテロ原子を含んでいてもよい。環A及び環Dは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。)
で表される配位子を表し、Xは対イオンを表し、L’は単座又は2座の配位子を表し、aは、1又は2であり、bは、0〜5の整数であり、cは、0〜5の整数である。L、X及びL’の各々は、複数個ある場合、複数個あるLは、同一であっても異なっていてもよく、複数個あるXは、同一であっても異なっていてもよく、複数個あるL’は、同一であっても異なっていてもよい。]
〔2〕 Lが、下記式(3)で表される配位子である、〔1〕に記載のセリウム錯体。
【化3】

(式(3)中、A1、R及び環Dは、前記と同じ意味である。R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基であり、R及びRの組み合わせ、R及びRの組み合わせ、R及びRの組み合わせは、各々、結合して環を形成していてもよい。)
〔3〕 Lが、下記式(4)で表される配位子である、〔1〕又は〔2〕に記載のセリウム錯体。
【化4】

(式(4)中、A1、R、R、R、R、R、R、及びRは、前記と同じ意味である。R及びRの組み合わせ、R及びRの組み合わせ、R及びRの組み合わせは、各々、結合して環を形成していてもよい。R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、及びR21は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基であり、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、及びR21のうちの隣接する炭素原子に結合する2つずつの組み合わせは、各々、結合して環を形成していてもよい。)
〔4〕 Lが、Aがホウ素原子である配位子であり、組成式(1)において、aが2であり、bが1であり、及びcが0である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載のセリウム錯体。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載のセリウム錯体、及び電荷輸送材料を含んでなる組成物。
〔6〕 〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載のセリウム錯体を含んでなる有機膜。
〔7〕 〔6〕に記載の有機膜を含んでなる有機電子素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明のセリウム錯体は、紫外光励起で励起した場合に、発光色が緑色〜黄色(即ち、最大発光波長が490〜590nmである。)の範囲の領域にあり、かつ、酸素耐久性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のセリウム錯体について、説明する。
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、その直後に記載された化合物又は基を構成する水素原子が、無置換である場合、及び、該水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の両方を意味する。
【0010】
本明細書において、「置換基」としては、例えば、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミド基、イミド基、置換基を有していてもよいシリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルコキシホスホリル基、置換基を有していてもよいホスフィノ基、置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基、置換基を有していてもよいアミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、亜リン酸基、ニトロ基、−NH-で表される基、−O-で表される基、−S-で表される基、−COO-で表される基、−SO3-で表される基、−HPO4-で表される基、−H2PO3-で表される基が挙げられ、好ましくは、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいシリル基であり、より好ましくは、ヒドロカルビル基である。
【0011】
Lで表される配位子が有し得る置換基が、炭素原子を含み、かつ、芳香環を含まない基である場合には、置換基の炭素原子数は、通常、1〜30であり、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10である。
【0012】
Lで表される配位子が有し得る置換基が、炭素原子を含み、かつ、芳香環を含む基である場合には、置換基の炭素原子数は、通常、2〜36であり、好ましくは3〜26であり、より好ましくは6〜16である。
【0013】
Lで表される配位子が有し得る置換基であるヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、アンモニウムエチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、及び、コロニル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、及び、2−ナフチル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、ビニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、及び、4−トリル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、及び、ビニル基である。
【0014】
Lで表される配位子が有し得る置換基であるヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、アンモニウムエトキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジロキシ基、α,α−ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、メトキシフェノキシ基、オクチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、及び、ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、及び、3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、及び、1−プロピルオキシ基である。
【0015】
Lで表される配位子が有し得る置換基であるヒドロカルビルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、1−アダマンチルチオ基、2−アダマンチルチオ基、ノルボルニルチオ基、アンモニウムエチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、ベンジルチオ基、α,α−ジメチルベンジルチオ基、2−フェネチルチオ基、1−フェネチルチオ基、フェニルチオ基、メトキシフェニルチオ基、オクチルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、及びペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられ、好ましくは、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、及び、3,7−ジメチルオクチルチオ基であり、より好ましくは、メチルチオ基、エチルチオ基、及び、1−プロピルチオ基である。
【0016】
Lで表される配位子が有し得る置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、フッ素原子、及び、塩素原子である。
【0017】
Lで表される配位子が有し得る置換基であるアミド基としては、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられ、好ましくは、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、及び、ベンズアミド基である。
【0018】
Lで表される配位子が有し得る置換基であるイミド基は、イミドからその窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる基である。イミド基としては、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基、及び、ベンゾフェノンイミド基が挙げられ、好ましくは、N−フタルイミド基である。
【0019】
置換シリル基は、シリル基における水素原子の1〜3個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されているシリル基である。
Lで表される配位子が有し得る置換基であって、更に置換基を有していてもよいシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、又はジメチルフェニルシリル基であり、好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、及び、トリプロピルシリル基である。
【0020】
Lで表される配位子が有し得る置換基であるアシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられ、好ましくは、アセチル基、及び、ベンゾイル基である。
【0021】
Lで表される配位子が有し得る置換基であるアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、及び、ドデシルオキシカルボニル基が挙げられ、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、及び、イソブトキシカルボニル基である。
【0022】
Lで表される配位子が有し得る置換基であるアルコキシスルホニル基としては、例えば、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、プロピルオキシスルホニル基、イソプロピルオキシスルホニル基、ブトキシスルホニル基、イソブトキシスルホニル基、sec−ブトキシスルホニル基、tert−ブトキシスルホニル基、ペンチルオキシスルホニル基、ヘキシルオキシスルホニル基、ヘプチルオキシスルホニル基、オクチルオキシスルホニル基、2−エチルヘキシルオキシスルホニル基、ノニルオキシスルホニル基、デシルオキシスルホニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシスルホニル基、及び、ドデシルオキシスルホニル基が挙げられ、好ましくは、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、プロピルオキシスルホニル基、イソプロピルオキシスルホニル基、ブトキシスルホニル基、及び、イソブトキシスルホニル基である。
【0023】
Lで表される配位子が有し得る置換基であるアルコキシホスホリル基としては、例えば、ジメトキシホスホリル基、ジエトキシホスホリル基、ジプロピルオキシホスホリル基、ジイソプロピルオキシホスホリル基、ジブトキシホスホリル基、及び、エチレンジオキシホスホリル基が挙げられ、好ましくは、ジメトキシホスホリル基である。
【0024】
置換ホスフィノ基は、ホスフィノ基における水素原子の1個又は2個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1個又は2個の基で置換されているホスフィノ基である。
Lで表される配位子が有し得る置換基であって、更に置換基を有していてもよいホスフィノ基としては、例えば、フェニルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルホスフィノ基、ジメチルホスフィノ基、エチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、プロピルホスフィノ基、ジプロピルホスフィノ基、ブチルホスフィノ基、及び、ジブチルホスフィノ基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルホスフィノ基、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジプロピルホスフィノ基、及び、ジブチルホスフィノ基である。
【0025】
置換ホスフィンオキシド基は、ホスフィンオキシド基における水素原子の1個又は2個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1個又は2個の基で置換されているホスフィンオキシド基である。
Lで表される配位子が有し得る置換基であって、更に置換基を有していてもよいホスフィンオキシド基としては、例えば、フェニルホスフィンオキシド基、ジフェニルホスフィンオキシド基、メチルホスフィンオキシド基、ジメチルホスフィンオキシド基、エチルホスフィンオキシド基、ジエチルホスフィンオキシド基、プロピルホスフィンオキシド基、ジプロピルホスフィンオキシド基、ブチルホスフィンオキシド基、及び、ジブチルホスフィンオキシド基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルホスフィンオキシド基、ジメチルホスフィンオキシド基、ジエチルホスフィンオキシド基、ジプロピルホスフィンオキシド基、及び、ジブチルホスフィンオキシド基である。
【0026】
置換アミノ基は、アミノ基における水素原子の1〜2個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1〜2個の基で置換されているアミノ基である。
Lで表される配位子が有し得る置換基であって、更に置換基を有していてもよいアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、及び、ジブチルアミノ基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、及び、ジブチルアミノ基である。
【0027】
Lで表される配位子が有し得る置換基が、−NH-で表される基、−O-で表される基、−S-で表される基、−COO-で表される基、−SO3-で表される基、−HPO4-で表される基、又は、−H2PO3-で表される基である場合には、組成式(1)で表されるセリウム錯体は、対イオンを有していてもよい。対イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、及び、アンモニウムイオンが挙げられ、好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及び、アンモニウムイオンである。
【0028】
<セリウム錯体>
本発明のセリウム錯体は、下記組成式(1)で表されるセリウム錯体である。
【0029】
【化5】

【0030】
組成式(1)中、Mはセリウムイオンを表す。Xは、対イオンを表す。L’は、単座又は2座の配位子を表す。aは、1又は2であり、bは、0〜5の整数であり、cは、0〜5の整数である。L、X及びL’の各々は、複数個ある場合、複数個あるLは、同一であっても異なっていてもよく、複数個あるXは、同一であっても異なっていてもよく、複数個あるL’は、同一であっても異なっていてもよい。
Lは、下記式(2)で表される配位子を表す。
【0031】
【化6】

【0032】
式(2)中、Aは炭素原子又はホウ素原子を表す。Rは、水素原子、又は置換基を表す。環Aは、窒素原子を2つ含む5員環、又は窒素原子を2つ含む5員環と芳香族炭化水素環とが縮合した環である。環Dは窒素原子を1つ含む5員環、窒素原子を1つ含む5員環と芳香族炭化水素環とが縮合した環、窒素原子を1つ含む6員環、又は、窒素原子を1つ含む6員環と芳香族炭化水素環とが縮合した環である。環A及び環Dは、それぞれ独立に、窒素原子の他にヘテロ原子を含んでいてもよい。環A及び環Dは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。
【0033】
組成式(1)のセリウム錯体において、Mで表されるセリウムイオンの価数は、発光強度が優れるので、3価であることが好ましい。
【0034】
組成式(1)中、Lは、上記式(2)で表される配位子を表す。A1は炭素原子又はホウ素原子を表し、セリウムイオンと強い結合を形成できるので、ホウ素原子であることが好ましい。
【0035】
1がホウ素原子である場合、あるいは、Lで表される配位子が有し得る置換基として、−NH-で表される基、−O-で表される基、−S-で表される基、−COO-で表される基、−SO3-で表される基、−HPO4-で表される基、又は、−H2PO3-で表される基を持つ場合、Lは、セリウムイオンの対アニオンとなる。
【0036】
上記式(2)中、環Aは、窒素原子を2つ含む5員環、又は窒素原子を2つ含む5員環と芳香族炭化水素環とが縮合した環を表す。環Aは、窒素原子の他にヘテロ原子を含んでいてもよい。環Aは、置換基を有していてもよい。環Aを構成し得る5員環としては、ピラゾール環、1,3,4−オキサジアゾール環が挙げられ、これらと芳香族炭化水素環とが縮合した環としては、ベンズピラゾール環が挙げられる。環Aとして好ましくは、置換基を有していてもよいピラゾール環である。環Aは置換基を有していてもよいが、置換基を有しないことが好ましい。
【0037】
環Aは、上記式(2)のAと、窒素原子に隣接した炭素原子又は窒素原子において共有結合で結合していることが好ましい。環Aがピラゾール環である場合、ピラゾール環の1位において、また、環Aが1,3,4−オキサジアゾール環である場合、1,3,4−オキサジアゾール環の2位において、上記式(2)のAと共有結合で結合していることが好ましい。環AとAとの結合をこのようにすることにより、セリウムイオンへの配位が起こり易い位置に窒素原子を位置させることができる。
環Aは、上記式(2)の環Dと、窒素原子に隣接した炭素原子において共有結合で結合していることが好ましく、環Aがピラゾール環である場合、ピラゾール環の3位において、また、環Aが1,3,4−オキサジアゾール環である場合、1,3,4−オキサジアゾール環の5位において、上記式(2)の環Dと共有結合で結合していることが好ましい。
【0038】
上記式(2)中、環Dは、窒素原子を1つ含む5員環、窒素原子を1つ含む5員環と芳香族炭化水素環とが縮合した環、窒素原子を1つ含む6員環、又は、窒素原子を1つ含む6員環と芳香族炭化水素環とが縮合した環を表す。環Dは、窒素原子の他にヘテロ原子を含んでいてもよい。環Dは、置換基を有していてもよい。環Dを構成し得る5員環としては、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環が挙げられ、環Dを構成し得る6員環としては、ピリジン環が挙げられ、これらの環と芳香族炭化水素環とが縮合した環Dを構成し得る環としては、ベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、キノリン環、イソキノリン環が挙げられる。セリウムイオンへの配位が起こり易い位置に窒素原子が位置するので、環Dとして好ましくは、イミダゾール環、オキサゾール環、ピリジン環、イソキノリン環であり、より好ましくは、ピリジン環、イソキノリン環であり、更に好ましくは、ピリジン環である。
【0039】
環Dは、セリウムイオンへの配位が起こり易い位置に窒素原子が位置するので、上記式(2)中の環Aと、窒素原子に隣接した炭素原子において共有結合していることが好ましく、環Dがイミダゾール環、オキサゾール環又はチアゾール環である場合、これらの環の2位又は4位において、環Dがピリジン環である場合、ピリジン環の2位又は4位において、環Dがベンズイミダゾール環、ベンズオキサゾール環又はベンズチアゾール環である場合、これらの環の2位において、環Dがキノリン環である場合、キノリン環の2位において、また、環Dがイソキノリン環である場合、イソキノリン環の1位において、環Aと共有結合で結合していることが好ましい。
【0040】
本発明のセリウム錯体において、セリウムイオンへの配位が起こり易い位置に窒素原子が位置するので、Lは、下記式(3)で表される配位子であることが好ましい。
【0041】
【化7】

【0042】
式(3)中、A、R及び環Dは、前記と同じ意味である。
【0043】
環Dの例、好ましい例は、式(2)について説明した例、好ましい例と同じである。
【0044】
上記式(3)中、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基であり、R及びRの組み合わせ、R及びRの組み合わせ、R及びRの組み合わせは、各々、環を形成してもよい。
【0045】
組成式(1)で表されるセリウム錯体の例としては、Lが下記式(4)で表される配位子であるセリウム錯体が挙げられる。
【0046】
【化8】

【0047】
式(4)中、A1、R、R、R、R、R、R、及びRは、前記と同じ意味である。R及びRの組み合わせ、R及びRの組み合わせ、R及びRの組み合わせは、各々、結合して環を形成していてもよい。R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、及びR21は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基であり、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、及びR21のうちの隣接する炭素原子に結合する2つずつの組み合わせは、各々、結合して環を形成していてもよい。
【0048】
上記Lで表される配位子としては、例えば、下記式(A−1)〜(A−7)で表される配位子が挙げられ、セリウムイオンへの配位が起こり易い位置に窒素原子が位置するので、下記式(A−2)〜(A−7)で表される配位子が好ましく、下記式(A−4)〜(A−7)で表される配位子がより好ましく、下記式(A−5)〜(A−7)で表される配位子が更に好ましい。
【0049】
【化9】

【0050】
本発明のセリウム錯体において、発光波長をより長波長化することができるので、上記組成式(1)中の環Dは、配位原子を含むことが好ましい。また、上記組成式(1)中のLは、6座以上の配位子とすることが好ましく、Lは窒素原子が配位する配座数が6であることがより好ましい。
【0051】
上記組成式(1)中、Xは、セリウムイオンとLとを合計した電荷を中和する対イオンであり、通常アニオンであるが、Lが2価以上のマイナス電荷を有している場合、カチオンであってもよい。つまり、組成式(1)全体の電荷の総和がゼロになればよい。
Xで表されるカチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオンが挙げられる。
Xで表されるアニオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンが挙げられる。
Xで表される対イオンとしては、好ましくは、フッ化物イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、及び、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンであり、より好ましくは、塩化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、及び、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンであり、更に好ましくは、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、及び、テトラフェニルボレートイオンであり、特に好ましくは、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、及び、テトラフェニルボレートイオンである。
【0052】
上記組成式(1)中、L’で表される単座又は2座の配位子としては、通常、酸素原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む原子団であり、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、トリアリールホスフィンオキシド、トリアルキルホスフィンオキシド、ピリジン、キノリン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、ビピリジン、ビキノリン、ターピリジン、フェナントロリン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、トリアルキルアミンが挙げられる。
【0053】
上記組成式(1)中、aは1又は2であり、好ましくは2である。bは0〜5の整数であり、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは1又は3である。cは0〜5の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0である。
【0054】
上記組成式(1)中、a、b及びcの組み合わせは、安定な錯体構造を形成するので、Aが炭素原子である場合には、aが2であり、bが3であり、かつ、cが0であることが好ましく、Aがホウ素原子である場合には、aが2であり、bが1であり、かつ、cが0であることが好ましい。
【0055】
本発明のセリウム錯体としては、例えば、下記式(B−1)〜(B−7)で表されるセリウム錯体が挙げられ、発光強度が優れるので、下記式(B−2)〜(B−7)で表されるセリウム錯体が好ましく、下記式(B−4)〜(B−7)で表されるセリウム錯体がより好ましく、下記式(B−5)〜(B−7)で表されるセリウム錯体が更に好ましい。
【0056】
【化10】

【0057】
<セリウム錯体の製造方法>
本発明のセリウム錯体は、錯体合成に用いられる公知の方法にて製造できる。例えば、上記Lで表される配位子となる化合物、及び、セリウム塩を、溶媒中、室温下で混合させ、その結果、得られた沈殿を回収することにより、或いは、反応液から溶媒を留去することにより、製造することができる。
【0058】
上記組成式(1)中のMで表されるセリウムイオンの材料となり得るセリウム塩としては、例えば、塩化セリウム(III)、硝酸セリウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸セリウム(III)が挙げられる。
【0059】
上記混合の際に用いられる溶媒としては、緩衝液等の水系溶媒、及び、有機溶媒が挙げられるが、有機溶媒が好ましい。なお、溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記混合の際に用いられる有機溶媒としては、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられ、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン及びアセトニトリルが好ましい。
【0061】
組成式(1)中、Xで表される対イオンは、イオン交換クロマトグラフィ、塩析法等を用いることで、任意の対イオンへと交換可能である。塩析法においては、例えば、交換したいイオンの塩の飽和溶液を、上記の方法等にて得られたセリウム錯体の溶液に添加し、生じた沈殿を回収することで目的の対イオンを持った錯体を得ることができる。
【0062】
<組成物>
本発明のセリウム錯体は、単独で用いてもよいし、その他の成分と混合して組成物として用いてもよい。組成物としては、セリウム錯体、及び電荷輸送材料を含んでなる組成物が挙げられる。この組成物は、有機電子素子を構成する有機膜の材料として用いることができ、25℃において、液状又は固形状である。
【0063】
組成物を構成し得る上記電荷輸送材料とは、有機エレクトロルミネッセンス素子等の有機電子素子において電荷の運搬を担う材料をいう。電荷輸送材料は、具体的には、正孔輸送材料及び電子輸送材料である。電荷輸送材料は、例えば、オリゴマー等の低分子有機化合物及び高分子有機化合物(高分子化合物)に分類できる。低分子有機化合物及び高分子有機化合物は、いずれも共役系であることが好ましい。
【0064】
組成物を構成し得る上記正孔輸送材料としては、例えば、フルオレン及びその誘導体、芳香族アミン及びその誘導体、カルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体が挙げられ、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送材料として公知の材料を使用することができる。
【0065】
組成物を構成し得る上記電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアジン誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、並びに、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体といった、有機エレクトロルミネッセンス素子の電子輸送材料として公知の材料を使用することができる。
【0066】
本発明の組成物において、上記セリウム錯体の含有量は、発光強度が優れるので、電荷輸送材料100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜200質量部であり、より好ましくは0.1質量部〜50質量部である。
【0067】
本発明の組成物において、上記セリウム錯体及び上記電荷輸送材料は、各々、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0068】
<有機膜>
本発明の有機膜は、上記セリウム錯体を含んでなる。本発明の有機膜は、例えば、上記セリウム錯体と溶媒とを混合してなる溶液をインクとして用いて、インクジェット法等の塗布法により、塗布成膜することができる。
【0069】
本発明の有機膜は、有機電子素子において、例えば、発光性膜(発光層)、導電性膜(電極)、及び、有機半導体膜(活性層)として使用できる。
【0070】
本発明の有機膜の厚さは、好ましくは1〜500nmであり、より好ましくは5〜200nmである。
【0071】
<有機電子素子>
本発明の有機電子素子は、上記セリウム錯体を含んでなる。本発明の有機電子素子としては、例えば、上記セリウム錯体を含む機能層を備える発光素子、スイッチング素子、光電変換素子が挙げられる。
【0072】
[発光素子]
発光素子は、通常、陽極及び陰極からなる電極間に、発光層を有する。発光層は、発光する機能を有する層である。
発光素子は、発光効率及び耐久性を向上させるために、発光層以外の層を含んでいてもよい。発光層以外の層としては、例えば、電荷輸送層、電荷阻止層、電荷注入層及びバッファ層が挙げられる。なお、各層は、1層からなるものでも2層以上からなるものでもよい。
【0073】
発光素子を構成し得る正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層であり、発光素子を構成し得る電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する層であり、電子輸送層と正孔輸送層とを総称して電荷輸送層という。
発光素子を構成し得る電荷阻止層は、正孔又は電子を発光層に閉じ込める機能を有する層であり、その中でも、電子を輸送し正孔を閉じ込める機能を有する層を正孔阻止層といい、正孔を輸送し電子を閉じ込める機能を有する層を電子阻止層という。
【0074】
発光素子を構成し得るバッファ層としては、例えば、陽極に隣接して導電性高分子化合物を含む層が挙げられる。
【0075】
発光素子の構造としては、以下のa)〜q)の構造が挙げられる。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/発光層/正孔阻止層/陰極
e)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
f)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
g)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
i)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
j)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
l)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
o)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
q)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
ここで、記号「/」は、これを挟んで両側に記載された各層が隣接して積層されていることを示す。なお、発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ独立に2層以上用いてもよい。
【0076】
電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、発光素子の駆動電圧を下げる効果を有するものは、一般に電荷注入層と呼ばれる。電荷注入層を備える発光素子としては、例えば、陰極に隣接して電荷注入層(電子注入層)を備える発光素子、及び、陽極に隣接して電荷注入層(正孔注入層)を備える発光素子が挙げられる。
【0077】
発光素子では、電極との密着性向上のために、又は、電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して絶縁層を設けてもよい。上記絶縁層に用いる材料としては、例えば、金属フッ化物、金属酸化物、及び、有機絶縁材料が挙げられる。絶縁層の厚さは、通常、2nm以下である。絶縁層を備える発光素子としては、例えば、陰極に隣接して上記絶縁層を備える発光素子、及び、陽極に隣接して上記絶縁層を備える発光素子が挙げられる。
【0078】
発光素子を構成する発光層は、上記セリウム錯体、又は、上記組成物を含む層である。この発光層には、その他の発光材料を含んでいてもよい。その他の発光材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系色素、キサンテン系色素、クマリン系色素、及びシアニン系色素等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、並びに、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体が挙げられる。
【0079】
発光素子を構成し得る正孔輸送層に用いる材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、並びに、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体が挙げられる。
【0080】
正孔輸送層の厚さは、発光効率又は光電効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
【0081】
発光素子を構成し得る電子輸送層に用いる材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアジン誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びに、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0082】
電子輸送層の厚さは、発光効率又は光電効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
【0083】
上記各層は隣接する層又は基板上に形成される。上記各層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等)、スパッタリング法、LB法、分子積層法、塗布法が挙げられ、製造プロセスをより簡便にできるので、塗布法が好ましい。
【0084】
上記各層を形成するために用い得る塗布法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、及び、インクジェット法が挙げられ、ロールコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷法、及び、インクジェット法が好ましい。
【0085】
本発明の発光素子は、通常、基板を用いて形成される。基板の一方の面には電極が形成され、他方の面に発光素子の各層を形成する。上記基板としては、例えば、ガラス、プラスチック、シリコン等の材質の基板、高分子フィルムの基板が挙げられる。
【0086】
本発明の発光素子に含まれる陽極及び陰極は、通常、透明又は半透明のものであるが、陽極が透明又は半透明のものであることが好ましい。
【0087】
発光素子を構成し得る陽極に用いる材料としては、例えば、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜、有機の透明導電膜が挙げられ、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)等、アンチモンスズ酸化物、NESA、金、白金、銀、銅、ポリアニリン及びその誘導体、並びに、ポリアミノフェン及びその誘導体である。
【0088】
陽極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及び、メッキ法が挙げられる。
【0089】
陽極の厚さは、光の透過性と電気伝導度とを考慮して設定され、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、より好ましくは50nm〜500nmである。
【0090】
発光素子を構成し得る陰極に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、これらの金属からなる群から選ばれる2つ以上の金属を含む合金、これらの金属からなる群から選ばれる1個以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、及び錫からなる群から選ばれる1個以上の金属との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物が挙げられる。
【0091】
陰極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及び、金属薄膜を熱圧着するラミネート法が挙げられる。また、2層以上の積層構造の陰極を形成してもよい。
【0092】
陰極の厚さは、電気伝導度と耐久性とを考慮して設定され、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、より好ましくは50nm〜500nmである。
【0093】
本発明の発光素子では、素子を外部から保護して長期安定的に使用するために、陰極形成後、発光素子を保護する保護層又は保護カバーを設けてもよい。
【0094】
発光素子を構成し得る電荷注入層としては、例えば、導電性高分子を含む層、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、及び、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層が挙げられる。
【0095】
電荷注入層に用いる材料としては、例えば、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン、並びに、カーボンが挙げられる。
【0096】
電荷注入層の厚さは、通常、1nm〜100nmであり、好ましくは1nm〜50nmであり、より好ましくは1nm〜10nmである。
【0097】
発光素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置のバックライト、照明等に有用である。
【0098】
[光電変換素子]
光電変換素子は、通常、陽極、陰極、及び、電荷分離層を有する。電荷分離層は、陽極と陰極との間に位置する。光電変換素子は、陽極と陰極との間に、電荷分離層以外の任意の層を有していてもよい。上記セリウム錯体又は上記組成物を含む層は、電荷分離層に含まれていてもよいし、電荷分離層以外の任意の層に含まれていてもよい。
【0099】
光電変換素子を構成し得る陰極及び陽極の材料及び例は、発光素子の項で説明した陰極及び陽極の材料及び例と同じである。陽極及びは陰極の形状は、限定されず、櫛型であってもよい。陽極及び陰極は、透明又は半透明のいずれでもよい。
【0100】
光電変換素子を構成し得る電荷分離層には、通常、電子供与性化合物と電子受容性化合物とが含まれている。
光電変換素子を構成し得る電子供与性化合物としては、例えば、共役高分子化合物が挙げられる。共役高分子化合物としては、例えば、チオフェンジイル基を含む共役高分子化合物及びフルオレンジイル基を含む共役高分子化合物が挙げられる。
光電変換素子を構成し得る電子受容性化合物としては、例えば、フラーレン及びフラーレン誘導体が挙げられる。
【0101】
光電変換素子は、通常、基板上に形成される。基板の例及び好ましい例は、発光素子の例及び好ましい例と同じである。
【0102】
光電変換素子は、太陽電池であることが好ましい。
【実施例】
【0103】
以下、本発明について、実施例を用いて詳細に説明する。
【0104】
発光スペクトルは、励起波長を380nmとして、蛍光分光光度計(日本分光株式会社製、商品名:FP−6500)で測定した。
【0105】
<合成例1>
<配位子(A−7)の合成例>
上記式(A−7)で表される配位子を、Inorganic Chemistry, 36, 10-18 (1997)の記載に従って合成した。具体的には、式(A−7)で表される配位子は、3−(2−ピリジル)−ピラゾール、及び、水素化ホウ素カリウムを、200℃にて1時間加熱し、放冷後トルエンにて固体を洗浄することにより得た。得られた配位子は、紫外光励起(365nm)により、わずかに水色発光を示すのみでほとんど発光しなかった。
【0106】
<実施例1>
<セリウム錯体(B−6)の合成例>
アルゴン雰囲気下、上記式(A−7)で表される配位子(680mg、1.53mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸セリウム(III)(450mg、0.766mmol)をシュレンク管に加えた後、アルゴン雰囲気下、乾燥テトラヒドロフラン(50mL)を添加し、室温下で2時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧下でエバポレーターにより留去した後、残渣を乾燥ジクロロメタンに溶解させ、不溶成分をろ過して除いた。ジエチルエーテルと共に再結晶し、紫外光励起(365nm)にて緑色に発光する結晶を回収し、上記式(B−6)で表されるセリウム錯体(661mg)を得た。収率は73.4%であった。
【0107】
元素分析
Found(%) C: 46.56, H: 3.33, N: 21.27, S: 2.75, B: 2.05, Calcd for C49H38B2CeF3N18O3S (%) C: 49.97, H: 3.25, N: 21.41, S: 2.72, B: 1.84.
【0108】
上記式(B−6)で表されるセリウム錯体は、大気中、溶液状態にて室温下で一週間以上放置しても放置前と同様に、溶液状態(ジクロロメタン)で緑色の発光を示した。
【0109】
上記式(B−6)で表されるセリウム錯体は、紫外線励起(365nm)により、固体粉末状態でも、溶液状態(ジクロロメタン、クロロホルム)でも、緑色に発光した。クロロホルム中での発光スペクトルは、529nmにピークを示した。
【0110】
<実施例2>
<セリウム錯体(B−7)の合成例>
アルゴン雰囲気下、上記式(B−6)で表されるセリウム錯体(600mg、0.509mmol)をメタノール(5mL)に溶解させ、得られた溶液に飽和テトラフェニルホウ酸ナトリウムのメタノール溶液(10mL)を加えた。反応液を室温で1時間撹拌した後、生成した沈殿を吸引ろ過にて回収し、この沈殿を水で3回洗浄し、ジクロロメタンで抽出した後、不溶成分をろ過にて除去し、ジエチルエーテルと共に再結晶した。紫外光励起(365nm)にて黄緑色に発光する結晶を回収し、上記式(B−7)で表されるセリウム錯体(399mg)を得た。収率は、58.1%であった。
【0111】
元素分析
Found(%) C: 61.77, H: 4.32, N: 17.80, B: 2.46, Calcd for C72H58B3CeN18(%) C: 64.16, H: 4.34, N: 18.70, B: 2.41.
【0112】
上記式(B−7)で表されるセリウム錯体は、大気中、溶液状態(ジクロロメタン)にて室温下で一週間以上放置したところ、放置前と同様に溶液状態で黄緑色光を発光した。
上記式(B−7)で表されるセリウム錯体は、紫外線励起(365nm)により、固体粉末状態でも、ジクロロメタン、クロロホルムを溶媒として用いた溶液状態でも、緑色光を発光した。クロロホルム中での発光スペクトルは、529nmにピークを示した。
【0113】
<実施例3>
上記式(B−7)で表されるセリウム錯体を0.5質量%の濃度としたクロロホルム溶液を用いて、ガラス基板上にスピンコート法により1000rpmの回転速度で塗布成膜した。得られた膜に対して、触針式の膜厚計(ビーコ社製、DEKTAK)を用いて厚さを測定することにより、約50nmの均一な厚さの薄膜が得られたことを確認した。
上記式(B−7)で表されるセリウム錯体はクロロホルムによく溶解した。また、上述したように、セリウム錯体は大気雰囲気下での安定性に優れている。よって、セリウム錯体を含む層を大気雰囲気下で実施可能である簡便な塗布法により形成することができる。このように無極性溶媒に対する溶解性が高いので、均一な厚さでセリウム錯体を含む有機膜を製造することができる。その結果、有機膜を機能層として含む電子素子の電気的特性をより向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明のセリウム錯体は、発光素子、スイッチング素子、光電変換素子等の有機電子素子の機能層の材料として有用であるのみならず、磁気材料、生体プローブ、造影剤、添加剤、改質剤、触媒等の材料としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式(1)で表されるセリウム錯体。
【化1】

[組成式(1)中、Mはセリウムイオンを表し、Lは下記式(2):
【化2】

(式(2)中、Aは炭素原子又はホウ素原子を表す。Rは、水素原子、又は置換基を表す。環Aは、窒素原子を2つ含む5員環、又は窒素原子を2つ含む5員環と芳香族炭化水素環とが縮合した環である。環Dは窒素原子を1つ含む5員環、窒素原子を1つ含む5員環と芳香族炭化水素環とが縮合した環、窒素原子を1つ含む6員環、又は、窒素原子を1つ含む6員環と芳香族炭化水素環とが縮合した環である。環A及び環Dは、それぞれ独立に、窒素原子の他にヘテロ原子を含んでいてもよい。環A及び環Dは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい。)
で表される配位子を表し、Xは対イオンを表し、L’は単座又は2座の配位子を表し、aは、1又は2であり、bは、0〜5の整数であり、cは、0〜5の整数である。L、X及びL’の各々は、複数個ある場合、複数個あるLは、同一であっても異なっていてもよく、複数個あるXは、同一であっても異なっていてもよく、複数個あるL’は、同一であっても異なっていてもよい。]
【請求項2】
Lが、下記式(3)で表される配位子である、請求項1に記載のセリウム錯体。
【化3】

(式(3)中、A1、R及び環Dは、前記と同じ意味である。R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基であり、R及びRの組み合わせ、R及びRの組み合わせ、R及びRの組み合わせは、各々、結合して環を形成していてもよい。)
【請求項3】
Lが、下記式(4)で表される配位子である、請求項1又は2に記載のセリウム錯体。
【化4】

(式(4)中、A1、R、R、R、R、R、R、及びRは、前記と同じ意味である。R及びRの組み合わせ、R及びRの組み合わせ、R及びRの組み合わせは、各々、結合して環を形成していてもよい。R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、及びR21は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基であり、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、及びR21のうちの隣接する炭素原子に結合する2つずつの組み合わせは、各々、結合して環を形成していてもよい。)
【請求項4】
Lが、Aがホウ素原子である配位子であり、組成式(1)において、aが2であり、bが1であり、cが0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセリウム錯体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のセリウム錯体、及び電荷輸送材料を含んでなる組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のセリウム錯体を含んでなる有機膜。
【請求項7】
請求項6に記載の有機膜を含んでなる有機電子素子。

【公開番号】特開2012−246230(P2012−246230A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117424(P2011−117424)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】