説明

セリウム錯体及び該セリウム錯体を含む有機電子素子

【課題】電子受容性及びホール受容性に優れるセリウム錯体を提供する。
【解決手段】下記組成式(1)で表されるセリウム錯体を提供する。
【化1】


(Mはセリウムイオンを、Aは炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、窒素カチオン、ホウ素アニオン、リン原子、又はP(=O)を、それぞれ表す。z=4のときm=1〜4であり、z=3のときm=1〜3である。Dは直接結合又はヒドロカーボンジイル基を、Gはヘテロシクリル基又は水素原子を、Lは窒素原子を2個以上有する芳香6員環を含む基を、Xは対イオンを、L’は単座又は2座の配位子を、aは1〜4の数を、bは0〜5の数を、cは0〜5の数を、それぞれ表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリウム錯体及び該セリウム錯体を含む有機電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層に用いられる発光材料として、ベンズイミダゾリル基を含む4座の配位子を用いたセリウム錯体が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Xiang−Li Zheng,Cheng−Yong Su et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,46,7399−7403(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のセリウム錯体は、電子受容性及びホール受容性のいずれかが低かった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、電子受容性及びホール受容性に優れるセリウム錯体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記の〔1〕〜〔11〕の本発明を完成するに至った。
〔1〕組成式(1):
【化1】

(式中、
Mはセリウムイオンである。
Aは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、窒素カチオン、ホウ素アニオン、リン原子、又はP(=O)である。Aが炭素原子、ケイ素原子、窒素カチオン、又はホウ素アニオンであるとき、zは4であり、mは1〜4の整数である。Aが窒素原子、リン原子、又はP(=O)であるとき、zは3であり、mは1〜3の整数である。
Dは、直接結合、又は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基である。
Gは、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、又は水素原子である。
Lは、窒素原子を2個以上有する芳香6員環を含む基である。複数個のLが存在する場合、各々のLは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数個のDが存在する場合、各々のDは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数個のGが存在する場合、各々のGは互いに同一であっても異なっていてもよい。
Xは、対イオンである。
L’は、単座又は2座の配位子である。
aは、1〜4の数であり、b及びcは、それぞれ独立に、0〜5の数である。aが2以上であるとき、各々のAは互いに同一であっても異なっていてもよい。bが2以上であるとき、各々のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。cが2以上であるとき、各々のL’は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるセリウム錯体。
〔2〕Lが式(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表される基である、上記〔1〕に記載のセリウム錯体。
−D’−E−J (2−1)
−D’−J’−E’ (2−2)
−D’−J (2−3)
(式中、
D’は、直接結合、又は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基である。
Eは、窒素原子を含む芳香5員環を有する2価の基、又は窒素原子を含む芳香5員環が芳香環と縮合している環を有する2価の基である。
Jは、窒素原子を2個以上含む芳香6員環を有する1価の基である。
E’は、窒素原子を含む芳香5員環を有する1価の基、又は窒素原子を含む芳香5員環が芳香環と縮合している環を有する1価の基である。
J’は、窒素原子を2個以上含む芳香6員環を有する2価の基である。
前記芳香5員環、前記芳香6員環、及び前記芳香5員環が芳香環と縮合している環は、それぞれ独立に置換基を有していてもよく、置換基が複数ある場合には一緒になって、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。)
〔3〕E又はE’が有する芳香5員環が、置換基を有していてもよいイミダゾール環である上記〔2〕に記載のセリウム錯体。
〔4〕E又はE’が有する窒素原子を含む芳香5員環が芳香環と縮合している環が、置換基を有していてもよいベンゾイミダゾール環である上記〔2〕又は〔3〕に記載のセリウム錯体。
〔5〕Lが式(3):
【化2】

(式中、
2は、1価の基であり、nは、0〜2の整数である。
nが2のとき、各々のR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR2が一緒になって、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
D’及びJは上記と同じ意味を表す。)
又は、式(4):
【化3】

(式中、
pは0〜4の整数である。
pが2以上であるとき、各々のR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、隣接する炭素原子に結合している2つのR2は一緒になって、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。R2、D’及びJは上記と同じ意味を表す。)
で表される基である上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のセリウム錯体。
〔6〕Aが窒素原子である上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のセリウム錯体。
〔7〕Jが式(5):
【化4】

(式中、R3は、水素原子、又は1価の基である。各々のR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。Qは、窒素原子、又はC(R3)である。)
で表される1価の基である上記〔2〕〜〔6〕のいずれかに記載のセリウム錯体。
〔8〕組成式(6):
【化5】

(式中、
4は、水素原子、又は1価の基であり、G’は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基である。
各々のR4は互いに同一であっても異なっていてもよい。複数個のG’が存在する場合、各々のG’は互いに同一であっても異なっていてもよい。
m’は、1〜3の整数である。
D、R2、R3、Q、n、M、X、L’、b及びcは、上記と同じ意味を表す。
複数個のQが存在する場合、各々のQは互いに同一でも異なっていてもよい。)
又は、組成式(7):
【化6】

(式中、R4、G’、D、R2、R3、Q、p、m’、M、X、L’、b及びcは、上記と同じ意味を表す。)
で表される上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のセリウム錯体。
〔9〕組成式(7−1):
【化7】

(式中、
5は、水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。
2、R3、R4、Q、p、m’、M、X、L’、b及びcは、上記と同じ意味を表す。)
で表される上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のセリウム錯体。
〔10〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のセリウム錯体、及び、電荷輸送材料を含む組成物。
〔11〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のセリウム錯体を含む有機膜。
〔12〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のセリウム錯体を含む有機電子素子。
〔13〕式(8)で表される化合物。
【化8】

(式中、G’、D、R2、R3、R4、Q、p及びm’は、上記と同じ意味を表す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明のセリウム錯体は、高い電子受容体及びホール受容性を示す。従って、セリウム錯体上にて電荷再結合を促進し、有機エレクトロルミネッセンス素子において優れた発光特性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について、説明する。
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、その直後に記載された化合物又は基を構成する水素原子が、無置換である場合、及び、該水素原子の一部又は全部が置換基によって置換されている場合の両方を意味する。「置換基」としては、例えば、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、アミド基、イミド基、非置換のシリル基、置換のシリル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルコキシホスホリル基、非置換のホスフィノ基、置換のホスフィノ基、非置換のホスフィンオキシド基、置換のホスフィンオキシド基、非置換のアミノ基、置換のアミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、亜リン酸基、ニトロ基、−NH-、−O-、−S-、−COO-、−SO3-、−HPO4-、及び−H2PO3-が挙げられ、好ましくは、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、ハロゲン原子、シアノ基、又は置換基を有していてもよいシリル基であり、より好ましくは、ヒドロカルビル基である。
また、本明細書において、同一の式中に同一の記号が複数存在する場合、それらは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0009】
上記置換基が、炭素原子を含み、かつ、芳香環を含まない基である場合には、炭素原子数は、通常、1〜30であり、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10である。
【0010】
上記置換基が、炭素原子を含み、かつ、芳香環を含む基である場合には、炭素原子数は、通常、2〜36であり、好ましくは3〜26であり、より好ましくは6〜16である。
【0011】
ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、及び、コロニル基が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、又は、2−ナフチル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、1−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、ビニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、又は、4−トリル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、又は、ビニル基である。
【0012】
ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、ベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、オクチルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、及び、2−ナフチルオキシ基が挙げられ、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、又は、3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、又は、1−プロピルオキシ基である。
【0013】
ヒドロカルビルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,7−ジメチルオクチルチオ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、1−アダマンチルチオ基、2−アダマンチルチオ基、ノルボルニルチオ基、ベンジルチオ基、α,α−ジメチルベンジルチオ基、2−フェネチルチオ基、1−フェネチルチオ基、フェニルチオ基、オクチルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、及び、2−ナフチルチオ基が挙げられ、好ましくは、メチルチオ基、エチルチオ基、1−プロピルチオ基、2−プロピルチオ基、1−ブチルチオ基、2−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、又は、3,7−ジメチルオクチルチオ基であり、より好ましくは、メチルチオ基、エチルチオ基、又は、1−プロピルチオ基である。
【0014】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、フッ素原子、又は、塩素原子である。
【0015】
アミド基としては、例えば、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、及びジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられ、好ましくは、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、又は、ベンズアミド基である。
【0016】
イミド基は、イミドからその窒素原子に結合した水素原子を除いて得られる基である。
イミド基としては、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基、及び、ベンゾフェノンイミド基が挙げられ、好ましくは、N−フタルイミド基である。
【0017】
置換のシリル基は、シリル基における水素原子の1〜3個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1〜3個の基で置換されているシリル基である。
【0018】
置換のシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、ヘプチルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、2−エチルヘキシル−ジメチルシリル基、ノニルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基、3,7−ジメチルオクチル−ジメチルシリル基、ラウリルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、トリ−p−キシリルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、及び、ジメチルフェニルシリル基が挙げられ、好ましくは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、又は、トリプロピルシリル基である。
【0019】
アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、及びペンタフルオロベンゾイル基が挙げられ、好ましくは、アセチル基、又は、ベンゾイル基である。
【0020】
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシカルボニル基、及び、ドデシルオキシカルボニル基が挙げられ、好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、又は、イソブトキシカルボニル基である。
【0021】
アルコキシスルホニル基としては、例えば、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、プロピルオキシスルホニル基、イソプロピルオキシスルホニル基、ブトキシスルホニル基、イソブトキシスルホニル基、sec−ブトキシスルホニル基、tert−ブトキシスルホニル基、ペンチルオキシスルホニル基、ヘキシルオキシスルホニル基、ヘプチルオキシスルホニル基、オクチルオキシスルホニル基、2−エチルヘキシルオキシスルホニル基、ノニルオキシスルホニル基、デシルオキシスルホニル基、3,7−ジメチルオクチルオキシスルホニル基、及び、ドデシルオキシスルホニル基が挙げられ、好ましくは、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、プロピルオキシスルホニル基、イソプロピルオキシスルホニル基、ブトキシスルホニル基、又は、イソブトキシスルホニル基である。
【0022】
アルコキシホスホリル基としては、例えば、ジメトキシホスホリル基、ジエトキシホスホリル基、ジプロピルオキシホスホリル基、ジイソプロピルオキシホスホリル基、ジブトキシホスホリル基、及び、エチレンジオキシホスホリル基が挙げられ、好ましくは、ジメトキシホスホリル基である。
【0023】
置換のホスフィノ基は、ホスフィノ基における水素原子の1個又は2個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1個又は2個の基で置換されているホスフィノ基である。
【0024】
置換のホスフィノ基としては、例えば、フェニルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルホスフィノ基、ジメチルホスフィノ基、エチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、プロピルホスフィノ基、ジプロピルホスフィノ基、ブチルホスフィノ基、及び、ジブチルホスフィノ基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルホスフィノ基、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジプロピルホスフィノ基、又は、ジブチルホスフィノ基である。
【0025】
置換のホスフィンオキシド基は、ホスフィンオキシド基における水素原子の1個又は2個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1個又は2個の基で置換されているホスフィンオキシド基である。
【0026】
置換のホスフィンオキシド基としては、例えば、フェニルホスフィンオキシド基、ジフェニルホスフィンオキシド基、メチルホスフィンオキシド基、ジメチルホスフィンオキシド基、エチルホスフィンオキシド基、ジエチルホスフィンオキシド基、プロピルホスフィンオキシド基、ジプロピルホスフィンオキシド基、ブチルホスフィンオキシド基、及び、ジブチルホスフィンオキシド基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルホスフィンオキシド基、ジメチルホスフィンオキシド基、ジエチルホスフィンオキシド基、ジプロピルホスフィンオキシド基、又は、ジブチルホスフィンオキシド基である。
【0027】
置換のアミノ基は、アミノ基における水素原子の1〜2個が、アルキル基、アリール基及びアリールアルキル基からなる群から選ばれる1〜2個の基で置換されているアミノ基である。
【0028】
置換のアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、及び、ジブチルアミノ基が挙げられ、好ましくは、ジフェニルアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、又は、ジブチルアミノ基である。
【0029】
置換基が、−NH-、−O-、−S-、−COO-、−SO3-、−HPO4-、又は、−H2PO3-である場合には、置換基は、対イオンを有していてもよい。対イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、及び、アンモニウムイオンが挙げられ、好ましくは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又は、アンモニウムイオンである。
【0030】
<セリウム錯体>
本発明のセリウム錯体は、上記組成式(1)で表されるセリウム錯体である。
【0031】
上記組成式(1)中、Mは、セリウムイオンである。セリウムイオンの価数は、セリウム錯体の発光強度が優れるので、3価であることが好ましい。
【0032】
上記組成式(1)中、Xは、対イオンである。対イオンは、セリウムイオンとLとを合計した電荷を中和する対イオンであり、通常アニオンであるが、Lが2価以上のマイナス電荷を有している場合、カチオンであってもよい。つまり、組成式(1)全体の電荷の総和がゼロになればよい。
【0033】
カチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、及び、アンモニウムイオンが挙げられる。
【0034】
アニオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、及び、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンが挙げられる。
【0035】
Xで表される対イオンとしては、好ましくは、フッ化物イオン、塩化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、又は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンであり、より好ましくは、塩化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、又は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンであり、更に好ましくは、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、又は、テトラフェニルボレートイオンであり、特に好ましくは、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、又は、テトラフェニルボレートイオンである。
【0036】
上記組成式(1)中、L’は、単座又は2座の配位子である。L’で表される単座又は2座の配位子は、通常、酸素原子、窒素原子及びリン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む原子団であり、例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、トリアリールホスフィンオキシド、トリアルキルホスフィンオキシド、ピリジン、キノリン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、ビピリジン、ビキノリン、ターピリジン、フェナントロリン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、及び、トリアルキルアミンが挙げられる。
【0037】
上記組成式(1)中、aは1〜4の数であり、好ましくは1又は2であり、より好ましくは2である。aが2以上であるとき、各々のAは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数個のLが存在する場合、各々のLは互いに同一であっても異なっていてもよい。bは0〜5の数であり、好ましくは0〜3の数であり、より好ましくは1又は3である。bが2以上であるとき、各々のXは互いに同一であっても異なっていてもよい。cは0〜5の数であり、好ましくは0〜2の数であり、より好ましくは0である。cが2以上であるとき、各々のL’は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
上記組成式(1)中、a、b及びcの組み合わせは、錯体の中心金属イオンの配位数と配位子の価数に関係があり、安定な錯体構造を形成するので、a=2、b=3及びc=0が好ましい。
【0039】
上記組成式(1)中、Aは、炭素原子、ケイ素原子、窒素カチオン、ホウ素アニオン、窒素原子、リン原子、又はP(=O)である。Aが炭素原子、ケイ素原子、窒素カチオン、又はホウ素アニオンであるとき、zは4であり、かつ、mは1〜4の整数である。zが4であるとき、好ましくは、mは2〜4の整数であり、より好ましくは、2又は3である。Aが窒素原子、リン原子、又はP(=O)であるとき、zは3であり、かつ、mは1〜3である。zが3であるとき、好ましくは、mは2又は3である。
【0040】
Aは、安定な錯体構造を形成するので、好ましくは炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、又はP(=O)であり、より好ましくは、炭素原子、又は窒素原子であり、更に好ましくは窒素原子である。
【0041】
上記組成式(1)中、Dは、直接結合、又は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基であり、Gは、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、又は水素原子である。上記組成式(1)中のD、及び、上記式(2−1)、(2−2)並びに(2−3)中のD’のうち、少なくとも1つは直接結合ではないことが好ましい。
【0042】
Dで表される置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基の、ヒドロカーボンジイル基は、炭素原子数が、通常、1〜30であり、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、更に好ましくは1〜5である。このヒドロカーボンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、オクチレン基、メチルエチレン基、メチルプロピレン基、エチルエチレン基、エチルプロピレン基、メチルブチレン基、エチルヘキシレン基、ジメチルオクチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンタンジイル基、ノルボルナンジイル基、フェニレンメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ジフェニルビニレン基、フェニルビニレン基、フェニルプロペニレン基、フェニレン基、メチルフェニレン基、ビフェニルジイル基、ターフェニルジイル基、テトラフェニルフェニレン基、(2,2−ジフェニルビニル)フェニレン基、(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニレン基、フルオレンジイル基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、及び、ピレンジイル基が挙げられ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基、メチルプロピレン基、エチルエチレン基、エチルプロピレン基、メチルブチレン基、エチルヘキシレン基、フェニレンメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、又は、フェニレン基であり、より好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基、メチルプロピレン基、ビニレン基、又は、プロペニレン基であり、更に好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基、又は、メチルプロピレン基であり、特に好ましくは、メチレン基、エチレン基、又は、プロピレン基である。複数個のDが存在する場合、各々のDは互いに同一であっても異なっていてもよい。なお、「ヒドロカーボンジイル基」は「ヒドロカルビレン基」とも言われる。
【0043】
上記組成式(1)中、Gは、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、又は水素原子である。ヘテロシクリル基とは、複素環式化合物の環を構成する炭素原子または窒素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。Gで表される置換基を有していてもよいヘテロシクリル基の、ヘテロシクリル基としては、例えば、ピペリジニル基、ピペラジニル基、ベンゾフリル基、フリル基、ベンゾチエニル基、チエニル基、ベンゾピロリル基、ピロリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアゾリル基、キノリル基、及び、ピリジル基が挙げられ、好ましくは、ベンゾフリル基、フリル基、ベンゾチエニル基、チエニル基、ベンゾピロリル基、ピロリル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアゾリル基、キノリル基、又は、ピリジル基であり、より好ましくは、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアゾリル基、キノリル基、又は、ピリジル基であり、更に好ましくは、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、又は、ピリジル基であり、特に好ましくは、ベンゾイミダゾリル基、又は、イミダゾリル基である。Gが複数ある場合は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
上記組成式(1)中、Lは、その構造中に、窒素原子を2個以上有する芳香6員環を含む基である。窒素原子を2個以上有する芳香6員環としては、例えば、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、及び1,2,4,5−テトラジンが挙げられ、高いホール受容性及び高い電子受容性を有するセリウム錯体が得られるので、好ましくは、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、又は、1,3,5−トリアジンであり、より好ましくは、ピラジン、ピリミジン、又は、1,3,5−トリアジンであり、更に好ましくは、ピリミジン、又は1,3,5−トリアジンであり、特に好ましくはピリミジンである。Lは、安定なセリウム錯体を形成することができるので、上記式(2−1)、(2−2)、又は(2−3)で表される基であることが好ましく、上記式(2−1)で表される基であることがより好ましい。
【0045】
上記式(2−1)、(2−2)、及び(2−3)中、D’は、直接結合、又は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基であり、好ましくは置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基である。置換基を有していてもヒドロカーボンジイル基の、ヒドロカーボンジイル基は、上記Dで表される置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基の、ヒドロカーボンジイル基の例及び好ましい例と同じであるが、とりわけ好ましくはメチレン基である。複数あるD’のうち、少なくとも1つは直接結合ではないことが好ましく、全てのD’が置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基であることがより好ましい。
【0046】
上記式(2−1)中、Eは、窒素原子を含む芳香5員環を有する2価の基、又は窒素原子を含む芳香5員環が芳香環と縮合している環を有する2価の基である。Eとしては、例えば、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、1,2,3−トリアゾリル基、1,2,4−トリアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、及び、ベンズチアゾリル基から水素原子を1つ除いた2価の基が挙げられ、安定な錯体を形成するので、好ましくは、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、又は、ベンズチアゾリル基のそれぞれから水素原子を1つ除いた2価の基であり、より好ましくはイミダゾリル基、又は、ベンズイミダゾリル基のそれぞれから水素原子を1つ除いた2価の基である。
【0047】
上記式(2−1)及び(2−3)中、Jは、窒素原子を2個以上含む芳香6員環を有する1価の基である。好ましくは、Jは、窒素原子を2個以上含む芳香6員環から水素原子1個を除いた基である。窒素原子を2個以上含む芳香6員環としては、例えば、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、1,2,3−トリアジン環、1,2,4−トリアジン環、1,3,5−トリアジン環、1,2,3,4−テトラジン環、1,2,3,5−テトラジン環、及び、1,2,4,5−テトラジン環が挙げられ、高いホール受容性及び高い電子受容性を有するセリウム錯体が得られるので、好ましくは、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、又は、1,3,5−トリアジン環であり、より好ましくは、ピラジン環、ピリミジン環、又は、1,3,5−トリアジン環であり、更に好ましくは、ピリミジン環、又は、1,3,5−トリアジン環であり、特に好ましくはピリミジン環である。
【0048】
上記式(2−2)中、E’は、窒素原子を含む芳香5員環を有する1価の基、又は窒素原子を含む芳香5員環が芳香環と縮合している環を有する1価の基である。E’としては、例えば、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、1,2,3−トリアゾリル基、1,2,4−トリアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、及び、ベンズチアゾリル基が挙げられ、安定な錯体を形成するので、好ましくは、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、又は、ベンズチアゾリル基であり、より好ましくはイミダゾリル基、又は、ベンズイミダゾリル基である。
【0049】
上記式(2−2)中、J’は、窒素原子を2個以上含む芳香6員環を有する2価の基である。芳香6員環の例及び好ましい例は、Jで述べた芳香6員環の例及び好ましい例と同じである。
【0050】
E、J、E’及びJ’に含まれる、芳香5員環、芳香6員環、及び芳香5員環が芳香環と縮合している環は、それぞれ独立に置換基を有していてもよく、置換基が複数ある場合には、該置換基同士が一緒になって、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
【0051】
J及びE’は、セリウム錯体のホール受容性及び電子受容性がより高くなるので、Mとは結合を形成していないこと(Mに配位していないこと)が好ましい。
【0052】
式(2−1)の例としては、下記式(3)で表される基が挙げられる。
【0053】
【化9】

【0054】
式(3)中、R2は、1価の基である。R2で表される1価の基の例及び好ましい例は、前述した置換基の例及び好ましい例と同じであり、それらの中でも、ヒドロカルビル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、1−プロピル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、又は、ビニル基がとりわけ好ましい。nは0〜2の整数であり、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。nが2のとき、各々のR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR2が一緒になって、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。D’及びJは、上記と同じ意味を表す。
【0055】
式(2−1)の更に他の例としては、下記式(4)で表される基が挙げられる。
【0056】
【化10】

【0057】
式(4)中、pは0〜4の整数であり、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。pが2以上であるとき、各々のR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、隣接する炭素原子に結合している2つのR2は一緒になって、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。R2、D’及びJは、上記と同じ意味を表す。
【0058】
上記Jは、セリウム錯体の電子受容性がより向上するので、下記式(5)で表される1価の基であることが好ましい。
【0059】
【化11】

【0060】
式(5)中、R3は、水素原子、又は1価の基である。各々のR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。R3で表される1価の基の例及び好ましい例は、前述した置換基の例及び好ましい例と同じであり、それらの中でも、ヒドロカルビル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、1−プロピル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、又は、ビニル基がとりわけ好ましい。Qは、窒素原子、又はC(R3)である。
【0061】
本発明のセリウム錯体の例としては、下記組成式(6)で表されるセリウム錯体が挙げられる。
【0062】
【化12】

【0063】
組成式(6)中、R4は、水素原子、又は1価の基である。R4で表される1価の基の例及び好ましい例は、前述した置換基の例及び好ましい例と同じであり、それらの中でも、ヒドロカルビル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、1−プロピル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、又は、ビニル基がとりわけ好ましい。Rは1価の基であるよりも水素原子であることが好ましい。m’は、1〜3の整数であり、2又は3であることが好ましい。D、R2、R3、Q、n、M、X、L’、b及びcは、上記と同じ意味を表す。Qが複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0064】
組成式(6)中、G’は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基であり、その例及び好ましい例は、Gで表される置換基を有していてもよいヘテロシクリル基におけるヘテロシクリル基の例及び好ましい例と同じである。
【0065】
本発明のセリウム錯体の他の例としては、下記組成式(7)で表されるセリウム錯体が挙げられる。
【0066】
【化13】

【0067】
組成式(7)中、R4、G’、D、R2、R3、Q、p、m’、M、X、L’、b及びcは、上記と同じ意味を表す。
【0068】
上記組成式(7)で表されるセリウム錯体の好ましい例としては、下記組成式(7−1)で表されるセリウム錯体が挙げられる。
【0069】
【化14】

【0070】
組成式(7−1)中、R5は、水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。R5で表されるヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、ヘキシル基、又は、2−エチルヘキシル基が好ましい。R4、R2、R3、Q、p、m’、M、X、L’、b及びcは、上記と同じ意味を表す。
【0071】
本発明のセリウム錯体としては、下記組成式(B−1)〜(B−8)で表されるセリウム錯体が好ましい。セリウム錯体のホール受容性及び電子受容性がより高くなるので、より好ましくは、下記組成式(B−5)〜(B−8)で表されるセリウム錯体であり、更に好ましくは、下記組成式(B−7)〜(B−8)で表されるセリウム錯体である。
【化15】

【0072】
本発明のセリウム錯体は、通常、青色発光を示す。
【0073】
<セリウム錯体の製造方法>
本発明のセリウム錯体は、錯体合成に用いられる公知の方法にて製造できる。例えば、配位子となる化合物、及び、セリウム塩を、溶媒中、室温下で混合させる。その後、得られた沈殿を回収することにより、又は、反応液から溶媒を留去することにより、容易に製造することができる。
【0074】
上記セリウム塩としては、例えば、塩化セリウム(III)、硝酸セリウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸セリウム(III)が挙げられる。なお、セリウム塩は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0075】
上記混合の際に用いる配位子となる化合物とセリウム塩の比は、セリウム1原子に対する配位原子数が、通常、6〜12個になるように、好ましくは8個になるように、決定する。
【0076】
上記混合時の温度と反応時間は、通常、室温で1時間程度撹拌することで製造できるが、溶媒を還流させる温度まで上昇させ、反応時間を短くすることが可能である。
【0077】
上記混合は、通常、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス)雰囲気下で行う。
【0078】
上記混合の際に用いられる溶媒としては、例えば、緩衝液等の水系溶媒、及び、有機溶媒が挙げられるが、有機溶媒が好ましい。なお、溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0079】
有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、及び、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が挙げられ、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン又はアセトニトリルが好ましい。
【0080】
本発明のセリウム錯体の対イオンXは、イオン交換クロマトグラフィ、塩析法等の方法を用いることで、任意の対イオンへと容易に交換可能である。塩析法においては、例えば、交換したいイオンの塩の飽和溶液を、上記の方法等にて得られたセリウム錯体の溶液に添加し、それにより生じた沈殿を回収することで目的の対イオンを持った錯体を得ることができる。
【0081】
<組成物>
本発明のセリウム錯体は、そのまま用いることも、電荷輸送材料と混合して組成物として用いることもできる。この組成物は、25℃において、通常、液状又は固形状である。
【0082】
上記電荷輸送材料とは、有機エレクトロルミネッセンス素子(「発光素子」とも言われる。)等の素子において電荷の運搬を担う材料を言い、正孔輸送材料及び電子輸送材料である。電荷輸送材料は、低分子有機化合物及び高分子有機化合物(例えば、高分子化合物、オリゴマー)に分類できる。高分子化合物及びオリゴマーは、共役系であることが好ましい。
【0083】
上記正孔輸送材料としては、例えば、フルオレン及びその誘導体、芳香族アミン及びその誘導体、カルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体等の、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送材料として公知の材料を使用することができる。
【0084】
上記電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、トリアジン誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、並びに、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体等の、有機エレクトロルミネッセンス素子の電子輸送材料として公知の材料を使用することができる。
【0085】
本発明の組成物において、上記セリウム錯体の含有量は、電荷輸送材料100質量部に対して、通常は0.01〜300質量部であり、ホール受容性及び電子受容性のバランスが良好になるので、好ましくは0.1〜150質量部であり、より好ましくは1〜50質量部である。
【0086】
本発明の組成物において、上記セリウム錯体及び上記電荷輸送材料は、各々、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0087】
<有機膜>
本発明の有機膜は、上記セリウム錯体を含む。本発明の有機膜は、例えば、上記セリウム錯体と溶媒とを混合してなる溶液を用いて、インクジェット印刷法等の塗布法により、容易に成膜することができる。
【0088】
本発明の有機膜は、例えば、発光性膜、導電性膜、及び、有機半導体膜として使用できる。
【0089】
本発明の有機膜の厚さは、好ましくは1nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
【0090】
<有機電子素子>
本発明の有機電子素子は、上記セリウム錯体を含む。本発明の有機電子素子としては、例えば、上記セリウム錯体を含む層を有する発光素子、上記セリウム錯体を含む層を有するスイッチング素子、及び、上記セリウム錯体を含む層を有する光電変換素子が挙げられる。
【0091】
[発光素子]
発光素子は、通常、陽極及び陰極からなる電極間に、発光層を有する。この発光素子は、発光効率及び耐久性を向上させるために、発光層以外の層を含んでいてもよい。発光層以外の層としては、例えば、電荷輸送層、電荷阻止層、電荷注入層及びバッファ層が挙げられる。各層は、発光素子中にそれぞれ一層のみ含まれていてもよいし、二層以上含まれていてもよい。
【0092】
発光層は、発光する機能を有する層である。
【0093】
電荷輸送層は、電子輸送層と正孔輸送層との総称である。正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する層である。電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する層である。
【0094】
電荷阻止層は、正孔又は電子を発光層に閉じ込める機能を有する層であり、その中でも、電子を輸送し正孔を閉じ込める層を正孔阻止層と言い、正孔を輸送し電子を閉じ込める層を電子阻止層と言う。
【0095】
バッファ層としては、例えば、陽極に隣接して導電性高分子化合物を含む層が挙げられる。
【0096】
発光素子の構造としては、例えば、以下のa)〜q)の構造が挙げられる。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
c)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
d)陽極/発光層/正孔阻止層/陰極
e)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
f)陽極/電荷注入層/発光層/陰極
g)陽極/発光層/電荷注入層/陰極
h)陽極/電荷注入層/発光層/電荷注入層/陰極
i)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
j)陽極/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
k)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電荷注入層/陰極
l)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
n)陽極/電荷注入層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
o)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
q)陽極/電荷注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電荷注入層/陰極
(上記a)〜q)において、「/」は各層が隣接して積層されていることを示す。なお、発光層、正孔輸送層、電子輸送層は、それぞれ1層のみ用いても2層以上用いてもよい。)
【0097】
電極に隣接して設けた電荷輸送層のうち、電極からの電荷注入効率を改善する機能を有し、発光素子の駆動電圧を下げる効果を有する層は、一般に電荷注入層と呼ばれる。電荷注入層を備える発光素子としては、例えば、陰極に隣接して電荷注入層を備える発光素子、及び、陽極に隣接して電荷注入層を備える発光素子が挙げられる。
【0098】
発光素子では、電極との密着性向上のために、又は、電極からの電荷注入の改善のために、電極に隣接して絶縁層を設けてもよい。上記絶縁層に用いる材料としては、例えば、金属フッ化物、金属酸化物、及び、有機絶縁材料が挙げられる。絶縁層の厚さは、通常、2nm以下である。絶縁層を備える発光素子としては、例えば、陰極に隣接して上記絶縁層を備える発光素子、及び、陽極に隣接して上記絶縁層を備える発光素子が挙げられる。
【0099】
発光層は、上記セリウム錯体、又は、上記組成物を含む層である。この発光層には、その他の発光材料を含んでいてもよい。その他の発光材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、及びシアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、並びに、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体が挙げられる。
【0100】
正孔輸送層に用いる材料としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、並びに、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体が挙げられる。
【0101】
正孔輸送層の厚さは、発光効率又は光電効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
【0102】
電子輸送層に用いる材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、並びに、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。
【0103】
電子輸送層の厚さは、発光効率又は光電効率と駆動電圧とが適度な値となるように設定され、通常、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
【0104】
各層は隣接する層又は基板上に形成される。形成方法としては、例えば、真空蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等)、スパッタリング法、LB法、分子積層法、及び塗布法が挙げられ、製造プロセスを簡略化できるので、塗布法が好ましい。
【0105】
塗布法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、ディップコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、及び、インクジェット印刷法が挙げられ、ロールコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷法、又は、インクジェット印刷法が好ましい。
【0106】
本発明の発光素子は、通常、基板を用いて形成される。基板の一方の面には電極が形成され、他方の面に素子の各層を形成する。上記基板としては、例えば、ガラス、プラスチック、シリコン等の材質の基板、高分子フイルムの基板が挙げられる。
【0107】
本発明の発光素子に含まれる陽極及び陰極は、通常、透明又は半透明であるが、陽極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0108】
陽極に用いる材料としては、例えば、導電性の金属酸化物膜、半透明の金属薄膜、有機の透明導電膜が挙げられ、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体(インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等)、アンチモン・スズ・オキサイド、NESA、金、白金、銀、銅、ポリアニリン及びその誘導体、並びに、ポリアミノフェン及びその誘導体である。
【0109】
陽極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、及び、メッキ法が挙げられる。
【0110】
陽極の厚さは、光の透過性と電気伝導度とを考慮して設定され、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、より好ましくは40nm〜500nmである。
【0111】
陰極に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属;それらの金属からなる群から選ばれる2つ以上の金属の合金;それらの金属からなる群から選ばれる1個以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、及び錫からなる群から選ばれる1個以上の金属との合金;グラファイト;グラファイト層間化合物が挙げられる。
【0112】
陰極の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及び、金属薄膜を熱圧着するラミネート法が挙げられる。また、2層以上の積層構造の陰極を形成してもよい。
【0113】
陰極の厚さは、電気伝導度と耐久性とを考慮して設定され、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、より好ましくは50nm〜500nmである。
【0114】
本発明の発光素子では、素子を外部から保護して長期安定的に使用するために、陰極形成後、発光素子を保護する保護層又は保護カバーを形成していてもよい。
【0115】
電荷注入層としては、例えば、導電性高分子を含む層、陽極材料と正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料との中間の値のイオン化ポテンシャルを有する材料を含む層、及び、陰極材料と電子輸送層に含まれる電子輸送材料との中間の値の電子親和力を有する材料を含む層が挙げられる。
【0116】
電荷注入層に用いる材料としては、例えば、ポリアニリン及びその誘導体、ポリアミノフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子、金属フタロシアニン、並びに、カーボンが挙げられる。
【0117】
電荷注入層の厚さは、通常、1nm〜100nmであり、好ましくは1nm〜50nmであり、より好ましくは1nm〜10nmである。
【0118】
発光素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置のバックライト、照明等に有用である。
【0119】
[光電変換素子]
光電変換素子は、通常、陽極、陰極、及び、電荷分離層を有する。電荷分離層は、陽極と陰極との間に位置する。光電変換素子は、陽極と陰極との間に、電荷分離層以外の任意の層を有していてもよい。上記セリウム錯体又は上記組成物を含む層は、電荷分離層に含まれていてもよいし、電荷分離層以外の任意の層に含まれていてもよい。
【0120】
陰極及び陽極の材料及び例は、発光素子の項で説明した陰極及び陽極の材料及び例と同じである。陽極及びは陰極の形状は、限定されず、櫛型であってもよい。陽極及び陰極は、透明及び半透明のいずれでもよい。
【0121】
光電変換素子の電荷分離層には、通常、電子供与性化合物と電子受容性化合物とが含まれている。
【0122】
電子供与性化合物としては、例えば、共役高分子化合物が挙げられる。共役高分子化合物としては、例えば、チオフェンジイル基を含む共役高分子化合物、及び、フルオレンジイル基を含む共役高分子化合物が挙げられる。
【0123】
電子受容性化合物としては、例えば、フラーレン及びフラーレン誘導体が挙げられる。
【0124】
光電変換素子は、通常、基板上に形成される。基板の例は、発光素子に用いられる基板の例と同じである。
【0125】
光電変換素子は、太陽電池であることが好ましい。
【0126】
<化合物>
本発明は、下記式(8)で表される化合物を提供する。
【0127】
【化16】

【0128】
式(8)中、R4、G’、D、R2、R3、Q、p及びm’は、上記と同じ意味を表す。
【実施例】
【0129】
以下、本発明について、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0130】
<合成例1>
トリス(2−ベンズイミダゾリルメチル)アミン(以下、「ntb」と表記する。)は、Inorganica Chimica Acta 231,109−114(1995)の記載に従って合成した。具体的には、o−フェニレンジアミン、ニトリロ三酢酸、及び、プロピレングリコールを、144〜154℃で24時間加熱して還流させることにより、ntbを得た。
【0131】
<合成例2>
2−クロロ−4,6−ジ−tert−ブチルピリミジンは、Angew.Chem.Int.Ed.47,8246−8250(2008)の記載に従って合成した。具体的には、2,4,6−トリクロロピリミジン及びヨウ化銅のテトラヒドロフラン溶液を0℃に冷却し、ここにtert−ブチルマグネシウムクロライドを加え、0℃にて2時間撹拌することにより、2−クロロ−4,6−ジ−tert−ブチルピリミジンを得た。
【0132】
<実施例1>
・化合物(C−1)の合成
【化17】

【0133】
シュレンク管にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(46mg,0.043mmol)、リン酸三カリウム(363mg,1.71mmol)、2−クロロ−4,6−ジ−tert−ブチルピリミジン(429mg,1.89mmol)、2−ジ−tert−ブチルホスフィノ−3,4,5,6−テトラメチル−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル(82mg,0.17mmol)及びntb(231mg,0.567mmol)を入れ、該シュレンク管内の気体をアルゴンガスで置換した後、脱水トルエン(5mL)を加えた。その後、オイルバスにて50℃まで加熱し、このまま7.5時間撹拌後、110℃まで加熱し、そのまま5時間撹拌した。得られた反応液に水を加えて反応を停止させた。ここにクロロホルムを加え、抽出し、得られた有機層を水にて2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥させ、溶媒をエバポレーターで留去した。得られた残留物をアルミナカラムアルミナクロマトグラフィー(展開液:クロロホルム)で精製することにより、上記式(C−1)で表される化合物(化合物(C−1))が黄色油状物質として得られた(255mg、収率:31.8%)。
【0134】
化合物(C−1)のNMRデータを下記に示す。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)=8.36(2H,d,J=7.8Hz),7.80(2H,d,J=6.6Hz),7.66(1H,d,J=7.5Hz),7.59(1H,d,J=7.8Hz),7.33(4H,m),7.20(2H,m),7.15(2H,s),5.04(4H,s),4.64(2H,s),2.25(1H,s),1.34(36H,s).
【0135】
・セリウム錯体(B−7)の合成
化合物(C−1)(64mg,0.080mmol)、及び、トリフルオロメタンスルホン酸セリウム(III)(22mg,0.037mmol)をフラスコに加えた後、フラスコ内の気体をアルゴンガスで置換した後、クロロホルム(1mL)を添加し、室温下で2時間撹拌した。その後、反応液中の溶媒を減圧下で濃縮乾固した。得られた残渣をジクロロメタンで抽出し、抽出液をろ過して溶媒を留去することにより、セリウム錯体(B−7)を得た。セリウム錯体(B−7)は、上記式(B−7)で表されるセリウム錯体であり、この錯体に紫外線(365nm)を照射したところ、青色発光を示した。
【0136】
<比較例1>
・セリウム錯体(D−1)の合成
下記式(D−1):
【化18】

で表されるセリウム錯体(セリウム錯体(D−1))を、Angew.Chem.Int.Ed.46,7399−7403(2007)の記載に従って合成した。
【0137】
[セリウム錯体のLUMO準位・HOMO準位]
実施例1のセリウム錯体(B−7)と比較例1のセリウム錯体(D−1)のLUMO準位及びHOMO準位を比較するため、富士通株式会社製のWinMOPAC3.9により、半経験的分子軌道計算PM5法で構造最適化した後の、各セリウム錯体のLUMO準位及びHOMO準位を、以下の部分構造にて求めた。
【0138】
【表1】

【0139】
表1によれば、実施例1のセリウム錯体(B−7)の部分構造は、比較例1のセリウム錯体(D−1)の部分構造よりも、0.63eV低いLUMO準位を有する。このことは、セリウム錯体(B−7)は、セリウム錯体(D−1)に比べて、高いホール受容性及び電子受容性を有することを示している。従って、セリウム錯体(B−7)が発光素子上にて優れた発光特性を示すことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明のセリウム錯体は、発光素子、スイッチング素子、光電変換素子、磁気材料、生体プローブ、造影剤、添加剤、改質剤、触媒等の材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式(1):
【化1】

(式中、
Mはセリウムイオンである。
Aは、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、窒素カチオン、ホウ素アニオン、リン原子、又はP(=O)である。Aが炭素原子、ケイ素原子、窒素カチオン、又はホウ素アニオンであるとき、zは4であり、mは1〜4の整数である。Aが窒素原子、リン原子、又はP(=O)であるとき、zは3であり、mは1〜3の整数である。
Dは、直接結合、又は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基である。
Gは、置換基を有していてもよいヘテロシクリル基、又は水素原子である。
Lは、窒素原子を2個以上有する芳香6員環を含む基である。
複数個のLが存在する場合、各々のLは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数個のDが存在する場合、各々のDは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数個のGが存在する場合、各々のGは互いに同一であっても異なっていてもよい。
Xは、対イオンである。
L’は、単座又は2座の配位子である。
aは、1〜4の数であり、b及びcは、それぞれ独立に、0〜5の数である。aが2以上であるとき、複数あるAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。bが2以上であるとき、複数あるXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。cが2以上であるとき、複数あるL’は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるセリウム錯体。
【請求項2】
Lが式(2−1)、(2−2)又は(2−3)で表される基である、請求項1に記載のセリウム錯体。
−D’−E−J (2−1)
−D’−J’−E’ (2−2)
−D’−J (2−3)
(式中、
D’は、直接結合、又は、置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基である。
Eは、窒素原子を含む芳香5員環を有する2価の基、又は窒素原子を含む芳香5員環が芳香環と縮合している環を有する2価の基である。
Jは、窒素原子を2個以上含む芳香6員環を有する1価の基である。
E’は、窒素原子を含む芳香5員環を有する1価の基、又は窒素原子を含む芳香5員環が芳香環と縮合している環を有する1価の基である。
J’は、窒素原子を2個以上含む芳香6員環を有する2価の基である。
前記芳香5員環、前記芳香6員環、及び前記芳香5員環が芳香環と縮合している環は、それぞれ独立に置換基を有していてもよく、置換基が複数ある場合には一緒になって、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。)
【請求項3】
E又はE’が有する芳香5員環が、置換基を有していてもよいイミダゾール環である請求項2に記載のセリウム錯体。
【請求項4】
E又はE’が有する窒素原子を含む芳香5員環が芳香環と縮合している環が、置換基を有していてもよいベンゾイミダゾール環である請求項2又は3に記載のセリウム錯体。
【請求項5】
Lが式(3):
【化2】

(式中、
2は、1価の基であり、nは、0〜2の整数である。
nが2のとき、各々のR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR2が一緒になって、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
D’及びJは上記と同じ意味を表す。)
又は、式(4):
【化3】

(式中、
pは0〜4の整数である。
pが2以上であるとき、各々のR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、隣接する炭素原子に結合している2つのR2は一緒になって、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
2、D’及びJは上記と同じ意味を表す。)
で表される基である請求項1〜4のいずれか一項に記載のセリウム錯体。
【請求項6】
Aが窒素原子である請求項1〜5のいずれか一項に記載のセリウム錯体。
【請求項7】
Jが式(5):
【化4】

(式中、
3は、水素原子、又は1価の基である。各々のR3は互いに同一であっても異なっていてもよい。
Qは、窒素原子、又はC(R3)である。)
で表される1価の基である請求項2〜6のいずれか一項に記載のセリウム錯体。
【請求項8】
組成式(6):
【化5】

(式中、
4は、水素原子、又は1価の基であり、G’は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基である。
各々のR4は互いに同一であっても異なっていてもよい。複数個のG’が存在する場合、各々のG’は互いに同一であっても異なっていてもよい。
m’は、1〜3の整数である。
D、R2、R3、Q、n、M、X、L’、b及びcは、上記と同じ意味を表す。
複数個のQが存在する場合、各々のQは互いに同一でも異なっていてもよい。)
又は、組成式(7):
【化6】

(式中、R4、G’、D、R2、R3、Q、p、m’、M、X、L’、b及びcは、上記と同じ意味を表す。)
で表される請求項1〜7のいずれか一項に記載のセリウム錯体。
【請求項9】
組成式(7−1):
【化7】

(式中、
5は、水素原子、又は置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。
2、R3、R4、Q、p、m’、M、X、L’、b及びcは、上記と同じ意味を表す。)
で表される請求項1〜8のいずれか一項に記載のセリウム錯体。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のセリウム錯体、及び、電荷輸送材料を含む組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のセリウム錯体を含む有機膜。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のセリウム錯体を含む有機電子素子。
【請求項13】
式(8)で表される化合物。
【化8】

(式中、
3は、水素原子、又は1価の基である。
m’は1〜3の整数である。
複数あるR3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Qは、窒素原子、又はC(R3)である。複数個のQが存在する場合、各々のQは互いに同一であっても異なっていてもよい。
4は、水素原子、又は1価の基である。
G’は置換基を有していてもよいヘテロシクリル基である。
各々のR4は互いに同一であっても異なっていてもよい。複数個のG’が存在する場合、各々のG’は互いに同一であっても異なっていてもよい。
2は、1価の基である。
pは0〜4の整数である。
各々のpは互いに同一であっても異なっていてもよい。複数個のR2が存在する場合、各々のR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのR2が隣接する炭素原子に結合している場合、それらは一緒になって、それぞれが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよい。
Dは、直接結合、又は置換基を有していてもよいヒドロカーボンジイル基である。複数個のDが存在する場合、各々のDは互いに同一であっても異なっていてもよい。)

【公開番号】特開2013−6833(P2013−6833A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−117987(P2012−117987)
【出願日】平成24年5月23日(2012.5.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】