説明

セリンアミノ酸誘導のプロポフォールのプロドラッグ、その使用及び結晶体

本発明は、プロポフォールのプロドラッグ及びその結晶、そのプロポフォール・プロドラッグ及びその結晶を製造する方法、プロポフォール・プロドラッグ及びその結晶の医薬組成物、頭痛のおうな疾患又は障害、化学療法後又は外科的手術後の吐き気及び嘔吐、神経変性障害、及び気分障害を治療するためのプロポフォール・プロポフォール及びその結晶、並びにその医薬組成物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001]本出願は、2004年12月23日出願の米国仮出願第60/639,113号、及び2005年10月31日出願の第60/732,550号に対する利益を主張し、これらの各々は、参照により本明細書中に全体として援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002]本発明は、プロポフォールのプロドラッグ及びその結晶、プロポフォール・プロドラッグ及びその結晶を作製する方法、プロポフォール・プロドラッグ及びその結晶の医薬組成物、頭痛、化学療法後又は外科手術後の吐き気及び嘔吐、神経変性障害、及び気分障害のような疾患又は障害を治療又は予防するためのプロポフォール・プロドラッグ及びその結晶並びにその医薬組成物を使用する方法を提供する。
【0003】
[0003]プロポフォール(2,6−ジイソプロピルフェノール)(1)は、低分子量のフェノールであり、哺乳動物における麻酔及び/又は鎮静の誘発及び維持における静脈内睡眠鎮静薬として幅広く使用される。麻酔薬としてのプロポフォールの利点は、麻酔の迅速な開始、迅速浄化、及び最小限の副作用を含む(Langleyら、Drugs 1988,35,334−372、これは参照により本明細書中に全体として援用される)。プロポフォールは、GABAA受容体複合体、ヘテロオリゴマーリガンド依存性塩化物イオンチャネルとの相互作用を通じて睡眠効果を仲介することができる(Pedutoら、Anesthesiology 1991,75,1000−1009、これは参照により本明細書中に全体として援用される)。
【0004】
【化1】

【0005】
[0004]プロポフォールは、哺乳動物において迅速に代謝され、その薬物は、プロポフォールと4−ヒドロキシプロポフォールのグルクロン酸化及び硫酸化された結合体として大部分排除される(Langleyら、Drugs 1988,35,334−372)。プロポフォールの浄化は、肝臓の血流を超えて、肝外組織がこの薬物の全代謝に寄与することを示す。インビボにおけるヒトの腸粘膜グルクロン酸塩プロポフォール及びラットにおける経口投与試験は、投与した約90%の薬物が、初回通過の代謝を被り、バルクなこの全身前の排除の原因となる腸粘膜によって排除される(Raoofら、Pharm.Res.1996,13,891−895、これは参照により本明細書中に全体として援用される)。その大規模な初回通過の代謝のために、プロポフォールは、注射又は静脈内注入によって投与され、経口投与は治療効果があるとは考えられなかった。
【0006】
[0005]プロポフォールは、生物学的及び医学的応用の広範囲を有し、麻酔下の服用で証明され、難治性片頭痛の治療及び/又は予防を含む(Kruszら、Headache 2000,40,224−230;Krusz、国際公開WO00/54588、これらの各々は参照により本明細書中に全体として援用される)。プロポフォールは、麻酔を維持するために使用される場合、通常の吸入麻酔薬と比較した場合、術後の吐き気及び嘔吐(PONV)のより低い発生率を引き起こし、及び無数の調節された臨床試験は、プロポフォールの制吐活性を支持する(Tramerら、Br.J.Anaesth.1997,78,247−255;Brookerら、Anaesth.Intensive Care 1998,26,625−629;Ganら、Anesthesiology 1997,87,779−784、これらの各々は参照により本明細書中に全体として援用される)。プロポフォールはまた、化学療法化合物と併用して使用される場合、制吐活性を有することが示されている(Phelpsら、Ann.Pharmacother.1996,30,290−292;Borgeatら、Oncology 1993,50,456−459;Borgeatら、Can.J.Anaesth.1994,41,1117−1119;Tomiokaら、Anesth.Analg.1999,89,798−799、これらの各々は参照により本明細書中に援用される)。種々の化学療法剤(例えば、シスプラチン、シクロホスファミド、5−フルオロウラシル、メトトレキセート、アントラサイクリン剤等)によって誘導される吐気(retching)及び/又は嘔吐は、慣用的な制吐剤(例えば、セロトニンアンタゴニスト及びコルチコステロイド)を用いた予防に困難な患者における低投与量のプロポフォール注入によって調節されている。
【0007】
[0006]プロポフォールはまた、不応状態の癲癇を有する患者を治療するために使用されている(Brownら、Pharmacother.1998,32,1053−1059;Kuismaら、Epilepsia 1995,36,1241−1243;Walderら、Neurology 2002,58,1327−1332;Sutherlandら、Anaesth.Intensive Care 1994,22,733−737、これらの各々は参照により本明細書中に全体として援用される)。さらに、プロポフォールの抗痙攣効果はまた、麻酔下の服用量でラットの有効性モデルで示されている(Holtkampら、Ann.Neurol.2001,49,260−263;Hasanら、Pharmacol.Toxicol.1994,74,50−53、これらの各々は参照により本明細書中に全体として援用される)。
【0008】
[0007]プロポフォールはまた抗酸化剤として使用されている(Murphyら、Br.J.Anaesth.1992,68,613−618;Sagaraら、J.Neurochem.1999,73,2524−2530;Youngら、Eur.J.Anaesthesiol.1997,14,320−326;Wangら、Eur.J.Pharmacol.2002,452,303−308、これらの各々は参照により本明細書中に全体として援用される)。プロポフォールは、外科的麻酔のために典型的に使用される服用量で、ヒトにおける注目すべき抗酸化効果を有する(De la Cruzら、Anesth.Analg.1999,89,1050−1055、これらは参照により本明細書中に全体として援用される)。種々の神経変性疾患における発症又はその後の障害経路は、反応性酸素種に関与し、したがって、抗酸化剤で治療又は予防されるかもしれない(Simonianら、Pharmacol.Toxicol.1996,36,83−106、これらは参照により本明細書中に全体として援用される)。具体的な神経変性疾患の例は、抗酸化剤で治療又は予防されるかもしれないが、限定されないが、フリードリッヒ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、ピック病、炎症性疾患、及び炎症性メディエーター、例えば腫瘍壊死因子(TNF)及びIL−1によって引き起こされる疾患を含む。
【0009】
[0008]プロポフォールの製剤化及び使用の重大な問題は、水に難溶性であることである。したがって、プロポフォールは、安定化剤及び乳化剤を用いて水性媒体中に特異的に製剤化されなければならない(Briggsら、Anaesthesia 1982,37,1099−1101)。例えば、現在の商品(Diprivan(登録商標)、Astra−Zeneca)において、水中油型乳化(乳化剤はレシチン混合物Intralipid(登録商標)である)は、プロポフォールを調合するために使用される(Picardら、Anesth.Analg.2000,90,963−969)。不幸なことに、水中油型乳化製剤は、注入部位での不快及び疼痛を引き起こす。
【0010】
[0009]添加物、安定化剤又は乳化剤の使用及び付帯的な注入部位の疼痛を避ける、プロポフォールの水への難溶性に対する1つの可能な解決策は、インビボでプロポフォールに変換する水溶性の安定なプロポフォール・プロドラッグである(Hendlerら、国際公開WO99/58555;Morimotoら、国際公開WO00/48572;Hendlerら、米国特許第6,254,853号;Stellaら、米国特許出願第US2001/0025035号;Hendler、米国特許第6,362,234号;Hendler、国際公開WO02/13810;Sagaraら、J.Neurochem.1999,73,2524−2530;Banaszczykら、Anesth.Analg.2002,95,1285−1292;Trapaniら、Int.J.Pharm.1998,175,195−204;Trapaniら、J.Med.Chem.1998,41,1846−1854;Andersonら、J.Med.Chem.2001,44,3582−3591;及び、Popら、Med.Chem.Res.1992,2,16−21)。プロポフォール・プロドラッグが特に経口投与される場合、プロポフォールの治療有効濃度を提供するために生理的条件下で十分に変化しやすいプロポフォール・プロドラッグが記載されている(Gallopら、米国特許出願シリアル第10/766,990号、これは参照により本明細書中に全体として援用される)。
【0011】
[0010]一般的に、薬物の結晶は、部分的には、それらの優れた安定性のために、薬物のアモルファスな形状よりも好ましい。例えば、多くの状況において、アモルファス薬物は、保存に応じて結晶性薬物形態へと変換する。薬物のアモルファス及び結晶は、典型的には、異なる物理的/化学的特性、有効性及び/又は生物学的利用能を有するため、このような相互変換は、医薬的投与における安全性の理由のために望ましくない。いずれかの結晶性薬物物質の主要な特徴は、このような材料の多形挙動である。多形は、同じ分子の結晶であり、結晶格子が分子の異なる配置を含有するために異なる物理的特性を有する。多形によって提示された異なる物理的特性は、保存、安定性、圧縮性、密度(製剤化及び製品製造において重要である)、及び溶解速度(生物学的利用能において重要である)のような重要な製剤のパラメーターに影響する。安定性の相違は、化学的反応性の変化(例えば、剤形は、別の多形から構成される場合よりも、ある多形から構成される場合の方がよい急速に変色するような示差的な加水分解又は酸化)、機械的変化(例えば、動力学的に好都合な結晶が熱力学的により安定な結晶に変換するような保存中に粉々に砕ける錠剤)、及びその両方(例えば、1つの多形の錠剤が高湿度での破壊により影響を受け易い)に起因するかもしれない。多形間の溶解度の相違は、極限状態において、有効性を欠如し又は毒性である結晶への移行をもたらすかもしれない。さらに、結晶の物理的特性は、製剤過程に重要であるかもしれない。例えば、特定の結晶は、より容易に溶媒和物を形成するかもしれないし、あるいは、他の形体より不純物がないようにろ過し、そして洗浄することがより困難であるかもしれない(即ち、粒子形状及びサイズ分布は、他の形体と比較して1つの結晶形体で異なるかもしれない)。
【0012】
[0011]米国食品医薬品局のような政府機関は、薬物製造物の多形含量は、その薬物の最も熱力学的に安定な多形が使用されず、及び/又はその薬物の異なる多形が薬物製造物の質、安全性及び/又は有効性に影響を与えることができるかどうか監視し、調節することを要求することができる。このように、医学的又は商業的理由は、実質的に動力学的に好都合な多形を含まない熱力学的に安定な多形のような固体薬物を合成し、そして販売することを支持する。
【0013】
[0012]したがって、新規なプロポフォール・プロドラッグ及びその結晶に対する必要性が存在する。その結晶は、製剤過程及び医薬組成物において有意に使用されるかもしれない優れた物理化学的特性を有することができる。これらのプロドラッグ及びその結晶は、プロポフォールの治療有効量の濃度を提供するための物理学的条件下、具体的には、薬物が経口投与される場合に、十分に変化し易いものであるべきである。
【発明の開示】
【0014】
[0013]これら及び他の必要性を満足させるプロポフォール・プロドラッグ2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸若しくは医薬として許容されるその塩、又はその溶媒和物が提供される。さらに、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸若しくは医薬として許容される塩、又はその溶媒和物及びその結晶の医薬組成物、種々の疾患の治療又は予防のために2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸若しくは医薬として許容されるその塩、又はその溶媒和物(その医薬組成物を含む)を使用する方法、そして、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の結晶形体若しくは医薬として許容されるその塩又はその溶媒和物を作製する方法が提供される。
【0015】
[0014]一側面において、プロポフォール・プロドラッグ2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸若しくは医薬として許容されるその塩又は前述のいずれかの溶媒和物が提供される。
【0016】
[0015]別の側面において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩の結晶が提供される。いくつかの態様において、図1に実質的に示されるX線粉末回折パターンにおける特性ピーク(2θ):5.1°±0.2°、9.7°±0.2°、11.0°±0.2°、14.1°±0.2°、15.1°±0.2°、15.8°±0.2°、17.9°±0.2°、18.5°±0.2°、19.4°±0.2°、20.1°±0.2°、21.3°±0.2°、21.7°±0.2°、22.5°±0.2°、23.5°±0.2°、24.4°±0.2°、25.1°±0.2°、26.8°±0.2°、27.3°±0.2°、27.8°±0.2°、29.2°±0.2°、29.6°±0.2°、30.4°±0.2°、及び33.4°±0.2°を有する(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の塩酸塩の結晶が提供される。
【0017】
[0016]別の側面において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩の結晶が提供される。いくつかの態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩の結晶が提供される。いくつかの態様において、図2に実質的に示されるX線粉末回折パターンにおける特性ピーク(2θ):4.2°±0.1°、11.7°±0.1°、12.1°±0.1°、12.6°±0.1°、16.8°±0.1°、18.4°±0.2°、21.0°±0.1°、22.3°±0.1°、22.8°±0.2°、24.9°±0.2°、25.3°±0.1°、26.7°±0.2°、及び29.6°±0.1°を有する(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の塩酸塩の結晶が提供される。
【0018】
[0017]さらに別の側面において、プロポフォール・プロドラッグ2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸若しくは医薬として許容されるその塩又は前述のいずれかの溶媒和物の医薬組成物が提供され、あるいは、前述のいずれかの結晶が提供される。医薬組成物は、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸若しくは医薬として許容されるその塩又は前述のいずれかの溶媒和物、あるいは、前述のいずれかの結晶及び医薬として許容されるベヒクルを含む。ある態様において、上述の特性吸収ピークを有する結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩、及び医薬として許容されるベヒクルを含む医薬組成物が提供される。ある種の態様において、上述の特性吸収ピークを有する結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩、及び医薬として許容されるベヒクルを含む医薬組成物が提供される。
【0019】
[0018]さらに別の側面において、種々の疾患又は障害を治療又は予防する方法が提供される。この方法は、限定されないが、片頭痛のような頭痛、化学療法後又は外科手術後の吐き気及び嘔吐、うつ病のような気分障害、及び神経変性障害(例えば、癲癇、フリードリッヒ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症(ALS)、ピック病等)を含む疾患又は障害を治療又は予防するのに有用である。ある態様において、この方法は、このような治療又は予防を必要とする患者に、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩若しくはその結晶、又はその医薬組成物を投与することに関与する。いくつかの態様において、上述の特性吸収ピークを有する結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩又はその医薬組成物は、このような治療を必要とする患者に投与される。ある種の態様において、この方法は、このような治療又は予防を必要とする患者に、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩若しくはその結晶、又はその医薬組成物を投与することに関与する。いくつかの態様において、上述の特性吸収ピークを有する結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸又はその医薬組成物は、このような治療を必要とする患者に投与される。
【0020】
[0019]さらに別の側面において、哺乳動物における麻酔又は鎮静を誘導及び/又は維持する方法が提供される。ある種の態様において、この方法は、このような麻酔又は鎮静の誘導及び/又は維持を必要とする患者に、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩又は若しくはその結晶又はその医薬組成物を投与することに関与する。ある種の態様において、上述の特性吸収ピークを有する結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩は、このような治療を必要とする患者に投与される。ある種の態様において、この方法は、このような麻酔又は鎮静の誘導及び/又は維持を必要とする患者に、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸若しくはその結晶又はその医薬組成物を投与することに関与する。いくつかの態様において、上述の特性吸収ピークを有する結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、このような治療を必要とする患者に投与される。
【0021】
[0020]更なる別の側面において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸及び/又はその結晶を作製する方法が提供される。
[0021]本開示のこれらの特徴及び他の特徴は、本明細書中に記載される。
【0022】
詳細な説明
定義
[0022]他に指示がなければ、本明細書及び請求の範囲に使用される、成分の量、反応条件等を表す全ての数は用語「約」によって全ての場合において加減されると理解されるべきである。したがって、それとは反対に他に指示がなければ、下記の明細書及び添付した請求の範囲に記載された数値パラメータは、得られるように求められる特性に依存して変化するかもしれない近似である。最低限でも、そして、請求の範囲に均等論の適用を制限する試みではなく、各々の数値パラメータは、報告された有意な数値の数に照らして、そして、普通の旋回技術を適用することによって少なくとも構築されるべきである。
【0023】
[0023]実施態様の広範囲を説明する数値範囲及びパラメータが近似であるにもかかわらず、具体的な実施例に記載された数値は、できるだけ正確に報告される。しかしながら、いずれかの数値は、それらのそれぞれの試験測定に見出される標準偏差に必然的に起因するある種の誤差を本質的に含有する。
【0024】
[0024]本明細書中で使用される章の見出しは、組織的な目的のためだけのものであり、開示した主題を制限するたように構成するものではない。
[0025]本明細書中に参照により援用された刊行物、特許、及び特許出願の定義が、本明細書に記述された定義とは同じでないという範囲内で、本明細書中の定義は、請求の範囲を含む明細書全体に対して規制される。本明細書に明確に提供されていない、本明細書中に参照により援用された刊行物、特許、及び特許出願における他のいずれかの定義は、本明細書中に参照により援用された刊行物、特許、及び特許出願において検討した実施態様にのみ適用される。
【0025】
[0026]「2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸」は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の医薬として許容される塩、前述のいずれかの医薬として許容される溶媒和物、及び前述のいずれかの結晶を意味する。
【0026】
[0027]「2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩」は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の医薬として許容される塩、及びその結晶を意味する。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の塩酸塩、メシル酸塩又はトリフルオロ酢酸塩を意味する。
【0027】
[0028]「鏡像異性体純度」は、化合物の1以上の鏡像異性体を含有する組成物における化合物の全ての他の鏡像異性体と比較して、化合物の1つの鏡像異性体のパーセントを意味する。例えば、組成物は、組成物中の97%の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩が(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸鏡像異性体であり、組成物中の3%の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩が(R)−異性体のような1以上のその他の異性体を含む場合、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩の97%の鏡像異性体純度を有する。ある種の態様において、鏡像異性体純度は、例えば、90%を超えるか又は少なくとも90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%若しくは少なくとも約99%である。
【0028】
[0029]「医薬組成物」は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸若しくは医薬として許容されるその塩又は前述のいずれかの溶媒和物、あるいはその結晶、及び医薬として許容されるベヒクルを意味し、その化合物は患者に投与されることを伴う。
[0030]「医薬として許容されるその塩」は、親化合物の所望の薬理学的活性を有する2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の塩を意味する。このような塩は、限定されないが、(1)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等を用いて形成され;又は有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンフルスルホン酸、4−メチルビシクロ [2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロパン酸、トリエチル酢酸、トリフルオロ酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等を用いて形成される酸付加塩;あるいは、(2)本化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、若しくはアルミニウムイオンによって置換され;又は、有機塩基、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルグルカミン等で配位する場合に形成される塩を含む。ある種の態様において、医薬として許容される塩は、塩酸、メタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸を用いて形成される塩であり得る。
【0029】
[0031]「医薬として許容されるベヒクル」は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸若しくは医薬として許容されるその塩又は前述のいずれかの溶媒和物、あるいはその結晶と一緒に患者に投与される希釈剤、賦形剤又は担体を意味する。
【0030】
[0032]「患者」は動物及び哺乳動物、例えばヒトを含む。
[0033]「予防すること」又は「予防」は、疾患又は障害を獲得する(即ち、疾患に晒され又はその傾向にあるかもしれないが、疾患の症状をまだ経験及び提示していない、患者で発症していない疾患の臨床的症状の少なくとも1つを引き起こす)危険性の減少を意味する。
【0031】
[0034]「プロドラッグ」は、活性薬物を放出するために体内で変形を要する薬物分子の誘導体を意味する。プロドラッグは、頻繁ではあるが、必ずではないが、親薬物に変換されるまで薬理学的に不活性である。ヒドロキシル含有の薬物は、例えば、エステル、カルボン酸塩、アシルオキシアルキル又はスルホン酸塩プロドラッグに変換されてもよく、ヒドロキシル化合物を提供するためにインビボで加水分解され得る。上記で列挙したものとは異なる官能基を有する薬物のプロドラッグは、当業者に周知である。
【0032】
[0035]「保護部分(promoiety)」は、薬物分子内で官能基をマスクするために使用される場合、薬物をプロドラッグに変換する保護基の形態を意味する。典型的には、保護部分は、インビボにおいて酵素的又は非酵素的手段によって開裂される結合(単数又は複数)を介して薬物に結合されるであろう。
【0033】
[0036]「保護基」は、分子中の反応性官能基に結合する場合、官能基の活性をマスクし、減少し又は妨げる原子の基を意味する。保護基の例は、Greenら、“Protective Groups in Organic Chemistry”(Wiley、第2版、1991年)及びHarrisonら、“Compendium of Synthetic Organic Methods”Vol.1−8(John Wiley及びSons,1971−1996)に見出される。代表的なアミノ保護基は、限定されないが、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBz)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(SES)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(NVOC)等を含む。代表的なヒドロキシ保護基は、限定されないが、ヒドロキシ基が、アシル化又はアルキル化され、例えば、ベンジル、及びトリチルエーテル、並びにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル、及びアリルエーテルであるものを含む。
【0034】
[0037]「溶媒和物」は、化学量論又は非化学量論的な量で1以上の溶媒分子を有する化合物の分子複合体を意味する。このような溶媒分子は、製剤の技術分野において共通して使用されるものであり、受容者に無害であることが知られ、例えば水、エタノール等である。化合物又は化合物の部分及び溶媒の分子複合体は、非共有的な分子内力、例えば、静電気力、ファン・デル・ワールス力又は水素結合によって安定化され得る。用語「水和物」は、1以上の溶媒分子が水である複合体を意味する。
【0035】
[0038]「治療有効量」は、患者における疾患の治療又は予防のために患者に投与される場合、このような疾患の治療又は予防に効果を奏するのに十分である化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患及びその重度、そして、治療又は予防される疾患を有する患者の年齢、体重等に依存して変化するであろう。
【0036】
[0039]いずれかの疾患又は障害の「治療すること」又は「治療」は、下記:(1)疾患又は障害を改善すること(即ち、疾患又は少なくとも1つのその臨床的症状の発症を静止又は減少すること);(2)患者によって識別することができない少なくとも1つの身体パラメータを改善すること;(3)身体的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、身体パラメータの安定化)、又はその両方のいずれかで疾患又は障害を阻害すること;そして、(4)疾患又は障害の開始を遅延することの1以上を意味する。
【0037】
[0040]化合物、組成物、及び方法のある種の実施態様に対する参照が詳細に今なされるであろう。開示した実施態様は、請求の範囲を制限することを意図しない。それとは反対に、請求の範囲は、開示した実施態様の代替物、修飾物、及び均等物を覆うことを意図する。
【0038】
化合物
[0043]プロポフォール・プロドラッグ2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸(2)若しくは医薬として許容されるその塩又は医薬として許容される前述の溶媒和物は、本明細書中に開示される。
【0039】
【化2】

【0040】
[0044]当業者は、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は上記の通り記述されるが、立体異性的に純粋な形体(例えば、鏡像異性的に純粋)及びラセミ体を含む鏡像異性的混合物を含む2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の全ての可能な鏡像異性体及び立体異性体は、特別に除外されない限り、本明細書中の記載によって包含されることを承認するであろう。2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、いくつかの互変異性体で存在するかもしれない。したがって、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の全ての可能な互変異性体は、他に特定されない限り、本明細書中に包含される。2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の全ての同位体標識した形体もまた他に特定されない限り、本明細書中に包含される。2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸に取り込むことが可能な同位体の例は、限定されないが、2H、3H、11C、13C、14C、15N、19O及び17Oを含む。
【0041】
[0045]当業者は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸(2)が両性イオン種(即ち、化合物(3)として)として存在し又はプロトン酸付加塩(即ち、化合物(4)(Xはアニオン性部分である)として)に容易に変換し得ることを承認するであろう。化合物(4)の塩を形成するのに適したプロトン酸は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等;又は有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンフルスルホン酸、4−メチルビシクロ [2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロパン酸、トリエチル酢酸、トリフルオロ酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等を含む。一般的に、化合物(4)の塩を形成するのに適したプロトン酸は、典型的には、4.0未満のpKa値を有し、限定されないが、前述の無機酸及びスルホン酸を含む。
【0042】
【化3】

【0043】
[0046]酸付加塩(4)は、化合物(2)及び(3)と比較して自然な環化に関して安定化されるので、プロポフォール・プロドラッグとして有利に利用することができる(スキーム1を参照されたい)。
【0044】
【化4】

[0047]ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の塩酸塩が提供される。ある種の態様において、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の塩酸塩(即ち、化合物(6))が提供される。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸のメシル酸塩が提供される。ある種の態様において、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸のメシル酸塩(即ち、化合物(7))が提供される。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸のトリフルオロ酢酸塩が提供される。ある種の態様において、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸のトリフルオロ酢酸塩(即ち、化合物(8))が提供される。
【0045】
【化5】

【0046】
[0048]ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物の結晶が提供される。ある種の態様において、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物の結晶が提供される。
【0047】
[0049]ある種の態様において、結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩が提供される。ある種の態様において、結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩(6)が提供される。ある種の態様において、図1に実質的に示されるX線粉末回折パターンにおける特性ピーク(2θ):5.1°±0.2°、9.7°±0.2°、11.0°±0.2°、14.1°±0.2°、15.1°±0.2°、15.8°±0.2°、17.9°±0.2°、18.5°±0.2°、19.4°±0.2°、20.1°±0.2°、21.3°±0.2°、21.7°±0.2°、22.5°±0.2°、23.5°±0.2°、24.4°±0.2°、25.1°±0.2°、26.8°±0.2°、27.3°±0.2°、27.8°±0.2°、29.2°±0.2°、29.6°±0.2°、30.4°±0.2°、及び33.4°±0.2°を有する結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸が提供される。ある種の態様において、X線粉末回折パターンにおける特性ピーク(2θ):5.1°±0.2°、9.7°±0.2°、11.0°±0.2°、14.1°±0.2°、15.1°±0.2°、15.8°±0.2°、17.9°±0.2°、18.5°±0.2°、20.1°±0.2°、22.5°±0.2°、23.5°±0.2°、25.1°±0.2°、29.2°±0.2°、29.6°±0.2°、及び33.4°±0.2°を有する(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸が提供される。
【0048】
[0050]ある種の態様において、約180℃〜約200℃の融点を有する結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩が提供される。ある種の態様において、約185℃〜約195℃の融点を有する結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩が提供される。ある種の態様において、約188℃〜約189℃の融点を有する結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩が提供される。
【0049】
[0051]ある種の態様において、結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩が提供される。ある種の態様において、結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩(7)が提供される。ある種の態様において、図2に実質的に示されるX線粉末回折パターンにおける特性ピーク(2θ):4.2°±0.1°、11.7°±0.1°、12.1°±0.1°、12.6°±0.1°、16.8°±0.1°、18.4°±0.2°、21.0°±0.1°、22.3°±0.1°、22.8°±0.2°、24.9°±0.2°、25.3°±0.1°、26.7°±0.2°、及び29.6°±0.1°を有する結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩が提供される。ある種の態様において、X線粉末回折パターンにおける特性ピーク(2θ):4.2°±0.1°、12.6°±0.1°、16.8°±0.1°、21.0°±0.1°、25.3°±0.1°、及び29.6°±0.1°を有する結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩が提供される。
【0050】
[0052]ある種の態様において、約156℃〜約176℃の融点を有する結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩が提供される。ある種の態様において、約161℃〜約172℃の融点を有する結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩が提供される。ある種の態様において、約166℃〜約167℃の融点を有する結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩が提供される。
【0051】
[0053]ある種の態様において、結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩は、対応する非結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩よりも室温及び湿気に安定である。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の結晶性塩酸塩、メシル酸塩又はトリフルオロ酢酸塩は、対応する2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の非結晶性塩酸塩、メシル酸塩又はトリフルオロ酢酸塩よりも室温及び湿気に安定である。
【0052】
[0054]ある種の態様において、結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩は、初めに2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩を溶媒に添加し、溶液又は懸濁液を形成することによって製造することができる。本明細書中で使用するとき、用語「溶液」及び「懸濁液」は、交換可能に使用され、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩が、溶解度にかかわらずに、溶媒又は溶媒混合物に置かれる実施態様を含むことを意味する。
【0053】
[0055]結晶化に使用される溶媒は、均一な溶媒、溶媒の組み合わせ、又は溶媒若しくは溶媒の組み合わせのいずれかであってよく、その中で、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩は温度に依存した溶解度を示す。ある種の態様において、溶媒は、水、メタノール、エタノール、1,2−プロパンジオール、t−ブタノール、n−ブタノール、イソプロパノール、酢酸、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、2−エトキシエタノール、1,2−エタンジオール、2−メトキシエタノール、又は前述のいずれかの混合物から選択され得る。ある種の態様において、溶媒は、溶媒混合物を含む。
【0054】
[0056]ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩が第一の温度範囲内で可溶であり、第二の温度範囲内で難溶である溶媒又は溶媒の組み合わせは、本明細書中に開示した方法に有意に使用することができる。「良」溶媒及び「抗溶媒」の混合物はまた温度に依存した可溶化を用いて使用することができ、即ち、温度上昇で溶解し、室温で結晶化する。適した「良」溶媒は、水、メタノール、エタノール、1,2−プロパンジオール、t−ブタノール、n−ブタノール、イソプロパノール、酢酸、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、2−エトキシエタノール、1,2−エタンジオール、2−メトキシエタノール、及び前述のいずれかの混合物を含む。適した「抗溶媒」の例は、アルカン類、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、cis−又はtrans−デカリン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサン;アレン類、例えば、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、クメン、o−キシレン、m−キシレン、及びp−キシレ;エーテル類、例えば、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル、及び1,4−ジオキサン;アルキルエステル類、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、及び酢酸イソブチル;そして、前述のいずれかの混合物を含む。
【0055】
[0057]ある種の態様において、溶解過程は、温度上昇させ、溶媒又は溶媒の組み合わせの沸点以下で実行することができる。したがって、ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩は、加熱して、場合によっては、振とう及び撹拌しながら、溶媒又は溶媒混合物に溶解することができる。加熱した溶液は、上昇した温度で保たれ、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩の完全な溶解を確かめてもよい。加熱した溶液はまた、いずれかの不溶な成分を除去するために上昇した温度でろ過してもよい。
【0056】
[0058]ある種の態様において、溶液は徐々に冷却され、結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩が提供され、濾過及び/又は減圧下で乾燥させることによって残った溶媒から分別してもよい。ある種の態様において、溶液は25℃で冷却することができる。ある種の態様において、溶液は、約0℃〜約25℃の間で冷却される。他の方法はまた、結晶化の技術分野における当業者に既知であり(例えば、溶媒蒸発、水に浸すこと(drowning)、化学反応、少量の所望の結晶を播種すること等)、結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩を提供するために使用してもよい。上述の開示は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩の結晶化を例証するものであるが、当業者は、開示された一般的な手法が、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその溶媒和物若しくは医薬として許容される塩のいずれかを結晶化するために使用され得ることを承認するであろう。
【0057】
[0059]ある種の態様において、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩(6)は、約50℃〜約還流温度でエタノール/トルエン(体積比約1/10)の混合物で溶解することができ、そして、ある種の態様においては約80℃の温度である。ある種の態様において、エタノール/トルエン混合物中の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩の濃度は、約0.01g/mL〜約0.10g/mLであり得る。ある種の態様において、エタノール/トルエン混合物中の(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩の濃度は、約0.03g/mLであり得る。次に、溶液は、約25℃まで冷却し、結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩を提供することができる。
【0058】
[0060]ある種の態様において、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸(7)は、約80℃〜約還流温度でエタノール/トルエン(体積比約3/25)の混合物で溶解することができ、そして、ある種の態様においては約100℃の温度である。ある種の態様において、エタノール/トルエン混合物中の(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩の濃度は、約0.05g/mL〜約0.50g/mLであり得る。ある種の態様において、エタノール/トルエン混合物中の(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩の濃度は、約0.1g/mLであり得る。次に、溶液は、約25℃まで冷却し、結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩を提供することができる。
【0059】
[0061]ある種の態様において、上述したように、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩の結晶を作製するために、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩の(S)−鏡像異性体が出発原料として使用される。ある種の態様において、上述したように、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩の結晶を作製するために、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩の(R)−鏡像異性体が出発原料として使用される。
【0060】
合成
[0062]2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸(2)又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物は、スキーム2に図示した合成法を介して製造することができる。これらの化合物及びそれの中間体を製造するために有用な出発原料は、商業的に利用可能であり、あるいは、周知な合成法(Harrisonら、“Compendium of Synthetic Organic Methods”Vols.1−8(John Wiley and Sons,1971−1996);“Beilstein Handbook of Organic Chemistry”,Beilstein Institute of Organic Chemistry,Frankfurt,Germany;Feiserら、“Reagents for Organic Synthesis”Volumes 1−17,Wiley Interscience;Trostら、“Comprehensive Organic Synthesis”,Pergamon Press,1991;“Theilheimer’s Synthetic Methods of Organic Chemistry”,Volumes 1−45,Karger,1991;March,“Advance Organic Chemistry”,Wiley Interscience,1991;Larock“Comprehensive Organic Transformations”,VCH Publishers,1989;Paquette,”Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis”,John Wiley&Sons,1995)によって製造することができる。化合物(2)の合成のための他の方法は、当業者に容易に明らかとなるであろう。したがって、本明細書のスキーム2に示された方法は、包括的というようりはむしろ例示である。
【0061】
【化6】

【0062】
[0063]プロポフォールは、N,N−ジメチルアニリンのような塩基、及びトルエンのような非プロトン性溶媒の存在下でホスゲン(又は均等な試薬)による処置によってクロロギ酸塩誘導体に変換することができる。化合物(9)は、ピリジンのような塩基、及びジクロロメタンのような非プロトン性溶媒の存在下で、場合によっては、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)のようなアシル転移触媒の存在下でL−セリン(10)の適切に保護された誘導体(D−セリンは、鏡像異性体を合成するために使用してもよい)と反応することができる。セリン誘導体(10)中のアミノ基及びカルボキシル基の両方は、保護基(それぞれ、Pg1及びPg2)を用いてマスクすることができ、標的化合物(2)の安定性と互換性がある条件下で除去に影響を受け易い。適した保護基Pg1は、tert−ブトキシカルボニル(Boc)及びカルボベンジルオキシ(CBz)を含み、それぞれ、酸性条件及び水素添加分解の条件下で除去される。適した保護基Pg2は、tert−ブチル(tBu)及びベンジル(Bn)エステルを含み、それぞれ、酸性条件及び水素添加分解の条件下で除去可能である。ある種の態様において、Pg1はBocであり、そして、Pg2はBnである。
【0063】
[0064]当業者は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸(2)が両性イオン種として(即ち、化合物(3)として)存在してもよく、あるいは、プロトン酸付加塩(即ち、化合物(4)(Xはアニオン性部分である)として)に容易に変換してもよいことを承認するであろう。
【0064】
【化7】

【0065】
[0065]ある種の態様において、Pg1は、Bocであり、そして、Pg2は、Bnであり、そして、水素添加分解及びトリフルオロ酢酸処置を含むスキーム2に概要した脱保護の順番が、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸のトリフルオロ酢酸、即ち、化合物(8)を提供する。
【0066】
【化8】

【0067】
化合物(8)は、溶媒の除去及びジエチルエーテルの添加後、白色固形物として単離される。水(又は水性/有機混合物)への(8)の溶解後、溶液のpHを約7に調節することにより(重炭酸塩のような弱塩基の添加を介して)、アモルファスな白色固形物として両性イオン(3)の沈殿に帰着した(スキーム4を参照されたい):
【0068】
【化9】

【0069】
[0066]両性イオン(3)は、酸性HXの溶液中への溶解、そして、沈殿又は真空中での溶媒の除去を介して、対応するプロトン酸付加塩(4)に変換することができる。つまり、水性HCl又はメタンスルホン酸への溶解は、スキーム5に図示されるように、それぞれ、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩(6)及び(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩(7)を与える。
【0070】
【化10】

【0071】
[0067]当業者は、上述のように開示した方法が、鏡像異性的に純粋な(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸、鏡像異性的に純粋な(R)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸、又はラセミ混合物を含むその鏡像異性体混合物、及び前述のいずれかの医薬として許容される塩、並びに前述のいずれかの医薬として許容される溶媒和物を製造するために使用してもよいことを承認するであろう。当業者はまた、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸が種々の組成純度及び鏡像異性的純度を有することができることを承認するであろう。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の組成純度を示すことができ、そして、ある種の態様においては少なくとも約99%を超える。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%の鏡像異性体純度を示すことができ、そして、ある種の態様においては少なくとも99%を超える。
【0072】
治療的/予防的使用及び投与方法
[0068]本明細書中に開示された2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶は、患者における片頭痛のような頭痛を治療及び/予防するために使用することができる。この方法は、片頭痛のような頭痛を治療及び/予防するために治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物を患者に投与することを含む。本明細書中の治療方法において、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸が、片頭痛のような頭痛を患っている患者に投与され得る。本明細書中の予防方法において、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸が、頭痛を発症する危険性のある患者に投与され得る。
【0073】
[0069]ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、頭痛を治療及び/又は予防するために経口的に投与され得る。しかしながら、ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、非経口的に(例えば、吸入又は注射によって)投与され得る。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、片頭痛のような頭痛を治療又は予防するために約100mg〜約4gの量で投与することができる。
【0074】
[0070]本明細書中に開示した2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶はまた、制吐剤として使用してもよく、そして、嘔吐の危険性がある患者又は吐気を催している患者に投与することができる。例えば、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、吐気及び嘔吐を治療及び/又は予防するために、同時に種々の化学療法剤及び/又は外科的手法で治療され、吐気を誘発している患者に投与されてもよい。ある種の態様において、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、吐気及び嘔吐を治療及び/又は予防するために患者に投与することができる。
【0075】
[0071]ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、吐気又は嘔吐を治療及び/又は予防するために経口的に投与することができる。しかしながら、ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、非経口的に(例えば、吐気又は嘔吐を治療及び/又は予防するために吸入又は注入によって)投与することができる。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、吐気又は嘔吐を治療及び/又は治療するために約100mg〜約4gの量で投与することができる。
【0076】
[0072]本明細書中に開示した2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶はまた、一般的な麻酔及び/又は鎮静を誘発及び/又は維持するために睡眠薬として使用してもよい。ある種の態様において、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、催眠状態、麻酔及び/又は鎮静を誘導するために患者に投与することができる。
【0077】
[0073]ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、一般的な麻酔薬として使用される場合、静脈内に投与することができる。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、吸入によって投与することができる。2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、当該技術分野において周知であるプロポフォールを調合するために使用される方法によって製剤化してもよい。ある種の態様において、水に可溶である2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸及びその医薬として許容される塩又は溶媒和物、並びにその結晶は、プロポフォールの水性製剤に使用される顕著に少ない乳濁剤又は可溶化剤を含有する注射可能な水溶液として調合されてもよく、それによって注射部位での不快さを避けられる。
【0078】
[0074]ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、鎮静剤として使用される場合(例えば、不安状態の治療、又は内視鏡的若しくは結腸内視鏡的手段のために)、毎日約100mg〜約4gの量で経口的に投与することができる。しかしながら、ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸はまた、鎮静剤として使用される場合、吸入、静脈内又は筋内に投与してもよい。
【0079】
[0075]本明細書中に開示した2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶は、プロポフォールに関する当該技術分野において記載されるのと同量であり、同じスケジュールで投与してもよい。ある種の態様において、一般的な麻酔を引き起こし、麻酔を維持し、そして、鎮静効果を引き起こすためのこれらの化合物の投与レベルは、プロポフォールに関する当該技術分野に記載される通りである。
【0080】
[0076]本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶はまた、生物学的材料における酸化を阻害するために使用してもよい。この方法は、生物学的材料を有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸と接触させることを含む。本明細書中の治療方法において、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、酸化の阻害によって治療される病的状態を患っている患者に投与することができる。本明細書中に開示される予防方法において、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、酸化的ストレスへの曝露の結果として疾患を発症する危険性のある患者に投与することができる。2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、炎症性成分に関与する中枢神経系の障害における酸化の予防及び/又は治療における特定の使用を見出してもよい。
【0081】
[0077]本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶は、気分障害、例えば、うつ病、又はより具体的には、抑うつ障害、例えば、1度の発作性又は再発性の重度のうつ病性障害、気分変調性障害、うつ病性神経症及び神経症性うつ病、拒食症、体重減少、不眠症、早朝覚醒又は精神運動性遅延を含むメランコリーうつ病、食欲、睡眠過剰、精神運動激越又は興奮性、季節性情動障害、及び小児性うつ病を含む非定型うつ病又は反応性うつ病;双極性障害又は躁うつ病、例えば双極性I障害、双極性II障害及び循環病;行為障害及び破壊的行動障害;不安障害、例えば、広場恐怖症を伴う又は伴わないパニック障害、不安障害の経歴を伴わない広場恐怖症、特定恐怖症、例えば特定動物恐怖症、社会不安症、対人恐怖症、強迫神経障害、外傷後ストレス障害及び急性ストレス障害を含むストレス障害、及び全般性不安障害;境界性人格障害;統合失調症及び他の精神障害、例えば統合失調症様障害、統合失調性感情障害、妄想性障害、短期間精神障害、共通性精神障害、妄想及び幻想を伴う精神障害、不安の精神症状、精神病と関連した不安、重篤な重大なうつ病性障害のような精神病性気分障害;急性躁病のような精神病性障害と関連した気分障害及び双極性障害と関連したうつ病、統合失調症と関連した気分障害;そして、知的障害と関連した行動障害、自閉性障害、及び行為障害を治療又は予防するために使用してもよい。
【0082】
[0078」本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶は、幻覚障害、認知症、及び健忘症や他の認知又は神経変性障害、例えば、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病、老年性認知症、アルツハイマー型の認知量、記憶障害、実行機能の喪失、血管性認知症、及び他の認知症、例えば、HIV病、頭部外傷、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、フリードリッヒ病、クロイツフェルト−ヤコブ病によるもの、又は複数の病因によるもの;運動障害、例えば運動不能、家族性発作性ジスキネジアを含む運動異常症、痙れん、トゥレット症候群、スコット症候群、PALSYS及び運動不能硬直性症候群;錐体外路運動障害、例えば薬剤誘発運動障害、例えば神経遮断薬誘発パーキンソン症候群、神経遮断薬性悪性症候群、神経遮断薬誘発急性筋失調症、神経遮断薬誘発急性静座不能、神経遮断薬誘発遅発性ジスキネジア及び薬剤誘発姿勢振動;薬物依存及び中毒(例えば、アルコール、ヘロイン、コカイン、ベンゾジアゼピン、ニコチン、又はフェノバルビトールの依存又は中毒)、及び行動中毒、例えばギャンブル中毒;そして、眼障害、例えば緑内障及び虚血性網膜症を治療又は予防するために使用してもよい。
【0083】
[0079]本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶は、運動障害、例えば運動不能、家族性発作性ジスキネジアを含む運動異常症、痙れん、トゥレット症候群、スコット症候群、PALSYS及び運動不能硬直性症候群;錐体外路運動障害、例えば薬剤誘発運動障害、例えば神経遮断薬誘発パーキンソン症候群、神経遮断薬性悪性症候群、神経遮断薬誘発急性筋失調症、神経遮断薬誘発急性静座不能、神経遮断薬誘発遅発性ジスキネジア及び薬剤誘発姿勢振動を治療又は予防するために使用してもよい。
【0084】
[0080]本明細書中に開示した2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶は、嗜癖障害及び退薬症候群、アルコール、ヘロイン、コカイン、ベンゾジアゼピン、精神活性物質、ニコチン、又はフェノバルビトール、及びギャンブル中毒を含む薬物依存性又は中毒を治療又は予防するために使用されてもよい。
【0085】
[0081]本明細書中に開示した2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶は、限定されないが、フリードリッヒ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、及びピック病を含む神経系の神経変性病を治療及び/又は予防するために使用されてもよい。いくつかの態様において、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピル−フェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸(例えば、毎日約100mg〜約4g)は、慢性神経変性疾患を治療及び/又は予防をするためにのみ投与される。
【0086】
[0082]本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶はまた、中枢神経系に対する外傷、例えば、頭蓋骨骨折及びその結果の浮腫、脳振とう、打撲傷、脳内出血、せん断損傷、硬膜下及び硬膜外血腫、脊髄損傷(例えば、脊髄の圧縮又は湾曲)を治療及び/又は予防するために使用されてもよい。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、中枢神経系の外傷性症状を治療及び/又は予防するために、静脈注射又は中枢神経系への(即ち、髄腔内(IT)又は脳内に)直接的な注入によって非経口的に投与される。ある種の態様において、治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸(例えば、約25mg〜約500mgのIV又はIM、及び約5mg〜約100mgのIT)は、中枢神経系の外傷性症状を治療及び/又は予防するために投与される。
【0087】
[0083]本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶はまた、発作(例えば、癲癇性発作)を治療及び/又は予防するために抗痙攣として使用されてもよい。痙攣を治療及び/又は予防するための方法は、このような治療を必要とする患者に治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸を投与することを含むことができる。いくつかの態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、痙攣を治療及び/又は予防するために経口的に投与することができる。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、痙攣を治療及び/又は予防するために非経口的に投与される。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、痙攣を治療及び/又は予防するために毎日約100mg〜約4gの量で投与することができる。
【0088】
[0084]本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶はまた、うつ病のような気分障害を治療及び/又は予防するための抗うつ剤として使用されてもよい。うつ病を治療及び/又は予防する方法は、このような治療を必要とする患者に治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸を投与することを含むことができる。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、うつ病を治療及び/又は予防するために経口的に投与することができる。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、うつ病を治療及び/又は予防するために非経口的に投与される。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、うつ病を治療及び/又は予防するために毎日約100mg〜約4gの量で投与することができる。
【0089】
[0085]上記の疾患又は障害を治療及び/又は予防するために使用される場合、本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶は、単独で又は他の試薬と併用して投与又は適用されてもよい。化合物及び/又はその医薬組成物は、単独で、又は他の医薬として活性な試薬と併用して投与又は適用されてもよい。
【0090】
[0086]本明細書中に開示される治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶を患者に投与することによる治療及び予防の方法が本明細書中に提供される。患者は、動物、ある種の態様においては哺乳動物、そして、ある種の態様においてはヒトであってもよい。
【0091】
[0087]本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいは結晶、及び/又はその医薬組成物は、経口的に投与することができる。2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸及び/又はその医薬組成物はまた、任意の他の慣用的な経路、例えば、輸液又はボーラス注射によって、上皮層又は粘膜層(例えば、口腔粘膜、直腸、及び腸粘膜等)を介した吸収によって投与されてもよい。投与は、全身的又は局所的であり得る。化合物及び/又は医薬組成物を投与するために使用することができる種々の輸送系(例えば、リポソーム中へのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、カプセル等)が知られる。投与法は、限定されないが、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、口腔内、舌下、鼻腔内、大脳内、膣内、経皮、直腸内、吸入、又は、特に耳、鼻、眼若しくは皮膚に局所的な投与を含む。
【0092】
[0088]ある種の態様において、脳室内、髄腔内及び硬膜外を含む任意の適した経路によって中枢神経系内に2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸及び/又はその医薬組成物を導入することが望ましいかもしれない。脳室内注射は、例えばOmmaya容器のような容器に結合した脳室内カテーテルの使用によって促進されてもよい。
【0093】
[0089]ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸及び/又はその医薬組成物は、持続放出系を介して輸送することができ、経口持続放出系であり得る。ある種の態様において、ポンプを使用してもよい(Langer、上述;Sefton,CRC Crit Ref Biomed Eng.1987,14,201;及び、Saudekら、N.Engl.J Med.1989,321,574)。
【0094】
[0090]更に他の態様において、高分子材料を使用することができる(「放出制御の医学的応用(Medical Applications of Controlled Release)」,Langer及びWise(編集)、CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);「制御された薬物の生物学的利用能(Controlled Drug Bioavailability)」,Drug Product Design and Performance,Smolen及びBall(編集)、Wiley,New York(1984);Langerら、J.Macromol.Sci.Rev.Macromol Chem.1983,23,61;Levyら、Science 1985,228,190;Duringら、Ann.Neurol.1989,25,351;及び、Howardら、J.Neurosurg.1989,71,105)。
【0095】
[0091]ある種の態様において、高分子材料は、経口持続放出輸送のために使用され得る。高分子は、例えば、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースを含む。他のセルロースエーテルが記載されている(Alderman,Int.J.Pharm.Tech.&Prod.Mfr.1984,5(3),1−9)。薬物放出に影響する因子は、当業者に周知であり、当該技術分野において記載されている(Bambaら、Int.J.Pharm.1979,2,307)。
【0096】
[0092]ある種の態様において、腸溶被覆製剤は、経口持続放出投与に使用されてもよい。被覆材料は、例えば、pH依存的溶解度(即ち、pH制御放出)を有する高分子、膨潤、溶解又は減衰の低速度又pHに依存した速度を有する高分子(即ち、時間制御放出)、酵素によって分解する高分子(即ち、酵素制御放出)、及び圧力の増加によって崩壊するフィルム層を形成する高分子(即ち、圧力制御放出)を含む。
【0097】
[0093]ある種の態様において、浸透輸送系は、経口持続放出投与に使用されることができる(Vermaら、Drug Dev.Ind.Pharm.2000,26,695−708)。ある種の態様において、OROS(商標)浸透装置は、経口持続放出輸送系に使用することができる(Theeuwesら、米国特許第3,845,770号;Theeuwesら、米国特許第3,916,899号)。
【0098】
[0094]吸入による投与に関して、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、多くの異なる装置によって肺へ慣習的に輸送されてもよい。例えば、Metered Dose Inhaler(MDI)は、適した低沸点高圧ガス、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適したガスを含有する小型の容器を利用し、肺に直接的に化合物を輸送するために使用してもよい。
【0099】
[0095]その代わりに、Dry Powder Inhaler(DPI)装置は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸を肺に投与するために使用されてもよい(例えば、Raleighら、Proc.Amer.Assoc.Cancer Research Annual Meeting 1999,40,397を参照されたい)。DPI装置は、典型的には、容器内で乾燥粉末雲を生じるためにガス爆発のようなメカニズムを使用し、その後、患者に吸入されてもよく、当該技術分野において周知であり、多くの商業的な供給源から購入されてもよい。一般的な変形は、複数回投与のDPI(MDDPI)系であり、1より多くの治療的な服用の輸送を可能にする。例えば、吸入器(inhaler)又は吸入器(insufflator)における使用のためのゼラチンのカプセル及びカートリッジが調合されてもよく、それらは、これらの系のためのラクトース又はスターチのような化合物及び適した粉末塩基の粉末混合物を含有する。
【0100】
[0096]2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸を肺へ輸送するために使用してもよい別のタイプの装置は、例えば、Aradigm Corporation,Hayward,CAによって供給される液体噴霧装置である。液体噴霧系は、肺に直接的に吸収されてもよい液体薬物製剤をエアロゾル化するための非常に小さな噴口を使用する。
【0101】
[0097]ある種の態様において、噴霧器装置は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸を肺に輸送するために使用される。噴霧器装置は、容易に吸入してもより微粒子を形成するために、例えば、超音波エネルギーを用いることによって、液体薬物製剤からエアロゾルを生じる(例えば、Verschoyleら、British J.Cancer 1999,80,Suppl.2,96;Armerら、米国特許第5,954,047号;van der Lindenら、米国特許第5,950,619号;及び、van der Lindenら、米国特許第5,970,970号)。
【0102】
[0098]ある種の態様において、電気流体力学(EHD)エアロゾル装置は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸を肺に輸送するために使用される。EHDエアロゾル装置は、液体薬物溶液又は懸濁液を噴霧するために電気エネルギーを使用する(例えば、Noakesら、米国特許第4,765,539号;Coffee,米国特許第4,962,885号;Coffee、国際公開WO94/12285;Coffee、国際公開WO94/14543号;Coffee、国際公開WO95/26234号;Coffee、国際公開WO95/26235;及び国際公開WO95/32807を参照されたい)。2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の電気化学的特性は、EHDエアロゾル装置を用いて化合物を肺へ投与する場合に最適化するための重要なパラメータであってよく、そして、このような最適化は、当業者に日常的に実行される。EHDエアロゾル装置は、既存の肺輸送技術よりも薬物を効率的に輸送することができる。肺内部への化合物輸送の他の方法は、当業者に既知である。
【0103】
[0099]本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶は、患者へのインビボでの投与に応じたプロポフォールの治療的又は予防的レベルを提供することができる。化合物のセリン保護分子は、化学的及び/又は酵素的に開裂して、薬物プロポフォールを放出してもよい。哺乳動物の胃、腸管腔、腸組織、血液、肝臓、脳、又は任意の他の適した組織に存在する1以上の酵素は、投与された化合物の保護分子を酵素的に開裂してもよい。例えば、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の保護分子は、胃腸管(例えば、胃又は腸管腔内)によって吸収される前、及び/又は胃腸管によって吸収された後(例えば、哺乳動物の腸組織、血液、肝臓、脳、又は他の適した組織内で)、開裂されてもよい。ある種の態様において、プロポフォールは、腸管粘膜バリアーを一時的に通過中にセリン保護分子に結合した状態であり、前全身性代謝から保護を提供する腸管粘膜バリアーからの保護を提供する。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、本質的には、腸細胞内でプロポフォールに代謝されないが、全身循環内で親薬物に代謝される。胃腸管による吸収後、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の保護部分の開裂は、これらのプロドラッグが能動輸送、受動拡散、又は能動及び受動過程の両方の併用のいずれかによって全身循環内で吸収されることが可能である。
【0104】
医薬組成物
[00100]本医薬組成物は、本明細書中に開示される治療有効量の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又はその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶を含有し、ある種の態様においては精製した形体であり、患者への適した投与のための形体を提供するように、適切な量の医薬として許容されるベヒクルと一緒に含有する。患者の静脈内に投与する場合、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸及び医薬として許容されるベヒクルは無菌であり得る。2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸が静脈内に投与される場合、水が好ましいベヒクルである。食塩水、デキシトロース水溶液、及びグリセロール溶液はまた、液体ベヒクルとして、特に注射可能な溶液に使用することができる。適した医薬ベヒクルはまた、スターチ、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、ライス、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等のような賦形剤を含む。本組成物はまた、必要に応じて、微量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH干渉剤を含有することができる。さらに、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤、及び着色剤は使用されてもよい。
【0105】
[00100]本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又は医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、又は結晶は、慣用的な混合、溶解、粒化、糖衣調製、粉末化、乳化、カプセル化、封入化、又は凍結乾燥過程の手段によって製造されてもよい。医薬組成物は、医薬として使用することができる製剤中への化合物の処理を促進する、1以上の医薬として許容される担体、希釈剤、賦形剤又は補助剤を用いた慣用的な方法で製剤化してもよい。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0106】
[00102]本医薬組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、ピル、ペレット、カプセル剤、液体含有カプセル剤、粉末剤、持続放出製剤、坐剤、乳剤、エアロゾル、スプレイ、懸濁剤、使用に適した任意の他の形体を採用することができる。いくつかの態様において、医薬として許容されるベヒクルは、カプセルである(例えば、Grosswaldら、米国特許第5,698,155号を参照されたい)。適した医薬ベヒクルの他の例は、当該技術分野において記載されている(Remington’s Pharmaceutical Sciences,Philadelphia College of Pharmacy and Science,19th Edition,1995を参照されたい)。
【0107】
[00103]経口輸送のための医薬組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁剤、顆粒、粉末剤、乳剤、カプセル剤、シロップ、又はエリキシル剤の形体であってよい。経口的に投与される医薬組成物は、1以上の任意の試薬、例えば、フルクトース、アスパルターム又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミントのような風味剤、ウインターグリーン油、又はチェリー着色剤及び保存剤を含有し、医薬として口当たりのよい製剤を提供することができる。さらに、錠剤又はピル形体である場合、医薬組成物は、胃腸管における崩壊及び吸収を遅延させるために被覆してもよく、それによって、延長された時間で持続した活性を提供する。浸透的に活性な駆動化合物を取り囲む選択的に透過性な膜はまた、経口投与される化合物及び医薬組成物に適している。これらの後期プラットフォームにおいて、カプセルを取り囲む環境からの流動体は、駆動化合物によって吸収され、隙間を通して試薬又は医薬組成物を置換するために膨潤する。これらの輸送プラットフォームは、即時放出製剤の急上昇のプロフィールとは対照的に、本質的に0次輸送プロフィールを提供することができる。モノステアリン酸グリセロール又はステアリン酸グリセロールのような時間遅延材料はまた使用してもよい。経口的医薬組成物は、標準的なベヒクル、例えば、マンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸ナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含むことができる。このようなベヒクルは、医薬品グレードであり得る。
【0108】
[00104]例えば、懸濁剤、エリキシル剤及び液剤のような経口液体製剤に関して、適した担体、賦形剤又は希釈剤は、水、生理食塩水、アルキレングリコール(例えば、プロピレングリコール)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)油、アルコール、約pH4〜約pH6の僅かに酸性な緩衝液(例えば、約5mM〜約50mMの酢酸、クエン酸、アスコルビン酸)等を含む。さらに、風味剤、保存剤、着色剤、胆汁塩、アシルカルニチン等を添加してもよい。
【0109】
[00105]前述した製剤に添加して、本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又は医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶はまた、持続性製剤として調合されてもよい。このように長期に作用する製剤は、移植によって(例えば、皮下若しくは筋内)、筋内注射によって投与してもよい。このように、例えば、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、適した高分子性若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳液として)、イオン交換レジンを用いて、又は、やや溶け難い誘導体として、例えばやや溶け難い塩として製剤化してもよい。
【0110】
[00106]噴霧器及び液体スプレイ装置及びEHDエアロゾル装置を用いた使用のために適した液体薬物製剤は、医薬として許容される担体と共に2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸を含むことができる。ある種の態様において、医薬として許容される担体は、アルコール、水、ポリエチレングリコール、又はペルフルオロカーボンのような液体である。場合によっては、別の材料は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の溶液又は懸濁液のエアロゾル特性を変えるために添加してもよい。ある種の態様において、この材料は、アルコール、グリコール、ポリグリコール又は脂肪酸のような液体である。エアロゾル装置における使用に適した液体薬物溶液又は懸濁液を調合する他の方法は、当業者に既知である(例えば、Biesalski、米国特許第5,112,598号;Biesalski、米国特許第5,556,611号)。
【0111】
併用療法
[00107]ある種の態様において、本明細書中に開示される2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又は医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいはその結晶は、少なくとも1つの他の治療薬との併用療法に使用することができる。2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸及び少なくとも1つの他の治療薬は、付加して、又はある種の態様において、相乗的に作用することができる。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸は、別の治療薬、例えば、別の鎮静剤、催眠剤又は麻酔剤(例えば、プロポフォール)の投与と同時に投与することができる。ある種の態様において、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸又は医薬として許容される塩若しくは溶媒和物、あるいは結晶は、別の治療薬、例えば、治療薬、例えば、別の鎮静剤、催眠剤又は麻酔剤(例えば、プロポフォール)の投与前又は投与後に投与することができる。
【0112】
[00108]本開示の医薬組成物は、本開示の1以上の化合物に加えて、同じであるか又は異なった疾患、障害、又は症状を治療するために有効な1以上の治療薬を含むことができる。
[00109]本開示の方法は、併用投与が本開示の1以上の化合物の治療的効果を阻害せず、及び/又は不利な併用効果を生まないという条件で、本開示の1以上の化合物又は医薬組成物、並びに1以上の他の治療薬の投与を含む。
【0113】
[00110]本開示の化合物、及び別の治療薬又は試薬は、追加的に又は相乗的に作用することができる。ある種の態様において、本開示の組成物は、別の治療薬の投与と同時に投与することができ、それは、本開示の化合物を含有するものと、又は異なった組成物中の同じ医薬組成物の部分であり得る。ある種の態様において、本開示の化合物は、別の治療薬の投与前又は投与後に投与することができる。併用療法のある種の態様において、併用療法は、例えば、特定の薬物と関連した不都合な副作用を最小限にするために、本開示の組成物を投与すること及び別の治療薬を含む組成物を投与することの間で変更することを含む。本開示の化合物は、限定されないが、毒性を含む不都合な副作用を潜在的に生じる可能性のある別の治療薬と同時に投与する場合、治療薬は、好都合には、不都合な副作用を誘発する閾値下に収まる投与量で投与することができる。
【0114】
[00111]ある種の態様において、薬物は、さらに、放出、生物学的利用能、治療効果、治療有効性、安定性等を増加、変更及び/又は制御する物質を含むことができる。例えば、治療効果を増大するために、薬物は、胃腸管を通じて薬物の吸収又は分散を増加し、又は全身循環中の薬物の分解を阻害する1以上の活性剤と同時に投与され得る。ある種の態様において、薬物は、薬物の治療効果を増大する薬理学的効果を有する活性剤と同時に投与され得る。
【0115】
[00112]ある種の態様において、本開示の化合物又は医薬組成物は、抗不安薬を含む疼痛を治療するための別の化合物、片頭痛のような頭痛を治療するための薬物、非ステロイド性抗炎症薬、オピオイド薬、鎮痛剤、及び前述のいずれかの組み合わせを含み、又はそれと一緒に患者に投与することができる。
【0116】
[00113]抗不安薬の例は、アルプラゾラム、ブロマアゼパム、オキサゼパム、ブスピロン、ヒドロキシジン、メクロクワロン、メデトミジン、メトミデート、アジナゾラム、クロルジアゼポキシド、クロベンゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ロプラゾラム、ミダゾラム、アルピデム、アルサーオキシロン、アンフェニドン、アザシクロノール、ブロミソバルム、カプトジアミン、カプリド、カルブクロラール、カルブロマール、クロラール・ベタイン、エンシプラジン、フレシノキサン、イプサピラオン、レソピトロン、ロキサピン、メタキアロン、メトピリロン、プロパノロール、タンドスピロン、トラザドン、ゾピクロン、及びゾルピデムを含む。
【0117】
[00114]片頭痛を治療するための薬物の例は、アルモトリプタン、アルペロプリド、コデイン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴタミン、エレトリプタン、フロバトリプタン、イソメテプテン、リドカイン、リスリド、メトクロプラミド、ナラトリプタン、オキシコデオン、プロポキシフェン、リザトリプタン、スマトリプタン、トルフェナム酸、ゾルミトリプタン、アミトリプチリン、アテノロール、クロニジン、シプロヘプタジン、ジルチアゼム、ドキセピン、フルオキセチン、リシノプリル、メチセルギド、メトプロロール、ナドロール、ノルトリプチイン、パロキセチン、ピゾチフェン、ピゾチリン、プロパノロール、プロトリプチリン、セルトラリン、チモロール、及びベラパミルを含む。
【0118】
[00115]非ステロイド性抗炎症薬の例は、アセクロフェナック、アセトアミノフェン、アルミノプロフェン、アムフェナック、アミノプロピロン、アミキセトリン、アスピリン、ベノキサプロフェン、ブロムフェナック、ブフェキサマック、カルプロフェン、セレコキシブ、クロリン、サリチル酸塩、シンクロフェン、シンメタシン、クロプリアック、クロメタシン、ジクロロフェナック、ジフルニザール、エトドラック、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、マジプレドン、メクロフェナム酸塩、ナブメトン、ナプロキセン、パレコキシブ、ピロキシカム、ピルプロフェン、ロフェコキシブ、スリンダック、トルフェナム酸塩、トルメチン、及びバルデコキシブを含む。
【0119】
[00116]オピオイド薬の例は、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベンジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、カルビフェン、シプラマドール、クロニタゼン、コデイン、デキストロモルアミド、デキストプロポキシフェン、ジアモルフィン、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、ジピラノン、フェンタニル、ヒドロモルホン、L−アルファアセチルメタドール、ロフェンタニル、レボルファノール、メペリジン、メタドン、メプタジノール、メトポン、モルフィン、ナルブフィン、ナロルフィン、オキシコドン、パラベレタム、ペチジン、ペンタゾシン、フェナゾシン、レミフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、及びトラマドールを含む。
【0120】
[00117]他の鎮痛剤の例は、アパゾン、ベンズピペリロン、ベンジルドラミン、カフェイン、クロニキシン、エトヘプタジン、フルピルチン、ネホパム、オルフェナドリン、プロパセタモール、及びプロポキシフェンを含む。
【0121】
[00118]ある種の態様において、本開示の化合物又は医薬組成物は、嘔吐を治療するための別の化合物を含むことができ、又はそれと一緒に患者に投与することができる。制吐剤の例は、アリザプリド、アザセトロン、ベンズキンアミド、ブロモプリド、ブクリジン、クロルプロマジン、シンナリジン、セレボプリド、シクリジン、ジフェンヒドラミン、ジフェニドール、ドラセトロン、ドロペリドール、グラニセトロン、ヒオシン、ロラゼパン、ドロナビノール、メトクロプラミド、メトピマジン、オンダンセトロン、ペルフェナジン、プロメタジン、プロクロルペラジン、スコポラミン、トリエチルペラジン、トリフルオペラジン、トリフルプロマジン、トリメトベンズアミド、トリメトベンズアミド、トロピセトロン、ドムペリドン、及びパロノセトロンを含む。
【0122】
[00119]ある種の態様において、本開示の化合物又は医薬組成物は、癲癇、フリードリッヒ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、及びピック病を含むことができ、又はそれと一緒に患者に投与することができる。
【0123】
[00120]癲癇を治療すための薬物の例は、GABA類似体、チアガビン、ビガバトリン;ペントバルビタールのようなバルビツレート;クロナゼパムのようなベンゾジアゼピン;フェニトインのようなヒダントイン;ラモトリジンのようなフェニルトリアジン;及び、カルバマゼピン、トピラメート、バルプロ酸、及びゾニスアミドを含む。
【0124】
[00121]フリードリッヒ病(例えば、運動失調)を治療するための薬物の例は、カルバマゼピン及びバルプロエートのような抗癲癇剤;プリミドン及びガバペンチンのような抗痙攣医薬品;プロプラノロールのようなベータ遮断薬;ブロモクリプチン及びペルゴリドのようなドーパミンアゴニスト;そして、ジアゼパム及びクロナゼパムのようなベンゾジアゼピンを含む精神安定剤を含む。
【0125】
[00122]抗パーキンソン病薬の例は、アマンタジン、バクロフェン、ビペリデン、ベンズトロピン、オルフェナドリン、プロシクリジン、トリヘキシフェニジル、レボドーパ、カルビドーパ、アンドロピニロール、アポモルフィン、ベンセラジド、ブロモクリプチン、ブジピン、カベルゴリン、エリプロジル、エプタスチグミン、エルゴリン、ガランタミン、ラザベミド、リスルリド、マジンドール、メマンチン、モフェジリン、ペルゴリド、ピリベジル、プラミペキソール、プロペントフィルリン、ラサギリン、レマセミド、ロピネロール、セレギリン、スフェラミン、テルグリド、エンタカポン、及びトルカポンを含む。
【0126】
[00123]アルツハイマー病管理を治療するための薬物の例は、ドネペジル、ガランタミン、及びタクリンを含む。
[00124]ハンチントン病を治療するための薬物の例は、ハロペリドール、クロルプロマジン、及びオランザピンのような抗精神病薬;フルオキセチン、セルトラリン塩酸塩、及びノルトリプチリンのような抗うつ剤;ベンゾジアゼピン、パロキセチン、ベンラファキシン、及びベータ遮断薬のような精神安定剤;リチウム、バルプロエート、及びカルバマゼピンのような気分安定剤;そして、ボツリヌス毒素を含む。
【0127】
[00125]ALSを治療するための薬物の例は、リルゾール、バクロフェン、チザナジン;イブプロフェン又はナプロキセンのような非ステロイド性抗炎症剤、そして、トラマドールを含む。
[00126]多発性硬化症管理のための薬物の例は、ベンシクラン、メチルプレドニソロンン、ミトキサントロン、及びプレドニソロンを含む。
【0128】
[00127]ある種の態様において、本開示のための化合物又は医薬組成物は、うつ病を治療するための別の化合物を含むことができ、又はそれと一緒に患者に投与することができる。抗うつ剤の例は、アミトリプチリン、アモキサピン、ベンモキシン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ドスレピン、ドキセピン、イミプラミン、キタンセリン、ロフェプラミン、メジホキサミン、ミアンセリン、マプロトリン、ミルタザピン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トリミプラミン、ベンラファキシン、ビロキサジン、シタロプラム、コチニン、ズロキセチン、フルオキセチン、フルボキサミン、ミルナシプラン、ニソキセチン、パロキセチン、レボキセチン、セルトラリン、チアネプチン、アセタフェナジンン、ビネダリン、ブロファロミン、セリクラミン、クロボキサンミン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、モクロベミド、フェニルヒドラジン、フェネルジン、セレギリン、シブトラミン、トラニルシプロミン、アデメチオニン、アドラフィニル、アメセルギド、アミスルプリド、アムペロジド、ベンアクチジン、ブプロピオン、カロキサゾン、ゲピロン、イダゾキサン、メトラリンドール、ミルナシプラン、ミナプリン、ネファゾドン、ノミフェンシン、リタンセリン、ロキシンドール、S−アデノシルメチオニン、エスシタロプラム、トフェナシン、トラゾドン、トリプトファン、及びザロスピロンを含む。
【実施例】
【0129】
実施例
[00128]下記の実施例は、2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸(2)のS鏡像異性体、及びその医薬として許容される塩若しくは溶媒和物の詳細な製造を記載する。材料及び方法の両方に対する多くの変更は、開示の範囲から逸脱することなしに実施してもよいことは当業者に明確であろう。
【0130】
[00129]下記の実施例において、下記の省略形は、下記の意味を有する。省略形が定義されていない場合、一般的に承認される意味を有する。
[00130]Boc=tert−ブチルオキシカルボニル
[00131]Cbz=カルボベンジルオキシ
[00132]DMAP=4−N,N−ジメチルアミノピリジン
【0131】
[00133]g=グラム
[00134]h=時間
[00135]kg=キログラム
[00136]kV=キロボルト
[00137]L=リットル
【0132】
[00138]LC/MS=液体クロマトグラフィー/質量分析
[00139]M=モーラー
[00140]min=分
[00141]mA=ミリアンペア
[00142]mg=ミリグラム
【0133】
[00143]mL=ミリリットル
[00144]mm=ミリメートル
[00145]mmol=ミリモル
[00146]μg=マイクログラム
[00147]μL=マイクロリットル
【0134】
[00148]μm=マイクロメートル
[00149]mM=ミリモーラー
[00150]μM=マイクロモーラー
[00151]v/v=体積対体積
【0135】
実施例1
(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸トリフルオロ酢酸塩(8)
工程1:2,6−ビス(イソプロピル)フェノキシカルボニル塩化物(9)
[00152]トルエン(40mL)中のプロポフォール(20.0g、112mmol)の冷却(0℃)溶液に、窒素雰囲気下でホスゲン(82mL、トルエン中20%)を添加した。反応混合物は、5分間撹拌し、その後、N,N−ジメチルアニリン(15mL、118mmol)を滴下して添加した。混合物は、室温までゆっくり加温させ、14時間撹拌した。次に、懸濁した混合物をろ過した。ろ過物を回収し、溶媒を真空中で除去した。残った粗生成物(9)は、さらに精製せずに次の工程に使用した。1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ7.18−7.29(mol,3H),3.00−3.07(m,2H),1.25−1.27(d,J=6.8Hz,12H)。
【0136】
工程2:ベンジル(S)−2−N−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩(11)
[00153]ジクロロメタン(100mL)中の(S)−Boc−Ser−OBn(12.25g、41.5mmol)の氷冷却溶液に、ピリジン(4.0mL、49.4mmol)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(0.5g、4.0mmol)、その後、化合物(9)(16mL、ジクロロメタン中3.0M)を添加した。得られた混合物は、室温まで加温させ、12時間撹拌した。その後、化合物はジエチルエーテル(150mL)で希釈し、10%のクエン酸水溶液で洗浄(2×30mL)し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、そして、真空中で濃縮した。粗生成物(11)は、さらに精製せずに次の工程に使用した。1H−NMR(400MHz、CD3OD):δ7.30−7.37(m,5H),7.14−7.20(m,3H),5.19(s,2H),4.52−4.57(m,2H),2.96−3.00(m,2H),1.44(s,9H),1.16−1.18(d,J=6.8Hz,12H)。
【0137】
工程3:(S)−2−N−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸(12)
[00154]10% Pd−Cの500mgを含有するフラスコに、窒素下でMeOH(200mL)中の化合物(11)(5.0g、10.0mmol)の溶液を添加した。得られた混合物は、3回脱気し、その後、バルーン器具を通じて水素を導入した。懸濁した混合物は、4時間激しく撹拌させた。反応混合物は、セライトのパッドを通してろ過し、真空中で濃縮し、表題化合物(12)を得た。さらに精製せずにその後の反応に使用した。1H−NMR(400MHz,CD3OD):δ7.14−7.22(m,3H),4.51−4.59(m,2H),2.98−3.02(m,2H),1.46(s,9H),1.18−1.19(d,J=6.4Hz,12H)。
【0138】
工程4:(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸トリフルオロ酢酸塩(8)
[00155]上記からの粗化合物(12)をジクロロメタン(60mL)中に溶解させ、トリフルオロ酢酸(20mL)で処理した。得られた混合物は、室温で3時間撹拌した。溶媒を真空中で除去し、粗残渣は、ジエチルエーテル(80mL)で希釈した。室温で2分間立たせた後、白色の沈殿物が形成した。次に、混合物をろ過し、白色の固形物をジエチルエーテルでリンスし、回収して、2.05gの表題化合物(8)を得た。1H−NMR(400mHz,CD3OD):δ7.16−7.24(m,3H),4.79−4.83(dd,J=12.0,4.8Hz,1H),4.58−4.62(dd,J=12.4Hz,2.8Hz,1H),4.45(t,J=3.2Hz),2.99−3.03(m,2H),1.18−1.19(d,J=7.2Hz,12H)。MS(ESI)m/z 310.2(M+H)
【0139】
実施例2
[00156](S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸(3)
[00157]H2O及びMeCN(20/1 v/v)中の化合物(8)の撹拌した溶液に、飽和した炭酸水素ナトリウム水溶液を滴下して添加した。この反応混合物のpHは、厳密に監視し、pHを7に調整した後に白色の固形物として所望の生産物が沈殿した。混合物をろ過し、表題化合物(3)を回収し、真空中で乾燥させた。1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ7.15−7.22(m,3H),4.64−4.68(dd,J=11.6,3.2Hz,1H),4.55−4.60(dd,J=11.6,6.8Hz,1H),3.28−3.30(dd,J=6.8,3.2Hz,1H),2.99−3.04(m,2H),1.18−1.19(d.J=6.4Hz,12H)。MS(ESI) m/z310.3(M+H)
【0140】
実施例3
結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩(6)の製造
[00158](S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸の塩酸塩は、過剰の1N塩酸溶液に化合物(3)を溶解させ、凍結し、その後、溶液を凍結乾燥させて、アモルファスな白色の固形物として所望の生産物を得た。
【0141】
[00159]塩酸塩(3.42g、9.89mmol)は、エタノール及びトルエン(1/10 v/v、110mL)の混合物中で80℃で溶解させ、その混合物を室温まで霊薬させて結晶化させた。大きな針状の結晶が、室温で48時間立たせた後に開始した。溶液は、室温で7日間立たせておいた後にろ過した。生成物(6)は、白色の結晶性固体として単離した(2.7g、79%収率)。1H−NMR(400MHz,CD3OD):δ7.16−7.24(m,3H),4.81−4.85(dd,J=12.4,4.4Hz,1H),4.59−4.63(dd,J=12.0Hz,3.2Hz,1H),4.45−4.49(dd,J=4.4,2.8Hz,1H),2.98−3.02(m,2H),1.18−1.19(d,J=7.2Hz,12H)。MS(ESI)m/z 310.3(M+H)。融点:188.1−189.1℃。LC/MSによって測定したように、3ヶ月後、室温で固形物又は水溶液として化合物(6)の分解はなかった。化合物(6)は、測定して、水中で7.58mg/mLであり、リン酸緩衝生理食塩水中で8.18mg/mLであった。
【0142】
実施例4
結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロピオン酸メシル酸塩(7)の製造
[00160]H2O(100mL)中の化合物(3)(4.44g、14.3mmol)の懸濁液に、メタンスルホン酸(0.93mL,14.3mmol)を添加した。得られた混合物は、固体が完全に溶解するまで、室温で撹拌した。次に、溶液を凍結し、そして、凍結乾燥させて、溶液を薄ピンク色の固形物として、所望の生産物を得た。
【0143】
[00161]メシル酸塩(5.8g、14.3mmol)は、エタノール及びトルエン(3/25 v/v、56mL)の混合物中で100℃で溶解させ、混合物を室温まで冷却させて結晶化させた。針状の結晶は開始し、室温で16時間立たせた後に形成した。溶液は、2日間室温で立たせた後にろ過した。生産物(7)は、白色の結晶性固形物として単離した(1.2g、21%収率)。1H−NMR(400MHz,CD3OD):δ7.16−7.23(m,3H),4.80−4.84(dd,J=12.0,4.4Hz,1H),4,57−4.61(dd,J=12.4,3.2Hz,1H),4.47−4.49(dd,J=4.4,2.8Hz,1H),2.98−3.01(m,2H),2.69(s,3H);1.18−1.20(dd,J=7.2,1.6Hz,12H)。MS(ESI) m/z310.3(M+H)。融点:166.9−167.3℃。
【0144】
実施例5
結晶性(R)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩(9)の製造
[00162]結晶性(R)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシ−カルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩(9)は、(S)−Boc−Ser−Obnを(R)−Boc−Ser−Obnに変えることによって、本質的には、実施例1〜4に開示したように製造した。
【0145】
実施例6
結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシ−カルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩(6)及び結晶性(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシ−カルボニルオキシ)−プロパン酸メシル酸塩のX線粉末解析(XRPD)分析
[00163]XRPD分析は、Cu Kα照射を用いたShimadzu XRD−6000 X線粉末回折装置を使用して実行した。この装置は、長期高精度焦点X線管を装備した。管のボルト数及びアンペア数は、それぞれ、40kV及び40mAにセットした。発散及び分散スリットは、1°でセットし、受入スリットは、0.15mmでセットした。回折された放射線は、NaIシンチレーション検出器を用いて検出した。3°/分(0.4秒/0.02°ステップ)での2.5〜40°2θのθ−2θ連続スキャンを使用した。器具整列は、シリコン標準を分析することによってチェックした。XRD−6000v.4.1を用いてデータを回収し、分析した。化合物(6)及び化合物(7)に対する代表的な回折パターンは、それぞれ、図1及び2に示す。明確に分析したピークの存在は、化合物(6)及び(7)の結晶特性を表示する。
【0146】
実施例7
ラットに対するプロドラッグの経口又は静脈内注射後のプロポフォールの取り込み
工程1:投与プロトコール
[00164]プロポフォール又はプロポフォール・プロドラッグは、6匹の成体雄性Sprague−Dawleyラット(体重約250g)のうち4匹の群に対して、静脈内ボーラス注射として、又は経口によるチューブからの栄養補給によって投与した。動物は、実験時間に意識があった。プロポフォール又はプロポフォール・プロドラッグは、25mgプロポフォール/kg体重に等しい投与量で、水溶液として経口的に投与した。静脈内に投与した場合、プロポフォールは、15mgプロポフォール/kg体重に等しい投与量で溶液として(Diprian(登録商標)、Astra−Zeneca)として投与した。動物は、試験前の一晩、及び投与後の4時間絶食にした。血液試料(0.3mL)は、経口投与後8時間の間隔で頸静脈カニューレを通して得た。血液は、1%ギ酸を含むアセトニトリルを用いて即座に静止させ、その後、分析まで−80℃で凍結させた。
【0147】
工程2:吸収した薬物に対する試料調製
[00165]1.空の1.5mL管に、アセトニトリル中の0.1%ギ酸300μLを添加した。
[00166]2.赤血球(300μL)は、EDTA管に異なる時間で回収し、激しく振とうして混合した。固定体積の血液(100μL)は、エッペンドルフに即座に添加し、激しく振とうして混合した。
【0148】
[00167]3.プロポフォール標準保存液(0.04、0.2、1、5、25、100μg/mL)の10μLを、アセトニトリル中の0.1%ギ酸300μLを用いて静止させた90μLの空の赤血球に添加した。その後、20μLのp−クロロフェニルアラニンは、各管に添加し、最終的な較正基準(0.004、0.02、0.1、0.5、2.5、10μg/mL)を作製した。
[00168]4.試料を激しく振とうし、14,000rpmで10分間遠心した。
[00169]5.LC/MS/MSによって上清を分析した。
【0149】
工程3:LC/MS/MS分析
[00170]Agilent 1100 二重ポンプ及びCTC HTS−PALオートサンプラーを装備したAPI 4000 LC/MS/MS分光計は、分析に使用した。Phenomenex Synergihydro−RP 4.6×30mmカラムは、分析中使用した。プロポフォール分析のための移動層は、95%のアセトニトリル中、(A)2mM 酢酸アンモニウム、及び(B)5mM 酢酸アンモニウムであった。プロポフォール・プロドラッグの分析のための移動層は、アセトニトリル中、(A)0.1% ギ酸、及び(B)0.1% ギ酸であった。勾配条件は、0.5分間10%B、その後2.5分で95%Bまでであり、次いで、0.5分間95%Bで維持した。SPCI供給源は、API4000上で使用した。分析は、プロポフォールに対してはネガティブイオンモード、及び、プロポフォール・プロドラッグに対してはポジティブイオンモードで実行した。各分析のためのMRM移行は、標準的な溶液を用いて最適化した。5μLの試料を注射した。非コンパートメント分析は、個別の動物プロフィールにおいて、WinNonli(v.3.1 Professional Version,Pharsight Corporation,Mountain View,Califonia)を用いて実行した。主要パラメータ推定における要約統計量は、Cmax(投与後の観察されたピークの濃度)、Tmax(最大濃度に対する時間はピーク濃度が観察された時間である)、AUC(0-t)(時間0から最後の回収時間までの血清濃度−時間曲線下の面積であり、log−直線台形法を用いて推定される)、AUC(0-∞)(時間0から無限の血清濃度時間曲線下の面積であり、無限までの外挿を用いた最後の回収時間に対するlog−直線台形法を用いて推定される)、及びt1/2,z(最終的な半減期)について実行した。
【0150】
[00171]プロポフォールの経口生物学的利用能(F)は、プロポフォールの経口投与後のプロポフォール濃度対時間曲線(AUC)下の面積と、投与量を標準化した基準に応じてプロポフォールの静脈内注射後のプロポフォール濃度対時間曲線のAUCとを比較することによって測定した。この測定技術を用いて、プロポフォールの経口生物学的利用能は、期待したよりも非常に低いことが分かった(F=0.23%)。
【0151】
[00172]プロポフォールの経口の生物学的利用能(F)は、ラットにおけるプロポフォール・プロドラッグ(6)又は(7)の経口投与から得られ、プロポフォール・プロドラッグ(6)又は(7)の経口投与後のプロポフォール濃度対時間曲線(AUC)下の面積と、当量のプロポフォールそれ自体の静脈内投与後に測定したAUCとを比較することによって決定した。プロドラッグ(6)又は(7)は、プロポフォールの10%以上の絶対的な経口の生物学的利用能を与え、即ち、等量のプロポフォールそれ自体の静脈内投与後のプロポフォールの生物学的利用能に匹敵した。つまり、プロドラッグ(6)又は(7)は、プロポフォールそれ自体の経口の生物学的利用能と比較して、プロポフォールの少なくとも約40倍高い経口の生物学的利用能を提供した。結果は、経口を採用した場合、本開示のプロドラッグは、ラットにおけるプロポフォールの治療的に有意な血液濃度を与えることを示す。
【0152】
実施例8
サルに対するプロドラッグの経口投与後のプロポフォールの取り込み
工程1:投与プロトコール
[00173]試験化合物は、25mg等量のプロポフォール/kg体重の投与量で、水又はPEG400中の溶液として、4匹の成体雄性カニクイ(Macaca fascicularis)ザル(体重約5kg)のうち2匹の群に、経口によるチューブからの栄養補給によって、又は静脈内ボーラス注射として投与した。動物は、試験前の一晩、及び投与後の4時間絶食にした。血液試料(1.0mL)は、経口投与後24時間の間隔で頸静脈カニューレを通して得た。血液は、1%ギ酸を含むアセトニトリルを用いて即座に静止させ、その後、分析まで−80℃で凍結させた。服用セッションの間での最低限の72時間の洗い出しを伴って、サルに試験化合物を投与する。
【0153】
工程2:LC/MS/MS分析
[00174]静止させた全血におけるプロポフォールの濃度は、Agilent 1100二重ポンプ及びAgilentオートサンプラーを装備したAPI 4000 LC/MS/MS装置を用いて決定した。カラムは、室温で操作するPhenomene Hydro−RP 4.6×50mmカラムであって。移動層は、(A)2mM 酢酸アンモニウム、及び(B)5mM 酢酸アンモニウムを含有する95% アセトニトリルである。勾配条件は、5%B、1分間、2.5分で90%Bまで増加させ、2分維持した。20μLの試料を注射した。Turbo−IonSpray供給源を使用し、そして、プロポフォールは、m/z=1.77におけるネガティブイオンモードに検出される。プロドラッグは、ポジティブイオンモードにおいて検出し、そして、Analyst 1.2の定量ソフトウェアを用いてピークを統合した。
【0154】
[00175]サルにおける実施例1のプロポフォール・プロドラッグ(8)の経口投与から得られる経口の生物学的利用能(F)は、プロポフォール・プロドラッグの経口投与後のプロポフォール濃度対時間曲線(AUC)下の面積と、等量のプロポフォールそれ自体の静脈内注射後に測定したAUCとを比較することによって決定した。上記のプロドラッグは、プロポフォールの10%以上の絶対的な経口の生物学的利用能を提供し、即ち、等量のプロポフォールそれ自体の静脈内投与後のプロポフォールの生物学的利用能に匹敵した。つまり、プロポフォール(8)は、プロポフォールそれ自体の経口の生物学的利用能と比較して、プロポフォールの少なくとも約40倍高い経口の生物学的利用能を提供した。結果は、経口的に採取した場合、サルにおけるプロポフォールの治療的に有意な血液濃度を提供する。
【0155】
実施例9
イヌに対するプロポフォール・プロドラッグの経口投与後のプロポフォール血中濃度
工程1:投与プロトコール
[00176]試験化合物は、プロポフォールの25mg等量〜300mg等量/kg体重の投与量で、水又は4% Labrasol中の溶液として、4匹の成体雄性ビーグル犬(体重約8kg)の群に経口からチューブによる栄養補給又は静脈内ボーラス注射によって投与した。動物は、試験前一晩と投与後4時間は絶食した。血液サンプル(1.0mL)は、経口投与後24時間の間隔で頸静脈を通して得た。血液は、1%ギ酸を含有するアセトニトリルを用いて即座に静止させ、その後、分析まで−80℃で凍結した。試験化合物は、服用セッションの間の最低限7日の洗い出しを用いてイヌに投与した。
【0156】
工程2:LC/MS/MS分析
[00177]プロポフォールの生物学的利用能は、実施例8、工程3に開示した手法に従ってLC/MS/MSによって決定した。
[00178]プロポフォールの経口の生物的利用能(F)は、イヌにおける実施例3のプロポフォール・プロドラッグ(6)の経口投与から得られ、プロポフォール・プロドラッグの経口投与後のプロポフォール濃度対時間曲線(AUC)下の面積と、等量のプロポフォールそれ自体の静脈内注射後に測定したAUCと比較することによって決定した。上記のプロドラッグは、プロポフォールの10%以上の絶対的な経口の生物学的利用能を提供し、即ち、等量のプロポフォールそれ自体の静脈内投与後のプロポフォールの生物学的利用能に匹敵した。結果は、本開示のプロドラッグが、経口を採用した場合、イヌにおけるプロポフォールの治療的に有意な血中濃度を提供したことを示す。
【0157】
[00179]最後に、本発明を実施する代替の方法があることを気づくべきである。したがって、本実施態様は、例示であって、限定的でないものとして考慮されるべきであり、そして、発明は、本明細書中に与えた詳細に限定されるべきではないが、本明細書に由来する請求の範囲の範囲及び均等内で修飾してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】[0041]図1は、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩酸塩のX線粉末回折パターンを図示する。
【図2】[0042]図2は、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸メシル塩のX線粉末回折パターンを図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸若しくは医薬として許容されるその塩又は医薬として許容されるそれらの溶媒和物。
【請求項2】
前記化合物が、(S)−2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸若しくは医薬として許容されるその塩又は医薬として許容されるそれらの溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記医薬として許容される塩が、塩酸塩、メシル酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記医薬として許容される塩が、塩酸塩、メシル酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、塩酸塩の結晶である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記塩酸塩の結晶が、X線粉末回折パターンにおける特性ピーク(2θ):5.1°±0.2°、9.7°±0.2°、11.0°±0.2°、14.1°±0.2°、15.1°±0.2°、15.8°±0.2°、17.9°±0.2°、18.5°±0.2°、19.4°±0.2°、20.1°±0.2°、21.3°±0.2°、21.7°±0.2°、22.5°±0.2°、23.5°±0.2°、24.4°±0.2°、25.1°±0.2°、26.8°±0.2°、27.3°±0.2°、27.8°±0.2°、29.2°±0.2°、29.6°±0.2°、30.4°±0.2°、及び33.4°±0.2°を有する、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記塩酸塩の結晶が、X線粉末回折パターンにおける特性ピーク(2θ):5.1°±0.2°、9.7°±0.2°、11.0°±0.2°、14.1°±0.2°、15.1°±0.2°、15.8°±0.2°、17.9°±0.2°、18.5°±0.2°、20.1°±0.2°、22.5°±0.2°、23.5°±0.2°、25.1°±0.2°、29.2°±0.2°、29.6°±0.2°、及び33.4°±0.2°を有する、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
前記塩酸塩の結晶が、図1に実質的に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
前記塩酸塩の結晶が、約188℃〜約189℃の融点を有する、請求項5に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が、メシル酸塩の結晶である、請求項4に記載の化合物。
【請求項11】
前記メシル酸塩の結晶が、X線粉末回折パターンにおける特性ピーク(2θ):4.2°±0.1°、11.7°±0.1°、12.1°±0.1°、12.6°±0.1°、16.8°±0.1°、18.4°±0.2°、21.0°±0.1°、22.3°±0.1°、22.8°±0.2°、24.9°±0.2°、25.3°±0.1°、26.7°±0.2°、及び29.6°±0.1°を有する、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記メシル酸塩の結晶が、X線粉末回折パターンにおける特性ピーク(2θ):4.2°±0.1°、12.6°±0.1°、16.8°±0.1°、21.0°±0.1°、25.3°±0.1°、及び29.6°±0.1°を有する、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
前記メシル酸塩の結晶が、図2に実質的に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
前記メシル酸塩の結晶が、約166℃〜約167℃の融点を有する、請求項10に記載の化合物。
【請求項15】
医薬として許容されるベヒクル、及び治療有効量の請求項1に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項16】
患者における頭痛、化学療法後又は外科手術後の吐き気及び嘔吐、神経変性障害、並びに気分障害から選択される疾患を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
頭痛が片頭痛である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
神経変性障害が、癲癇、フリードリッヒ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、及びピック病から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
患者における頭痛、化学療法後又は外科手術後の吐き気及び嘔吐、神経変性障害、並びに気分障害から選択される疾患を治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に治療有効量の請求項15に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項20】
頭痛が片頭痛である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
神経変性障害が、癲癇、フリードリッヒ病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、及びピック病から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩を製造する方法であって、下記:
2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩の溶解度が温度依存性であるところの溶媒中で2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩を加熱して溶液を提供すること;
上記溶液の温度を変化させて、溶媒中の2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩の溶解度を低下させて、結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩を形成すること;そして
上記溶媒から結晶性2−アミノ−3−(2,6−ジイソプロピルフェノキシカルボニルオキシ)−プロパン酸塩を単離すること
を含む、前記方法。
【請求項23】
前記塩が、塩酸塩、メシル酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記溶媒がエタノール及びトルエンを含み、そして、溶液の温度が約50℃から溶媒混合物の約還流温度である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
溶液の温度を変化させることが、溶液の温度を約25℃まで冷却することを含む、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−525501(P2008−525501A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548604(P2007−548604)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/047458
【国際公開番号】WO2006/071995
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(503455503)ゼノポート,インコーポレイティド (22)
【Fターム(参考)】