説明

セルのアレイを備える電気的に制御可能な光学部品

電気的に制御可能な光学部品(10)は、透光性を有するセル(3)のアレイと、2つの透光性を有する電極(5a、5b)であってセルのアレイの両側に互いに向かい合って平行に配置された2つの電極と、を備える。2つの電極間に位置する一部のセルは、異なる電気活性材料を収容しており、上記セルは、電極に印加される電気信号に応じて、少なくとも1つの光学的な量において異なる個別の変化を示す。これにより、光学的機能は、一時的に部品に付与され、部品の一面に平行に形成された光学的な量の勾配をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性を有する光学部品であって電気的に制御され、この部品の一面に平行に近接して配置されたセルのアレイを備える光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
それぞれ一部の同一の電気活性材料(electroactive material)で構成されたセルのアレイを備える部品が多く存在している。セルは、これらセルのために個別に設けられた電極によって電気的に制御される。すなわち、各セルは、上記セルの電気的な状態の制御に専用に割り当てられた2つの電極に関連付けられている。このため、部品は、セルが存在するにしたがって多くの電極対を備えており、各セルの状態が他のセルと独立して制御されることを可能とする。したがって、電極を接続する電力供給接続部を形成しながら、すべての電極を製造することは、複雑かつ煩雑な作業である。さらに、個別のセルの各電極及びその接続部は、セルが小さい寸法である場合に光回折を招く。この回折自体は、肉眼で見える散乱を発生する。すなわち、部品は、透光性を有さず、あるいはその透光性のレベルは、例えば眼科用途などの部材の一部の用途に十分でない。
【0003】
本発明の背景において、光学部品は、この部品を通して観測される画像が大幅なコントラストの損失なく知覚されると、透光性を有すると考えられている。すなわち、画像と上記画像を観測する人との間に透光性を有する部品が存在することは、画像品質を大きく低減させない。特に、回折は、光波が物理的に境界付けられると観測される光分散の現象であると定義されている(非特許文献1参照)。回折のため、光のスポットは、回折する光学部品を通ることによってもはやスポットとして知覚されない。結果として生じる肉眼で見える散乱またはコヒーレントでない散乱は、光学部材の画素化した面における乳白色の外見(milky appearance)または散乱円光(scattering halo)を作り出す。これは、部品を通して観測される画像のコントラストの損失を引き起こす。このコントラストの損失は、上述したように、透光性の損失に類似する。
【0004】
また、眼科用レンズの製造がレンズ全面にわたって存在する単一のキャビティに収容された電気活性物質を収容することは、周知である。透光性を有する電極は、物質の状態を制御するためにキャビティの両側で互いに向かい合って配置されている。この状態に応じて、眼鏡の光学特性は、変化する。例えば、エレクトロクロミックレンズの光吸収は、レンズの表面に平行に配置された2つの電極間に印加された電圧にしたがって変化する。このような部品は、部品を通過する画像の鮮明さ及び知覚のコントラストが低下しないという点で高い透光性を有する。しかしながら、このタイプの部品における電気的に制御可能な光学機能は、少なくかつとても単純であり、これら部品の多様性は、制限される。
【0005】
最終的に、透光性を有する光学部品は、電気活性材料が充填された単一のキャビティを有し、電気活性材料の状態を制御するために使用される電極の形状がキャビティのさまざまな点間の状態の変化を形成するように設計されているとして、記載されている。すなわち、電気的に制御可能な部品の光学機能は、キャビティ内にある電気活性材料の状態であって電気信号の均一でない分布によって形成される状態の空間的な変化に起因する。このため、別の形状の電極を用いると、より多くの電気的に制御可能な光学機能は、得られる。しかしながら、この場合、電極の縁部は、光学部品で視認可能であり、これは、上記部品の一部の使用に適合しない。さらに、連続して製造される2つの光学部品間の電極の形状が変化することは、困難であり、異なる光学機能を有する光学部品を低コストで製造することに適合しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J-P. Perez,「Optique, Fondements et Applications [Optics, Basics and Applications]」,第7版,Dunod,2004年10月,p.262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の1つの目的は、電気的に制御可能な透光性を有する光学部品の構造であって上記欠点を軽減する光学部品の構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明は、電気的に制御可能な透光性を有する光学部品であって、−密閉封止されたセルの透光性を有するアレイであって、当該光学部品の一面に平行に並列されたアレイと、−当該光学部品の前記一面に平行な2つの透光性を有する電極であって、当該光学部品の前記一面の法線で互いに向かい合って配置された電極と、を備える光学部品を提供する。
【0009】
本発明において、並列された配置されたセルは、2つの電極間に位置しており、異なる個別の電気活性材料を収容し、セルは、2つの電極に印加された電気信号に応じて少なくとも1つの光学的な量において異なる個別の変化を示し、2つの前記電極は、電気部品の全領域に対応する延長部を有する。
【0010】
本発明のもとで、用語「電気活性材料」(すなわち「電気光学材料」)は、電気刺激の印加によって変化する少なくとも1つの光学特性を有する任意の材料を意味すると理解される。
【0011】
このため、光学部品は、複数セル構造を提案し、さらに、複数セル構造は、複数のセルに収容されている電気活性材料の状態を同時に制御するのに適した一対の電極を組み込んでいる。そして、2つの電極は、これらを電気接続する必要がありうる接続部と共に、光学部品の領域の外側に位置する縁部を単に形成しまたは有し、このような縁部は、障害になるまたは美的に美しくない。このようにして、光学部品は、高い透光性を示し、透光性は、電極構造によってまたは電極のための電力供給接続部によって低減されない。
【0012】
さらに、電気的に制御可能な部品の光学機能は、1つのセルから他のセルまでのセルに収容されている電気光学材料における変化に起因する。このため、電気的に制御された異なる機能は、複数の光学部品の構造体において同一位置に対応するセルに収容されている電気活性材料のみの変更によって同じ電極で得られる。
【0013】
このような部品の2つの電極は、電気的に駆動され、これらは、2つの電極間に位置するセルすべてにおいてほぼ均一の電界を形成する。これらセルに収容された電気光学材料の個別の反応は、セルに収容されている電気活性材料自体のバラツキの結果異なる。すなわち、各セルは、特有の方法で反応し、これは、セルに収容されている電気光学材料に起因する。これにより、電気信号によって制御される電気的機能は、セルそれぞれの中に導入された電気光学材料にバラツキを持たせることによって、光学部品に初期的に書き込まれている。この機能は、部品を使用する人の要求に応じて電気的制御によって連続的に作動される。これにより、電気信号によって作動される光学機能は、部品全体にわたって得られる。
【0014】
セルを電気活性材料で充填する工程が印刷ヘッドまたはこれら電気活性材料の液滴を噴霧するためのヘッドによって行われると、セルにおける電気活性材料の分布にバラツキを持たせることは、ヘッドを操作するためのプログラムを変更することによって容易、迅速かつ安価に得られる。
【0015】
さらに、各セルを密閉封止することは、隣接するセルに収容されている異なる電気活性材料が光学部品の使用中に混合しないようにすることを確実にする。このようにして、部品は、隣り合うセルに収容されている材料が進行的に混合することに起因した機能の損失が現れることなく長期間使用される。
【0016】
本発明の一形態において、各セルは、連続した同質のプラスチックからなるフィルムであって10nmから500nm(ナノメートル)の一定厚さを有するフィルムによって密閉封止されており、上記フィルムは、セル及び電極の間にある。この連続するフィルムは、絶縁保護コーティングを形成しながら、有利には、「パリレン」と称されるポリ(パラーキシレン)で構成されている。このような形態は、電極とセルに収容された電気活性材料との間の距離を最適化し、この距離を最小化することは、電極に印加される電気パルスに続いて上記材料に印加される実際の電圧を最適化する。この距離を最小化することは、電気活性材料と電極との間に誘電体があることによる損失を回避し、これにより、非常に効率的に高い電圧をセルに収容されている電気活性材料に供給することを可能にする。本発明のこのような形態において、部品は、ポリエチレンテレフタレートのフィルムのようなプラスチックのフィルムで被覆するまたは接着することによって完全に封止される。
【0017】
また、1つの一部の形態において、本発明は、上述のような電気的に制御可能な透光性を有する光学部品を備え、2つの電極間に位置するセルの一部は、異なる個別の電気活性材料を収容し、2つの電極間に位置する他のセルは、非電気活性材料を収容し、上記材料は、2つの電極に印加される電気信号に無反応である。この一部の形態において、光学部品は、部品の一面に平行な透光性を有する電極を複数対さらに備え、各対の電極は、部品の上記一面の法線に平行な方向で互いに向かい合って配置されており、電気活性材料を収容するセルによって形成される領域に対応する延長部を有する。本発明のこの一部の形態において、電気信号によって作動する光学機能は、セルが電気活性材料で充填される領域に対応する部品の一部のみで得られ、セルは、一対の電極に接続されている。本発明のもとで、一対の電極は、これらが部品の透光性を低下させないような方法で光学部品の一面に配置される必要があることは、理解されるだろう。このため、光学部品が複数対の電極を備える場合、これらは、光学部品の周縁部の一部まで延在する少なくとも1つの延長部を有し、また、電極に接続される必要がある可能性のある接続部は、この周縁領域に形成され、光学部品における障害または美しくない特徴を制限する。
【0018】
本発明の一形態において、1/4波長板と称される追加層は、有利には、電極の一面に平行に位置し、これは、セルの透光性を有するアレイと接触する電極の面とは反対側に位置する面に位置する。このような1/4波長板は、特に複屈折を制限することによって光学部品の透光性を増大させることができる。このため、この1/4波長板は、電極を形成する材料の屈折率と光学部品の基材を形成する材料の屈折率との間で調節される屈折率を有する。
【0019】
これは、光学部品の電極及び基材が特に異なる屈折率を有し、結果としてこの屈折率差に起因する干渉縞がこの界面に現れるためである。これら干渉縞は、光学部品の光学機能に関して障害を構成し、特にこのような部品の透光性を阻害する。光学部品の支持基材と電極との間に1/4波長板を組み込むことによって、この干渉を排除することができる。1/4波長板の光学及び幾何学特性は、以下の式、
n=(n×n1/2
n×e=λ/4
によって得られ、ここで、nは、1/4波長板の波長λ=550nm(目の最大感度に対応する波長)に対する25℃における屈折率、nは、光学部品の基材の波長λ=550nmに対する25℃における屈折率、nは、1/4波長板と直接接触する電極の波長λ=550nmに対する25℃における屈折率である。
【0020】
すなわち、1/4波長板の屈折率nは、1/4波長板を囲む材料の屈折率の相乗平均である。
【0021】
(例えば波長λ=550nmに対する25℃における)基材の屈折率n及び電極の屈折率nが既知であれば、上記式は、1/4波長板の厚さe及び屈折率nを事前に決定するために使用される。
【0022】
1/4波長板は、SiO、TiO、ZrO、SnO、SbOa、Y、Ta及びこれらの混合物から選択された少なくとも1つのコロイド無機酸化物である。好ましいコロイド無機酸化物は、SiO、TiO、ZrO及びSiO/TiO及びSiO/ZrOである。コロイド無機酸化物の混合物の場合、混合物は、好ましくは、少なくとも1つの高屈折率の酸化物、すなわち25℃においてn>1.54の屈折率を有するものと、少なくとも1つの低屈折率の酸化物、すなわち25℃においてn<1.54の屈折率を有するものとである。好ましくは、無機酸化物の混合物は、2成分、特に低屈折率の酸化物と高屈折率の酸化物との混合物である。一般に、低屈折率の酸化物/高屈折率の酸化物の重量比は、20/80から80/20まで、好ましくは30/70から70/30まで、さらに好ましくは40/60から60/40まで変化する。
【0023】
無機酸化物粒子のサイズは、一般に、10から80nmまで、好ましくは30から80nmまで、さらに好ましくは30から60nmまで変化する。特に、無機酸化物は、小粒子、すなわち10から15nmまでのサイズを有する粒子と、大粒子、すなわち30から80nmまでのサイズを有する粒子とで構成されている。
【0024】
主として、コロイド無機酸化物からなる1/4波長板は、60から100nmまで、好ましくは70から90nmまで、さらに好ましくは80から90nmまでの厚さを有し、この厚さが干渉縞を最もよく減衰させるために光学部品についての使用を考慮して、1/4波長板の理論厚さにできるだけ近づける必要があることは知られている。
【0025】
この1/4波長板には、以下の技術、蒸着、あるいはイオンビーム蒸着、イオンビームスパッタ、陰極スパッタ、プラズマで励起された化学蒸着法(PE−CVD)の1つを用いた真空蒸着が適用されている。
【0026】
本発明における光学部品は、例えば測定、表示または画像を形成することを目的とした光学装置のレンズなどの発光装置の光学装置、光学レンズ、コンタクトレンズ、メガネのフレームに嵌め込まれるように設計された眼科用レンズ、ヘルメットの視覚、保護マスクまたはスポーツゴーグルのガラスなどである。
【0027】
セルに収容される電気活性材料は、偏光異方性を示す極性分子である。電極を用いて形成された電界は、見掛けの誘電率が各セル内で変化する方法で各セルにある分子の方向を変更する。特に、隣り合うセル間の誘電率の変化は、上記セル内の異方性分子の濃度を変化させることによって達成される。電気信号が2つの電極に印加されると、これらセルに収容されている電気活性材料は、光学的な屈折率において異なる個別の変化を示す。このため、光学的な屈折率勾配は、光学部品内で光学部品の一面に平行に形成され、部品に特別な光学的機能を付与することが可能となる。
【0028】
2つの電極間に位置するセルに収容された電気活性材料に応じて、かつこれら材料の分布に応じて、光学部品は、2つの電極に印加された電気信号に応じて以下の機能の1つあるいは上記機能の組み合わせ、すなわち、
− 部品を通過する光についての可変な波面変形を生成すること、すなわち、電極に印加される電気信号が位相板の位相遅れ機能を変更し、これにより波面の変形を生成すること、
− 可変なプリズムの能力を付与すること、
− 可変なホログラフィーの格子を形成すること、
− 光学部品が光学レンズである場合、レンズの光学的能力を可逆的に変化させること、
− 例えば幾何収差または色収差のためにレンズの光学収差を少なくとも1つ可変に矯正すること、
− メガネのフレームに嵌め込まれることを目的としたPAL(プログレッシブ付加レンズ(progressive addition lens))と称されるプログレッシブ光学レンズ(progressive ophthalmic lens)である場合、このレンズの設計を可変に変化させること、
を、もたらす。
【0029】
後者の機能の場合、電気信号は、例えば読書行為に適したプログレッシブ光学レンズの設計であって例えば遠方を視認する行動、スポーツまたは自動車などの運転に適した設計をもたらす。
【0030】
本発明の1つの有利点は、実際には電気的に制御された機能が光学部品を通過する光の偏光と無関係であることである。この場合、入射光の強度のすべてまたは大部分は、部材を通って送られ、画像が部品を通して観測される場合、減光効果(darkening effect)は、ほとんど現れない。
【0031】
また、本発明は、上述の光学部品を形成する光学レンズを備える眼鏡を提供する。このような眼鏡は、眼鏡をかける人に2つの異なるタイプの状況を適用する特徴を有する。そして、眼鏡をかける人は、彼の活動にしたがって彼の眼鏡の特性を変更し、より高い快適さを得る。
【0032】
本発明の他の特徴及び有利点は、添付の図面を参照しながら、非限定的な例示的な実施形態の以下の記載で明確になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明における眼科用レンズを示す平面図である。
【図2】図1のレンズを示す断面図である。
【図3】図1及び図2におけるレンズが設けられた眼鏡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、ここで眼科用レンズまたは眼鏡用レンズに関連して詳細に説明されるが、本発明がこの一部の例に限定されず、他のタイプの透光性を有する光学部品に適用されてもよいことは、理解すべきである。
【0035】
さらに、図を明確にすることを目的として、図示される部品の寸法が、実際の寸法または寸法の比率に一致しないことは、理解すべきである。
【0036】
図1及び図2に示すように、眼科用レンズのブランクとも称される眼鏡用レンズのブランク10は、凸状の前面S1及び凹状の後面S2を有する基材1を備える。基材1は、それ自体が現在使用されているような眼科用レンズのブランクとなっている。基材は、有機、無機または複合材料で形成されている。また、基材は、それ自体が目の矯正、太陽光線からの保護機能、フォトクロミック機能などのような光学機能を有する。周知のように、このようなブランク10は、符号Cが付された輪郭に沿って機械加工されて眼鏡のフレームに嵌め込まれるレンズを形成することを目的としている。
【0037】
レンズ10の面S1またはS2の一方、例えば前面S1は、互いに近接してこの面に平行に隣り合って配置されて面の舗装部を形成するセル3のアレイを有する。この舗装部は、正方形、三角形、六角形またはランダムのいずれかのパターンを有する。図1において、部分断面図は、例えば、セル3によって形成された正方形の舗装部を示す。セル3は、一面S1にほぼ垂直な壁部4によって分離されている。セル3の寸法dは、一面S1に平行に測定されており、壁部4の厚さeは、セル3によって占有される全領域がレンズ10の高い被覆率に対応するように選択されている。この被覆率は、同様に充填率と称され、特に95%を超え、またはされに98%を超える。このようにして、レンズ10上にあるセル3によって付与される機能は、非常に有効性を有する。
【0038】
さらに、セルの寸法d及び壁部の厚さeは、レンズをつける人にとって厄介なまたは美しくない光散乱または回折を引き起こさないように選択されている。このため、寸法dは、好ましくは1μmよりも大きい。また、この寸法は、約500μm未満であり、各セル3は、裸眼によってそれぞれが識別されない。このため、レンズ10は、眼科の分野に通常承認される美的基準に合う。好ましくは、セルの寸法は、5μm及び200μmの間であり、壁部4の厚さeは、一様に0.1μm及び5μmの間、有利には1μm及び3μmの間である。
【0039】
セルの深さ、すなわち一面S1に垂直な壁部4の高さは、好ましくは1μm及び50μmの間である。1つの特有の例示的な実施形態において、深さは、10μmと同等になっている。このようなシステムは、例えば国際公開第2006/013250号パンフレットに記載されている。
【0040】
符号5a及び5bが付された2つの電極は、一面S1に平行にセル3のアレイの両側に配置されている。図1に示すように、電極5a及び5bは、好ましくはレンズのブランク10の周縁部に重ね合わされてかつ近接して位置する輪郭を有する。電極5a及び5bは、上記電極が電圧の供給によって駆動されると、セル3を横断するほぼ均一な電界を形成することを可能とする。この電界は、電極5a及び5bに垂直に方向付けられている。
【0041】
セル3のアレイは、例えば国際公開第2006/013250号パンフレットまたは仏国特許出願公開第05/07722号に記載されているような当業者に周知である技術を用いた透光性を有するまたは吸収性のある材料で形成されている。電極5a及び5bは、有利にはインジウムがドープされた酸化スズすなわちITOのような導電性酸化材料や例えばポリアニリン、ポリアセチレンまたはPEDOTのような導電性ポリマーなどの透明導電材料で形成されている。また、電極5a、5bは、銀層のような薄い金属層で形成されてもよい。そして、これらは、有利には十分なレベルの透光性を有するために適切な厚さ及び屈折率の他の層と組み合わされる。これら他の層の間では、1/4波長層で形成されていることに言及しており、本発明の1つの一部の実施形態に示されている。セル3のアレイと電極5a、5bとは、有利には、基材1を機械加工する動作中に基材1と同時に切断されるように設計されている。
【0042】
電極5a、セル3のアレイ及び電極5bは、基材1の一面S1上に連続して形成されている。選択的に、追加の処理は、最終的なレンズに改善した特性を付与するために、電極5bの頂面に施されてもよい。このような処理は、当業者に周知であり、以下の層、衝撃耐性層6a、反射防止多層6b及び付着防止層6c、の1つまたは層の組み合わせを形成することで構成されている。他の追加の処理は、同様に電極5bの形成後にレンズに施されてもよい。
【0043】
本発明の1つの一部の実施形態において、有利にはポリ−パラキシレンまたはパリレンで構成されているプレスチックフィルムは、電極5bと1以上の電気活性材料が充填されたセル3のアレイとの間に一致して堆積されている。パリレンは、150℃でパリレンの二量体(parylene dimmer)を蒸発させることによって堆積されている。680℃で熱分解することで、真空蒸着される反応性モノマーが生成され、これにより、重合することによってセルの壁部4と各セルを充填する電気活性材料との双方の上にある連続する絶縁フィルムを形成する。そして、電極5bは、上記連続する均質かつ均一な厚さのフィルムであってパリレンで形成されたフィルム上に形成される。
【0044】
本発明の別の実施形態において、電極5a、セル3のアレイ、電極5b及び任意の層6a〜6cは、パリレンのフィルムと共に、可撓性を有する透光性フィルム支持体上にある二次元構造を形成し、透光性フィルム支持体は、基材1の一面S1に取り付けられる。そして、図2において符号2が付されたこのような構造は、基材1と別個に製造され、そしてレンズ10を着けることを目的とした人の要求にしたがって機械加工されて上記基材の一面に接着されている。可撓性を有する支持体上にある全体的に薄い二次元構造は、透光性を有する機能フィルムを形成する。本発明のこのような構造において、光学部品は、特に光学レンズまたは眼科用レンズによって形成される曲面に接着することが可能な特性を有する必要がある。このため、光学部品は、特に電極において、熱形成処理による変形に耐えて最小限にすることができる材料である必要があり、熱形成処理は、透光性を有する光学部品を眼科用レンズに一体化するのに特に適している。当業者は、平面を曲面に適合させるためのこのような処理が記載された仏国特許出願公開第05/033006号を特に参照する。
【0045】
電極5a及び5b間にあるセル3は、密閉封止されており、それぞれは、永久的に電気活性材料を収容できる。これら電気活性材料が液体、あるいはゲルである場合、これらは、例えば特に材料噴射タイプの印刷ヘッドを使用してセルが閉塞される前に単純に導入される。このようなヘッドは、複数の液滴射出口を備え、それぞれ異なる電気活性材料のリザーバから供給される。このため、セル3のアレイの前に印刷ヘッドを位置付けするようにプログラミングし、開口の1つから液滴の吐出を動作させることによって、一面S1上にある各セルの位置に応じて異なる材料をセル3に充填することが容易になる。いったんセル3が充填されると、セルは、壁部4の頂部に封止されまたは接着される連続するフィルムによって閉塞される。そして、電極5は、このフィルムによって支持される。光学部品が電気活性でない材料を収容するセルを備える場合、材料は、同様に液体あるいはゲルである。したがって、これらセルは、上述で使用されたような同一の材料噴射装置によって充填される。
【0046】
セル3に収容される電気活性材料は、これらセルに共通しかつセルに応じて変化する混合比で各セル3内で混合された少なくとも2つの材料で構成されている。2つの材料が液体である場合には、各材料のための2つの供給リザーバに接続された2つの開口を有する印刷ヘッドが適している。各セル3内の各材料の所望比は、印刷ヘッドによってセル内に噴射される各材料の量を適切に制御することによって得られる。
【0047】
本発明の1つの特有の実施形態において、少なくとも一部のセル3に収容されている混合物は、少なくとも1つが液晶である。混合物におけるこの液晶の比は、少なくとも一部のセル3間で変化し、電極5a及び5b間の電圧の印加に応じて光学的な屈折率に異なる変化量をセルに付与する。したがって、電圧を印加すると変化する各セルの光学特性は、セルに収容されている材料の光学的な屈折率と推定される。このため、一面S1に平行に方向付けられた屈折率の勾配は、電気制御を用いて一時的かつ可逆に生成される。セル3に収容されている電気活性材料のバラツキによって初期的に決定されるこれら勾配は、位相格子または空間光変調器(SLM)を形成する。これらは、異なる光学的機能に対応している。このような機能の例は、すでに上述されている。当業者は、一部の光学特性を得るために発生させる必要があることを理解している。好ましくは、少なくとも1つのセル3に収容されている電気活性材料は、2つの電極間に印加される電気信号に応じて、0.02を超える、好ましくは0.02及び0.2の間あるいは0.2を超える光学的な屈折率の変化量を有する。このようにして、電気的に制御可能なレンズ10の光学的機能は、十分な幅を有する。
【0048】
この光学的機能は、二値的な方法で2つの所定の一定状態間で切り替えられてもよい。あるいは、光学的機能の連続的な変化は、2つの極状態間で適切な連続的な電気的制御を用いて制御されてもよい。
【0049】
図3は、上述の2つのレンズ10を組み込んだ眼鏡100を示す。眼鏡100は、2つの側部11を有するフレームを備え、フレームには、レンズ10が嵌め込まれている。さらに、眼鏡は、少なくとも1つの電気信号源12と、各レンズ10を信号源12に接続する電気接続部13と、を有する。各信号源12は、適切な寸法の電池またはバッテリである。2つの接続部13は、各レンズ10に電気信号を送信する必要がある。これら2つの接続部は、レンズの電極5a及び5bそれぞれに接続されている。
【0050】
このため、各接続部13には、レンズがフレームに嵌め込まれるとレンズの電極5a、5bの一方と接触するのに適した端子部が設けられている。さらに、制御装置14は、1以上の接続部13に配置されており、電気信号が信号源12と少なくとも一方のレンズ10との間で伝達されることを可能とする。制御装置14は、眼鏡に組み込まれる検出器によって送信される信号に応じた手動制御装置または自動制御装置である。
【0051】
図3は、各レンズ10が別個の電気回路によって供給される眼鏡100を示す。この回路は、各レンズに対して、電圧源12と、2つの供給接続部13と、レンズと同じ側に位置するフレームの側部11に担持されたスイッチ14と、を備える。しかしながら、例えば単一の電圧源12と同一の電気信号を双方のレンズ10に送信する単一のスイッチ14とを備える他の電気回路が代わりに使用されてもよいことは、理解すべきである。そして、これらは、2つのレンズ10の光学的機能であってレンズの電気活性材料によって付与される光学的機能を同時に作動するように接続されている。
【0052】
最後に、電気部品12〜14は、図3に示す方法と異なる方法で、フレームあるいはレンズ10に設けられてもよい。例えば、2つのレンズ10の一方のために設けられた電気信号源12は、フレームに担持される代わりにレンズ自体に一体化されてもよい。これにより、当業者は、各光学部品またはこのような部品が設けられた眼鏡に関して、上記で詳述された一部の実施形態を超えて、本発明が多くの別の方法によって実行されてもよいことを理解するだろう。
【符号の説明】
【0053】
1 基材、2 構造体、3 セル、5a,5b 電極、10 光学部品、12 電気信号源、13 電気接続部、14 制御装置、d 寸法、S1 前面,一面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に制御可能な透光性を有する光学部品(10)であって、
− 密閉封止されたセル(3)の透光性を有するアレイであって、当該光学部品の一面(S1)に平行に並列されたアレイと、
− 当該光学部品の前記一面に平行な2つの透光性を有する電極(5a、5b)であって、当該光学部品の前記一面に対する法線方向で互いに向かい合って配置された電極と、
を備える光学部品において、
複数の並列された前記セル(3)は、2つの前記電極間に位置し、異なる個別の電気活性材料を収容し、前記セルは、2つの前記電極に印加された電気信号に応じて少なくとも1つの光学的な量において異なる個別の変化を示し、
2つの前記電極(5a、5b)は、当該電気部品の全領域(S1)に対応する延長部を有することを特徴とする光学部品。
【請求項2】
少なくとも1つの1/4波長板をさらに有し、
前記1/4波長板は、前記電極の全面にわたって平行に延在していることを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
前記1/4波長板は、SiO、TiO、ZrO、SnO、SbOa、Y、Ta及びこれらの混合物から選択された少なくとも1つのコロイド無機酸化物であり、
前記1/4波長板の厚さは、60nm及び100nmの間、好ましくは70nm及び90nmの間、より好ましくは80nm及び90nmの間であることを特徴とする請求項2に記載の光学部品。
【請求項4】
2つの前記電極間に位置する前記セルのいくつかは、異なる個別の電気活性材料を収容し、
2つの前記電極間に位置する他の前記セルは、非電気活性材料を収容し、前記非電気活性材料は、2つの前記電極に印加される電気信号に無反応であることを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項5】
当該光学部品の前記一面に平行な複数対の前記電極を備え、
前記電極の各対は、当該光学部品の前記一面の法線に平行な方向で互いに向かい合って配置されており、電気活性材料を収容する前記セルによって形成される領域に対応する延長部を有することを特徴とする請求項4に記載の光学部品。
【請求項6】
前記電極間に位置する前記セル(3)は、95%を超える充填比で当該光学部品の前記一面の対応する部分を占めることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項7】
10nm及び500nmの間の厚さを有するプラスチックからなるフィルムであって前記電極及び前記セルの間に位置するフィルムを有し、
前記フィルムは、前記セルと前記セルに収容された電気活性材料とを分離する壁部の頂部に適合して覆うことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項8】
プラスチックの前記フィルムは、ポリ(パラ−キシレン)のフィルムであることを特徴とする請求項7に記載の光学部品。
【請求項9】
前記セル(3)それぞれは、当該光学部品の前記一面に平行に測定して、1μm及び500μmの間の少なくとも1つの寸法(d)を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項10】
前記セル(3)それぞれは、当該光学部品の前記一面に平行に測定して、5μm及び200μmの間の寸法(d)を有することを特徴とする請求項9に記載の光学部品。
【請求項11】
当該光学部品は、基材(1)と、可撓性を有する透光性のフィルムであって前記基材に取り付けられる薄い構造体(2)を備えるフィルムと、を備え、
薄い前記構造体は、前記セル(3)のアレイと、2つの電極(5a、5b)と、を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項12】
少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている電気活性材料は、液体またはゲルであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項13】
少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている非電気活性材料は、液体またはゲルであることを特徴とする請求項4に記載の光学部品。
【請求項14】
2つの前記電極間に位置する少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている電気活性材料は、前記セルに共通する少なくとも2つの材料の成分の混合物であり、
前記混合物における前記成分の比は、一部の前記セル間で変化することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項15】
2つの前記電極間に位置する少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている電気活性材料は、2つの前記電極に印加される電気信号に応じて光学的な屈折率において異なる別個の変化を示すことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項16】
2つの前記電極間に位置する少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている電気活性材料は、少なくとも1つの液晶を組み込んだ混合物であり、
前記混合物における前記液晶の比は、一部の前記セル間で変化することを特徴とする請求項9に記載の光学部品。
【請求項17】
2つの前記電極間に位置する少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている電気活性材料は、2つの前記電極に印加される電気信号に応じて0.02を超える光学的な屈折率の変化を示すことを特徴とする請求項15または16に記載の光学部品。
【請求項18】
2つの前記電極間に位置する少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている電気活性材料は、2つの前記電極に印加される電気信号に応じて0.02及び0.2の間の光学的な屈折率の変化を示すことを特徴とする請求項17に記載の光学部品。
【請求項19】
2つの前記電極間に位置する少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている電気活性材料は、2つの前記電極に印加される電気信号に応じて0.2を超える光学的な屈折率の変化を示すことを特徴とする請求項15または16に記載の光学部品。
【請求項20】
2つの前記電極間に位置する少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている電気活性材料は、当該光学部品を通過する光の波面の変形が2つの前記電極に印加される電気信号に応じて変化するように選択されていることを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項21】
2つの前記電極間に位置する少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている電気活性材料は、前記セルによって形成されるホログラフィーの格子が2つの前記電極に印加される電気信号に応じて変化するように選択されていることを特徴とする請求項1から19のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項22】
光学レンズを備えることを特徴とする請求項1から21のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項23】
2つの前記電極間に位置する少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている電気活性材料は、前記電極に対応する前記レンズの一部における屈折力が2つの前記電極に印加される電気信号に応じて変化するように選択されていることを特徴とする請求項22に記載の光学部品。
【請求項24】
2つの前記電極間に位置する少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている電気活性材料は、前記電極に対応する前記レンズの一部における少なくとも1つの光学収差の矯正が2つの前記電極に印加される電気信号に応じて変化するように選択されていることを特徴とする請求項22に記載の光学部品。
【請求項25】
光学収差は、幾何収差であることを特徴とする請求項24に記載の光学部品。
【請求項26】
光学収差は、色収差であることを特徴とする請求項24に記載の光学部品。
【請求項27】
前記レンズは、コンタクトレンズであることを特徴とする請求項22から26のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項28】
画像を測定、表示または形成することを目的とした光学装置のレンズを備えることを特徴とする請求項22から26のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項29】
前記レンズは、眼鏡のフレームに嵌め込まれることに適した眼科用レンズであることを特徴とする請求項22から26のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項30】
前記レンズは、一部品での目視かつ/または保護素子を形成するのに適したマスクであることを特徴とする請求項22から26のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項31】
2つの前記電極間に位置する少なくとも一部の前記セル(3)に収容されている電気活性材料は、プログレッシブレンズの設計が2つの前記電極に印加される電気信号に応じて変化するように選択されることを特徴とする請求項27、29または30のいずれか1項に記載の光学部品。
【請求項32】
フレームと、前記フレームに嵌め込まれる請求項29または30に記載の光学部品(10)と、を備えることを特徴とする眼鏡。
【請求項33】
電気信号源(12)と、電気接続部(13)と、をさらに有し、
2つの前記電気接続部は、前記レンズ(5a、5b)の2つの前記電極を前記電気信号源に接続し、電気信号を前記光学部品(10)に供給することを特徴とする請求項32に記載の眼鏡。
【請求項34】
前記電気信号源(12)は、前記フレームに支持されていることを特徴とする請求項33に記載の眼鏡。
【請求項35】
前記電気信号の前記電気信号源(12)と前記光学部品(10)との間の電気信号の伝達を制御するのに適した制御装置(14)をさらに有することを特徴とする請求項32または33に記載の眼鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−507119(P2010−507119A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532795(P2009−532795)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061090
【国際公開番号】WO2008/046858
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(505425373)エシロール アンテルナシオナル (コンパニー ジェネラレ ドプテイク) (74)
【Fターム(参考)】