説明

セルフクリーニングフィルム

【課題】
プラスチックであるベースフィルムの耐候性、耐久性を改良するため、基材のフィルムと自浄性表面層の間に特定の層を設けることにより、耐候性、耐久性にすぐれたセルフクリーニングフィルムを提供すること。
【解決手段】
プラスチックフィルムの一方の表面に不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)の層及び防汚性表面層を設けてなることを特徴とするセルフクリーニングフィルムであり、重合体(A)からなる層が、変性ビニルアルコール系重合体(B)を含む不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)を紫外線で硬化してなる重合体(A)からなる層であることを特徴とするセルフクリーニングフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は防汚性を有するセルフクリーニングフィルムに関し、特にその耐久性に優れるセルフクリーニングフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から防汚性を有するセルフクリーニングフィルムが提案されている。セルフクリーニングフィルムは、表面に親水性を有する層や二酸化チタン等の光触媒を含む光触媒を含有する層を設けることによって、その表面がチリ、ホコリ等による汚れが付き難くなり、また汚れが付着しても雨水等により容易に洗い流されるという、いわゆるセルフクリーニング性と呼ばれる性質を発揮する表面層を有するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなセルフクリーニングフィルムは、一般に屋外やトンネル内等で使用されることが多く、長期間使用できるための耐候性、耐久性が求められる。そこで、本発明はプラスチックであるベースフィルムの耐候性、耐久性を改良するため、基材のフィルムと自浄性表面層の間に特定の層を設けることにより、耐候性、耐久性にすぐれたセルフクリーニングフィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明はプラスチックフィルムの一方の表面に不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)の層及び防汚性表面層を設けてなることを特徴とするセルフクリーニングフィルムに関する。また、本発明は、プラスチックフィルムの一方の表面に不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)の重合体(A)からなる層及び防汚性表面層を設けてなることを特徴とするセルフクリーニングフィルムに関する。これらのセルフクリーニングフィルムを構成する重合体(A)からなる層は、変性ビニルアルコール系重合体(B)を含む不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)を紫外線で硬化して調製することが望ましい。さらに、プラスチックフィルムの表面と重合体(A)はアンダーコート層を介して積層されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明のセルフクリーニングフィルムは、防汚性を有するだけでなく、屋外やトンネル内等での使用においても、長期間使用可能であり、耐候性、耐久性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のセルフクリーニングフィルムは、プラスチックフィルム1の一方の表面に不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)の層及び防汚性表面層を設けてなるものである。
用いられるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、アクリル等の各種のプラスチックフィルムを用いることができ、特に透明性に優れるものを使用することによりセルフクリーニングフィルムの透明性を保つことができる。
また、耐光性のよいプラスチックフィルムを選択することによりセルフクリーニングフィルムとしての耐久性をより向上させることもできる。
これらプラスチックフィルムの厚さは通常1ミクロンないし500ミクロン、中でも10ミクロンないし200ミクロンが用いられることが多い。
プラスチックフィルムの表面は予めアンダーコートされていてもよい。
このような透明樹脂層としては、紫外線、電子線等で硬化させるコート層、熱硬化させるコート層がある。中でも、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のアンダーコート層を設けることが望ましい。この中ではエポキシアクリレート系のアンダーコート層を設けることが特に望ましい。
【0007】
プラスチックフィルムの一方の表面に設ける不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)の層は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等の予めポリマーとなっているものをドライラミ、コーティング等で設けてもよく、また、アクリル酸、メタクリル酸など不飽和カルボン酸化合物のアルカリ土類金属塩等の多価金属塩(a)を水溶液等の溶液で塗布し、それを紫外線照射等により重合して得られるポリマーでもよい。
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)を塗布後重合して得られる重合体は、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを配合してもよい。中でも不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)に、変性ビニルアルコール系重合体を配合した不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)から重合体を得ることが望ましい。
【0008】
このようなポリビニルアルコール、中でも変性ビニルアルコール系重合体を配合した不飽和カルボン酸多価金属塩(a)をコーティング等により塗布した後に重合して得られる層は、好ましくは50重量%以下のポリビニルアルコール、中でも変性ビニルアルコール系重合体を含むことが望ましい。
これにより柔軟性に富む層を得ることができる。
例えば、変性ビニルアルコール系重合体を配合した不飽和カルボン酸多価金属塩(a)を用いる場合、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩(a)と変性ビニルアルコール系重合体、好ましくは50重量%以下の変性ビニルアルコール系重合体(B)を含んでなる溶液を、予めプラスチックフィルムに塗布し、その後紫外線照射等により、プラスチックフィルム上にフィルム状の層を形成することができる。
【0009】
これら不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)を形成する成分である多価金属化合物は、周期表の2A〜7A族、1B〜3B族及び8族に属する金属及び金属化合物であり、具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物等である。これら金属化合物の中でも、二価の金属化合物が好ましく、特には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等が好ましい。
【0010】
不飽和カルボン酸多価金属塩(a)に配合することがあるビニルアルコールは、ビニルアルコール系重合体は、ビニルアルコールを主体とする重合体で、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られる重合体であり、エチレンを19mol%以下、好ましくは15mol%以下含んでいてもよい。
このようなビニルアルコール系重合体は、通常、重合度が100ないし3000、好ましくは300ないし2000程度である。これらの鹸化度は高いものが好適であり、通常は70ないし99.9%、中でも85ないし99.9%のものを用いることができる。
【0011】
不飽和カルボン酸多価金属塩(a)に配合することがある変性ビニルアルコール系重合体は、ポリビニルアルコールに、種々公知の反応性を有する基(反応性基)を付加、置換あるいはエステル化等により反応性基を結合して変性したもの、酢酸ビニル等のビニルエステルと反応性基を有する不飽和化合物とを共重合して得た共重合体を鹸化したもの等を挙げることができる。このような変性ビニルアルコール系重合体(B)は、通常、重合度が100ないし3000、好ましくは 300ないし2000程度であり、その鹸化度は通常70ないし99.9%と高いものが好ましく用いられ、とくに85ないし99.9%のものが好ましい。
変性ビニルアルコール系重合体(B)が有する反応性基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、チオール基、シリル基、アセトアセチル基、エポキシ基などが挙げられる。
変性ビニルアルコール系重合体(B)に於ける反応性基の量は、通常、0.001〜50mol%程度である。(反応性基とOH基の合計が100mol%)。
このような変性ビニルアルコール系重合体(B)の具体例としては、例えば、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物あるいはその誘導体と反応させ(メタ)アクリレート基を導入してなる(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B1);イソチウロニウム塩やチオール酸エステル有するビニルモノマーと酢酸ビニルとを共重合し、得られた重合体を酸や塩基で分解しチオール基とする方法、高分子反応により、ビニルアルコール系重合体の側鎖に反応性官能基を導入する方法、チオール酸の存在下にビニルエステル類を重合し、得られた重合体を鹸化することにより分子の末端にのみチオール基を導入する方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にチオール基(−SH基)を有する、チオール基変性ビニルアルコール系重合体(B2);ビニルアルコール系重合体あるいはカルボキシル基又は水酸基を含有する酢酸ビニル系重合体にオルガノハロゲンシラン、オルガノアセトキシシラン、オルガノアルコキシシラン等のシリル化剤を用いて後変性によりシリル基を付加する方法、あるいは酢酸ビニルとビニルシラン、(メタ)アクリルアミド−アルキルシラン等のシリル基含有オレフィン性不飽和化合物との共重合体を鹸化し、分子内にアルコキシシリル基、アシロキシシリル基あるいはこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩等のシリル基を導入する方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にトリメトシキシラン基、トリエトキシシラン基等のトリアルキコキシシラン基、トリカルボニルオキシシラン基等を有する、シリル基変性ビニルアルコール系重合体(B3);ビニルアルコール系重合体を酢酸溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ビニルアルコール系重合体をジメチルホルムアミド、またはジオキサンなどの溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法およびビニルアルコール系重合体にジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にアセトアセチル基を有する、アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(B4);その他反応性官能基を有するモノマーを酢酸ビニルと共重合した後鹸化することにより、側鎖に反応性官能基を導入する方法、高分子反応により、ポリビニルアルコールの側鎖に反応性官能基を導入する方法、連鎖移動反応を利用して反応性官能基を末端に導入する方法等、種々公知の方法により分子内に、(メタ)アクリルアミド基、アリル基、ビニル基、スチリル基、分子内二重結合、ビニルエーテル基等のその他のラジカル重合基を付加してなる変性ビニルアルコール系重合体、エポキシ基、グリシジルエーテル基等のカチオン重合基を付加してなる変性ビニルアルコール系重合体等が例示される。
【0012】
(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B1)の(メタ)アクリロイル基の量(ーOH基との対比;エステル化率)は0.001〜50%、より好ましくは0.1〜40%が通常である。
チオール基変性ビニルアルコール系重合体(B2)としては、イソチウロニウム塩やチオール酸エステルを有するビニルモノマーと酢酸ビニルとを共重合し、得られた重合体を酸や塩基で分解しチオール基とする方法等で製造され、通常、チオール基変性率は0.1〜50mol%の範囲にある。
【0013】
シリル基変性ビニルアルコール系重合体(B3)としては、ビニルアルコール系重合体あるいはカルボキシル基又は水酸基を含有する酢酸ビニル系重合体にトリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン等のオルガノアセトキシシランあるいはトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン等のシリル化剤を用いて後変性によりシリル基を付加する方法、あるいは酢酸ビニルと例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン等のシリル基含有オレフィン性不飽和化合物との共重合体を鹸化する方法等で得られる分子内にアルコキシシリル基、アシロキシシリル基あるいはこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩等のシリル基を有する重合体等があり、シリル基の変性量は、通常、0.1〜50mol%の範囲にある。
【0014】
アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(B4)としては、前記ビニルアルコール系重合体の溶液、分散液又は粉末に液状又はガス状のジケテンを添加反応させて得られるものであり、通常、アセトアセチル化度は1〜10mol%、好ましくは3〜5mol%の範囲にある。
【0015】
これら変性ビニルアルコール系重合体(B)を含む不飽和カルボン酸多価金属塩(a)を塗布した後重合させてポリマーとした層とすることが望ましい。このような層は特に柔軟性に優れた層となる。
なお、不飽和カルボン酸多価金属塩(a)には、その他、エチレングリコール・ジアクリレート、ジエチレングリコール・ジアクリレート、トリエチレングリコール・ジアクリレート、PEG#200・ジアクリレート、PEG#400・ジアクリレート、PEG#600・ジアクリレート等の多価不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸化合物一価金属塩、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物、エチレンなどのオレフィン化合物等、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤等の各種添加剤等が配合されていてもよい。
【0016】
不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)の層の厚さは通常0.05〜100μm、中でも0.1〜50μm、その中でもは0.1〜10μm程度である。
不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)の層を形成するには、例えば変性ビニルアルコール系重合体(B)を、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40〜0.001重量%、とくに好ましくは30〜0.01重量%の範囲で含む20未満の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)の溶液を塗工した後、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)等を重合することにより形成する方法がある。不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)の溶液(塗工層)を重合させるには、種々公知の方法、例えば、紫外線等の電離性放射線の照射及び/または熱により重合させ硬化させる方法がある。その場合、必要に応じて、光重合開始剤が配合される。
【0017】
不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)からなる層が形成された後、その上に防汚性表面層が形成される。防汚性表面層の表面は、チリ、ホコリなどが付き難い性質を有しており、また汚れが一時的に付着しても雨水等により容易に洗い流される層である。
このような防汚性を発揮できる層であれば特に限定されることなく利用することができる。例えば、その表面が親水性を有する層や、紫外線の照射による光触媒作用で活性化してその表面が親水化するものでもよい。このような防汚性表面層の表面の純水に対する接触角は25°未満、好ましくは15°未満であることが望ましい。
【0018】
本発明に用いられる防汚性表面層としては、フッ素系ポリマーからなる防汚層、ポリシロキサン等のシラノール系の防汚層、光触媒系の防汚層、アルキッド樹脂系の防汚層などが例示される。
フッ素系ポリマーからなる防汚層には、アクリル酸やメタクリル酸などの不飽和カルボン酸と3,3,3−トリフルオロ−n−プロパノールとのエステル化合物や、1,1,1−トリフルオロ−4−ペンテン等を重合して得られる防汚層が例示される。シラノール系の防汚層としては、シラノール基含有シリコーンレジンを主成分とする親水性無機系塗料から形成される塗布硬化被膜が例示される。
【0019】
また光触媒作用を利用して紫外線照射による活性化で表面が親水化する防汚層としては、光触媒を含む光触媒含有層がある。光触媒としては、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化第二鉄、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0020】
これらの防汚性表面層の中では、シリコーン化合物の縮合物をバインダー成分とするものが好適である。このようなシリコーン化合物の縮合物は2官能ないし4官能のアルコキシシランあるいは、その一部または全部がその加水分解物、及び/又は部分加水分解物であってもよい。
【0021】
防汚性表面層としては、シリコーン化合物(マトリクス形成材料)の縮合物にシリカ等の無機微粒子を配合したものが好適である。
特にシリコーン化合物を液体溶媒(例えば水、有機溶媒等)に溶解させたコーティング剤組成物を塗布して形成される塗膜を乾燥して形成することが望ましい。
コーティング材組成物中のリコーン化合物はシロキサン結合を有する化合物であるか、あるいはフィルム状物を形成する過程において、シロキサン結合を新たにもたらし得るシリコーン化合物である。
これらのシリコーン化合物には、加水分解可能置換基および水酸基から選択される基の少なくとも2つが、同じまたは異なるSi原子に結合していることが好ましい。
加水分解可能置換基は水の存在下で加水分解して水酸基を有する化合物(シラノール化合物)となる。従って、加水分解可能置換基および水酸基から選択される基の少なくとも2つ有するシラノール化合物は、水の存在下、加水分解可能置換基および水酸基から選択される基の少なくとも2つが縮合して新たにシロキサン結合を形成する。
【0022】
これらのシラノール化合物や(ポリ)シロキサン化合物は、アルコキシル基を有する場合、アルコキシル基が加水分解して生成する水酸基を有することができる。その結果、これらのシラノール化合物および(ポリ)シロキサン化合物も、コーティング材組成物を塗布して乾燥するに際して、少なくとも部分的に縮合して架橋する。従って、この縮合に際して、生成する全ての水酸基が縮合に関与するとは限らず、一般的には、一部分の水酸基は、そのままの状態で残ることが通常である。
このように、シラノール化合物および(ポリ)シロキサン化合物は、架橋して多孔質のマトリクスを形成する。
【0023】
本発明で用いるコーティング材組成物のシリコーン化合物は、SiX(Xは加水分解可能な1価の有機置換基又は水素、炭化水素基であって、そのうちの少なくとも2個以上は加水分解可能な一価の有機置換基例えばアルコキシ基である。)で表される2官能ないし4官能の加水分解可能オルガノシラン、あるいはこの加水分解可能オルガノシランの部分加水分解物及び/又は完全加水分解物が縮合して生成するシロキサン結合を有する化合物、好ましくは複数のシロキサン結合を有するものである。
【0024】
このようなシラン化合物、(ポリ)シロキサン化合物、2官能ないし4官能の加水分解可能オルガノシランならびにシリコーンレジンからフィルム状の防汚性表面層が形成される。
【0025】
上記のコーティング材組成物には、各種の微粒子を含有させることができる。微粒子としては、シリカ系等の金属酸化物系微粒子が好ましい。このような微粒子は通常外径が5〜2000nmであり、より好ましくは20〜100nmである。微粒子としては、SiO、SiOx、TiO、TiOx、SnO、CeO、Sb、ITO、ATO、Al等が例示される。
【0026】
本発明で用いるコーティング材組成物は、2官能ないし4官能の加水分解可能オルガノシラン、その部分加水分解物及び加水分解物、ならびにこれらが縮合したもの(即ち、シリコーンレジン)から選択されるものである。
Si(OR)4−X の(式中、Rは1価の炭化水素基であり、炭素数1〜8の1価の炭化水素基が好適である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ペプチル基、オクチル基等のアルキル基等が例示さる。Xは2、3、又は4である。)
本発明で用いるコーティング材組成物において、微粒子の量とバインダーの量は、特に限定されないが、一般的には微粒子の重量のバインダーに対する重量比(即ち、微粒子重量/バインダーの重量)は、30/70ないし95/5が通常である。
【0027】
アルコキシシラン等の加水分解可能オルガノシランを加水分解する場合、必要に応じて触媒が使用される。触媒としては酸触媒が好ましく、有機酸(例えば酢酸、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸等)無機酸(例えば塩酸等)が例示される。
【0028】
コーティング材組成物は、微粒子および上述のシリコーン化合物を含有して調製される。用いられる溶媒には、水または水と他の液体、例えば有機溶媒との混合物を含むのが好ましい。この有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類、エチレングリコール等のジエチレングリコール誘導体、及びジアセトンアルコール等の親水性有機溶媒が例示される。
【0029】
コーティング材組成物は、有機溶媒や水で希釈してもよく、またコーティング材組成物を調製するにあたって、予め個々の成分を必要に応じて有機溶媒、水等で希釈しておいてもよい。
調製されたコーティング材組成物は不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)の層の表面にコーティングして塗膜を形成し、この塗膜を乾燥、硬化させることによって防汚性表面層を設けられる。この表面の乾燥被膜は、表面水滴接触角が40°以下の親水性であるので、汚れが付着し難く、付着した汚れも雨水などで容易に洗い流され、表面防汚性に形成される。
【0030】
コーティング材組成物をプラスチックフィルムの表面にコーティングする方法は特に限定されない。例えば、ディップコート、ロールコート、グラビアコート等の通常の各種塗布方法が例示される。
プラスチックフィルムの表面に形成した被膜は乾燥後、熱処理するのが好ましい。
熱処理により被膜の機械的強度が向上する。熱処理の温度は通常の温度でよく、特に限定されない。
例えば、4官能アルコキシレジンから形成したシリコーンレジンを用いて被膜を形成する場合、低温、好ましくは100〜300?、より好ましくは50〜150?で5〜30分熱処理する。
防汚性表面層の膜厚は適宜選択することができ限定されるものではない。
通常は0.01μmないし約10μmであり、乾燥後のクラック発生防止のため、0.01μmないし約0.5μmとすることが通常である。
【0031】
本発明のセフルクリーニングフィルムには、防汚性表面層とは反対の表面に、粘着層を設けることが望ましい。セルフクリーニングフィルムを例えば屋外のガラス面やトンネルの内壁面に施工する場合、看板、標識等の被着体に貼付することができ、長期間粘着性能を発揮するものであれば、特に公知の粘着剤を用いることができる。そのような粘着剤として、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤などがある。
【0032】
本発明のセルフクリーニングフィルムはプラスチックフィルム、必要に応じてアンダーコート層、さらに不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)の層及び防汚性表面層を有しており、防汚性表面層とは反対側に、粘着層を設けることも行われる。粘着層には必要に応じてセパレートフィルムも併用される。粘着層の厚みとしては3〜50μm、中でも10〜40μm程度が通常である。
セパレートフィルムの厚みは10〜100μm、中でも25〜75μm程度が通常である。
【0033】
以下に実施例を示す。
<アクリル酸亜鉛塩溶液(A)の作製>
アクリル酸亜鉛(アクリル酸のZn塩)水溶液(浅田化学社製、濃度30重量%(アクリル酸成分:20重量%、亜鉛成分10重量%))と、メチルアルコールで25重量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)〕及び界面活性剤(花王社製 商品名;エマルゲン120)をmol分率でそれぞれ98.5%、1.2%、0.3%となるように混合し、アクリル酸亜鉛塩溶液(A)を作製した。
【0034】
<19%アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(B)の調製>
ポリビニルアルコール−1(和光純薬社製、重合度500、鹸化度98.5mol%、商品名;PVA500)10.0g(0.23mol)を500mLの丸底三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。1−メチル−2−ピロリジノン300mLをフラスコ内に加えた。100?に昇温し、2時間攪拌することで均一溶液を得た。その均一溶液を25?に冷却した後、塩化アクリロイル10.2g(0.113mol)をフラスコ内に滴下し反応させた。90分後、反応混合物を1800mLのテトラヒドロフラン(以下、THFと略記する)に滴下することでアクリレート化ポリビニルアルコールを析出させた。上澄みはデカンテーションにより取り除き、得られた沈殿物を100mLの水/メタノール(1/1 vol)に溶解させた。得られた溶液を800mLのTHFに滴下することでアクリレート化ポリビニルアルコールを析出させた。上澄みはデカンテーションにより取り除いた。この再沈殿操作をさらに2回繰り返すことでアクリレート化ポリビニルアルコールの精製を行った。精製したアクリレート化ポリビニルアルコールの一部(約50mg)を1mLの重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、 1H−NMR測定を行ったところ、アクリロイル基の置換率は19mol%であった。精製したアクリレート化ポリビニルアルコールを100mLの水/メタノール(1/1 vol)に溶解させることで、固形分濃度が8.9重量%の19%アクリレート化ポリビニルアルコール(B)の溶液を得た。
【0035】
実施例
〈アンダーコート層の形成〉
厚さ65μmの軟質アクリル系のフィルム(東洋インキ製造株式会社製 ダイナカルエコサイン 600T)にエポキシアクリレートからなるアンダーコート剤を塗布して、アンダーコート層を形成した。
〈不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)の層の形成〉
アクリル酸亜鉛と19%アクリレート化ポリビニルアルコール(B1)を各々表1記載の重量比(固形分)でアクリル酸Zn塩溶液(A)及び19%アクリレート化ポリビニルアルコール(B1)の水溶液を混合し、次いで当該溶液の固形分濃度が16重量%になるように調整して塗工用溶液を作製した。次に、塗工用溶液を、上記のアンダーコート層の上に、メイヤーバーで固形分が1.6g/m2になるように塗布し、熱風乾燥器を用いて乾燥した。
この後、塗布面を上にしてステンレス板に固定し、UV照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、UV強度:180mW/cm2 、積算光量:180mJ/cm2 の条件で紫外線を照射して重合を行うことにより、不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)の層を設けた。
【0036】
〈防汚性表面層の形成〉
親水性無機コーティング液(松下電工製フレッセラR)をの溶媒をイソプロピルアルコールのみに調製した後に、上記の不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)の層の上に、ワイヤーバーコーターによって塗布して膜厚が約100nmの塗膜を形成し、1分間放置して乾燥した後に、被膜を80?で10分間酸素雰囲気下で熱処理して、防汚性表面層を設けた。
【0037】
〈セルフクリーニングフィルム〉
上記により得られたセルフクリーニングフィルムは、柔軟性に優れ耐候性、耐久性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムの一方の表面に不飽和カルボン酸系化合物からなる重合体(A)の層及び防汚性表面層を設けてなることを特徴とするセルフクリーニングフィルム。
【請求項2】
プラスチックフィルムの一方の表面に不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)の重合体(A)からなる層及び防汚性表面層を設けてなることを特徴とするセルフクリーニングフィルム。
【請求項3】
重合体(A)からなる層が、変性ビニルアルコール系重合体(B)を含む不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)を電離性放射線の照射及び/又は熱により硬化してなる重合体(A)からなる層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルフクリーニングフィルム。
【請求項4】
プラスチックフィルムの表面と重合体(A)からなる層がアンダーコート層を介して積層されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のセルフクリーニングフィルム。

【公開番号】特開2008−307763(P2008−307763A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156910(P2007−156910)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】