説明

セルフクリーニング性塗料組成物

本発明は、セルフクリーニング特性を有する組成物に関する。本発明は触媒活性の組成物を被覆した粒子を含む塗料またはペイントに関する。具体的には、機能層を被覆したマイクロサイズの粒子を含むセルフクリーニング性塗料組成物が提供され、マイクロサイズの粒子は中空および/または中実ビーズであり、ビーズはセラミック材料、ポリマー材料、サーメット材料、金属材料、色素性材料、光吸収性および/または光反射性材料から選択される1つ以上の材料を含み、層は粒子に共有結合しており、光触媒層はアナターゼの結晶形態のTiOを含み、塗料組成物は放出されたアナターゼ/アナターゼの全体量の重量/重量として測定して、0.1未満のマイクロサイズのビーズからもたらされたアナターゼ粒子を含む。本発明は、遊離のアナターゼ結晶が基本的に存在しないペイントを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルフクリーニング特性を有する組成物に関する。より詳しくは、本発明は触媒活性組成物を被覆した粒子を含む塗料またはペイントに関する。
【背景技術】
【0002】
セルフクリーニング特性を提供する塗料またはペイントに関連する組成物に対する必要性が当技術分野には存在する。かかる特性は、例えば固体触媒半導体が光を吸収し、かつ触媒として作用もするプロセスである不均一光触媒の使用によって、例えば太陽光等の電磁放射線によって媒介され得る。かかるプロセスは、例えば、有機化合物を酸化するために利用することができ、水浄化等の用途に使用されてきた。光触媒半導体を、十分に短波長(すなわち十分に高エネルギー)の光にさらして、電子を光触媒の価電子帯から伝導帯に進めるとき、これはその光触媒のバンドギャップに依存するが、「正孔」が生み出されるものと考えられる。電子および正孔は、表面に拡散することができ、そこで電子は一般に酸素を還元し、正孔は吸着した分子、例えば水またはいくつかの有機材料を酸化する。吸収された水分子が酸化される場合、著しく高い酸化電位を有するOH基が形成され、有機分子をさらに酸化することができる。
【0003】
この効果は周知であり、セルフクリーニング性製品、例えばPilkington Activ(登録商標)窓ガラスなど、およびいくつかのタイプのペイント、例えばシリコーンペイントなどで利用されている。シリコーンバインダは、バインダが酸化されるときにSiOの保護層が形成されるために、光触媒の影響に耐性を示すものと考えられるが、それらは他の有機バインダと比較して相対的に高価である。シリコーン系のペイントは、限定された範囲の用途のみに適すると思われる。木材に対してこれらのペイントは、水蒸気透過に対して過度にオープンであり、多くの例において耐屈曲性が十分でなく、割れおよびはがれをもたらし得る。
【0004】
普通、有機バインダは、酸化されたとき保護層を形成せず、それ故、有機バインダはあまり耐性がない。環境の影響および/または風化作用は、塗膜の分解を引き起こして塗膜を白亜化させる。すなわち、顔料粒子がバインダの分解によって塗膜への付着性を失う。したがって、有機バインダを含むペイントにおける光触媒活性は望ましくないとみなされ、そのため、TiO等の光触媒顔料は、ペイント塗膜の白亜化を減らすために一般にAlおよび/またはSiO等の他の酸化物で被覆されてTiOの光触媒活性を低下させる。
【0005】
白亜化効果は、ある場合には、ペイント塗膜をセルフクリーニング性にするために使用される。それは、ペイント塗膜の白亜化速度を、塗膜が常に浸食するために、ナノサイズの光触媒粒子を塗膜中に添加することによって、その表面がそれ自体を常に新しくするように制御することを意味する。しかし、この解決策は、耐久性のある塗膜を提供せず、また、別のより深刻である可能性のある問題、すなわち、光触媒反応のあるナノ粒子の環境への高度の放出をもたらす。極めて光触媒反応のある材料の光毒性作用は、特に光触媒粒子が例えば皮膚と接触した場合、非常に危険であると考えられる。光触媒粒子が皮膚と接触しており、太陽光またはさらに言えば任意のUV放射線源にさらされた場合、極めて強力な酸化プロセスが皮膚の細胞を襲うであろう。これは、光触媒粒子のサイズがナノ範囲にある場合、それらは一番上の皮膚層を容易に通過して拡散し、健康な生体細胞に到達することができるために特に危険であり得る。光触媒反応のあるナノ粒子は、発癌性の可能性があるものと考えられる。それ故、光触媒材料を使用して、有機塗料に塗膜が早すぎる白亜化を起こしてナノサイズの粒子を環境に放出することのないセルフクリーニング特性を与える技術を開発することが必要である。
【0006】
本発明の目的は、1つまたは複数の上記の課題に対応するセルフクリーニング性ペイントを提供することである。
【0007】
特許文献1は、火山性ガラス質堆積物の砂が、TiClを含有する塩化水素を含有する水溶液またはTi(SOを含有する硫酸の水溶液中に分散されるTiOを被覆した微細な中空のガラス球を調製する方法に関する。これらのチタン前駆物質の水との高い反応性のために全ての前駆物質が、ガラス質堆積物の砂がその溶液中に分散する前に、水との反応を完了し、全ての前駆物質が水との反応を既に完了した後は、そのチタンの前駆物質はガラス質堆積物の砂の表面のOH基と反応することができず、それによって共有結合を形成すると考えられる。米国特許第6,110,528号は、水和した酸化チタンが形成されることを述べている。別の被覆方法においては、その砂はチタンテトラアルコキシドを含有するアルコールの溶液中に分散され、ガラス質堆積物の砂がその溶液中に分散した後に加水分解が行なわれる。被覆前に物理的に吸着された水の砂の表面からの初期の除去を示唆するものは何もない。
【0008】
特許文献2においては、チタンゾルを含有するイソプロピルアルコール溶液中に粒子を分散する、ガラスビーズを被覆する類似した方法が開示されている。被覆前に、物理的に吸着された水をビーズの表面から初期に除去することを示唆するものは何もない。
【0009】
特許文献3は、TiO粒子を細かくした粒状の高炉スラグおよびセメントと高エネルギーで機械的に混合することによる粒子の被覆を開示している。光触媒材料と担体粒子材料との間の結合機構または被覆前に物理的に吸着された水のビーズの表面からの初期の除去を示すものは何もない。
【0010】
特許文献4は、実質的に非酸化性のバインダを含有する光触媒組成物に関する。
【0011】
特許文献4は、光触媒活性の、セルフクリーニング性塗料組成物および方法に関連する。
【0012】
非特許文献1は、チタンイソプロポキシドのシリカ上の表面水酸基との相互作用と関連する。
【0013】
非特許文献2は、TiO表面の光触媒反応の原理および機構に関連する。
【0014】
非特許文献3は、メチレンブルーを含めた様々なタイプの染料の光触媒分解に関連する。
【0015】
非特許文献4は、TiOを被覆したガラスマイクロスフェアによる腐食質の光触媒酸化に関連する。
【0016】
非特許文献5は、シリカ表面の水酸基およびシリカ表面の水分子の吸着に関連する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第6,110,528号明細書
【特許文献2】特開第2005−199261号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/142205号
【特許文献4】米国特許第5,616,532号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/060555号
【0018】
【非特許文献1】Srinivasan, S.、Datye, A. K.、Smith, M. H.、Peden, C. H. F.、「Interaction of Titanium Isopropoxide with Surface Hydroxyls on Silica」、 Journal of Catalysis、Vol. 145、1994年、565〜573頁
【非特許文献2】Linsebigler, Amy L.、Lu, Guangquan、Yates, John T.、「Photocatalysis on TiO2 Surfaces: Principles, Mechanisms, and Selected Results」、Chemical Review、Vol. 95、1995年、735〜758頁
【非特許文献3】Lachheb, Hinda、Puzenat, Eric、Houas, Ammar、Ksibi, Mohamed; Elaloui, Elimame、Guillard, Chantal、Herrmann, Jean−Marie、「Photocatalytic degradation of various types of dyes (Alizarin S, Crocein Orange G, Methyl Red, Congo Red, Methylene Blue) in water by UV−irradiated titania」、Applied Catalysis B: Environmental、Vol. 39、2002年、75〜90頁
【非特許文献4】Portjanskaja, Elina、Krichevskaya, Marina、Preis, Sergei、Kallas, Juha、「Photocatalytic oxidation of humic substances with TiO2−coated glass micro− beads」、Environmental Chemistry Letters、Vol. 2、2004年、123〜127頁
【非特許文献5】Hair, Michael L.、「Hydroxyl Groups on Silica Surface」、Journal of Non− Crystalline Solids、19、1975年、299〜309頁
【非特許文献6】Gunter BuxbaumおよびGerhard Pfaff (編者)、「Industrial Inorganic Pigments, 3rd, Completely Revised and Extended Edition」、ISBN: 978−3−527−30363−2(2005年)
【非特許文献7】Willy Herbst、Klaus Hunger、「Industrial Organic Pigments: Production, Properties, Applications, 3rd, Completely Revised Edition」、ISBN: 978−3−527− 30576−6 (2004年)
【非特許文献8】Bodo Muller and Ulrich Poth、「Coatings Formulation」、2006年、Vincentz Network
【非特許文献9】Zeno W. Wicks, Jr.、Frank N. Jones、S. Peter Pappas、およびDouglas A. Wicks、「Organic Coatings: Science and Technology」、第3版、2007年、Wiley − lnterscience
【非特許文献10】Artur GoldschmidtおよびHans−Joachim Streitberger、「BASF Handbook on Basics of Coating Technology」、2003年、Vincentz Network
【非特許文献11】Donald M. Mattox、「Handbook of Physical Vapor Deposition (PVD) Processing」、1998年、Noyes Publications
【非特許文献12】Daniel M. DobkinおよびMichael K. Zuraw、「Principles of Chemical Vapor Deposition」、2003年、Kluwer Academic Publishers
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、基本的に遊離のアナターゼ結晶が存在しないアナターゼ型の、担体粒子に結合した、光触媒活性の二酸化チタンを含むセルフクリーニング性ペイントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の態様において、本発明は、機能層で被覆したマイクロサイズの粒子を含むセルフクリーニング性塗料組成物および/またはセルフクリーニング性ペイントであって、該マイクロサイズの粒子が、中空もしくは中実ビーズ、または任意の組合せ/比率の中空ビーズおよび中実ビーズであり、該ビーズが、セラミック材料、ポリマー材料、サーメット材料、金属材料、色素性材料、光吸収性および/または光反射性材料から、それらの任意の組合せを含めて、選択される1つまたは複数の材料を含み、前記層が、前記粒子に共有結合しており、光触媒層が、ルチルおよび/またはアナターゼの結晶形態のTiOを含み、該塗料組成物(ペイント)が、放出されたアナターゼ/アナターゼの全体量の重量/重量として測定して、1%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%、または0.00001%未満のマイクロサイズのビーズからもたらされた/放出されたアナターゼ粒子を含むセルフクリーニング性ペイントに関する。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、該機能層は光触媒層である。
【0022】
本発明の第2の態様は、機能層を被覆したマイクロサイズの粒子を含むセルフクリーニング性ペイントであって、該マイクロサイズの粒子が、中空もしくは中実ビーズ、または任意の組合せ/比率の中空ビーズおよび中実ビーズであり、該ビーズが、セラミック材料、ポリマー材料、サーメット材料、金属材料、色素性材料、光吸収性および/または光反射性材料から、それらの任意の組合せを含めて、選択される1つまたは複数の材料を含み、光触媒層が、ルチルおよび/またはアナターゼの結晶形態のTiOを含み、前記層が、前記粒子に共有結合しており、該塗料組成物(ペイント)が、放出されたアナターゼ/アナターゼの全体量の重量/重量として測定して、1%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%、または0.00001%未満のマイクロサイズのビーズからもたらされた/放出されたアナターゼ粒子を含むペイントなどのセルフクリーニング性ペイントからもたらされる乾燥した層(ペイント塗膜)を含むセルフクリーニング性表面に関する。
【0023】
本発明の第3の態様は、本発明による表面をクリーニングする方法であって、前記セルフクリーニング性表面を電磁放射線にさらすステップを含み、前記電磁放射線が、200〜400nmおよび/または400〜800nmの範囲の波長を有する放射線を含み、前記放射線が、太陽(例えば、日光、反射日光、薄明、月光)によるかまたは人工光源によって提供される方法に関連する。
【0024】
本発明の第4の態様は、機能層を被覆したマイクロサイズの粒子を含むセルフクリーニング性塗料組成物(ペイント)の使用であって、該マイクロサイズの粒子が、中空もしくは中実ビーズ、または任意の組合せ/比率の中空ビーズおよび中実ビーズであり、該ビーズが、セラミック材料、ポリマー材料、サーメット材料、金属材料、色素性材料、光吸収性および/または光反射性材料から、それらの任意の組合せを含めて、選択される1つまたは複数の材料を含み、前記層が、前記粒子に共有結合しており、該光触媒層が、ルチルおよび/またはアナターゼの結晶形態のTiOを含み、該塗料組成物(ペイント)が、放出されたアナターゼ/アナターゼの全体量の重量/重量として測定して、1%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%、または0.00001%未満のマイクロサイズのビーズからもたらされた/放出されたアナターゼ粒子を含み、木材、れんが、コンクリート、セメント、アスファルト、天然または人工石、粘土、ガラス、プラスチック、金属、繊維ガラス、炭素繊維、(壁)紙、塗面、糊付け面、複合材料、または任意のそれらの組合せ、例えば、物品の表面、壁、建物、構造要素、橋、建築要素、建築用ブロック、窓、ドア、床、天井、屋根(野地)、平滑化されたおよび/またはしっくいを塗った表面、家具、家具調度品、医療機器、衛生設備、自動車、(自動)二輪車、トラック、コンテナ、バス、飛行機、ロケット、船舶、列車、機関車、風車、またはソーラーパネルなどにセルフクリーニング性表面を提供するための使用に関する。
【0025】
本発明の第5の態様は、機能層を被覆した1つまたは複数のマイクロサイズの粒子であって、該マイクロサイズの粒子が、中空もしくは中実ビーズ、または任意の組合せ/比率の中空ビーズおよび中実ビーズであり、該ビーズが、セラミック材料、ポリマー材料、サーメット材料、金属材料、色素性材料、光吸収性および/または光反射性材料から、それらの任意の組合せを含めて、選択される1つまたは複数の材料を含み、該機能層が、ルチル型および/またはアナターゼの結晶形態のTiOを含み、該層が該粒子に共有結合しているマイクロサイズの粒子に関する。
【0026】
本発明の第6の態様は、機能層を被覆した1つまたは複数のマイクロサイズの粒子を提供するための方法であって、該マイクロサイズの粒子が、中空もしくは中実ビーズ、または任意の組合せ/比率の中空ビーズおよび中実ビーズであり、該ビーズが、セラミック材料、ポリマー材料、サーメット材料、金属材料、色素性材料、光吸収性および/または光反射性材料から、それらの任意の組合せを含めて、選択される1つまたは複数の材料を含み、該機能層が、ルチル型および/またはアナターゼの結晶形態のTiOを含み、該層がその粒子に共有結合しており、
その方法が、
1.マイクロサイズの粒子を110℃〜200℃の温度に加熱して前処理し、物理的に吸着された水を表面から蒸発させるステップ、
2.チタン前駆物質を、熱および/または真空をかけることによって蒸発させるステップ、
3.10ppm未満のHOを含む不活性ガス、例えば窒素またはアルゴン中の該蒸発したチタン前駆物質を、反応チャンバー内の温度が−20〜800℃の範囲であり得、マイクロサイズの粒子が、例えば、機械的に連続して撹拌されている、またはキャリヤーガスによって連続的に流動化されている該反応チャンバー中に運び入れるステップ、
4.0.01〜50%の相対湿度を有する不活性ガスをマイクロサイズの粒子と混合して撹拌または流動化させながら表面を水和させるステップ、および
5.被覆したマイクロサイズの粒子を100〜800℃の範囲の温度にほんの数秒から数時間までの範囲の時間加熱してアナターゼを結晶化させるステップ、
を含む方法に関する。
【0027】
ステップ2、3および4は、より厚い被覆層を作り上げるためにステップ5に進む前に、必要に応じて繰り返すことができる。
【0028】
物理的に吸着された水が粒子表面から除去されない場合、チタン前駆物質は、それが粒子表面と接触することができる前に加水分解されるであろうことが見出されている。しかし、物理的に吸着された水が除去される場合は、チタン前駆物質は粒子表面と反応するであろう。該前駆物質は、図2に示されているようにその前駆物質を加水分解する粒子表面のOH基と反応してチタン原子とマイクロサイズの粒子との間に共有結合を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】光触媒材料で被覆したビーズを含むペイントによる塗面/被覆面の断面の略図を示す。(A)表面に塗布した直後、(B)かなりの磨耗および/または風化後、(C)厳しい磨耗および/または風化後。
【図2】チタン前駆物質がガラス表面と反応し、ガラスとチタンとの間で共有結合が形成されるときの反応の略図を示す。
【図3a】アナターゼTiOにより被覆されていない中空ガラスマイクロスフェア(HGMS)および被覆された中空ガラスマイクロスフェア(HGMS)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【図3b】初期乾燥無しで被覆した中空ガラスマイクロスフェア(HGMS)のSEM画像を示す。
【図4】市販のアナターゼ粉末およびガラスビーズ塗料のXRD分析を示す。
【図5】TiOを被覆したHGMSおよび被覆してないHGMSによるメチレンブルー溶液の分解を示す濃度変化対照射時間の時間プロットを示す。
【図6】QUVチャンバー中の異なる露光時間後のTiOを被覆したHGMSを含むアルキドペイント塗膜のSEM画像を示す。
【図7】QUVチャンバー中の異なる露光時間後のアルキドペイント塗膜のSEM画像を示す。
【図8】QUVチャンバー中の異なる露光時間後のTiOを被覆したHGMSを含むポリウレタンペイント塗膜のSEM画像を示す。
【図9】QUVチャンバー中の異なる露光時間後のポリウレタンペイント塗膜のSEM画像を示す。
【図10】QUVチャンバー中の異なる露光時間後のアナターゼTiOナノ粒子を含むポリウレタンペイント塗膜のSEM画像を示す。
【図11】TiOを被覆したHGMSを含むアルキドペイント塗膜および被覆されていないHGMSを含むアルキドペイント塗膜により行なわれたセルフクリーニング性試験の結果を示す。
【図12】放射照度対UVA−340ランプの波長のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔定義〕
本発明において、他に明記されていない限り、次の定義が以下に記載されている用語に適用され得る。
【0031】
用語「二酸化チタン」、「TiO」および/または「TiO2」は、チタンの酸化物を含み、互換的に使用することができる。二酸化チタンは、また、当該技術分野で知られている様々な結晶形、例えば、アナターゼ、ルチル、ブルッカイト、及び類似のものなどを、1つまたは複数の結晶形の任意の混合物を含めて、含むことができる。あるいは、二酸化チタンは、1つまたは複数のアモルファス(すなわち、非晶形)で、前記1つまたは複数のアモルファスの任意の混合物を含めて、存在することもできる。その上、二酸化チタンは、1つまたは複数のアモルファス、および1つまたは複数の結晶形の間の任意の混合物の状態で存在することができる。
【0032】
他に明記されていない限り、化学組成は、p.a.(分析前)、純粋な形態(すなわち、通常は99%または99.9%(重量/重量または体積/体積)を超える純度))、ほとんど純粋な形態(すなわち、通常は90%または95%(重量/重量または体積/体積)を超える純度))、または純度が一般的であり、技術的に広く知られており、かつ/または、容認されているような工業用純度の形態のいずれかである。
【0033】
用語「ビーズ」または「粒子」は、互換的に使用することができ、球形、球形近似、回転対称、8面体、プリズム状を含めた実質的に何らかの三次元の形状を有する材料/組成物の粒子または断片を含むことを意味する。ビーズまたは粒子は、不ぞろいな形状のもの、および/または不ぞろいな断面のものでもあり得る。用語「ビーズ」は、また、ペイントの流動特性に著しく影響を及ぼすことなく乾燥したペイント塗膜の中実体積の例えば10%以上の体積濃度でペイントに添加することができるフィラー材料を含むことを意味し得る。
【0034】
用語「相当直径」とは、ビーズが前記ビーズと同体積の球である場合の、その直径を意味する。したがって、π/6μmの体積を有して球形ではないビーズは、等体積の球と同様に1μmの相当直径を有することになる。
【0035】
用語「層」とは、表面の任意の材料の塗膜または塗料を含むことを意味し、従って、ペイント、塗料組成物などを含むが、例えば、ビーズ上に塗られた光触媒材料等の粒子またはビーズに堆積したまたは関連する任意の材料も含む。それは、また、乾燥の過程において湿潤、または乾燥途中もしくは乾燥された状態であり得るペイント塗膜に関して言うこともできる。後者は、「乾燥層」と称することもできる。
【0036】
用語「材料」および「組成物」は、互換的に使用することができる。
【0037】
用語「ポリマー」および「ポリマー材料/組成物」は、互換的に使用することができ、有機、無機および/または有機金属材料の繰り返しサブユニットで構成されているそれらの任意の組合せおよび/または混合物を含めた材料/組成物を含むことを意味する。
【0038】
用語「セラミック」および「セラミック材料/組成物」は、互換的に使用することができ、例えば酸化物、窒化物、ホウ化物、炭化物、ケイ化物および硫化物を含むそれらの任意の組合せおよび/または混合物を含めた無機非金属材料および/または組成物を含むことを意味する。セラミック材料は、非晶質(ガラスまたはガラス状)、部分的に結晶質または完全に結晶質であり得る。
【0039】
用語「金属」および「金属材料/組成物」は、互換的に使用することができ、元素の周期系に従う金属またはメタロイドを含み、それらの合金および金属間化合物ならびに任意の組合せおよび/または混合物を含むことを意味する。金属材料は、非晶質(ガラス)、部分的に結晶質または完全に結晶質であり得る。
【0040】
用語「サーメット」および「サーメット材料/組成物」は、互換的に使用することができ、上で定義したセラミックおよび金属材料を含む複合材料を含むことを意味する。サーメット材料は、非晶質(ガラス)、部分的に結晶質または完全に結晶質であり得る。
【0041】
用語「光吸収性材料/組成物」とは、約300〜800nmの範囲の電磁放射線などの電磁放射線を吸収することができる材料および/または組成物を含むことを意味する。
【0042】
用語「光反射性材料/組成物」とは、約300〜800nmの範囲の電磁放射線などの電磁放射線を反射することができる材料および/または組成物を含むことを意味する。
【0043】
用語「光触媒」および「光触媒材料/組成物」は、互換的に使用することができ、有機材料/組成物の酸化を、例えば、電磁放射線にさらされたときに電子‐正孔対を生ずることなどにより、促進することができる材料/組成物を含むことを意味する。
【0044】
用語の中空ガラスビーズとは、ガラス殻およびその殻の下部に基本的に空気、ガスおよび/または真空である空隙を含むビーズを意味する。
【0045】
用語「セルフクリーニング性」、「セルフクリーニング性表面」および「セルフクリーニング性層」は、互換的に使用することができ、例えば、不均一の光触媒反応、親水性および/または疎水性により、汚れおよび/または汚染に抵抗力があり、あるいは有機および/または無機の汚れ/望ましくない材料および/または微生物が表面/層に付着すること/汚染することを防止、除去、または分解することができる表面/層を意味する。
【0046】
用語「湿潤」とは、液体が固体表面に濡れることができることを意味し、高いまたは良好な湿潤は、液体と固体との間の低い接触角によって表され、低いまたは不十分な湿潤は高い接触角によって表される。
【0047】
用語「耐摩耗性」とは、機械的磨耗に対する抵抗を有することを意味する。
【0048】
用語「耐候性」とは、環境要因、例えば、気候、太陽光、紫外線、雨、湿気、温度および風など、に対する抵抗を有することを意味する。
【0049】
用語「白亜化」とは、ペイント塗膜の表面のバインダが、多くの場合、風化作用を受けて劣化し、顔料粒子が緩みを生じる過程を意味する。
【0050】
用語「共触媒」とは、例えば、光触媒の表面で有機材料の酸化を促進することができる触媒を含むことを意味する。
【0051】
用語「バンドギャップ」とは、材料/組成物の伝導バンドの下部と価電子バンドの上部との間のエネルギー差を含むことを意味する。
【0052】
用語「BET表面積」とは、BET(Brunauer−Emmet−Teller)吸着理論に従って測定された粒子の表面積を含むことを意味する。
【0053】
用語「結晶サイズ」とは、例えば、粉末回折の方法を用い、Debye−Scherrerの式および/またはStokesおよびWilsonの式により計算された材料/組成物/粒子の測定された結晶サイズを含むことを意味する。
【0054】
用語「屈折率」とは、ナトリウムD線のほぼ589nmで測定された屈折率を含むことを意味する。この用語が例えば中空ビーズに対して用いられるとき、それが使用できるのは、外殻材料について言及するためのみで、空洞内の空気、ガスおよび/または真空には使用できない。
【0055】
用語「ナノ粒子」および「ナノサイズの粒子」は、互換的に使用することができ、約1μm以下、多くの場合約1〜1000nmの範囲内の直径および/または相当直径を有する粒子を含むことを意味する。
【0056】
用語「微小粒子」および「マイクロサイズの粒子」は、互換的に使用することができ、約1mm以下、しばしば約1〜1000μmの範囲内の直径および/または相当直径を有する粒子を含むことを意味する。
【0057】
用語「塗料」、「塗料組成物」、「ペイント」、および/または「ペイント組成物」は、互換的に使用することができ、任意の流体、液体、ゲル、粉体、液化可能な、またはマスチック組成物であることを意味し、それは、一定の厚さの層の状態で基材または表面に塗装された後、基本的に固体、または半固体塗膜に変換される。一般に、ペイントは、塗装中は液体であり、
−顔料
−バインダ(樹脂とも呼ばれる)
−溶媒(媒剤とも呼ばれる)
−フィラー
の1つまたは複数を含む。場合によって、ペイントは、1つまたは複数の添加剤を含むことができる。
【0058】
用語「顔料」および「色素性材料/組成物」は、互換的に使用することができ、場合によって別の材料/複数材料、例えば、1つまたは複数の顔料の添加によって変更されている、約380〜750nmなどの可視光の範囲内の波長の電磁放射線を含む光を吸収する特性を有する材料/組成物を含むことを意味する。顔料は、ペイント中に組み込まれる適度に粒度の細かい固体であり、色彩および不透明性に寄与し得る。さらにそれらは、例えば木材着色に対して、紫外線保護に寄与する。あるいは、ペイントによっては顔料の代わりまたは顔料との組合せで染料を含有する。別のペイントは顔料を全く含有しない。顔料は、無機顔料または有機顔料のいずれかに分類することができる。無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラックまたは弁柄および鉄黄が挙げられる。有機顔料の群は、色特性を有する合成および/または変性有機化合物、例えば、フタロブルー、フタログリーンおよびキナクリドンを含む。本発明による顔料は、非特許文献6および/または非特許文献7に開示されている1つまたは複数の顔料を含むこともできる。これらの参考文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
用語「フィラー」とは、塗膜を厚くし、その構造を支え、ペイントの体積を単に増し、かつ/またはコストを下げるために加える任意の材料、物体、成分および/または組成物を含むことを意味する。フィラーは、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、石灰、バライト、クレーなどの1つまたは複数等の通常安価で不活性な材料を含んでなる。磨耗にさらされるペイントは、フィラーとして細かいケイ砂を含むことさえできる。すべてのペイントがフィラーを含むわけではない。他方で、ペイントによっては大きな割合(例えば、10、20、30、40または50%(vol/vol)を超える)のフィラーを含有する。
【0060】
用語「バインダ」または「樹脂」とは、ペイントの実際の塗膜形成成分を含むことを意味する。バインダは、付着性を与え、顔料を共に結びつけ、光沢のポテンシャル、屋外耐久性、耐屈曲性、および強靭性等の特性に強く影響を及ぼす。バインダとしては、合成樹脂または天然樹脂、例えば、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル、メラミン樹脂、エポキシ、アルキド、これらの変態または油が挙げられる。バインダは、ペイントに対して通常使用される乾燥または硬化機構によって分類することができる。一般的な原理は、溶媒蒸発、酸化架橋、(触媒作用を受ける)重合、および融合である。用語の有機バインダは、有機ポリマー材料と関係する。
【0061】
用語「溶媒」および/または「媒剤」とは、不揮発性成分に対するキャリヤーとして作用するのに適する組成物、試剤、流体などを意味する。溶媒/媒剤は、例えばペイントの粘度を調節するために使用することもできる。それは、また、液体状態の間のペイントの流動特性および塗装性を調整し、安定性に影響を及ぼすこともできる。その主な役割は不揮発性成分のためのキャリヤーとしてのものである。溶媒は一般に多かれ少なかれ揮発性である。水は水性ペイントのための主要な媒剤である。有機溶液型ペイントは、油性ペイントとも呼ばれ、1つまたは複数の溶媒、例えば、脂肪族溶媒、芳香族溶媒、アルコール、ケトン、石油蒸留物、エステル、およびグリコールエーテルなどの1つまたは複数からなることができる。場合によって、ペイントは、希釈剤としても作用する揮発性の低分子量の合成樹脂を含むことができる。
【0062】
用語「添加剤」とは、通常は少量(例えば、5%、1%、0.1%、または0.01%(体積/体積)未満)で添加され、それにもかかわらず、製品に非常に重要な影響を与える成分、試剤、組成物などを含むことを意味する。添加剤は、触媒、増粘剤、安定剤、乳化剤、品質改良剤、接着促進剤、紫外線安定剤、フラットナー(つや消し剤)、微生物および/または植物成長と戦う殺生剤、表面張力を修正および/または制御する試剤、流動特性を修正および/または制御するチキソトロープ剤等の試剤、仕上がり外観を改善する試剤、ウェットエッジを増すための試剤、顔料安定性を増す試剤、凍結防止特性を与える試剤、泡を制御する試剤、皮張りを制御する試剤、乾燥に触媒作用を及ぼす試剤の1つまたは複数であり得る。しばしば、ペイントおよび/または塗料組成物は、1つまたは複数の添加剤を含む。
【0063】
[乾燥および硬化]
乾燥と硬化は、2つの異なる過程とみなすことができる。乾燥は、一般に、媒剤の蒸発を指すのに対し、硬化は、バインダの重合を指す。ペイントの乾燥および/または硬化の結果は、乾燥した層またはペイント塗膜であり得る。ペイントの化学的性質および組成によって、任意の特定のペイントは、乾燥もしくは硬化またはその両方の過程のいずれかを受けることができる。かくして、ペイントには、乾燥するのみのもの、乾燥して次に硬化するもの、および硬化または乾燥に依存しないものが存在する。単純な溶媒の蒸発によって乾燥するペイントは、溶媒に溶解されている固体バインダを通常は含有し、これは溶媒が蒸発すると固体塗膜を形成し、その塗膜は再び溶媒に溶解してもどすことができる。昔ながらのニトロセルロースラッカーは、溶媒に溶解した染料からなる粒子が生じないステインと同様に、この範疇に入る。ラテックスペイントは、サブマイクロメートル(μm)のポリマー粒子の水性分散液である。ペイントとの関連における用語「ラテックス」は、水性分散液を単に意味し、ラテックスゴム(歴史的にラテックスと呼び続けられてきているゴムノキの樹液)は、通常はペイント原料ではない。これらの水性分散液は、乳化重合によって調製される。ラテックスペイントは、融合と呼ばれる過程によって硬化し、その場合、最初に水が、次に微量の、つまり融合性の溶媒が蒸発し、ラテックスバインダ粒子が互いに引き寄せ合って軟化し、それらが共に融合して後に戻らないように結合したネットワーク構造になり、その結果、そのペイントは最初にそれを運んでいた溶媒/水に再溶解しない。そのペイント中の界面活性剤ならびに一部のポリマーによる加水分解の影響は、そのペイントが軟化しやすく、時間と共に水によって劣化しやすいままである原因となり得る。
【0064】
酸化架橋により硬化するペイントは、塗装されたとき、空気中の酸素への暴露がバインダ成分を架橋して重合する過程を開始する一般に単一パッケージの塗料である。古典的なアルキドエナメルは、この範疇に入る。
【0065】
触媒重合によって硬化するペイントは、一般に樹脂と硬化剤とを混合することにより開始される化学反応によって重合し、硬質プラスチック様の構造を形成することによって硬化する二液型塗料である。組成物によって、それらは溶媒の蒸発によって最初に乾燥する必要があり得る。触媒重合によって硬化するペイントの例としては、エポキシおよびポリウレタンペイントが挙げられる。
【0066】
さらに別の塗膜は、バインダの冷却によって形成される。例えば、エンカウスティックペイント、つまり蝋画は、温められているときは液体であり、冷却すると硬くなる。多くの場合、それらは再加熱すると、再軟化および/または液化することができる。
【0067】
環境基準は、揮発性有機化合物の使用を制限することがあり得、硬化の別の手段が、特に工業目的のために開発されている。紫外線硬化ペイントにおいては、溶媒が最初に蒸発され、硬化が次に紫外線によって開始される。粉体塗料においては、わずかに溶媒を含むかまたは全く含まず、流れ(塗膜)および硬化は、乾燥粉末を塗装した後の基材の加熱によって実現される。
【0068】
本明細書に示されている定義以外で、本発明に関するさらなる定義、例えば、非特許文献8、非特許文献9、および非特許文献10に提供されている定義を適用することができ、これらの参考文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
[セルフクリーニング性塗料組成物]
第1の態様においては、セルフクリーニング性ペイントおよび/またはセルフクリーニング性表面を提供するペイント等のセルフクリーニング性塗料組成物(「ペイント」)が提供される。適切なセルフクリーニング性塗料組成物は、機能層を塗装した1つまたは複数のマイクロサイズの粒子(「粒子」)を含むことができる。
【0070】
第1の態様において、本発明は、機能層を被覆したマイクロサイズの粒子を含むセルフクリーニング性塗料組成物(ペイント)であって、該マイクロサイズの粒子が、中空もしくは中実ビーズ、または任意の組合せ/比率の中空ビーズおよび中実ビーズであり、該ビーズが、セラミック材料、ポリマー材料、サーメット材料、金属材料、色素性材料、光吸収性および/または光反射性材料から、それらの任意の組合せを含めて、選択される1つまたは複数の材料を含み、該光触媒層が、ルチルおよび/またはアナターゼの結晶形態のTiOを含み、該塗料組成物(ペイント)が、放出されたアナターゼ/アナターゼの全体量の重量/重量として測定して、1%、0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%、または0.00001%未満のマイクロサイズのビーズからもたらされた/放出されたアナターゼ粒子を含むセルフクリーニング性ペイントに関する。
【0071】
本発明の好ましい実施形態によれば、該光触媒材料は、ビーズに共有結合している。
【0072】
ペイント中の遊離のアナターゼ結晶の存在は、それらの存在が、ペイントの必須成分、例えば、バインダ、顔料および/または添加剤などに負の影響を有し、さらに、アナターゼは、眼、皮膚、および呼吸管の刺激の原因となり得ることが考えられるために、望ましくない。
【0073】
本発明によれば、該セルフクリーニング性ペイントは、例えば、アナターゼの全体量当たり放出されたアナターゼの重量割合で測定して、1%、0.5%、0.25%、0.1%、0.05%、0.025%、0.01%、0.005%、0.0025%、0.001%、0.0005%、0.00025%、0.0001%、0.00005%、0.000025%未満、またはさらに0.00001%未満のマイクロサイズのビーズからもたらされた/放出されたアナターゼ粒子を含む。
【0074】
本発明によるセルフクリーニング性ペイントが含む遊離のアナターゼは、0.1%未満であることが好ましい。
【0075】
本発明の実施形態によれば、塗料および/または塗料組成物は、非特許文献8、非特許文献9、および非特許文献10に従って提供され、さらに、機能層を被覆したマイクロサイズの粒子(「粒子」)、例えば、本発明により機能層を被覆した任意の粒子などを含む。
【0076】
ある実施形態によれば、該ペイントは、1種類のマイクロサイズの粒子、または場合によって同様のもしくは異なる機能層を被覆した2種類以上のマイクロサイズの粒子を含む。
【0077】
本発明のある実施形態によれば、該ペイントは、マイクロサイズの粒子、例えば、中空、部分的に中空、もしくは中実ビーズ、または上記の中空、部分的に中空、もしくは中実ビーズの任意の組合せ/比率のものなどを含む。
【0078】
本発明のある実施形態によれば、該ペイントは、例えば、セラミック材料、ポリマー材料、サーメット材料、金属材料、色素性材料、光吸収性および/または光反射性材料など(それらの任意の組合せを含む)から選択された1つまたは複数の材料を含むビーズを含む。
【0079】
使用されるビーズのサイズは、乾燥ペイント塗膜の望ましい厚さと関係し得て、塗膜の厚さより好ましくは小さい。本発明のある実施形態によれば、該粒子/ビーズは、また、光触媒塗料とバインダとの間の接触面積対ビーズの体積の比が、ビーズが小さくなるほど増すために小さ過ぎるべきではない。
【0080】
本発明のある実施形態によれば、1つまたは複数の種類のマイクロサイズの粒子の10、20、30、40、50、60、70、80、85、90、92.5、95、97、98、99、99.5、99.9、99.95、または99.99%超が、およそ0.1〜2000μm、1〜1000μm、1〜900μm、1〜800μm、1〜700μm、1〜600μm、1〜500μm、1〜400μm、1〜300μm、1〜200μm、1〜100μm、0.5〜20μm、2〜1000μm、2〜900μm、2〜800μm、2〜700μm、2〜600μm、2〜500μm、2〜400μm、2〜300μm、2〜200μm、1〜100μm、5〜1000μm、5〜900μm、5〜800μm、5〜700μm、5〜600μm、5〜500μm、5〜400μm、5〜300μm、5〜200μm、5〜100μm、10〜1000μm、10〜900μm、10〜800μm、10〜700μm、10〜600μm、10〜500μm、10〜400μm、10〜300μm、10〜200μm、10〜100μm、または10〜200μmの範囲の相当直径を有する。
【0081】
好ましくは粒子の95%超が0.5〜20μmの範囲の相当直径を有する。本発明の1実施形態において該粒子は、中空ガラスマイクロスフェア(HGMS)等の中空のガラスビーズである。
【0082】
該ペイントが1種類より多くのマイクロサイズの粒子を含むとき、これらは、同じ、類似の、または異なるサイズおよび/または相当直径であり得る。
【0083】
ビーズのサイズおよび/または密度は、通常は分散しているか、またはビーズのサイズ分布および/または密度分布は平均の周りで均等ではない。用語のパーセンタイルは、測定されたビーズの試料の一定割合、「パーセンタイル」、が同等以下であるサイズおよび/または密度であることを意味し得る。例えば、第10パーセンタイルが1μmおよび/または0.1g/cmである場合、それは、測定された試料の10%が、1μm以下のサイズおよび/または0.1g/cm以下の密度であることを意味する。
【0084】
本発明のある実施形態によれば、ビーズの平均のサイズおよび/または密度は、第40パーセンタイルと第60パーセンタイルの間、第30パーセンタイルと第70パーセンタイルの間、または第20パーセンタイルと第80パーセンタイルの間であり得る。ビーズのサイズおよび/またはビーズ密度の第10パーセンタイル値は、平均のビーズのサイズおよび/またはビーズ密度の30%〜70%の間、20%〜80%の間または10%〜90%の間であり得る。ビーズのサイズおよび/またはビーズ密度の第50パーセンタイル値は、平均のビーズのサイズおよび/またはビーズ密度の70%〜130%の間、60%〜140%の間または50%〜150%の間であり得る。ビーズのサイズおよび/またはビーズ密度の第90パーセンタイル値は、平均のビーズのサイズおよび/またはビーズ密度の130%〜170%の間、120%〜180%の間または110%〜190%の間であり得る。
【0085】
本発明のある実施形態によれば、ビーズのサイズ分布および/または密度分布は、非常に小さく、第10パーセンタイルのビーズのサイズおよび/またはビーズ密度と平均のビーズのサイズおよび/または平均のビーズ密度との間のサイズの差および/または密度の差は平均のビーズのサイズおよび/または平均のビーズの密度の10%未満であり得、かつ/または第90パーセンタイルのビーズのサイズおよび/またはビーズ密度と平均のビーズのサイズおよび/または平均のビーズ密度との間のサイズの差および/または密度の差は平均のビーズのサイズおよび/または平均のビーズの密度の10%未満であり得る。
【0086】
本発明のある実施形態によれば、該ペイントは、1、2、3、4、5、またはそれ以上の種類のマイクロサイズの粒子を含む。
【0087】
本発明のある実施形態によれば、該ペイントは、中空ガラスマイクロスフェア(HGMS)等の中空のガラスビーズであるマイクロサイズの球を含む。
【0088】
本発明のある実施形態によれば、該セルフクリーニング性ペイントは、光触媒活性を提供する光活性層で被覆されているビーズまたは粒子を含み、前記相および/または光触媒活性は、例えば、
a.細菌、藻類、地衣類、酵母菌および/またはカビの1つまたは複数などの(微)生物の生長の減退、および/または
b.化学結合による有機バインダとビーズとの間の付着強さの増大、および/または
c.ペイント塗膜の耐磨耗性の増大、および/または
d.耐候性および/またはUV安定性の増大、例えば、(i)有機バインダの白亜化の減少、(ii)有機バインダの分解の減少、および/または(iii)(光触媒)材料および/または1μm未満の粒径を有する材料の放出の減少のうちの1つまたは複数、および/または
e.望ましくない有機物および/または汚れの分解および/または酸化、および/または
f.該ペイントの濡れ特性の向上、および/または
g.a〜gの任意の組合せ、
の1つまたは複数を提供する。
【0089】
該塗料は、また、所与のペイント系に対して必要なものに応じて、様々な他の特性を有するように設計することもできる。理論に縛られることは望まないが、本発明のある実施形態によれば、ビーズとバインダとの間の改良された接着が達成され、かつ/または提供される。この改良された接着は、例えば、被覆したビーズとバインダとの間に共有結合を生じることによって、またはバインダの被覆したビーズへの高い親和性によって達成され得る。これは、ペイント塗膜の機械的特性を改善し、割れに対してそれをより耐性のあるものにするものと考えられる。
【0090】
本発明のある実施形態によれば、該セルフクリーニング性ペイントは、光触媒層などの層を含み、前記層は、
a.光触媒および/または1.8〜10.3、2.5〜6.2または3.1〜4.1eV、好ましくは3.1〜4.1eVの範囲内のバンドギャップを有するn型半導体、および/または
b.光伝導材料/組成物、および/または
c.例えば、TiO、ZnO、WO、SnO、CaTiO、Bi、CuO、Fe、ZrO、SiCおよびTiZr(1−x)(0<x<1)、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択され、1つまたは複数の共触媒により適宜ドープされている1つまたは複数の触媒を適宜含み、該共触媒が、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、タングステン、モリブデン、金、銀、銅、任意のそれらの酸化物および/または任意のそれらの硫化物を含め、かつパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、タングステン、モリブデン、金、銀、銅の、任意のそれらの酸化物および/または任意のそれらの硫化物を含めた2つ以上の任意の組合せ/混合物/割合からなる群から選択され、触媒に対する共触媒のモル比が適宜1ppm未満、1ppm〜0.1%、0.1〜1%、1〜10%であるか、または10%を超え、かつ/または前記共触媒が、適宜光触媒層の表面積の10%、5%、または1%未満を覆い、かつ/または前記共触媒が、適宜光触媒層の表面積の0.001〜3%、または0.01〜2%、または好ましくは0.001〜3 %の間を覆っている光触媒材料/組成物、および/または
d.a.〜c.の任意の組合せ
の1つまたは複数を含む。
【0091】
本発明のある実施形態によれば、該セルフクリーニング性ペイントは、光触媒および/またはn型半導体を含む光触媒層を含むナノサイズの粒子を含み、該光触媒および/またはn型半導体は、1.8〜6.2eV(約200〜700nm)、約3.1〜10.3eV(約120〜400nm)、約3.1〜6.2eV(約200〜400nm)、約2.5〜4.1eV(約300〜500nm)、約1.8〜4.1eV(約300〜700nm)の範囲、1.8eV(約>700nm)未満または6.2eV(約<120 nm)を超えるバンドギャップを有する。前記光触媒および/またはn型半導体は、例えば、N、S、およびF原子の1つまたは複数(それらの任意の組合せおよび/または比率を含む)によりドープすることができる。
【0092】
本発明のある実施形態によれば、光触媒および/またはn型半導体を含む光触媒層が提供され、その光触媒および/またはn型半導体は、およそ1.8〜6.2eV(約200〜700nm)、約3.1〜10.3eV(約120〜400nm)、約3.1〜6.2eV(約200〜400nm)、約2.5〜4.1eV(約300〜500nm)、約1.8〜4.1eV(約300〜700nm)、1.8eV(約>700nm)未満または6.2eV(約<120nm)を超えるバンドギャップを有する。さらなる実施形態によれば、そのバンドギャップは、約1.8〜2.5eV、2.5〜3.1eV、3.1〜4.1eV、4.1〜6.2eV、または約6.2〜10.3eVの間である。照射は、好ましくは200〜400nmの範囲の波長を用いる。さらなる実施形態において、該バンドギャップは、約3.2eV(約388nm)である。照射が可視光により提供される場合、その波長は400〜800nmの範囲である。
【0093】
本発明のある実施形態によれば、該セルフクリーニング性ペイントは、光触媒層を含むマイクロサイズの粒子を含み、
(i)該光触媒材料は、前記ビーズ/マイクロサイズの粒子に共有結合しており、かつ/または
(ii)該ビーズ/マイクロサイズの粒子に被覆されている該光触媒材料は、1〜150nmの結晶サイズを有し、かつ/または
(iii)該ビーズに被覆されている該光触媒材料は、適宜、0.01〜100、0.1〜100、1〜100、10〜100、0.01〜50、0.1〜50、1〜50、10〜50、0.01〜30、0.1〜30、1〜30、0.01〜10、0.1〜10、または1〜10、好ましくは0.01〜100m/gの範囲の比表面積(例えば、BET表面積)を有し、かつ/または
(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせである。
【0094】
本発明のある実施形態においては、代替として、場合によって塗料または(光触媒)層があるかまたはないビーズまたは粒子のBET表面積は、0.01m/g未満であるか、または100m/gを超えることができる。前記BET表面積は、また、0.01〜100、0.1〜100、1〜100、10〜100、0.01〜50、0.1〜50、1〜50、10〜50、0.01〜30、0.1〜30、1〜30、0.01〜10、0.1〜10、または1〜10m/gの範囲であり得る。
【0095】
本発明のある実施形態によれば、結合した平均の光触媒の重量は、ビーズの重量の0.001%、0.0025%、0.005%、0.01%、0.025%、0.05%、0.1%、025%、0.5%、1%、2,5%、5%、または10%を超える。
【0096】
本発明のある実施形態によれば、該セルフクリーニング性ペイントは、光触媒層を含むマイクロサイズの粒子を含み、その光触媒層中のTiOの90%超、99%、または99.9%、好ましくは99%(重量/重量)超が、アナターゼの触媒活性形態をしている。別の実施形態によれば、前記粒子は、TiOを被覆したガラス球または中空のガラス球(例えばHGMS)である。さらなる実施形態によれば、前記TiOの50%、75%、80%、90%、95%、99%、または99.9%超が、アナターゼの(光)触媒活性形態をしている。好ましくは前記TiOの99%超が、アナターゼの(光)触媒活性形態をしている。
【0097】
本発明の1実施形態において、該セルフクリーニング性塗料組成物(ペイント)は、粒子の95%超が10と200μmの間の直径を有する粒子、例えば、中空のガラス球を含む。さらなる実施形態において、基本的に全ての粒子、または粒子の99%、95%、または90%超は、10μm、25μm、50μm、100μm、250μm、500μm、または1000μm未満の直径を有し、あるいは、全ての粒子、または粒子の99%、95%、または90%超は、0.5と20μmの間、10と25μmの間、20と40μmの間、35と55μmの間、45と75μmの間、70と105μmの間、100と300μmの間、250と600μmの間、または500と1100μmの間の直径を有する。別の実施形態においては、全ての粒子、または粒子の99%、95%、または90%超が、10μm、25μm、50μm、100μm、250μm、500μm、または1000μmを超える直径を有する。
【0098】
好ましくは粒子の95%超が、0.5〜20μmの範囲の相当直径を有する。
【0099】
本発明のある実施形態によれば、該セルフクリーニング性ペイントは、アナターゼを含む光触媒層を含むマイクロサイズの粒子を含み、平均して10〜1010個、および/または少なくとも10、10、1010個またはそれ以上の個別のアナターゼ結晶が1つのビーズ/粒子当たり(平均して)結合しており、かつ/または結合アナターゼの重量は、粒子/ビーズの重量の(平均して)0.001%、0.01%、0.1%、1%、または10%を超える。本発明のさらなる実施形態によれば、少なくとも1、10、10、10、10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014、1015個、またはそれ以上の個別のアナターゼ結晶が1つのビーズ/粒子当たり(平均して)結合している。別の実施形態によれば、結合アナターゼの重量は、(平均して)ビーズ/粒子重量の0.001%未満であるかまたは10%を超える。
【0100】
本発明のある実施形態によれば、光触媒層と関係するTiOおよび/またはアナターゼ結晶サイズは、平均しておよそ1〜200nm、5〜100nm、10〜80nmである。別の実施形態によれば、前記結晶サイズは、平均して、約1nm未満、およそ約1〜10、約10〜20、約20〜30、約30〜40、約40〜50、約50〜60、約60〜70、約70〜80、約80〜90、約90〜100、約100〜120、約120〜150、約150〜175、約175〜200、約200〜250、または約250〜300nmであるか、あるいは約300nmを超える。
【0101】
本発明のある実施形態によれば、該光触媒層は、およそ約1nm、約1〜300nm、約20〜160nm、または約300nmを超えない厚さ(平均で)で提供される。本発明の別の実施形態によれば、該光触媒層の平均厚さは、約1nm、およそ約1〜10、約10〜20、約20〜30、約30〜40、約40〜50、約50〜60、約60〜70、約70〜80、約80〜90、約90〜100、約100〜120、約120〜150、約150〜175、約175〜200、約200〜250、または約250〜300nmであるか、あるいは約300nmを超える。さらなる実施形態によれば、該光触媒層の厚さは、該粒子またはビーズに関係し、かつ/または結合しているTiOおよび/またはアナターゼ結晶の平均のサイズに対応する。
【0102】
【表1】

【0103】
本発明のある実施形態によれば、該セルフクリーニング性ペイントは、基本的にアルキド系、アクリル系、ポリウレタン系、エポキシ系、および/またはコポリマー系ペイントまたはペイント組成物であり得る。ペイント配合物の典型的な(一般的な)例を、例えば、表1に示す。さらなる例は、例えば、非特許文献8、非特許文献9、および非特許文献10の1つまたは複数の中で見出すことができる。
【0104】
本発明のある実施形態によれば、光触媒の望ましくない活性、例えば、紫外線を含む光等の環境にさらされたときのバインダの酸化、例えば塗膜破壊などを制限し、減少させ、または避けながら、光触媒活性材料をペイント中に含むまたは溶け込ませる方法が提供される。これは、光触媒材料を直接ペイント中に混合する代わりに、例えば200μm、500μm、または1000μmより小さい相当直径を有する粒子等のマイクロサイズの(キャリヤー)粒子に該光触媒材料を被覆することによって達成することができる。該光触媒を(不活性な)キャリヤー粒子に被覆することによって、該光触媒反応は、不活性である表面で起こり、すなわち、その反応によって酸化されないものと考えられ、該光触媒とバインダとの間の接触が最小化される。
【0105】
本発明のある実施形態によれば、時間とともにペイント塗膜から放出される光触媒材料の量は、光触媒材料がキャリヤー/粒子に結合していないペイント塗膜と比較して低減される。理論に縛られることは望まないが、これは、光触媒材料が、はるかに深く塗膜中に埋め込まれているより大きな粒子上では、例えばナノサイズの光触媒粒子の場合よりも動かないために達成することができるものと考えられる。
【0106】
本発明のある実施形態によれば、より健康的でかつ/またはより低毒性のペイント組成物および/または(乾燥した)ペイント塗膜が提供される。理論に縛られることは望まないが、例えば5ミクロンを超えるような大きな粒子は、より小さい粒子のようには簡単に皮膚中に拡散せずに、皮膚が汚染された場合にそれらをはるかに容易に洗い流すのに役立つことが考えられる。
【0107】
ある実施形態によれば、ペイント塗膜(表面)のいくらかの風化後のキャリヤー、つまり、表面の不活性材料の濃度が増加してペイント塗膜の天候安定性が増すという全体的効果を示す本発明による不活性粒子を使用する利点が提供される。
【0108】
本発明のある実施形態によれば、該光触媒塗料は、例えば、バインダとキャリヤー粒子との間の(改良された)接着を提供し、それによって全体の塗膜が割れに対してより耐性があるようになる多機能塗料でもあり得る。
【0109】
[セルフクリーニング性表面]
本発明の第3の態様によれば、セルフクリーニング性表面が提供され、それは、本発明の第1の態様によるセルフクリーニング性ペイントなどのセルフクリーニング性ペイントに由来する乾燥層(ペイント塗膜)を含む。
【0110】
本発明のある実施形態によれば、セルフクリーニング性表面は、例えば、木材、れんが、コンクリート、セメント、アスファルト、天然または人工石、粘土、ガラス、プラスチック、金属、繊維ガラス、炭素繊維、(壁)紙、塗面、糊付け面、複合材料、または任意のそれらの組合せ、例えば、物品の表面、壁、建物、構造要素、橋、建築要素、建築用ブロック、窓、ドア、床、天井、屋根(野地)、平滑化されたおよび/またはしっくいを塗った表面、家具、家具調度品、医療機器、衛生設備、自動車、(自動)二輪車、トラック、コンテナ、バス、飛行機、ロケット、船舶、列車、機関車、風車、またはソーラーパネルなど(それらの任意の組合せを含む)の1つまたは複数の上に提供される。
【0111】
本発明のある実施形態によれば、ペイント塗膜表面積((被覆した)マイクロサイズの粒子を含めない)対被覆したマイクロサイズの粒子(例えばTiOを被覆したHGMS)の表面の、同様の、一定のまたはほぼ一定の比率を、ペイントファイル(塗装/被覆表面)の存続期間を通して提供するかまたは得ることができる。それによって、セルフクリーニング性表面が、塗装/被覆表面の存続期間中提供される。
【0112】
理論に縛られることは望まないが、ペイント表面(被覆したマイクロサイズの粒子を含めない)の環境にさらされる表面と被覆したマイクロサイズ粒子(例えば、TiOを被覆したHGMS)表面との表面の比の例は、1:100〜1:10、1:10〜1:1、1:1〜10:1、または10:1〜100:1の範囲を含み得る。これらの比は、ペイント塗膜(粒子を含まない)の平らで水平な表面および表面がさらされる粒子(マイクロサイズ粒子)HGMSの球面を仮定して決定される。
【0113】
HGMSは、ペイント中の通常のフィラー材料として使用される。したがって、そのような粒子は本発明による適切な(マイクロサイズの)粒子であることが考えられる。アナターゼにより被覆された大きな表面積を与えるおよそ最大40%までの様々な体積パーセントのHGMSをペイントに加えることができる。本発明の1実施形態において、ペイントまたはペイント塗膜は、1〜50%、10〜45%、20〜40%または30〜40%(体積/体積)のHGMSを含む。
【0114】
本発明のある実施形態によれば、あるペイント系が提供され、そこでは、ペイントまたはペイント塗膜中のバインダ、顔料、および/または化合物/化学組成物の1つまたは複数の(光触媒)劣化が、光触媒塗料を含むマイクロサイズの粒子を使用することによって、光触媒塗料を含むマイクロサイズの粒子の代わりに光触媒作用のあるナノ粒子を含む同様の塗料と比較して、ペイント/塗装表面/塗料中で、縮小され、阻止され、遅延され、防止される。
【0115】
本発明によれば、例えばペイント塗膜等の塗面は、セルフクリーニング特性、例えば、塗面を基本的に有機および/または無機の汚れ、汚物、破片などのないように維持し、例えばよりきれいな外観を提供する能力など、を提供する。これにより、例えば、塗面の退色/汚染を減少させまたは避けることができる。その上、セルフクリーニング性塗面を提供するペイント組成物は、微生物、細菌、カビ、酵母菌、藻類、地衣類および植物の1つまたは複数の成長を縮小する可能性または能力を有する。これは、例えば、栄養素の不足および/または1つまたは複数の毒性がありかつ/または攻撃的な化合物が生成されるためであり得る。
【0116】
本発明のある実施形態によれば、該塗装された表面/塗料の光触媒活性は、塗装塗膜(塗装表面)の全寿命にわたって基本的に変化しないまま維持される。
【0117】
[表面をクリーニングする方法]
本発明の第2の態様によれば、表面をクリーニングする方法が提供される。
【0118】
本発明のある実施形態によれば、表面をクリーニングする上記方法は、本発明の2番目の態様によるセルフクリーニング性表面などのセルフクリーニング性表面を電磁放射線にさらすことを含んでもよく、前記電磁放射線は、200〜400nmおよび/または400〜800nmの範囲の波長を有する放射線を含み、前記放射線は、太陽(例えば、日光、反射日光、薄明、月光)によるかまたは人工光源によって提供される。
【0119】
本発明のある実施形態によれば、該表面をクリーニングする方法は、388nm以下、および/または光触媒および/またはn型半導体のバンドギャップに相当する波長、あるいは光触媒および/またはn型半導体のバンドギャップより短波長である波長による照射を含む。
【0120】
本発明のある実施形態によれば、該ペイント塗膜は、微生物の成長を、例えば、被覆したビーズ上で起こる高度に酸化性の光触媒プロセスから生じる反応生成物によって表面上のそれらを殺すことによって阻止する。微生物は本発明によるペイント塗膜の表面で生き残ることができず、それによって前記微生物は、ペイント塗膜に侵入して、そのペイントによって被覆されている例えば木製基材等の基材に達することを妨げられるものと考えられる。
【0121】
本発明の1つの実施形態によれば、ペイント組成物および/またはペイント塗膜中に含まれている被覆された粒子は、例えばアナターゼおよび/または1つまたは複数のその他の化合物および/または組成物によって被覆/一体化されている中空ガラスマイクロスフェア(HGMS)である。アナターゼにより被覆されているHGMSを含む本発明による塗料/塗面の実施形態は、図1に示されている。
【0122】
図1は、本発明によるペイントを塗装/被覆した表面または基材5の断面を示す。このペイントは、アナターゼの光触媒活性形態のTiO25、26により被覆されている中空ガラスマイクロスフェア(HGMS)20、21等のビーズを含む。該表面5に堆積されている塗料/ペイント10の厚さは、TiOを被覆したHGMS20、21の直径を上回る。該ペイントの塗装およびそのペイントの乾燥状態で、TiOを被覆したHGMSの集団は、表面に組み込まれ、それによってアナターゼは、環境に露出される。その他のTiOを被覆したHGMSは、ペイントの層に覆われておりかつ/または組み込まれている。図1Aは、新たに塗装された表面を示す。時間と共に塗装層の厚さは、例えば、劣化、風化、浸食、磨耗などの1つまたは複数により減少する可能性がある(図1B)。その結果として、例えば長期間の風化の後、表面に近いTiOを被覆したHGMSは緩んできて落下することになり得る。上記のTiOを被覆したHGMSが、矢印で示されている。この過程は、ペイント/塗料の厚さがさらに減少しており、より多くのTiOを被覆したHGMSが失われている図1Cで見られるように継続され得る。しかし、TiOを被覆したHGMSが、表面に突出し、光触媒活性アナターゼを露出して依然として存在する。
【0123】
本発明のある実施形態において、アナターゼを被覆したHGMSの全てまたは一部分は、ペイント組成物(ガラスビーズを含まない)により、例えばペイント塗膜を提供して間もなく、覆われ得る。例えばバインダの劣化による塗装された/被覆された表面の自然崩壊の間に、徐々に塗面はより大きな割合のガラスをその中に有し、それ故、ペイント塗膜の劣化は、減少するはずであることが考えられる。ビーズおよび/または球形粒子などの粒子は、ペイントを過度に粘稠にすることなく相当量ペイントに加えることができる。その結果として、表面の大きな部分または割合が、多くの場合バインダより耐候性があり、例えば光触媒効果の結果として分解することのないセルフクリーニング性表面を提供することに貢献することもできるTiOを被覆したHGMS等のビーズを含むことができる。環境からの汚れは、ガラスに留まり、太陽光にさらされたとき酸化されよう。光触媒によって生じるOH基は、半減期が10−9秒で極めて短命であると見られる。OH基は、それらがバインダまで到達/拡散することができる前に崩壊するものと思われる。
【0124】
本発明のある実施形態によれば、埋め込まれておりかつ/またはペイント/塗膜と接触しているHGMSの陰のアナターゼ、すなわち表面に露出していないアナターゼは、例えば低レベルの(紫外)光または得られる水分子が少ないため、活性でないかまたは減少した活性度を示す。これは、遊離基の形成を阻止、防止しまたは減少させることができ、それによってペイント/塗膜の劣化を防止および/または減少させる。
【0125】
理論に縛られることは望まないが、アナターゼ触媒による光化学反応が起こり、それによってOH基および/またはペルオキシラジカルが例えば水および/または酸素から形成されることが考えられる。これらの遊離基は、極めて反応性に富み、非常に短い寿命を有すると思われる。遊離基の短い寿命のために、それらは発生場所から、例えば拡散によって離れたところに移動するようなことはないと思われる。その結果として、さもなければ、例えばペイント中に存在するフィラーまたは顔料に対して非常な損傷を与えるであろうその極めて反応性に富む遊離基は、発生場所の近くに留まる。これらの遊離基は、アナターゼが本発明による塗装された/被覆された表面の水の存在する中で紫外線などの光を吸収する場合に生ずる。
【0126】
HGMSなどの粒子に連結しているアナターゼの触媒活性形態のTiOの使用によって、そのアナターゼ結晶の配置は、それらが結合/連結/付着している粒子の外側に限定される。それによって、ペイント中の遊離のアナターゼ結晶の発生が避けられる。ペイント中の遊離のアナターゼ結晶の存在は、それらの存在が、ペイントの基本的な成分、例えば、バインダ、顔料および/または添加剤などに負の影響を有することが考えられるので望ましくない。
【0127】
HGMSなどの粒子を、ペイントなどの塗料組成物中に混合するとき、それは一般的には高剪断の機械的ブレンドによって行なわれる。それ故、アナターゼの被覆が粒子に強く結合していること、すなわち、共有結合していることが、アナターゼ粒子が混合中にキャリヤー粒子から剥離されることを避けるために肝要である。
【0128】
本発明のある実施形態によれば、粒子(例えばガラス)および光触媒/機能層/組成物(例えばアナターゼ)を含む表面は、その光触媒/機能層/組成物(例えばアナターゼ)の光誘起される触媒特性が、例えばバインダ、顔料および/または添加剤から物理的に分離されている/距離があるところに提供される。このシステムは、長期間にわたって活性であると考えられる。
【0129】
また、本発明によるペイントにより提供された被覆/塗装表面の寿命は、例えば、ペイント中に分散された、すなわち、HGMSなどの粒子に連結/共役/付着されていないアナターゼを含むペイントと比較して著しく長いことが考えられる。
【0130】
[セルフクリーニング性塗料組成物の使用]
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様によるセルフクリーニング性表面などのセルフクリーニング性表面を提供するための本発明の第1の態様によるセルフクリーニング性塗料組成物(ペイント)などのセルフクリーニング性塗料組成物の使用に関する。
【0131】
本発明のある実施形態によれば、セルフクリーニング性塗料組成物(ペイント)は、例えば、木材、れんが、コンクリート、セメント、アスファルト、天然または人工石、粘土、ガラス、プラスチック、金属、繊維ガラス、炭素繊維、(壁)紙、塗面、糊付け面、複合材料、または任意のそれらの組合せ、例えば、物品の表面、壁、建物、構造要素、橋、建築要素、建築用ブロック、窓、ドア、床、天井、屋根(野地)、平滑化されたおよび/またはしっくいを塗った表面、家具、家具調度品、医療機器、衛生設備、自動車、(自動)二輪車、トラック、コンテナ、バス、飛行機、ロケット、船舶、列車、機関車、風車、またはソーラーパネルなど(それらの任意の組合せを含む)の1つまたは複数の上にセルフクリーニング性表面を提供するために使用される。
【0132】
[機能層を被覆したマイクロサイズ粒子]
第5の態様において、本発明は、本発明の第1の態様による任意のマイクロサイズ粒子などの機能層で被覆したマイクロサイズ粒子に関連する。
【0133】
本発明のある実施形態によれば、マイクロサイズの粒子は、中空ビーズ、部分的に中空のビーズ、または中実ビーズの1つまたは複数、または任意の組合せ/比率の中空ビーズ、部分的に中空のビーズおよび中実ビーズを含み、該ビーズは、セラミック材料、ポリマー材料、サーメット材料、金属材料、色素性材料、光吸収性および/または光反射性材料(それらの任意の組合せを含む)から選択される1つまたは複数の材料を含む。
【0134】
本発明のある実施形態によれば、ビーズは、ペイント塗膜の所望の色に適合するように彩色され/着色される。これは、ビーズを光触媒材料で被覆する前に、ビーズ材料に顔料を添加するか、またはビーズを所望の色を生じる材料で被覆することによって達成することができる。顔料としては、無機顔料および/または有機顔料、例えば、フタロブルー、フタログリーン、キナクリドン、ナフトールおよびアゾを挙げることができる。本発明のある実施形態によれば、ペイント、塗料、または組成物は、非特許文献6および/または非特許文献7に開示されている1つまたは複数の有機および/または無機顔料を含む。
【0135】
本発明のある実施形態によれば、ペイントまたはペイント塗膜は、機能層で被覆したマイクロサイズの粒子対被覆されていないマイクロサイズの粒子(例えばTiO被覆HGMS対TiO非コートHGMS)が、1:100未満、1:100〜1:10、1:10〜1:1、1:1〜10:1、10:1〜100:1の、または100:1を超える混合物を含む。
【0136】
本発明のある実施形態によれば、本発明によるマイクロサイズの粒子などのキャリヤー粒子は、1つまたは複数の光触媒材料によって完全に、または部分的に被覆することができる。これは、例えば、照明下および空気の存在する中で、1つまたは複数の有機化合物の酸化を促進することができる光触媒材料の任意の組合せを含むことができる。光触媒材料は、限定はされないが、TiO、ZnO、WO、SnO、MoO、CaTiO、Bi、CuO、Fe、ZrO、SiCおよびTiZr(1−x)(ここでxは、0と1の間の数である)のこれらの任意の組合せを含めた1つまたは複数を含むことができる。
【0137】
光触媒の表面および/または本体を、金属などの1つ以上の元素によりドーピングすることにより、本発明による光触媒の性能または動作範囲(例えばnm)を、増加、修正、または減少させることができるものと考えられる。
【0138】
本発明の1つの実施形態において、該被覆ビーズは、セルフクリーニング特性を生ずる酸化過程を促進することができる共触媒により、好ましくは本体の代わりに表面にドーピングされる。前記共触媒は、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、タングステン、モリブデン、金、銀、銅、およびそれらの酸化物または硫化物の任意の1つまたは組合せを、好ましくは該光触媒の0.001、0.01、0.1〜1、2、5重量%の量で含む。
【0139】
本発明のある実施形態によれば、該ビーズは、1つまたは複数の金属材料を含む。金属との用語は、純金属および合金に対して用いることができる。
【0140】
本発明のある実施形態によれば、該ビーズは、1つまたは複数のサーメット材料を含む。サーメットとの用語は、金属とセラミックスの複合材料である材料に対して使用することができる。
【0141】
本発明のある実施形態によれば、該ビーズは、少なくとも一部は導波路として作用しており、太陽光等の光を内部に反射して光触媒塗料に戻すと考えられる。そのビーズは、中空であり得、例えば、1.4〜1.6、1.2〜1.6、1.4〜2.0、または2.0〜2.7の間の屈折率を保有することができる。該光触媒塗料材料は、例えば、2.5〜2.75、2.0〜4.0、2.0〜3.0または1.5〜3.0の屈折率を有することができる。理論に縛られることは望まないが、ビーズが中空である場合、該光触媒塗料材料がそのビーズより実質的に高い屈折率をもし有すれば有利であるものと考えられる。例えば、太陽光が空気よりはるかに高い屈折率を有する塗料に当たるとき、その光は屈折し、スネルの法則によれば、それは本質的に太陽光をビーズの中央により近く導く入射角と比較して低い屈折角を有するであろう。その太陽光がそのビーズ材料中で再び屈折するとき、その屈折角は増大する。光が高い屈折率を有する材料からより低い屈折率を有するものに透過するとき、その2つの材料の屈折率から計算される全ての光が反射される臨界角が存在する。この現象は、内部全反射とも呼ばれる。太陽光がビーズの空洞中の空気に当たるとき、かなりの部分が完全に反射されて光触媒塗料まで戻る。これは、ビーズを透過する太陽光が少ないことを意味する。これは、内部(全)反射によってより多くの光がペイント塗膜の表面の光触媒塗料内に吸収され、それによってセルフクリーニング効果の歩留まりを増すことができるために有利であり得る。その上、内部(全)反射は、ペイント塗膜中に含まれかつ/または閉じ込められている(すなわち、表面に露出していない)光触媒材料の光誘起による活性の減少によってペイント塗膜に対する潜在的な損傷を減少することに寄与することができる。
【0142】
本発明のある実施形態によれば、該ビーズは、ペイント塗膜の所望される色に適合するように顔料着色する。これは、例えばそのビーズがペイント塗膜の表面に露出するようになったとき塗膜の退色を避けるように行なうことができる。たとえビーズが非常に小さくてそれらがヒトの目には殆んど見えなくても、表面の高濃度のビーズは光学特性に影響を及ぼし得るものと考えられる。例えば、濃色ペイント塗膜中の白いビーズは、その塗膜の表面の無数の小さな白い点のために、「漂白」効果を有し得る。
【0143】
ある実施形態によれば、本発明による中空または中実のビーズは、ガラス、ホウケイ酸ガラス等の1つまたは複数のセラミック材料を含むか、それらからなるか、または基本的にそれらからなる。そのビーズは、光触媒材料で被覆することができ、被覆してもよい。別の実施形態によれば、前記ビーズは、1つまたは複数のポリマー材料、例えば、丈夫で延性のある有機ポリマーまたはシリコーン等を含むか、それらからなるか、または基本的にそれらからなる。さらなる実施形態によれば、必要な場合は、該ポリマーを光触媒層の(光)触媒作用から保護するために、そのビーズには、例えば(光)触媒反応によって酸化されない適切な材料、例えば、SiOまたはAlのような材料などの保護層および/または中間層が提供される。
【0144】
本発明のある実施形態によれば、結合したアナターゼ結晶等の結合した光触媒層の結合強度は、非常に高く、被覆したビーズを蒸留水中で30分間にわたって超音波にかけた後遊離した光触媒層(例えばアナターゼ結晶)の量は、被覆したビーズの全体重量の10、5、2、1、0.5、または0.1%未満である。
【0145】
本発明のある実施形態において、該被覆したビーズは、ペイント塗膜の耐磨耗性を改善する。
【0146】
本発明のある実施形態において、該被覆したビーズは、ペイント塗膜の耐候性を改善する。
【0147】
本発明の1つの実施形態において、該被覆したビーズは、紫外線安定剤として作用することによってペイント塗膜の紫外線安定性を改善する。
【0148】
[マイクロサイズの粒子の提供]
本発明の第6の態様は、本発明の第1および/または第5の態様によるマイクロサイズの粒子等のマイクロサイズの粒子を提供するための1つまたは複数の方法に関する。
【0149】
本発明のある実施形態によれば、光触媒材料は、例えば共有結合でビーズに結合しており、それによってナノサイズの光触媒粒子の環境またはペイント組成物への放出が、減少または回避される。適切な被覆プロセスは、例えば、物理蒸着(PVD)、プラズマ強化物理堆積(PE−PVD)、化学気相堆積(CVD)、プラズマ強化化学堆積(PE−CVD)、有機金属化学堆積(MO−CVD)、原子層堆積(ALD)および/または例えばアルコールに溶解した金属アルコキシド等の有機金属前駆物質を用いる「湿式化学」を含み得る。本発明のさらなる実施形態によれば、本発明による触媒活性材料等の材料は、非特許文献11および/または非特許文献12に開示されている方法および原理を用いてガラスビーズ等のビーズおよび/または粒子に堆積することができ、前述の参考文献の主題は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0150】
本発明のある実施形態によれば、TiO被覆および/またはアナターゼ被覆した(中空)ガラス球は、中空ガラスミクロスフェアをCVDプロセスにより被覆することによって提供される。そのプロセスにおいて使用されるチタン前駆物質は、有機チタネート、チタンアルコキシド、例えば、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)、および/またはチタンテトラクロリド(TiCl)であり得る。ガラス表面とアナターゼTiO塗料の間の共有結合を達成するためには、該チタン前駆物質は容易に加水分解されなければならないことが考えられる。その反応は、ガラス表面のOH基がチタン前駆物質を加水分解し、それによってガラス表面とチタン原子との間の共有結合が提供されるものと考えられる(図2参照)。そのプロセスは、例えば、次のステップ(大気圧における)に分けることができる:
1.中空ガラスミクロスフェアを110〜200℃に加熱して前処理し、物理的に吸着されている表面の水を蒸発させる。
2.チタン前駆物質を、熱および/または真空を加えることによって気化させる。
3.不活性ガス、例えば窒素、アルゴンなどを、例えば10ppmより少ないHOと共に使用して気化した前駆物質を、中空ガラスミクロスフェアが連続的に、例えば機械的に撹拌されているか、またはキャリヤーガスによって流動化されている反応チャンバーに運ぶ。その反応チャンバー内の温度は、−20〜800℃の範囲内であり得る。
4.そのチタン前駆物質は、それがガラス表面のOH基と接触するとガラス表面と反応し、その遊離基は、該前駆物質を加水分解し、チタン原子とガラスビーズとの間に共有結合を生み出す(図2)。
5.0.01〜50%の相対湿度を有する不活性ガスを、中空ガラスマイクロスフェアに、例えば撹拌または流動化している間に吹きつけて、表面を加水分解する。
6.ステップ2から5を繰り返してより厚い層を積み上げる。
7.被覆されたミクロスフェアを100〜800℃の範囲の温度に数秒から数時間までの範囲の時間にわたって加熱し、そのアナターゼを結晶化させる。
【0151】
以下の観想は、より理論的性質の考慮を含んでいる可能性があり、本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【0152】
理論に縛られることは望まないが、例えば、該光触媒は、ビーズに塗装されて光触媒材料とペイント塗膜のバインダとの間の接触を最小にすることが考えられる。同じ体積の被覆マイクロスフェアまたは光触媒ナノ粒子がペイント配合物中に導入された場合、ナノ粒子は体積当たりはるかに大きい表面積を有するために、そのときは明らかに、光触媒材料とバインダとの間の接触面積は、被覆したマイクロスフェアの場合には光触媒ナノ粒子と比較してはるかに小さい。さらに重要なことには、光触媒材料がペイント塗膜表面から突出しているマイクロサイズの粒子などの不活性材料に塗装されているときは、その光触媒反応、すなわちセルフクリーニング効果は、バインダ材料と接触していない不活性表面で起こる。マイクロスフェアのサイズに起因して、例えば紫外線は、ペイント塗膜中に、そのペイント塗膜内にある被覆マイクロスフェアの一部を活性化するのに十分に深くは侵入せず、それに対して、ナノ粒子は、非常に小さく、それがペイント塗膜表面にある場合、基本的のその表面積の全てを活性化することができ、それ故、該粒子を塗膜に接着している全ての有機バインダが劣化してナノ粒子が塗膜から落下することを引き起こすことがあり得る。
【0153】
同様に、表面近くに位置する被覆ビーズは、「塗装」と同時に、すなわち新鮮な塗膜中で、例えば2μm以下のバインダの非常に薄い層により完全にまたは部分的に覆われることがさらに考えられる。ペイント塗膜は、ペイント配合物中で使用されるバインダ、また使用される紫外線安定剤の量およびタイプに基づいて紫外線を吸収する。ペイント配合物は、基材を紫外線から保護することがペイントの代表的な機能であるために、一般に紫外線安定剤を含む。それ故、表面に最も近い被覆ビーズのみが光触媒活性となりそれらを覆っている薄膜に影響を及ぼす。これはビーズを覆っている薄膜が接着性を失う原因となり、風化作用および磨耗により薄膜は除去される。これは、ペイント塗膜の表面に露出している被覆ビーズの一部を残し、それにセルフクリーニング特性を与える。光触媒効果によるバインダの劣化は、光触媒材料に達する紫外線が、バインダが除去されたところのみ、またはそれが大部分である点で停止または大幅に減少する。これは、セルフクリーニング性効果(光触媒反応)が、バインダと接触していないビーズの不活性表面で起こることを意味する。バインダと接触している光触媒材料は、紫外線がそれに殆んどまたは全く到達しない塗膜中のずっと深いところにある。
【0154】
基材へのペイント塗膜の塗装後、その表面における被覆ビーズの濃度は、そのペイント塗膜が磨耗および風化作用にさらされた時に増加し、その後、図1でaからcまで示されている塗膜の寿命を通して安定なままであることも考えられる。塗膜表面における高濃度の被覆ビーズは、不活性材料でできているビーズが有機バインダよりはるかに大きい耐性を有するために、塗膜の耐摩耗性および耐候性を増加するであろう。これは、ペイント塗膜の耐用年数を長期化し、セルフクリーニング効果と共に塗装表面を、被覆ビーズを含まないペイント塗膜よりはるかに長時間にわたってメンテナンス不要にするであろう。
【0155】
本発明の1つの利点は、光触媒活性材料の環境への放出が、例えば光触媒作用のあるナノ粒子を含むペイントと比較して著しく減少することであり得る。これはペイント塗膜の劣化が、ペイント塗膜の磨耗耐性および風化耐性に対する被覆ビーズのプラス効果のために減速されるためばかりでなく、該ビーズが塗膜中にはるかに深く組み込まれ、それ故ナノ粒子に対するよりはるかに多くのペイントが劣化されなければビーズが放出されないためでもある。この違いは、例えば図1に示されている。ナノ粒子は、それらの高い表面積によって非常に高い活性を有し、それ故、この用途に対して興味深い。しかし、ナノ粒子の人体に対する影響については十分に知られていないが、調査によれば、皮膚と接触した状態で太陽光にさらされた光触媒作用のあるナノ粒子は極めて危険であり、おそらく発癌性を有することを示している。それ故、非常に活性な光触媒作用のあるナノ粒子を有する光触媒材料により劣化し得るバインダを含むペイント塗膜は、健康上有害なものと予想される。しかし、光触媒材料の放出がはるかに少なく、また、光触媒材料が、ナノ粒子のように上部皮膚層を容易に通過して拡散することのないはるかに大きい粒子に塗装されているために表皮の角質層の下の生きた皮膚細胞に到達することが阻止され、それ故洗い落とすのがはるかに容易であるため、本発明の場合はそれとは異なる。
【0156】
(実施例)
本発明を本発明の実施形態を説明する以下の実施例を参照してより詳細に説明するが、これらは添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0157】
(実施例1)
この実施例は、アナターゼTiO等の光触媒材料を中空ガラスマイクロスフェア上に塗装することができる証拠を提供した。
【0158】
光触媒TiOを、40μmの平均/中間サイズおよび0.38g/cmの平均/中間密度を有する3M製のS38中空ガラスマイクロスフェアに、Johnson Matthey Catalysts製チタンテトライソプロポキシド(TTIP)のVertec XL110によりそのマイクロスフェアを処理し、続いてその後その生成物を焼成してそのチタンを結晶化させることによってコートした。その塗装は、基本的に次の手順で行なった:
TTIPをイソプロパノールに溶解し、そのイソプロパノール対TTIPの比率は10:1の容積比であった。20分間撹拌後、S38中空ガラスマイクロスフェアを、1gのガラス球対1mlのTTIPの比率でその溶液に加え、20分間撹拌した。次に、蒸留水をその溶液に、1mlの蒸留水対1gのガラス球の比率で加え、その溶液を10分間撹拌した。その溶液を次に、12μmより大きい粒子を残すSchleicher&Schuellのフィルターナンバー589/1等の濾紙を用いて濾過してガラスビーズをその液体から分離し、その後そのガラス球を乾燥するまで110℃で加熱した。全てのアルコールが蒸発した後、その被覆したガラスビーズを次に550℃で5時間加熱した。同じ塗装プロセスを1回繰り返し、次にその被覆ガラス球を蒸留水中で超音波処理してその溶液中のアナターゼ粉末から分離した。最後にその被覆球を110℃で乾燥するまで加熱した。その光触媒塗膜は図3bでみることができる。しかし、その塗膜の付着力は不十分であり、大きな貝殻様の断片が激しい機械的力が加えられなくてさえ離れ落ちることが見出された。これは、物理的に吸着された水がTTIPを、それが表面のヒドロキシル基と図2の略図にしたがって反応できる前に加水分解するために、該塗膜がガラス表面との共有結合を確立できないためであると考えられる。
【0159】
(実施例2)
この例は、アナターゼTiO等の光触媒材料を中空ガラスマイクロスフェア上に塗装することができ、物理的に吸着された水をガラスビーズ表面から除去することによって該塗料のガラスビーズへのよりよい付着力が与えられる証拠を提供した。
【0160】
塗装プロセスは、ガラスビーズを4時間にわたって160℃に加熱してそれらを前処理し、次いでオーブンから取り出した直後に塗装したことを除いては実施例1における方法と同様に行なった。光触媒塗料は、図3aで見ることができ、それは被覆ビーズと被覆されていないビーズの比較を示している。
【0161】
図4は、Huber G670 Guinier回折計により0.005°の測定ステップで測定したSigma Aldrichから提供された商用グレードのアナターゼTiOおよび実施例2により被覆されたビーズからのアナターゼのx線回折パターンを示す。その比較により、両方のスペクトルが同じ角度においてピークを有するので該塗料は基本的にアナターゼであることが示された。Sigma Aldrichから提供されたアナターゼに対するスペクトルは、図4においてシフトアップされており、そのため両方のスペクトルをはっきりと見て比較することができ、両方のスペクトルは、測定中に粉末を付着したテープのバックグラウンドを含む。商用グレードのアナターゼの高いピークは、その材料が高度に結晶性であり、示されているもう一方のスペクトルよりはるかに大きいことを示した。被覆ビーズからのアナターゼの幅広いピークは、その材料の結晶サイズが非常に小さく、Sigma Aldrichのアナターゼよりはるかに小さいことを示した。
【0162】
(実施例3)
この例は、実施例2で説明したようにアナターゼTiOで被覆した中空ガラスマイクロスフェアが有機材料の分解/酸化を促進することができる証拠を提供する。
【0163】
有機染料メチレンブルー(MB)の希薄溶液を用意し、被覆ガラスビーズをその溶液中に混合することによって、ビーズの光触媒活性を試験した。それに関しては、60mgの被覆ビーズを、100mlのビーカーにおいて、30mlの希薄MB溶液中に混合した。その混合物が濃色で均衡になった後、100mlのビーカー中の照射面積がおよそ16.6cmであるDymax 5000−EC紫外線ランプを用いてそれを20分間紫外線にさらした。そのランプの放射照度は約225mW/cmであり、出力波長は、大部分は350から400nmの間であった。MB濃度は、約1cmのキュベットを用いる島津UV−mini 1240分光光度計を使用して較正曲線を作成することによって測定した。該混合物の最初に測定したMB濃度は、約80μmol/リットルであった。図5は、前記実験の結果をまとめている。20分後、測定されたMB濃度は76μmol/リットルから4μmol/リットルに減少し、すなわち該溶液の青色は殆んど完全に消えた。ガラスビーズ無しのMB溶液も同じ条件下で20分間照射した。測定された濃度変化はわずか4μmol/リットルであり、溶液の色で見ることができた差異は非常に小さく、被覆ビーズがMBの酸化を促進したことを示している。
【0164】
(実施例4)
この例は、光触媒活性の結果塗膜が激しく劣化することのない光触媒材料を含んでいるセルフクリーニング性ペイント塗膜を得ることができる証拠を提供する。
【0165】
ペイント塗膜に対する被覆ビーズの効果を試験するために、約40%の樹脂、約28%の被覆HGMS、約2%の顔料、約29%の溶媒および約1%の添加剤を含む典型的なアルキドペイント配合物を用意し、そこに実施例2に従って調製した被覆ガラスビーズを、乾燥ペイント塗膜の体積の40%が被覆ガラスビーズとなるようにその配合物に加えた。いくつかの200μmの厚さのペイント塗膜(湿潤時の厚さ)をパネルに塗布し、Q−lab(すなわち、促進耐候性試験チャンバー)中に置き、温度を60℃に維持して塗膜を4時間のサイクルの紫外線にさらし、続いて温度を50℃に維持して4時間結露させた。QUV−A340 紫外線ランプをQUVチャンバー内で使用し、その紫外線ランプからの波長は、基本的には290〜450nmの範囲であり340nmにおいて最高強度であった。図12は、QUVチャンバーで使用したUVA−340ランプの放射特性を示す。塗膜は、QUVチャンバー内の照射前後に走査電子顕微鏡を用いて分析した。図6は、様々な照射時間後の被覆ガラスビーズを含むアルキドペイントを示す。その画像は、照射前には、ペイント塗膜の表面近くの被覆ビーズがバインダの薄層により完全に、または部分的に被覆されていることを示している。ある程度の照射後、ビーズ上の光触媒塗料は、そのビーズ最上部のバインダの薄層の除去を完了し、そのためそのビーズは、露出されてセルフクリーニング効果のために使用可能となる。ビーズの間のバインダが光触媒によって影響されることを示すものはなく、実際に、図7で見られる参考試料(ガラスビーズを含まない同じアルキド配合物)は、それ以上に劣化しており被覆ビーズがペイント塗膜の耐候性を改善することを示すことが見出された。おおよそ5年の屋外暴露に対応するQUVチャンバー内での2200時間にわたる暴露の後は、光触媒活性の結果として多くの被覆ガラスビーズの周りに形成された薄いすき間が見られたが、前のように他のバインダは影響されていない。これはまた一方で、長期間の暴露の後でさえもビーズが塗膜から落ちることは引き起こさなかった。これは、光触媒塗料は、それがペイント塗膜中に深く埋め込まれている場合は、恐らく紫外線がペイント塗膜中にあまり深くまで侵入しないために、活性ではないことを示している。
【0166】
(実施例5)
実施例4で説明したものと同様の実験を、被覆ビーズの耐紫外線に対する効果を試験するために表1による典型的なポリウレタン配合物を使用して実施した。その配合物は、乾燥塗膜の固形分の40容量%の被覆ガラスビーズを含んだ。図8および9に示されている実験の結果は、実施例4で得られた結果と類似している。ビーズの間のバインダは、被覆ビーズによって影響されないようである。さらに、被覆されたガラス球は、紫外線に長期間さらされた後でさえもペイント塗膜中に、保持され/埋め込まれたままであった。
【0167】
(実施例6)
この例は、光触媒ナノ粒子を含む有機ペイントが、実施例4によるペイントなどの本発明による有機ペイントほど耐久性がない証拠を提供する。
【0168】
ナノサイズのアナターゼTiO粉末を含む表1による典型的なポリウレタンペイントを比較のために配合した。いくつかの200μmの厚さのペイント塗膜(湿潤時の厚さ)をパネルに塗布し、QUV試験チャンバー内に置き、温度を60℃に維持して塗膜を4時間のサイクルの紫外線にさらし、続いて温度を50℃に維持して4時間結露させた。そのQUVチャンバー内の紫外線ランプから放射される波長は、290〜450nmの範囲であり340nmにおいて最高強度であった。QUVチャンバー内で使用したUVA−340の放射特性と放射される波長および強度は、図12に示されている。
【0169】
ポリウレタンバインダはアルキドバインダより紫外線安定性がよりずっと良好であるため、ポリウレタンバインダを選択した。図10は、紫外線露光前と1500時間露光後の違いを示している。アルキドよりはるかに大きい耐紫外線性のバインダを選んだにもかかわらず、その塗膜はQUVチャンバー中での1500時間後は、文字通り崩壊しており、その塗膜の白亜化は非常に激しく、その塗膜表面は固体のペイント塗膜と言うよりむしろ緩んだ微粉のようであった。
【0170】
(実施例7)
この例は、実施例2に記載されているアナターゼTiOにより被覆されている中空ガラスミクロスフェアを含む典型的なアルキドペイント塗膜(表1)が、セルフクリーニング性表面を提供する証拠を提供する。
【0171】
本発明に従って設計したペイント系のセルフクリーニング効果を試験するため、乾燥ペイント塗膜の固形分の40容量%として加えた実施例2による被覆ガラスビーズを含む典型的なアルキドペイントの表面、および基本的に同じ量の被覆されていないガラスビーズを含む同じペイントの別の試料を、メチレンブルーの溶液により汚染し、乾燥させた。それらのペイントパネルを次にQUVチャンバー内で紫外線および湿気にさらした。その結果を図11に示す。同じ量のメチレンブルーを両方のパネルに塗布したが、恐らくビーズ上のTiO塗料の親水性のために、メチレンブルー溶液は被覆ビーズを含むペイント塗膜上ではるかに大きい面積に広がった。QUVチャンバー中のわずか28時間の暴露後、被覆ビーズを含む塗膜の汚染は殆んど完全に消えた(図8)。これは、該被覆ビーズがメチレンブルーの分解を大いに促進し、ペイント塗膜のセルフクリーニング効果に対する支援を提供していることを明らかに示している。
【0172】
(実施例8)
この例は、結合した光触媒層の結合強度を測定する/定量化する方法のための根拠を提供する。
【0173】
本発明のある実施形態によれば、ビーズ材料上に塗装されている光触媒材料は、ナノ粒子の低い放出を確保するための高い結合強度を有する。光触媒作用のあるアナターゼTiOの中空ガラスマイクロスフェア(HGMS)からの放出を試験および/または定量化するために、実施例2により用意された10グラムの被覆ビーズを、250mlのビーカー中で250mlの蒸留水中に混ぜ込んだ。そのビーカーをBronson 1210超音波処理器等の超音波処理器にセットし、その混合物を所定の時間、例えば40Hzで30分間等、所定の出力設定で超音波処理した。その混合物を超音波処理している間、5分毎に30秒間軽く撹拌する。超音波処理後、その混合物を遠心分離にかけて被覆HGMSと緩んだアナターゼ粉末とを分離し、緩んだアナターゼ粉末および被覆HGMSの重量を測定する。
【0174】
(実施例9)
この例は実施例2に従って調製したガラスビーズに対する塗料の優れた接着性の証拠を提供した。
【0175】
該塗料の磨耗性を試験するため、実施例2に従って被覆した0.25gのガラスビーズを、円筒状のプラスチック容器中で10gのケイ砂(平均粒径0.5mm)中に混合した。その容器を回転シャフトに固定し、そのシャフトを水平に位置づけた。その混合物を4時間回転させ、その後砂をガラスビーズから分離した。その試験は非常に厳しく、ほとんどのガラスビーズは破壊され、ごくわずかのガラスビーズのみがその処理から残った。塗料は、残ったガラスビーズおよび破壊された断片の両方で、図3aで見ることができるように無傷であった。ガラスビーズと塗料の間に共有結合が形成されているため、そのガラスと塗料は同じラインに沿って破壊され、優れた接着性を示している。
【符号の説明】
【0176】
5 表面または基材
20 中空ガラスマイクロスフェア(HGMS)
21 中空ガラスマイクロスフェア(HGMS)
25 アナターゼの光触媒活性形態のTiO
26 アナターゼの光触媒活性形態のTiO
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能層を被覆したマイクロサイズの粒子を含むセルフクリーニング性塗料組成物(ペイント)であって、前記マイクロサイズの粒子が、中空もしくは中実ビーズ、または任意の組合せ/比率の中空ビーズおよび中実ビーズであり、前記ビーズが、セラミック材料、ポリマー材料、サーメット材料、金属材料、色素性材料、光吸収性および/または光反射性材料から、それらの任意の組合せを含めて、選択される1つまたは複数の材料を含み、前記層が前記粒子に共有結合しており、光触媒層が、アナターゼの結晶形態のTiOを含み、前記塗料組成物(ペイント)が、放出されたアナターゼ/アナターゼの全体量を重量/重量として測定して、前記マイクロサイズのビーズからもたらされた/放出されたアナターゼ粒子を0.1未満含むセルフクリーニング性ペイント。
【請求項2】
前記粒子の95%超が、0.5〜20μmの範囲の相当直径を有する、請求項1に記載のセルフクリーニング性ペイント。
【請求項3】
前記ビーズまたは粒子が、光触媒活性を提供する光触媒層により被覆されており、前記層および/または光触媒活性が、
a.細菌、藻類、地衣類、酵母菌および/またはカビの1つまたは複数などの(微)生物の生長の減退、
b.化学結合による有機バインダとビーズとの間の付着強さの増大、
c.ペイント塗膜の耐磨耗性の増大、
d.耐候性および/またはUV安定性の増大、例えば、(i)有機バインダの白亜化の減少、(ii)有機バインダの分解の減少、および/または(iii)(光触媒)材料および/または1μm未満の粒径を有する材料の放出の減少、のうちの1つまたは複数、
e.望ましくない有機物および/または汚れの分解および/または酸化、および/または
f.前記ペイントの濡れ特性の向上、
の1つまたは複数を提供する、請求項1または2に記載のセルフクリーニング性ペイント。
【請求項4】
前記層が、
a.光触媒および/または3.1〜4.1eVの範囲内のバンドギャップを有するn型半導体、
b.光伝導材料/組成物、および/または
c.TiO、ZnO、WO、SnO、CaTiO、Bi、CuO、Fe、ZrO、SiCおよびTiZr(1−x)(0<x<1)、ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択され、1つまたは複数の共触媒により適宜ドープされている1つまたは複数の触媒を適宜含み、前記共触媒が、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、タングステン、モリブデン、金、銀、銅、任意のそれらの酸化物および/または任意のそれらの硫化物を含め、かつパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、タングステン、モリブデン、金、銀、銅の、任意のそれらの酸化物および/または任意のそれらの硫化物を含めた2つ以上の任意の組合せ/混合物/比率からなる群から選択され、触媒に対する共触媒のモル比が3%未満である光触媒材料/組成物、
の1つまたは複数を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のセルフクリーニング性ペイント。
【請求項5】
前記光触媒および/またはn型半導体が、およそ約3.2eV(約388nm)のバンドギャップを有し、かつ/または、前記光触媒および/またはn型半導体が、N原子、S原子、およびF原子の、任意のそれらの組合せおよび/または比率を含めた、1つまたは複数によってドープされている、請求項1から4のいずれか一項に記載のセルフクリーニング性ペイント。
【請求項6】
前記光触媒材料が、前記ビーズ/粒子に共有結合しており、前記ビーズ上に被覆されている光触媒材料が、適宜、1〜150nmの結晶サイズを有し、前記ビーズ上に被覆されている光触媒材料が、適宜、0.01〜100m/gの範囲の比表面積(例えば、BET表面積)を有する、請求項4または5に記載のセルフクリーニング性ペイント。
【請求項7】
前記光触媒層中の前記TiOの99%(重量/重量)超が、アナターゼの触媒活性形態である、請求項1に記載のセルフクリーニング性ペイント。
【請求項8】
前記ペイントが、アルキド系、アクリル系、ポリウレタン系、エポキシ系、および/またはコポリマー系である、請求項1から7のいずれか一項に記載のセルフクリーニング性ペイント。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のセルフクリーニング性ペイントからもたらされる乾燥した層(ペイント塗膜)を含むセルフクリーニング性表面。
【請求項10】
請求項9に記載の表面をクリーニングする方法であって、前記セルフクリーニング性表面を電磁放射線にさらすステップを含み、前記電磁放射線が、200〜400nmおよび/または400〜800nmの範囲の波長を有する放射線を含み、前記放射線が、太陽(例えば、日光、反射日光、薄明、月光)によるかまたは人工光源によって提供される方法。
【請求項11】
前記波長が、388nm以下、かつ/または光触媒および/またはn型半導体のバンドギャップに相当する波長、あるいは光触媒および/またはn型半導体のバンドギャップより短波長を含む、請求項10に記載の表面をクリーニングする方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のセルフクリーニング性塗料組成物(ペイント)の使用であって、木材、れんが、コンクリート、セメント、アスファルト、天然または人工石、粘土、ガラス、プラスチック、金属、繊維ガラス、炭素繊維、(壁)紙、塗面、糊付け面、複合材料、または任意のそれらの組合せ、例えば、物品の表面、壁、建物、構造要素、橋、建築要素、建築用ブロック、窓、ドア、床、天井、屋根(野地)、平滑化されたおよび/またはしっくいを塗った表面、家具、家具調度品、医療機器、衛生設備、自動車、(自動)二輪車、トラック、コンテナ、バス、飛行機、ロケット、船舶、列車、機関車、風車、またはソーラーパネルにセルフクリーニング性表面を提供するための使用。

【図2】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図12】
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【図3a】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−512019(P2012−512019A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541408(P2011−541408)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067293
【国際公開番号】WO2010/069997
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(511147034)
【Fターム(参考)】