説明

セルフ・チェックアウト処理方法

【課題】セルフサービス式チェックアウト装置を利用し清算処理を行う客のためにセキュリティ条件を個別化するためのセルフ・チェックアウト処理方法を提供する。
【解決手段】客に信用レベルを振り当て、チェックアウト装置によってアクセス可能なデータベースに前記信用レベル値を保持し、ある客がチェックアウト装置で清算処理を開始したとき、この客に関して前記データベースから前記信用レベル値を取得し、清算処理の様態を前記客の信用レベルに適合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に小売店のチェックアウト装置、とりわけセルフサービス式チェックアウト装置に関するものである。より詳しくは、本発明はセルフサービス式の清算方法のセキュリティを向上し、且つ顧客指標に基づいてセキュリティ機能を個別化するためのシステムおよび方法に関する。
【0002】
小売の食料雑貨店やスーパーマーケット業界において、人件費削減の試みは専ら、客が購入した商品の取り扱いや処理に要する時間を削減、もしくは無くすことに向けられている。このため、レジ係を実質的に不要とするセルフサービス式チェックアウト装置が数多く開発されてきた。ここで、一般的なセルフサービス式清算機は、レジ係の補助無しに客自身によって操作される。このシステムでは、客が購入する個々の商品をスキャナでスキャンした後、スキャン済み商品を買い物袋に入れる。客はその後、セルフサービス式チェックアウト装置自体、もしくは店舗のレジ係が配置された支払いセンタで購入物に対して支払いを行う。
【0003】
初めてセルフサービス式チェックアウト装置を使おうとする客が清算機の操作訓練を受けていることはまず普通はあり得ない。セルフサービス式清算機の使用について客が不慣れであったり、また悪意を抱いている場合もあるため、清算機には何らかのセキュリティシステムを組み込む必要がある。こうしたセキュリティシステムは、不注意であれ故意であれ、客が商品をスキャンせず、値段が最終的な勘定に加わらないまま商品が買い物袋に入ってしまうことを防止するものである。
【0004】
このように一般的なセルフサービス式清算機は、チェックアウト装置の動作および客の動きをモニタするセキュリティシステムを有する。例えば、チェックアウト装置には重量秤が組み込まれ、客がチェックアウト装置に持ち込んだ商品の総重量と買い物袋に入れられた商品の総重量をモニタする。このようなセキュリティシステムでは、チェックアウト装置と連動し重量秤ならびにチェックアウト装置の他のユーザインターフェースからの出力信号を分析するコンピュータもしくはプロセッサがソフトウエアルーチンを実行する。一般的なソフトウエアルーチンは、スキャンされた各商品の重量を、予想重量値のデータベースと比較する。相違があればエラーメッセージが発せられ、客が商品の再スキャンなどの適切な修正動作をとるまで清算ルーチンは休止する。
【0005】
スーパーマーケットで使用されている公知のセルフ清算機10を図1に示す。清算機10は、商品重量秤12と、この秤に関連するスキャナ14を有する。スキャナの隣には袋詰め秤20が設けられており、客が新たにスキャンした各商品を投入する買い物袋40を支持している。清算機10は満載状態の買い物カート21を支持可能なカート秤18と、商品で一杯の買い物かご23を支持可能なかご秤19を有する。各秤12、18、19、20は、圧力センサやロードセルセンサなど、少なくとも1つの重量検出器を有し、これは秤に置かれた商品の重量に応じて信号を発生するものである。キオスク24は、表示部32、データ入力装置34、支払い装置30を有する。清算機内部にはコンピュータもしくはプロセッサ26が置かれ、セルフ清算処理に関連した様々なソフトウエアルーチンを実行する。
【0006】
こうしたルーチンの1つが、秤12、18、19、20から重量信号を受け取る。例えば重量確認ルーチンでは、スーパーマーケットで販売されている各商品1−nの平均重量Mが、各商品の重量標準偏差SDと共にデータベースに記憶されている。商品がスキャナ14でスキャンされると、秤18、19、あるいは20で計測された重量が、その商品に関しデータベースから引き出された平均重量および標準偏差データから算出された重量範囲と比較される。重量が算出範囲に収まれば、入力は受け入れられる。重量が平均重量M±標準偏差SDの範囲外であれば、入力は拒絶され、商品を再スキャンや再計量するよう客に指示する。さらにチェックアウト装置によっては、重量エラーが、チェックアウト装置のセキュリティ対策の一環として店の従業員に伝えられる。このルーチンは、各商品の測定重量が新たに受け入れられるたびに商品の平均重量および標準偏差値を継続的に更新する。
【0007】
セルフ清算処理には中断を引き起こす状況が数多く存在する。例えば、客が間違った商品を袋詰めエリアに持ち込む、すなわち、スキャンにより購入が記録される前の商品が袋詰めエリアに持ち込まれることが有り得る。商品や商品を詰めた袋が不適切なタイミングで袋詰めエリアから持ち出されるとまた別のエラーが発生する。最高レベルのセキュリティであれば、主に清算処理の始まりと終わりにおける累積商品重量の比較によって、予想平均値から外れたものすべてを押さえることが可能である。だが最高レベルのセキュリティは、各清算処理および各購入商品について最高レベルの精査を必要とし、各商品の購入や清算処理全体が必然的に高確率で拒絶されることになる。こうしたひどく厳格なセキュリティは、清算処理の終了までに要する時間を著しく増加させ、客のフラストレーションを非常に大きいものとする。
【0008】
一方、最低レベルのセキュリティだと、あらゆるエラーが素通りしてしまう。このようなやり方はもちろん認められない。しかし、許容範囲の低セキュリティレベルにおいても、手癖の悪い客らにとってみれば、清算処理時の窃盗やごまかしはかなり容易い。もちろん低セキュリティレベルであれば、商品移動や清算処理時のエラーが減り、処理スピードが上がり快適になるとの利点が客にもたらされる。
【0009】
客には低セキュリティ基準で問題ない十分に信頼に足り者たちもいるが、そうでない危険な者たちもいる。よって、今求められるシステムおよび方法とは、小売施設のセキュリティニーズならびにシステム全利用者からの正当な要求・要望に応えうるものである。
【発明の開示】
【0010】
セルフサービス式設備を使用する小売業者のセキュリティニーズに応えるため、本発明は、セルフサービス式チェックアウト装置などの設備を利用し清算処理を行う客のためにセキュリティ条件を個別化する方法を提供するものである。本発明の特徴の1つによると、客にはそれぞれ信用レベルが振り当てられ、客の信用レベル値がチェックアウト装置によってアクセス可能なデータベースに保持されている。客が清算処理を開始すると、チェックアウト装置内のプロセッサがこの客に関してデータベースから信用レベル値を取得する。そしてプロセッサが、清算処理の様態を客の信用レベルに適合させる。
【0011】
実施の形態のチェックアウト装置は、清算処理で購入される商品を客が計量する商品重量秤を有し、各商品の重量をその商品の平均重量と比較して評価する。この実施の形態においては、プロセッサが、平均重量を中心とする許容重量について客の信用レベルに応じて重量許容帯を適用し、清算処理の様態適合を行う。この重量許容帯は商品重量データによって決まり、これは清算処理で購入される商品に関する平均重量および標準偏差のデータベースから取得される。重量許容帯は、平均重量を中心に標準偏差1つ分の1σ帯と、平均重量を中心に標準偏差2つ分の2σ帯と、平均重量を中心に標準偏差3つ分の3σ帯とすることができる。重量許容帯の外に出た商品重量値は計量エラーを生じ、清算処理に対する何らかの介入を促す。1σ帯は最低信用レベルの客に振り当てられ、3σ帯は最高信用レベルの客に振り当てられる。
【0012】
また別の面においては、チェックアウト装置はソフトウエアあるいはアプリケーションを有し、これは清算処理時の客の行動をモニタし、客による清算処理時のチェックアウト装置の使用に誤りがあったかどうかを判定する。この場合チェックアウト装置のプロセッサは、清算処理中断までに許容される客によるエラー回数を調整することで、清算処理の様態適合を行う。例えば信用レベルの高い客の場合、清算処理中断までに清算処理中に犯すことが許されるエラーの回数が信用レベルの低い客よりも多い。エラーとしては、購入商品の計量における客によるエラーなどが考えられる。信用レベルの高い客の方が許される計量エラーの回数は多いが、これはその計量エラーに悪意がないものと信じられるためである。
【0013】
本発明はさらに、チェックアウト装置が清算処理にセキュリティ基準を適用し、清算処理時の客の行為が窃盗未遂や他の清算処理セキュリティ違反を示していないか判断するセキュリティ条件の個別化方法を提供するものである。ここでセキュリティ基準は、客の信用レベルに応じて選択されるものである。こうして信用レベルが低い客には、窃盗や他のセキュリティ違反が容易になるであろう機能はチェックアウト装置で許されなくなる。
【0014】
本発明のある面においては、このセキュリティ条件の個別化方法がさらに、清算処理時の客の行為に関して情報を取得し、その情報を用いて客の信用レベルの上げ下げを決定するものである。情報に基づき信用レベルの変更が指示されると、客に関する更新信用レベル値がデータベースに保存され、将来の清算処理時のアクセスに備える。客の信用レベルは清算処理の進行中に変更されるものであってもよい。あるいは、客の信用レベルが所定数の清算処理完了後に変更され、更新された信用レベルが客の行動パターンを示すものであってもよい。
【0015】
さらに別の面では、本発明の方法が、チェックアウト装置での清算処理のセキュリティに関する、客とは無関係な二次的因子を評価し、これら二次的因子に基づき客へと信用レベルを振り当てるものである。信用レベルはさらに、またあるいは、チェックアウト装置での清算処理のセキュリティに関して客から取得した個人情報に基づく。
【0016】
本発明の目的の1つは、客に対してトランスペアレントな、セルフサービス式設備のセキュリティ条件個別化方法を提供することである。また別の目的は、客や清算処理に関連したリスクの指標に応じてセキュリティ条件を個別化することである。
【0017】
本発明の利点の1つは、客へとセキュリティ条件を振り当てる方法が提供され、このセキュリティ条件が客のエラーや窃盗のリスクに応じたものであることである。さらなる利点は、リスクが最低ならばセキュリティ条件も最低であり、客についてのリスク評価が高くなるとセキュリティ条件も高くなることである。
【0018】
本発明のさらなる利点は、該設備での客の清算処理記録に基づいて、その客へと振り当てられていたセキュリティ条件の調整が可能であることである。本発明の他の目的および利点は、以下の説明および添付図面を踏まえることで明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の原理を理解しやすいものとするため、この先、図面および以下の明細書に記載の実施例を参照することとする。これが本発明の範囲を限定する意図を持たぬことを理解されたし。また本発明は、本発明の属する技術分野の当業者が容易に想到し得る図示の実施例に対するあらゆる変更および改造、そして本発明の原理のさらなる利用を包含するものである。
【0020】
上述のようにセルフサービス式チェックアウト装置10は、袋詰めエリア40に持ち込まれた各商品を計量し、その商品が実際にスキャンされたものか、その商品の測定重量が予想重量と一致または近似しているかを判定する。中央プロセッサは、販売中の商品の平均重量、および図2に示すようにその平均重量を中心とした標準偏差のデータベースを保持している。記憶重量データは、長期間にわたって収集された、各商品に関する統計的に有意な重量サンプリングに基づくものである。好ましくは、各有効清算処理で得られた商品重量が統計サンプルに加えられ、商品の平均重量および標準偏差を更新する。
【0021】
図2に示すように、各商品の重量分布は公知の釣鐘状曲線となる。図の曲線は、チェックアウト装置10で新たにスキャンされた各商品は、商品自体あるいはその包装状態におけるばらつきのため必ずしも平均重量と一致しない、との事実を示している。ただし新たにスキャンされた各商品は、平均重量を中心とした所定の範囲内に収まる。この所定重量範囲は一般的に、図2の分布曲線を得るのに用いた統計的重量サンプルの標準偏差に基づくものである。1σ帯とは、平均重量から前後にそれぞれ標準偏差1つ分である。1σ帯は、分布曲線の作成に利用された重量の67%を含むことが知られる。より幅広な2σ帯は、商品重量の95%を含み、さらに幅広な3σ帯は、商品重量の99%を占める。
【0022】
客によってスキャンされた商品が所定重量範囲を外れる場合、計量中の商品があるべき商品ではないか、スキャンあるいは計量いずれかのステップが正しく実行されていないものと推測される。後者の場合、再スキャンや再計量によってエラーを正すことができる。前者の場合、客が故意に行った可能性があるため、セキュリティ警報の理由となり得る。
【0023】
本発明の一面によると、客に適用される重量許容範囲(重量許容帯)は、当の客の記録に応じたものである。すなわち信頼度の高い客の場合、その清算処理に適用される重量帯は、図2の3σ帯とできる。3σ帯を用いるということは、客が計量した商品は平均重量値を中心とした広い帯域内に収まりさえすればよい、ということである。一方、記録のない客(すなわち、セルフサービス式清算が初めての客)にはずっと狭幅な1σ帯しか許されず、これはつまり、この客が計量したいかなる商品も先の客が軽量したものより平均重量に近くなくてはならない、ということである。
【0024】
例えば、平均重量が1(例えば、単位はポンド)のバターの実際の重量が1.08だとする。統計的サンプリングによってさらに、この重量は平均重量を中心として平均偏差0.03で変動することがわかる。すると1σ帯は平均重量の前後にそれぞれ0.03、すなわち1.05〜1.11の範囲である。2σ帯の範囲は1.02〜1.14(1.08±2×(0.03))、3σ帯の範囲は0.99〜1.17(1.08±3×(0.03))である。よって信用の置ける客の場合、平均重量1のバターの実際重量が1.16でも、この重量は3σ帯内に収まるため、スキャンしても問題は起こらない。一方、初めての客の場合、平均重量1のバターの実際重量が1.12なら、この重量は客に振り当てられた1σ帯の外になるためエラー状態となる。このエラー状態への応答としては、商品の再スキャンや再計量を行うようメッセージを発する(重量が1σ帯の近傍にある場合)ことから、スキャンや商品重量の確認のため店舗従業員を差し向けたり、窃盗が疑われる場合(例えば、測定重量がその商品の3σ帯からも大きく外れている場合)には清算処理を終了したりと、多岐にわたる。
【0025】
本発明の一実施例によると、客にはそれぞれ“信用レベル”が振り当てられ、これがその客に対して発生するセルフサービス式清算処理の様態を決定する。本発明における“信用”との用語は、チェックアウト装置10のセルフサービス機能の利用に関して正直であるかだけでなく、装置の使用における信頼度、すなわち使用能力をも問題とするものである。信用できる客であってもチェックアウト装置のスキャナや計量機の扱いには長けていないことが有り得る。客に“信用レベル”を振り当てる目的の1つは、清算処理をより精査すべき必要があるかどうか判断することである。顧客“信用レベル”の他の目的は、清算処理時の処理ステップを個別化することである。本明細書における“信用”、“信頼できる”、“信頼度”などの用語は、正直であることや装置の使用能力があることを示すものとして互換可能に使用される。“信用レベル”は、これらの一般的定義の一方あるいは他方に限られるものであってもよいし、正直であることと使用能力があること、この両方を考慮するものであってもよい。
【0026】
この信用レベルは、例えば個別データベースの一部であり、個別データベースは好ましくは中央プロセッサに記憶され、客がチェックアウト装置で自身の身元確認を行う際にチェックアウト装置からアクセス可能なものである。このデータベースは、チェックアウト装置10のキオスク24において情報をやり取りするための言語や表示要素といったユーザ選好情報を含む。
【0027】
さらに本発明に関連するものとして、個別データベースは、小売業者が己に合わせて作成したシステムデータを含む。このシステムデータは客別にセキュリティプロファイルを有しており、これは客の潜在リスクを示す多くの因子に基づくものである。客のセキュリティプロファイル作成に利用される因子の数は幾つでもよいが、そのうち何個かは顧客に、残りは店舗とその商品に関するものとできる。後者のカテゴリの因子は以下のものを含む:店舗およびその近辺での窃盗記録、店舗の商品構成、平均商品コスト、所在地域、州境や国境への近さ、現在の経済状態、等。店舗関連因子は、セルフサービス式チェックアウト装置における不誠実な行為の起こり易さの指標として選び出される。これらの因子は客によって変化することはなく、ほぼ固定であり、すなわち店舗側によって定められ長期間に及ぶものである。
【0028】
顧客関連因子は個々の客に基づくものであり、すなわち買い物客をグループ化することで得られる。これらのグループは例えば、ストアロイヤルティ、購買習慣、清算処理金額、そして清算処理への介入記録を所定の水準と比較することで得られる。例えば、店の長期顧客(例えば、5年以上)の場合、誤スキャンや誤計量による清算処理の中断が他より少なく、すなわちストアロイヤルティの高い客はセルフサービス式チェックアウト装置であまり不正行為を働かないということが知られる。また客が購入しようとする商品が数品目に及ぶ場合、清算処理時のエラーは多くなるか少なくなるかのいずれかであるということも分かっている。他の顧客グループからも同様の結論が得られる。
【0029】
こうした比較的一般的な因子は、客に関する総合的な信用プロファイルの基礎を作るためのものである。こうした顧客のグループ化は、先の店舗関連因子と共に、そのグループに当てはまる客に対し基準となる信用レベルを設定するのに利用される。小売業者によってはこの基準レベルで十分という場合もあるであろうし、あるいはこの基準レベルが特定の客用に特定の信用レベルを振り当てるためのスタート地点となる場合もある。顧客グループ化因子はあまり変化しないが、店舗関連因子よりは頻繁に変化するものと考えられる。さらにこうした顧客グループ化因子は、グループの誰かが清算処理を行うごとに影響を受けるものと考えられ、すなわち、各顧客グループに振り当てられた信用レベルは清算処理ごとに更新される。
【0030】
顧客関連因子はまた、顧客関連情報を含むものとできる。こうした情報のうち幾つかは最初の登録手続の際に、例えば、お得意様カードの作成時や店舗でのチェックキャッシング承認時などに、客から直に入手可能である。この情報は、上記のように客が一般的な顧客グループに分類し得るかを判定するのに利用される。情報のうち幾つかは客の信用度を直接決定するものとできる。例えば、セルフサービス式清算に熟達した客には初心者より高い信用レベルが付与される。一方、窃盗やカード詐欺の記録がある客には最低信用レベルしか付与されない。
【0031】
顧客関連因子は、清算処理を行う人物の身元確認が確実に行えなければ意味がなくなる。ある程度の身元確認は、お得意様カードやクレジットカード、デビットカードで行える。IDカードが名義人以外の人物に使用されていないことを確かめるためには、パスワードや生体情報など、他の形式の身元確認が利用できる。信用レベルが高い客ほど、身元確認にはより多くの識別情報が求められるであろうと思われる。
【0032】
こうした因子すべてが集められ、毎回清算処理の開始時にそれぞれの客の信用レベルが決定される。既存客については、その信用レベルに対応する値がローカルデータベースもしくは集中データベースに、この客に関する他のデータと共に保存されている。新規客や稀にしか来ない客には、デフォルトの信用レベルが振り当てられる。このデフォルトレベルは設定上最低の信用レベルであってもよいし、上述の店舗関連因子に基づく信用レベルであってもよい。
【0033】
本発明の特徴の1つは、客の信用レベル値が固定されていない点にある。すなわち、信用レベルは客の清算処理記録に基づき上下する。例えば、客が常にセキュリティプロファイルの限度内で操作を行っているならば、この客の信用レベルは上昇する。逆に客がセキュリティプロファイルの限度を繰り返し超えれば、信用レベルは下がる。例えば、いつも商品を誤スキャンや誤計量している客には、低い信用レベルならびにこの低い信用レベルに付随するより厳格なセキュリティが振り当てられる。信用レベルは清算処理ベースでの評価、すなわち清算処理1回ごと、あるいは清算処理数回ごとに客のパフォーマンス評価を行い、客自身の以前のパフォーマンスや客が振り当てられている顧客グループの標準パフォーマンスと比較するものとできる。さらにセキュリティ評価は、清算処理中に継続的に行われるものであってもよい。すなわち、最低信用レベルで客が清算処理を始めた(なぜなら新規客であった)場合、購入商品のスキャンおよび計量に関してこの客に問題がなければ、先のレベルを清算処理中にインタラクティブに上昇させてもよい。逆に信用レベルが高い客であっても誤スキャンや誤計量を繰り返せば、インタラクティブに信用レベルを下げ、残りの清算処理に適用するセキュリティの厳格さを増してもよい。
【0034】
信用レベルと関連するセキュリティ基準は、小売業者によって特別あつらえとされてもよい。こうした基準としては、袋秤の測定許容範囲がある。上述のように、このセキュリティ基準は、信用レベルに基づいて重量帯(1σ、2σ、3σ)を振り当てる。商品重量値に関係する他のセキュリティ基準としては、計量エラーの許容回数、重量不一致の許容回数、異常重量変化の許容回数がある。最も信頼でき且つ使用能力が高い客にでさえ計量異常は起こり得るため、計量の際の食い違いがすべて信用に関わる問題とは言えない。さらに、計量異常の原因が装置側にあることも多い。よって各信用レベルには、セキュリティ警報を発するまでに所定回数の計量異常が許容される。
【0035】
さらに他のセキュリティ基準としては、スキャン後の商品の袋詰めに関するもの、例えば袋詰めの遅れなどがある。セルフサービス式チェックアウト装置の多くでは、商品のスキャン後、客に所定時間が与えられ、この時間内に商品が買い物袋に投入されなくてはならないようになっている。“袋詰めの遅れ”とは、客が袋に商品を投入するのに手間が掛かりすぎていることを意味する。ここでも、袋詰めの遅れが散発的に発生している限り信用レベルに影響はないが、繰り返しの発生の場合、問題となる。袋詰めの遅れの許容発生回数を信用レベルに結びつけ、将来の清算処理における信用レベルの調整において考慮の対象としてもよい。
【0036】
さらに他のセキュリティ基準は、清算処理の行い方に関する。例えば、クレジットカードやデビットカード、あるいは個人小切手の承認限度は、信用レベルに応じて調整可能である。クレジットカードやデビットカードによる清算処理に関して言えば、サインが必要となる限度も信用レベルに応じたものとできる。清算処理の特定の作業は、客の信用レベルに基づいて変更または調整可能である。例えば、最高信用レベルの客には、通常は清算処理完了に必要とされる袋詰めステップの省略を許してもよい。他のユーザインターフェース機能も、客の信用レベルに基づき利用可もしくは利用不可とできる。信用レベルはまた、清算処理時に客に出されるメッセージやプロンプトの指示にも利用可能である。例えば馴染みの客には、各商品毎に清算処理の各ステップ(例えば、“商品をスキャン”、“商品を買い物袋に投入”、等)のガイドを行う段階的指示は不要である。一方新規客には、入門書的な解説を含むより詳細な指示、ならびに清算処理のステップ完了までの制限時間の延長が必要である。
【0037】
商品が所定の金額を下回る場合、チェックアウト装置のセキュリティ機能は使用しなくてもよく、商品金額が閾値を上回る場合、より厳しいセキュリティ基準を適用してもよい。高リスクで低信用レベルの客の場合、セルフサービス式チェックアウト装置の監視にあたる係員へと即座に連絡が行くものであってもよい。
【0038】
本発明のセキュリティシステムは、各チェックアウト装置のプロセッサ26内およびローカルデータベースや集中データベース内のソフトウエアプログラムとして実施可能である。複数のセルフサービス式チェックアウト装置がネットワークで繋がれる場合や複数の店舗が関係する場合には、集中データベースがより好ましい。この場合、各店舗や各チェックアウト装置は集中データベースと通信することで店舗関連および顧客関連の必要なセキュリティ情報を取得する。
【0039】
本発明のセキュリティシステムおよび方法を実施するためのシステム構成の例が図3に示されている。個別データベース50は上述の集中データベースに保存されている。客は登録プロセス52を介してデータベース50に登録され、これには要求のあった常連客データ54の登録も含まれる。この登録プロセス52には、顧客の身元確認および指標の情報を個別データベースに登録し、顧客プロファイルの作成を開始することが含まれる。データベースに保存される顧客プロファイル作成において考慮される情報および因子は、個別化管理機能56によって管理される。この機能は各店舗のレベル、あるいは会社や部門レベルで管理される。
【0040】
客は、セルフサービス式チェックアウト装置10で何らかの身元確認を行うことにより、特定の清算ソフトウエアプロセスすなわちアプリケーション60にアクセス可能である。例えば、スキャナ12でお得意様カードをスキャンしたり、支払い装置30にクレジットカードやデビットカードを通したり、あるいはチェックアウト装置10で客の身元確認を行い得る他の手段を用いることで、客はアプリケーションを開始させることができる。客の身元確認が済むと、アプリケーション60は個別データベース50にアクセスし、利用者に関し入手可能な情報を引き出す。アプリケーションはまた、顧客選好データ(先に客が入力)ならびにアプリケーション設定、すなわち客に応じたセキュリティ設定を引き出す。セキュリティ設定は客の信用レベルに基づくものであり、これは先に述べたように決定可能である。客が初めての利用者であったり客のデータが失効している(例えば、清算処理が3ヶ月以上ない)場合、デフォルトの信用レベルおよび関連するセキュリティ設定が適用される。あるいは、アプリケーション60が客に登録プロセス52を指示し、客に十分なデータを登録させ、先に述べたように何らかの顧客グループに自身を振り当てさせる。
【0041】
客が清算処理を行う際、アプリケーション60は、客のパフォーマンス情報、ならびにユーザインターフェース34を介して客自身が登録した情報を引き出す。客は言語や表示形式についての個人的選好データを登録可能である。客のパフォーマンスとは、誤スキャンや誤計量の回数、あるいは清算処理が中断されたり店舗係員の介入が必要となった事例の性質ならびに回数を含むものである。さらに詳しくは、とりわけ客の信用レベルに関する情報がアプリケーションによって収集される。情報のすべては更新モジュール64に渡され、これが個別データベース50を自動的に更新する。データベースは、たとえ客がまだ店のシステムに登録を行っていなくても更新されることが好ましい。このように個別データベースは、チェックアウト装置に対して何らかの身元確認を行った客すべてに関してデータを保存するものとできる。もちろん、客によっては現金清算処理のみを行い、身元確認がない場合もある。さらに客によっては、データベースに自身の個人情報が保存されることを望まぬ者もいよう。こうした場合、アプリケーションは客に対して、個人データが保存されたり更新モジュール64に渡されたりしない匿名オプションを提示する。もちろん匿名を選択した客は、未知の客全員に振り当てられるデフォルト信用レベル、ならびにこのデフォルトレベルに関連するセキュリティ基準をも選択することになる。
【0042】
更新モジュール64は、客の匿名性保護を超えた決定をなすものであってもよい。例えば更新モジュールが、個別データベースへの統合および信用レベル決定を保証された現在の清算処理における個々の事例を区別してもよい。清算処理によっては例外的商品が関係したり、清算処理がチェックアウト装置10のハードウエアやソフトウエアの問題に悩まされることもあるであろう。こうした清算処理は、セルフサービス式チェックアウト装置利用における客の信頼度を示すものではなく、更新モジュールは、個別データベース50に現在の清算処理情報を伝えなくともよい。更新モジュール64はまた、現在の清算処理に関する情報を、店舗に関する二次的データや顧客の購買パターンへの影響を評価する他のモジュール66に与えることもできる。この情報は、店舗別あるいは顧客グループ別のセキュリティ設定調整に利用可能である。そして二次的データモジュール66は決定データを更新モジュール64に伝達し、それに合わせて個別データベースを更新する。
【0043】
好ましい実施例では、図3の構成に従い行われるプロセスすべてが、リアルタイムに且つ客と店舗管理者の双方にトランスペアレントに発生する。あるいは更新モジュール64が営業日の終わりにバッチモードで動作し、必要であれば顧客データベースを更新するものであってもよい。さらなる代替案としては、モジュールが店舗レベルあるいは会社レベルで、店舗管理者による介入を許すものであってもよい。更新モジュールが客の信用レベルに変化をもたらす清算処理にフラグを立て、これらフラグが立てられた清算処理が個別データベースの更新前に見直され、承認を受けるものであってもよい。
【0044】
本発明は、セルフサービス式チェックアウト装置を利用するそれぞれの客に信用レベル値を振り当てることを目的とする。この信用レベルは、客の正直さや信頼度、あるいは装置使用能力が組み合わさったものを反映するものであり、これらは主に清算システムを用いた際の過去のパフォーマンスに基づく。第1の特徴として、清算処理の様態は客に振り当てられた信用レベルに基づく。本発明の第2の特徴として、客の実行する清算処理時に適用されるセキュリティ基準は信用レベルに依存する。さらに別の特徴として、それぞれの客の信用レベルは清算処理中、新たな清算処理後、あるいは一連の清算処理後に、こうした清算処理時の客のパフォーマンスに基づき調節可能である。
【0045】
本発明では、客の信用レベルを決定する因子の種類が多いため、レベルの数も多くできる。例えば、信用レベル値を1〜5の範囲とし、5なら客の信頼度や正直さが最高レベル、1なら最低とできる。各信用レベルへのセキュリティ対応次第では、段階的変化をより細かくしてもよいし大きくしてもよい。例えば、あるセルフサービス式システム用に考えられたセキュリティ対応が客にシステムの利用を許すか許さないかだけだとすると、必要な信用レベルはたった2つである。一方、セキュリティ対応が商品の重量許容帯を調整し、誤スキャンや誤計量の回数を決定し、清算処理全体に一括承認を下し、そして商品価格に基づきセキュリティ機能を調整する場合、より細かな段階的変化が必要となるであろう。
【0046】
以上、本発明を図面および上記記載に基づいて詳述したが、これはあくまで説明のためであって、本発明の範囲を限定するものではない。ここに示されたものはただ好適な実施例に過ぎず、本発明の精神に基づくあらゆる変更、改造、そして更なる用途が保護範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のシステムおよび方法を導入するよう改変可能な種類のセルフサービス式チェックアウト装置の斜視図である。
【図2】典型的商品の重量分布曲線であって、様々なセキュリティレベルに対応する許容測定重量帯を示す。
【図3】セルフサービス式設備を利用する客のためセキュリティ条件を個別化する方法を実施するための構成を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルフサービス式チェックアウト装置を利用し清算処理を行う客のためにセキュリティ条件を個別化するチェックアウト方法であって、
客に信用レベルを振り当て、
チェックアウト装置によってアクセス可能なデータベースに前記信用レベル値を保持し、
ある客がチェックアウト装置で清算処理を開始したとき、この客に関して前記データベースから前記信用レベル値を取得し、
清算処理の様態を前記客の信用レベルに適合させることを特徴とするチェックアウト方法。
【請求項2】
前記チェックアウト装置は、清算処理で購入される商品を客が計量する商品重量秤を有し、各商品の重量をその商品の平均重量と比較して評価するものであり、ここで清算処理の様態適合には、前記平均重量を中心とする許容重量について前記客の信用レベルに応じて重量許容帯を振り当てることが含まれる請求項1に記載のチェックアウト方法。
【請求項3】
前記チェックアウト装置は、清算処理で購入される商品に関して平均重量および標準偏差のデータベースを保持し、前記許容重量帯は、前記平均重量を中心に標準偏差1つ分の1σ帯と、前記平均重量を中心に標準偏差2つ分の2σ帯と、前記平均重量を中心に標準偏差3つ分の3σ帯を含み、ここで前記1σ帯は最低信用レベルの客に振り当てられ、前記3σ帯は最高信用レベルの客に振り当てられる請求項2に記載のチェックアウト方法。
【請求項4】
前記チェックアウト装置は、客による清算処理時のチェックアウト装置の使用に誤りがあったかどうかを判定し、ここで清算処理の様態適合には、清算処理中断までに許容される客によるエラー回数を調整することが含まれる請求項1に記載のチェックアウト方法。
【請求項5】
前記チェックアウト装置は、清算処理で購入される商品を客が計量する商品重量秤を有し、エラーとは、前記商品重量秤を客が使用する際のエラーであり、ここで清算処理の様態適合には、清算処理中断までに許容される客による計量エラー回数を調整することが含まれる請求項1に記載のチェックアウト方法。
【請求項6】
前記チェックアウト装置は、清算処理にセキュリティ基準を適用し、清算処理時の客の行為が窃盗未遂や他の清算処理セキュリティ違反を示していないか判断するものであり、ここで前記セキュリティ基準は、客の信用レベルに応じて選択される請求項1に記載のチェックアウト方法。
【請求項7】
清算処理時の客の行為に関して情報を取得し、
その情報を用いて客の信用レベルの上げ下げを決定し、
前記客に関する更新信用レベル値を前記データベースに保存することをさらに含む請求項1に記載のチェックアウト方法。
【請求項8】
客の信用レベルが清算処理の進行中に変更される請求項7に記載のチェックアウト方法。
【請求項9】
客の信用レベルが所定数の清算処理完了後に変更される請求項7に記載のチェックアウト方法。
【請求項10】
前記チェックアウト装置での清算処理のセキュリティに関する、客とは無関係な二次的因子を評価し、
これら二次的因子に基づき客へと信用レベルを振り当てることをさらに含む請求項1に記載のチェックアウト方法。
【請求項11】
前記チェックアウト装置での清算処理のセキュリティに関する個人情報を客から取得し、
この個人情報に基づき客へと信用レベルを振り当てることをさらに含む請求項1に記載のチェックアウト方法。
【請求項12】
前記チェックアウト装置での清算処理のセキュリティに関する、客とは無関係な二次的因子を評価し、
これら二次的因子と前記個人情報に基づき客へと信用レベルを振り当てることをさらに含む請求項11に記載のチェックアウト方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−152777(P2008−152777A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319425(P2007−319425)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(391007161)エヌ・シー・アール・コーポレイション (85)
【氏名又は名称原語表記】NCR CORPORATION
【Fターム(参考)】