説明

セルライトの局所治療のための共役化リノール酸(CLA)の使用

【課題】脂肪沈着及びセルライトの局所治療のための美容及び皮膚科用の局所組成物ならびに前記治療のためのキットの提供。
【解決手段】脂肪沈着及びセルライトの局所治療及び/又は予防のための、共役化リノール酸又はその誘導体(CLA)の使用、並びに、共役化リノール酸又はその誘導体(CLA)を含む美容又は皮膚科用の局所組成物、好ましくは、CLAを0.5〜70重量%含む、前記の美容又は皮膚科用の局所組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪沈着及びセルライトの局所治療のための共役化リノール酸(CLA)の使用ならびに新規な局所組成物に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、脂肪沈着及びセルライトの美容治療のための、CLAを含む美容及び皮膚科用の局所組成物ならびに前記治療のためのCLAを含むキットに関する。
【0003】
発明の背景
共役化リノール酸(CLA)は、牛乳及び乳製品ならびに反芻動物の肉の中に見られる天然物質である、オクダデカジエン酸の位置異性体及び立体配置異性体の混合物である。
【0004】
「CLA」は、C18:2脂肪酸、より正確には9,11−、10,12−及び11,13−オクタデカジエン酸のcis及びtrans形態の位置異性体及び立体配置異性体の一族を含む。
【0005】
多くの研究が、合成CLAが、そのリンパ球及びマクロファージ活性の変調により、実験モデルにおいて乳ガン、結腸ガン、前胃ガン及び皮膚ガンの発生を阻止するのに有効な薬剤であると報告している。最近の臨床及びインビボデータは、CLAの新規な生物学的効果、たとえば抗アテローム誘発活性及び抗インシュリン血症活性を開示した。
【0006】
上記の治療性に関して国際的な学会の注目を受けたのち、CLAは、CLAに富む食事が健康状態全体で有意な改善を成すことが証明されたため、栄養補助剤としてさらに消費者から受け入れられている。
【0007】
CLAはまた、経口消費されると体脂肪の顕著な減少を生じさせるとともに非脂肪分体質量を増加させる痩身剤としても知られている。体脂肪/非脂肪の比に対するCLAの効果は、Brodie A. E.らによってJ. Nutr. 129:602-6(1999)で認められているように、脂肪前駆細胞の増殖及び分化の阻害によるものと考えられる。
【0008】
しわ、たるみ、光で損傷した皮膚、敏感肌、乾燥肌、皮膚剥離、赤肌、皮膚刺激感、皮膚掻痒感及び加齢斑からなる群より選択される皮膚状態を治療するための局所組成物及び美容法におけるCLAの使用がWO0037040に開示されている。
【0009】
WO98/17269は、湿疹、乾せん及び皮膚炎などの皮膚障害の治療のためのCLAの亜鉛塩の局所組成物を開示している。しかし、CLAの亜鉛塩の使用は、薬学的及び皮膚科学的な目的だけに限定されている。そのうえ、親油性媒体及び親水性媒体のいずれにも乏しいCLA亜鉛塩の可溶性が、前記局所治療における活性成分のバイオアベイラビリティを有意に低下させる。
【0010】
発明の詳細な説明
本明細書では、「CLA」は、遊離脂肪酸又はその誘導体、たとえばそのリン脂質、そのモノ、ジ及びトリグリセリド、そのエーテル、エステルもしくは塩の形態のCLAを含むことを意図する。すべての誘導体は、生理的に許容しうるもの、すなわちCLAの非毒性の誘導体でなければならない。好ましいCLA塩は、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属イオン、たとえばナトリウム、カリウム又はマグネシウムイオンとのCLAの金属石鹸ならびに窒素含有塩、たとえばアンモニア、モノ、ジもしくはトリエタノールアミン塩を含む。
【0011】
まず、線維芽細胞反応が毛細管小静脈変化を支配する真皮皮下異常及び浮腫硬化性の脂肪組織異常によって生じる大腿部及び臀部の皮膚の凹み形成であるセルライトの治療にCLAを使用する可能性を想定した。
【0012】
Rosenbaum M、Prieto V、Hellmer J、Boschmann M、Krueger J、Leibel RL、Ship AG(Plast Reconstr Surg, 101(7):1934-9 1998)によって認められているように、くさび状生検のインビトロ病理試験及び大腿部のインビボ音波試験が、下層にある脂肪組織を網状真皮へと押し込む拡散パターンを示した。
【0013】
Merlen JF、Curri SB、Sarteel AMによって引用されているように(Phlebologie, 32(3):279-82, 1979)、誇張された大きさの脂肪細胞がミクロノジュールに浸透し、その後、幾らか構造化した結合原線維によって区別されるマクロノジュールに浸透する。
【0014】
セルライト病因の不確かさにより、この見苦しい状態は、これまで、それぞれ異なる機構によって作用する多様な活性成分によって治療されてきた。
【0015】
今、CLAの局所投与が脂肪沈着物の減少を促進し、誘発することを見いだした。
【0016】
続いて、CLAが、特に組織層脂肪症において皮下脂肪沈着によって生じる見苦しい状態の局所治療に有効であり、この局所治療がセルライト状態の有意な改善につながることを見いだした。
【0017】
したがって、本発明の目的の一つは、脂肪沈着及びセルライトの局所治療及び/又は予防のためのCLAの使用である。
【0018】
CLAは、局所セルライト治療に特に適している。これは、ヒトにおいて局所治療ののち認められる有害作用又は毒性を示さない天然生成物である。健常な皮膚又は病的状態、たとえば紅斑及び皮膚掻痒のある皮膚を有する男女に何度か適用したのち、生成物に対する不耐性を示す現象は起こらなかった。
【0019】
良好な脂質可溶性を示し、角質層に吸収されやすいため、CLAの物理的及び化学的性質は、局所皮膚治療に特に適当である。
【0020】
本発明は、そのもう一つの態様によると、セルライト及び脂肪沈着を治療及び/又は予防するのに有用である美容及び皮膚科用の局所組成物に関する。
【0021】
本発明は、さらなる態様によると、対象者に対し、有効量のCLAを単独で又は局所組成物の形態で局所投与することを含む、セルライトの治療法に関する。
【0022】
本発明の美容治療を活用するために、CLAは、場合によっては適当な通常の補助剤と混合したCLAを0.5〜70重量%、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜5重量%含有する局所組成物の形態で投与することが好ましい。
【0023】
本発明の好ましい実施態様では、CLAは、1種以上の周知の抗セルライト剤と組み合わせる。
【0024】
特に好ましい慣用の抗セルライト剤は、ベータ刺激を示して皮膚脂肪細胞への脂肪分解をさらに増強する物質(アドレナリン作動性ベータ作用薬)である。そのような物質の例は、高い皮膚アベイラビリティ及び高い効能を特徴とするキサンチン、たとえばカフェイン、テオフィリン、テオブロミン及びアミノフィリンである。最適なコストで効能を最大限にするためには、キサンチンは、組成物の重量の少なくとも0.05%、一般には0.05%〜20%、好ましくは0.10%〜10%、最適には0.5%〜3.0%の割合で使用することが好ましい。
【0025】
他の好ましい慣用の抗セルライト剤は、コラーゲン合成刺激剤として作用する物質、たとえばCentella asiaticaのアスコルベート及びトリテルペノイド、たとえばasiatic酸、madecassic酸、asiaticoside、madecaside、イノシトールリン酸及びフィチン酸である。
【0026】
他の好ましい慣用の抗セルライト剤は、セルライト区域に伴う乏しい血管分布状態を血管運動活性によって改善する物質、たとえばミノキシジル、ニコチネート、escin、アイビー及びメチルサリチレートである。
【0027】
他の好ましい慣用の抗セルライト剤は、セルライトの影響を受けた区域に位置する脂肪沈着物の減少を促進する、アデニル酸シクラーゼ作用薬活性及び/又は抗ホスホジエステラーゼ活性を示す天然物質である。前者の群は、イポメア種(Ipomea spp.)、サルビア種(Salvia spp.)及びマンネンロウからの抽出物を含むことができ、後者の群は、ヨヒンビン系アルカロイド及び二量体フラノン、たとえばアメントフラボン、ビロベチン、シアドピチミン(sciadopitisine)、ギンクゴネチン(ginkgonetine)を含む植物抽出物(たとえばイチョウ)又は一部のアオイ科植物(たとえばメルバ(Malva)、アルテア(Althea)、ハイビスカス(Hibiscus)、ホヘリア(Hoheria)、シダルシア(Sidalcea)、アブチロン(Abutilon)及びゴシピウム(Gossypium)からの抽出物を含むことができる。
【0028】
セルライト及び脂肪沈着の治療のためには、局所CLAをバナジウム化合物と組み合わせて使用することができる。
【0029】
バナジウム化合物は、インシュリン疑似物質として作用し、それにより、脂肪細胞を含む細胞中の解糖作用及び代謝回転を増強することができると知られている。
【0030】
したがって、具体的な実施態様によると、本発明は、CLA及び少なくとも1種のバナジウム化合物を含む美容組成物に関する。
【0031】
バナジウム(IV)又は(V)化合物は、本発明の美容組成物中で10-10〜10-3mol/kg、好ましくは10-7〜10-5mol/kgの範囲の濃度で存在することが適当である。
【0032】
本発明の実施に有用である適当なバナジウム(V)化合物の代表例は、ナトリウムメタバナデート(NaVO3)、ナトリウムオルトバナデート(Na3VO4)及びナトリウムピロバナデート(Na427)、カリウム(KVO4)、アンモニウム(NH4VO3)、カルシウム(Ca3(VO42)、鉄(Fe(VO33)との対応する塩ならびにバナデートと、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムなどとの対応する塩、バナジウム(V)酸化物、たとえばペントキシド(V25)、オキシトリクロリド(VOCl3)、オキシトリブロミド(VOBr3)など、ならびにポリマー、たとえば二量体(H227)、三量体(V39)、十量体(HV1028)などを含む。
【0033】
本発明の実施で有用な適当なバナジウム(IV)化合物の代表例は、バナジルスルフェート(VOSO4)及びアセテートなどとの対応する化合物、バナジウム(IV)オキシハライド、たとえばオキシクロリド(VOCl2)、オキシジブロミド(VOBr2)及びオキシジフルオリド(VOF2)、バナジウム(IV)ハライド、たとえばテトラクロリド(VCl4)、テトラブロミド(VBr4)及びテトラフルオリド(VF4)など、二酸化バナジウム(VO2)及び四酸化バナジウム(V24)を含む。
【0034】
さらには、バナジウム(IV)又は(V)化合物は、キレート化合物、包接化合物又は他の錯体、たとえばアミノ酸、タンパク質、ペプチド成長因子、核酸、ホスフェート、リン脂質、脂肪酸、プロスタグランジン、AHA、レチノイド、トリスエダテート、グリコール、カテコール、グルタチオンなどとの前記した形態で存在することができる。
【0035】
バナジウム(IV)又は(V)化合物はまた、被嚢類(ホヤ)、一部のキノコ種及び植物ならびに他の有機源に含まれる、有機酸とバナジウムとの塩として存在することもできる。バナジウム有機金属化合物の具体例は、有機酸のバナジル塩、たとえばバナジルリノレエート、オレエート、パルミテート、フェノレート、レジネート及びステアレートを含む。
【0036】
本発明のすべての組成物はまた、美容的に許容しうる成分を含むことができる。本明細書において「美容的に許容しうる成分」とは、美容治療における使用に適する生成物、たとえばCOLIPA(European Cosmetic Toiletry and Pefumery Association)によって作成され、96/335/EC「Annex to Commission Decision of 8 May 1996」で発行されたINCIリストに含まれる生成物をいう。
【0037】
多様な活性成分を本発明の組成物にさらに加えることができる。この範疇に限定されないが、一般的な例は、抗炎症剤及び皮膚美白剤、酸化防止剤ならびに防しわ剤を含む。
【0038】
適当な抗炎症性化合物は、ロスマリン(rosmarinic)酸、グリチルリチネート誘導体、α−ビサボロール、アズレン及びその誘導体、アシスチコシド(asiaticoside)、セリコシド(sericoside)、ルスコゲニン(ruscogenin)、エスシン(escin)、エスコロイン(escoloin)、クェルセチン、ルチン、ベツリン酸及びその誘導体、カテキン及びその誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0039】
適当な皮膚美白化合物は、フェルラ酸、ヒドロキノン、アルブチン及びコウジ酸を含むが、これらに限定されない。
【0040】
適当な酸化防止剤及び防しわ化合物は、レチノール及び誘導体、トコフェロール及び誘導体、サリチレート及びその誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0041】
本発明の美容組成物に加えることができるもう一つの重要な薬剤は、α−ヒドロキシ酸である。好ましいα−ヒドロキシ酸は、CLAならびにさらなる慣用の抗セルライト剤の皮膚浸透及び効能を改善する、たとえば乳酸、グリコール酸、マンデル酸及びそれらの混合物などのモノカルボン酸である。好ましくは、本発明の美容組成物中のα−ヒドロキシ酸成分の割合は、組成物の重量の1.5%〜15%、より好ましくは3.0%〜12.0%である。
【0042】
もう一つの重要な任意成分は、酸化ストレスに対する皮膚防衛において、表皮の脂質生合成に参与し、表皮のバリア形成のための脂質を提供することによって重要な役割を演じる必須脂肪酸(EFA)の中から選択される。好ましい必須脂肪酸は、リノール酸、γ−リノレン酸、ホモγ−リノレン酸、コルンビン酸、エイコサ(n−6,9,13)トリエン酸、アラキドン酸、γ−リノレン酸、チムノドン(timnodonic)酸、ヘキサエン酸及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0043】
本発明の美容組成物は、周知の技術にしたがって当業者には周知である適切な割合で、たとえば全組成物の重量の約30%〜約99.9%、好ましくは約50〜99.5%で組成物に添加される、CLAの希釈剤、分散剤又は担体として作用する物質をさらに含むことができる。
【0044】
油又は油状物質を水と乳化剤(界面活性剤ともいう)とともに含めて、主に乳化剤の平均親水親油バランス(HLB)に依存してW/O又はO/Wいずれかのエマルションを提供してもよい。界面活性剤は、当業者に周知である適当な割合で、たとえば約0.5重量%〜約30重量%、好ましくは約1重量%〜約15重量%で配合することができる。
【0045】
カチオン、非イオン、アニオン又は両性の界面活性剤及びそれらの組み合わせを用いてもよい。非イオン界面活性剤は、脂肪アルコール、脂肪酸及びソルビタンに基づくアルコキシル化化合物、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンのコポリマーならびにアルキルポリグリコシドを含むことができる。アニオン系界面活性剤は、脂肪酸石鹸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホネート、モノ及び/又はジアルキルホスフェートなどを含むことができる。両性界面活性剤は、ジアルキルアミンオキシド、種々のベタイン及び天然のリン脂質を含む。
【0046】
水ベースの美容組成物においては、増粘剤を、当業者に周知の適当な割合で、たとえば0.1〜10重量%、好ましくは約0.5重量%〜5重量%で含めてもよい。増粘剤の例は、架橋したポリアクリレート材料(Carbopol(登録商標))及びガム、たとえばキサンタン、カラゲナン、ゼラチン、カラヤ、ペクチン及びローカストビーンガムである。水ベースの美容組成物は、防腐剤によって微生物増殖に対して保護することができる。適当な防腐剤は、p−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、ヒダントイン誘導体、プロピオン酸塩、メチルパラベン、プロピルパラベン、イミダゾリジニル尿素、ナトリウムデヒドロキシアセテートベンジルアルコール及び多様な第四アンモニウム化合物を含む。防腐剤は、当業者に周知である適当な割合、たとえば約0.2重量%〜1重量%の範囲の割合で加える。
【0047】
非水性の流体美容組成物では、シリコーンポリマーを、当業者に周知である適当な割合、たとえば5〜95重量%の範囲の量で含めることもできる。
【0048】
本発明の美容組成物に含めることができるさらなる成分は柔軟剤(エモリエント)である。特定の状況の下、柔軟剤は、活性成分としてのCLAの分散を促進するための担体及び皮膚軟化剤としての二重の機能を有することができる。柔軟剤は、当業者に周知であるいかなる適当な割合ででも、たとえば約0.5%〜約50%の範囲で本発明の美容組成物に配合することができる。適当な柔軟剤は、エステル、脂肪酸及びアルコール、ポリオール及び炭化水素のような一般的な化学的範疇の下で分類することができる。適当な脂肪酸ジエステルは、ジブチルアジペート、ジエチルセバケート、ジイソプロピルジメレート、プロピレングリコールミリスチルエーテルアセテート、ジイソプロピルアジペート及びジオクチルスクシネートを含む。適当な分岐鎖状脂肪酸エステルは、2−エチルヘキシルミリステート、イソプロピルステアレート及びイソステアリルパルミテートを含む。適当な三塩基酸エステルは、トリイソプロピルトリリノレエート、トリラウリルシトレート、トリブチリン及び飽和又は不飽和の植物油を含む。適当な直鎖状脂肪酸エステルは、ラウリルパルミテート、ミリスチルラクテート、オレイルエルケート、ステアリルオレエートココカプリレート/カプレート及びセチルオクタノエートを含む。適当な脂肪アルコール及び脂肪酸は、C10〜C20化合物、たとえばセチル、ミリスチル、パルミチック及びステアリルアルコール及び酸である。適当なポリオールは、直鎖状及び分岐鎖状のアルキルポリヒドロキシ化合物、たとえばプロピレン及びブチレングリコール、ソルビトールグリセリンならびにポリマー性ポリオール、たとえばポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールである。適当な炭化水素は、直鎖状のC12〜C30炭化水素鎖、たとえば鉱油、石油ゼリー、スクアレン及びイソパラフィンである。
【0049】
日焼け止めを本発明の美容組成物に配合してもよい。代表的な化合物は、PABA、シンナメート及びベンゾフェノンの誘導体、たとえばオクチルメトキシシンナメート、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノンである。用いられる日焼け止めの割合は、紫外線に対して望まれる保護の程度に依存する。
【0050】
着色剤、不透明剤及び香料をはじめとする他の少量成分を、それぞれ場合によって適切な割合、たとえば組成物の重量の0.001%〜20%で本発明の美容組成物に加えてもよい。
【0051】
本発明の局所皮膚治療組成物は、ローション、フルイドクリーム、クリーム又はジェルとして調合することができる。組成物は、その粘度及び使用者による使用目的にしたがって適当な容器に包装することができる。たとえば、ローション又はフルイドクリームは、ボトル、ロールボールアプリケータ、カプセル、推進剤で駆動されるエアゾール装置又は指で動かすのに適したポンプを装着した容器に包装することができる。組成物がクリームである場合、非変形性のボトル又はスクイーズ容器、たとえばチューブ又は蓋の付いた瓶に簡単に貯蔵することができる。
【0052】
本発明は、そのもう一つの態様によると、CLAの局所投与のためのキットに関する。
【0053】
このキットは、(a)場合によっては適当な通常の賦形剤及び酸化防止剤と混合したCLAを含む、好ましくは油性液の形態にある単位剤形組成物と、(b)場合によっては適当な通例の賦形剤及びα−ヒドロキシ酸と混合した少なくとも1種の親水性抗セルライト剤を含む、水性溶液又は水性アルコール溶液にある単位剤形とを含む。
【0054】
キットの包装箱は、まず、親水性成分の効果的な吸収のための水性溶液(b)を塗布し、次に油性液(a)を塗布するように指示を与える小冊子をさらに含む。
【0055】
キットの利点の一つは、親水性抗セルライト剤の浸透が、後で皮膚に塗布される油相の存在で容易になることである。
【0056】
以下の例は、本発明を実施する方法を詳細に示すが、本発明に限定を加えるものと見なすべきではない。
【0057】
調製例1−グリセロール中のグレープシード油のアルカリ異性化によるCLAの合成
グリセロール1kg、水酸化カリウム(KOH)235g及びグレープシード油1000gを、攪拌機、温度計、環流凝縮器及び窒素導入口を備えた四つ口丸底フラスコ(5000ml)に加え、最初のランで2個の酸素トラップを介して窒素を導入した。
【0058】
窒素を反応混合物に20分間通気したのち、温度を90〜100℃に上げ、機械的に攪拌しながら約20分間維持してトリグリセリドを対応するカリウム塩に転換した。二相系が消滅してグリセリン石鹸懸濁液が形成すると、不活性雰囲気下で230℃に加熱し、4時間攪拌した。
【0059】
反応混合物を約100℃まで冷まし、冷ます間、反応混合物が非常に高い粘度に達しそうなところで攪拌を停止した。次に、水2リットルをゆっくりと加え、混合物を95℃で2時間維持した。この処理が必要になる理由は、無視しうる水の存在及び高い含量のグリセロールが、脂肪酸を、全脂質含量の重量の5%〜10%のモノ及びジグリセリドとして存在させるからである。部分グリセリドエステルはW/Oエマルションを形成する傾向があるため、水の添加及び再加熱が残留エステル化脂肪酸の完全な鹸化を提供した。
【0060】
混合物をビーカに移したのち、室温まで冷まし、50重量/容量%の硫酸を混合物に加え、それを、pHが約3で安定化するまで1時間攪拌した。
【0061】
酸性を帯びた油相が、下の水性グリセリン層と、CLAを含有する上の脂肪酸油層とを形成し、これをデカントによって分離した。注目すべきことに、工業的処理では、遠心分離によって分離を実施してもよい。
【0062】
CLAを水洗し、最後に硫酸ナトリウムによって脱水し、ろ過したのち、使用するまで暗色のボトルに入れて4℃で貯蔵した。全収量は、琥珀色の油状物約770gであった。そのGC分析結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
CLAの組成物は、複雑な混合物であると思われた。すなわち、9c,11t−及び8c,10t−オクタデカジエン酸が30,90%、11c,13t−及び10t,12c−オクタデカジエン酸が32,05%、11t,13c−、8c,10c−及び9c,11c−オクタデカジエン酸が1,55%、10c,12c−、11c,13c−、11t,13t−、9t,11t−、10t,12t−及び8t,10t−オクタデカジエン酸が残り分を構成するものであった。
【0065】
比較例1及び適用例1、2−ボディクリーム
それぞれ別々に75℃で予熱しておいた油相と水相とをターボミックスすることにより、攪拌下で3種の異なるO/Wエマルションを調製した。組成を以下に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
認められるとおり、局所製剤は、それぞれ、CLAを含まないもの、CLAのみを含むもの、CLAをカフェインとともに含むものであった。
【0068】
適用例3−CLA及びCLAとキサンチンの局所適用による抗セルライト活性の臨床試験
女性被験者9名を、左右相称を有する大腿部におけるセルライトの重篤度に基づいて選択した。グレード1及び2のセルライトを有する被験者を選択し、5点評定スケールを使用して各被験者のセルライト重篤度を格付けした。スケールは0〜4の範囲、すなわち、0=セルライトなし、1=小さな凹凸、2=線紋及び突出、3=皮膚の顕著な塊化及び線紋、4=上記すべて+表面下の硬い小瘤であった。
【0069】
被験者を3名ずつの3グループに分け、右大腿部に、比較例3の組成物、適用例4の組成物及び適用例5の組成物をそれぞれ塗布するよう指示した。
【0070】
被験者に対し、2ヶ月間、1日2回、朝と夜に塗布を実施するよう指示した。その後、セルライトの状態を、Smith WP(Cosmetics & Toiletries, 61-70, June 1995)に準じ、右大腿部対左大腿部の比較によって評価した。結果を表2に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
上記結果は、CLAを含有する組成物がセルライト状態を効果的に緩和し、カフェインとの組み合わせによってさらなる改善が得られることを示す。
【0073】
適用例4−セルライト治療のキット
以下の成分をブレンドすることによって油性混合物(a)及び水性アルコール溶液(b)を別々に調製した。
【0074】
a)油性ミックスの成分
調製例1からのCLA 1.50g
大豆ステロール 0.25g
ブチレングリコール 1.50g
ビタミンEアセテート 0.20g
ビタミンAパルミテート 0.20g
α−ビサボロール 0.10g
アシアチコシド(asiaticoside) 0.15g
エチルアルコール94° 5.00g
アーモンド油 20.00mlまでq.b.
【0075】
a)水性ミックスの成分
トリブチルシトレート 0.15g
カフェイン 0.15g
イチョウ抽出物 0.50g
緑茶抽出物 0.10g
テオフィリン 0.20g
グリコール酸 3.00g
エスシン(escin) 0.05g
18−β−グリチルレチン酸 0.03g
二ナトリウムEDTA 0.02g
エチルアルコール94° 2.00g
脱イオン水 20mlまでのq.b.(*)
(*)低いpH値のため、防腐剤は不要。
【0076】
2種の組成物を25mlビンに別々に詰め、はじめに(b)を塗布し、10分後に(a)を塗布するよう指示する指示書とともに同じキットパッケージに合わせた。
【0077】
本明細書で例示し、説明した発明の具体的な形態は、代表的なものに過ぎないことを理解すべきである。開示の明確な教示を逸することなく、例示した実施態様に対し、本明細書で提案したものをはじめとする変更を加えてもよい。したがって、本発明の完全な範囲を決定する際には、請求の範囲を参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪沈着及びセルライトの局所治療及び/又は予防のための、共役化リノール酸又はその誘導体(CLA)の使用。
【請求項2】
脂肪沈着及びセルライトの治療及び/又は予防のための、共役化リノール酸又はその誘導体(CLA)を含む美容又は皮膚科用の局所組成物。
【請求項3】
CLAを0.5〜70重量%含む、請求項2記載の美容又は皮膚科用の局所組成物。
【請求項4】
CLA誘導体が、9,11−、10,12−及び11,13−オクタデカジエン酸、そのリン脂質ならびにそのモノ、ジ及びトリグリセリド、そのエーテル、エステル又は塩の1種以上のcis及びtrans異性体を含む、請求項2又は3記載の美容又は皮膚科用の局所組成物。
【請求項5】
CLA塩が、アルカリ及びアルカリ土類金属イオンの金属石鹸ならびに窒素含有塩である、請求項2〜4のいずれか1項記載の美容又は皮膚科用の局所組成物。
【請求項6】
場合によっては1種以上のさらなる慣用の抗セルライト剤を含むクリーム、ゲル、ローション、オイル又はスプレーの形態にある、請求項2〜5のいずれか1項記載の美容又は皮膚科用の局所組成物。
【請求項7】
前記慣用の抗セルライト剤がキサンチンである、請求項6記載の美容又は皮膚科用の局所組成物。
【請求項8】
前記慣用の抗セルライト剤が、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン、アミノフィリン及びそれらの混合物の中から選択される、請求項7記載の美容又は皮膚科用の局所組成物。
【請求項9】
バナジウム化合物をさらに含む、請求項2〜8のいずれか1項記載の美容又は皮膚科用の局所組成物。
【請求項10】
共役化リノール酸もしくはその誘導体(CLA)又は請求項2〜9のいずれか1項記載の組成物を局所投与することを含む、脂肪沈着及びセルライトの治療及び/又は予防法。

【公開番号】特開2011−63609(P2011−63609A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−258620(P2010−258620)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【分割の表示】特願2001−521290(P2001−521290)の分割
【原出願日】平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】