説明

セルラーゼ組成物及びこのセルラーゼ組成物を含有する洗剤組成物

【課題】セルラーゼ(A)の活性の持続性が高いセルラーゼ組成物及びこれを含有する洗剤組成物を提供する。
【解決手段】下記セルラーゼ(A)、下記セルラーゼ安定化剤(B)及び水を含有するセルラーゼ組成物(C)。セルラーゼ(A):特定のアミノ酸配列である、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列有するセルラーゼ。セルラーゼ安定化剤(B):マンニトール、トレハロース、セロビオース、グリコール酸、ピロガロール、N−α−アセチルアルギニン、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート及びヤシ油脂肪酸ソルビタンモノエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であるセルラーゼ安定化剤。セルラーゼ組成物(C)及び界面活性剤(D)を含有する洗剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルラーゼ組成物及び洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酵素の利用が飛躍的に拡大し、特にセルラーゼはその特性を活かしてさまざまな産業分野で利用されている。具体的な利用分野の一つは、産業用及び家庭用の洗剤である。セルラーゼは、洗浄作用を補助するための添加剤として、洗剤組成中に含まれている。しかし、洗剤組成物中のセルラーゼは不安定であることから、貯蔵の際に活性を失いやすい問題がある。特に液状やゲル状の洗剤組成物の場合、セルラーゼ活性の損失が顕著である。したがって、セルラーゼを液体の洗剤組成物に用いる際の貯蔵安定性が課題となっている。
セルラーゼ等の酵素の貯蔵安定性を改善する方法としては、酵素安定化剤を使用する方法があり、数多くの酵素安定化剤が知られている。例えば、ホウ素化合物を使用する方法(特許文献1、5及び6)、ポリオール(例えば1,2−プロパンジオール、ソルビトール及びグリセロール等)を使用する方法(特許文献2)、カルシウムイオン供給化合物(例えば塩化カルシウム及び酢酸カルシウム等)、ポリヒドロキシ化合物(グリセリン、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ドデカンジオール、グルコース、ソルビトール及びマルトース等)又は蟻酸を使用する方法(特許文献3)、カルボン酸(例えば酢酸、プロピオン酸、アジピン酸及びコハク酸等)又はアミノ酸(例えばバリン、フェニルアラニン、ヒスチジン、プロリン及びメチオニン等)を使用する方法(特許文献4)、グルコサミン多糖のキトサンを使用する方法(非特許文献1)及びポリアミン(例えばプトレシン、スペルミジン及びスペルミン等)を使用する方法(非特許文献2)等があり、数多くの酵素安定化剤が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−507085号公報
【特許文献2】特開2002−069488号公報
【特許文献3】特開2009−138056号公報
【特許文献4】特開2001−157581号公報
【特許文献5】特開2006−257435号公報
【特許文献6】特開平11−069973号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kudriashova EV、Bioorg. Khim.、35(3)、2009 May−Jun、p368〜375
【非特許文献2】Kudou M、Eur J. Biochem、270(22)、2003 Nov、p4547−4554
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、本発明者らは、配列番号1のアミノ酸配列である、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列を有するものが、セルラーゼであることを見いだした。しかしながら、このセルラーゼを安定化することができる有効な安定化剤は知られていない。
本発明は、このセルラーゼが安定化され、セルラーゼ活性の持続性が高いセルラーゼ組成物及びこれを含有する洗剤組成物を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、セルラーゼ(A)の活性の持続性の高いセルラーゼ組成物を得るべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明のセルラーゼ組成物は、下記セルラーゼ(A)、下記セルラーゼ安定化剤(B)及び水を含有するセルラーゼ組成物(C)である。
セルラーゼ(A):配列番号1のアミノ酸配列である、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列を有するセルラーゼ。
セルラーゼ安定化剤(B):マンニトール、トレハロース、セロビオース、グリコール酸、ピロガロール、N−α−アセチルアルギニン、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート及びヤシ油脂肪酸ソルビタンモノエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であるセルラーゼ安定化剤。
また、本発明の洗剤組成物は、セルラーゼ組成物(C)及び界面活性剤(D)を含有する洗剤組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のセルラーゼ組成物は、長期保存後もセルラーゼ活性を保つことができる。また、本発明の洗剤組成物は、長期保存後も洗浄性を保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、セルラーゼ(A)は、配列番号1のアミノ酸配列である、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列を有するセルラーゼであり、β−1,4−グルカンのグリコシド結合を加水分解するというエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性を有するセルラーゼである。
本発明において、セルラーゼ活性はエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性を意味する。
また、本発明において、「セルラーゼ活性の持続性が高い」とは、一定期間保管した後に測定したセルラーゼ活性と、保管する直前に測定したセルラーゼ活性との差が小さく、一定のセルラーゼ活性を示すことを意味する。
【0009】
配列番号1のアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列を有するセルラーゼとは、変質後も依然としてセルラーゼ活性を保持するアミノ酸配列を有するセルラーゼであり、配列番号1のアミノ酸配列と等価であるアミノ酸配列を有するセルラーゼを意味する。
上記アミノ酸の付加とは、配列番号1のアミノ酸配列中のアミノ酸とアミノ酸との間に、1若しくは数個のアミノ酸が付加することを意味し、アミノ酸配列のN及び/又はC末端へのアミノ酸の付加は含まない。
上記1若しくは数個は、セルラーゼ活性を有する観点から、1〜10個が好ましく、さらに好ましくは1〜5個である。
【0010】
セルラーゼ(A)は、セルラーゼ活性を有するものであれば、配列番号1又はこのアミノ酸配列と等価であるアミノ酸配列のN及び/又はC末端に、ペプチド配列(N)を有していてもいい。(N)は、アミノ酸1個又はアミノ酸が2個以上結合したペプチド配列である。(N)として、具体的には、MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMAMD配列(配列番号2)等が挙げられる。
(N)を構成するアミノ酸の数は、セルラーゼ活性を有する観点から、1〜30個が好ましく、さらに好ましくは1〜20個、特に好ましくは1〜10個である。
【0011】
また、セルラーゼ(A)は、上記(N)以外に、セルラーゼ(A)のN又はC末端に特殊なアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチド(以下これらを「精製タグ」と称する)を有してもいい。精製タグとしては、アフィニティー精製用のタグが利用される。そのような精製タグとしては、ポリヒスチジンからなる6×Hisタグ、V5タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV−Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09TM、CruzTag22TM、CruzTag41TM、Glu−Gluタグ、Ha.11タグ及びKT3タグ等が挙げられる。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i−1)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GTS) (ii−1)グルタチオン
(i−2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii−2)アミロース
(i−3)HQタグ (ii−3)ニッケル
(i−4)Mycタグ (ii−4)抗Myc抗体
(i−5)HAタグ (ii−5)抗HA抗体
(i−6)FLAGタグ (ii−6)抗FLAG抗体
(i−7)6×Hisタグ (ii−7)ニッケル又はコバルト
前記精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおけるセルラーゼ(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
【0012】
セルラーゼ(A)のセルラーゼ活性は、粘度測定法によって測定できる。粘度測定法は、カルボキシメチルセルロース(CMC)とセルラーゼ(A)を作用させ、エンド形式でCMCを加水分解した際に生じるCMCの粘度の減少幅を観察する方法である。具体的には、下記の方法により測定できる。
【0013】
<粘度測定法>
pH7.5の100mMリン酸バッファー水溶液に、17.5g/LになるようにCMC(和光純薬社製)を溶解し、基質溶液を調整する。pH7.5の100mMリン酸バッファー水溶液に、一定量のセルラーゼ(A)を溶解したセルラーゼ(A)溶液を調整する。基質溶液3mLとセルラーゼ(A)溶液5μLを混合し、40℃に温度を調節した粘度計(例えば、TVE−22L粘度計、2rpm)に移す。混合直後に粘度を読み取り、1、2、3、4、5及び6分後に粘度を読み取る。セルラーゼ(A)の濃度が異なるセルラーゼ(A)溶液を用いて同様に測定する。セルラーゼ(A)溶液及び基質溶液を混合直後の粘度と5分後の粘度を比較して、5分後の粘度が1/2となるセルラーゼ(A)の量(mg)を、エンド−1,4−β−グルカナーゼ活性1単位と定義する。
【0014】
上記粘度測定法によるエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性は、洗浄性を向上させる観点から、1〜10000単位/mgが好ましく、さらに好ましくは50〜2000単位/mgである。
【0015】
本発明において、セルラーゼ組成物(C)は、セルラーゼ(A)として、配列番号1又はこのアミノ酸配列と等価であるアミノ酸配列を有するセルラーゼ1種類を含んでいればよく、2種類以上含んでいてもいい。
【0016】
上記セルラーゼ(A)は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するセルラーゼ又はこのアミノ酸配列と等価のアミノ酸配列を有するセルラーゼをコードする遺伝子を微生物等の宿主に導入し、宿主を培養液中で培養し、培養液中からセルラーゼを採取及び精製することによって生産することができる。
【0017】
なお、セルラーゼ(A)をコードする遺伝子は、自然界等から得ることも可能ではあるが、更に部位特異的突然変異誘発法等の公知の手法を利用して調製することもできる。
【0018】
セルラーゼ(A)をコードする遺伝子を用いてセルラーゼ(A)を生産する方法は、目的とする宿主内で遺伝子を発現するのに適した任意のベクターに、セルラーゼ(A)をコードする遺伝子を組込み、この組換えベクターを用いて宿主を形質転換し、組み換えベクターを含む形質転換体を得る。得られた形質転換体を培養し、この培養液からセルラーゼを採取すればよい。
【0019】
組換えベクターは、適当なベクターにセルラーゼ(A)をコードする遺伝子を挿入することによって得ることができる。
ベクターは種々のものが公知であり、市販品も多く存在する。当業者であれば、宿主の種類に応じて適切なベクターを容易に選択することができる。ベクターの具体例としては、pETシリーズ、pUCシリーズなどが挙げられる。
組換えベクターの調製方法自体は周知の常法である。適当なベクターにセルラーゼ(A)をコードする遺伝子を挿入し、宿主を形質転換する具体的な方法としては、エレクトロポレーション法、カルシウム法等が挙げられる。
【0020】
本発明において、宿主としては、動物細胞、昆虫細胞、微生物、植物細胞などが挙げられる。
動物細胞としては、特に限定されないが、サル細胞COS−7、Vero、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞及びCHO細胞等が挙げられる。
昆虫細胞としては、特に限定されないが、Sf9細胞及びSf21細胞等が挙げられる。
微生物としては、特に限定されないが、細菌及び酵母等が挙げられる。
細菌としては、真正細菌及び古細菌が含まれる。
真正細菌には、グラム陰性菌及びグラム陽性菌が含まれる。グラム陰性細菌としては、エシェリチア属菌(Escherichia)、サーマス属菌(Thermus)、リゾビウム属菌(Rhizobium)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、シュワネラ属菌(Shewanella)、ビブリオ属菌(Vibrio)、サルモネラ属菌(Salmonella)、アセトバクター属(Acetobacter属)、シネコシスティス属(Synechocystis属)等が挙げられる。グラム陽性菌としては、バチルス属(Bacillus属)、ストレプトマイセス属(Streptmyces属)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium属)、ブレビバチルス属(Brevibacillus属)、ビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium属)、ラクトコッカス属 (Lactococcus属)、エンテロコッカス属 (Enterococcus属)、ペディオコッカス属(Pediococcus属)、リューコノストック属 (Leuconostoc属)、ストレプトマイセス属(Streptomyces属)等が挙げられる。
植物細胞としては、特に限定されないが、BY−2細胞等が挙げられる。
【0021】
本発明において、宿主としては、クローニングの容易さの観点から、微生物が好ましく、さらに好ましくはエシェリチア属菌(Escherichia)、サーマス属菌(Thermus)、リゾビウム属菌(Rhizobium)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、シュワネラ属菌(Shewanella)、ビブリオ属菌(Vibrio)、サルモネラ属菌(Salmonella)、アセトバクター属(Acetobacter属)、シネコシスティス属(Synechocystis属)であり、特に好ましくはエシェリチア属菌(Escherichia)、シュワネラ属菌(Shewanella)、バチルス属(Bacillus属)、ブレビバチルス属(Brevibacillus属)である。
【0022】
セルラーゼ(A)は、セルラーゼ(A)をコードする遺伝子を、例えばバチラス属に属する微生物、例えばBacillus licheniformis等から、ショットガン法、PCR法を用いてクローニングし、適当なベクターと宿主菌を用いて大量に生産することができる。
【0023】
培養は微生物の資化可能な炭素源、窒素源その他の必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従って行えばよい。
【0024】
本発明において、培養液からセルラーゼ(A)を採取及び精製する方法としては、常法に準じて行うことができる。例えば、培養物から遠心分離又は濾過することで菌体を除き、得られた培養上清液から常法手段により目的酵素を濃縮することができる。このようにして得られた酵素液又は乾燥粉末はそのまま用いることもできるが更に公知の方法により結晶化や造粒化することができる。
【0025】
本発明において、セルラーゼ安定化剤(B)は、マンニトール、トレハロース、セロビオース、グリコール酸、ピロガロール、N−α−アセチルアルギニン、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート及びヤシ油脂肪酸ソルビタンモノエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
本発明のセルラーゼ組成物(C)は、セルラーゼ安定化剤(B)を含有することにより、セルラーゼ(A)が安定化され、セルラーゼ活性の持続性が高くなる。したがって、長期保存後もセルラーゼ活性を保つことができる。
【0026】
本発明において、上記セルラーゼ安定化剤(B)として、同時に2種以上使用する場合、セルラーゼ活性の持続性の観点から、マンニトール及びソルビタントリオレートの組合せ並びにマンニトール及びN−α−アセチルアルギニンの組合せが好ましい。
【0027】
本発明において、水は特に限定されるものではなく、水道水、イオン交換水、蒸留水及び逆浸透水等が挙げられる。また、水中に、後述するpH調整剤(E)を含むバッファー水溶液等が挙げられる。水中には、セルラーゼ(A)の活性が発揮されるpHであるpH5.0〜9.0に調整する観点から、pH調整剤(E)を含有することが好ましい。
【0028】
本発明のセルラーゼ組成物(C)に含まれるセルラーゼ(A)の含有量は、セルラーゼ活性の持続性の観点から、(A)、(B)及び水の合計重量を基準として、0.0001〜0.1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.075重量%、特に好ましくは0.015〜0.05重量%である。
【0029】
本発明のセルラーゼ組成物に含まれるセルラーゼ安定化剤(B)の含有量は、セルラーゼ活性の持続性の観点から、(A)、(B)及び水の合計重量を基準として、0.1〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは5〜20重量%である。
【0030】
本発明のセルラーゼ組成物に含まれる水の含有量は、セルラーゼ活性の持続性の観点から、(A)、(B)及び水の合計重量を基準として、79.9〜99.8999重量%が好ましく、さらに好ましくは79.925〜98.995重量%、特に好ましくは79.95〜94.985重量%である。
【0031】
本発明のセルラーゼ組成物(C)は、セルラーゼ(A)、セルラーゼ安定化剤(B)及び水以外に、pH調整剤(E)を含有することができる。
【0032】
pH調整剤(E)としては、GoodバッファーであるHEPESバッファー、クエン酸バッファー、Trisバッファー及びリン酸バッファー等が挙げられる。(E)として、セルラーゼ組成物(C)のセルラーゼ活性を高くする観点から、クエン酸バッファー及びリン酸バッファーが好ましい。
セルラーゼ組成物中の(E)の濃度(モル濃度)は、セルラーゼ(A)の活性が発揮されるpHに調整する観点から、10〜500mMが好ましい。
【0033】
セルラーゼ組成物(C)のpHは、セルラーゼ(A)の活性が発揮されるpHである観点から、pH5.0〜9.0が好ましく、さらに好ましくはpH6.5〜8.5である。
【0034】
本発明のセルラーゼ組成物(C)は、各成分を混合することにより得られ、製造方法は特に限定されるものではない。1例を下記に示す。
(1)水にセルラーゼ安定化剤(B)を加え、25℃で均一になるまで撹拌する。
(2)セルラーゼ(A)以外の成分を所定量添加し均一に溶解させる。
(3)最後にセルラーゼ(A)を添加し溶解させ、セルラーゼ組成物(C)を製造する。
【0035】
本発明のセルラーゼ組成物(C)の使用方法は、従来のセルラーゼ組成物の使用方法と同じでよく、特に限定されるものではないが、例えば、洗剤用、製紙パルプ処理用及びセルラーゼ糖化用のセルラーゼ組成物として使用できる。
【0036】
本発明の洗剤組成物は、上記セルラーゼ組成物(C)及び界面活性剤(D)を含有する洗剤組成物である。本発明の洗剤組成物は、セルラーゼ活性の持続性の高いセルラーゼ組成物(C)を含有しているので、長期保存後も洗浄性を保つことができる。
【0037】
界面活性剤(D)としては、非イオン性界面活性剤(D−1)、アニオン性界面活性剤(D−2)、カチオン性界面活性剤(D−3)、両性界面活性剤(D−4)及びバイオサーファクタント(D−5)が含まれる。
【0038】
非イオン性界面活性剤(D−1)としては、アルキレンオキサイド付加型非イオン性界面活性剤(D−1−1)及び多価アルコール型非イオン性界面活性剤(D−1−2)等が挙げられる。
【0039】
(D−1−1)としては、高級アルコール(炭素数8〜18)アルキレン(炭素数2〜4、好ましいのは2)オキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)、アルキル(炭素数1〜12)フェノールエチレンオキサイド(以下、エチレンオキサイドをEOと記載することがある)付加物(付加モル数1〜30)、高級アミン(炭素数8〜22)アルキレン(炭素数2〜4、好ましいのは2)オキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜40)、脂肪酸(炭素数8〜18)EO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜60)、ポリオキシプロピレングリコール(以下、ポリプロピレングリコールをPPGと記載することがある)(数平均分子量(Mn)200〜4,000)EO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜50)、ポリオキシエチレン(繰り返し単位数3〜30)アルキル(炭素数6〜20)アリルエーテル並びにソルビタンモノラウレートEO付加物(活性水素1個あたりの付加モル数1〜30)及びソルビタンモノオレートEO付加物(活性水素1個あたりの付加モル数1〜30)等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステルEO付加物(活性水素1個あたりの付加モル数1〜30)等が挙げられる。
【0040】
(D−1−2)としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレート等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステル並びにラウリン酸モノエタノールアミド及びラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0041】
アニオン性界面活性剤(D−2)としては、炭素数8〜24のアルキルエーテルカルボン酸又はその塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレンエーテルカルボン酸又はその塩[(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキル硫酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレン硫酸エステル塩[ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)硫酸ナトリウム及びラウリル(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)硫酸−トリエタノールアミン塩等]、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸スルホン酸ナトリウム、炭素数8〜24のアルキルフェニルスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキルリン酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレンリン酸エステル塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等]、及びアシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]等が挙げられる。
【0042】
カチオン性界面活性剤(D−3)としては、第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]及びアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]等が挙げられる。
【0043】
両性界面活性剤(D−4)としては、ベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]及びアミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]等が挙げられる。
【0044】
バイオサーファクタント(D−5)としては、サーファクチン及びラムノリピッド等が挙げられる。
【0045】
(D)としては、1種又は2種以上が使用出来る。2種以上を使用する場合、その組み合わせとしては、例えばノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤の組み合わせ、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤の組み合わせ及びノニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の組み合わせ等が挙げられる。
【0046】
(D)として、洗浄性の観点から、ノニオン性界面活性剤単独での使用、及びノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤との組み合わせでの使用が好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、洗浄性の観点から、脂肪族アルコール(炭素数8〜24)エチレンオキサイド付加物(重合度=1〜100)及び高級アミン(炭素数8〜22)アルキレン(炭素数2〜4、好ましいのは2)オキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜40)が好ましく、さらに好ましくは脂肪族アルコール(炭素数12〜18)EO付加物(重合度4〜20)及び高級アミンEOプロピレンオキサイド(以下、POと記載することがある)付加物(重合度は各々1〜20)、次にさらに好ましくは脂肪族アルコール(炭素数12〜15)エチレンオキサイド付加物(重合度=8〜12)及び高級アミン(炭素数12〜22)EOPO付加物(重合度は各々1〜20)、特に好ましくはオレイルアルコールEO11モル付加物及びモノオキシエチレンモノオキシプロピレンパルミチルアミンである。
アニオン性界面活性剤としては、洗浄性の観点から、炭素数8〜24のアルキルフェニルスルホン酸塩、脂肪酸塩、炭素数8〜24のアルキル硫酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレン硫酸エステル塩が好ましく、さらに好ましくは、炭素数12〜16のアルキルフェニルスルホン酸塩及び炭素数8〜16の脂肪酸塩、次にさらに好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸モノエタノールアミン塩及びラウリン酸ナトリウムである。
【0047】
洗剤組成物中のセルラーゼ組成物(C)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、(C)及び(D)の合計重量に基づいて、1〜99重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは20〜80重量%である。
洗剤組成物中の界面活性剤(D)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、(C)及び(D)の合計重量に基づいて、1〜99重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜90重量%、特に好ましくは20〜80重量%である。
【0048】
洗剤組成物中のセルラーゼ組成物(C)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、1〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。
洗剤組成物中の界面活性剤(D)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、1〜70重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。
洗剤組成物中のセルラーゼ(A)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、0.000001〜0.1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.000005〜0.0.08重量%、特に好ましくは0.00001〜0.05重量%である。
洗剤組成物中のセルラーゼ安定化剤(B)の含有量(重量%)は、洗浄性の持続性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、0.00001〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは0.00005〜15重量%、特に好ましくは0.0001〜10重量%である。
【0049】
本発明の洗剤組成物は、セルラーゼ組成物(C)及び界面活性剤(D)以外に、水、pH調整剤(E)、セルラーゼ(A)以外の酵素(F)、ビルダー(G)、キレート剤(H)、色素(I)、香料(J)、蛍光増白剤(K)、消泡剤(L)及び親水性溶媒(M)等を含有することができる。
【0050】
水は特に限定されるものではなく、水道水、イオン交換水、蒸留水及び逆浸透水等が挙げられる。また、水中にpH調整剤(E)を含むバッファー水溶液等が挙げられる。
洗剤組成物中の水の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、1〜98重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜85重量%であり、特に好ましくは20〜70重量%である。
【0051】
pH調整剤(E)としては、GoodバッファーであるHEPESバッファー、クエン酸バッファー、Trisバッファー及びリン酸バッファー等が挙げられる。(E)として、洗浄性の観点から、クエン酸バッファー及びリン酸バッファーが好ましい。
洗剤組成物中の(E)の濃度(モル濃度)は、至適pHに調整する観点から、10〜500mMが好ましい。
【0052】
洗剤組成物のpHは、洗浄性の観点から、pH5.0〜9.0が好ましく、さらに好ましくはpH6.5〜8.5である。
【0053】
セルラーゼ(A)以外の酵素(F)には、プロテアーゼ(F−1)、アミラーゼ(F−2)、リパーゼ(F−3)及びオキシドレダクターゼ(F−4)が含まれる。
【0054】
プロテアーゼ(F−1)としては、動物、植物又は微生物起源のものが含まれ、入手しやすさの観点から、微生物起源のものが好ましい。プロテアーゼには、化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。プロテアーゼのうち、洗浄性の観点から、セリンプロテアーゼが好ましく、さらに好ましくはアルカリ性微生物プロテアーゼ及びトリプシン様プロテアーゼである。
【0055】
アルカリ性微生物プロテアーゼとしては、サブチリシン、特にバシラス菌(Bacillus)由来のもの、例えばサブチリシン Novo、サブチリシン Carlsberg、サブチリシン 309、サブチリシン 147及びサブチリシン 168等が挙げられる。
トリプシン様プロテアーゼとしては、トリプシン(例えば、ブタ又はウシ起源のもの)及びフザリウム(Fusarium)プロテアーゼ等が挙げられる。
【0056】
市販のプロテアーゼとしては、ノボザイムス社のAlcalaseTM、SavinaseTM、PrimaseTM、DurazymTM及びEsperaseTM並びにジェネンコア社のPurafectTM及びPurafect OXPTM等が挙げられる。
【0057】
アミラーゼ(F−2)としては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。アミラーゼには、化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。アミラーゼとしては、例えば、英国特許第1,296,839号明細書に詳細に記載されているB.リヘニフォルミス(B. licheniformis)の特殊株から得られるα−アミラーゼ等が挙げられる。
市販のアミラーゼとしては、ノボザイムス社の DuramylTM、TermamylTM、FungamylTM及びBANTM並びにGist−Brocades社のRapidaseTM及びMaxamyl PTM等が挙げられる。
【0058】
リパーゼ(F−3)としては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。リパーゼには、化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。リパーゼの例としては、フミコーラ・ランギノーザ(Humicola lanuginosa)リパーゼ(欧州特許第258 068号明細書及び欧州特許第305 216号明細書)、リゾムーコル・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ及びカンジダ(Candida)リパーゼ(欧州特許第238 023号明細書)、C.アンタークティカ(C.ntarctica)リパーゼA及びB、シュードモナス(Pseudomonas )リパーゼ(欧州特許第214 761号明細書)、P.シュードアルカリゲネス(P.pseudoalcaligenes)及びP.アルカリゲネス(P.alcaligenes)リパーゼ(欧州特許第218 272号明細書)、P.セパシア(P.cepacia)リパーゼ(欧州特許第331 376号明細書)、P.スタッツェリ(P.stutzeri)リパーゼ、P.フルオレッセンス(P.fluorescens)リパーゼ及びバシラス(Bacillus)リパーゼ(英国特許第1,372,034号明細書)、B.サチリス(B.subtilis)リパーゼ(Dartois 他(1993), Biochemica et Biophysica Acta1131,253−260)、B.ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)リパーゼ(特公昭64−744992号公報)並びにB.ピュミルス(B.pumilus)リパーゼ(国際公開第91/16422号)等が挙げられる。
【0059】
市販のリパーゼとしては、ジェネンコア社の M1 LipaseTM、Luma fastTM及びLipomaxTM、ノボザイムス社のLipolaseTM及びLipolase UltraTM並びに天野エンザイム社のLipase P“Amano”TM等が挙げられる。
【0060】
オキシドレダクターゼ(F−4)としては、ペルオキシダーゼ及びオキシダーゼ(例えばラッカーゼ)が含まれる。
ペルオキシダーゼとしては、植物、細菌又は真菌起源のものが含まれる。ペルオキシダーゼには、化学的に、又は遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。ペルオキシダーゼとしては、コプリナス(Coprinus)(例えばC.シネレウス(Coprinus cinereus)又はC.マクロリザス(C.macrorhizus)の菌株由来のもの)、バシラス(Bacillus)(B.ピュミラス(B.pumilus)の菌株由来のもの)及び国際公開第91/05858号に記載されたペルオキシダーゼが好ましく、特に好ましくは国際公開第91/05858号に記載されたペルオキシダーゼである。
ラッカーゼとしては、細菌又は真菌起源のものが含まれる。ラッカーゼとしては、トラメテス(Trametes)(例えばT.ビロサ(T.villosa)又はT.ベルシコロール(T.versicolor)の菌株由来のもの]、コプリナス(Coprinus)[例えばC.シネレウス(C.cinereus)の菌株由来のもの]及びミセリオフトラ(Myceliophthora)[例えばM.サーモフィラ(M. thermophlla)の菌株由来のもの]等が挙げられる。
【0061】
洗剤組成物中の(A)以外の酵素(F)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、0〜0.1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.1重量%、特に好ましくは0.075〜0.1重量%である。
【0062】
ビルダー(G)としては、特に限定するものではなく、従来の洗剤組成物に使用されているビルダーが使用でき、例えば、ポリカルボン酸塩(アクリル酸塩ホモポリマー及びマレイン酸塩ホモポリマー等)、多価カルボン酸塩(クエン酸及びリンゴ酸等)、及びアルカリビルダー(苛性ソーダ、ソーダ灰、アンモニア、トリエタノールアミン、トリポリリン酸ソーダ及びケイ酸ソーダ等)等が挙げられる。
【0063】
キレート剤(H)としては、特に限定するものではなく、従来の洗剤組成物に使用されているキレート剤が使用でき、例えば、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸及びジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸及びカルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩並びにアミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)又はこれらのアルカリ金属若しくは低級アミン塩等が挙げられる。
【0064】
洗剤組成物中のビルダー(G)及びキレート剤(H)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、0〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜5重量%である。
【0065】
色素(I)としては、特に限定するものではなく、従来の洗剤組成物に使用されている色素が使用でき、例えば、ブロモフェノールブルー等が挙げられる。
【0066】
香料(J)としては、特に限定するものではなく、従来の洗剤組成物に使用されている香料が使用でき、例えば、フェニルエチルアルコール等が挙げられる。
【0067】
蛍光増白剤(K)としては、特に限定するものではなく、従来の洗剤組成物に使用されている蛍光増白剤が使用でき、例えば、ビフェニルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0068】
消泡剤(L)としては、特に限定するものではなく、従来の洗剤組成物に使用されている消泡剤が使用でき、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリオキシアルキレン系消泡剤及び鉱物油系消泡剤等が挙げられる。
【0069】
洗剤組成物中の色素(I)、香料(J)、蛍光増白剤(K)及び消泡剤(L)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、0〜5重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜2重量%である。
【0070】
親水性溶媒(M)としては、特に限定するものではなく、従来の洗剤組成物に使用されている親水性溶媒が使用でき、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。
洗剤組成物中の親水性溶媒(M)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、0〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜10重量%である。
【0071】
本発明の洗剤組成物は、各成分を混合することにより得られ、製造方法は特に限定されるものではない。1例を下記に示す。
(1)界面活性剤(D)に、セルラーゼ組成物(C)及び酵素(F)以外の成分を加え、25℃で均一になるまで撹拌する。
(2)セルラーゼ組成物(C)を所定量添加し、均一に溶解させる。必要により酵素(F)を所定量添加し、均一に溶解させる。
【0072】
本発明の洗剤組成物の使用方法は、従来の洗剤組成物の使用方法と同じでよく、特に限定されるものではない。衣料用洗剤としての使用方法の1例を下記に示す。
(1)洗濯物が入った洗濯機に水道水を張り、洗剤組成物を25℃で添加し、軽く撹拌して溶解させる。
(2)洗濯機で洗濯物を洗浄する。
(3)洗濯機から液を抜き、水道水で1〜2回すすぐ。
(4)適宜脱水をかける。
【実施例】
【0073】
以下の実施例、比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】
<製造例1>
プライマー1(配列番号4)と2(配列番号5)を用いてPCR法によりBacillus licheniformisのbglC遺伝子を増幅した。PCR増幅断片を制限酵素NcoIとBamHIで処理後、pET−22bプラスミド(Novagen社)のNcoI制限酵素サイトとBamHI制限酵素サイトに結合した。その後、BL21(DE3)大腸菌株(Novagen社)へ形質転換を行い、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列からなる配列番号3のセルラーゼ(A−1)を発現する大腸菌(α)を作成した。
【0075】
大腸菌(α)の終夜培養液10mlを作製し、250mL培養液(TB培養液(Difco社)、0.7重量%硫酸アンモニウム、0.05重量%クエン酸2アンモニウム、1mM硫酸マグネシウム)に植菌し、1L微生物培養装置(エイブル社)を用いてpH7.0、37℃で維持したまま培養を行った。培養開始3時間後に、1M IPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)を0.75mL加え、さらに、培養液中の濃度が1.0重量%になるようにヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(三洋化成工業(株)製、商品名「レボン2000」)を加えた。培養を48時間行った後、培養液15mLから遠心分離機(KUBOTA社製「5922」、4℃、6000×g、10分)を用いて菌体を分離し、上清のみを回収した。得られた上清を、遠心分離機(KUBOTA社製「5922」、4℃、6000×g、10分)を用いて沈殿除去を行った後、限外ろ過膜(Millipore社製「アミコンウルトラ−15」分画分子量10000)を用いて、5mL程度になるまで上清の濃縮を行い、リン酸バッファー水溶液10mL加えて再び5mL程度になるまで濃縮を行い、再度リン酸バッファー水溶液を加え5mL程度になるまで濃縮を行い、セルラーゼ(A−1)を含む水溶液を得た。SDS−PAGEにより、水溶液中のセルラーゼ(A−1)の濃度は15g/Lであることが分かった。
【0076】
<セルラーゼ活性の測定>
pH7.5の100mMリン酸バッファー水溶液に、17.5g/LになるようにCMC(和光純薬工業(株)製)を溶解し、基質溶液を調整した。pH7.5のリン酸バッファー水溶液3mLに、セルラーゼ(A−1)の水溶液を加え、リン酸バッファー水溶液で100倍希釈して、セルラーゼ(A−1)溶液を調整した。基質溶液3mLとセルラーゼ(A−1)溶液5μLを混合し、40℃に温度を調節した粘度計(TVE−22L粘度計、2rpm)に移した。混合直後に粘度を読み取り、その後、1、2、3、4、5及び6分後に粘度を読み取った。セルラーゼ(A−1)の濃度が異なるセルラーゼ(A−1)溶液を作成して同様に測定し、混合直後の粘度と5分後の粘度を比較した。5分後の粘度が1/2となるセルラーゼ(A−1)の量(エンド−1,4−β−グルカナーゼ活性1単位)は0.05mgであった。したがって、セルラーゼ(A−1)の粘度測定法によるセルラーゼ活性は20単位/mgであった。
【0077】
<実施例1〜11>
表1に記載の割合で25℃で配合し、本発明のセルラーゼ組成物を作製した。セルラーゼ組成物のpHは全て7.5であった。
【0078】
<比較例1〜41>
表2〜5に記載の割合で25℃で配合し、比較のセルラーゼ組成物を作製した。セルラーゼ組成物のpHは全て7.5であった。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
【表4】

【0083】
【表5】

【0084】
表1〜5中の各成分は、下記のものを使用した。
セルラーゼ(A−1):製造例1で得たセルラーゼを用いた。表中の量(重量%)は、セルラーゼ(A−1)の純分で示した。
水:100mMリン酸バッファー水溶液、和光純薬工業(株)製
マンニトール:和光純薬工業(株)製
トレハロース:和光純薬工業(株)製
セロビオース:和光純薬工業(株)製
グリコール酸:和光純薬工業(株)製
ピロガロール:和光純薬工業(株)製
N−α−アセチルアルギニン:SIGMA社製
ソルビタンモノオレート:三洋化成工業(株)製、商品名「イオネットS−80」
ソルビタントリオレ−ト:三洋化成工業(株)製、商品名「イオネットS−85」
ヤシ油脂肪酸ソルビタンモノエステル:三洋化成工業(株)製、商品名「イオネットS−20」
キシロース:和光純薬工業(株)製
グルコース:和光純薬工業(株)製
フルクトース:和光純薬工業(株)製
マルトース:和光純薬工業(株)製
エリスリトール:和光純薬工業(株)製
イノシトール:和光純薬工業(株)製
サリシン:和光純薬工業(株)製
エタノールアミン:和光純薬工業(株)製
ジエタノールアミン:三洋化成工業(株)製
ブタンジアミン:三洋化成工業(株)製
ジメチルドデシルアミンオキシド:三洋化成工業(株)製
スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミド二ナトリウム:三洋化成工業(株)製、商品名「ビューライトA−5000」
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール:三洋化成工業(株)製、商品名「ニューポール PE−75」
コレステロール:和光純薬工業(株)製
PPG(Mn=1,000):三洋化成工業(株)製
カプリル酸:和光純薬工業(株)製
コール酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製
シュウ酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製
ピルビン酸:和光純薬工業(株)製
イソフタル酸:和光純薬工業(株)製
ギ酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製
メタノ−ル:和光純薬工業(株)製
エチレングリコール:三洋化成工業(株)製
プロピレングリコール:和光純薬工業(株)製
グリセロール:和光純薬工業(株)製
ホルムアルデヒド:和光純薬工業(株)製
プロリン:和光純薬工業(株)製
イソロイシン:和光純薬工業(株)製
アスパラギン酸:和光純薬工業(株)製
アルギニン:和光純薬工業(株)製
β-アラニン:和光純薬工業(株)製
サルコシン:和光純薬工業(株)製
アルギニンメチルエステル:和光純薬工業(株)製
トリプトファン:和光純薬工業(株)製
N-アセチルトリプトファン:和光純薬工業(株)製
ポリエチレングリコール(PEG)(Mn=200):三洋化成工業(株)製
ポリエチレングリコール(PEG)(Mn=20,000):三洋化成工業(株)製
塩化ナトリウム:富田製薬(株)製
塩化カルシウム無水物:和光純薬工業(株)製
硫酸アンモニウム:和光純薬工業(株)製
【0085】
<配合直後のセルラーゼ活性の測定>
「セルラーゼ活性の測定」において、「セルラーゼ(A−1)の水溶液」に変えて「実施例1〜11及び比較例1〜41のセルラーゼ組成物」を用いて配合直後のセルラーゼ活性を求めた。実施例1〜11及び比較例1〜41のセルラーゼ組成物において、配合直後のセルラーゼ活性は全て20単位/mgであった。
【0086】
<3ヶ月保存後のセルラーゼ活性の測定>
実施例1〜11及び比較例1〜41のセルラーゼ組成物を、25℃で3ヶ月静置し、3ヶ月保存後のセルラーゼ活性を測定した。
「セルラーゼ活性の測定」において、「セルラーゼ(A−1)の水溶液」に変えて「実施例1〜11及び比較例1〜41のセルラーゼ組成物を25℃で3ヶ月静置したセルラーゼ組成物」をそれぞれ用いる以外は同様にして、3ヶ月保存後のセルラーゼ活性をそれぞれ測定した。結果を表1〜5に示す。
また、次式より3ヶ月保存後のセルラーゼ組成物の残存活性を求めた。結果を表1〜5に示す。
残存活性(%)=〔(3ヶ月保存後のセルラーゼ活性(単位/mg))/(配合直後のセルラーゼ活性(単位/mg))×100
【0087】
<実施例12〜33>
配合直後の実施例のセルラーゼ組成物を用いて、表6の割合で25℃で配合し、本発明の洗剤組成物を作製した。洗剤組成物のpHは全て7.5であった。
【0088】
<比較例42〜69>
配合直後の比較例のセルラーゼ組成物を用いて、表7の割合で25℃で配合し、比較の洗剤組成物を作製した。洗剤組成物のpHは全て7.5であった。
【0089】
【表6】

【0090】
【表7】

【0091】
表6及び7中の各成分は、下記のものを使用した。
水:100mMリン酸バッファー水溶液、和光純薬工業(株)製
モノオキシエチレンモノオキシプロピレンパルミチルアミン:三洋化成工業(株)製
クエン酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製
ブロモフェノールブルー:和光純薬工業(株)製
フェニルエチルアルコール:三洋化成工業(株)製
ビフェニルスルホン酸ナトリウム:三洋化成工業(株)製
シリコーン系消泡剤:サンノプコ(株)製、商品名「ダッポーH−210」
エタノール:和光純薬工業(株)製
【0092】
実施例12〜33及び比較例42〜69の配合直後及び25℃で3ヶ月間保存後の洗剤組成物を用いて、下記方法により洗浄性保持率を測定した。
<洗浄性保持率の測定>
実施例12〜33及び比較例42〜69の配合直後の洗剤組成物0.8gをそれぞれ1Lビーカーに入れ、25℃の水999.2gを加えて溶解させた。この溶液に、4cm角に切った布(日本洗濯協会より販売されており、JIS C9606−1993「電気洗濯機」の洗浄力試験用汚染布として指定されている20番手綿カナキン湿式人工汚染布)を一枚入れ、25℃で直径4cmの攪拌羽のついた攪拌機を用いて、回転速度300rpmで20分攪拌した。布を取り出し、ビーカー中の溶液を捨てた。ビーカーに25℃の水を1Lを入れ、取り出した布を入れ、10分間、攪拌(300rpm)してすすぎを行った。布をとりだし、80℃で1時間乾燥した後、JIS Z8930で定義される配合直後洗剤組成物の白色度をスガ試験機社のカラーコンピュータにより測定した。
「配合直後の洗剤組成物」に変えて「25℃で3ヶ月間保存した洗剤組成物」を用いる以外は同様にして、25℃3ヶ月保存後の洗剤組成物の白色度を測定した。
次式によって洗浄性保持率を求めた。
洗浄性保持率(%)=〔(25℃3ヶ月保存後の洗剤組成物の白色度)/(配合直後洗剤組成物の白色度)〕×100
算出した洗浄性保持率を、下記の基準で表6及び7に記載した。
◎:洗浄性保持率が80%以上
○:洗浄性保持率が50%以上、80%未満
×:洗浄性保持率が50%未満
【0093】
セルラーゼ安定化剤を使用しない比較例1のセルラーゼ組成物の残存活性は22%であった。また、従来の安定化剤を含む比較例2〜41のセルラーゼ組成物の残存活性は、16〜24%であり、セルラーゼ安定化剤を使用しない比較例1の残存活性と同程度であった。さらに、セルラーゼ安定化剤を使用しない比較例1の残存活性よりも低いものが多かった。一方、セルラーゼ安定化剤(B)を含む実施例1〜11のセルラーゼ組成物の残存活性は46〜78%と非常に高く、3ヶ月保存後もセルラーゼ活性を保つことができていることが分かる。
また、比較例42〜69の洗剤組成物は洗浄性保持率が50%未満と低いのに対し、実施例1〜11のセルラーゼ組成物を含有する実施例12〜33の洗剤組成物は、洗浄性保持率が高く、長期間保存後も洗浄性を保つことができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のセルラーゼ組成物は、長期保存後もセルラーゼ活性を保つことができる。したがって、洗剤用、製紙パルプ処理用及びセルラーゼ糖化用のセルラーゼ組成物として使用できる。また、本発明の洗剤組成物は、長期保存後も洗浄性を保つことができ、衣料用洗剤、自動食器洗浄機用洗剤及びコンタクトレンズ用洗剤として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記セルラーゼ(A)、下記セルラーゼ安定化剤(B)及び水を含有するセルラーゼ組成物(C)。
セルラーゼ(A):配列番号1のアミノ酸配列である、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列を有するセルラーゼ。
セルラーゼ安定化剤(B):マンニトール、トレハロース、セロビオース、グリコール酸、ピロガロール、N−α−アセチルアルギニン、ソルビタンモノオレート、ソルビタントリオレート及びヤシ油脂肪酸ソルビタンモノエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であるセルラーゼ安定化剤。
【請求項2】
セルラーゼ(A)、セルラーゼ安定化剤(B)及び水の含有量が、(A)、(B)及び水の合計重量を基準として、(A)が0.0001〜0.1重量%、(B)が0.1〜20重量%、水が79.9〜99.8999重量%である請求項1に記載のセルラーゼ組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセルラーゼ組成物(C)及び界面活性剤(D)を含有する洗剤組成物。
【請求項4】
セルラーゼ組成物(C)及び界面活性剤(D)の含有量が、(C)及び(D)の合計重量を基準として、(C)が1〜99重量%、(D)が1〜99重量%である請求項3に記載の洗剤組成物。

【公開番号】特開2012−196170(P2012−196170A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61983(P2011−61983)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】