説明

セルラ無線通信システム、無線基地局装置及び無線端末装置

【課題】多アンテナ基地局からなるセルラ無線通信システムで、ビームフォームの利用を想定した際に、干渉低減を効果的に活用し、空間多重とビームフォームが混在しても、隣接局における干渉を回避すること。
【解決手段】FFRのセル境界向けの周波数を、空間多重用の周波数902、903、904とビームフォーム用の周波数901にしたがって周波数を分ける。これにより、ビームフォームで干渉低減される周波数を固定化する。セル中心向けの周波数は、周波数帯900として、3つの基地局20、21、22から送信されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルラ無線通信システム、無線基地局装置及び無線端末装置に係り、特に、複数の無線基地局が連携し、複数の無線基地局が送信する信号の干渉によって信号の品質が劣化する場合がある無線基地局間の境界エリアにおいても、干渉の影響を緩和する仕組みを備えたセルラ無線通信システム、無線基地局装置及び無線端末装置に関する。

【背景技術】
【0002】
1.セルラ通信
移動体無線通信では、移動する端末と基地局が、面として広がるサービスエリア内で通信するため、セルラ方式が一般的である。セルラ方式では、複数の基地局をサービスエリア内に点在させ、各基地局がカバーするエリア(端末が通信可能なエリア)をつなぎ合わせることで、面的なカバーエリアを実現する。各基地局は、自局を認識させるためのリファレンス信号を送信する。リファレンス信号は、送信する信号系列、あるいは送信する時間、あるいは周波数、あるいは信号系列と時間と周波数の組合せにおいて、その地域においてユニークとなるように設計されている。端末は、各基地局が送信するユニークなリファレンス信号を受信し、それぞれの強度を測定して比較することで、自局と隣接する複数の基地局との無線状態を把握する。こうした無線状態の測定結果は、より信号強度が強く、良好な受信状態となる(おそらく最も伝搬距離も短い)基地局を探すために利用されている。最も良好な受信状態となる基地局が、現在接続している基地局から隣接する他の基地局に変わったと判断したときには、より良好な受信状態が期待できる基地局に接続を切り替えるハンドオーバを実施することで、セルラ通信を実現する。
【0003】
図1に、無線通信システムの構成図を示す。
セルラ通信の概念を、図1を使って再度説明する。セルラ通信では、図1に示すように、複数の基地局(20、21、22)が存在する。端末1は、基地局20と無線通信を行っている。各基地局はネットワーク装置50と接続することによって、有線の通信路が確保されている。複数の基地局と接続するネットワーク装置50は、パケットスイッチ装置40を介してIP接続されている。図では端末1は最も距離が近く良好な信号を受信できる基地局20と通信している。各基地局(20、21、22)は、独自の識別信号であるリファレンス信号をそれぞれが送信している。端末1は各基地局が送信するリファレンス信号を受信して、その受信強度を測定する。リファレンス信号の受信強度が最も強い基地局が最も距離が近い基地局であると判定する。図には下り回線の信号(基地局から端末への通信)30と、上り回線の信号(端末から基地局への通信)31が記載されている。基地局20は下り信号30を、基地局21は下り信号32を、基地局22は下り信号33を、それぞれ送信している。各信号は同じ周波数、同じ時間に信号を送信しているため、下り信号30、32、33は互いに干渉する可能性がある。セル境界に位置する端末1は、基地局20より希望信号30を受信するが、同時に他局から干渉波32、33を受信してしまい、その影響も受けることとなる。希望信号電力に対する干渉電力と雑音電力の比は、SINR(Signal Interference and Noise Power Ratio)と呼ばれる。セル境界では、他セルからの干渉が強くなり、分母の支配項となるため、SINRが劣化し、高いスループットでの情報伝達が困難となる場合がある。
【0004】
2.FFR(Fractional Frequency Reuse)
セル境界での干渉を低減する方法としてFFRが知られている(特許文献1、特許文献2あるいは非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献5参照)。FFRはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplex Access)などの広帯域通信に向いた多重方式で実施される。FFRでは、端末が「セル境界に位置するか」あるいは「セル中心に位置するか」を把握し、そのロケーションによって割り当てる周波数に制限を与える。また、その割り当て周波数によって送信電力を変える。隣接するセル間で、互いセル境界に位置する端末が利用する周波数が同じにならないように割り当てを制御し、周囲のセルに与える与干渉を周波数領域でコントロールする。
図2は、FFRを採用する3つの基地局の周波数利用方法を示している。3つの基地局20、21,22があり、横軸は周波数を示している。縦軸は各周波数で送信している信号電力を示している。3つの基地局において、周波数帯60は弱い送信電力によって、全基地局から送信されている。全基地局がこの周波数で信号を送信しているため、周波数の再利用率は1である。この場合、リユース1ともいわれる。この周波数帯60は、セル中心(基地局付近に分布する)に位置する端末に対して、割り当てられる。利用対象がセル中心に位置する端末であるため、送信出力が弱くても、希望する基地局から送信される信号の伝搬損が小さく、高い電力によって受信される。また、隣接する基地局が出す干渉は、希望波よりも長い伝搬距離をたどるために、希望波よりも大きな伝搬損となり、その影響は受けにくい。そのため良好な信号品質を得やすい。
周波数61、62、63では、3つの基地局は、自分が指定した周波数だけを送信し、その他の周波数では信号の送信は行わない。図のように繰り返し利用が3である場合にはリユース3ともいわれる。この周波数帯は、セル境界の端末に対して割り当てられる。利用対象がセル境界の端末であるため、隣接するセルからの干渉を受けやすいが、上記のように隣接するセルでは、3つの異なる周波数を繰り返し利用する、リユース3であるため、干渉波の影響は受けにくい。
【0005】
図3では、複数のセルからなるセルラ通信の1例を示しておく。この例では、参照番号20、21、22、23、24、25の6つの基地局が記載されている。基地局20にはエリア100、101を含む。セル中心となるエリア100に位置する端末には、図2で示す周波数60が割り当てられる。エリア101に位置する端末には、周波数61が割り当てられる。また、隣接する基地局21においても、セル中心となるエリア110に位置する端末には、図2で示す周波数60が割り当てられる。エリア111に位置する端末には、周波数62が割り当てられる。同様に隣接する基地局22においても、セル中心となるエリア120に位置する端末には、図2で示す周波数60が割り当てられる。エリア121に位置する端末には、周波数63が割り当てられる。
エリア101、111、121の境界では、エリア101は周波数61が利用され、エリア111では周波数62が利用され、エリア121では周波数63が利用されるため、隣接する基地局間では同一の周波数が利用されない。したがって、干渉の影響は大幅に低減される。
【0006】
3.FTPC(Fractional Trasmission Power Control)
OFDMAでは、FFTを使い周波数をサブキャリヤと呼ばれる細切れに分割する。各基地局は複数のサブキャリヤをまとめたサブチャネル(あるいはリソースブロックとも呼ばれる)をスケジューリングによって特定の端末に占有させて、通信を行う。そのため、同一セルに属する端末においては、ある周波数(あるいはサブチャネル、リソースブロック)を使うことができる端末は唯一であり、同一サブチャネルを使った干渉は原理的には発生しない。これがCDMA技術(Code Division Multiplex Access)との違いである。図4にはその概念図を示している。
図4に、OFDMA実施時の干渉について説明する図を示す。この図では、基地局20と基地局22があり、端末4と5は同一のセクタに属している。端末3は同一の基地局ではあるが、隣接するセクタに属する。端末2は隣接する基地局のセクタに属する。端末4が上りで信号を送信する場合、基地局20は端末4が利用可能なサブチャネルを予め指示してある。また、端末5には異なるサブチャネルが指示されている。したがって、端末4と5は、同時に信号送信することがあっても、通信に利用する周波数が異なるため、2つの端末が送信する信号が互いに干渉することはない。他方、端末2、3は端末4.5とは異なるセクタ、セルに属する端末であるため、上りの送信に端末4や5と同じサブチャネルを用いて通信することがありえる。したがって、このケースでは干渉が発生する。このように、同一のセクタに属する端末間では上り通信の干渉が発生しないが、異なるセルやセクタ間では端末間の干渉が発生する。
セル中心に位置する端末は、通信する基地局への距離が近く、高い送信電力で信号を送信する必要がない。また、隣接セルへの距離が遠く、例え高い送信電力で信号を送信したとしても、他セルへの干渉は小さい。他方、セル境界に位置する端末は、通信する基地局への距離が遠く、高い送信電力で信号を送信する必要がある。また、隣接局への距離も近く、他セルへの干渉は大きい。
このため、OFDMAを採用するシステムでは、基地局に近い端末は、基地局で受信される電力を少し高くなるように設定しても、干渉への影響は殆ど現れない。そのため、推定された伝搬損に応じて、基地局受信端での受信電力が大きくなるように送信電力を制御する方法が用いられる(非特許文献4参照)。これをFTPCと呼ぶ。
【0007】
4.ビームフォームによる干渉制御
特許文献3あるいは非特許文献6では、ビーム形成を行う基地局が、周波数によってビームパタンを変え、隣接局間で発生する干渉を周波数領域でランダム化し、各端末が各自の周波数毎の干渉状況を基地局に報告し、基地局は干渉を避けた周波数割り当てのスケジューリングを実施することで干渉回避を行う方法が開示されている。
しかし、いずれの文献においても、ビーム形成の選択は、与えられた全システム帯域で実現し、FFRとの組合せは考えられていなかった。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−21787号公報「基地局」
【特許文献2】特開2009−44397号公報「無線通信システム」
【特許文献3】特開2007−243258号公報「無線通信方式および無線基地局装置」
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】3GPP TS36.331, 6.3.2 Radio resource control information elements
【非特許文献2】Mobile WiMAX−PartI A Technical Overview Performance Evaluation, 4.2 Fractional Frequency Reuse
【非特許文献3】IEEE 802.16m System Description Document(IEEE 802.16m−08/003r7), 20.1 Interference Mitigation using Fractional Frequency Reuse
【非特許文献4】3GPP TS36.213, 5.1 Uplink power control
【非特許文献5】3GPP TS36.213, 5.2 Downlink power allocation
【非特許文献6】3GPP R1−081827
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術で紹介したように、OFDMAを用いたセルラ通信においては、干渉回避のためにFFRを導入する技術が知られている。また、FTPCを実現し、上りの干渉回避を行うことも知られている。また、周波数で送信するビームの選択をランダム化し、端末に周波数毎の干渉状況を報告させ、その情報によって干渉回避する方法が知られている。しかし、従来技術では、ビーム形成による干渉ランダム化は与えられた全システム帯域で実現し、FFRとの組合せは考えられていなかった。FTPCを実施すると、セル境界での上りスループットの低下がみられるが、セル境界ではセル間干渉緩和のためにリッチなチャネル情報を報告する必要がある。上記のようにセル境界では上りスループットの低下が見られるため、オーバーヘッドを低減するための仕組みが必要であった。
また、ビームのランダム化によるセル間干渉を低減する従来技術においては、端末が特定の方向に偏るなどの分布が発生した場合に、ビームパタンを半固定化しているために自由にビームスケジューリングを変えることが困難であり、効率が劣化する場合があった。
また、MIMO通信(Multi−Input Multi−Output)を考えると、特許文献3で紹介されている幅広いビームを構成するシステムよりも、アンテナ間隔を離し、菊の花のような細かいビームを形成する方法も有力である。
本発明は、以上の点に鑑み、セル境界の端末が利用する周波数において、その状況に応じて、ビームフォーミングの周波数帯と空間多重の周波数帯を分けることで、FFRの効果を高め、干渉を回避し、利用効率の向上を図ることを目的とする。また、本発明では、例えば、上述のようにアンテナ間隔を離す場合にも適用可能なFFRとビーム形成を組み合わせたセルラ無線通信システム、無線基地局装置及び無線端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題は、複数のアンテナを使って空間を分割するビームを送信する無線基地局装置と複数の端末装置からなるセルラ無線通信システムにおいて、
システム周波数帯域を分割して、セル中心の端末に割り当てる第一の周波数帯と、セル境界の端末に割り当て、かつ少なくとも2つ以上のアンテナからアレイ重みを乗じた同一の信号を送信する第二の周波数帯と、セル境界の端末に割り当て、かつ各アンテナが異なる信号を送信する第三の周波数帯と、を用意し、
端末の状態に応じて、上記の周波数帯で送信する情報を定めることを特徴とするセルラ無線通信システム、無線基地局装置及び無線端末装置によって解決することができる。
また、上述のセルラ無線通信システム、無線基地局装置及び無線端末装置において、端末からのCQI(Channel Quality Indicator)モードを、上記の3つの周波数帯に依存して変更することを特徴とすることができる。
上述のセルラ無線通信システム、無線基地局装置及び無線端末装置において、CQIモードの変更を上りの伝搬路状況から判断し、端末に通知するメッセージ生成することを特徴とすることができる。
さらに、上述のセルラ無線通信システム、無線基地局装置及び無線端末装置において、上記第二の周波数帯を利用する場合には、CQIモードとして、ナローバンドCQIモードの指定を、端末に通知するメッセージ生成することを特徴とすることができる。
【0012】
本発明の第1の解決手段によると、
複数のアンテナを使って空間を分割するビームを送信する無線基地局装置と、複数の無線端末装置を備えたセルラ無線通信システムであって、
各無線基地局装置は、システム周波数帯域を分割して、
(1) セル中心の無線端末装置に割り当てる第一の周波数帯と、
(2) セル境界の無線端末装置に割り当て、かつ、特定の方向に強い信号を送信し他の方向に強い信号を送信しないビームフォームを利用し、複数の無線端末装置に対して、少なくとも2つ以上のアンテナからアレイ重みを重じた同一の信号を送信するビームフォーム送信を行うための第二の周波数帯と、
(3) セル境界の無線端末装置に割り当て、かつ、空間多重又はダイバーシチを利用し、少なくとも2つ以上のアンテナから同一無線端末装置又は複数の無線端末装置に対して、各アンテナから異なる又は独立した信号を送信する空間多重送信を行うための第三の周波数帯と、
を用意し、
各無線基地局装置は、各無線端末装置の状態に応じて、前記第一乃至第三の周波数帯のいずれかで送信する情報を定めることを特徴とするセルラ無線通信システムが提供される。
【0013】
本発明の第2の解決手段によると、
複数のアンテナを使って空間を分割するビームを送信する無線基地局装置と、複数の無線端末装置を備えたセルラ無線通信システムにおける無線基地局装置であって、
システム周波数帯域を分割して、
(1) セル中心の無線端末装置に割り当てる第一の周波数帯と、
(2) セル境界の無線端末装置に割り当て、かつ、特定の方向に強い信号を送信し他の方向に強い信号を送信しないビームフォームを利用し、複数の無線端末装置に対して、少なくとも2つ以上のアンテナからアレイ重みを重じた同一の信号を送信するビームフォーム送信を行うための第二の周波数帯と、
(3) セル境界の無線端末装置に割り当て、かつ、空間多重又はダイバーシチを利用し、少なくとも2つ以上のアンテナから同一無線端末装置又は複数の無線端末装置に対して、各アンテナから異なる又は独立した信号を送信する空間多重送信を行うための第三の周波数帯と、
を用意し、
各無線端末装置の状態に応じて、前記第一乃至第三の周波数帯のいずれかで送信する情報を定めることを特徴とする無線基地局装置が提供される。
【0014】
本発明の第3の解決手段によると、
複数のアンテナを使って空間を分割するビームを送信する無線基地局装置と、複数の無線端末装置を備えたセルラ無線通信システムにおける無線端末装置であって、
各無線基地局装置により、システム周波数帯域を分割して、
(1) セル中心の無線端末装置に割り当てる第一の周波数帯と、
(2) セル境界の無線端末装置に割り当て、かつ、特定の方向に強い信号を送信し他の方向に強い信号を送信しないビームフォームを利用し、複数の無線端末装置に対して、少なくとも2つ以上のアンテナからアレイ重みを重じた同一の信号を送信するビームフォーム送信を行うための第二の周波数帯と、
(3) セル境界の無線端末装置に割り当て、かつ、空間多重又はダイバーシチを利用し、少なくとも2つ以上のアンテナから同一無線端末装置又は複数の無線端末装置に対して、各アンテナから異なる又は独立した信号を送信する空間多重送信を行うための第三の周波数帯と、
を用意し、
無線端末装置の状態に応じて決定された無線基地局装置からの指示によって、無線基地局装置から前記第一乃至第三の周波数帯のいずれかで送信された信号を受信することを特徴とする無線端末装置が提供される。

【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、セル境界の端末が利用する周波数において、その状況に応じて、複数の無線基地局が連携しやすいビームフォーミングの周波数帯と、連携が難しい空間多重の周波数帯を分けることで、FFRの効果を高め、干渉を回避し、利用効率の向上を図ることができる。

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】無線通信システムの構成図。
【図2】セル間の干渉を制御するFFR実施時の電力プロファイル例を示す説明図。
【図3】FFR実施時の地域的な周波数利用を表わした図。
【図4】OFDMA実施時の干渉について説明する図。
【図5】ビーム形成の例を示す図。
【図6】本実施の形態におけるFFR実施時の電力プロファイル例。
【図7】本発明からなる実施の形態のCE/CCモード遷移のシーケンス(1)を示す図。
【図8】本発明からなる実施の形態のCQIモード遷移のシーケンス(1)を示す図。
【図9】本発明からなる実施の形態のCQIモード遷移を示す図。
【図10】本発明からなる実施の形態の基地局の動作フローを示す図。
【図11】本発明からなる実施の形態の基地局の動作フローを示す図。
【図12】本発明からなる実施の形態の端末の動作フローを示す図。
【図13】本発明からなる実施の形態の端末の動作フローを示す図。
【図14】本発明からなる実実施の形態の基地局(ベースバンド部)のブロック図。
【図15】本発明からなる実施の形態の基地局(無線ユニット)のブロック図。
【図16】アレイアンテナの構成例を示す図。
【図17】IEEE802.16mにおけるリソースブロックの構成図。
【図18】本発明からなる実施の形態のCE/CCモード遷移のシーケンス(2)を示す図。
【図19】本発明からなる実施の形態のCQIモード遷移のシーケンス(2)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.セル中心とセル境界での送信方法
第4世代通信では、主に、基地局のアンテナ数が4本以上のものが提案されている。例えば、標準化団体の3GPP(The Third Generation Project Party)で議論されているLTE−Advanced(Long Term Evolution)やIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)で議論されているIEEE802.16mでは、基地局のアンテナとして最大8本ものアンテナを具備することが議論されている。こうした多数アンテナのシステムでは、端末側がその物理的な大きさから高々4本程度のアンテナしか実装できないことを考えると、余剰するアンテナの使い方が重要である。
従来から知られるFFRの技術を用いることにより、セル境界に近い端末とセル中心にある端末とを分ける。そして、セル境界に位置する端末については、隣接するセルあるいはセクタとの干渉が問題とならないように、周波数と送信電力を制限する。本発明及び/又は実施の形態では、特にセル境界に位置する端末に対して、更に2つの種類に分けて、利用する周波数も分けて運用することを特徴とする。2つに分けられた周波数については、それぞれが、複数のアンテナを使った送信方法を変えることを特徴とする。送信方法としては、以下の2つの方法をとることを特徴とする。
(1)空間多重送信(SM:Spatial Multiplexing):複数のユーザを接続し、それぞれがMIMO送信として、8本のアンテナが独立の信号を送る仕組み
(2)ビームフォーム送信(BF:Beam forming):複数のアンテナから同一の情報を、適切なアレイアンテナ重みを用いて送信する仕組み
この2つの異なる送信方法を、周波数をわけて使い分けることで、隣接セルへの干渉を制御することができる。本発明及び/又は実施の形態のポイントは、特に、ここにある。
ビームフォーム送信は、アレイアンテナの動作から、信号の送信方向に分散が表れ、特定の方向には強い信号を送るが、他の方向には強い信号を送信しない。すなわちアンテナの指向性に加えてアレイアンテナとしての指向性が表れる。そのため、ビームフォームを実施した場合には、上記のビームフォームを実施している基地局からみて特定の方位に位置し、隣接する基地局に接続する特定の端末においては、強い干渉を受けるが、他の方位にある端末ではほとんど干渉を受けないといった現象が発生する。
各基地局が、ビームフォームによって信号を送信するリソースをある時間帯において維持するように制御した場合、隣接基地局に接続する端末では、該当するリソースでの干渉を比較的長い時間安定させることができる。
その場合に、隣接基地局において、端末からのフィードバック情報によって、隣接セルからの干渉の強弱を把握し、弱い干渉しか受けないことが分かっている端末に対しては、該当するリソースにおいて、積極的に高いMCS(Modulation and Coding Scheme)にてデータ伝送することができれば、周波数の利用効率を上げることが可能となる。
但し、例えば高速に移動する端末については、その動きに追従するためにアレイアンテナのアレイ重みを更新しなければならず、隣接基地局に接続する端末が、ある時間において、上記の高速移動する端末に割り当てられたリソースにおいて干渉を受けないと判断できた場合でも、短い時間の経過によって、その高速移動する端末に信号送信するためのアレイ重みが更新されて、指向性が変化してしまうと、先に得られた、干渉を受けにくいという情報は意味を持たなくなってしまう。
そのため、本発明及び/又は実施の形態では、隣接局への干渉制御をあきらめた、又は、干渉制御若しくはビームフォームを実施しない第二の周波数帯(後述図6の参照番号902、903、904を参照。)を作り、高速で移動する端末や、空間多重送信を行っている端末等については、その周波数帯を使うようにする。また、上記の第二の周波数帯では、隣接局と利用する周波数が重ならないようにして、リユース率を1以上にする。このことにより干渉そのものが発生しにくいようにする。以下では、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図16は、8本の無指向性のアンテナを八角形の頂点に配置したアンテナの構成例を示したものである。図の左側が本アンテナを上から見たときの配置を示す。円周上に8点のポイントがあり、それぞれがアンテナの配置を示している。右図は、このアンテナを横から見たときの構成図である。各アンテナ素子は棒状からなり、ダイポールアンテナが複数実装している。本実施の形態では、中心とアンテナ素子との距離を、例えば3λとする。ここで、λはキャリヤ周波数における波長を示す。
図5は、本発明からなる第1の実施の形態のビームフォーミングの例を示す図である。横軸は角度を示しており、左端から右端までで、360度の角度となっている。縦軸はアレイ利得を示す。アレイ利得とは、複数のアンテナを組み合わせる場合に波としての電波が合成される際に発生する追加的な利得を意味する。本指向性は、図16で示したようなアンテナを用意し、対角となる2本のアンテナを取り出して用いた時のアレイ利得を示している。利用した2つのアンテナ素子から送信する信号は、同一の情報であり、位相は同相とした。アンテナ間隔が波長よりも広いため、この図で示すように、成形されるビームは非常に狭くなる。また、特定の方向にだけ信号が送信されるのではなく、グレーティングローブと呼ばれる複数の同一性のピークが複数の方向に出てしまうのが特徴である。ただし、電波が飛ばない方向も確認できる。例えば、電波が飛ばない方向は、角度にして数〜数十度の範囲であるが、基地局と端末間の距離が数100mと広がった場合、端末周辺に数10mと大きなエリアで干渉が発生しない方向が発生する。高速移動しない、ビームフォームを行う端末を特定の周波数に集めることで、基地局間の干渉予測を行いやすくし、基地局間の連携効果を高めることができる。これが本発明及び/又は実施の形態のポイントのひとつである。
図6は、本発明からなる実施の形態のFFR実施時の周波数構成例を示す説明図である。3つの基地局20、21、22があり、横軸は周波数を示している。縦軸は各周波数で送信している信号電力を示している。先に従来技術として説明した図2で示す例では、基地局20、21、22と周波数61、62、63が1対1の関係で対応していた。すなわち、基地局20は周波数60と、61だけを使い、周波数62や63の割り当てを行わなかった。
しかし、本発明からなる第1の実施の形態を説明する図6では、従来技術とは異なる割り当て方法をとる。FFRにおいて、セルの外側に位置する端末に使われる周波数は大きく、周波数901と周波数(902、903、904)の2種に分けられる。周波数901は本発明及び/又は実施の形態で新たに導入するビームフォーム用の周波数である。周波数(902、903、904)は従来からあるFFRのセルエッジ用と同様で、周囲のセルに与える与干渉のランダム性が高いチャネル用に用意されたランダム割当て用の周波数である。
それぞれはサブキャリヤ当りの送信電力がセル中心の端末に使われる周波数900と比べて大きくなっている。また、周波数901については、上記にあるようにアレイアンテナによるアンテナ利得が得られるため、周波数(902、903、904)と同じ電力で送信する必要はなく、周波数900と同じあるいはより高い電力から、周波数(902、903、904)以下の電力であればよい。
【0019】
まず、周波数900について説明する。周波数900は、セル中心に位置する(基地局付近に分布する)端末に使われ、図2及びその説明箇所で示した周波数60と同様である。すなわち、3つの基地局において、周波数帯900は弱い送信電力によって、全基地局から送信されている。利用対象がセル中心に位置する端末であるため、送信出力が弱くても、希望する基地局から送信される信号の伝搬損が小さく、高い電力によって受信される。また、隣接する基地局が出す干渉は、希望波よりも長い伝搬距離をたどるために、希望波よりも大きな伝搬損となり、その影響は受けにくい。そのため良好な信号品質を得やすい。
つぎに、周波数901について説明する。周波数901は、セルエッジの端末用にビームフォームを利用したチャネル割当てを行う領域であることからCE−BF(Cell Edge Beam Form)と呼ぶこととする。CE−BFでは、例えば8本のアンテナを用い、2ユーザに対して信号送信する。8本のアンテナに対してアレイ重みを掛けて各ユーザへの信号を生成する。各ユーザへの信号はアレイ重みによるアレイ利得から、通常の1本アンテナからの送信に比べ高い信号品質による信号伝送が可能となる。そのうえ、図5に示すように信号が送信されない方向が生まれ、隣接する基地局につながる端末によっては、その方向が上記の信号が送信されない方向に当る場合には、当該の信号送信が干渉とならない。この特定の方位に干渉を与えない状況を維持することで、すなわち特定のリソースに割り当てるアレイ重みをできるだけ変えないようにすることで、隣接する基地局では、干渉を予測したMCSの割り当てが可能となる。
そのため、CE−BFでは比較的長い時間、同一の端末に該当するリソースを割り当てることが有効である。
1つの方法として、例えば、リソースに時間、周波数で分割されたチャネル枠を設け、特に時間については、周期構造を持たせたチャネル枠を構築し、そのチャネル枠に特定の端末を割り当てる方法とする。これにより、該当するチャネル枠は特定の端末向けの伝送が継続して行われるようになり、干渉の予測が行いやすくなる。従来技術においても、チャネル枠を設けたリソース割り当ての方法として、SPS(Semi Persistent Scheduling)等が知られている。本発明及び/又は実施の形態でも、同様の方法を使い、CE−BFのスケジューリングを行う。特に該当するユーザのモビリティすなわち移動速度がゆっくりとしたものである場合、アレイ重みは、更新によってもほとんど変化しない。さらにはSPSによって割り当てられたリソースものほぼ固定であるため、隣接する基地局に接続する端末にとっても、該当するリソースは、干渉を予測しやすい。
あるいは、他の実施の形態として、リソースに時間、周波数のチャネル枠を設け、特に時間については、周期構造を持たせた枠を構築し、そのチャネル枠に、端末を長期に渡って割りつけるのではなく、該当するチャネル枠に、アレイ重みを割り当てる方法も有効である。
最近の無線方式では、アレイ重みとして、予め、基地局と端末間で既知である限られた数のものが定義されていて、その中から特定のアレイ重みを選択して使うプリコーディングと呼ばれる方法が主流となってきている。プリコーディング方式では、予め決められたアレイ重みからの選択によってアレイ重みを決定するため、特定のチャネル枠に、端末ではなく、先にアレイ重みを割り付け、そのアレイ重みをフィードバックしてくる端末に対して、該当するチャネル枠を割り当てるという方法でも構わない。結果的に該当するリソースのアレイ重みは長期に渡って固定となり、隣接セルにおいて、被干渉の電力予測が可能となる。
つぎに、周波数(902、903、904)について説明する。周波数(902、903、904)はセルエッジの端末用に空間多重伝送あるいはダイバーシチ送信用に分けられた領域であり、CE−SM(Cell Edge Spatial Multiplexing)と呼ぶこととする。CE−SMでは、例えば8本のアンテナを用い、2つの端末に対して信号送信する。8本のアンテナは、各アンテナから送信される信号に相関はない。例えば4本のアンテナは端末Aに向け空間多重伝送を行い、1本アンテナに比べて4倍の情報量をMIMO伝送している。また、残り4本のアンテナは端末Bに向けて、例えばSTBC(Space Time Block Code)伝送を行い、1本アンテナに比べて高い信頼性、安定性をもって信号送信を行っている。いずれの端末への伝送に対しても、各アンテナが送信している信号は、互いに相関がない。そのため、アレイ送信による指向性はうまれない。したがって隣接局に接続する端末に与える干渉も指向性の影響がない。
【0020】
まとめると、CE−BFでは、周波数、時間帯によってチャネル枠が構成され、特定のチャネル枠は、隣接する基地局とビームフォーミングにより干渉を回避する。CE−BFの帯域では、ある基地局Aでは、特定の第1のチャネル枠が設けられ、そのチャネル枠では、端末又はアレイ重みが固定されるように制御されるため、ビームフォーミングの効果により、そのチャネル枠では、特定の方向に干渉与えずに通信を行うことができる。その干渉を与えない方位にある、該当するチャネル枠が割り当てられ、他の基地局Bに接続する端末Cは、安定的に基地局Aからの被干渉が低い状態を保つことができるため、その条件を使ってチャレンジングなMCSによるデータ伝送を試みることができる。一方で、異なる第2のチャネル枠では、基地局Aは、上記とは異なる端末に対して信号を送信している。このため、上記の第1のチャネル枠で使用したアレイ重みとは異なるアレイ重みを使って通信を行っている。そのため、上記の基地局Bに接続する端末Cから見ると、該当する第2のチャネル枠では、基地局Aから大きな干渉を受けているかもしれない。このようにチャネル枠毎に伝搬路の品質が大きく異なり、更には干渉条件が長期に渡って安定するように制御することで、隣接基地局間で発生する干渉回避を行う仕組みを構築することができる。
他方、CE−SMでは、ビームフォーミングによる干渉回避ではなく、周波数分割による干渉回避を試みる。
そうしたチャネル枠による干渉の違いはなく、単にフェージングによって干渉の状況が変化するにとどまる。また、CE−SMでは隣接する基地局間での干渉回避は単純ではないため、隣接局と調整して該当基地局が使用する周波数を確定するステップが必要である。もちろん、予め定められた固定の周波数割り付けを使っても構わない。いずれにしても、例えば秒単位程度の長い制御時間を使って、例えば各基地局が抱えるトラヒック量などの条件を使って、基地局間で(902、903、904)の周波数割り当ての調整を行う必要がある。
CE−BFでは、各端末が各チャネル枠に関する干渉情報、あるいは干渉が小さいチャネル枠の情報を通信相手の基地局に通知することで、より能動的で隣接基地局間の干渉制御が最適化された割当てを行うことが可能である。一方でCE−BFは例えば8本のアンテナを使ってビームフォームを行うために、アレイ利得を得ることができる。これによって端末は受信SINRを向上させることができるが、CE−SMのように、8本アンテナから独立の情報を送ることができないため、空間多重によるピークレート向上の効果を得ることはできない。よって、本発明からなる実施の形態では、CE−BFとCE−SMの周波数を明確に分けることとした。
CE−BFとCE−SMの周波数を分けることにより、端末が伝搬路の状況として報告する情報も明確に分けることができる。
CE−BFのモードに割り当てられた端末は、隣接局の干渉も含めてSINRを予測し、チャネル枠毎の分解能でSINRに関するCQIを報告することで、最も干渉が少ないチャネル枠を自動的に選択し、干渉の少ないチャネル枠を利用した信号伝送が可能となる。
CE−SMのモードに割り当てられた端末は、チャネル枠毎の分解能は必要ではなく、ワイドバンドのチャネル特性を報告するだけで十分である。従来のようにCE−BFとCE−SMを分けていないシステムでは、SM送信する端末からの干渉のために、干渉をアレイ利得で回避するといった、本発明及び/又は実施の形態の提案する効果を得ることはできなかった。本発明及び/又は実施の形態のように、CE−BFとCE−SMを分割することで、CE−BFの周波数において干渉回避の可能性が生まれる。
【0021】
図17は、IEEE802.16mのフレーム構成を示す。図17で紙面の上下方向は周波数、左右方向は時間を表している。メッシュの箱1つ(1000)はリソースエレメントと呼ばれる単位となる。リソースエレメントの時間軸の長さはOFDMシンボル長で決まる。また、リソースエレメントの周波数軸の長さはOFDMシンボルを作る際のFFT(高速フーリエ変換)の点数とシステム帯域から決まる。本図では、周波数軸に14個、時間軸に7個のリソースエレメントが集まってクラスタ(1002)を構成する。2つのクラスタが集まってサブチャネルを構成する。各リソースブロック内には、ハッチが掛ったリソースエレメント(1001)が見られるが、これは、リファレンス信号が配置されるリソースエレメントを示している。リファレンス信号には番号が付けられているが、これは8本のアンテナがそれぞれ決められた位置でリファレンス信号を送信し、その他のアンテナからは、該当するリソースエレメントに対してリファレンス信号を送信しないことを意味している。端末は、このリファレンス信号を受信して、伝搬路の推定や雑音電力の推定を行う。
【0022】
2.FFRの動作(CE⇔CC間の遷移)
2−1.CC⇔CC−SM間の遷移
図7は、本発明からなる実施の形態で、FFRにおいて、CE(セルエッジ:Cell Edge)とCC(セルセンタ:Cell Center)の切り替え動作のシーケンス図である。図の縦方向は時間の流れを示し、図面上方から下方に向かって時間が流れている。図には、ノードとして、端末(Mobile Station)、該当基地局(Serving Cell)と、隣接する基地局(Adjacent Cell)が記載されている。
基地局は、端末に2つの設定を行う。1つめは、CEモードとCCモードの切り替えを判定するためのトラップを仕掛けるメジャーメントの設定である。もう1つは、端末が報告するCQIの設定である。
1つめの「CEモードとCCモードの切り替え判定のためのメジャーメントの設定」について説明する。
基地局は、接続してきた端末に対し、最初CEモードに配置されるとしてトラップ(301)を仕掛ける。トラップの設定は、Measurement Report Configによって行われる。トラップとしては、接続中の基地局が送信するリファレンス信号のシステム全帯域についての平均受信信号強度PSと、隣接する基地局が送信するリファレンス信号のシステム全帯域についての平均受信強度の中で最大の値を持つ隣接基地局の平均受信強度PAを比較し、その差が閾値T1以上となった場合に、すなわちPS−PA>T1の場合に、トラップが起動するように設定する。トラップが起動されると、端末は、そのイベントが発生したことを基地局に報告する。報告には、Measurement Reportが使われる。報告を受けた基地局はCEゾーンからCCモードへの遷移を決定する。逆に一旦CCモードに遷移した状態にある端末に対しては、別のトラップを仕掛けて、CEモードへの復帰ができるようにする。例えば、復帰するためのトラップとして、閾値T2により、PS−PA<T2となった場合に、端末は基地局に報告を上げるようにする。
2つめの「端末が報告するCQIの設定」について説明する。CEモードあるいはCCモードにいる場合では、報告項目である「CQI」、「PMI:Prefered Matrix Indicator」、「RI:Rank Indicator」の種類は変わらないが、対象となる周波数が異なる。CEモードの端末は、基本的にはCEモードに限定した報告で十分である。CCモードを使うことが予測される場合にのみ、CCモードに関するリポートを行えばよい。また、CCモードの端末は、基本的にはCCモードに限定した報告で十分である。CEモードを使うことが予測される場合にのみ、CEモードに関するリポートを行えばよい。従ってモードの変更に伴って、逐次、端末が報告するCQIを設定する。
【0023】
図7にもどり、説明を続ける。端末は、Serving CellからのMeasurement Report Configにより、測定結果の報告内容、様式、トリガー等が設定される(301)。この指示には、端末が測定する各セルが送信しているリファレンス信号の受信品質を判定するための閾値にかかわる情報が含まれる。端末は、受信する各セクタ、セルのリファレンス信号の受信品質が、設定された閾値を下回ったり、あるいは上回ったりした際に、トリガーが掛り、そのことを基地局に報告する。基地局では報告に応じて端末に様々なモードの変更を指示する。
図7に示す本発明からなる実施の形態では、各基地局は複数のアンテナを使って通信を行う。そのため、基地局は、リファレンス信号も各基地局が複数のアンテナを使い、それぞれのアンテナにおいて個別のリファレンス信号を送信する(302)。端末はそのリファレンス信号を受信し、Measurement Report configに指示されている閾値の条件を満たすかを判定する。基地局は通信を行うために、該当端末に対してCQIのモードを指示する(303)。本発明からなる実施の形態では、モードに応じて報告すべきCQIも変化する。そのため、本発明からなる実施の形態では、基地局からCQI configによって、CQIの報告モードも変更する。
この際には、基地局は、CE−SMモードかCE−BFモードのいずれかのCQIを指示するように予め設定しておくことができる。ここでは、基地局が、CE−SMモードのCQIを指示したとする。その指示に従い、端末はCE−SMモードのCQIを報告する(304)。基地局はその結果を用いてCE−SMモードのスケジューリングを行う(305)。スケジューリング結果に基づき、CE−SMモードの周波数を使った通信が行われる(306)。 ここで、端末は、リファレンス信号の受信状況が、ステップ301で設定した条件を満たしたと判断すると、それに応じたMeasurement Reportが端末から基地局に対して報告される(307)。ここでは、端末が隣接基地局からのリファレンス信号の受信レベルPAと、接続基地局からのリファレンス信号の受信レベルPSの差が、閾値T1以上になったというイベントが発生したとする。すなわちPS−PA>T1である。基地局はMeasurement Reportの受信により、端末がセル中心に近付いたことを認識し、CEモードからCCモードへの遷移を決定する。そして、まず、基地局により、Measurement Report configの再設定がされる(308)。この再設定により、基地局は、端末が再度CEモードに遷移した場合に備え、端末から基地局に報告があがるようにトリガーを設定する。基地局から端末に、CQIモードもCCモードのものに変更するためにCQI configが送信される(309)。そしてそれに応じる形で、端末のCQI報告がCCモードのCQIに変更される(310)。基地局のパケットスケジューラでは、その結果を用いてCCモードのスケジューリングが行われ(311)、CCの周波数を使った通信が実施される(312)。
【0024】
2−2.CC⇔CE−BF間の遷移
図18は、本発明からなる実施の形態のCE/CCモード遷移のシーケンスを示す図である。この図は、基地局においてCE−BFモードのCQIを指示するようにプリセットされている場合の処理を表す。各ステップ301〜303の処理は、図7の説明で上述した通りである。ただし、ステップ303では、ここでは基地局が、CE−BFモードのCQIを指示したとする。ステップ304’では、端末はCE−BFモードのCQIを報告し、ステップ305’では、基地局はCE−BFモードのスケジューリングを行い、ステップ306’では、CE−BFモードの周波数を使った通信が行われる。各ステップ307〜312の処理は、図7の説明で上述した通りである。
【0025】
3.FFRの動作(CE−BF⇔CE−SM間の遷移)
3−1.CE−SMからCE−BFへの遷移
図9は、CCモード(400)、CE−SMモード(401)、CE−BFモード(402)間のCQIのモード遷移を示す図である。CEモード(403)にある端末がCCモードの条件が整った場合には、基地局にそのことを報告し、基地局の指示に従ってモード遷移を行い、CCモード(400)となる。逆にCCモード(400)の端末がCEモードの条件が整った場合には、基地局にそのことを報告し、基地局の指示に従ってモード遷移を行い、CEモード(403)となる。
本発明の特徴であるCE−SMとCE−BFの遷移は、この図9で説明される。CEモードであって、該当する端末の状態、例えばモビリティやQoS、受信品質によってモードの遷移が判定される。
図9ではカッコを用いているが、その意味について説明する。カッコなしの情報は、サブフレームの頻度で報告する情報であることを示す。例えばサブフレーム長が1msの場合、1ms毎の報告となる。( )がついた情報は、複数のサブフレーム毎に1回の頻度で報告する。例えば100ms毎の報告となる。
図8は、本発明からなる実施の形態のCQIモード遷移のシーケンスを示す図である。図8を用いて、CE−SMとCE−BFの遷移を説明する。基地局は、接続してきた端末に対し、最初CEモードに配置されるとしてトラップ(321)を仕掛ける。このトラップは上記で説明したステップ301と同様で、CCへの遷移を検知するためのものである。各基地局は複数のアンテナを使って通信を行う。そのため、基地局は、リファレンス信号も各基地局が複数のアンテナを使い、それぞれのアンテナにおいて個別のリファレンス信号を送信する(322)。端末はそのリファレンス信号を受信し、Measurement Report configに指示されている閾値の条件を満たすかを判定する。基地局は通信を行うために、該当端末に対してCQIのモードを指示する(323)。この際には、基地局は、CE−SMモードかCE−BFモードのいずれかのCQIを指示するように予め設定しておくことができる。本実施の形態では、基地局は、CE−SMモードのCQIを指示したとする。その指示に従い、端末はCE−SMモードのCQIを報告する(324)。基地局はその結果を用いてCE−SMモードのスケジューリングを行う(325)。スケジューリング結果に基づき、CE−SMの周波数を使った通信が行われる(326)。
ここで、下りとペアーにある上りの通信を考える。例えば、IEEE802.16mやLTE−Advancedでは、TDDモードのシステムが定義されている。TDDモードでは、基地局から送信され端末で受信する下り回線と、端末が送信し基地局が受信する上り回線は同じ周波数帯を使い、時間割りによって上りと下りを区別する。こうした無線システムでは、上り回線を用いて下り回線の伝搬路状況を把握しやすい。特にアンテナのアレイ重みの決定は容易である。そのため、ステップ328では、上り回線を使って下り回線に相当する伝搬路の品質チェックを行う。上り回線では、基地局は受信動作のために伝搬路推定回路を持っている。その結果を利用することで上り回線の詳細な品質解析が可能である。そこで、この仕組みを使い、端末のモビリティすなわち移動速度や、伝搬路の品質を推定する。例えば推定された移動速度が十分に低速である場合、ビームフォームは効果的である。また、伝搬路の品質が劣悪な場合、ビームフォームを行うことによって、品質を向上させることが可能である。こうした判断によって、基地局は該当端末のCE−SMからCE−BFへの遷移を決定する。具体的には、例えば、基地局は、モビリティ若しくは移動速度、伝搬路の品質若しくはその変化、又は、これらのいずれか複数項目を予め定められた閾値等のモード遷移条件と比較することにより、遷移すべきモードを判断することができる。次にステップ329では、基地局は、この決定に基づき、CQIモードの再設定を行う。すなわち、この例では、基地局は、CE−BFでのCQIモードを設定する。この際、Measurement Report Configの再設定は不要としてもよい。次にステップ330では、端末は設定された新しいCQIモードに基づいてCE−BFのCQIを報告する。基地局のパケットスケジューラでは、その結果を用いてCE−BFモードのスケジューリングが行われ(331)、CE−BFの周波数を使った通信が実施される(332)。
【0026】
3−2.CE−BFからCE−SMへの遷移
なお、図7において、CCモードとCE−BFモードとの間の遷移が設定されている場合、及び/又は、CE−BFモードのCQIを指示するようにプリセットされている場合には、図8における、ステップ323〜326の処理とステップ329〜332の処理とが入れかわる。図18は、この場合におけるCQIモード遷移のシーケンスを示す図である。各ステップの処理は、図9の説明で上述した通りである。
【0027】
また、CEモード内において、CE−SMモードとCE−BFモード間の遷移は図7及び図18で説明した通りである。
さらに、特異な例として、例えば特定のモード(例えばCE−BF)に属する端末が増加し、他のモード端末数と、リソース配分に差が生じ、特定のモードでの伝送効率が低下した場合には、ロードバランスを行い、例えば、本来ならCE−BFに割り当てるべき端末をCE−SMに割り当てることはあり得るが、そうした場合にも、基本的な動作が本発明及び/又は実施の形態の提案する周波数分割に従う場合には、本発明の範疇であることは明白である。この際は、基地局は、モード遷移条件として伝送効率又はロードバランスについての指標又は閾値を用いることで、モード間の遷移を制御することができる。
【0028】
4.基地局および端末のソフトウェアの動作
図10は、CEモードとCCモードを遷移に関する、基地局の動作フローチャートを示している。
まず、基地局は、ステップ700にて、該当する端末に対してMeasurement Report Configを設定する。端末には、複数のMeasurement Report Configを設定することができるため、基地局は、設定したMeasurement Report Configを識別するための識別子Measurement IDを同時に送信する。
次にステップ701にて、基地局は、端末からのMeasurement Reportが報告されるのを待つ。基地局は、端末からMeasurement Reportが上がると、次のステップ702に移る。
次のステップ702では、基地局は、Measurement ReportのMeasurement IDを確認する。Measurement IDが本ソフトウェアで期待していたものでなかった場合、ステップ701に戻り、基地局は、次のMeasurement Reportを待つ。また、Measurement IDが合致する場合、基地局は、次のステップ703に進む。
次のステップ703では、基地局は、Statusを確認する。Measurement Reportにより、基地局に知らされた端末のStatusがCE/CCのモード遷移条件と合致するかを判定する。ここで、Status及びモード遷移条件は、例えば、上述したようにPS−PA>T1、PS−PA<T2等である。合致するならば、次のステップ704に進む。合致しないようならばMeasurement Report configを再設定するため、ステップ700に戻る。
【0029】
次のステップ704では、基地局は、該当端末に対して、CE/CCのモードへの遷移と新たなる遷移のトリガーを指示する。具体的には、基地局は、再度、元のモードへ復帰できるように遷移用のトリガーとしてのMeasurement Report Configの設定のコマンドを端末に対して送信する。
図12は、CC/CEモード遷移に関する端末の動作フローチャートを示している。まず、ステップ720において、端末は、基地局からのMeasurement Report Configを受信する。次にステップ721に移り、端末は、リファレンス信号の測定を実施する。この測定では、端末は、接続している基地局が送信しているリファレンス信号や、隣接局が送信しているリファレンス信号を受信し、リファレンス信号の受信電力を測定する。測定が完了すると、ステップ722に移る。ステップ722では、端末は、ステップ720にて基地局が設定した条件(モード遷移条件)に測定結果があてはまるかをチェックする。チェックした結果、条件を満さない場合には、ステップ721に戻り、次の測定を行う。この測定は定期的に実施され、その度に条件を満たしているかがチェックされる。チェックした結果、条件を満たしていれば、ステップ723に移る。ステップ723では、端末は、基地局に報告するReportを作成し、それを基地局に送信する。
【0030】
図11は、CE内のCE−SMとCE−BF間のモード遷移の基地局の動作フローを示している。まず、基地局は、ステップ710にて、該当する端末に対してCE−SMか、あるいはCE−BFかの設定を行う。設定は、端末に対してCQI Configを送信することによって実現される。次にステップ711にて、基地局は、端末から送信されるCQI報告の受信を行う。次に、ステップ712にて、基地局は、端末が送信してくる上り回線の信号を受信し、その伝搬路の状況を把握する。基地局は、設定により、いくつかの閾値との比較により、CE−BF⇔CE−SMの遷移を行うかを判定する。モード遷移条件の合致判断については、基地局は、例えば、端末のモビリティ・移動速度が予め定められた閾値より速い場合CE−SMモードに、遅い場合CE−BFモードに遷移するように判定することができる。また、伝搬路の品質若しくはその変化が予め定められた閾値より良い場合CE−SMモードに、悪い場合CE−BFモードに遷移するよう判定することができる。その他、これら条件のいずれか、又は両方を満たしたとき遷移するようにしてもよい。判定によってモードが変更される場合は、ステップ710に飛び、CQI Configの再設定が行われる。モードの変更がない場合には、基地局は、ステップ711に戻り、同一のモードにてCQIの受信を続ける。
本実施の形態では、1回のループで必ずステップ712を1回実施しているが、モードの変更は頻繁である必要はないため、ステップ712は例えば100msに一度などの実施でも構わない。
図13はモードにより、端末が報告するCQIが変化する仕組みを表すフローチャートである。端末は、基地局がCQI configによって指示してくるモードに応じて、選択肢を選ぶ。左側のCCモードを選択した場合には、端末は、CCの周波数帯について、CQI、PMIの測定(731)、RIの測定(732)を行い、基地局に報告する。CE−SMモードを選択した場合には、端末は、CE−SMの周波数帯について、CQI、PMIの測定(733)、RIの測定(734)を行い、基地局に報告する。CE−BFモードを選択した場合には、端末は、CE−BFの周波数帯について、CQI、PMIの測定(733)、RIの測定(734)を行い、基地局に報告する。ただし、CE−BFモードの場合には、チャネル枠毎に報告が必要となる。他のモードでは、所謂、ワイドバンドCQIが報告されるのに対して、CE−BFモードでは、ナローバンドCQIが報告される。また、PMIについても、CE−BFモードでは、特定のチャネル枠毎のナローバンドPMIが報告される。
【0031】
5.基地局ハードウェアの動作
図14は、本発明からなる実施の形態の基地局ベースバンド部の構成例を示した図である。図15に、RF(Radio Frequency)部(RRH:Remote Radio Head)を示す。ベースバンド部とRF部はCPRIインターフェース(Common Public Radio Interface)にて接続される。本実施の形態はTDD(Time Division Duplex)を想定して説明する。
図15において、複数のアンテナ(601)が受信した信号はスイッチ部(602)で上り信号と下り信号に分離される。上り信号はRX(Receiver)部(603)に送られる。RX部(603)では信号増幅、周波数変換、デジタル化などの信号処理を行い、CPRIインターフェース部(607)に贈られる。CPRIインターフェース部(607)では、CPRIのフォーマットに変換され、図でPort0と示されたベースバンド部に信号が送られる。
【0032】
図14において、RF部が受信した信号は、図面左から入力され、CPRIインターフェース部(501)にてIQ16ビット、複数アンテナの信号に置き換えられる。変換された信号はCPE(CP Extraction)部(502)にてアンテナ毎にCP(サイクリックプリフィックス:Cyclic Prefix)が取り除かれる。CPはOFDM信号の遅延波耐性を向上させるために挿入された冗長信号である。CPが取り除かれた信号はFFT(Fast Fourier Transform)部(503)にて周波数領域の情報に変換される。周波数領域に変換された情報は、SSP(Spatial Signal Processing)部(504)にて、デジタルビームフォームされ、アンテナエレメントの情報からビームエレメントの情報に加工される。ビームエレメントに加工された情報は、DMX(Demultiplexing)部(505)にて、OFDMシンボル、サブキャリヤの分解能にて分離される各チャネル要素に分解される。これをデマッピングと呼ぶ。デマッピングされた情報には、リファレンス信号が含まれる。リファレンス信号はCE(Channel Estimation)部(506)に送られ、伝搬路推定に利用される。またCE部では、リファレンス信号を用い、隣接する基地局に接続する端末からの干渉波の推定等も行うことができる。推定された伝搬路は、送信データの検波に利用される。さらには、伝搬路推定結果の時間軸での変化を検知し、移動体のモビリティすなわち移動速度を推定する。あるいは端末から報告される送信電力に関連する報告値から伝搬損を推定する。推定された移動速度や伝搬損はDSP(Digital Signal Processor)に取り込まれ、下り回線のモード遷移に利用される。送信データには、ユーザデータと制御用のデータが含まれる。制御用のデータはDEM(Demodulation)部(510)にて検波とデコード処理が行われてDSP部(509)に渡される。ユーザデータは推定された伝搬路を用いてMLD(Maximum Likelyhood Detection)部(507)でMLD処理が行われる。その結果得られたLLR(Log Likelyhood Ratio)を用いてDEC(Decoding)部(508)にてデコード処理が行われ、得られた復号結果はDSP部(509)に渡される。DSP部ではCE部(506)で行われたチャネル推定結果、制御データのデコード結果、ユーザデータのデコード結果などを収集し、ユーザデータはネットワークインターフェースを通じてネットワークに送信する。チャネル推定結果、制御情報などはメモリ(511)に蓄積され、DSP内に構築されたパケットスケジューラの制御に利用する。
【0033】
図14で、ネットワークから送信されてきた下りの信号は、DSP部(509)のメモリ(511)に一旦蓄積され、DSP部(509)に内蔵されるスケジューラにて、送信タイミング、送信ビーム、送信リソースブロック、変調方式が決定され、その決定にしたがって送信信号に加工される。まず、メモリ(511)にあったユーザデータはCC部(512)にて、チャネルコーディングが実施される。チャネルコーディングを終えた信号はMOD(Modulation)部(513)にてQPSKなどの変調信号に変換される。変換された変調信号はSSP部(518)にて、空間信号処理が行われる。例えば空間多重や、送信ダイバーシチ、ビームフォーミング等の処理がそれに当る。その出力はMUX(Multiplexing)部(517)にて、OFDMシンボルのサブキャリヤに配置されるマッピングが実施される。マッピングでは、その他RSG(Reference Signal Generator)部(516)生成したリファレンス信号や、CCHCC(Control Channel Channel Coding)部(514)やCCHMOD(Control Channel Modulation)部(515)を経由して生成された制御チャネルの情報も配置される。ここで、CCHCC部(514)はDSP(509)が生成した制御情報をコーディングするブロックであり、CCHMOD部(515)は上記コーディングされた制御情報を変調するブロックである。MUX部(517)にてマッピングされたアンテナエレメント毎の周波数領域の情報は、IFFT部(519)にて、時間領域の信号に変換される。得られた時間領域の信号は、CPI部(520)にて、CPが付けられ、CPRIインターフェース部(501)にてCPRIインターフェースに変換されてRF部(RRH)に送信される。
【符号の説明】
【0034】
1、2...移動端末、20、21、22、23、24、25、26、27、28...無線基地局、30、32、33...下り送信信号、31...上り送信信号、40...スイッチ、50...コア装置、500...ベースバンド部、501...CPRIインターフェース部、502...CP除去部、503...FFT部、504...空間処理部、505...デマルチプレクサ部、506...チャネル推定部、507...MLD部、508...デコード部、509...DSP、511...メモリ、512...符号化部、513...モジュレーション部、514...制御情報符号化部、515...制御情報モジュレーション部、516...リファレンス信号生成部、517...マルチプレクサ部、518...空間処理部、519...IFFT部、520...CP付加部600...リモートRF部、601...アンテナ、602...スイッチ、603...受信RF部、607...CPRIインターフェース部、608...送信RF部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを使って空間を分割するビームを送信する無線基地局装置と、複数の無線端末装置を備えたセルラ無線通信システムであって、
各無線基地局装置は、システム周波数帯域を分割して、
(1) セル中心の無線端末装置に割り当てる第一の周波数帯と、
(2) セル境界の無線端末装置に割り当て、かつ、特定の方向に強い信号を送信し他の方向に強い信号を送信しないビームフォームを利用し、複数の無線端末装置に対して、少なくとも2つ以上のアンテナからアレイ重みを重じた同一の信号を送信するビームフォーム送信を行うための第二の周波数帯と、
(3) セル境界の無線端末装置に割り当て、かつ、空間多重又はダイバーシチを利用し、少なくとも2つ以上のアンテナから同一無線端末装置又は複数の無線端末装置に対して、各アンテナから異なる又は独立した信号を送信する空間多重送信を行うための第三の周波数帯と、
を用意し、
各無線基地局装置は、各無線端末装置の状態に応じて、前記第一乃至第三の周波数帯のいずれかで送信する情報を定めることを特徴とするセルラ無線通信システム。
【請求項2】
請求項1記載のセルラ無線通信システムであって、
無線基地局装置又は無線端末装置は、無線端末装置からの通信品質情報の報告内容を、前記第一乃至第三の周波数帯に依存して変更することを特徴とするセルラ無線通信システム。
【請求項3】
請求項1記載のセルラ無線通信システムであって、
無線基地局装置は、通信品質情報のモードの変更を上りの伝搬路状況から判断し、各モードにおける通信品質情報の報告内容を含むメッセージを生成し、無線端末装置に通知することを特徴とするセルラ無線通信システム。
【請求項4】
請求項1記載のセルラ無線通信システムであって、
無線基地局装置は、前記第二の周波数帯を利用する場合には、通信品質情報の報告内容として、ナローバンドの通信品質情報の指定を含むメッセージを生成し、無線端末装置に通知することを特徴とするセルラ無線通信システム。
【請求項5】
請求項1記載のセルラ無線通信システムであって、
無線基地局装置又は無線端末装置は、セル境界への前記第二の周波数の送信電力が、セル中心への前記第一の周波数の送信電力以上、且つ、セル境界への前記第三の周波数の送信電力以下とすることを特徴とするセルラ無線通信システム。
【請求項6】
請求項1記載のセルラ無線通信システムであって、
無線基地局装置は、前記第二の周波数帯では、リソースに対して、時間及び周波数で分割されたチャネル枠を設け、そのチャネル枠に特定の無線端末装置を割り当てること、又は、アンテナアレイに対するアレイ重みを割り当てることを特徴とするセルラ無線通信システム。
【請求項7】
請求項1記載のセルラ無線通信システムであって、
無線基地局装置は、無線端末装置が利用する周波数が前記第一の周波数帯であるセル中心モード(CCモード)、又は、無線端末装置が利用する周波数が前記第二若しくは第三の周波数帯であるセル境界モード(CEモード)かに従い、無線端末装置が測定する各無線基地局装置が送信するレファレンス信号の通信品質情報の報告内容と、CCモードとCEモード間のモード切替えのための遷移条件とを含む測定報告設定を無線端末装置に送り、
無線端末装置は、リファレンス信号の測定結果が、測定報告設定に指示されている前記遷移条件を満たすと判定すると、その判定結果を示す測定報告を無線基地局装置に報告し、
無線基地局装置は、前記測定報告に従いCCモードとCEモード間で遷移してスケジューリングを行い、無線基地局装置および無線端末装置間で、前記スケジューリング結果に基づき、前記第一の周波数帯又は前記第二若しくは第三の周波数帯のいずれかの周波数帯を使った通信を行うことを特徴とするセルラ無線通信システム。
【請求項8】
請求項1記載の無線通信システムであって、
無線端末装置が利用する周波数が前記第二若しくは第三の周波数帯であるセル境界モード(CEモード)は、前記第二の周波数帯を用いるセル境界−ビームフォームモード(CE−BFモード)と、前記第三の周波数帯を用いるセル境界−空間多重モード(CE−SMモード)を含み、
無線基地局装置は、無線端末装置からの上り回線の伝搬路状況に応じて、無線端末装置の移動度若しくはモビリティ、伝搬路の品質若しくはその変化、伝送効率、ロードバランスのうち予め定められたいずれかひとつ又は複数を求め、該求めた結果に従い、CE−BFモードとCE−SMモードとの間の遷移を判定し、該判定に基づき、スケジューリングを行い、前記第二又は第三の周波数帯を使った通信を行うことを特徴とするセルラ無線通信システム。

【請求項9】
複数のアンテナを使って空間を分割するビームを送信する無線基地局装置と、複数の無線端末装置を備えたセルラ無線通信システムにおける無線基地局装置であって、
システム周波数帯域を分割して、
(1) セル中心の無線端末装置に割り当てる第一の周波数帯と、
(2) セル境界の無線端末装置に割り当て、かつ、特定の方向に強い信号を送信し他の方向に強い信号を送信しないビームフォームを利用し、複数の無線端末装置に対して、少なくとも2つ以上のアンテナからアレイ重みを重じた同一の信号を送信するビームフォーム送信を行うための第二の周波数帯と、
(3) セル境界の無線端末装置に割り当て、かつ、空間多重又はダイバーシチを利用し、少なくとも2つ以上のアンテナから同一無線端末装置又は複数の無線端末装置に対して、各アンテナから異なる又は独立した信号を送信する空間多重送信を行うための第三の周波数帯と、
を用意し、
各無線端末装置の状態に応じて、前記第一乃至第三の周波数帯のいずれかで送信する情報を定めることを特徴とする無線基地局装置。

【請求項10】
複数のアンテナを使って空間を分割するビームを送信する無線基地局装置と、複数の無線端末装置を備えたセルラ無線通信システムにおける無線端末装置であって、
各無線基地局装置により、システム周波数帯域を分割して、
(1) セル中心の無線端末装置に割り当てる第一の周波数帯と、
(2) セル境界の無線端末装置に割り当て、かつ、特定の方向に強い信号を送信し他の方向に強い信号を送信しないビームフォームを利用し、複数の無線端末装置に対して、少なくとも2つ以上のアンテナからアレイ重みを重じた同一の信号を送信するビームフォーム送信を行うための第二の周波数帯と、
(3) セル境界の無線端末装置に割り当て、かつ、空間多重又はダイバーシチを利用し、少なくとも2つ以上のアンテナから同一無線端末装置又は複数の無線端末装置に対して、各アンテナから異なる又は独立した信号を送信する空間多重送信を行うための第三の周波数帯と、
を用意し、
無線端末装置の状態に応じて決定された無線基地局装置からの指示によって、無線基地局装置から前記第一乃至第三の周波数帯のいずれかで送信された信号を受信することを特徴とする無線端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−124673(P2011−124673A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279136(P2009−279136)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】