説明

セルラ移動通信方式

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、周波数利用率の高い大容量のセルラ移動通信方式に関する。
【0002】
【従来の技術】移動通信においては周波数の有効利用が最大の課題であり、このため所謂セルラ方式と呼ばれる移動通信方式が一般的である。これはサービスエリアを複数の基地局でカバーし、一定距離だけ離れた基地局どうしで同一周波数を繰り返して使用することにより周波数利用効率を向上させるものである。1つの基地局のカバーするエリアはセルと呼ばれており、セル半径を小さくするほど、より近い距離で周波数が繰り返せるため周波数利用効率が向上する。
【0003】しかし、この反面、移動局が通信中の基地局から出て、隣接基地局のエリアに移行する機会が多くなる。このとき、通信中の基地局での受信レベルが低下するから通信を継続させるためには、移動局が通信する相手基地局を移行先の基地局に切り替える必要がある。基地局までの有線伝送路の切替えとともに、移動局の周波数を移行先基地局の空きチャネルに切り替える必要があることから、これを通信中チャネル切替えと言い、セルラ方式では必須の制御である。
【0004】図4は従来のセルラ移動通信方式構成の例を示す図であって、1は中央制御局、2〜5は基地局、6〜9は基地局と中央制御局間の伝送路、10〜13はセルである。各基地局はさらに有線通信路により中央制御局1を経て固定電話網(図示せず)に接続される。
【0005】今、移動局がセル11にあり基地局3と通信しているものとする。移動局が移動してセル12に入った時の通信中チャネル切替えの制御動作は次のようになる。
【0006】移動局の移動に伴い受信レベルが規定値以下に低下したことを検出した基地局3は、伝送路7を介して中央制御局1にチャネル切替えを依頼する。これを受け、中央制御局1は基地局3の周辺の基地局2,4,5に対して移動局からの電波を監視するように伝送路6,8,9を介して指示する。基地局2,4,5は当該移動局の使用チャネルを受信して受信レベルを測定し、測定結果を伝送路6,8,9を介して中央制御局1に報告する。これに基づき中央制御局1は報告値を比較して最も高いレベルで受信した基地局を特定する。この場合は基地局4が最大レベル受信局となる。そこで中央制御局1は基地局4に対して空き通信チャネル番号(#Nとする)を通知するように伝送路9を介して指示し、これを受けて基地局4は空き通信チャネル番号#Nを伝送路9を介して中央制御局1に報告する。
【0007】次に、中央制御局1は、基地局3に対して基地局3から移動局に通信チャネル#Nへの切り替え指示信号を送出するよう伝送路7を介して指示すると同時に、基地局4に対して通信チャネル#Nの送受信機をオンとするよう伝送路9を介して指示し、対基地局の有線通信路を基地局3から基地局4の通信チャネル#Nに対応する回線に切り替える。基地局3は移動局に対して通信チャネル#Nへの切り替え指示信号を送出し、これを受けた移動局は指示された通信チャネルに切り替えることにより基地局4との間の通信チャネルを確立することができる。
【0008】この通信中チャネル切替えの制御は、初めに述べたようにセル半径が小さいほど回数が増え、また、移動局の移動速度が速いほどその回数が増加する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したように、従来の方式構成では、通信を行っている基地局で受信レベルの低下を検出してから実際に通信中チャネル切替えが完了するまでには、中央制御局と当該基地局およびその周辺の基地局の間で数回の信号授受とこれに伴う制御が必要であり、多くの時間がかかると言う欠点があった。
【0010】そのため、セル半径が小さい場合あるいは移動局の移動速度が速い場合には、通信中チャネル切替えが完了しない内に隣のセルに移行してしまうことが起こり、通信中チャネル切替えが失敗に終わることがある。従って、これを避けるためにはセル半径を一定以下に小さくできないと言う制約があり、これが周波数利用率向上の限界、従って、システム容量限界の一因となっていた。
【0011】さらに、移動速度の速い自動車電話と移動速度の遅い携帯電話を従来の方式構成で扱う場合、携帯電話の加入者密度の高い市街地では、本来、セル半径を小さくして周波数の繰返し利用を図るべきであるにもかかわらず、上記の点からセル半径を移動速度の速い自動車電話に合わせざるを得ない言う欠点があった。このため、携帯電話の加入者密度の高い基地局はより多くの通信チャネルを備える必要があり、従って、周波数割り当てがいびつになり、周波数利用率はさらに低下する。
【0012】一方、携帯電話を対象としてより小さいセルを用いて従来の方式構成をとる場合、例えば、走行する自動車内で携帯電話を使用すると通信中チャネル切替えが急増するため、システムとして対応することが困難である。また、セルが小さいだけにうまくセルが連続して接していなかったり、少しサービスエリアから外れると急激に受信品質が低下するため、このような場所の携帯機は品質の良いサービスを受けることができない。
【0013】本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、移動速度に関わらず高品質で周波数利用率の高い大容量のセルラ移動通信方式を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明のセルラ移動通信方式は、各々複数の小セルを包含するセルを自己のエリアとする複数の制御基地局と、複数の制御基地局を集中的に制御する集中制御局と、各セル内における複数の小セルにそれぞれ設けられた複数の基地局と、各セルにおける複数の基地局および制御基地局をループ状に接続するループ状伝送路とを設け、各基地局は通信中の移動局の受信品質情報、自局の識別符号および移動局との通信に使用している通信チャネルの番号からなる信号をループ状伝送路に送出し、各基地局はループ状伝送路に接続されている上位基地局からの該信号を受信するとともに下位基地局に中継し、制御基地局は各基地局がループ状伝送路に送出する通信中の移動局の受信品質情報を監視して、受信品質が所定の第1の条件を満たした場合に、通信を行っている当該基地局の通信チャネルから自己のセルに割り当てられている通信チャネル内の空き通信チャネルに切り替えて通信を継続させ、移動局がセルをまたがって移動する場合には、集中制御局が制御基地局間でチャネルを切り替えて通信を継続させ、制御基地局は制御基地局の通信チャネルで通信中の移動局の電波をセル内の各基地局に受信させて各基地局がループ状伝送路に送出する受信品質情報を監視し、受信品質が所定の第2の条件を満たした場合に、最も良好な受信品質の基地局の空き通信チャネルに通信チャネルを切り替えて通信を継続させ、移動局が小セルをまたがって移動する場合には、基地局間でチャネルを切り替えて通信を継続させることを要旨とする。
【0015】
【作用】本発明のセルラ移動通信方式では、複数の小セルを包含するセルを自己のエリアとする制御基地局と各小セルの基地局をループ状に接続するループ状伝送路を設け、各基地局は通信中の移動局の受信品質情報、自局の識別符号および移動局との通信に使用されている通信チャネルの番号からなる信号をループ状伝送路に送出し、各基地局は上位基地局からの該信号を受信するとともに下位基地局に中継することにより、制御基地局と各基地局とが個別にやりとりする従来の方法に比べて信号授受の回数を減らし、更に複数の制御基地局とこれらを集中的に制御する集中制御局を設けて広いサービスエリアをカバーし、制御基地局は小セルの各基地局がループ状伝送路に送出する通信中の移動局の受信品質情報を監視し、受信品質が小セルの基地局で通信を行うことができない低い受信レベルや急激なレベル変動(移動通信では受信レベルの変動速度は移動速度に比例するため、レベル変動が速いほど、移動局の移動速度が速いことに対応する)等のように所定の第1の条件を満たした場合に、通信を行っている当該基地局の通信チャネルから自己のセルに割り当てられている通信チャネル内の空き通信チャネルに切り替えて通信を継続させることにより、走行する自動車内で携帯電話を使用する場合や、小セルが連続してうまく接していなかったり、小セルのサービスエリアから少し外れた場合に、小セルの基地局からエリアの広いセルの基地局に通信チャネルを切り替えて通信を可能とし、また制御基地局は制御基地局の通信チャネルで通信中の移動局の電波をセル内の各基地局に受信させて各基地局がループ状伝送路に送出する受信品質情報を監視し、受信品質が小セルの基地局で通信を行うことができる十分な受信レベル等のように所定の第2の条件を満たした場合に、最も良好な受信品質の基地局の空き通信チャネルに通信チャネルを切り替えて通信を継続させることにより、できるだけセル半径の大きな基地局から小さい基地局に通信チャネルを切り替えるようにしている。
【0016】
【実施例】以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0017】図1は、本発明の一実施例に係わるセルラ移動通信方式の説明図である。同図において、14は集中制御局、15は制御基地局、16は制御基地局のセル、17〜20は基地局、21〜24は各基地局の小セル、25はセル内の各基地局を経て制御基地局に帰ってくるループ伝送路、26は集中制御局と制御基地局間の伝送路、27は集中制御局と他の制御基地局間の伝送路、28は集中制御局と図に現われていない制御基地局間の伝送路である。各基地局にはその小セルエリア内のトラヒックに応じて1つまたは複数の通信チャネルが、また、制御基地局にもセルエリア内のトラヒックに応じて1つまたは複数の通信チャネルが割り当てられている。
【0018】各基地局17〜20は通信中の移動局の受信品質情報、自局の識別符号および移動局との通信に使用している通信チャネルの番号からなる信号をループ伝送路25に送出し、他の基地局はこの信号を受信するとともに中継し、信号の送出元基地局に対して隣接または近接する予め決められた基地局は、信号中の通信チャネルを受信して通信品質をモニタする。制御基地局15は中継される信号を監視し、送出元基地局とこれに隣接または近接する予め決められた基地局の信号が小セルの基地局で通信できない受信品質の劣下や急激なレベル変動の検出を示したときには、自局に割り当てられている通信チャネルの空き通信チャネルに切り替えて通信を継続させる(図2で詳述する)。
【0019】また、制御基地局15は、自局の通信チャネルで通信中の移動局の電波をセル16の内の各基地局17〜20に受信させて該移動局の受信品質情報、自局の識別符号および移動局との通信に使用されている通信チャネルの番号からなる信号をループ伝送路25に送出させ、基地局で通信できる十分な受信品質を検出したときに、通信チャネルを最も良好な受信品質の基地局の空き通信チャネルに切り替えて通信を継続させる(図3で詳述する)。
【0020】図2は本発明の一実施例の第1の動作を説明する図であって、29,30は各移動地点における移動局を、31,32は移動局と通信の相手方の基地局の関係を示す線、33,34は移動局の移動経路を示す線である。今、移動局29が、小セル21内にいて基地局17の通信チャネルで通信を行いながら、矢印33で示すように移動して基地局17の小セルエリアから出たとすると、基地局17、隣接する基地局18、近接する基地局20では十分な通信品質が得られないため、これらの基地局からループ伝送路25に送出された信号は小セルの基地局で通信できない受信品質であることを示す。これを検出した制御基地局15は、自局に割り当てられている通信チャネルの空き通信チャネル番号をループ伝送路25を介して基地局17から移動局30に通知させて通信中チャネル切り替えを行い、通信の継続を可能となる。また、移動局29が自動車に乗り高速に移動する場合、基地局17、隣接する基地局18、近接する基地局20では急激なレベル変動を検出するため、これらの基地局からループ伝送路25に送出された信号は小セルの基地局で対応できないレベル変動であることを示す。これを検出した制御基地局15は上記と同様の通信中チャネル切り替えを行い、通信の継続を可能とする。さらに、移動局30が引き続き34で示すように移動して、隣の制御基地局のセルに移動する場合は集中制御局14が制御基地局15と隣の制御基地局間で通信中チャネル切り替えを行って通信を継続させる。
【0021】図3は本発明の一実施例の第2の動作を説明する図であって、35〜37は各移動地点における移動局を、38〜40は移動局と通信の相手方の基地局の関係を示す線、41,42は移動局の移動経路を示す線である。今、移動局35が、セル16内にいて制御基地局15の通信チャネルで通信を行いながら41で示すように移動して基地局17の小セルエリアに入ったとすると、基地局17では十分な通信品質が得られるため、基地局17からループ伝送路25に送出された信号は小セルの基地局で通信できる受信品質であって、他の基地局18〜20からループ伝送路25に送出された信号よりも良好な受信品質であることを示す。これを検出した制御基地局15は、基地局17に割り当てられている通信チャネルの空き通信チャネル番号を報告するようにループ伝送路25を介して基地局17に指示する。報告を受けた制御基地局15は、移動局36にこれを通知して通信中チャネル切り替えを行い、小セルの基地局17で通信を継続させる。なお、移動局35が、例えば自動車電話であって高速に移動する場合、基地局17〜20では急激なレベル変動を検出するため、ループ伝送路25に送出された信号は小セルの基地局で対応できないレベル変動であることを示すことから、制御基地局15はそのまま通信を自局で継続させる。さらに、移動局36が引き続き42で示すように隣の基地局18のセルに移動する場合、基地局17と基地局18間で通信中チャネル切り替えを行って通信を継続させる。
【0022】以上の説明では、制御基地局として基地局とは独立した局の場合で説明したが、いづれかの基地局が制御基地局の役割を果たす場合にも本発明は適用可能である。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、サービスエリア内において、広いセル内の小セルがうまく連続して接していなかったり、少し小セルのサービスエリアから外れても、小セルの基地局から広いセルの基地局に通信チャネルを切り替えて通信を可能とさせることから、移動速度にかかわらず品質の良いサービスを提供することが可能であり、小セル化が進められることから周波数の有効利用が図れる。さらに、広いセルで通信中にセル内の小セルの基地局で対応できる受信品質情報を検出したときは、通信チャネルを当該基地局の空き通信チャネルに切り替えて通信を継続させるので、すなわちできるだけセル半径の大きい基地局から小さい基地局に通信チャネルを切り替えることから周波数の有効利用が図られ、大容量のシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係わるセルラ移動通信方式の説明図である。
【図2】図1に示すセルラ移動通信方式の第1の動作を示す説明図である。
【図3】図1に示すセルラ移動通信方式の第2の動作を示す説明図である。
【図4】従来のセルラ移動通信方式の説明図である。
【符号の説明】
14 集中制御局
15 制御基地局
16 セル
17,18,19,20 基地局
21,22,23,24 小セル
25 ループ状伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 各々複数の小セルを包含するセルを自己のエリアとする複数の制御基地局と、複数の制御基地局を集中的に制御する集中制御局と、各セル内における複数の小セルにそれぞれ設けられた複数の基地局と、各セルにおける複数の基地局および制御基地局をループ状に接続するループ状伝送路とを設け、各基地局は通信中の移動局の受信品質情報、自局の識別符号および移動局との通信に使用している通信チャネルの番号からなる信号をループ状伝送路に送出し、各基地局はループ状伝送路に接続されている上記基地局からの該信号を受信するとともに下位基地局に中継し、制御基地局は各基地局がループ状伝送路に送出する通信中の移動局の受信品質情報を監視して、受信品質が所定の第1の条件を満たした場合に、通信を行っている当該基地局の通信チャネルから自己のセルに割り当てられている通信チャネル内の空き通信チャネルに切り替えて通信を継続させ、移動局がセルをまたがって移動する場合には、集中制御局が制御基地局間でチャネルを切り替えて通信を継続させ、制御基地局は制御基地局の通信チャネルで通信中の移動局の電波をセル内の各基地局に受信させて各基地局がループ状伝送路に送出する受信品質情報を監視し、受信品質が所定の第2の条件を満たした場合に、最も良好な受信品質の基地局の空き通信チャネルに通信チャネルを切り替えて通信を継続させ、移動局が小セルをまたがって移動する場合には、基地局間でチャネルを切り替えて通信を継続させることを特徴とするセルラ移動通信方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】第2946492号
【登録日】平成11年(1999)7月2日
【発行日】平成11年(1999)9月6日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−212169
【出願日】平成3年(1991)8月23日
【公開番号】特開平5−55988
【公開日】平成5年(1993)3月5日
【審査請求日】平成9年(1997)9月11日
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【上記1名の代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外1名)
【出願人】(392026693)エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社 (5,876)
【上記1名の代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
【参考文献】
【文献】特開 平3−73627(JP,A)
【文献】特開 平2−143725(JP,A)