説明

セルロースアシレートフイルム並びにそれを用いた光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置

【課題】光学的異方性(Re、Rth)が小さく光学的等方性で、光学的異方性(Re、Rth)の波長分散も小さいセルロースアシレートフイルム、とくに、光学的異方性低下剤の添加量が少なくかつ光学的異方性の小さいセルロースアシレートフイルムを提供すること。さらに、このセルロースアシレートフイルムを用いた優れた光学特性を有する光学補償フイルム、偏光板などの光学材料、および液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】正面レターデーション値及び膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)がそれぞれ0≦Re(630)≦10|Rth(630)|≦25及び|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35であって、残留硫酸量(硫黄元素の含有量として)が30〜150ppmであるセルロースアシレートフイルム。また、このフイルムを用いた光学補償フイルム、偏光板などの光学材料、およびこれらを用いた液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に有用なセルロースアシレートフイルムおよびその溶液ドープ調製方法に関するものである。また、さらにそれを用いた光学補償フイルム、偏光板などの光学材料および液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロースアシレートフイルムはその強靭性と難燃性から写真用支持体や各種光学材料に用いられてきた。特に、近年は液晶表示装置用の光学透明フイルムとして多く用いられている。セルロースアシレートフイルムは、光学的に透明性が高いことと、光学的に等方性が高いことから、液晶表示装置のように偏光を取り扱う装置用の光学材料として優れており、これまで偏光子の保護フイルムや、斜め方向からの見た表示を良化(視野角補償)できる光学補償フイルムの支持体として用いられてきた。
【0003】
液晶表示装置用の部材のひとつである偏光板には偏光子の少なくとも片側に偏光子の保護フイルムが貼合によって形成されている。一般的な偏光子は延伸されたポリビニルアルコール(PVA)系フイルムをヨウ素または二色性色素で染色することにより得られる。多くの場合、偏光子の保護フイルムとしてはPVAに対して直接貼り合わせることができる、セルロースアシレートフイルム、なかでもトリアセチルセルロースフイルムが用いられている。偏光子の保護フイルムは、光学的等方性に優れることが重要であり、偏光子の保護フイルムの光学特性が偏光板の特性を大きく左右する。
【0004】
最近の液晶表示装置においては、視野角特性の改善がより強く要求されるようになっており、偏光子の保護フイルムや光学補償フイルムの支持体などの光学的に透明なフイルムは、より光学的に等方性であることが求められている。光学的に等方性であるとは、光学フイルムの複屈折と厚みの積で表されるレターデーション値が小さいことが重要である。とりわけ、斜め方向からの表示良化のためには、正面方向のレターデーション(Re)だけでなく、膜厚方向のレターデーション(Rth)を小さくする必要がある。具体的には光学透明フイルムの光学特性を評価した際に、フイルム正面から測定したReが小さく、角度を変えて測定してもそのReが変化しないことが要求される。
【0005】
これまでに、正面のReを小さくしたセルロースアシレートフイルムはあったが、角度によるRe変化が小さい、すなわちRthが小さいセルロースアシレートフイルムは作製が難しかった。そこでセルロースアシレートフイルムの代わりにポリカーボネート系フイルムや熱可塑性シクロオレフィンフイルムを用いて、Reの角度変化の小さい光学透明フイルムの提案がされている(例えば、特許文献1,2,製品としてはZEONOR(日本ゼオン社製)や、ARTON(JSR社製)など)。しかし、これらの光学透明フイルムは、偏光子の保護フイルムとして使用する場合、フイルムが疎水的なためにPVAとの貼合性に問題がある。またフイルム面内全体の光学特性が不均一であることも問題である。したがってPVAへの貼合適正に優れるセルロースアシレートフイルムを、より光学的異方性を低下させて改良することが強く望まれている。具体的には、セルロースアシレートフイルムの正面のReをほぼゼロとし、またレターデーションの角度変化も小さい、すなわちRthもほぼゼロとした光学的に等方性である光学的に透明なフイルムが求められている。
【0006】
セルロースアシレートフィルムの製造において、一般的に製膜性能を良化するため可塑剤と呼ばれる化合物が添加される。可塑剤の種類としては、リン酸トリフェニル、リン酸ビフェニルジフェニルのようなリン酸トリエステル、フタル酸エステル類などが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。これら可塑剤の中には、セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる効果を有するものが知られており、例えば、特定の脂肪酸エステル類が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、従来知られているこれらの化合物を用いたセルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる効果は十分とはいえない。またフイルム中に化合物を多量に添加した場合に、フイルムの面状が悪化し、光学的ムラが発生しうるという懸念もあり、化合物に添加によらずに光学的異方性を低下させる方法が求められている。
【0007】
また、最近の液晶表示装置においては、表示色味の改善も要求されるようになっている。そのため偏光子の保護フィルムや光学補償フィルムの支持体などの光学的に透明なフィルムは、波長400〜800nmの可視領域でReやRthを小さくするだけでなく、波長によるReやRthの変化、すなわち波長分散を小さくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−318233号公報
【特許文献2】特開2002−328233号公報
【特許文献3】特開2001−247717号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】プラスチック材料講座、第17巻、日刊工業新聞社、「繊維素系樹脂」、121頁(昭和45年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1の課題は、光学的異方性(Re、Rth)が小さく実質的に光学的等方性であり、光学的異方性(Re、Rth)の波長分散が小さい光学特性を有するセルロースアシレートフイルムを提供することである。また、光学的異方性低下剤の添加量をできるだけ少なくした光学的異方性の小さいセルロースアシレートフイルムを安定して提供することである。
本発明の第2の課題は、光学的異方性が小さく、波長分散が小さいセルロースアシレートフイルムにより作製した光学補償フイルム、偏光板などの光学材料が視野角特性に優れるものであることを示すこと、およびこれらを用いた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、高分子フイルム内での面内および膜厚方向の配向を抑制する化合物を用いて光学的異方性を十分に低下させることが可能なこと、さらに酢化度61.0〜62.5の高酢化度セルロースアシレートを組合わせて用いることにより、フイルムの光学的異方性をさらに低下させることができることを見出した。また残留硫酸量(硫黄元素の含有量として)が30〜150ppmになるようにセルロースアシレートフイルムを製造することによって、バンド表面から流延したフイルムを剥離する際の剥離抵抗を低減させることが可能となり、その結果として、高いフィルム生産性を実現するだけでなく、光学的異方性(特に正面レターデーション:Re)がより小さく実質的に光学的等方性であり、耐熱性にも優れたセルロースアシレートフイルムを提供できることを見出した。
【0012】
本発明の発明者らは、上記に加えてさらに、アルカリ土類金属の含有量が0〜60ppmになるようにセルロースアシレートを製造することによって、流延バンド表面からのフイルム剥離抵抗をさらに低減させることができ、フィルムの正面レターデーションを一層低減させ、プレートアウトといわれるセルロースアシレートフィルムの連続製膜中の汚れも低減できることを見出した。
【0013】
さらに本発明の発明者らは、上記光学的異方性が小さく波長分散が小さいセルロースアシレートフイルムに光学的異方性層を付設させることにより、視野角特性に優れた光学補償フイルムを提供できることを見出した。
【0014】
本発明は、これらの新たに見出した発見に基づいてなされたもので、具体的には、以下に記載するセルロースアシレートフイルム、光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置であり、これらにより、本発明の課題が達成された。
(1)下記式(I)および(II)をみたし、かつ残留硫酸量(硫黄元素の含有量として)が30〜150ppmであることを特徴とするセルロースアシレートフイルム。
(I)0≦Re(630)≦10かつ|Rth(630)|≦25
(II)|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
【0015】
(2)アルカリ土類金属の含有量が0〜60ppmであることを特徴とする1に記載のセルロースアシレートフイルム。
(3)平均酢化度が61.0〜62.5%であることを特徴とする1または2に記載のセルロースアシレートフイルム。
(4)綿花リンターを主原料とすることを特徴とする1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフイルム。
(5)下記式(III)、(IV)を満たす少なくとも一種以上の化合物を含有することを特徴とする1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(III)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(IV)0.1≦A≦30
[式中、Rth(A)はRthを低下させる化合物をA質量%含有したフィルムのRth(630)、Rth(0)はRthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(630)である。またAはフィルム原料ポリマーの質量に対するRthを低下させる化合物の質量(%)である。]
【0016】
(6)請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフイルムに、Re(630)が0〜200nmかつ|Rth(630)|が0〜400nmの光学異方性層を設けてなることを特徴とする光学補償フイルム。
(7)光学異方性層がディスコティック液晶層を含有することを特徴とする6に記載の光学補償フイルム。
(8)光学異方性層が棒状液晶層を含有することを特徴とする6または7に記載の光学補償フイルム。
(9)光学異方性層がポリマーフイルムを含有することを特徴とする6〜8のいずれかに記載の光学補償フイルム。
【0017】
(10)1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフイルム、又は6〜9のいずれかに記載の光学補償フイルムを少なくとも1枚、偏光子の保護フイルムとしたことを特徴とする偏光板。
(11)表面にハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けたことを特徴とする10に記載の偏光板。
(12)1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフイルム、又は6〜9のいずれかに記載の光学補償フイルム及び10または11に記載の偏光板のいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
(13)1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフイルム、又は6〜9のいずれかに記載の光学補償フイルム及び10または11に記載の偏光板のいずれかを用いたことを特徴とするVAまたはIPS液晶表示装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明者の研究により、光学異方性が小さいセルロースアシレートフィルムが得られた。さらに総硫酸量30〜150ppmのセルロースアシレートを用いることでフィルムの支持体からの剥離性が向上し、とくに面内レターデーションが小さく実質的に光学等方的なセルロースアシレートフィルムが生産性よく得られる。さらにセルロースアシレートフイルムの平均酢化度、アルカリ土類金属含有量、Rthを低下させる化合物の含有を上記に規定した範囲とした場合には、上記効果は一層顕著に現れる。本発明の光学的に等方的なフイルムを用いることにより視野角特性に優れる光学補償フイルム、偏光板などの光学材料、およびこれらを用いた液晶表示装置を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的態様について詳細に説明する。以下の本発明の記述において、セルロースアシレート中またはセルロースアシレートフィルム中の含有成分量、例えば残留硫酸量、微量金属成分量など、は当業界の慣例に従ってセルロースアシレートまたはセルロースアシレートフィルムに対する質量基準の「ppm」によって記述するが、これはセルロースアシレートまたはセルロースアシレートフィルムに対する「mg/kg」と同じである。
【0020】
「残留硫酸量」
本発明における残留硫酸量とは、セルロースアシレートまたはセルロースアシレートフィルム中の残留硫酸量を硫黄元素の含有量として算出した数値を指すものとする。本発明における「残留硫酸量」とは、セルロースに結合した硫酸(硫酸エステル、スルホン酸基として結合した硫酸成分)、遊離の硫酸、硫酸塩などに対応する硫酸を総称し、「総硫酸」という場合がある。また本発明においては反応系中に硫酸成分(硫酸エステル、スルホン酸基)を有する添加剤を剥離剤として使用することが可能であり、その場合にも該剥離剤由来の硫酸は残留硫酸に含まれる。一方で上記硫酸成分を有しない含硫黄添加剤については残留硫酸量に含まれないものとする。残留硫酸量は、セルロースアシレート、及びセルロースアシレートフィルム試料を用いてICP発光分光分析法(ICP−OES)により精度良く簡便に算出することができる。セルロースアシレート中の残留硫酸量は、メチレンクロライド等の良溶媒でセルロースアシレートを溶解させたのち、ICP−OESで測定し硫黄元素含有量として算出することができる。また、セルロースアシレートフィルム試料の残留硫酸量についても、同様の手法により硫黄元素含有量として算出することができる。ただしフィルム試料が硫酸成分(硫酸エステル基、スルホン酸基を意味する)を有さない含硫黄添加剤を含有する場合には、まずフィルム中の硫黄含有量Aを測定する。次にTHF(テトラヒドロフラン)等の良溶媒を用いて該添加剤をフィルム中から抽出し、液体クロマトグラフィーを用いて精製し、含硫黄添加剤の添加量を求める。該添加剤の構造式から含硫黄添加剤由来の硫黄量Bを算出し、フィルムの硫黄含有量Aから硫黄含有量Bを引いた値からセルロースアシレートフィルムの残留硫酸量(硫黄元素含有量として)を算出する。これにより、(例えば、光学的異方性低下剤として)硫酸構造を有しない添加剤を用いた場合には、該添加剤由来の硫黄元素含有量は残留硫酸量には含まないものとする。
【0021】
セルロースアシレート中の総硫酸量が低下すると、セルロースアシレート溶液を初期乾燥したウェブを金属バンド上から剥離する際の剥離抵抗が上昇する。その結果、溶剤を多く含んだセルロースアシレートからなるウェブが剥離時に長手方向に伸張、配向し、面内レターデーションが増加するという問題が発生する。特に残留硫酸量が25ppm以下となると流延フィルムを金属バンドから剥離する際の剥離抵抗が顕著に高くなり、正面レターデーションが大きく悪化した。本発明は、フィルム中の残留硫酸量を多くすることでこの問題を回避したことが特徴であり、好ましい残留硫酸量の範囲は30〜150ppmであり、より好ましくは30〜100ppmである。残留硫酸量が150ppmより高くなると後述する耐熱性が悪化し、加熱条件下においてフイルムが黄変する懸念が発生するため、好ましくない。
本発明においては、光学異方性を小さくするために、高酢化度のセルロースアシレートを用いることが好適態様であるが、高酢化度のセルロースアシレートはその残留硫酸量が少なくなりがちな傾向があり、それを用いてフィルムを製膜する際に剥離抵抗が大きくなり問題となることがわかった。したがって高酢化度セルロースアシレートを用いる際に、本発明を利用すると、面内レターデーションを小さくしつつ剥離抵抗を下げることができ非常に有効である。
【0022】
一方で、剥離抵抗が大きいと生産性が上げられない問題に対して、剥離抵抗を下げる目的で剥離促進剤を用いることができるが、該促進剤添加量を増やした場合にウェブを流延するダイの内部や、乾燥ダクト内部に凝集物を発生し汚染する懸念がある。これについては、本発明のセルロースアシレートフイルムはフィルム中の残留硫酸量が多くすることで、該剥離剤をできるだけ使用せずに簡便に剥離抵抗を下げられることが特徴である。ただしセルロースアシレート中の残留硫酸量が少ない場合には、硫酸、硫酸イオンを含有する剥離剤を添加し、残留硫酸量の範囲を30〜150ppmとする方法によっても本発明を達成することができる。
【0023】
なお、本明細書に用いられる「ppm」は、前記したように当業界で慣用的に用いられていて、セルロースアシレートフイルムに対する質量基準の値であり、「mg/kg」と同価である。
【0024】
「アルカリ土類金属の含有量」
セルロースアシレートは、通常、アルカリ金属(カリウム、ナトリウムなど)やアルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムなど)などの金属成分を含んでいる。一般にこれらの金属成分は金属バンド面との親和性が高く、ウェブを金属バンド面から剥離する際に剥離抵抗を悪化させる原因となる。一方で、硫酸成分が多いセルロースアシレートはセルロースアシレートの加水分解反応を促進し、耐熱性、耐湿熱安定性(イエローステイン)等を悪化させる。セルロースアシレートに含まれる該金属成分量は、セルロースアシレートの硫酸成分を中和して錯体を形成し、加水分解反応を起こしにくくすることで耐熱性を向上させる効果がある。したがって、本発明におけるセルロースアシレートは剥離抵抗を悪化させない最少量の硫酸成分を含有し、かつ金属成分(特にアルカリ土類金属)の含有量が少なくすることで、剥離抵抗と耐熱性に優れた特長を有する。本発明においては、金属成分の中でもアルカリ金属にくらべてアルカリ土類金属成分量が多いことに注目し、特にアルカリ土類金属残存量を調整することを目的とする。ここでアルカリ土類金属原子の含有量は、X線光電子分光分析装置(XPS)を用いて測定することができる。本発明において、セルロースアシレート中のアルカリ土類金属は、酢化度とは特に相関は見られなかった。アルカリ土類金属(特にCa)の量が少ないほど剥離抵抗が小さくなり、正面レターデーションReをさらに低減することができる。本発明においてはアルカリ土類金属の好ましい範囲は0〜60ppmである、より好ましくは0〜40ppm、さらに好ましくは1〜20ppmである。70ppmを超えると剥離抵抗が悪化し、正面レターデーションReが高くなるので好ましくない。なお、本発明のアルカリ土類金属の含有量はセルロースアシレートフイルム試料を用いて算出する。主に原料であるセルロースアシレート中のアルカリ土類金属の含有量を調整することで、該フィルム中のアルカリ土類金属の含有量を調整することができる。
【0025】
本発明のセルロースエステルは微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成する事により不要物を形成する様な金属イオンの量は少ないことが好ましい。但し実際には各成分間の相互作用やその他の因子も幾分か関係するので単純に少なければいいというようにはなっていないが、多すぎる値では問題を生ずる。
【0026】
鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。これは綿花リンター、木材パルプいずれの原料を用いたものでも同じように、少ないことが好ましい。
なお、本明細書に用いられる「ppm」は、前記したように当業界で慣用的に用いられていて、セルロースアシレートフイルムに対する質量基準の値であり、「mg/kg」と同価である。
【0027】
カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と又、多くの配位子と配位化合物すなわち、錯体を形成しやすく、多くの不要なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
【0028】
カルシウム(Ca)成分は実用上は少ないほど好ましいが、綿花リンターを用いた場合と木材パルプを用いた場合で最適値は異なる。
なお、本明細書に用いられる「ppm」は、前記したように当業界で慣用的に用いられていて、セルロースアシレートフイルムに対する質量基準の値であり、「mg/kg」と同価である。
【0029】
マグネシウム(Mg)成分については、やはりカルシウムと同様に地下水中に多く含まれているものであり、やはり不要物の原因となるものである。これらのマグネシウム成分は、やはり多すぎると不溶分を生ずるので、多すぎることは好ましくない。但し、余りに少なすぎても、特性的にはよくない。
【0030】
(セルロースアシレートフィルムの耐久性)
本発明における耐久性は、液晶表示装置に本発明のフィルムが使用された場合に、いわゆるカーベキューと言われる自家用車内等の高温条件下でフィルムが変色・改質する現象に相当する。したがって、耐久性が悪いフィルムほど高温条件下でフィルムが変色しやすいことを意味し、具体的には以下の方法で測定される。すなわちセルロースエステル試料片40mm角1枚を、140℃乾燥セル庫内に40時間静置する。耐熱試験後の試料片を白色透過光にて目視観察して、以下の評価を行った。
○ : 5枚重ねたフィルムを透過で着色を見て、着色が認められない場合
△ : 上記5枚重ね条件で、僅かに着色が見られるが1枚では全く着色が認められない場合
× : 5枚で著しく着色が見られ、1枚でも着色が認められる場合
【0031】
[レターデーション、Re、Rth]
本明細書において、Re、Rthは各々、波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。
【0032】
本発明のセルロースアシレートフイルムの光学的異方性、特に面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを、下記式(I)または(II)をみたす範囲であることが好ましい。
(I)0≦Re(630)≦10
(II)|Rth(630)|≦25上記式(I)、(II)は
(I)0≦Re(630)≦5
(II)|Rth(630)|≦10であることがより好ましく、
(I)0≦Re(630)≦3
(II)|Rth(630)|≦5であることが特に好ましい。
【0033】
(レターデーションの波長分散|Re(400)−Re(700)|、及び|Rth(400)−Rth(700)|)
本発明においてレターデーションの波長分散とは、上記方法により算出した波長400nm、及び700nmにおけるRe、及びRthのそれぞれの差の絶対値により求めた。レターデーション波長分散が小さいフィルムほど、斜め方向から見たときのディスプレイの色味変化が小さく、視認性に優れた表示装置を作製することができる。
【0034】
本発明のセルロースアシレートフイルムの光学的異方性、特に波長400nm、及び700nmにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを、が下記式(I)または(II)をみたす範囲であることが好ましい。
(I)|Re(400)−Re(700)|≦10
(II)|Rth(400)−Rth(700)|≦35上記式(I)、(II)は
(I)|Re(400)−Re(700)|≦7
(II)|Rth(400)−Rth(700)|≦25であることがより好ましく、
(I)|Re(400)−Re(700)|≦5
(II)|Rth(400)−Rth(700)|≦15であることが特に好ましい。
【0035】
[セルロースアシレート原料綿]
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に見られる。
本発明においては、剥離性を低下させるヘミセルロース(キシラン,グルコマンナンなど)含有量が少ない綿花リンター綿由来のセルロースアシレートを用いることが好ましい。
【0036】
[セルロースアシレート置換度、平均酢化度]
次に上述のセルロースを原料に製造される本発明のセルロースアシレートについて記載する。本発明のセルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換度はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度、置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度、平均酢化度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。
【0037】
上述のように本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への平均酢化度については特に限定されないが、セルロースの水酸基への平均酢化度が61.0〜62.5であることがのぞましい。さらには置換度が61.5〜62.5であることがのぞましく、62.0〜62.5であることがよりのぞましい。セルロースアシレートの平均酢化度が61.0〜62.5とこれまでよりさらに酢化度の高い綿を用いることで、光学的異方性ReがゼロかつRthがゼロに近くなるようにすることができ、フイルム面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物の添加量を従来よりも低減できるようになる。
【0038】
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族アシル基でもアリルアシル基でもよく特に限定されず、セルロースユニットへの置換形態では、単一アシル基でも2種類以上のアシル基の混合エステルでもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルの各基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどの各基が好ましく、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基がより好ましい。
【0039】
上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基のうちで、実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなる場合においては、その全置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフイルムの光学異方性が低下できることがわかった。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、さらにのぞましくは2.65〜3.00である。
【0040】
[セルロースアシレートの残留硫酸量]
本発明のセルロースアシレートフィルムは残留硫酸量を30〜150ppm含むことを特徴とし、その結果として残留溶媒が多いウェブについて、剥離剤を用いずに製膜時の支持体からの剥離抵抗を低減でき、生産性を大幅に向上させる効果を奏する。セルロースアシレートフィルム中の残留硫酸量を規定範囲内に調節する方法のひとつとして、原料として使用するセルロースアシレート中の残留硫酸量を調節する方法が挙げられる。
したがって、原料綿として残留硫酸量が通常よりも多いセルロースアシレートを用いることで、本発明を達成することが出来、その際のセルロースアシレートの残留硫酸量としては30〜160ppmの範囲にあることが好ましい。より好ましくは30〜130ppmであり、特に好ましくは35〜100ppmである。
【0041】
ただし、セルロースアシレートフィルム中の残留硫酸量を規定範囲内に調節する別の方法として、原料綿として残留硫酸量が少ないセルロースアシレートを用いた場合においても、硫酸構造を有する含硫黄添加剤を添加することで同様に剥離抵抗を下げることが可能である。この場合にもフィルム中残留硫酸量(硫黄元素の含有量として)が30〜150ppmの範囲にあることが好ましい。
【0042】
[セルロースアシレートのアルカリ土類金属含有量]
本発明のセルロースアシレートフィルムはアルカリ土類金属含有量が0〜60ppmであることが好適態様である。セルロースアシレートフィルム中のアルカリ土類金属含有量を規定範囲内に調節する方法のひとつとして、原料として使用するセルロースアシレート中のアルカリ土類金属含有量を調節する方法が挙げられる。
本発明において、セルロースアシレート中のアルカリ土類金属含有量としては、0〜65ppmであることが好ましく、0〜45ppmであることがより好ましく、0〜22ppmであることがさらに好ましい。
【0043】
[セルロースアシレートの重合度]
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアシレートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフイルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフイルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538に詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜4.0であることが好ましく、2.0〜3.5であることがさらに好ましく、2.3〜3.3であることが最も好ましい。
【0044】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜20質量部に調整することが好ましい。また、より好ましくは0.5〜17.5質量部で、さらに好ましくは0.5〜15質量部である。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
【0045】
本発明のセルロースアシレートの製造においては、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0046】
本発明に用いるセルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
【0047】
[セルロースアシレートへの添加剤]
本発明では、セルロースアシレート溶液に、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤、剥離剤など)を加えることができる。これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0048】
[セルロースアシレートフイルムの光学的異方性を調整する化合物の構造的特徴]
まずセルロースアシレートフイルムの光学的異方性を調整する化合物について説明する。光学異方性を調整する化合物とは、レターデーションの絶対値を増加させる化合物と低下させる化合物を総称するものである。本発明の発明者らは、フイルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて光学的異方性を十分に低下させ、ReがゼロかつRthがゼロに近くすることができた。以後、本発明においては光学異方性を低下させる化合物(光学異方性低下剤ということもある)について、特に言及することととする。光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
本発明のセルロースアシレートフイルムの光学的異方性、特にフィルム膜厚方向のレターデーションRthを低下させる化合物を、下記式(I)、(II)をみたす範囲内で少なくとも一種含有することがのぞましい。
【0049】
(I)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(II)0.1≦A≦30上記式(I)、(II)は
(I)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−2.0
(II)0.5≦A≦25であることがより好ましく、
(I)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−3.0
(II)1.0≦A≦20であることが特に好ましい。
【0050】
(LogP値)
本発明のセルロースアシレートフイルムを作製するにあたっては、上述のようにフイルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール/水分配係数(logP値)が0ないし7である化合物が好ましい。logP値が7を超える化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に乏しく、フイルムの白濁や粉吹きを生じやすい。また、logP値が0よりも小さな化合物は親水性が高いために、セルロースアシレートフイルムの耐水性を悪化させる場合がある。logP値としてさらに好ましい範囲は1ないし6であり、特に好ましい範囲は1.5ないし5である。
オクタノール/水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。
また、オクタノール/水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.− Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。
【0051】
[光学的異方性を低下させる化合物]
光学異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有しても良いし、含有しなくても良い。また光学異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造やポリマー構造でも良い。
光学異方性を低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフイルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
光学異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
光学異方性を低下させる化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0052】
光学異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフイルムの中央部における該化合物の平均含有率の80−99%である。本発明の化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面および中心部の化合物量を測定して求めることができる。
【0053】
以下に本発明で好ましく用いられる、セルロースアシレートフイルムの光学異方性を低下させる化合物の具体例を示すが、本発明はこれら化合物に限定されない。
一般式(1)の化合物について説明する。
【0054】
【化1】

【0055】
一般式(1)において、R1113はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の脂肪族基を表す。R1113は互いに連結して環を形成してもよい。
1113について詳しく説明する。R1113は好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である脂肪族基である。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基またはアルキニル基である。例として、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどの各基が挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどの各基が挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基などが挙げられる。
【0056】
1113で表される脂肪族基は置換されていてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。
【0057】
これらの基はさらに組み合わされて複合置換基を形成してもよく、このような置換基の例としては、エトキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、エトキシカルボニルエチル基などを挙げることができる。また、R1113は置換基としてリン酸エステル基を含有することもでき、一般式(1)の化合物は同一分子中に複数のリン酸エステル基を有することも可能である。
一般式(2)および(3)の化合物について説明する。
【0058】
【化2】

【0059】
一般式(2)および(3)において、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、−NR25−を表し、R25は水素原子またはアルキル基を表す。Zを含んで構成される5または6員環は置換基を有していても良く、複数の置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。Zを含んで構成される5または6員環の例としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピロリジン、ピペリジン、インドリン、イソインドリン、クロマン、イソクロマン、テトラヒドロ−2−フラノン、テトラヒドロ−2−ピロン、4−ブタンラクタム、6−ヘキサノラクタムなどの各環を挙げることができる。
また、Zを含んで構成される5または6員環は、ラクトン構造またはラクタム構造、すなわち、Zの隣接炭素にオキソ基を有する環状エステルまたは環状アミド構造を含む。このような環状エステルまたは環状アミド構造の例としては、2−ピロリドン、2−ピペリドン、5−ペンタノリド、6−ヘキサノリドを挙げることができる。
【0060】
25は水素原子または、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であるアルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)を表す。R25で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどの各基を挙げることができる。R25で表されるアルキル基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては前記のR1113に置換していても良い基を挙げることができる。
【0061】
2122はそれぞれ独立に、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表す。エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどの各基が例示できる。アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどの各基が例示できる。
【0062】
アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、n−プロピルカルボキサミド、イソプロピルカルボキサミド、n−ブチルカルボキサミド、t−ブチルカルボキサミド、iso−ブチルカルボキサミド、sec−ブチルカルボキサミド、n−ペンチルカルボキサミド、t−アミルカルボキサミド、n−ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、1−エチルペンチルカルボキサミド、1−エチルプロピルカルボキサミド、n−ヘプチルカルボキサミド、n−オクチルカルボキサミド、1−アダマンタンカルボキサミド、2−アダマンタンカルボキサミド、n−ノニルカルボキサミド、n−ドデシルカルボキサミド、n−ペンタカルボキサミド、n−ヘキサデシルカルボキサミドなどの各基が例示できる。
【0063】
カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどの各基が例示できる。Y2122は互いに連結して環を形成してもよい。Y2122はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR1113に置換していても良い基を挙げることができる。
一般式(4)〜(12)の化合物について説明する。
【0064】
【化3】

【0065】
一般式(4)〜(12)において、Y3170はそれぞれ独立に、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、カルバモイル基またはヒドロキシ基を表す。エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどの各基が挙げられる。
【0066】
アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニルなど、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどの各基が挙げられる。
【0067】
アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、n−プロピルカルボキサミド、イソプロピルカルボキサミド、n−ブチルカルボキサミド、t−ブチルカルボキサミド、iso−ブチルカルボキサミド、sec−ブチルカルボキサミド、n−ペンチルカルボキサミド、t−アミルカルボキサミド、n−ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、1−エチルペンチルカルボキサミド、1−エチルプロピルカルボキサミド、n−ヘプチルカルボキサミド、n−オクチルカルボキサミド、1−アダマンタンカルボキサミド、2−アダマンタンカルボキサミド、n−ノニルカルボキサミド、n−ドデシルカルボキサミド、n−ペンタカルボキサミド、n−ヘキサデシルカルボキサミドなどの各基が挙げられる。
【0068】
カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどの各基が挙げられる。Y3170はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR1113に置換していても良い基を挙げることができる。
【0069】
3143はそれぞれ独立に水素原子または、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である脂肪族基を表す。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基またはアルキニル基である。アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどが挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどの各基が挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基などを挙げることができる。V3143はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR1113に置換していても良い基を挙げることができる。
【0070】
3180はそれぞれ独立に、原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20の2価の飽和の連結基を表す。ここで、L3180の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。L3177の好ましい例としては、アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、メチルエチレン、エチルエチレンなど)、環式の2価の基(例えば、cis−1,4−シクロヘキシレン、trans−1,4−シクロヘキシレン、1,3−シクロペンチリデンなど)、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、スルホン、スルホキシド、スルフィド、スルホンアミド、ウレイレン、チオウレイレンなどの各基を挙げることができる。これらの2価の基は互いに結合して二価の複合基を形成してもよく、複合置換基の例としては、−(CHO(CH−、−(CHO(CHO(CH)−、−(CHS(CH−、−(CHOCO(CH−などを挙げることができる。L3180は、さらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては、前記のR1113に置換していても良い基を挙げることができる。
【0071】
一般式(4)〜(12)においてY3170、V3143およびL3180の組み合わせにより形成される化合物の好ましい例としては、クエン酸エステル(例えば、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、O−アセチルクエン酸トリ(エチルオキシカルボニルメチレン)エステルなど)、オレイン酸エステル(例えば、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸フェニル、オレイン酸シクロヘキシル、オレイン酸オクチルなど)、リシノール酸エステル(例えばリシノール酸メチルアセチルなど)、セバシン酸エステル(例えばセバシン酸ジブチルなど)、
【0072】
グリセリンのカルボン酸エステル(例えば、トリアセチン、トリブチリンなど)、グリコール酸エステル(例えば、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルメチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートなど)、ペンタエリスリトールのカルボン酸エステル(例えば、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラブチレートなど)、ジペンタエリスリトールのカルボン酸エステル(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサブチレート、ジペンタエリスリトールテトラアセテートなど)、トリメチロールプロパンのカルボン酸エステル類(トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパンジアセテートモノプロピオネート、トリメチロールプロパントリプロピオネート、トリメチロールプロパントリブチレート、トリメチロールプロパントリピバロエート、トリメチロールプロパントリ(t−ブチルアセテート)、トリメチロールプロパンジ2−エチルヘキサネート、トリメチロールプロパンテトラ2−エチルヘキサネート、トリメチロールプロパンジアセテートモノオクタネート、トリメチロールプロパントリオクタネート、トリメチロールプロパントリ(シクロヘキサンカルボキシレート)など)、
【0073】
特開平11−246704公報に記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報に記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報に記載のクエン酸エステル類、ピロリドンカルボン酸エステル類(2−ピロリドン−5−カルボン酸メチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸エチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸ブチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸2−エチルヘキシル)、シクロヘキサンジカルボン酸エステル(cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、trans−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、cis−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチルなど)、キシリトールカルボン酸エステル(キシリトールペンタアセテート、キシリトールテトラアセテート、キシリトールペンタプロピオネートなど)などが挙げられる。
【0074】
以下に本発明の一般式(1)ないし(12)で表される化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(1)については化4〜7に化合物(C−1〜C−76)を例示し、一般式(2)〜(12)については化8〜12に化合物(C−201〜C−231、C−401〜C−448)を例示した。表記載あるいは括弧内に記載のlogPの値は、Crippen’s fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)により求めたものである。
【0075】
【化4】

【0076】
【化5】

【0077】
【化6】

【0078】
【化7】

【0079】
【化8】

【0080】
【化9】

【0081】
【化10】

【0082】
【化11】

【0083】
【化12】

【0084】
一般式(13)および(14)の化合物について説明する。
【0085】
【化13】

【0086】
上記一般式(13)において、Rはアルキル基またはアリール基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、R、RおよびRの炭素原子数の総和が10以上であることが特に好ましい。また、一般式(14)中、RおよびRは、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。また、RおよびRの炭素原子数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が特に好ましい。
【0087】
また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1乃至25のものが好ましく、6乃至25のものがより好ましく、6乃至20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシルなどの各基)が特に好ましい。アリール基としては炭素原子数が6乃至30のものが好ましく、6乃至24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニルなどの各基)が特に好ましい。一般式(13)または一般式(14)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0088】
【化14】

【0089】
【化15】

【0090】
【化16】

【0091】
【化17】

【0092】
【化18】

【0093】
一般式(15)の化合物について説明する。
【0094】
【化19】

【0095】
上記一般式(15)において、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1乃至5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、アミル、イソアミルの各基)であることが好ましく、R、RおよびRの少なくとも1つ以上が炭素原子数1乃至3のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルの各基)であることが特に好ましい。Xは、単結合、−O−、−CO−、アルキレン基(好ましくは炭素原子数1〜6、より好ましくは1〜3のもの、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基)またはアリーレン基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜12のもの。例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基)から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが好ましく、−O−、アルキレン基またはアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが特に好ましい。
【0096】
Yは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数2〜25、より好ましくは2〜20のもの。例えば、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、t−オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、ジシクロヘキシル、アダマンチルの各基)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜18のもの。例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチルの各基)またはアラルキル基(好ましくは炭素原子数7〜30、より好ましくは7〜20のもの。例えば、ベンジル、クレジル、t−ブチルフェニル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチルの各基)であることが好ましく、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であることが特に好ましい。
【0097】
−X−Yの組み合わせとしては、−X−Yの総炭素数が0乃至40であることが好ましく、1乃至30であることがさらに好ましく、1乃至25であることが最も好ましい。これら一般式(14)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0098】
【化20】

【0099】
【化21】

【0100】
一般式(16)の化合物について説明する。
【0101】
【化22】

【0102】
、QおよびQはそれぞれ独立に5ないし6員環基を表し、炭化水素環基でもへテロ環基でもよく、また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。炭化水素環として好ましくは、置換または無置換のシクロヘキサン環、置換または無置換のシクロペンタン環、芳香族炭化水素環であり、より好ましくは芳香族炭化水素環である。へテロ環として好ましくは5ないし6員環の酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む環である。へテロ環としてより好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環である。
、QおよびQとして好ましくは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環である。芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
【0103】
芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどの各環が挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。Q、QおよびQとしてより好ましくは好ましくは芳香族炭化水素環基であり、より好ましくはベンゼン環である。またQ、QおよびQは置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが挙げられる。
XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、P=Oを表し、Xとして好ましくはB、C−R(Rとして好ましくはアリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基であり、より好ましくはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。)、Nであり、Xとしてより好ましくはC−R、Nであり、特に好ましくはC−Rである。
一般式(16)として好ましくは下記一般式(17)で表される化合物である。
【0104】
【化23】

【0105】
(式中、XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、Nを表す。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34ないしR35は水素原子または置換基を表す。)
【0106】
XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、P=Oを表しXとして好ましくはB、C−R(Rとして好ましくはアリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基であり、より好ましくはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。)、N、P=Oであり、更に好ましくはC−R、Nであり、特に好ましくはC−Rである。
【0107】
11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34ないしR35は水素原子または置換基を表し、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34ないしR35として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基である。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0108】
以下に前述の置換基Tについて説明する。置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの各基が挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどの各基が挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどの各基が挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどの各基が挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどの各基が挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどの各基が挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、
【0109】
アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどの各基が挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどの各基が挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどの各基が挙げられる。)、
【0110】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどの各基が挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどの各基が挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0111】
以下に一般式(16)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0112】
【化24】

【0113】
【化25】

【0114】
【化26】

【0115】
【化27】

【0116】
【化28】

【0117】
次に、本発明一般式(17)で表される化合物に関して詳細に説明する。
一般式(17)
【0118】
【化29】

【0119】
上記一般式(17)において、Rはアリール基を表す。RおよびRはそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表し、少なくとも一方はアリール基である。Rがアリール基であるときRはアルキル基またはアリール基であるが、アルキル基であることがより好ましい。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1乃至20のものが好ましく、1乃至15のものがさらに好ましく、1乃至12のものが最も好ましい。アリール基は炭素原子数が6乃至36のものが好ましく、6乃至24のものがより好ましい。
【0120】
次に、本発明の一般式(18)で表される化合物に関して詳細に説明する。
一般式(18)
【0121】
【化30】

【0122】
上記一般式(18)において、R、RおよびRはそれぞれ独立にアルキル基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。Rは環状のアルキル基であることが好ましく、RおよびRの少なくとも一方が環状のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基は炭素原子数が1乃至20のものが好ましく、1乃至15のものがさらに好ましく、1乃至12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。
【0123】
上記一般式(17)及び(18)におけるアルキル基およびアリール基は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基およびアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基である。
【0124】
また、本発明の一般式(17)および(18)で表される化合物の添加量は、セルロース体100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましく、2乃至30質量部であることがより好ましく、2乃至25質量部であることがさらに好ましく、2乃至20質量部であることが最も好ましい。
【0125】
次に、一般式(17)または一般式(18)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
なお、(A’− )と付してある化合物が一般式(17)で表される化合物の具体例であり、(B’− )と付してある化合物が一般式(18)で表される化合物の具体例である。
【0126】
【化31】

【0127】
【化32】

【0128】
【化33】

【0129】
上述の化合物はいずれも既知の方法により製造することができる。すなわち、一般式(17)および一般式(18)の化合物は、縮合剤(例えばジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など)を用いたカルボン酸類とアミン類との脱水縮合反応、あるいはカルボン酸クロリド誘導体とアミン誘導体との置換反応などにより得ることができる。
【0130】
次に、下記一般式(19)で表される化合物について、説明する。
一般式(19)
【0131】
【化34】

【0132】
(一般式(19)中、R、R、RおよびRは、それぞれ、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。X、X、XおよびXは、それぞれ、単結合、−CO−および−NR−(Rは置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す)からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。a、b、cおよびdは0以上の整数であり、a+b+c+dは2以上である。Qは(a+b+c+d)価の有機基を表す。)
前記(19)で表される化合物は、更に下記一般式(20)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(20)
【0133】
【化35】

【0134】
(一般式(20)中、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。X11、X12、X13およびX14は、それぞれ、単結合、−CO−および−NR−(Rは置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す)からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。k、l、mおよびnは0または1であり、k+l+m+nは2、3または4である。Qは2〜4価の有機基を表す。)
【0135】
前記一般式(19)で表される化合物は、更に下記一般式(21)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(21)
【0136】
【化36】

【0137】
(一般式(21)中、R21およびR22は、それぞれ、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。YおよびYは、それぞれ、−CONR23−または−NR24CO−を表す(R23およびR24は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す)。Lは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR25−(R25は水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。)、アルキレン基およびアリーレン基からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の有機基を表す。)
【0138】
前記一般式(19)で表される化合物は、更に下記一般式(22)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(22)
【0139】
【化37】

【0140】
(一般式(22)中、R31、R32、R33およびR34はそれぞれ置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。Lは−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR35−(R35は水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。)、アルキレン基およびアリーレン基からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の有機基を表す。)
【0141】
前記一般式(19)で表される化合物は、更に下記一般式(23)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(23)
【0142】
【化38】

【0143】
(一般式(23)中、R51、R52、R53およびR54はそれぞれ置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。Lは−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR55−(R55は水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表す。)、アルキレン基およびアリーレン基からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の有機基を表す。)
【0144】
以下、本発明一般式(19)で表される化合物について説明する。
上記一般式(19)において、R、R、RおよびRは、それぞれ、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。X、X、XおよびXは、それぞれ、単結合、−CO−、−NR−Rは置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。X、X、XおよびXの組み合わせは特に限定されないが、−CO−、−NR−(から選ばれるのがより好ましい。a、b、cおよびdは0以上の整数であり、a+b+c+dは2以上である。a+b+c+dは、2〜8であることが好ましく、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4である。Qは(a+b+c+d)価の有機基(環状のものを除く)を表す。Qの価数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が最も好ましい。
有機基とは、有機化合物からなる基をいう。
【0145】
また、上記一般式(19)としては、好ましくは上記一般式(20)で表される化合物である。
上記一般式(20)において、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。X11、X12、X13およびX14はそれぞれ独立に単結合、−CO−、−NR15−(R15はは置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。それぞれX11、X12、X13およびX14の組み合わせは特に限定されないが、−CO−、−NR15−から選ばれるのがより好ましい。k、l、mおよびnは0または1であり、k+l+m+n=2、3または4である。Qは2〜4価の有機基(環状のものを除く)を表す。Qの価数は2〜4が好ましく、2または3がより好ましい。
【0146】
上記一般式(19)としては、好ましくは上記一般式(21)で表される化合物である。
上記一般式(21)において、R21およびR22は、それぞれ、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。YおよびYはそれぞれ独立に−CONR23−または−NR24CO−を表し、R23およびR24は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。Lは−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR25−、アルキレン基およびアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の有機基(環状のものを除く)を表す。Lの組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR25−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
【0147】
上記一般式(19)としては、好ましくは上記一般式(22)で表される化合物である。
上記一般式(22)において、R31、R32、R33およびR34はそれぞれ置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。Lは−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR35−(R35は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Lの組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR35−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
【0148】
上記一般式(19)としては、好ましくは上記一般式(23)で表される化合物である。
上記一般式(23)において、R41、R42、R43およびR44は、それぞれ、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。Lは−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR45−(R45は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Lの組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR45−、およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
【0149】
上記一般式(19)としては、好ましくは上記一般式(24)で表される化合物である。
上記一般式(24)において、R51、R52、R53およびR54はそれぞれ置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。Lは−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−NR55−(R55は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Lの組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR55−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
【0150】
以下に一般式(19)及び一般式(20)〜(24)の置換基として述べた置換若しくは無置換の脂肪族基について説明する。脂肪族基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、tert−アミル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基ビシクロオクチル基、アダマンチル基、n−デシル基、tert−オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ジデシル基などが挙げられる。
【0151】
以下に一般式(19)及び一般式(20)〜(24)の置換基として述べた芳香族基について説明する。芳香族基は芳香族炭化水素基でも芳香族ヘテロ環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例な環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどの各環基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルの各基が特に好ましい。芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどの各環基が挙げられる。芳香族ヘテロ環基としては、ピリジン環、トリアジン環、キノリン環が特に好ましい。
【0152】
また、以下に上記各一般式の係る前述の置換基Tに関して詳細に説明する。
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、
【0153】
アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、
【0154】
アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、
【0155】
アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0156】
また、一般式(19)、特に一般式(20)〜(24)のいずれか1以上で表される化合物の添加量は、セルロース体に対して1〜30質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましく、2〜25質量%であることがさらに好ましく、2〜20質量%であることが最も好ましい。
【0157】
本発明に用いられる化合物はいずれも既知の化合物より製造することができる。一般式
(19)〜(24)のいずれか1以上で表される化合物は、例えば、カルボニルクロリドとアミンとの縮合反応により得られる。
【0158】
本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、オクタノール−水分配係数(LogP値)が0〜7である、多価アルコールエステル化合物、カルボン酸エステル化合物、多環カルボン酸化合物、ビスフェノール誘導体をセルロースアシレートに添加することによっても、光学的異方性を低下させることを見出した。
【0159】
オクタノール−水分配係数(LogP値)が0〜7である、多価アルコールエステル化合物、カルボン酸エステル化合物、多環カルボン酸化合物、ビスフェノール誘導体の具体例を以下に示す。
【0160】
(多価アルコールエステル化合物)
本発明の多価アルコールエステルは、2価以上の多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。多価アルコールエステル化合物としては以下のものが例としてあげられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0161】
(多価アルコール)
好ましい多価アルコールの例としては、例えばアドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0162】
(モノカルボン酸)
本発明の多価アルコールエステルにおけるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いるとセルロースアシレートフイルムの透湿度、含水率、保留性を向上させる点で好ましい。
【0163】
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0164】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0165】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらは更に置換基を有しても良い。
【0166】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0167】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0168】
本発明に用いる上記多価アルコールエステルの構成カルボン酸は一種類でも、二種以上の酸基の混合型でもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。好ましくは、分子内に芳香環もしくはシクロアルキル環を3つ以上有することが好ましい。
【0169】
多価アルコールエステル化合物としては、以下の化合物を例としてあげることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0170】
【化39】

【0171】
【化40】

【0172】
(カルボン酸エステル化合物)
カルボン酸エステル化合物としては、以下の化合物を例としてあげることができるが、本発明はこれらに限定されない。具体的には、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることが出来る。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、トリメチロールプロパントリベンゾエート等も挙げられる。
【0173】
アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。またこれらアルキルフタリルアルキルグリコレート等を2種以上混合して使用してもよい。
【0174】
カルボン酸エステル化合物としては、さらに以下の化合物も例としてあげることができるが、本発明は上記した化合物や下記化合物に限定されない。
【0175】
【化41】

【0176】
【化42】

【0177】
(多環カルボン酸化合物)
本発明において用いる多環カルボン酸化合物は分子量が3000以下の化合物であることが好ましく、特に250〜2000以下の化合物であることが好ましい。環状構造に関して、環の大きさについて特に制限はないが、3〜8個の原子から構成されていることが好ましく、特に6員環及び/又は5員環であることが好ましい。これらが炭素、酸素、窒素、珪素あるいは他の原子を含んでいてもよく、環の結合の一部が不飽和結合であってもよく、例えば6員環がベンゼン環、シクロヘキサン環でもよい。本発明の化合物は、このような環状構造が複数含まれているものであり、例えば、ベンゼン環とシクロヘキサン環をどちらも分子内に有していたり、2個のシクロヘキサン環を有していたり、ナフタレンの誘導体あるいはアントラセン等の誘導体であってもよい。より好ましくはこのような環状構造を分子内に3個以上含んでいる化合物であることが好ましい。また、少なくとも環状構造の1つの結合が不飽和結合を含まないものであることが好ましい。具体的には、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パラストリン酸などのアビエチン酸誘導体が代表的であり、以下にこれら化合物の化学式を示すが、特にこれらに限定されるものではない。
【0178】
【化43】

【0179】
(ビスフェノール誘導体)
本発明において用いるビスフェノール誘導体は分子量が10000以下であることが好ましく、この範囲であれば単量体でも良いし、オリゴマー、ポリマーでも良い。また他のポリマーとの共重合体でも良いし、末端に反応性置換基が修飾されていても良い。以下にこれら化合物の化学式を示すが、特にこれらに限定されるものではない。
【0180】
【化44】

【0181】
なお、ビスフェノール誘導体の上記具体例中で、R1〜R4は炭素数1〜10のアルキル基を表す。Aは2,2―ビスフェニレンオキシプロピル基であり、そのフェニレンオキシ基の2,6位にはR1〜R4が置換してもよい。l、m、nは繰り返し単位を表し、特に限定はしないが、1〜100の整数が好ましく、1〜20の整数がさらに好ましい。
【0182】
[波長分散調整剤]
セルロースアシレートフイルムの波長分散を低下させる化合物について説明する。本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フイルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30重量%含むことによってセルロースアシレートフイルムのRe、Rthの波長分散を調整した。
【0183】
セルロースアシレートフイルムのRe、Rthの値は一般に短波長側よりも長波長側が大きい波長分散特性となる。したがって相対的に小さい短波長側のRe、Rthを大きくすることによって波長分散を平滑にすることが要求される。一方200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は短波長側よりも長波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身がセルロースアシレートフイルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいてはRe、Rthの波長分散は吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
【0184】
したがって上述したような、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身のRe、Rthの波長分散が短波長側が大きいと想定されるものを用いることによって、セルロースアシレートフイルムのRe、Rthの波長分散を調製することができる。このためには波長分散を調整する化合物はセルロースアシレートに十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましいが、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
【0185】
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるに、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フイルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物をセルロースアシレートフイルムに添加する場合、分光透過率が優れていることが要求される。本発明のセルロースアシレートフイルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
【0186】
上述のような、本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤は揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
【0187】
波長分散調整剤は、セルロースアシレートフイルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
【0188】
(化合物添加量)
上述した本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤の添加量は、セルロースアシレートの0.01ないし30重量%であることが好ましく、0.1ないし20重量%であることがより好ましく、0.2ないし10重量%であることが特に好ましい。
【0189】
(化合物添加の方法)
またこれら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
またこれら波長分散調整剤を添加する時期はドープ調製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0190】
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
【0191】
ベンゾトリアゾール系化合物としては一般式(101)で示されるものが本発明の波長分散調整剤として好ましく用いられる。
【0192】
一般式(101) Q11−Q12−OH
【0193】
(式中、Q11は含窒素芳香族ヘテロ環Q12は芳香族環を表す。)
【0194】
11は含窒素方向芳香族へテロ環をあらわし、好ましくは5乃至7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5ないし6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等があげられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
11で表される含窒素芳香族ヘテロ環は更に置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
【0195】
12で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
12であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q12は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。
置換基Tは、一般式(16)の説明に述べた置換基Tと同義であり、好ましい置換基例も同じである。また、置換基Tが二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0196】
一般式(101)として好ましくは下記一般式(101−A)で表される化合物である。
一般式(101−A)
【0197】
【化45】

【0198】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
【0199】
、R、R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
およびRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
【0200】
、およびRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0201】
およびRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0202】
およびRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
【0203】
一般式(101)としてより好ましくは下記一般式(101−B)で表される化合物である。
一般式(101−B)
【0204】
【化46】

【0205】
(式中、R、R、RおよびRは一般式(101−A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
【0206】
以下に一般式(101)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0207】
【化47】

【0208】
【化48】

【0209】
以上例にあげたベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以下のものを含まずに本発明のセルロースアシレートフイルムを作製した場合、保留性の点で有利であることが確認された。
【0210】
また本発明に用いられる波長分散調整剤のひとつであるベンゾフェノン系化合物としては一般式(102)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(102)
【0211】
【化49】

【0212】
(式中、QおよびQはそれぞれ独立に芳香族環を表す。XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。)、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0213】
およびQで表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
およびQで表される芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
およびQで表される芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のどれかひとつを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどの各環が挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
およびQであらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換または無置換のベンゼン環である。
およびQは更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
【0214】
XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては後述の置換基Tが適用できる。)、酸素原子または硫黄原子を表し、Xとして好ましくは、NR(Rとして好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい。)、またはOであり、特に好ましくはOである。
【0215】
置換基Tは、一般式(16)の説明に述べた置換基Tと同義であり、好ましい置換基例も同じである。また、置換基Tが二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0216】
一般式(102)として好ましくは下記一般式(102−A)で表される化合物である。
一般式(102−A)
【0217】
【化50】

【0218】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
【0219】
、R、R、R、R、R、R、R、およびRはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0220】
、R、R、R、R、RおよびRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0221】
として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0222】
として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
【0223】
一般式(102)としてより好ましくは下記一般式(102−B)で表される化合物である。
一般式(102−B)
【0224】
【化51】

【0225】
(式中、R10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表す。)
【0226】
10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。
10として好ましくは置換または無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20の置換または無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜12の置換または無置換のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換または無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
【0227】
一般式(102)であらわされる化合物は特開平11−12219号公報記載の公知の方法により合成できる。
以下に一般式(102)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0228】
【化52】

【0229】
【化53】

【0230】
【化54】

【0231】
また本発明に用いられる波長分散調整剤のひとつであるシアノ基を含む化合物としては一般式(103)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(103)
【0232】
【化55】

【0233】
(式中、QおよびQはそれぞれ独立に芳香族環を表す。XおよびXは水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。)
およびQであらわされる芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0234】
芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
【0235】
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンの各環である。
【0236】
およびQであらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。
およびQは更に置換基を有してもよく、置換基Tが好ましい。置換基Tは、一般式(16)の説明に述べた置換基Tと同義であり、好ましい置換基例も同じである。
また、置換基Tが二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0237】
およびXは水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。XおよびXで表される置換基は前述の置換基Tを適用することができる。また、XおよびXはで表される置換基は更に他の置換基によって置換されてもよく、XおよびXはそれぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
【0238】
およびXとして好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
【0239】
一般式(103)として好ましくは下記一般式(103−A)で表される化合物である。
一般式(103−A)
【0240】
【化56】

【0241】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。XおよびXは一般式(103)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
【0242】
、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基ととしては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0243】
、R、R、R、R、R、R、およびR10として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0244】
、およびRとして好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0245】
一般式(103)としてより好ましくは下記一般式(103−B)で表される化合物である。
一般式(103−B)
【0246】
【化57】

【0247】
(式中、RおよびRは一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。Xは水素原子、または置換基を表す。)
【0248】
は水素原子、または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。Xとして好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(−C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
【0249】
一般式(103)として更に好ましくは一般式(103−C)で表される化合物である。
一般式(103−C)
【0250】
【化58】

【0251】
(式中、RおよびRは一般式(103−A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R21は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0252】
21として好ましくはRおよびRが両方水素の場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
【0253】
21として好ましくはRおよびRが水素以外の場合には、一般式(103−C)で表される化合物の分子量が300以上になり、かつ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
【0254】
本発明一般式(103)で表される化合物はJounal of American Chemical Society 63巻 3452頁(1941)記載の方法によって合成できる。
【0255】
以下に一般式(103)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0256】
【化59】

【0257】
【化60】

【0258】
【化61】

【0259】
[マット剤微粒子]
本発明のセルロースアシレートフイルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフイルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0260】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0261】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0262】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0263】
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフイルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1mあたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0264】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0265】
[可塑剤、劣化防止剤、剥離剤]
上記の光学的に異方性を低下する化合物、波長分散調整剤の他に、本発明のセルロースアシレートフイルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフイルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0266】
[剥離剤]
本発明に用いることができる剥離剤について、以下に詳細に説明する。剥離剤としては、界面活性剤が有効であり、リン酸系、スルフォン酸系、カルボン酸系、ノニオン系、カチオン系など特に限定されない。これらは、例えば特開昭61−243837号公報などに記載されている。
【0267】
これらの剥離抵抗軽減剤は以下に具体的に記す。すなわち、セルロースアシレート溶液を流延する前に一般式(1)又は一般式(2)で表される剥離抵抗軽減剤の少なくとも一種を溶液の0.005〜2質量%添加することを特徴とする。
一般式(1):(R−B−O)n1−P(=O)−(OMn2
一般式(2):R−B−X
【0268】
ここで、RとRは炭素数4〜40の置換、無置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基及びアリル基を表し、Mはアルカリ金属、アンモニア、低級アルキルアミンである。また、B,Bは2価の連結基を表し、Xはカルボン酸(又はその塩)、スルフォン酸(又はその塩)、硫酸エステル(又はその塩)を表す。n1は1,2の整数であり、n2は(3−n1)の整数を表す。
【0269】
本発明では、一般式(1)又は(2)で表される少なくとも一種の剥離抵抗軽減剤を、セルロースアシレートフィルムが含有することが好ましい。以下にこれらの剥離抵抗軽減剤について記述する。
【0270】
とRの好ましい例としては、炭素数4〜40の置換、無置換のアルキル基(例えば、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコサニル、ドコサニル、ミリシルなど)、炭素数4〜40の置換、無置換のアルケニル基(例えば、2−ヘキセニル、9−デセニル、オレイルなど)、炭素数4〜40の置換、無置換のアリル基(例えば、フェニル、ナフチル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ジイソプロピルフェニル、トリイソプロピルフェニル、t−ブチルフェニル、ジ−t−ブチルフェニル、トリ−t−ブチルフェニル、イソペンチルフェニル、オクチルフェニル、イソオクチルフェニル、イソノニルフェニル、ジイソノニルフェニル、ドデシルフェニル、イソペンタデシルフェニルなど)などを表す。
【0271】
これらの中でもさらに好ましいのは、アルキルとしてはヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ドコサニル、アルケニルとしてはオレイル、アリル基としてはフェニル、ナフチル、トリメチルフェニル、ジイソプロピルフェニル、トリイソプロピルフェニル、ジ−t−ブチルフェニル、トリ−t−ブチルフェニル、イソオクチルフェニル、イソノニルフェニル、ジイソノニルフェニル、ドデシルフイソペンタデシルフェニルである。
【0272】
次に、B、Bの2価の連結基について記述する。炭素数1〜10のアルキレン、ポリ(重合度1〜50)オキシエチレン、ポリ(重合度1〜50)オキシプロピレン、ポリ(重合度1〜50)オキシグリセリンであり、これらの混合したものでもよい。
これらで好ましい連結基は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ポリ(重合度1〜25)オキシエチレン、ポリ(重合度1〜25)オキシプロピレン、ポリ(重合度1〜15)オキシグリセリンである。次に、Xはカルボン酸(又は塩)、スルフォン酸(又は塩)、硫酸エステル(又は塩)であるが、特に好ましくはスルフォン酸(又は塩)、硫酸エステル(又は塩)である。塩としては好ましくはNa、K、アンモニウム、トリメチルアミン及びトリエタノールアミンである。
【0273】
以下に、本発明の好ましい剥離抵抗軽減剤の具体例を記載するがこれらに限定されるものではない。
RZ−1:C17O−P(=O)−(OH)
RZ−2:C1225O−P(=O)−(OK)
RZ−3:C1225OCHCHO−P(=O)−(OK)
RZ−4:C1531(OCHCHO−P(=O)−(OK)
RZ−5:{C1225O(CHCHO)−P(=O)−OHRZ−6:{C1835(OCHCHO}−P(=O)ONH
RZ−7:(t−C−C−OCHCHO−P(=O)−(OK)
RZ−8:(iso−C19−C−O−(CHCHO)))−P(=O)−(OK)(OH)
RZ−9:C1225SONa
RZ−10:C1225OSONa
RZ−11:C1733COOH
RZ−12:C1733COOH・N(CHCHOH)
RZ−13:iso−C17−C−O−(CHCHO)−(CHSONa
RZ−14:(iso−C19−C−O−(CHCHO)−(CHSONa
RZ−15:トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−16:トリ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−17:C1733CON(CH)CHCHSONa
RZ−18:C1225−CSO・NH
【0274】
本発明の一般式(1)又は(2)の少なくとも一種の使用量は、溶液の0.002〜2質量%であるが、より好ましくは0.005〜1質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%である。その添加方法は、特に限定されないがそのまま液体、あるいは固体のまま溶解する前に他の素材とともに添加され溶液としてもよいし、予め作製されたセルロースアシレート溶液に後から添加してもよい。
【0275】
さらに、特開平10−316701号公報に記載の酸解離指数pKa1.93〜4.50{好ましくは2.0〜4.4、さらに好ましくは2.2〜4.3(例えば、2.5〜4.0)、特に2.6〜4.3(例えば、2.6〜4.0)程度}の酸又はその塩が好ましい。これは、無機酸又は有機酸のいずれでもよい。酸のpKaについては「改訂3版 化学便覧,基礎編II」((財)日本化学会編,丸善(株)発行)を参照できる。以下に、酸の具体例とともに括弧内に酸解離指数pKaを示す。
【0276】
前記無機酸としては、例えばHClO(2.31)、HOCH(3.48)、モリブデン酸(H,MoO:3.62)、HNO(3.15)、リン酸(H,PO:2.15)、トリポリリン酸(H,P,O10:2.0)、パナジン酸(H,VO:3.78)などが例示できる。有機酸としては、例えば脂肪族モノカルボン酸としてギ酸(3.55)、オキサロ酢酸(2.27)、シアノ酢酸(2.47)、フェニル酢酸(4.10)、フェノキシ酢酸(2.99)、フルオロ酢酸(2.59)、クロロ酢酸(2.68)、ブロモ酢酸(2.72)、ヨード酢酸(2.98)、メルカプト酢酸(3.43)ビニル酢酸(4.12)などの置換基を有する酢酸、クロロプロピオン酸(2.71〜3.92)などのハロプロピオン酸、4−アミノ酪酸(4.03)、アクリル酸(4.26)などを挙げることができる。また、脂肪族多価カルボン酸としてはマロン酸(2.65)、コハク酸(4.00)、グルタル酸(4.13)、アジピン酸(4.26)、ピメリン酸(4.31)、アゼライン酸(4.39)、フマル酸(2.85)などであり、オキシカルボン酸としてのグリコール酸(3.63)、乳酸(3.66)、リンゴ酸(3.24)、酒石酸(2.82〜2.99)、クエン酸(2.87)なども挙げられる。さらに、アルデヒド酸又はケトン酸としてのグリオキシル酸(3.18)、ピルビン酸(2.26)、レブリン酸(4.44)など、芳香族モノカルボン酸であるアニリンスルホン酸(3.74〜3.23)、安息香酸(4.20)、アミノ安息香酸(2.02〜3.12)、クロロ安息香酸(2.92〜3.99)、シアノ安息香酸(3.60〜3.55)、ニトロ安息香酸(2.17〜3.45)、ヒドロキシ安息香酸(4.08〜4.58)、アニス酸
(4.09〜4.48)、フルオロ安息香酸(3.27〜4.14)、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸(2.85〜4.00)、ヨード安息香酸(2.86〜4.00)などの置換基を有する安息香酸、サリチル酸(2.81)、ナフトエ酸(3.70〜4.16)、ケイ皮酸(3.88)、マンデル酸(3.19)なども挙げられる。また、芳香族多価カルボン酸であるフタル酸(2.75)、イソフタル酸(3.50)、テレフタル酸(3.54)など、複素環式モノカルボン酸のニコチン酸(2.05)、2−フランカルボン酸(2.97)など、複素環式多価カルボン酸、2,6−ピリジンカルボン酸(2.09)なども挙げられる。
【0277】
さらに、有機酸としてはアミノ酸類もよく、例えば、アミノ酸としてのアスパラギン(2.14)、アスパラギン酸(1.93)、アデニン(4.07)、アラニン(2.30)、β−アラニン(3.53)、アルギニン(2.05)、イソロイシン(2.32)、グリシン(2.36)、グルタミン(2.17)、グルタミン酸(2.18)、セリン(2.13)、チロシン(2.17)、トリプトファン(2.35)、トレオニン(2.21)、ノルロイシン(2.30)、バリン(2.26)、フェニルアラニン(2.26)、メチオニン(2.15)、リシン(2.04)、ロイシン(2.35)など、アミン酸誘導体であるアデノシン(3.50)、アデノシン三リン酸(4.06)、アデノシンリン酸(3.65〜3.80)、L−アラニル−L−アラニン(3.20)、L−アラニルグリシン(3.10)、β−アラニルグリシン(3.18)、L−アラニルグリシルグリシン(3.24)、β−アラニルグリシルグリシン(3.19)、L−アラニルグリシルグリシルグリシン(3.18)、グリシル−L−アラニン(3.07)、グリシル−β−アラニン(3.91)、グリシルグリシル−L−アラニン(3.18)、グリシルグリシルグリシン(3.20)、グリシルグリシルグリシルグリシン(3.18)、グリシルグリシル−L−ヒスチジン(2.72)、グリシルグリシルグリシル−L−ヒスチジン(2.90)、グリシル−DL−ヒスチジルグリシン(3.26)、グリシル−L−ヒスチジン(2.54)、グリシル−L−ロイシン(3.09)、γ−L−グルタミン−L−システイニルグリシン(2.03)、N−メチルグリシン(サルコシン:2.20)、N,N−ジメチルグリシン(2.08)、シトルリン(2.43)、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(2.31)、L−ヒスチジルグリシン(2.84)、L−フェニルアラニルグリシン(3.02)、L−プロリルグリシン(3.07)、L−ロイシル−L−チロシン(3.15)などが用いられる。
【0278】
[化合物添加の比率]
本発明のセルロースアシレートフイルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート重量に対して5〜45%であることがのぞましい。より好ましくは10〜40%であり、さらにのぞましくは15〜30%である。これらの化合物としては上述したように、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては3000以下がのぞましく、2000以下がよりのぞましく、1000以下がさらにのぞましい。これら化合物の総量が5%以下であると、セルロースアシレート単体の性質が出やすくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しやすくなるなどの問題がある。またこれら化合物の総量が45%以上であると、セルロースアシレートフイルム中に化合物が相溶する限界を超え、フイルム表面に析出してフイルムが白濁する(フイルムからの泣き出し)などの問題が生じやすくなる。
【0279】
[セルロースアシレート溶液の有機溶媒]
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明の主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0280】
以上本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としても良いし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としても良く、本発明のセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0281】
その他、本発明のセルロースアシレート溶液及びフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含め以下の特許に開示されており、好ましい態様である。それらは、例えば、特開2000−95876、特開平12−95877、特開平10−324774、特開平8−152514、特開平10−330538、特開平9−95538、特開平9−95557、特開平10−235664、特開平12−63534、特開平11−21379、特開平10−182853、特開平10−278056、特開平10−279702、特開平10−323853、特開平10−237186、特開平11−60807、特開平11−152342、特開平11−292988、特開平11−60752、特開平11−60752などに記載されている。これらの特許によると本発明のセルロースアシレートに好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
【0282】
[セルロースアシレートフィルムの製造工程]
[溶解工程]
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
【0283】
(ドープ溶液の透明度)
本発明のセルロースアシレート溶液のドープ透明度としては85%以上であることがのぞましい。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上であることがのぞましい。本発明においてはセルロースアシレートドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、島津製作所)で550nmの吸光度を測定した。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースアシレート溶液の透明度を算出した。
【0284】
[流延、乾燥、巻き取り工程]
次に、本発明のセルロースアシレート溶液を用いたフイルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフイルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフイルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明のセルロースアシレートフイルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフイルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
また、セルロースアシレートフィルムの厚さは10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜90μmがさらに好ましい。
【0285】
[剥離]
本発明において、剥離工程は非常に重要であるため以下にその詳細について触れる。セルロースアシレートフイルムを製造する速度はベルトの長さ、乾燥方法、ドープ溶媒組成等によっても変化するが、該フイルム(有機溶剤を含有し、ウエブとも称する)をベルトから剥離する時点での残留溶媒の量によって殆ど決まってしまう。つまり、ドープ膜の厚み方向でのベルト表面付近での溶媒濃度が高すぎる場合には、剥離した時、ベルトにドープが残ってしまい、次の流延に支障を来すため、剥離残りは絶対あってはならないし、更に剥離する力に耐えるだけのウェブ強度が必要であるからである。剥離時点での残留溶媒量は、ベルトやドラム上での乾燥方法によっても異なり、ドープ表面から風を当てて乾燥する方法よりは、ベルト或いはドラム裏面から伝熱する方法が効果的に残留溶媒量を低減することが出来るのである。
以下の剥離に係る記述には、公開公報などに記載されている態様を引用するが、これら引用記載の態様は、本発明の実施にも好ましく適用される。
【0286】
なお、平面性の良い均一面状を目的として、特開平5−057739号には、剥ぎ取り時の揮発分%を乾量基準10〜30質量%にして、かつ剥離部分において支持体の表面温度を20℃以下14℃以上に保つ発明が記載されている。
【0287】
特開2000−239403号公報では剥離時の残留溶媒率Xが15≦X≦120でウェブを金属支持体から剥離した後乾燥製膜したセルロースアシレートフイルムの製造方法に関するものであり、薄膜で光学的等方性な平面性良好であるセルロースアシレートについての乾燥方法である。
【0288】
また、膜厚が薄く、光学的方性、平面性に優れたフィルムを得るために、特開2000−239403号には、剥離点でウェブが支持体の長さ方向の等位置で一線に剥離出来るように幅方向にウェブに部分的に外力を加えて、製膜を行うことが開示されている。
また、さらに好ましい態様として、
・流延用支持体上でのウェブの乾燥風温度をT1、剥離後少なくとも10秒間ウェブに当てる乾燥風温度をT2、主溶媒の沸点を沸点Tbp、そして剥離部における流延用支持体の温度をTsとしたとき、T1をTbp−20≦T1≦Tbp+20の範囲とし、且つT2をTs≦T2≦Ts+40の範囲として製膜を行うこと、
・剥離時の搬送張力を3〜40kg/m巾として製膜を行うこと、
等が記載されている。
【0289】
さらに、フイルムキズを防止し、ヘイズを抑制するために、特開2002−187146号には、剥ぎ取り揮発分、剥ぎ取りドロー率、剥ぎ取りロールラップ規定する発明が記載されている。
【0290】
また、可塑剤や紫外線吸収剤のロール付着を防止するために、特開2002−292658号には、セルロースエステル溶液を駆動金属製エンドレスベルトに流延して得られたウェブをエンドレスベルトから剥離ロールにより剥離するさいのウェブの残留溶媒を20〜150%として、剥離ロール及び剥離ロールから乾燥装置までの移送ロールのビッカース硬度を500〜800とする発明が記載されている。
【0291】
なお、更に好ましい態様としては、
・剥離ロール及び剥離ロールから乾燥装置までの移送ロールのうち少なくとも剥離ロールを100〜300℃に加熱し、加熱後のロールのビッカース硬度を800〜1000とすること、
・剥離ロール及び移送ロールのうち少なくとも剥離ロールの表面粗さRyを0.6μm以下とすること、
・剥離ロール及び移送ロールのうち少なくとも剥離ロールの表面層をNi合金で形成すること、
・剥離ロール及び移送ロールのうち少なくとも剥離ロールに20℃における表面エネルギーが70〜100mN/mのものを用いること、
・ウェブをエンドレスベルトから剥離ロールにより剥離した後の剥離ロール及び剥離ロールから乾燥装置までの移送ロールに接するウェブの残留溶媒が60〜80%である際の、剥離ロール及び移送ロールの表面温度をウェブに添加されている可塑剤の融点以上すること、
・剥離ロール及び移送ロールのビッカース硬度を500〜800とすること、
・剥離ロール及び移送ロールを100〜300℃に加熱し、加熱後のこれらロールのビッカース硬度を800〜1000すること、
・剥離ロール及び移送ロールの表面粗さRyを0.6μm以下とすること、
・剥離ロール及び移送ロールの表面層をNi合金で形成すること、
・剥離ロール及び移送ロールに20℃における表面エネルギーが70〜100mN/mのものを用いること、
等が開示されている。さらには、ビッカース硬度のより好ましい範囲は550〜800であることが記載されている。
なお、本発明における剥離張力は、剥離直後のフィルムを搬送するロールにテンションピックアップの機能をつけ、該ロールにかかる荷重より、剥離荷重(N/m)を求めた。
【0292】
さらに、横段ムラをなくすことを目的とした発明の特開2002−028943号には、
・剥離点より100〜150cm離れたところで遮蔽物のない状態で、125〜250Hz成分の剥離音以外の雑音を差し引いた音量を測定したとき、ウェブを剥離する際に発する125〜250Hz成分の剥離音を90dB以下とすること、
・剥離張力を30〜240N/m幅として剥離した後、剥離点から張力遮断手段までの工程距離間をウェブ長さにして最小2m、最大90mとして、該工程距離間のウェブの張力を維持しながら搬送し、工程距離間におけるウェブの残留溶媒量の変化を140質量%から10質量%の間とすること、
等が開示されている。なお、張力遮断手段はドライブロールでも良いとの記載もある。
【0293】
さらに、特開2002−254451には、剥離時に発生する、段ムラ、帯スジ、ベコ状故障、平面性のムラ、微細な表面荒れ等によるヘイズアップ等の各故障が発生しないようにするために、流延支持体から剥ぎ取られるフィルムの流延支持体の剥離点における接線方向を0度、法線方向を90度としたとき、フィルムの剥ぎ取り角度を30〜80度の範囲にする溶液製膜方法が記載されている。
【0294】
本発明における剥離荷重は、好ましくは1〜25N/mであり、より好ましくは1〜20N/mであり、さらに好ましくは1〜15N/mであり、特に好ましくは1〜10N/mである。以上記載したこれらのセルロースアシレートの金属支持体からの剥離条件等に関する発明は、本発明においても適用できるものである。
【0295】
[表面処理]
セルロースアシレートフイルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフイルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0296】
[機能層]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
その際に前述の光学用途に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明のセルロースアシレートフィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0297】
[用途(偏光板)]
本発明のセルロースアシレートフイルムの用途について説明する。
本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが得に好ましい。
【0298】
[用途(光学補償フイルム)]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フイルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フイルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フイルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは光学的異方性が小さく、また波長分散が小さいため、余計な異方性を生じず、複屈折を持つ光学異方性層を併用すると光学異方性層の光学性能のみを発現することができる。
【0299】
したがって本発明のセルロースアシレートフイルムを液晶表示装置の光学補償フイルムとして用いる場合、併用する光学異方性層のReおよびRthはRe=0〜200nmかつ|Rth|=0〜400nmであることが好ましく、この範囲であればどのような光学異方性層でも良い。本発明のセルロースアシレートフイルムが使用される液晶表示装置の液晶セルの光学性能や駆動方式に制限されず、光学補償フイルムとして要求される、どのような光学異方性層も併用することができる。併用される光学異方性層としては、液晶性化合物を含有する組成物から形成しても良いし、複屈折を持つポリマーフイルムから形成しても良い。
前記液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物または棒状液晶性化合物が好ましい。
【0300】
(ディスコティック液晶性化合物)
本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,p.111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,1794頁(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,116巻,2655頁(1994))に記載の化合物が含まれる。
【0301】
光学異方性層において、ディスコティック液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティック液晶性分子について、特開2001−4387号公報に開示されている。
【0302】
(棒状液晶性化合物)
本発明において、使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
【0303】
光学異方性層において、棒状液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用可能な重合性棒状液晶性化合物の例には、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、および特開2001−328973号などに記載の化合物が含まれる。
【0304】
(ポリマーフイルムからなる光学異方性層)
上記した様に、光学異方性層はポリマーフイルムから形成してもよい。ポリマーフイルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセーテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。
【0305】
ポリマーフィルムの光学異方性は、延伸により得ることが好ましい。延伸は一軸延伸または二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合わせての二軸延伸が好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを用いて、二枚以上のフィルム全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
【0306】
(液晶表示装置の構成例)
セルロースアシレートフィルムを光学補償フイルムとして用いる場合は、偏光素子の透過軸と、セルロースアシレートフィルムからなる光学補償フイルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償フイルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
【0307】
(液晶表示装置の種類)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のセルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0308】
(TN型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl. Phys.、36巻(1997)143頁や、Jpn.J.Appl. Phys.、36巻(1997)1068頁)に記載がある。
【0309】
(STN型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0310】
(VA型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0乃至150nmとし、Rthレターデーション値を70乃至400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20乃至70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70乃至250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150乃至400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
【0311】
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護膜としても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、前記偏光板の保護膜と保護膜と液晶セルの間に配置された光学異方性層のリターデーションの値は、液晶層のΔn・d(屈折率差×厚み)の値の2倍以下に設定するのが好ましい。またRth値の絶対値|Rth|は、25nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下に設定するのが好ましいため、本発明のセルロースアシレートフイルムが有利に用いられる。
【0312】
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文
(Jpn.J.Appl.Phys.38巻(1999)2837頁)に記載がある。
【0313】
(反射型液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号公報に記載がある。
【0314】
(その他の液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID98 Digest,1089頁(1998))に記載がある。
【0315】
(ハードコートフイルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、またハードコートフイルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースアシレートフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフイルムを好ましく用いることができる。
【0316】
(写真フイルム支持体)
さらに本発明のセルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としても適用でき、該特許に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。それらの技術については、特開2000−105445号公報にカラーネガティブに関する記載が詳細に挙げられており、本発明のセルロースアシレートフィルムが好ましく用いられる。またカラー反転ハロゲン化銀写真感光材料の支持体としての適用も好ましく、特開平11−282119号公報に記載されている各種の素材や処方さらには処理方法が適用できる。
【0317】
(透明基板)
本発明のセルロースアシレートフイルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持っていることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリア性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明のセルロースアシレートフイルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフイルムの少なくとも片面にSiO等を蒸着したり、あるいは塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明のセルロースアシレートフイルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079や特開2000−227603などの各公報に公開されている。
【実施例】
【0318】
以下に本発明の実施例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
[実施例1]
(セルロースアセテート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。なお、用いたセルロースアセテートの硫酸残存量は53ppmであり、アルカリ土類金属の含有量が82ppmであった。
【0319】
(セルロースアセテート溶液A組成)
平均酢化度61.3のセルロースアセテート 110.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 438.0質量部
メタノール(第2溶媒) 75.0質量部
【0320】
(マット剤溶液の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
【0321】
(マット剤溶液組成)
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 12.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 78.1質量部
メタノール(第2溶媒) 3.8質量部
セルロースアセテート溶液A 11.3質量部
【0322】
(添加剤溶液の調製)
<添加剤溶液組成>
光学的異方性を低下する化合物(A−19) 49.1質量部
波長分散調整剤(UV−102) 7.3質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 57.8質量部
メタノール(第2溶媒) 8.1質量部
セルロースアセテート溶液A 12.8質量部
【0323】
(本発明のセルロースアシレートフィルム001の作製)
上記セルロースアセテート溶液Aを93.8質量部、マット剤溶液を1.8質量部、添加剤溶液4.4質量部それぞれを濾過後にミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテートドープ001を調製した。30℃に温度調整されたドープ001を用いて、裏面から29℃(T2)の温風で加熱したエンドレスステンレスベルト上に均一に流延した。流延後、ただちにベルト上のドープ膜(ウエブ)に20℃(T1)の温風をあてて乾燥させた後、流延から35秒後にベルトの裏面から45℃(T4)の温風で加熱すると共に、ウエブ表面に45℃(T3)の温風をあてて乾燥させ、流延から80秒後に剥離し、多数のロールで搬送させながら乾燥させた。剥離部のエンドレスステンレスベルトの温度は15℃とした。剥離時の残留溶媒量は15質量%であった。剥離されたフィルムは、45℃に設定された第1乾燥ゾーンを1分間搬送させた後、80℃に設定された第2乾燥ゾーンを30秒間搬送させ、さらに130℃に設定された第3乾燥ゾーンで10分間搬送させて、乾燥を行った。第2乾燥ゾーン内ではテンターにて幅手方向に1.00倍に保持し延伸を行わなかった。乾燥後、ロール状に巻き取る事で、膜厚82μmの本発明のセルロースエステルフィルム001を得た。巻き取り時の残留溶媒量は0.4質量%であった。なお、セルロースアシレートフィルム001の硫酸残存量は48ppmであり、アルカリ土類金属の含有量が74ppmであった。セルロースアシレートフィルム001の光学特性および耐久性等の諸物性を表1に示す。
【0324】
[実施例2]
(セルロースアシレートフイルム002の作製)
平均酢化度59.3であり、かつ残存硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表1記載のセルロースアシレートを用いて、表1に記載のレタデーション調整剤添加量にした以外は、実施例1と同様の方法により表1に示す諸物性を有す膜厚81μmの本発明のセルロースアシレートフィルム002を得た。
【0325】
[実施例3]
(セルロースアシレートフイルム003の作製)
平均酢化度61.6であり、かつ残存硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表1記載のセルロースアシレートを用いて、表1に記載のレタデーション調整剤添加量にした以外は、実施例1と同様の方法により表1に示す諸物性を有す膜厚81μmの本発明のセルロースアシレートフィルム003を得た。
【0326】
[実施例4]
(セルロースアシレートフイルム004の作製)
平均酢化度61.7であり、かつ残存硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表1記載のセルロースアシレートを用いて、表1に記載のレタデーション調整剤添加量にした以外は、実施例1と同様の方法により表1に示す諸物性を有す膜厚81μmの本発明のセルロースアシレートフィルム004を得た。
【0327】
[実施例5]
(セルロースアシレートフイルム005の作製)
平均酢化度61.7であり、かつ残存硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表1記載のセルロースアシレートを用いて、表1に記載のレタデーション調整剤添加量にした以外は、実施例1と同様の方法により表1に示す諸物性を有す膜厚81μmの本発明のセルロースアシレートフィルム005を得た。
【0328】
[実施例6]
(セルロースアシレートフイルム006の作製)
平均酢化度61.7であり、かつ残存硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表1記載のセルロースアシレートを用いて、表1に記載のレタデーション調整剤添加量にした以外は、実施例1と同様の方法により表1に示す諸物性を有す膜厚81μmの本発明のセルロースアシレートフィルム005を得た。
【0329】
[実施例7]
(セルロースアシレートフイルム007の作製)
平均酢化度62.0であり、かつ残存硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表1記載のセルロースアシレートを用いて、表1に記載のレタデーション調整剤添加量にした以外は、実施例1と同様の方法により表1に示す諸物性を有す膜厚81μmの本発明のセルロースアシレートフィルム007を得た。
【0330】
[比較例1]
(セルロースアシレートフイルム008の作製)
平均酢化度61.2であり、かつ残存硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表1記載のセルロースアシレートを用いて、表1に記載のレタデーション調整剤添加量にした以外は、実施例1と同様の方法により表1に示す諸物性を有す膜厚81μmの本発明のセルロースアシレートフィルム008を得た。
【0331】
[比較例2]
(セルロースアシレートフイルム009の作製)
平均酢化度62.3であり、かつ残存硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表1記載のセルロースアシレートを用いて、表1に記載のレタデーション調整剤添加量にした以外は、実施例1と同様の方法により表1に示す諸物性を有す膜厚81μmの本発明のセルロースアシレートフィルム009を得た。
【0332】
[比較例3]
(セルロースアシレートフイルム010の作製)
平均酢化度62.1であり、かつ残存硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表1記載のセルロースアシレートを用いて、表1に記載のレタデーション調整剤添加量にした以外は、実施例1と同様の方法により表1に示す諸物性を有す膜厚81μmの本発明のセルロースアシレートフィルム010を得た。
本発明の実施例1〜7及び比較例の効果を表1に示す。
(表1)
【0333】
【表1】

【0334】
表1によれば、セルロースアシレートフィルム008及び009はフィルム中の残留硫酸量が少ない条件で作製されたため剥離抵抗が大きくReも高い。また、セルロースアシレートフィルム010は逆に残留硫酸量が多すぎるためにReは低いが耐久性が悪化する。一方、本発明のセルロースアシレートフィルム001〜007はともにフィルム中の残留硫酸量が30ppm以上にあるため剥離抵抗が少なくReが低く抑えられている。
【0335】
[実施例8〜11]
(セルロースアシレートフイルム011〜014の作製)
平均酢化度、硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表2記載のセルロースアシレートを用い、かつ光学的異方性を低下する化合物(B−1)を表2に記載の添加量用いた以外は、実施例1と同様の方法により表2に示す諸物性を有す本発明のセルロースアシレートフィルム011〜014を得た。
【0336】
[比較例4〜6]
(セルロースアシレートフイルム015〜017の作製)
平均酢化度、硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表2記載のセルロースアシレートを用い、かつ光学的異方性を低下する化合物(B−1)を表2に記載の添加量用いた以外は、実施例1と同様の方法により表2に示す諸物性を有す比較例のセルロースアシレートフィルム015〜017を得た。
本発明の実施例8〜11及び比較例4〜6の効果を表2に示す。
(表2)
【0337】
【表2】

【0338】
表2によれば、光学的異方性を低下する化合物(B−1)を用いた場合にも、光学的異方性を低下する化合物(A−19)を用いた場合(表1)と同様の効果があることがわかる。セルロースアシレートフィルム015、016はフィルム中の残留硫酸量が少ない条件で作製されたため剥離抵抗が大きくReも高い。また、セルロースアシレートフィルム017は逆に残留硫酸量が多すぎるために耐久性が悪化する。一方、本発明のセルロースアシレートフィルム011〜014はともにフィルム中の残留硫酸量が30ppm以上であるため剥離抵抗が少なくReが低く抑えられている。
【0339】
[実施例12]
(セルロースアシレートフイルム018の作製)
平均酢化度、硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表3記載のセルロースアシレートを用い、光学的異方性を低下する化合物(A−19)を表3に記載の添加量用い、かつセルロースアシレートフィルムの残留硫酸量が本発明の範囲に入るようにセルロースアシレート溶液中に含硫黄剥離剤(RZ−10)を添加した以外は、実施例1と同様の方法により表3に示す諸物性を有す本発明のセルロースアシレートフィルム018を得た。
【0340】
[実施例13,14]
(セルロースアシレートフイルム019〜020の作製)
平均酢化度、硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表3記載のセルロースアシレートを用い、光学的異方性を低下する化合物(B−1)を表3に記載の添加量用い、かつセルロースアシレートフィルムの残留硫酸量が本発明の範囲に入るようにセルロースアシレート溶液中に含硫黄剥離剤(RZ−10)を添加した以外は、実施例1と同様の方法により表3に示す諸物性を有す本発明のセルロースアシレートフィルム019〜020を得た。
【0341】
[比較例7〜8]
(セルロースアシレートフイルム021〜022の作製)
平均酢化度、硫酸量、及びアルカリ土類金属の含有量が表3記載のセルロースアシレートを用い、かつ光学的異方性を低下する化合物(B−1)を表3に記載の添加量用いた以外は、(剥離剤を添加することなく)実施例1と同様の方法により表3に示す諸物性を有す比較例のセルロースアシレートフィルム021〜022を得た。
本発明の実施例12〜14及び比較例7、8の効果を表3に示す。
(表3)
【0342】
【表3】

【0343】
表3によれば、残留硫酸量が本発明の範囲にないセルロースアシレートを用いた場合に、硫酸を添加することで(表1)と同様に剥離抵抗を下げる効果があることがわかる。セルロースアシレートフィルム021はフィルム中の残留硫酸量が少ない条件で作製されたため剥離抵抗が大きくReも高い。また、セルロースアシレートフィルム022は逆に残留硫酸量が多すぎるためにReは低いが耐久性が悪化する。一方、本発明のセルロースアシレート018〜020はともにフィルム中の残留硫酸量が30ppm以上にあるため剥離抵抗が少なくReが低く抑えられている。
【0344】
[実施例15]
(偏光板の作製)
実施例1で得た本発明のセルロースアセテートフイルム試料001を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレートフイルムの表面をケン化した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、アルカリけん化処理したセルロースアシレートフイルム試料001を2枚用意して偏光膜を間にして貼り合わせ、両面がセルロースアシレートフイルム001によって保護された偏光板を得た。この際両側のセルロースアシレートフイルム試料001の遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように貼り付けた。同様にして本発明の実施例2〜14及び比較例1〜8の試料002〜022について偏光板を作製した。セルロースアシレートフイルム試料001〜026はいずれも延伸したポリビニルアルコールとの貼合性は十分であり、優れた偏光板加工適性を有していた。
【0345】
[比較例9]
実施例15において、偏光膜の保護を本発明のセルロースアシレートフイルム2枚で行う代わりに、市販のポリカーボネートフイルム「パンライトC1400」(帝人化成製)2枚を用いて同様の操作で偏光板を作製した。しかし延伸したポリビニルアルコールとの貼合性が不十分であり、ポリカーボネートフイルムは偏光膜の保護フイルムとして機能できず、偏光板加工適性に問題があった。
【0346】
[比較例10]
実施例15において、偏光膜の保護を本発明のセルロースアシレートフイルム2枚で行う代わりに、厚さ80μmのアートンフィルム(JSR製)2枚を用いて同様の操作で偏光板を作製した。しかし延伸したポリビニルアルコールとの貼合性が不十分であり、アートンフイルムは偏光膜の保護フイルムとして機能できず、偏光板加工適性に問題があった。
【0347】
[実施例16]
(偏光板耐久性)
実施例15で作製したセルロースアシレートフィルム試料001〜022を用いた偏光板を60℃95%RHの条件で500時間放置した後の偏光度を評価したところ、セルロースアシレートフィルム試料001〜009、011〜016、018〜021を用いた偏光板の耐久性は良好であった。
しかし、試料010、017、022を用いた偏光板は残留硫酸量が過剰なために耐久性は悪化した。
【0348】
[実施例17]
(IPS型液晶表示装置への実装評価)
実施例1〜14で得たセルロースアシレートフイルム試料(試料001〜007、011〜014、018〜020)および実施例15で得たそれぞれに対応する偏光板を、液晶表示装置へ実装して評価してその視認性や視野角依存性などの光学性能が十分であることを確認した。なお本実施例ではIPS型液晶セル、以下の実施例ではVA型、OCB型液晶セルを用いたが、本発明のセルロースアシレートフイルムを用いた偏光板または光学補償フイルムの用途は液晶表示装置の動作モードに限定されることはない。
【0349】
[実施例18]
(VA型、OCB型液晶表示装置への実装評価)
実施例1〜14で得た本発明のセルロースアシレートフイルム試料(試料001〜007、011〜014、018〜020)を用いて、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置での評価をしたところ、いずれの場合においてもコントラスト視野角が良好な性能が得られた。
【0350】
[実施例19]
(光学補償フイルム性能)
実施例1〜14で得た本発明のセルロースアシレートフイルム試料(試料001〜007、011〜014、018〜020)を用いて、特開平7−333433号公報の実施例1に記載の方法により光学補償フイルム試料を作製した。得られたフィルターフイルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフイルムが、光学補償用途として優れたものであることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)および(II)をみたし、かつ残留硫酸量(硫黄元素の含有量として)が30〜150ppmであることを特徴とするセルロースアシレートフイルム。
(I)0≦Re(630)≦10かつ|Rth(630)|≦25
(II)|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
【請求項2】
アルカリ土類金属の含有量が0〜60ppmであることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフイルム。
【請求項3】
平均酢化度が61.0〜62.5%であることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースアシレートフイルム。
【請求項4】
綿花リンターを主原料とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセルロースアシレートフイルム。
【請求項5】
下記式(III)、(IV)を満たす少なくとも一種以上の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(III)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(IV)0.1≦A≦30
[式中、Rth(A)はRthを低下させる化合物をA質量%含有したフィルムのRth(630)、Rth(0)はRthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(630)である。またAはフィルム原料ポリマーの質量に対するRthを低下させる化合物の添加量(質量%)である。]
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフイルム上に、Re(630)が0〜200nmかつ|Rth(630)|が0〜400nmの光学異方性層を設けてなることを特徴とする光学補償フイルム。
【請求項7】
光学異方性層がディスコティック液晶層を有することを特徴とする請求項6に記載の光学補償フイルム。
【請求項8】
光学異方性層が棒状液晶層を有することを特徴とする請求項6または7に記載の光学補償フイルム。
【請求項9】
光学異方性層がポリマーフイルムを有することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の光学補償フイルム。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフイルム、又は請求項6〜9のいずれかに記載の光学補償フイルムを少なくとも1枚、偏光子の保護フイルムとしたことを特徴とする偏光板。
【請求項11】
表面にハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けたことを特徴とする請求項10に記載の偏光板。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフイルム、又は請求項6〜9のいずれかに記載の光学補償フイルム及び請求項10または11に記載の偏光板のいずれかを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフイルム、又は請求項6〜9のいずれかに記載の光学補償フイルム及び請求項10または11に記載の偏光板、のいずれかを用いたことを特徴とするVAまたはIPS液晶表示装置。

【公開番号】特開2012−128434(P2012−128434A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−11380(P2012−11380)
【出願日】平成24年1月23日(2012.1.23)
【分割の表示】特願2005−256641(P2005−256641)の分割
【原出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】