説明

セルロースアセテートをベースとする生分解性プラスチック材料および関連する最終製品

【課題】セルロースアセテートをベースとするプラスチック材料の製造方法を提供する。
【解決手段】セルロースアセテートのフレークまたは粉末と、グリセリンエステル、クエン酸エステルおよび酒石酸エステルより選ばれる少なくとも2つの可塑剤の混合物とを混合することによるセルロースアセテートの可塑化工程を含み、その可塑化工程における温度が50℃未満に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースアセテートをベースとする生分解性プラスチック材料の製造方法および関連する最終製品に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースアセテートは、ファッション小物、髪飾り、ボタンおよびとりわけ眼鏡のフレームの製造に数十年間用いられている天然由来のセルロースのアセチル化によって得られるプラスチック材料である。
このタイプの製品の製造におけるセルロースアセテートの成功には多くの理由がある:特に、手触りの良さと冴えた色は、ファッションデザイナーやスタイリストが多数の美的効果や色の効果に変えてきた。趣味およびスタイルが連続してかつ急速に変化し発展している分野においてこれらの特性が興味深い極めて用途の広い材料にしている。
しかしながら、現在、常に「最新かつ現代風」の製品に対する配慮と共に、新しい製品と従来の製品の改良に対する調査は、環境の保護と関連したすべての問題、例えば、最終製品の処分に関連がある問題、材料の適合性と無毒性も考慮しなければならない。
したがって、セルロースアセテートをベースとする従来のプラスチック材料もまた、美学的により興味深いが、同時に、環境保護を遵守し、より高い技術的性能によって無毒性の経済的により有益なものであるように、「適合性」があり、同時に適用される最終製品のタイプの基本となる高められた美の特性を有する製品に向けた発展のために研究されている。
セルロースアセテートをベースとするプラスチック材料は、80年以上の間市場に出ている。コットンリンタや木材セルロースのような材料から得られるセルロースアセテートは、一般に、粉末またはフレークの形で入手される。
特に、顆粒を得るために、セルロースアセテートのフレークまたは粉末は、適切な可塑剤とありうる更なる添加剤の存在下に可塑化プロセスに供されなければならない。
セルロースアセテートのタイプおよび添加剤の選択が生分解性の適合性の無毒性の最終製品の製造に実質的に影響することは明白である。
【0003】
例えば、2.2以下のアセチル置換度を有するセルロースアセテートが、土壌においてかつ海環境において生分解性でありコンポスト化可能であることも知られている。より高いアセチル置換値によって、より生分解性でない製品になる。製品が生分解性でありかつ生分解速度に影響することを確実にする他の重要な要素は、セルロースアセテートの調製反応に由来するありうる残留物に加えて、可塑剤の種類と量である。
セルロースアセテートの顆粒やシートの製造に伝統的に用いられる安定化および可塑化の添加剤、例えば、ジエチルフタレート(DEP)は、分解工程において、容易に生分解されることができない物質、例えばフタル酸を放出する。処理の間と最終製品のありうる分解プロセスの間に、難燃性として他のより広く使われている可塑剤、例えばトリフェニルホスフェートまたはジフェニルクレシルホスフェートは、良好な可塑化を可能にするが、フェノールを放出し得る物質である。EC 1272/2008の規定によれば、フェノールは、皮膚との長期にわたる接触の場合に有害でありかつグループ3の変異原性である毒性物質として分類されている。
考慮されなければならない更なる要素は、最終製品、例えば眼鏡の製造業者が環境の保護に関連したすべての問題、例えば、示される原料の最終製品の処分、適合性および無毒性につながる問題を熟慮するにもかかわらず、長年にわたって強化されてきたプラスチック材料のパラメータと処理プロセスを修正するのをいずれにしても彼らがためらうことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、性能と適合性を高めるだけでなく、従来の処理プロセスを適用させることができる特性を保証するように、材料の曲げ弾性率とTg値を従来の材料と非常に似た値の範囲内に維持する製品およびプロセスを見つけることが極めて重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
出願人は、驚くべきことに、本発明のセルロースアセテートをベースとするプラスチック材料の製造方法が上記の欠点を克服することを見出した。
特に、本発明のセルロースアセテートをベースとするプラスチック材料によって、セルロースアセテートをベースとする生分解性/コンポスト化プラスチック材料を得ることができ、眼鏡製造業者分野における用途に不可欠な、美の特性、寸法安定性、前記プラスチック材料とポリカーボネートとの適合性が維持および/または増強され、眼鏡としてアセテートの従来の配合を用いた用途による場合のものに反して全ての種類のレンズと材料、PCの使用も可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の最終製品と従来の製品の生分解性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
それ故、本発明の目的は、セルロースアセテートをベースとするプラスチック材料の製造方法であって、セルロースアセテートのフレークまたは粉末と、グリセリンエステル、クエン酸エステルおよび酒石酸エステルより選ばれる少なくとも2つの可塑剤からなる可塑剤の混合物とを混合することによるセルロースアセテートの可塑化工程を含み、その可塑化工程の温度を50℃よりも低く維持することを特徴とする、前記製造方法により達成される。
次に、フレークを適切に可塑化して、その処理を可能にし、その結果最終製品の機械的特性を得る。
続いて、可塑化されたフレークの半処理製品または最終製品(シート)への変換は、以下の処理プロセス:
- 湿式ブロックに従って行われ得る:これは、セルロースアセテートやニトロセルロースの最も古い処理プロセスである。材料を融解して、塑性状態にする押出プロセスに反して、湿式ブロックプロセスにおいては、同様の状態が溶媒の使用により到達される。
【0008】
革新的な技術、本発明の目的は、示される配合と共に、「湿式ブロック」だけでなくプロセス:
- 熱間押出し;
- 圧縮成形
- 射出成形
に適用され得る。
それ故、本発明のプロセスは、以下の特徴を有する工程:
- 配合の各種成分間の摩擦によって、また、可塑化工程の間に起こる発熱反応によって生じる温度上昇を制御(50℃よりも低い温度)下で保つ冷却ジャケットを有するプラウミキサ内で行われるセルロースアセテートフレークの可塑化工程
を含む。この熱効率は、混合物に含まれる可塑化された製品の加熱によって生じる溶媒作用を回避する。
【0009】
可塑化工程の間、更に、セルロースアセテート分子間の水素結合が可塑剤とセルロースアセテートの混合物の分子間の同様の結合によって置き換えられると推定される。このプロセスのエネルギーバランスは、わずかに発熱である。
次に可塑化工程後に
- 顆粒を製造する可塑化工程からのプラスチック材料の押出し工程;顆粒の押出し工程は150から200℃までの範囲にある温度で行われる;
- 最終製品を得る顆粒の成形工程;成形された最終製品の製造のための顆粒の成形工程は、160から220℃までの範囲にある温度で行われる;
- シートのような半処理製品を製造する圧縮成形プロセスに従う押出し工程または製造工程
が続く。
【0010】
顆粒から開始するシートの押出し工程は、150から200℃までの範囲にある温度で行われる。
可塑剤の混合物を形成するエステルの例は、トリアセチンモノラクテート、グリセロールトリベンゾエート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、ブチルタートレート、アセチルトリエチルシトレート、グリセロールジアセテート、グリセロールトリアセテートである。
可塑剤の混合物は、好ましくはグリセロール酢酸エステル、より好ましくはアセチルトリエチルシトレート(ATEC)、グリセロールトリアセテート(GTA)、グリセロールジアセテート(GDA)、アジピン酸に基づく低分子量(<5000)ポリエステルを含む。
好ましい実施態様において、可塑剤の混合物は、二成分の混合物であり、可塑剤がクエン酸エステルまたは酒石酸エステルと混合したグリセロールの酢酸エステル、好ましくはグリセロール酢酸エステルとクエン酸エステルの混合物、より好ましくはアセチルトリエチルシトレート(ATEC)とグリセロールトリアセテート(GTA)の混合物である。
【0011】
可塑剤の二成分の混合物は、好ましくは1:1の質量比での可塑剤の混合物、より好ましくは1:1の質量比でのアセチルトリエチルシトレート(ATEC)とグリセロールトリアセテート(GTA)の混合物である。
特に、可塑化工程は、40,000から65,000までの範囲にある分子量(MW)を有する60%から90質量%までの範囲にある量のセルロースアセテートとアセテートと可塑剤の混合物の全質量に対して10%から40質量%までの範囲にある量の可塑剤の混合物、好ましくは20%から40質量%までの範囲にある量の可塑剤の混合物とを混合することを含む。
【0012】
分子量(MW)は、内部方法に従ってゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
可塑化工程は、5から20分までの範囲にある時間行われる。
可塑化工程において好ましくは下記の添加剤が添加される:
- プロセス安定化添加剤;
- UV放射安定化添加剤;
- IR吸収添加剤(赤外線)、好ましくは920nmの最大IR放射吸収を有するフタロシアニンに基づく;
- フォトクロミック効果を得るための添加剤;
- マーキング、レーザー光線適用によるグラフィック効果を生じるための添加剤;
- 芳香化添加剤;
- 好ましくは木材工業の加工廃棄物から得られる、すなわち、木の伐採をせずにかつ木工産業の汚染添加剤を含まない、粉砕したまたは圧砕した木材パルプ廃棄物を用いるのに適切な結合および相溶化の添加剤。
【0013】
最低の10%から最高の40%までの範囲にある可塑化度によっては、押出された顆粒は、100から150℃の範囲にあるTg(ガラス転移温度)値(TMA分析によって示される)、3,000から1,000MPaまでの範囲にある曲げ弾性率値(標準ASTM D−790に従って測定される)、30から150J/mの範囲にあるノッチ付アイゾッド衝撃強さ(標準ASTM D−256に従って測定される)および最低の140から70までの範囲にあるロックウェル表面硬度スケールR(標準ASTM D−785に従って測定される)を有する。
さまざまな可塑化度のため、さまざまなタイプの顆粒を得ることができ、それから引き続いて適用される製造技術によっては、下記の製品が得られる:押出されたシート、圧縮成形「湿式ブロック」プロセスによって得られるシートまたは成形品。
上記の物理的機械的性質、生分解性特性および組み合わせても使用し得る単一添加による性質決定の全てが上述の可塑化プロセスによって保たれかつ一定になる。
可塑化工程の間の発熱反応による発熱の結果として、前記工程の温度が50℃よりも高い温度に達するはずである場合には、いわゆる溶媒作用がある:セルロースアセテートフレークが溶解し、結果として非均一濃度の可塑剤による凝集体(ボールに似ている)を形成する。
次にこの効果はまた、続いての処理プロセスにおいて負の結果をとり、最終製品の物理的機械的特性が危うくなる。
これに反して、生じる発熱反応が熱的に制御される場合には、フレークのより良好な可塑化、可塑剤のカルボニルとセルロースアセテートの遊離ヒドロキシル間の水素結合の形成による可塑化されたブレンドのより大きな均一性およびその結果として顆粒のより良好な押出しが可能になる。
【0014】
続いての処理工程、例えばシートや押圧処理のための成分の押出しもまた促進される。
それ故、可塑化工程において用いられる可塑剤の混合物の特定の組み合わせと個々の混合条件によって、最終製品を得ることができ(例えばシート)、これが最終製品、例えば眼鏡の製造サイクルにおけるミリング、ベンディング、フォールディング、タンブリングおよびポリシングに関してかなり容易に加工され得る。
可塑剤の具体的な混合物および個々の条件下で可塑化工程を行うことによって、最終製品が得られ、これが特に、例えばアイウェアの分野に、特に適している高い物理的機械的特性を有する。
本発明の方法は、それによって特に重要な物理的機械的特性を有する最終製品を得ることができるだけでなく、健康の保護および環境に関するますます厳しい国際規制に対応する最終製品の製造を可能にするので特に興味深いものである。
特に、本発明の方法で得られる製品は、下記の利点に特徴を有する:これらの態様に関する国際規制に対応して生態学的かつ生分解性であり、したがってより環境適合性であり、フタレートを含有せず、可塑化プロセスの間にも起こり得る分解の間にもフェノールを放出せず、特定の表面光沢に特徴を有し、無臭で、低アレルギー性で、色素の移行に安定であり、他のポリマーおよび/または材料、例えばポリカーボネートと優れた加工性および適合性を有する。
更なる本発明の目的は、また、本発明の方法によって得られる最終製品、すなわち、さまざまな種類の最終製品、例えば、ファッション小物、髪飾り、ボタン、眼鏡のフレームや部品、好ましくは眼鏡のフレームや部品の製造のためのシートに関する。
【0015】
この用途形態において、すなわち眼鏡のフレームや部品の製造において、ポリカーボネートレンズの取付けを可能にする本発明のプラスチック材料の適合性が特に有利であり、従来の配合に従って製造されるセルロースアセテートに典型的なポリカーボネートレンズの亀裂現象が回避される。
実際に、本発明の方法によって製造されるシートから得られるフレームは、PCや他の材料、例えばPMMAでできているレンズの使用を可能にし、この場合にも標準ISO177−1988の規定に対応しかつ標準ISO−12870のすべての基準試験を合格する。
この材料は、寸法の観点から極めて安定であることの更なる利点を有する。更にまた、本発明の方法によって得られる材料は、フタレートを含まない製品であると明言され得る。可塑剤の混合物におけるポリエステルの存在によっても、より安定な最終製品が得ることができる;高分子物質内部で可塑剤の移動を制限することによって、実際には、染料の浮上が、同じ可塑剤においてより安定でなくより可溶性の染料さえも避けられる。
従来のセルロースアセテートに関する可塑剤および他の成分のこの制限された移動のため、最終製品は、皮膚と接触する用途を改善し、それ故、低アレルギー性であると指定され得る。
可塑化工程におけるIR吸収添加剤の存在は、最終製品の、特に眼鏡のフレームまたは成分のより短くより経済的な処理サイクルを可能にし、処理時間を短縮するので有意な利点が示される。
眼鏡のフレームのフォールディングまたは眼鏡部品および/またはシートの熱成形は、より短時間に行われる:高IR放射吸光度のため、実際には、従来の材料による必要な時間に関してより短時間で理想的な加工温度(Tg 90℃−150℃)に達して材料が一様に加熱される。眼鏡の場合、正しい温度でフォールディングおよびベンディングを行うことは、時間とともに完成した眼鏡で最良の寸法安定性を保証するのに基本的なことである。
【0016】
特に、驚くべきことに、本発明の可塑剤の混合物の使用によって、アセテートフレークを押出機に充填する際のパッキング現象、すなわちブロックの集合体を回避するかまたは溶解するだけでなく、必要な曲げ弾性率およびTg値を有する最終材料を得ることができるプロセスを行うことができた。
これに反して、特許出願CN 201010585065.9に記載されているように、単一の可塑剤の使用によって、所望の特性を有する最終製品を得ることができない。
本発明の方法によって得られる最終製品は、また、100%生分解性である製品であるという有意な利点を有する(規格ISO 14855/2によって)。実際に、本発明の方法の可塑化工程に用いられる可塑剤の個々の組み合わせは、従来の製品に対してより簡単でより迅速な生分解性プロセスを可能にする。本発明の方法に用いられる可塑剤は、水に部分的に可溶でありかつこれは高分子物質から可塑剤のより迅速な消失を可能にし、より急速に分解プロセスが生じる。本発明の方法によって得られる最終製品の生分解性に関連した更なる利点は、特殊な廃棄物の収集の代わりにコンポスト化に直接再使用可能でない最終的に処理廃棄物を運搬し得る製品の製造業者に特に明らかである。
下記の実施例は、本発明をより良く理解するために本発明を単に例示しかつ限定されないためのものとして示される。
【0017】
実施例1a)−1d)
工程1:可塑化されたブレンドの形成および添加剤の相対的添加:
15質量%のアセチルトリエチルシトレート(ATEC)および15質量%グリセロールトリアセテート(GTA)からなる可塑剤の混合物および実施例1a)と実施例1c)では70質量%、実施例1b)では69.5質量%で、実施例1d)では60質量%で以下の通り添加されているセルロースアセテートから構成されるブレンドに下記の添加剤を添加した:
実施例1a)0.2phr質量の量でオキサジンに基づくフォトクロミック効果を得る物質による添加;
実施例1b)0.5質量%の量で導入される、模様、レーザー光線の適用によるグラフィック効果を生じる具体的なコーティングで外部的に処理される特別なマイカに基づく物質による添加;
実施例1c)所望の芳香に関して1グラムの1/1000の濃度で導入される、アルコールベースに可溶な天然芳香化物質(テルペン、ケトン、アルコール等の混合物)による添加;
実施例1d)10質量%の粉砕したまたは圧砕した木材パルプ廃棄物の添加。このようにして添加される木材は、リン基を有するポリエステルに基づく結合剤と添加剤の全量に対して0.5重量%の量で適合する。
実施例1a)−1d)の配合の混合は、15分間行われ、最高温度を45℃に制御した。
【0018】
すべての実施例に共通の工程2:顆粒を生成するための工程1の終わりに得られる可塑化されたブレンドの押出し:可塑化程度に関して170から200℃の範囲にある温度で押出しプロセスを行った:特に、工程1からのプラスチック材料を、押出機のスクリューとシリンダについては185℃+/−5℃の温度および押出ヘッドの約190℃の温度で押出される。
【0019】
工程3:半処理製品の製造、例えば:
3i)導入した可塑剤に関して、170から200℃の範囲にある加工プロセスにより押出されたシート;本実施例の場合、シリンダとネジに対して185℃の温度および195℃のヘッドの温度で押出しが行われる。
3ii)圧縮形成プロセスによって製造されるシート;
3iii)湿式ブロックプロセスによって製造されるシート;
3iv)射出成形プロセスによる成形品の製造。
実施例1a)−1c)に記載されるタイプのベース配合から、すなわち、セルロースアセテート70質量%および可塑剤ミックス(GTA−ATEC)30質量%によって製造される製品によって得られた特性は、下記のものである:
流動性値:190℃−10kgにおけるMFI値22から28まで;
黄色度指数値:約4;
曲げ弾性率約1700と1900MPaに等しい。
【0020】
実施例2
下記の組成物から開始して実施例1a)〜1d)に記載されたものと完全に同じプロセスによって最終製品を調製した:
15.5質量%のアセチルトリエチルシトレート(ATEC);
15.5質量%のグリセロールトリアセテート(GTA);
68.55質量%のセルロースアセテート、下記の添加を有する:
安定剤酸化防止剤IRGANOX 1076 0.07%
安定剤エポキシ化大豆油ESONACH 0.20%
クエン酸 0.03%
IRGANOX B900−酸化防止剤と有機亜リン酸エステルの混合物 0.15%
このようにして得られた最終製品を試験して、その生分解性を実証し、得られたデータは製品が完全に生分解性であることを示した(図1、試料レーンB/45を参照のこと))。
特に、生分解性試験は2005年の規格ISO 14855に従って行い(発生した二酸化炭素の分析によるコントローラコンポスト化条件法によるプラスチック材料の最終的な好気的生分解性の定量)、本発明の最終製品は90日で97%コンポスト可能であることがわかった。
【0021】
実施例3
本発明の可塑剤混合物の使用によって驚くべきことに改善している最終製品がジエチルフタレート(DEP)を用いる当該技術の状態と更に単一の可塑剤アセチルトリエチルシトレート(ATEC)またはグリセロールトリアセテート(GTA)を用いる当該技術の状態の双方に対して得ることができることを証明するために、用いられる可塑剤のタイプと量のみを変更して実施例1a)に記載された手順に従って、最終製品を調製した。
下記の表1に示されるデータは、先行技術に記載されるように2つの可塑剤が個々に用いられる場合には、DEPを有する従来の配合と異なってアセテート化合物の熱的性質の一部を変化させることを示している。
例えば、可塑剤としてDEPを用いることによって、約45質量部の量のDEPを有する、ガラスの連続した熱作業に必要なTGであるアセテート化合物の約110℃のTGが得られる。アセテート化合物のTGの同じ値を得るために、個々に用いられる場合、59質量部のアセチルトリエチルシトレート、または個々に用いられる場合、37質量部のグリセロールトリアセテートが代わりに必要である。
しかしながら、従来の配合に対してこのような異なる量の可塑剤は、最終製品の機械的性質に対して有意な結果を有する。
驚くべきことに、本発明の可塑剤の具体的な混合物によって、半処理製品の押出しとその後の処理を、優れた加工性と、同時に、以前の実施例2に示すように、特に有意な生分解性特性を得ることにより極めて効果的に行うことができる。
【0022】
表1

【0023】
それ故、本発明の最終製品は、生分解性に関してだけでなく、当該技術の状態の可塑剤により得られたものより脆弱でない最終製品への収量に関しても当該技術の状態の製品に対して改善された特性を有し、同時にすでに強化されたプラスチック加工パラメータおよびプロセスが維持された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースアセテートをベースとするプラスチック材料の製造方法であって、
セルロースアセテートのフレークまたは粉末と、グリセリンエステル、クエン酸エステルおよび酒石酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも2つの可塑剤からなる可塑剤の混合物とを混合することによる、セルロースアセテートの可塑化工程を含み、
可塑化工程の温度を50℃よりも低く維持することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
顆粒を製造するための可塑化工程からのプラスチック材料の押出し工程であって、顆粒の押出し工程を、150から200℃までの範囲の温度で行う工程;
最終製品を得るための顆粒の成形工程であって、成形された最終製品の製造のための顆粒の前記成形工程を、160から220℃までの範囲の温度で行う工程;
シートのような半処理製品を製造するための圧縮成形プロセスまたは「湿式ブロック」の押出し工程または製造工程
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
可塑剤の混合物が、トリアセチンモノラクテート、グリセロールトリベンゾエート、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、ブチルタートレート、アセチルトリエチルシトレート、グリセロールジアセテートおよびグリセロールトリアセテートおよび/またはこれらの混合物より選ばれる少なくとも2つの可塑剤から構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
可塑剤の混合物が、グリセロールの酢酸エステル、より好ましくはアセチルトリエチルシトレート(ATEC)、グリセロールトリアセテート(GTA)、グリセロールジアセテート(GDA)およびアジピン酸に基づく低分子量(<5000)ポリエステル)を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
可塑剤の混合物が、可塑剤がクエン酸エステルまたは酒石酸エステルと混合したグリセロールの酢酸エステル、好ましくはグリセロールの酢酸エステルとクエン酸エステルの混合物である二成分の混合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
可塑剤の混合物が、可塑剤がアセチルトリエチルシトレート(ATEC)、グリセロールトリアセテート(GTA)である二成分の混合物であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
可塑剤の混合物が、可塑剤が1:1の質量比である二成分の混合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
可塑化工程が、40,000から65,000までの範囲にある分子量を有する60%から90質量%までの範囲にある量のセルロースアセテートと可塑剤の混合物の全質量に対して10%から40質量%までの範囲にある量の可塑剤の混合物、好ましくは20%から40質量%までの範囲にある量の可塑剤の混合物とを混合することを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
可塑化工程において、下記の添加剤が添加されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法:
- プロセス安定化添加剤;
- UV放射安定化添加剤;
- 好ましくは920nmで最大IR放射吸収を有するフタロシアニン(赤外線)に基づく、IR吸収添加剤、;
- フォトクロミック効果を得るための添加剤;
- マーキング、レーザー光線適用によるグラフィック効果を生じるための添加剤;
- 芳香化添加剤;
- 好ましくは木材工業の加工廃棄物から得られる、すなわち、木の伐採をせずにかつ木工産業の汚染添加剤を含まない、粉砕したまたは圧砕した木材パルプ廃棄物を用いるのに適切な結合と相溶化の添加剤。
【請求項10】
可塑化工程が、5から20分の範囲にある時間行われることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の方法によって得られた最終製品。
【請求項12】
請求項1、2、3〜10のいずれか1項に記載の方法によって得られた最終製品。
【請求項13】
ファッション小物、髪飾り、ボタン、眼鏡のフレームや部品、好ましくは眼鏡のフレームや部品のような請求項11または12に記載の最終製品。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−112821(P2013−112821A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−275117(P2012−275117)
【出願日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【出願人】(512325015)ラ−エス ラミナーティ エストルーシ テルモプラスティーチ ソシエタ ペル アチオニ (1)
【Fターム(参考)】