説明

セルロースエステルフィルムの製造方法、セルロースエステルフィルム、偏光板、及び液晶表示装置

【課題】本発明の目的は、厳しい熱環境変化でもフィルム透明性の劣化が抑制された透明耐久性に優れたセルロースエステルフィルムの製造方法を提供することにある。
【解決手段】少なくとも、セルロースエステル(A)を含むドープを調製する工程、セルロースエステル(A)とは種類の異なるセルロースエステル(B)を含む添加液を該ドープに添加する工程を含むセルロースエステルフィルムの製造方法であって、該セルロースエステル(A)、(B)はアシル基の種類、置換度に特定の関係を有し、該セルロースエステル(B)の質量割合がセルロースエステル全体の0.03%以上5.0%以下であり、かつ該セルロースエステル(B)を含む添加液が平均一次粒径10nm以下の微粒子を含有し、更にウェブを少なくとも幅手方向に1.4倍以上延伸することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースエステルフィルムの製造方法、セルロースエステルフィルム、偏光板、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロースエステルフィルムは、その透明性、優れた機械物性から液晶表示装置(LCD)の偏光板用保護フィルムとして用いられている。
【0003】
偏光板用保護フィルムとしてのセルロースエステルフィルムは、一般的に、セルロースエステルを溶剤に溶解したドープを金属支持体上に流延し、得られたドープ膜を剥離し、乾燥により溶剤を蒸発させて、フィルムを形成し、これをロール状に巻き取ることにより製造されている。
【0004】
このようなセルロースエステルの製造過程において、フィルムの滑り性が悪いと、フィルムに変形などが生じ、セルロースエステルフィルムの品質低下につながるため、フィルムにシリカなどの微粒子を添加して滑り性を付与するのが一般的である。しかしながら、フィルム中に微粒子のような異物が存在すると画像欠陥になったり、フィルムの透明性を損ない、表示装置としての機能が低下することがあるため、微粒子の凝集を防止するために様々な工夫がなされている。
【0005】
特許文献1記載の発明には、表面にメチル基を有する微粒子を用いることにより、微粒子の凝集を防止し、光透過性に優れかつ滑り性においても向上したセルローストリアセテートフィルムについて述べられている。
【0006】
また、特許文献2記載の発明には、微粒子を予め溶剤中に分散した分散液を、セルロースエステルを含む低粘度の樹脂溶液中に添加し、得られた添加液をさらにセルロースエステルを含む高粘度のドープ主材溶液に混合するドープ調整工程を含む製造方法が記載されている。この方法は、微粒子の凝集を制御するのに優れたものであり、この文献の実施例に記載されているように微粒子の凝集制御と作製するフィルムの設計都合上あるいは生産都合上、微粒子を含む分散液とドープ主材溶液のセルロースエステルの種類(アシル置換基の種類や置換度)を異ならせるものである。
【0007】
しかしながら、前記特許文献2に開示されている2種のセルロースエステルを用いる方法は、1種のセルロースエステルを用いる方法よりも微粒子の凝集を制御するのに優れているものの、微粒子とセルロースエステルを含む低粘度の添加液とセルロースエステルを含む高粘度のドープ主材溶液に混合するドープ調製工程において、混合初期に微細な凝集物が生じることを完全に抑止することはできず、従来よりも厳しい熱環境変化、例えば、ヒートショック(超低温〜高温の繰り返し)による耐久試験では微粒子凝集物によるフィルム透明性の劣化が認められ、より耐久性に優れるセルロースエステルフィルムが求められている状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−11055号公報
【特許文献2】特開2005−178239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、厳しい熱環境変化でもフィルム透明性の劣化が抑制された透明耐久性に優れたセルロースエステルフィルムの製造方法を提供することにあり、更に該製造方法を用いて製造されたセルロースエステルフィルム、それを用いた透明耐久性に優れた偏光板、及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題に対し鋭意検討の結果、セルロースエステルフィルムの厳しい熱環境変化を想定したヒートショック(超低温〜高温の繰り返し)耐久試験での透明性の劣化に対し、種類が異なるセルロースエステルの混合比率を特定の範囲にし、滑り性を付与する微粒子の平均一次粒径の範囲と、延伸倍率を特定の範囲に組み合わせることによってほぼ完全に抑制できることをつきとめ、本発明に至ったものである。
【0011】
即ち、本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0012】
1.少なくとも、セルロースエステル(A)を含むドープを調製する工程、セルロースエステル(A)とは種類の異なるセルロースエステル(B)を含む添加液を該ドープに添加する工程、該ドープを支持体上に流延する工程、支持体上からウェブを剥離し乾燥する工程、およびウェブを延伸する工程を含むセルロースエステルフィルムの製造方法であって、該セルロースエステル(A)、(B)のアシル基の種類、置換度が以下の(i)または(ii)を満たし、該セルロースエステル(B)の質量割合がセルロースエステル全体の0.03%以上5.0%以下であり、かつ該セルロースエステル(B)を含む添加液が平均一次粒径10nm以下の微粒子を含有し、更に前記フィルムを延伸する工程でウェブを少なくとも幅手方向に1.4倍以上延伸することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
(i)セルロースエステル(A)、(B)がセルロースアセテートであり、セルロースエステル(A)のアセチル基置換度をX、セルロースエステル(B)のアセチル基置換度をYとした時に、0.2≦|X−Y|≦0.6である。
(ii)セルロースエステル(A)、(B)の一方のセルロースエステルが置換度Xのアセチル基を有するセルロースアセテート、もう一方のセルロースエステルが総アシル基置換度Yで、かつ置換度Zのアセチル基、及びプロピオニル基/またはブチリル基を含み、0.2≦|X−Y|≦0.6、Z≧1.4である。
【0013】
2.前記微粒子が、アルキル基によって表面修飾されたシリカであることを特徴とする前記1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0014】
3.前記セルロースエステルフィルムが、少なくとも糖エステル化合物、または下記一般式(B)で示される構造を有するポリエステル化合物を含有することを特徴とする前記1または2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0015】
一般式(B) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシ基またはカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
4.前記1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0016】
5.偏光子の少なくとも一方の面に、前記4に記載のセルロースエステルフィルムを貼合したことを特徴とする偏光板。
【0017】
6.前記5に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に貼合したことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、厳しい熱環境変化でもフィルム透明性の劣化が抑制された透明耐久性に優れたセルロースエステルフィルムの製造方法を提供することができ、更に該製造方法を用いて製造されたセルロースエステルフィルム、それを用いた透明耐久性に優れた偏光板、及び液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程、乾燥工程および延伸工程を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法は、少なくとも、セルロースエステル(A)を含むドープを調製する工程、セルロースエステル(A)とは種類の異なるセルロースエステル(B)を含む添加液を該ドープに添加する工程、該ドープを支持体上に流延する工程、支持体上からウェブを剥離し乾燥する工程、およびウェブを延伸する工程を含むセルロースエステルフィルムの製造方法であって、該セルロースエステル(A)とセルロースエステル(B)はアシル基の種類、あるいはアシル基の置換度の少なくともどちらか一方が異なり、該セルロースエステル(B)の質量割合がセルロースエステル全体の0.03%以上5.0%以下であり、かつ該セルロースエステル(B)を含む添加液が平均一次粒径10nm以下の微粒子を含有し、更に前記ウェブを延伸する工程でフィルムを少なくとも幅手方向に1.4倍以上延伸することを特徴とし、かかる構成により、従来よりも厳しい熱環境変化、例えば、ヒートショック(超低温〜高温の繰り返し)による耐久試験でもフィルム透明性の劣化が抑制された透明耐久性に優れたセルロースエステルフィルムの製造方法を提供することができるものである。
【0022】
ヒートショックによって透明性が劣化するメカニズムの推察を述べる。
【0023】
種類が異なるセルロースエステルを混合したセルロースアシレートドープでは、2種類のセルロースエステルが完全に相溶せずに、ドープ中に微細に分散している状態と考えられる。その微細な分散の中、または近傍に微粒子が存在している。
【0024】
ドープは製膜工程中に溶剤を揮発させて乾燥させるが、不相溶のドープがあると、乾燥速度や乾燥までの収縮率の違いから、フィルム中に密度差が生じ、それが大きいと空壁などが生じると考えられる。更に比較的大きな凝集した微粒子があると、空壁を更に大きくする。ヒートショック(低温〜高温の急激な温度変化)によってフィルムは微小な膨張、収縮を繰り返すが、その際に、上述のフィルム中の密度差(空隙)が、さらに広がり、透明性を劣化させるものと考えられる。
【0025】
本発明に係る置換度を満たすドープ(A)、(B)がX、Y、Zの関係式(i)(ii)満たすものを使用することよって本発明の効果が得られる理由は、微粒子の凝集を抑え、空壁を最小限にすることができるからと推定している。(i)、(ii)2種類のドープの異質の度合いに関係しており、例えば(i)の関係で|X−Y|>0.6ならば相溶が悪く、フィルム乾燥時の空壁が大きくなりすぎて透明性が損なわれる。また、0.2<|X−Y|ではドープ(B)がドープ(A)中での微粒子の分散に作用せず、そのため凝集が強まっているために透明性が損なわれる、と推定している。
【0026】
本発明に係る平均一次粒径が10nm以下の微粒子を使用することによって本発明の効果が得られる理由は、おそらく不相溶のドープが微粒子の周囲に多く集まっており、粒子の粒径が小さいほうが不相溶のドープをより分散させるのではないかと推定している。また、ウェブの延伸を1.4倍以上に延伸することによってフィルム中の分子の移動が大きく起こり、上述のフィルム中の密度差(空隙)が均一化されるため本発明の効果が得られるものと推測される。
【0027】
従って、種類が異なるセルロースエステルの混合比率を本発明の特定の範囲にし、滑り性を付与する微粒子の平均一次粒径をより小さい範囲にし、更にウェブの延伸倍率を非常に大きい範囲にすることを組み合わせることにより、上記フィルム中の密度差(空隙)が広がることを抑制できるものと推察される。
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明のセルロースエステルフィルムの製造フローについて説明する。
【0030】
図1は本発明に係る溶液流延製膜方法の、セルロースエステル(A)を含むドープ(本発明では主ドープともいう)を調製する工程、セルロースエステル(A)とは種類の異なるセルロースエステル(B)を含む添加液を該ドープに添加する工程、該ドープを支持体上に流延する工程、支持体上からウェブを剥離し乾燥する工程、およびウェブを延伸する工程を模式的に示した図である。
【0031】
微粒子仕込釜41より濾過器44で大きな凝集物を除去し、ストック釜42へ送液する。その後、ストック釜42より主ドープ溶解釜1へ微粒子添加液を添加する。その後主ドープは主濾過器3にて濾過され、必要により紫外線吸収剤添加液がインライン添加され混合機21により混合される。
【0032】
ドープはダイ30より金属支持体31上に流延され、剥離位置33でウェブが剥離され、テンター装置34により乾燥しながら延伸される。更にロール乾燥装置35によって多数のロールで搬送されながら乾燥され、巻き取り37でロール状に巻き取られる。
【0033】
<セルロースエステル(A)、セルロースエステル(B)>
本発明に係る主ドープに含まれるセルロースエステル(A)は、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテート、セロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることができる。
【0034】
セルローストリアセテートの場合は、アセチル置換度が2.6〜3.0であることが好ましく、2.7〜2.95であることがより好ましい。アセチル置換度が2.7以上になるとフィルムの機械強度が増加し、2.95以下になるとセルロースエステルの溶解性が向上したり、異物の発生が低減されるためより好ましい。
【0035】
セロースジアセテートの場合は、アセチル置換度が2.0〜2.5であることが好ましく、2.2〜2.45であることがより好ましい。
【0036】
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることができる。特に、綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)から合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
【0037】
セルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で70000〜200000のものが好ましく、70000〜170000のものが更に好ましい。
【0038】
更に、本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値が1.4〜3.0であるセルロースエステルであることが好ましい。好ましくは1.7〜2.2の範囲である。
【0039】
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することができる。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することができる。
【0040】
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)
製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に得ることが好ましい。
【0041】
微粒子添加液には、微粒子の他にセルロースエステル(B)が含まれる。微粒子添加液中のセルロースエステル(B)の濃度は、2〜5質量%が好ましく、3〜4質量%が更に好ましい。
【0042】
本発明に係るセルロースエステル(B)は、主ドープに用いられるセルロースエステル(A)とは種類が異なるのが特徴である。
【0043】
即ち、本発明に係るセルロースエステル(A)、(B)は以下の(i)または(ii)の関係を満たすことが必要である。
【0044】
(i)セルロースエステル(A)、(B)が両方共にセルロースアセテートの場合は、(A)、(B)のアセチル基置換度X、Yの関係が0.2≦|X−Y|≦0.6である。
【0045】
または、(ii)セルロースエステル(A)、(B)のどちらかが混合脂肪酸エステルである場合は、一方が置換度Xのアセチル基を有するセルロースアセテート、もう一方が総アシル基置換度Yで、置換度Zのアセチル基、及びプロピオニル基/またはブチリル基を含み、0.2≦|X−Y|≦0.6、Z≧1.4の関係が成立することが必要である。
【0046】
本発明に係るセルロースエステル(B)は、好ましくは下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルであることが分散性に優れ、微粒子の凝集が抑えられるため、より好ましい。分散性に優れる理由として、セルロースエステルのプロピオニル基やブチリル基が微粒子の表面に吸収するなど分散剤的な効果を示すためと推定される。
【0047】
式(I) 2.2≦a+b≦2.9
式(II) 0≦a≦2.5
但し、aはアセチル基の置換度、bはプロピオニル基及び/またはブチリル基の置換度である。中でも1.4≦a≦2.5、0.1≦b≦1.0のセルロースアセテートプロピオネートが好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することができる。
【0048】
これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。
【0049】
<微粒子>
本発明に係る微粒子は、平均一次粒径10nm以下の微粒子であり、該微粒子は、無機粒子或いは有機粒子等、特に限定されるものではないが、平均一次粒径が1nm〜10nmの無機粒子を用いることが好ましい。
【0050】
上記平均一次粒径は、500個の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)等により得られる二次電子放出のイメージ写真からの目視やイメージ写真を画像処理することにより、または動的光散乱法、静的光散乱法等を利用する粒度分布計等により計測することができる。ここでいう平均一次粒径は、個数平均粒径をさす。尚、粒子が球状でない場合は、その投影面積に相当する円の直径を意味する。
【0051】
好ましい無機粒子としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等が挙げられる。これらの無機粒子は、種類、平均粒径が異なる2種以上を併用してもよく、粒子の表面を有機物により表面処理したものも好ましく用いられる。
【0052】
特に好ましい無機粒子は、これらの中でも二酸化珪素である。平均一次粒径が1nm〜10nmの二酸化珪素の具体例としては、アエロジルR812、200、300(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品などが好ましく使用できる。粒子の形状としては、不定形、針状、扁平、球状等特に制限なく使用できるが、特に球状の粒子を用いるとヘイズを調整するのが容易であり好ましい。
【0053】
また、粒子の屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましく、より好ましくは1.45〜1.65である。尚、粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定できる。
【0054】
本発明に係る微粒子は、ヘイズの低減の為にアルキル基によって表面修飾されたシリカであることが好ましい。
【0055】
表面修飾する方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば水が存在する条件下で、加水分解により、微粒子の表面に修飾する方法が挙げられる。この方法では、酸またはアルカリなどの触媒が好適に用いられ、粒子表面の水酸基と、表面修飾剤が加水分解して生じる水酸基とが、脱水して結合を形成することが一般に考えられている。
【0056】
使用可能な表面修飾剤としては、例えば、シランカップリング剤:テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−メチルフェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルフェノキシシランなどが挙げられる。
【0057】
また、チタンカップリング剤:テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート及びビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0058】
表面修飾後の微粒子に対して、表面修飾剤の割合は10〜99質量%であることが好ましく、30〜98質量%であることがより好ましい。
【0059】
上記無機粒子の含有量は、樹脂フィルムの主成分である樹脂100質量部に対して、0.01質量部〜1質量部が好ましく、本発明の効果を得る上でより好ましくは0.05質量部〜0.30質量部である。
【0060】
本発明に係る前記微粒子は、前記セルロースエステル(B)の質量割合がセルロースエステル全体の0.03%以上5.0%以下となるように調整された微粒子添加液中で分散されるが、該微粒子添加液には有機溶媒が含まれることが好ましく、微粒子の分散方法としては、前もって有機溶媒に浸してから高剪断力を有する分散機(高圧分散装置)で細分散させておくことが好ましい。
【0061】
具体的に微粒子を分散するときに使用する溶剤は、セルロースエステルフィルムの製膜時に用いられる溶剤を用いることが出来、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい。またアルコールを用いることも好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8の等が挙げられる。
【0062】
微粒子を溶剤と混合して分散するときの微粒子の濃度は5〜30質量%が好ましく、8〜25質量%が更に好ましく、10〜15質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。微粒子を溶剤と少量の樹脂(セルロースエステル(B))とを混合して分散するときの微粒子の濃度は0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%が更に好ましく、1〜3質量%が最も好ましい。樹脂の濃度は、2〜10質量%が好ましく、3〜7質量%が更に好ましく、4〜6質量%が最も好ましい。この範囲が微粒子の分散性に優れるため好ましい。
【0063】
微粒子を分散する分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズを低くでき好ましい。
【0064】
メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
【0065】
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が100kgf/cm以上であることが好ましい。更に好ましくは200kgf/cm以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが好ましい。
【0066】
上記のような高圧分散装置にはMicrofluidicsCorporation社製超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)或いはナノマイザー社製ナノマイザー、或いはウルトラタラックスがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザー、三和機械(株)製UHN−01等が挙げられる。
【0067】
このような分散物を直接ドープに添加するか、ドープと合流させ、インラインミキサーで混合して添加することも好ましい。この場合、微粒子分散液に他の添加剤である紫外線吸収剤を加え紫外線吸収剤液としてもよい。
【0068】
更に本発明では、前記セルロースエステル(B)と微粒子を加熱溶融、混練して加熱溶融物(ペレット)を調製し、ついで該加熱溶融物を有機溶媒中に溶解して樹脂溶液とし、該樹脂溶液を用いて溶液流延法によりフィルム状に製膜することが、均一な粒子分布をもつセルロースエステルフィルムを得る上で好ましい方法である。
【0069】
ペレット化は公知の方法で行うことができ、例えば、微粒子と共に乾燥樹脂(セルロースエステル(B))や可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出しし、水冷または空冷し、カッティングしてペレット化することができる。
【0070】
微粒子、乾燥樹脂、可塑剤、その他添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。粒子や酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
【0071】
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0072】
<好ましい添加剤>
本発明のセルロースエステルフィルムは、少なくとも糖エステル化合物、または下記一般式(B)で示される構造を有するポリエステル化合物を含有することが好ましい。
【0073】
一般式(B) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシ基またはカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
〈糖エステル化合物〉
糖エステル化合物は、例えば、ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基の一部がエステル化されたエステル化合物の混合物を好ましく用いることができる。
【0074】
ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物のエステル化の割合としては、ピラノース構造またはフラノース構造内に存在するOH基の70%以上であることが好ましい。
【0075】
本発明に用いられる糖エステル化合物の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。
【0077】
この他、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
【0078】
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。
【0079】
例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、更に好ましくは、スクロースである。
【0080】
ピラノース構造またはフラノース構造中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
【0081】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0082】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、酢酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0083】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができ、より、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸、ナフチル酸が好ましい。
【0084】
オリゴ糖のエステル化合物を、本発明に用いられるピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1〜12個を有する化合物として適用できる。
【0085】
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
【0086】
また、前記糖エステル化合物は、下記一般式(A)で表されるピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下縮合した化合物である。ただし、R11〜R15、R21〜R25は、炭素数2〜22のアシル基または水素原子を、m、nはそれぞれ0〜12の整数、m+nは1〜12の整数を表す。
【0087】
【化1】

【0088】
11〜R15、R21〜R25は、ベンゾイル基、水素原子であることが好ましい。ベンゾイル基は更に置換基R26を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、更にこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。オリゴ糖も本発明に係るエステル化合物と同様な方法で製造することができる。
【0089】
以下に、本発明に係る糖エステル化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0090】
【化2】

【0091】
【化3】

【0092】
【化4】

【0093】
【化5】

【0094】
【化6】

【0095】
【化7】

【0096】
【化8】

【0097】
【化9】

【0098】
【化10】

【0099】
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、糖エステル化合物をセルロースエステルフィルムの0.5〜30質量%含むことが好ましく、特には、2〜15質量%含むことが好ましい。
【0100】
〈一般式(B)で表されるポリエステル化合物〉
本発明のセルロースエステルフィルムは、例えば、下記一般式(B)で表されるポリエステル化合物を好ましく用いることができる。
【0101】
一般式(B) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシ基またはカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
一般式(B)中、Bで示されるヒドロキシ基またはカルボン酸残基と、Gで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のエステル系化合物と同様の反応により得られる。
【0102】
一般式(B)で表されるポリエステル化合物のカルボン酸成分としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、脂肪族酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0103】
一般式(B)で表されるポリエステル化合物の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
【0104】
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
【0105】
また、上記一般式(B)で表されるポリエステル化合物の炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
【0106】
一般式(B)で表されるポリエステル化合物の炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
【0107】
一般式(B)で表されるポリエステル化合物は、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものである。
【0108】
以下に、本発明に用いることのできる一般式(B)で表されるポリエステル化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0109】
【化11】

【0110】
【化12】

【0111】
【化13】

【0112】
本発明のセルロースエステルフィルムは一般式(B)で表されるポリエステル化合物をセルロースエステルフィルムの0.1〜30質量%含むことが好ましく、特には、0.5〜10質量%含むことが好ましい。
【0113】
<その他の添加剤>
〈可塑剤〉
可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤などを用いることができるがこれらに限定されるものではない。リン酸エステル系では、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等があり、フタル酸エステル系としては、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等があり、クエン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。
【0114】
また、本発明では脂肪族多価アルコールエステルを可塑剤として用いることが好ましい。脂肪族多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。
【0115】
(脂肪族多価アルコール)
本発明に用いられる脂肪族多価アルコールは、2価以上のアルコールで次の一般式(C)で表される。
【0116】
一般式(C) R1−(OH)n
但し、R1はn価の脂肪族有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
【0117】
n価の脂肪族有機基としては、アルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等)、アルケニレン基(例えばエテニレン基等)、アルキニレン基(例えばエチニレン基等)、シクロアルキレン基(例えば1,4−シクロヘキサンジイル基等)、アルカントリイル基(例えば1,2,3−プロパントリイル基等)が挙げられる。n価の脂肪族有機基は置換基(例えばヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子等)を有するものを含む。
【0118】
nは2〜20が好ましい。
【0119】
好ましい多価アルコールの例としては、例えばアドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0120】
(モノカルボン酸)
本発明に好ましく用いられる多価アルコールエステルを合成するモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0121】
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0122】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0123】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらは更に置換基を有しても良い。
【0124】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0125】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0126】
(多価アルコールエステル)
本発明に好ましく用いられる多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。保留性の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0127】
多価アルコールエステルにおけるカルボン酸は一種類でも、二種以上の混合でもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。好ましくは、分子内に芳香環もしくはシクロアルキル環を3つ以上有することが好ましい。
【0128】
本発明に好ましく用いられる多価アルコールエステルの例を以下に示す。
【0129】
【化14】

【0130】
【化15】

【0131】
【化16】

【0132】
【化17】

【0133】
多価アルコールエステルの使用量は、セルロースエステルに対して3〜30質量%が好ましく、5〜25質量%が更に好ましく、特に好ましくは5〜20質量%である。
【0134】
〈紫外線吸収剤〉
本発明のセルロースエステルフィルムは、紫外線吸収剤を含有することができ、該紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長380nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
【0135】
本発明に用いられる紫外線吸収剤は20℃の温度下で液体である紫外線吸収剤が好ましい。20℃の温度下で液体の紫外線吸収剤を使用すると、フィルムを延伸したときにリターデーション値Rtの変化が少なく好ましい。紫外線吸収剤の構造は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
【0136】
好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤であり、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。本発明に用いられる紫外線吸収剤の具体例として、例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもチバ・ジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。これらの中で、チヌビン109、チヌビン171は20℃の温度下で液体の紫外線吸収剤であり、更に好ましく使用することができる。
【0137】
本発明に係わるセルロースエステルフィルムは紫外線吸収剤を2種以上含有することが好ましい。
【0138】
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースエステルフィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、セルロースエステルフィルムに対して0.5〜4.0質量%が好ましく、0.6〜2.0質量%が更に好ましい。
【0139】
また、本発明においては、フィルムの色味を調整するために例えば青色染料等を添加剤として用いてもよい。好ましい染料としてはアンスラキノン系染料が挙げられる。アンスラキノン系染料は、アンスラキノンの1位から8位迄の位置に任意の置換基を有することができる。好ましい置換基としては、置換されても良いアニリノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、または水素原子が挙げられる。これらの染料のフィルムへの添加量はフィルムの透明性を維持するため0.1〜1000μg/m、好ましくは10〜100μg/mである。
【0140】
また、本発明においては、フィルムの色味を調整するために蛍光増白剤を添加剤として使用しても良い。
【0141】
青色染料や蛍光増白剤は、紫外線吸収剤の添加液中に添加することがフィルムの色味を調整し易く好ましい。
【0142】
<セルロースエステルフィルムの製造方法>
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法に用いられる好ましい製膜工程は、下記に示す溶解工程、流延工程、溶媒蒸発工程、剥離工程、乾燥工程及び巻き取り工程からなる。以下に各々の工程を説明する。
【0143】
《主ドープの溶解工程》
主ドープの溶解工程は、セルロースエステル(A)のフレークに、後述の良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する工程である。
【0144】
本発明では、ドープ中の固形分濃度は15質量%以上に調整することが好ましく、特に18〜35質量%のものが好ましく用いられる。
【0145】
ドープ中の固形分濃度が高過ぎるとドープの粘度が高くなり過ぎ、流延時にシャークスキンなどが生じてフィルム平面性が劣化する場合があるので、35質量%以下であることが望ましい。
【0146】
ドープ粘度は10〜50Pa・sの範囲に調整されることが好ましい。
【0147】
溶解には、常圧で行う方法、好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)の沸点以下で行う方法、上記の良溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、冷却溶解法で行う方法、高圧で行う方法等種々の溶解方法等がある。良溶媒の沸点以上の温度で、かつ沸騰しない圧力をかけて溶解する方法としては、40.4〜120℃で0.11〜1.50MPaに加圧することで発泡を抑え、かつ、短時間に溶解することができる。
【0148】
セルロースエステル(A)の代わりに、セルロースエステルフィルムの返材を用いても良い。返材の使用比率は、主ドープ等の処方値の固形分に対して0〜70質量%が好ましく、10〜50質量%が更に好ましく、20〜40質量%が最も好ましい。返材使用量の多い方が、濾過性に優れ、返材使用量の少ない方が、滑り性に優れるため、上記範囲にすることが好ましい。
【0149】
返材を使用した場合は、その使用量に対応して、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子などセルロースエステルフィルムに含まれる添加剤は減量して、最終的なセルロースエステルフィルム組成が設計値になるように調整を行う。
【0150】
主ドープを作製する際に使用される溶媒としては、セルロースエステル(A)を溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、また単独で溶解出来ない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解できるものであれば使用することができる。一般的には良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステル(A)の貧溶媒からなる混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中には貧溶媒を4〜30質量%含有するものが好ましく用いられる。
【0151】
この他使用できる良溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(即ち、良溶媒)として挙げられる。酢酸メチルを用いると、得られるフィルムのカールが少なくなるため特に好ましい。
【0152】
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることが出来、これらの貧溶媒は単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0153】
溶解後セルロースエステル溶液(ドープ)を濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送ることが好ましく、また、その際、ドープ中には、前述の添加剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が好ましく添加される。
【0154】
これらの添加物は、セルロースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
【0155】
このようにして得られたドープに、セルロースエステル(A)とは種類の異なるセルロースエステル(B)と微粒子を含む添加液(微粒子分散液)を該ドープに添加、混合し、以下に説明する流延工程を経てセルロースエステルフィルムを得ることができる。
【0156】
《流延工程》
ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルト或いは回転する金属ドラムの流延用支持体(金属支持体)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。
【0157】
その他の流延する方法は流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、いずれも好ましく用いられる。
【0158】
製膜速度を上げるために加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。或いはダイの内部をスリットで分割し、組成の異なる複数のドープ液を同時に流延(共流延とも言う)して、積層構造のセルロースエステルフィルムを得ることもできる。
【0159】
このように、得られたドープをベルトまたはドラム等の支持体上に流延し、製膜するが、本発明は特にベルトを用いた溶液流延製膜法で特に有効である。これは後述のように支持体上での乾燥条件を細かく調整することが容易だからである。
【0160】
《溶媒蒸発工程》
ウェブ(本発明においては、流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率が好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するにはこの温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
【0161】
特に本発明のセルロースエステルフィルムは、流延から30〜90秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが望ましい。30秒未満で剥離するとフィルムの面品質が低下するだけでなく、透湿性の点でも好ましくない。90秒を越えて乾燥させると剥離性が悪化することなどによる面品質の低下や、フィルムに強いカールが発生するため好ましくない。
【0162】
《剥離工程》
支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で支持体から剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で十分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0163】
支持体上の剥離位置における温度は、好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。該剥離位置におけるウェブの残留溶媒量は25〜120質量%が好ましく、更に好ましくは40〜100質量%である。
【0164】
本発明に係るウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
【0165】
残留溶媒量=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100%
尚、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0166】
上記のように剥離時の残留溶媒量を調整するには、流延後の流延用支持体の表面温度を制御し、ウェブからの有機溶媒の蒸発を効率的に行えるように、流延用支持体上の剥離位置における温度を上記の温度範囲に設定することが好ましい。支持体温度を制御するには、伝熱効率のよい伝熱方法を使用するのがよく、例えば、液体による裏面伝熱方法が好ましい。
【0167】
輻射熱や熱風等による伝熱方法は支持体温度のコントロールが難しく、好ましい方法とはいえないが、ベルト(支持体)マシンにおいて、移送するベルトが下側に来た所の温度制御には、緩やかな風でベルト温度を調節することができる。
【0168】
支持体の温度は、加熱手段を分割することによって、部分的に支持体温度を変えることが出来、流延用支持体の流延位置、乾燥部、剥離位置等異なる温度とすることができる。
【0169】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)として、残留溶媒が多くとも剥離できるゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。
【0170】
それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。
【0171】
支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることもできる。
【0172】
《延伸工程》
本発明のセルロースエステルフィルムは、ウェブを少なくとも幅手方向に1.4倍以上延伸することを特徴とする。延伸の範囲は1.4〜2.0倍であることが好ましく、1.5〜2.0倍であることがより好ましい。1.4倍未満ではフィルム中の分子の移動が小さく、フィルム中の密度差(空隙)を均一化することができない。
【0173】
延伸は製膜した後、残留溶剤量が40質量%以上であるときに該フィルムをMD方向(流延方向、長手方向)に延伸を開始し、かつ残留溶剤量が40質量%未満であるとき、TD方向(幅手方向)に延伸することが好ましい。
【0174】
セルロースエステルフィルムのMD方向の延伸倍率は、1.05〜1.3倍であることが好ましく、1.05〜1.15倍が更に好ましい。
【0175】
MD方向に延伸するために、剥離張力を130N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは150〜170N/mである。剥離後のウェブは高残留溶剤状態であるため、剥離張力と同様の張力を維持することで、MD方向への延伸を行うことができる。ウェブが乾燥し、残留溶剤量が減少するに従って、MD方向への延伸率は低下する。
【0176】
尚、MD方向の延伸倍率は、ベルト支持体の回転速度とテンター運転速度から算出できる。
【0177】
TD方向に延伸するには、例えば、特開昭62−46625号に示されているような乾燥全工程或いは一部の工程を幅方向にクリップまたはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
【0178】
テンターを行う場合の乾燥温度は、本発明のような高倍率の延伸の場合、100〜250℃が好ましく、130〜240℃が更に好ましく、160〜220℃が最も好ましい。乾燥温度の低い方が紫外線吸収剤、可塑剤などの蒸散が少なく、工程汚染に優れ、乾燥温度の高い方がフィルムの平面性、弾性率に優れる。
【0179】
本発明のセルロースエステルフィルムは延伸することにより必然的にリターデーションを有するが、面内リターデーション値Roは自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率Nx、Ny、Nzから算出することができる。
【0180】
面内リターデーション値Roは20〜200nmであることが好ましく、かつ厚み方向のリターデーション値Rtが70〜400nmの範囲であることが好ましい。
【0181】
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(式中、nx、ny、nzはそれぞれ屈折率楕円体の主軸x、y、z方向の屈折率を表し、かつ、nx、nyはフィルム面内方向の屈折率を、nzはフィルムの厚み方向の屈折率を表す。また、nx≧nyであり、dはフィルムの厚み(nm)を表す。)
Nz、θを求める三次元屈折率測定の際の光の波長590nm、πは円周率である。
【0182】
《乾燥工程》
ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置を用いて、ウェブを乾燥する工程である。乾燥工程における搬送張力も可能な範囲で低めに維持することがRoが低く維持できるため好ましく、190N/m以下であることが好ましい。更に好ましくは170N/m以下であることが好ましく、更に好ましくは140N/m以下であることが好ましく、100〜130N/mであることが特に好ましい。特に、フィルム中の残留溶媒量が少なくとも5質量%以下となるまで上記搬送張力以下に維持することが効果的である。
【0183】
乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥温度は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0184】
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは幅方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。
【0185】
この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。
【0186】
また、フィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を0.5質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、更に好ましくは0〜0.01質量%以下とすることである。
【0187】
《巻き取り工程》
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからセルロースエステルフィルムとして巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
【0188】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0189】
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。
【0190】
また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0191】
セルロースエステルフィルムの膜厚は、使用目的によって異なるが、仕上がりフィルムとして、通常5〜500μmの範囲にあり、更に10〜250μmの範囲が好ましく、特に液晶画像表示装置用フィルムとしては10〜120μmの範囲が用いられる。本発明のセルロースエステルフィルムは特に、10〜60μmの膜厚の薄いフィルムの範囲でより効果を発揮する。
【0192】
〈セルロースエステルフィルムの物性〉
本発明のセルロースエステルフィルムの透湿度は、40℃、90%RHで300〜1800g/m・24hが好ましく、更に400〜1500g/m・24hが好ましく、40〜1300g/m・24hが特に好ましい。透湿度はJIS Z 0208に記載の方法に従い測定することができる。
【0193】
本発明のセルロースエステルフィルムの破断伸度は10〜80%であることが好ましく20〜50%であることが更に好ましい。
【0194】
本発明のセルロースエステルフィルムの可視光透過率は90%以上であることが好ましく、93%以上であることが更に好ましい。
【0195】
本発明のセルロースエステルフィルムのヘイズは1%未満であることが好ましく0〜0.1%であることが特に好ましい。
【0196】
〈偏光板〉
本発明のセルロースエステルフィルムは、偏光板、それを用いた液晶表示装置に使用することができる。
【0197】
偏光板は、前記本発明のセルロースエステルフィルムを、偏光子の少なくとも一方の面に貼合した偏光板であることが特徴である。本発明の液晶表示装置は、少なくとも一方の液晶セル面に、本発明に係る偏光板が、粘着層を介して貼り合わされたものであることが特徴である。
【0198】
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明のセルロースエステルフィルムの偏光子側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
【0199】
もう一方の面には該セルロースエステルフィルムを用いても、また他のフィルムを貼合することも好ましい。
【0200】
例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。
【0201】
表示装置の表面側に用いられる偏光板の視認側保護フィルムには、防眩層あるいはクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することが好ましい。
【0202】
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
【0203】
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
【0204】
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。
【0205】
中でも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。
【0206】
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能および耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
【0207】
以上のようにして得られた偏光子は、通常、その両面または片面に保護フィルムが貼合されて偏光板として使用される。貼合する際に用いられる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、中でもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。
【0208】
〈液晶表示装置〉
上記本発明のセルロースエステルフィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に用いることによって、種々の視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することができる。
【0209】
本発明のセルロースエステルフィルムは、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置に用いることができる。好ましくはVA(MVA,PVA)型液晶表示装置である。
【0210】
特に画面が30型以上の大画面の液晶表示装置であっても、色味むら、正面コントラストなど視認性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
【実施例】
【0211】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0212】
実施例1
実施例で用いる微粒子A〜E、添加剤A〜Dを以下に示す。
【0213】
【表1】

【0214】
【化18】

【0215】
<セルロースエステルフィルム101の作製>
〈微粒子分散液1〉
微粒子A(アエロジルR976 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0216】
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライド、及びセルロースエステル(B)を入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
【0217】
メチレンクロライド 90質量部
セルロースエステル(B)(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度0.9)
5質量部
微粒子分散液1 5質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースアセテート(アセチル基置換度2.9)を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
【0218】
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースエステル(A)(セルローストリアセテート:アセチル基置換度2.9)
100質量部
添加剤A 10質量部
微粒子添加液1 10質量部
チヌビン928(チバ・ジャパン(株)製) 2.5質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、1.7m幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
【0219】
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
【0220】
剥離したセルロースアセテートフィルムを、175℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に50%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は10%であった。
【0221】
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
【0222】
次いで、スリッターにより、所定のフィルム幅に裁断した後、エンボス装置によりフィルム端部付近にエンボス高さ6μmを目標に加工を行った。
【0223】
以上のようにして、フィルム幅2.45m、乾燥膜厚40μmのセルロースエステルフィルム101を得た。
【0224】
<セルロースアセテートフィルム102〜142の作製>
ドープ構成物及び製造条件を表2、表3に示すように変更した以外は、セルロースエステルフィルム101と同様にしてセルロースエステルフィルム102〜142を作製した。
【0225】
【表2】

【0226】
【表3】

【0227】
《評価》
得られた各々のセルロースエステルフィルムについて、以下の要領で初期ヘイズ、ヒートショック後のヘイズ、滑り性を測定した。
【0228】
(初期ヘイズ)
上記作製したセルロースエステルフィルムについて、ヘイズ値を測定した。測定はフィルム試料1枚で、日本電色工業株式会社製NDH2000を用いJIS−K7136に従って測定し、以下の基準で評価した。
【0229】
○:ヘイズが0.5%未満
△:ヘイズが0.5〜1.0%未満
×:ヘイズが1.0%以上
(ヒートショック後のヘイズ)
上記作製したセルロースエステルフィルムについて、85℃環境で30分間保存後、急激に−40℃環境に切り替えて30分間保存後、再度85℃環境に戻すサイクル試験を100サイクル行った後、ヘイズを測定し、以下の基準で評価した。
【0230】
○:ヘイズが0.5%未満
△:ヘイズが0.5〜1.0%未満
×:ヘイズが1.0%以上
(滑り性:ブロッキング耐性)
巻き取ったフィルム原反試料をポリエチレンシートで2重に包み、25℃、50%RHの条件下で30日間保存した。その後、ポリエチレンシートを開け、フィルムを巻きだし、ブロッキングの発生を下記基準にて目視で評価した。
【0231】
○:ブロッキングなし
△:変形はないがサンプルに少し跡が残る
×:サンプルをほぐす時に強い抵抗がある
【0232】
【表4】

【0233】
本発明のセルロースエステルフィルムは、初期ヘイズ、ヒートショック後のヘイズ、滑り性が比較例に比べ優れていることが明らかである。
【0234】
実施例2
<偏光板201〜242の作製>
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。
【0235】
これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
【0236】
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と前記セルロースエステルフィルム101〜142と、裏面側にはコニカミノルタタックKC8UY(コニカミノルタオプト(株)製セルロースエステルフィルム)を貼り合わせて偏光板201〜142を作製した。
【0237】
工程1:60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したセルロースエステルフィルム101〜142とコニカミノルタタックKC8UYを得た。
【0238】
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0239】
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したセルロースエステルフィルム101〜142の上にのせて配置した。
【0240】
工程4:工程3で積層したセルロースエステルフィルム101〜142と偏光子と裏面側コニカミノルタタックKC8UYを圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0241】
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とセルロースエステルフィルム101〜142とコニカミノルタタックKC8UYとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、それぞれ、セルロースエステルフィルム101〜142に対応する偏光板201〜242を作製した。
【0242】
<液晶表示装置の作製>
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
【0243】
SONY製40型ディスプレイBRAVIA X1の予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板201〜242をそれぞれ液晶セルのガラス面の両面に貼合した。
【0244】
その際、その偏光板の貼合の向きは、本発明のセルロースエステルフィルムの面が、液晶セル側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、それぞれ、偏光板201〜242に対応する液晶表示装置301〜342を各々作製した。
【0245】
この液晶表示装置についてコントラストについて評価したところ、本発明のセルロースエステルフィルムを用いた偏光板を装着した液晶表示装置は、コントラストムラのない視認性に優れた液晶表示装置であることが確認された。
【符号の説明】
【0246】
1 溶解釜
3、6、12、15 濾過器
4、13 ストックタンク
5、14 送液ポンプ
8、16 導管
10 紫外線吸収剤仕込釜
20 合流管
21 混合機
30 ダイ
31 金属支持体
32 ウェブ
33 剥離位置
34 テンター装置
35 ロール乾燥装置
41 微粒子仕込釜
42 ストックタンク
43 ポンプ
44 濾過器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、セルロースエステル(A)を含むドープを調製する工程、セルロースエステル(A)とは種類の異なるセルロースエステル(B)を含む添加液を該ドープに添加する工程、該ドープを支持体上に流延する工程、支持体上からウェブを剥離し乾燥する工程、およびウェブを延伸する工程を含むセルロースエステルフィルムの製造方法であって、該セルロースエステル(A)、(B)のアシル基の種類、置換度が以下の(i)または(ii)を満たし、該セルロースエステル(B)の質量割合がセルロースエステル全体の0.03%以上5.0%以下であり、かつ該セルロースエステル(B)を含む添加液が平均一次粒径10nm以下の微粒子を含有し、更に前記フィルムを延伸する工程でウェブを少なくとも幅手方向に1.4倍以上延伸することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
(i)セルロースエステル(A)、(B)がセルロースアセテートであり、セルロースエステル(A)のアセチル基置換度をX、セルロースエステル(B)のアセチル基置換度をYとした時に、0.2≦|X−Y|≦0.6である。
(ii)セルロースエステル(A)、(B)の一方のセルロースエステルが置換度Xのアセチル基を有するセルロースアセテート、もう一方のセルロースエステルが総アシル基置換度Yで、かつ置換度Zのアセチル基、及びプロピオニル基/またはブチリル基を含み、0.2≦|X−Y|≦0.6、Z≧1.4である。
【請求項2】
前記微粒子が、アルキル基によって表面修飾されたシリカであることを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記セルロースエステルフィルムが、少なくとも糖エステル化合物、または下記一般式(B)で示される構造を有するポリエステル化合物を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
一般式(B) B−(G−A)n−G−B
(式中、Bはヒドロキシ基またはカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表し、またnは1以上の整数を表す。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【請求項5】
偏光子の少なくとも一方の面に、請求項4に記載のセルロースエステルフィルムを貼合したことを特徴とする偏光板。
【請求項6】
請求項5に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に貼合したことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−246538(P2011−246538A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119080(P2010−119080)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】