説明

セルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の清掃方法

【課題】 液晶表示装置(LCD)の偏光板用保護フィルム、位相差フィルム等に用られるセルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の清掃方法であって、支持体表面の汚れを非常に効率的にしかも確実に除去することができ、最近の高精細、低反射処理したフィルムを使用する装置で顕在化し、問題となっているところの、支持体汚れが転写したヘイズっぽいムラを防止する。しかも清掃後に再び汚れる度合いが少なく、優れた品質を有するセルロースエステルフィルムを長時間継続して製造することができる清掃方法を提供する。
【解決手段】 金属支持体表面を、酸性水溶液、純水、水に非相溶な有機溶剤をそれぞれ浸した清掃布で、前記の順で拭くことにより、支持体表面の汚れを拭き取り、そのときの支持体表面温度を10〜30℃までの温度範囲とし、かつ上記酸性水溶液のpHを、上記の支持体表面温度で3.0〜5.5の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の清掃方法に関するものである。
【0002】
また本発明は、特に液晶表示装置(LCD)等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム、あるいはまた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等にも利用することができるセルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の清掃方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
近年、液晶画像表示装置(LCD)は種々のところに使用されるに伴って、LCDに使用される液晶画像表示素子すなわち偏光板についても高生産性化(生産量増大)が求められている。しかも、液晶画像表示装置(LCD)については薄型化が進んでおり、LCDに使用される偏光板についても薄膜化が要望されている。
【0004】
このようなセルロースエステルフィルムは、一般に、溶液流延製膜法により製造されている。このセルロースエステルフィルムの製造方法は、まず、セルロースエステルを、例えばメチレンクロライド等のセルロースエステルに対する良溶媒と、例えばメタノール、エタノール、ブタノールあるいはシクロヘキサン等のセルロースエステルに対する貧溶媒とを加えた混合溶媒に溶解し、これに可塑剤や紫外線吸収剤を添加して、セルロースエステル樹脂溶液(以下、ドープとも呼ぶ)を調製し、ドープを、鏡面処理された表面を有する無限移行する無端の金属支持体(例えば金属製ベルトあるいはドラム、以下、金属支持体とも呼ぶ)上に流延ダイから均一に流延し、金属支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(以下、ウェブとも呼ぶ)が固化した後、これを剥離ロールで剥離し、これを移送ロールで移送し、さらに乾燥装置あるいはテンターを通して乾燥させ、セルロースエステルフィルムを得るものである。
【0005】
このように、セルロースエステルフィルムの製造方法としては、溶液流延製膜法が一般的であるが、上記偏光板の高生産性化に伴い、偏光板用保護フィルムとしてのセルロースエステルフィルムの高生産性化(生産量増大)が進むと、製膜速度の高速化に伴って、金属支持体表面が汚れるサイクルも短くなってきている。
【0006】
溶液流延製膜装置によるセルロースエステルフィルムの製造において、上記のような金属支持体表面の汚れは、主に原料の酢綿中に微量に含まれる金属塩などの不純物が金属支持体表面に蓄積したものであると考えられ、これらがフィルムに転写して、その部分がモヤモヤした不定形のヘイズっぽい汚れとなってしまう。このような場合、生産を中止して清掃し直す必要がある。また清掃が的確に行なわれなかった場合には、短時間で汚れが再発し、清掃をやり直さなければならない。
【0007】
このような溶液流延製膜装置によるセルロースエステルフィルムの製造において、金属支持体の清掃方法に関わる先行特許文献には、つぎのようなものがある。
【特許文献1】特開2002−28943号公報 特許文献1には、溶液流延製膜装置によるセルロースエステルフィルムの製造において、横段の発生、すなわちフィルムの横段状の膜厚ムラ(横段状故障)の発生を防止するためのセルロースエステルフィルムの製造方法が開示されている。
【0008】
特許文献1においては、セルロースエステルフィルムを製造するに当たり、フィルム横段の発生の原因は種々あるが、金属支持体表面の汚れ具合によっても横段が発生することが記載されており、そのため、特許文献1記載の発明では、溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムを製造する際、無限移行する無端の金属支持体面を、用具を用いて清掃する方法であって、純水を用具に含ませて拭く操作、及び有機溶媒を用具に含ませて拭く操作を行なうものであり、特に、純水で拭く操作の後に、有機溶媒で拭く操作を行なうことにより、フィルムの横段状の膜厚ムラ(横段状故障)の発生を防止するというものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1記載の清掃方法では、金属支持体表面の汚れを充分に除去することができないという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、セルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の汚れを非常に効率的にしかも確実に除去することは勿論のこと、最近の高精細、低反射処理したフィルムを使用する装置で顕在化し、問題となっているところの、支持体汚れが転写したヘイズっぽいムラを防止することができて、フィルムの横段状の膜厚ムラ(横段状故障)の発生を防止することができ、ひいては液晶表示装置(LCD)等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム、あるいはまた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等に適した品質の良いセルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の清掃方法を提供しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、セルロースエステルフィルムの製造装置において、金属支持体表面への汚れの付着・蓄積は、ドープに溶解した原料セルロースエステルに含まれる種々の極微量不純物が、金属支持体表面に流延された後の乾燥時に過飽和状態となって析出するものであり、これらの汚れは、支持体表面に強固に析出・付着するために、純水と有機溶媒のみで拭き取るのは、非常に時間がかかり、生産性を大きく低下させていた。そして、これらの汚れを短時間に完全に拭き取る方法を検討した結果、金属支持体表面を稀薄な酸性水溶液を浸した清掃布で拭いた後に、純水を浸した清掃布で拭いて酸性成分をぬぐい取り、その後、水に非相溶な有機溶剤を浸した清掃布で拭くことにより、金属支持体表面の汚れを拭き取ることが、最も良い方法であることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の清掃方法は、無限移行する無端の金属支持体上にセルロースエステル樹脂溶液(ドープ)を流延し、金属支持体上で溶剤を蒸発させ、ドープ膜(ウェブ)が固化した後、これを剥離ロールで剥離し、これを乾燥させることよりなる溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造装置において、金属支持体表面を、酸性水溶液、純水、水に非相溶な有機溶剤をそれぞれ浸した清掃布で、前記の順で拭くことにより、金属支持体表面の汚れを拭き取り、そのときの金属支持体表面温度を10〜30℃までの温度範囲とし、かつ上記酸性水溶液のpHを、上記金属支持体表面温度で3.0〜5.5の範囲とすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の清掃方法によれば、金属支持体表面を、酸性水溶液、純水、水に非相溶な有機溶剤をそれぞれ浸した清掃布で、前記の順で拭くことにより、金属支持体表面の汚れを拭き取り、そのときの金属支持体表面温度を10〜30℃までの温度範囲とし、かつ上記酸性水溶液のpHを、上記金属支持体表面温度で3.0〜5.5の範囲とするものであるから、セルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の汚れを短時間に完全に拭き取ることができて、金属支持体表面を非常に短時間に効率的に清掃することができ、製膜速度の高速化に伴って、金属支持体表面が汚れるサイクルも短くなっても、充分に対応することができて、ひいては液晶表示装置(LCD)等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム、あるいはまた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等に適した品質の優れたセルロースエステルフィルムの製造に寄与し得るという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の清掃方法において、対象となるセルロースエステルとしては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどが好ましく用いられる。セルローストリアセテートの場合は、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%のセルローストリアセテートが好ましく、結合酢酸量が58〜62.5%がベース強度が強く、より好ましい。特に好ましくは、総アシル基置換度2.85未満のセルロースエステルである。
【0016】
上記セルローエステルは、綿花リンターから合成されたセルローエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステルのどちらかを単独で、あるいは混合して用いることができる。
【0017】
本発明において、セルロースエステルの具体的な製造方法については、例えば特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成することができる。
【0018】
本発明において、セルロースエステルの数平均分子量は、低すぎると強度が低くなり、高すぎると溶液の粘度が高くなりすぎる場合があるので、70000〜300000が好ましく、さらに80000〜200000が好ましい。
【0019】
エンドレスベルトやドラムよりなる金属支持体からの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用した方が生産性効率が高く好ましい。綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が60質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため、60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、さらには、単独で使用することが最も好ましい。
【0020】
特に総アシル基置換度が2.85未満のセルロースエステルフィルムは、寸法変化を低減できるため好ましく、さらに総アシル基置換度が2.75未満のセルロースエステルフィルムであることが好ましく、特に2.70未満のセルロースエステルフィルムで著しい効果が認められる。
【0021】
本発明において、機械的強度や寸法安定性等の点から可塑剤を添加することが好ましく、その添加量としては、セルロースエステルフィルムあるいはセルロースをアセチル基及び炭素原子数3〜4のアシル基でアシル化したセルロースエステルフィルムに対する質量%で、3〜30質量%にすることが好ましく、10〜30質量%がより好ましく、15〜25質量%が特に好ましい。一般に、可塑剤の添加量が増加すると、寸法変化しやすくなるが、上記の範囲であれば、寸法変化率を低減させることができる。
【0022】
本発明で用いることのできる可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることができる。
【0023】
リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤として、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤として、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤として、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることができる。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸などを用いることができる。
【0024】
グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコールなどを用いることができる。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いても良いし、二種以上混合して用いても良い。ポリエステルの分子量は重量平均分子量で500〜2000の範囲にあることが、セルロース樹脂との相溶性の点から好ましい。
【0025】
また、本発明では特に200℃における蒸気圧が1333Pa未満の可塑剤を用いることが好ましく、より好ましくは蒸気圧666Pa以下、さらに好ましくは1〜133Paの化合物である。不揮発性を有する可塑剤は特に限定されないが、例えばアリーレンビス(ジアリールホスフェート)エステル、リン酸トリクレシル、トリメリット酸トリ(2−エチルヘキシル)等が上げられる。
【0026】
これらの可塑剤は単独あるいは2種以上併用して用いることができる。
【0027】
本発明において、セルロースエステルフィルムには、液晶材料の保護などのために紫外線吸収剤を用いることが好ましく、紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。
【0028】
本発明では、膜厚が20〜250μmのフィルムにおいて、波長370nmでの透過率を10%以下にすることによって偏光板の耐久性を劣化させることなく好ましい偏光板を提供することができる。波長370nmの透過率は5%以下であることがより好ましく、2%以下であることが特に好ましい。
【0029】
本発明において、セルロースエステルフィルムに添加される紫外線吸収剤は、分子内に芳香族環を2つ以上有する紫外線吸収剤が、特に好ましく用いられる。
【0030】
一般に用いられるものとしては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。あるいは、特開平6−148430号公報、特開2000−273437号公報記載の高分子紫外線吸収剤も、好ましく用いることができる。
【0031】
本発明においてはこれら紫外線吸収剤を単独で用いても良いし、異なる2種以上の混合で用いても良い。
【0032】
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤等である。不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤をセルロースエステルフィルムに添加するという態様が特に好ましい。
【0033】
紫外線吸収剤の添加方法はアルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶剤に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0034】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の使用量は紫外線の吸収効果、透明性の観点からセルロースエステルに対する質量%で、0.1〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜2.5質量%、さらに好ましくは0.8〜2.0質量%である。
【0035】
本発明において、セルロースエステルフィルム中には、下記の一般式(1)で表わされるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が含有されることが好ましい。
【化1】

【0036】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は同一又は異ってもよく、水素原子、ハロゲン原子(塩素、臭素、沃素、フッ素等の各原子)、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、アミノプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、クロロブチル、n−アミル、iso−アミル、ヘキシル、オクチル、ノニル、ステアリルアミドブチル、デシル、ドデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどの各基)、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、メタアリル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、オクタデセニルなどの各基)、アリール基(例えばフェニル、4−メチルフェニル、4−エトキシフェニル、2−ヘキソキシフェニル、3−ヘキソキシフェニルなどの各基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、クロロブトキシ、デコキシ、ジアミノフェノキシ、エトキシ、ペンタデコキシ、オクタデコキシなどの各基)、オキシカルボニル基(例えば、カルボメトキシ、カルボブトキシ、カルボヘキソキシ、カルボペンタデコキシなどの各基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、4−メチルフェノキシ、2−プロピルフェノキシ、3−アミルフェノキシなどの各基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、t−ブチルチオ、t−オクチルチオ、ベンジルチオなどの各基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、メチルフェニルチオ、エチルフェニルチオ、メトキシフェニルチオ、エトキシフェニルチオ、ナフチルチオなどの各基)、モノ又はジアルキルアミノ基(例えば、N−エチルアミノ、N−t−オクチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジ−t−ブチルアミノなどの各基)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、メタンスルホニルアミノなどの各基)、酸素原子又は窒素原子を含む5又は6員の複素環残基(例えば、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジノ、ピペラジノなどの複素環残基)を示し、R4はR5と共に炭素原子からなる5又は6員環を形成してもよい。
【0037】
上記の一般式(1)において、R1〜R5で示される置換基は、炭素数5〜36を有するものであることが好ましく、アルキル基は炭素数1〜18を有するものであることが好ましい。
【0038】
つぎに、上記一般式で表される化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
(1−1):2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール
(1−2):2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール
(1−3):2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
(1−4):2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール
(1−5):2−(2′−ヒドロキシ−5′−イソオクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール
(1−6):2−(2′−ヒドロキシ−5′−n−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール
(1−7):2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)−ベンゾトリアゾール
(1−8):2−(2′−ヒドロキシ−5′−ドデシルフェニル)−ベンゾトリアゾール
(1−9):2−(2′−ヒドロキシ−5′−ヘキサデシルフェニル)−ベンゾトリアゾール
(1−10):2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−アミル−5′−ベンゾフェニル)−ベンゾトリアゾール
また、本発明において、セルロースエステルフィルムには、必要に応じてマット剤として酸化珪素のような微粒子などを加えても支障はない。酸化珪素のような微粒子は有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。微粒子の平均径が大きい方がマット効果は大きく、平均径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均径は5〜50nmでより好ましくは7〜14nmである。
【0040】
酸化珪素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600などがあげられ、好ましくはAEROSIL 200、200V、R972、R972V、R974、R202、R812などがあげられる。
【0041】
本発明において、セルロースエステルフィルムの製造方法は特に制限はなく、当業界で一般に用いられている方法でよく、例えば米国特許2,492,978号、同2,739,070号、同2,739,069号、同2,492,977号、同2,336,310号、同2,367,603号、同2,607,704号、英国特許64,071号、同735,892号、特公昭45−9074号、同49−4554号、同49−5614号、同60−27562号、同61−39890号、同62−4208号等に記載の方法を参考にすることができる。
【0042】
本発明において、ドープ液に用いられる溶剤は、単独でも併用でもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が30〜2質量%である。
【0043】
本発明において、ドープ液に用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。そのため、セルロースエステルの平均酢化度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いるときには、セルロースエステルの結合酢酸量55%では良溶剤になり、結合酢酸量60%では貧溶剤となってしまう。
【0044】
本発明において、ドープ液に用いられる良溶剤としては、特に限定されないが、例えばセルローストリアセテートの場合はメチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、セルロースアセテートプロピオネートの場合はメチレンクロライド、アセトン、酢酸メチルなどが挙げられる。
【0045】
また、本発明において、ドープ液に用いられる貧溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、i−プロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。
【0046】
上記のドープ液を調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。
【0047】
加圧容器の種類は特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、攪拌ができればよい。加圧容器はそのほか圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行なってもよい。加熱は外部から行なうことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0048】
溶剤を添加しての加熱温度は、使用溶剤の常圧での沸点以上で、かつ該溶剤が沸騰しない範囲の温度がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高すぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70〜105℃の範囲がさらに好ましい。又、圧力は設定温度で、溶剤が沸騰しないように調整される。
【0049】
セルロースエステルと溶剤のほかに必要な可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
【0050】
溶解後は、冷却しながら容器から取り出すか、または容器からポンプ等で抜き出して熱交換器などで冷却し、これを製膜に供するが、このときの冷却温度は常温まで冷却してもよいが、沸点より5〜10℃低い温度まで冷却し、その温度のままキャスティングを行なう方が、ドープ粘度を低減できるためより好ましい。
【0051】
製膜の金属支持体には、表面を鏡面に仕上げられたステンレス製のエンドレスベルトもしくはドラムが使用される。
【0052】
ドープは、加圧型定量ギヤポンプを通して流延ダイに送液され、流延位置においてドープを流延ダイから押し出して上記の金属支持体上に流延する。製膜時の金属支持体温度は、一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で流延することができる。このとき、周囲の雰囲気湿度は露点以上に制御する必要がある。
【0053】
その他、流延方法としては、流延されたドープ膜をブレードで膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。
【0054】
製膜速度を上げるために加圧ダイを流延用金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層製膜してもよい。
【0055】
金属支持体上での流延膜(ドープ膜)の乾燥は、使用溶剤の低沸、混合溶剤では低沸溶剤の沸点未満に温度制御したドープを流延ダイから金属支持体上にほぼ均一な膜厚になるよう流延し、流延膜中の残留溶剤量が対固形分重量200%以上では流延膜温度が溶剤沸点以下に、また100〜200%の範囲では溶剤沸点+10℃以下、100%以下〜剥離までは溶剤沸点+20℃以下の範囲になるように、温風や温水あるいは赤外線ヒーターにて流延膜を乾燥させる。
【0056】
金属支持体上では、流延膜中の残留溶剤量が150%以下まで乾燥させるのが望ましく、さらには金属支持体への膜の剥離残りの発生及び剥離する際のフィルム変形を低減できる点から120%以下が好ましい。
【0057】
金属支持体から流延膜を剥離するときの膜温度は、0〜30℃が大きな膜強度が得られる点で望ましく、空気中の水滴凝縮を防止するために5〜30℃がより好ましい。
【0058】
また、流延ダイ・スリットと金属支持体表面との間隙は0.5〜5mmの範囲が好ましい。また、金属支持体のウェブ搬送速度が10m/分以上では、流延ダイ・スリットから出てくる流延膜に減圧を掛けて、エアの混入や、ドープの流延の際の流延リボンのバタツキを抑制して、フィルム幅手方向に横段状のスジ(横段状の膜厚ムラ)が生じないようにするのが望ましい。減圧チャンバの減圧は、流延膜厚や金属支持体のウェブ搬送速度によって適点が変わるが、概ね50〜800Paの範囲が実用的である。
【0059】
減圧チャンバ下端と金属支持体との間隙は、吸引風量が大きくなり過ぎず、すなわち吸引風量が大きくなり過ぎると、流延ダイ・スリット端部にドープの乾燥皮膜ができるため、また充分な減圧値を得るために、0.5〜5mm程度が好ましく、減圧チャンバを−100Pa以上まで減圧する場合は、0.5〜3mmがより好ましい。
【0060】
上記のような条件で、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造装置を長期間連続運転して製膜すると、金属支持体表面にセルロースエステル原料に微量に含まれる金属塩などの不純物が、汚れとして蓄積してくる。
【0061】
これらの汚れを除去するには、純水もしくは水溶性溶剤だけでの拭き取り操作、あるいは水に相溶性のない有機溶剤だけの拭き取り操作を行なうと、汚れの除去は困難である。
【0062】
本発明の方法は、このような溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造装置において、ドープを流延する金属支持体表面の清掃を、酸性水溶液、純水、水に非相溶な有機溶剤をそれぞれ浸した清掃布で、前記の順で拭くことにより、金属支持体表面の汚れを拭き取り、そのときの金属支持体表面温度を10〜30℃までの温度範囲とし、かつ上記酸性水溶液のpHを、上記金属支持体表面温度で3.0〜5.5の範囲とするものであり、本発明の清掃方法によって、金属支持体表面上に付着蓄積した汚れをきわめて短時間に除去できるものである。
【0063】
なお、ここで言う、酸性水溶液としては、酢酸水溶液、乳酸水溶液、プロピオン酸水溶液、硝酸水溶液、炭酸水溶液、酪酸水溶液、および塩酸水溶液などが挙げられる。
【0064】
また、上記の水に非相溶な有機溶剤とは、例えばシクロヘキサン、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピル、エチレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0065】
そして、本発明の清掃方法によれば、金属支持体表面の清掃を、酸性水溶液、純水、水に非相溶な有機溶剤をそれぞれ浸した清掃布で、前記の順で拭くことにより、金属支持体表面の汚れを短時間に完全に拭き取ることができる。
【0066】
本発明において使用する清掃布(用具)は、長繊維を用いた不織布が好ましく用いられる。長繊維としては、セルロースが好ましい。半導体関連機器等の精密機械に使用する清掃用のもので、水や有機溶媒を充分に吸収し、有機溶媒に溶解せず、かつ繊維が脱離しないようなものであれば、制限なく使用できる。このような清掃布(用具)の市販品としては、旭化成株式会社製のベンコットシリーズがあり、ベンコットM−1やM−3を好ましく用いることができる。
【0067】
本発明の方法が良い詳細な理由はよくわからないが、金属支持体表面を稀薄な酸性水溶液を浸した清掃布で拭くと、ドープに溶解した原料セルロースエステルに含まれる種々の極微量不純物が酸性水溶液中の酸性成分により活性化して、金属支持体表面から剥がれやすくなり、この後、純水を浸した清掃布で拭いて酸性成分をぬぐい取り、さらに、水に非相溶な有機溶剤を浸した清掃布で拭くことにより、金属支持体表面の汚れを完全に拭き取ることができるためではないかと考えられる。
【0068】
また、本発明による金属支持体表面の清掃方法において、金属支持体表面の汚れを拭き取るときの金属支持体表面温度を、10〜30℃までの温度範囲とする。その理由は、この温度範囲で本発明による清掃を行なうと、金属支持体表面の汚れを効率的に除去できる。この温度範囲より高くても、低くても清掃効率は低下する。
【0069】
さらに、本発明においてによる金属支持体表面の清掃方法においては、金属支持体表面の汚れを拭き取るときの酸性水溶液のpHを、上記金属支持体表面温度でpH3.0〜pH5.5の範囲とするものである。
【0070】
ここで、金属支持体表面の汚れを拭き取るときの酸性水溶液のpHが、3.0未満であれば、繰り返し清掃されることで、金属支持体表面が徐々に腐食して、表面粗さが粗くなり、荒れた表面には却って汚れが強固に付着し、蓄積が速くなってしまうので、好ましくない。また酸性水溶液のpHが、5.5を超えると、汚れが落ちにくくなり、純水拭き取りのときと差がなくなってしまうので、好ましくない。
【0071】
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の清掃方法によれば、金属支持体表面の汚れを短時間に完全に拭き取ることができて、金属支持体表面を非常に短時間に効率的に清掃することができる。
【0072】
従って、製膜速度の高速化に伴って、金属支持体表面が汚れるサイクルも短くなっても、充分に対応することができて、ひいては液晶表示装置(LCD)等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム、あるいはまた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等に適した品質の優れたセルロースエステルフィルムの製造に寄与し得るものである。
【実施例】
【0073】
つぎに、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
実施例1
(二酸化珪素微粒子分散液の調製)
アエロジル927V(日本アエロジル株式会社製) 12重量部
(一次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル)
エタノール 88重量部
以上の材料をディゾルバーで30間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行なった。分散後の液濁度は200ppmであった。この二酸化珪素微粒子分散液に、88重量部のメチレンクロライドを攪拌しながら投入し、ディゾルバーで30間攪拌混合し、二酸化珪素微粒子分散希釈液を作製した。
【0075】
(インライン添加液の調製)
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ社製) 11重量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ社製) 5重量部
メチレンクロライド 100重量部
以上の材料を密閉容器に投入し、加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、濾過した。これに二酸化珪素微粒子分散希釈液36重量部を攪拌しながら加えて、さらに30間攪拌した後、セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度1.9、プロピオニル置換度0.8)6重量部を攪拌しながら加えて、さらに60間攪拌した後、ポリプロピレンワインドカートリッジフィルター−TCW−PPS−1N(アドバンテック東洋株式会社製)で濾過紙、インライン添加液を調製した。
【0076】
(ドープの調製)
セルロースエステル 100重量部
(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、
Mn=148000、Mw=310000、Mw/Mn=2.1
アセチル置換度2.92)
トリフェニルフォスフェート 8.5重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
メチレンクロライド 440重量部
エタノール 40重量部
以上の材料を密閉容器に投入し、70℃まで加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙株式会社製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液を調製した。
【0077】
ついで、製膜ライン中で日本製綿株式会社製のファインメットNFでドープ液を濾過した。インライン添加液ライン中で、日本製綿株式会社製のファインメットNFでインライン添加液を濾過した。
【0078】
濾過したドープ液100重量部に対し、濾過したインライン添加液2重量部を加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機Hi−Mixer、SWJ)で充分に混合し、ついでベルト流延装置を用い、温度30℃のステンレス鋼製エンドレスベルトよりなる支持体上に均一な膜厚で流延した。そして、エンドレスベルト支持体上で残留溶媒量が70重量%になるまで溶媒を蒸発させた後、ウェブを支持体上から剥離した。
【0079】
支持体上から剥離したウェブは、搬送ロールが千鳥配置状に設けられかつ乾燥熱風により雰囲気温度100℃に調整された乾燥ゾーン内を搬送しながら乾燥し、膜厚80μm、フィルム中の残留溶媒量が0.5重量%のフィルムを得た。
【0080】
この条件で、それぞれ12時間連続で製膜を行ない、停機した後、エンドレスベルト支持体が保温用ドラムに抱かれる位置まで回し、保温用ドラムに一定温度の保温水を流して、エンドレスベルト支持体の温度が一定になるようにしてから、下記の表1に示す条件で清掃を行なった。
【0081】
この実施例では、清掃布(ベンコットM−1、旭化成株式会社製)に、20℃でpH3.5の硝酸水溶液を浸して、温度20℃と一定としたエンドレスベルト支持体の表面を拭いた後、もう1枚の清掃布(ベンコットM−1)に純水を浸してそれを拭き取り、最後に、水が乾く前にさらにもう1枚の清掃布(ベンコットM−1)にメチレンクロライドを浸して、支持体に水が残らないように拭き取った。
【0082】
そして、この時の清掃時間を計測した後、再度、上記の連続製膜を行ない、清掃されたエンドレスベルト支持体表面の汚れ度合いを、つぎの方法により評価した。
【0083】
(評価方法)
1.清掃時間:
エンドレスベルトの特定区間10mの表面を、目視で白っぽく見える部分がなくなるまで拭き取るのに要した時間を計測した。
【0084】
2.清掃・製膜を経た後のエンドレスベルト支持体表面の汚れ度合い:
清掃後に再度連続製膜を行ない、得られたセルロースアセテートフィルムのヘイズを測定し、エンドレスベルト支持体表面の汚れ度合いとして評価した。
【0085】
<フィルムのヘイズ>
支持体の清掃した部分において流延製膜されたフィルムをサンプリングし、その中から無作為に10箇所選んで、JIS K6714に規定される方法に従って、ヘイズメーター(1001DP型、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。得られた結果を、下記の表1にあわせて示した。
【0086】
比較例1〜5
つぎに、比較のために、上記実施例1の場合と同様に、セルローストリアセテートフィルムの製造装置の流延操作を12時間続けた後、清掃布(ベンコットM−1、旭化成株式会社製)を用いてエンドレスベルトの特定区間10mの表面を実施例1の場合と同様に拭き取った。ここで、比較例1では、上記実施例1の場合と同様に、硝酸水溶液→純水→メチレンクロライドの順で拭き取るが、その時のエンドレスベルトの温度を、本発明の範囲外である7℃とし、比較例2では、エンドレスベルトの温度を、本発明の範囲外である33℃とした。また、比較例3では、上記実施例1の場合と同様に、硝酸水溶液→純水→メチレンクロライドの順で拭き取り、その時のエンドレスベルトの温度を、本発明の範囲内である20℃とするが、硝酸水溶液のpHを、本発明の範囲外である2.5とし、比較例4では、硝酸水溶液のpHを、本発明の範囲外である6.0とした。さらに、比較例5では、硝酸水溶液を用いず、純水→メチレンクロライドの順で拭き取り、その時のエンドレスベルトの温度を、本発明の範囲内である20℃とした。
【0087】
そして、これらの比較例1〜5において清掃時間を計測した後、再度、上記実施例1の場合と同様に連続製膜を行ない、清掃されたエンドレスベルト支持体表面の汚れ度合いを、実施例1の場合と同様にして評価した。
【0088】
下記の表1に、比較例1〜5における清掃条件を示すとともに、得られた評価結果をあわせて示した。
【表1】

【0089】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1の清掃方法によれば、短時間でエンドレスベルト表面の汚れを落とすことができた。また、清掃後に再び汚れる度合いが最も少なかった。従って、本発明の方法によれば、偏光板の保護フィルムに適した優れた品質を有するセルローストリアセテートフィルムを長時間継続して製造することができた。
【0090】
これに対し、比較例1〜5では、上記実施例1の場合よりも清掃時間が長くかかったり、清掃後の汚れ方が速かったりして、本発明の実施例のように、清掃時間と清掃後の汚れ抑制の両方を満たすものはなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無限移行する無端の金属支持体(金属製ベルトあるいはドラム、以下、金属支持体とも呼ぶ)上にセルロースエステル樹脂溶液(以下、ドープとも呼ぶ)を流延し、金属支持体上で溶剤を蒸発させ、ドープ膜(以下、ウェブとも呼ぶ)が固化した後、これを剥離ロールで剥離し、これを乾燥させることよりなる溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造装置において、金属支持体表面を、酸性水溶液、純水、水に非相溶な有機溶剤をそれぞれ浸した清掃布で、前記の順で拭くことにより、金属支持体表面の汚れを拭き取り、そのときの金属支持体表面温度を10〜30℃までの温度範囲とし、かつ上記酸性水溶液のpHを、上記金属支持体表面温度で3.0〜5.5の範囲とすることを特徴とする、セルロースエステルフィルムの製造装置における金属支持体表面の清掃方法。

【公開番号】特開2006−110881(P2006−110881A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301196(P2004−301196)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】