説明

セルロースエステル樹脂用添加剤、それを用いたセルロースエステル樹脂組成物及び光学フィルム

【課題】セルロースエステル樹脂からなるフィルムに高いレターデーション値を付与することができるセルロースエステル樹脂用添加剤、それを用いたセルロースエステル樹脂組成物及び光学フィルムを提供する。
【解決手段】直鎖状アルキレンジオール(a−1)及び分岐状アルキレンジオール(a−2)と、テレフタル酸等のジカルボン酸又はそのアルキルエステルである芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)と、芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)とをエステル化反応させて得られるエステル化合物であって、直鎖状アルキレンジオール(a−1)と分岐状アルキレンジオール(a−2)とのモル組成比(a−1)/(a−2)が85/15〜15/85の範囲であり、かつ前記エステル化合物の数平均分子量が300〜2,000の範囲であるエステル化合物(A)からなることを特徴とするセルロースエステル樹脂用添加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースエステル樹脂に添加することで偏光子保護フィルム等の光学フィルムに高いレターデーション値を付与することができるエステル化合物からなるセルロースエステル樹脂用添加剤、それを用いたセルロースエステル樹脂組成物、及び光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースエステル樹脂フィルムは透明性、光学的等方性、強靭性であることから、写真用フィルムとして使用されてきた。近年では、上記性質に加えてポリビニルアルコール(PVA)との接着性が良好なことから、テレビ、ノートパソコン等の液晶表示装置の偏光板を構成するとしての需要が飛躍的に伸長している。
【0003】
一般に液晶表示装置用偏光板は、PVAフィルムに二色性分子を配向させた偏光子の両側に偏光子保護フィルムを貼付した構造となっており、液晶セルの両側にクロスニコルの状態で配置されている。偏光子保護フィルムにはセルロースエステル樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が使用されているが、セルロースエステル樹脂を使用する場合、透湿性が高いために、外部からの湿気の透過により偏光子保護フィルムと偏光子とが剥離したり、偏光子が劣化したりする欠点があった。そこで、両者の持続的な接着性を確保するために、偏光子保護用のセルロースエステル樹脂フィルムには、耐透湿性向上効果のあるトリフェニルホスフェート(以下、「TPP」と略記する。)等の燐酸エステル系可塑剤が添加されてきた。
【0004】
しかし近年、液晶表示装置の軽量・薄型化の要求が高まってきており、偏光子保護フィルムの通常の厚さである80μmをさらに薄膜化して、30〜50μm程度の厚さに薄膜化する検討が進められている。この30〜50μm程度に薄膜化された偏光子保護フィルムにおいては、TPPの添加だけでは十分に外部からの湿気の透過を防止することができない問題があった。
【0005】
また、偏光子保護フィルムに耐透湿性を付与する手法として、偏光子保護フィルムのベース樹脂であるセルロースエステル樹脂に、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールと安息香酸とを反応させて得られるエステル化合物を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このエステル化合物を含有するセルロースエステル樹脂フィルムは、30〜50μm程度に薄膜化した場合、十分な耐透湿性を維持することができない問題があった。また、このエステル化合物は、比較的低分子量の化合物であることから、フィルムの製造における加熱乾燥工程で揮発しやすく、フィルム製造装置を構成するロール等を汚染する問題があった。
【0006】
一方、液晶表示装置には、視野角拡大機能が要求されており、斜め方向から見た場合の光漏れによるコントラスト低下を防止するために、従来から位相差フィルムを偏光子保護フィルムに重ねることで視野角補償が図られてきた。上記のように、近年は、液晶表示装置の軽量・薄型化の要求が高まってきており、これに対応するために、偏光子保護フィルム及び位相差フィルムの2枚のフィルムの機能を、位相差機能を付与した偏光子保護フィルムの1枚に集約することが検討されている。
【0007】
上記の位相差機能を付与した偏光子保護フィルムは光学異方性を有することで厚さ方向の位相差を発現し、液晶表示装置の視野角を補償するものである。一般に位相差の程度は、レターデーション値によって把握することが可能である。特にフィルムの厚さ方向のレターデーション値(以下、「Rth値」と略記する。)によって、位相差の程度を把握することが行われている。このRth値を高める材料として、レターデーション上昇剤といわれるもので、偏光子保護フィルムに添加して所望の位相差に調整されている。また、レターデーション上昇剤の偏光子保護フィルムへの添加量に応じて、偏光子保護フィルムのRth値を調整することが可能である。したがって、同量の添加量で比較した場合、Rth値をより高くできるレターデーション上昇剤であるほど、偏光子保護フィルムのRth値を調整できる範囲が広がり、偏光子保護フィルムの薄型化にも対応できるため、Rth値をできるだけ高くできる材料が求められている。
【0008】
なお、厚さ方向のRth値とは、下記式(1)で定義される値である。
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d (nm) (1)
(式中、nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
【0009】
偏光子保護フィルムに位相差機能を付与する材料として、偏光子保護フィルムのベース樹脂であるセルロースエステル樹脂に、両末端に芳香族基を有するジエステル化合物と、両末端及び分子鎖中に芳香族環式構造を有するポリエステル化合物との混合物からなるエステル化合物を添加する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このエステル化合物は、偏光子保護フィルムのRth値を向上することはできたが、さらに要求されているより高いRth値には十分に応えることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−096236号公報
【特許文献2】特開2008−069225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、セルロースエステル樹脂からなるフィルムに高いRth値、透明性及び耐透湿性を付与することができ、高温多湿下での耐ブリード性に優れ、かつ製造工程で揮発しにくいエステル化合物からなるセルロースエステル樹脂用添加剤、それを用いたセルロースエステル樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる光学フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意研究した結果、直鎖状アルキレンジオールと、分岐状アルキレンジオールと、芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステル化合物と、芳香族モノカルボン酸又はそのアルキルエステル化合物とをエステル化反応させて得られるエステル化合物のうち、直鎖状アルキレンジオールと分岐状アルキレンジオールとのモル組成比が特定の範囲で、かつ特定の範囲の分子量を有するエステル化合物をセルロースエステル樹脂用添加剤として用いると、セルロースエステル樹脂からなる光学フィルムに高いRth値、透明性及び耐透湿性を付与することができ、高温多湿下での耐ブリード性に優れ、かつフィルムの製造工程で揮発しにくいセルロースエステル樹脂用添加剤が得られることを見出し、発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、直鎖状アルキレンジオール(a−1)及び分岐状アルキレンジオール(a−2)と、テレフタル酸、テレフタル酸ジアルキルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)と、芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)とをエステル化反応させて得られるエステル化合物であって、直鎖状アルキレンジオール(a−1)と分岐状アルキレンジオール(a−2)とのモル組成比(a−1)/(a−2)が85/15〜15/85の範囲であり、かつ前記エステル化合物の数平均分子量が300〜2,000の範囲であるエステル化合物(A)からなることを特徴とするセルロースエステル樹脂用添加剤、それを用いたセルロースエステル樹脂組成物、及び当該樹脂組成物からなる光学フィルムに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤は、セルロースエステル樹脂に添加することにより、フィルムに高いRth値、透明性及び耐透湿性を付与することができる。また、本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤は、高温多湿下での耐ブリード性を有し、フィルム製造工程で揮発しにくいという優れた効果を有する。さらに、本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤を含有するセルロースエステル樹脂組成物からなるフィルムは、各種光学フィルムに使用することが可能であり、なかでも光学補償機能を必要とする偏光子保護フィルムに非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤であるエステル化合物(A)は、直鎖状アルキレンジオール(a−1)及び分岐状アルキレンジオール(a−2)と、テレフタル酸、テレフタル酸ジアルキルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)と、芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)とをエステル化反応させて得られるエステル化合物であって、直鎖状アルキレンジオール(a−1)と分岐状アルキレンジオール(a−2)とのモル組成比(a−1)/(a−2)が85/15〜15/85の範囲であり、かつ前記エステル化合物の数平均分子量が300〜2,000の範囲であるエステル化合物である。
【0016】
前記エステル化合物(A)は、直鎖状アルキレンジオール(a−1)と、分岐状アルキレンジオール(a−2)と、テレフタル酸、テレフタル酸ジアルキルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)と、芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)とをエステル化反応させることによって製造することができる。
【0017】
直鎖状アルキレンジオール(a−1)としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、Rth値を向上する効果が高い点で、炭素原子数が2〜6の範囲内のものが好ましい。また、炭素原子数が2〜6の範囲内のものの中でも、エチレングリコールがより好ましい。また、これらの直鎖状アルキレンジオール(a−1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0018】
分岐状アルキレンジオール(a−2)としては、例えば、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中でも、後述するセルロースエステル樹脂(B)との相溶性が高く、光学フィルムとして高温多湿の環境下における耐ブリード性にも優れることから、炭素原子数が3〜6の範囲内のものが好ましい。また、炭素原子数が3〜6の範囲内のものの中でプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール及びネオペンチルグリコールがより好ましく、プロピレングリコールが特に好ましい。また、これらのアルキレンジオール(a−2)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0019】
前記直鎖状アルキレンジオール(a−1)と分岐状アルキレンジオール(a−2)とのモル組成比(a−1)/(a−2)は、85/15〜15/85(モル%)の範囲である。エチレングリコール(a−1)が85モル%を超えるとセルロースエステル樹脂(B)との相溶性や溶液流延法でフィルムを作製する際に有機溶媒に対する溶解性が低下し、直鎖状アルキレンジオール(a−1)が15モル%未満であると高いRth値の発現が不十分となる。また、本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤を用いた光学フィルムの透明性をより向上するためには、前記モル組成比(a−1)/(a−2)は、80/20〜20/80(モル%)の範囲が好ましい。なお、この直鎖状アルキレンジオール(a−1)と分岐状アルキレンジオール(a−2)とのモル組成比(a−1)/(a−2)は、エステル化合物(A)のクロロホルム−d(CDCl)溶液をH−NMR装置で分析して、前記エステル化合物(A)中の直鎖状アルキレンジオール(a−1)単位と分岐状アルキレンジオール(a−2)単位とのモル比から算出したものである。
【0020】
本発明では、本発明の効果を損なわない範囲内で直鎖状アルキレンジオール(a−1)及び分岐状アルキレンジオール(a−2)以外の他のアルコールを使用してもよい。このアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、アミルアルコール、オクチルアルコール、ラウリルアルコール、乳酸メチル、乳酸エチル等のモノアルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、n−ブトキシエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ダイマージオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキシレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等のジオール、グリセリン、ソルビトール、リビトール、ペンタエリトリトール等の多価アルコールなどが挙げられる。これらの他のアルコールは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0021】
本発明で用いる芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)は、テレフタル酸、テレフタル酸ジアルキルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上のものである。これらの芳香族ジカルボン酸化合物は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0022】
前記テレフタル酸ジアルキルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステル及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジアルキルエステルのアルキル基としては、炭素原子数1〜8のものが挙げられ、炭素原子数3以上のものは直鎖アルキル基であっても分岐アルキル基であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。また、2つのアルキル基は相互に同一であっても、異なるものであってもよい。
【0023】
前記テレフタル酸ジアルキルエステルの具体例としては、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジペンチル、テレフタル酸ジヘキシル、テレフタル酸ジヘプチル等が挙げられる。これらのテレフタル酸ジアルキルエステルの中でも、テレフタル酸ジメチルを原料として用いたセルロースエステル樹脂用添加剤は、該添加剤を含有するセルロースエステル樹脂組成物からなる光学フィルムに高いRth値を付与することができ、かつ高温多湿の環境下での耐ブリード性にも優れるため耐久性を有したフィルムを得ることができるので好ましい。
【0024】
前記2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステルの具体例としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジプロピル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジブチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジペンチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヘキシル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジへプチル等が挙げられる。これらの2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステルの中でも、アルキル基がメチル基である2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルが好ましい。
【0025】
前記4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジアルキルエステルとしては、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジエチル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジプロピル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジブチル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジペンチル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジヘキシル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジへプチル等が挙げられる。また、これらの4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジアルキルエステルの中でも、アルキル基がメチル基である4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチルが好ましい。
【0026】
さらに、前記エステル化合物(A)の製造において、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他のジカルボン酸もしくはそのアルキルエステル化合物、又はカーボネート化合物を併用することができる。前記ジカルボン酸又はそのアルキルエステル化合物としては、脂肪族ジカルボン酸もしくは芳香族ジカルボン酸、又はこれらのアルキルエステル化合物を使用することができる。前記脂肪族ジカルボン酸又はそのアルキルエステル化合物としては、例えば、コハク酸、コハク酸ジメチル、グルタル酸、グルタル酸ジメチル、アジピン酸、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、ピメリン酸、ピメリン酸ジメチル、スベリン酸、スベリン酸ジメチル、アゼライン酸、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸、セバシン酸ジメチル、デカンジカルボン酸、デカンジカルボン酸ジメチル、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、ダイマー酸、ダイマー酸ジメチル、フマル酸、フマル酸ジメチル等が挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステル化合物としては、フタル酸、フタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル等が挙げられる。さらに、カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのその他のジカルボン酸もしくはそのアルキルエステル化合物、又はカーボネート化合物は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。本発明の効果であるセルロースエステル樹脂組成物からなる光学フィルムへ高いRth値を付与するためには、前記芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)とその他のジカルボン酸等との合計100質量部中の前記芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)の使用量を95質量部以上とすることが好ましい。
【0027】
本発明に用いる芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)としては、例えば、安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、テトラメチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ブチル安息香酸、クミン酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、メトキシ安息香酸、ジメトキシ安息香酸、トリメトキシ安息香酸、シアノ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフトエ酸、ニコチン酸、フロ酸、アニス酸、桂皮酸、又はこれらの芳香族モノカルボン酸のアルキルエステル化合物もしくは酸塩化物が挙げられる。これらの中でも、反応性が高く、セルロース樹脂との相溶性に優れ、かつ高いRth値の付与できることから、パラトルイル酸、安息香酸が好ましい。これらの芳香族モノカルボン酸化合物は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0028】
本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤であるエステル化合物(A)は、反応器に、直鎖状アルキレンジオール(a−1)と、分岐状アルキレンジオール(a−2)と、テレフタル酸、テレフタル酸ジアルキルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)と、芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)とを仕込み、加熱してエステル化反応させることによって得ることができる。
【0029】
前記エステル化合物(A)を製造する際に用いる反応設備としては、加圧、減圧に対応した反応設備が好ましく、反応器、攪拌機、精留塔、還流冷却器、減圧するためのポンプ等を備えた一般的な装置を用いることができる。
【0030】
前記エステル化合物(A)を製造する際に、エステル化反応を促進する目的で、エステル化触媒を用いることが好ましい。このエステル化触媒としては、周期律表2族、3族、12族、13族及び14族からなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属や有機金属化合物が挙げられる。より具体的には、例えば、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ハフニウム、ゲルマニウム等の金属;チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート、オクタン酸スズ、2−エチルヘキサンスズ、アセチルアセトナート亜鉛、4塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウムテトラヒドロフラン錯体、4塩化ハフニウム、4塩化ハフニウムテトラヒドロフラン錯体、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム等の金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール(a−1)、プロピレングリコール(a−2)、芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)及び芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)の反応性、取扱いやすさ、エステル化反応により得られたエステル化合物(A)の保存安定性が良好であるチタンアルコキサイド類、具体的にはチタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンオキシアセチルアセトナート等を用いるのが好ましい。
【0031】
また、前記エステル化触媒の使用量は、エステル化反応を制御でき、かつ得られるエステル化合物(A)の着色を抑制できる範囲の量であればよく、直鎖状アルキレンジオール(a−1)、分岐状アルキレンジオール(a−2)、芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)及び芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)の合計量に対し、10〜1,000ppmの範囲が好ましく、20〜500ppmの範囲がより好ましく、30〜300ppmの範囲が特に好ましい。エステル化合物(A)の着色はフィルムの透明性を低下させるため、高い透明性が求められる光学フィルム用途では、特に留意する必要がある。
【0032】
エステル化合物(A)を製造する際、前記エステル化触媒(C)を添加する時期は、直鎖状アルキレンジオール(a−1)と、分岐状アルキレンジオール(a−2)と、芳香族ジカルボン酸又はそのジアルキルエステル化合物(a−3)と、芳香族モノカルボン酸又はそのアルキルエステル化合物(a−4)とを仕込むのと同時に添加してもよく、昇温途中、減圧開始の際に添加してもよく、エステル化触媒を分割して添加してもよい。
【0033】
また、直鎖状アルキレンジオール(a−1)と、分岐状アルキレンジオール(a−2)と、芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)と、芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)とを反応させる際に、本発明の効果を阻害しない範囲で前記エステル化合物(A)を分岐化、高分子量化させることを目的として、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価アルコール又はカルボン酸;ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートも用いてもよい。
【0034】
エステル化合物(A)を製造する際の反応温度は、原料となる直鎖状アルキレンジオール(a−1)、分岐状アルキレンジオール(a−2)、芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)及び芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)が蒸発や昇華することを抑制しつつ反応を促進し、反応により生成するエステル化合物(A)の熱分解、着色を抑制できることから、120℃〜300℃の範囲が好ましく、150℃〜280℃の範囲がより好ましい。また、前記エステル化合物(A)を製造する際の反応時間は、2時間以上であることが好ましく、4〜100時間の範囲であることがより好ましい。
【0035】
さらに、前記エステル化合物(A)を製造する際に、未反応の原料及び低分子量の生成物を除去する目的や反応を促進させる目的で、反応の途中から減圧下で行うことが好ましい。この前記エステル化合物(A)を製造する際の減圧度は、速やかに未反応の原料及び低分子量の生成物が除去でき、反応を促進することができることから、3,000Pa以下であることが好ましく、2,000Pa以下であることがより好ましく、10〜1,000Paの範囲がさらに好ましい。
【0036】
前記エステル化合物(A)は、異なるエステル化合物(A)をそれぞれ別々に製造し、次いでそれらを混合して、本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤としてもよい。また、本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、エステル化合物(A)以外の添加剤を配合してもよい。前記エステル化合物(A)以外の添加剤の種類としては、エステル化触媒の触媒活性を失活させるための触媒失活剤、エステル化合物(A)の着色を抑制するための酸化防止剤等が挙げられる。
【0037】
前記触媒失活剤としては、例えば、キレート化剤が挙げられ、有機系キレート化剤又は無機系キレート化剤を使用することができる。有機系キレート化剤としては、例えば、アミノ酸、フェノール類、ヒドロキシカルボン酸、ジケトン類、アミン類、オキシム、フェナントロリン類、ピリジン化合物、ジチオ化合物、ジアゾ化合物、チオール類、ポルフィリン類、配位原子として窒素原子を有するフェノール類やカルボン酸等が挙げられる。また、無機キレート化剤としては、例えば、リン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステル等のリン化合物が挙げられる。これらのキレート化剤は、直鎖状アルキレンジオール(a−1)と、分岐状アルキレンジオール(a−2)、芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)及び芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)の合計量に対して、10〜2,000ppmの範囲で添加して使用することが好ましい。
【0038】
上記の製造方法により得られるエステル化合物(A)の水酸基価は、光学フィルムの耐透湿性及び透明性をより向上し、光学フィルムを偏光子保護フィルムに用いた場合の偏光子の劣化をより抑制することができることから、0〜40の範囲であるものが好ましく、0〜30の範囲であるものがより好ましく、0〜20の範囲であるものがさらに好ましい。なお、この水酸基価はエステル化合物(A)の末端水酸基、すなわち原料として使用した直鎖状アルキレングリコール(a−1)及び分岐状アルキレングリコール(a−2)が有する水酸基に由来するものである。
【0039】
前記エステル化合物(A)の具体的な構造を示すと、下記一般式(I)で表されるような構造である。
【0040】
【化1】

(上記一般式(I)中のSAは直鎖状アルキレンジオールの残基を表し、BAは分岐状アルキレンジオールの残基を表し、Tは芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)の残基を表し、Aは芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)の残基を表す。また、上記一般式(I)中の「SA/BA」は、SA又はBAであることを表す。さらに、n及びmは繰返し単位を表し、0以上の整数である。なお、nの繰返し単位とmの繰返し単位との結合は、nの繰返し単位が複数結合した末端にmの繰返し単位が複数結合したものが結合したブロック状でも、nの繰り返し単位とmの繰返し単位とが規則性なく結合したランダム状でも構わない。)
【0041】
なお、上記の「残基」は、次のことを意味する。直鎖状アルキレンジオール又は分岐状アルキレンジオールの「残基」とは、直鎖状アルキレンジオール又は分岐状アルキレンジオールが反応前に有する2つの水酸基を除いた残りの有機基を表す。また、芳香族ジカルボン酸化合物の「残基」とは、芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)が芳香族ジカルボン酸の場合は、芳香族カルボン酸が有するカルボキシル基を除いた残りの有機基を表し、芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)が芳香族カルボン酸アルキルエステルの場合は、芳香族カルボン酸アルキルエステルが有するアルコキシカルボニル基を除いた残りの有機基を表す。
【0042】
本発明のエステル化合物(A)は、通常、nとmとの組み合わせが異なる複数のエステル化合物からなる混合物である。具体的に、前記一般式のnとmは、nとmとの合計量(n+m)が1以上であればよいが、(n+m)は1〜20の範囲内であることが好ましい。この範囲内のエステル化合物(A)は、セルロースエステル樹脂からなる光学フィルムにより高いRth値、透明性及び耐透湿性を付与することができ、高温多湿下での耐ブリード性に優れ、かつ光学フィルムの製造工程でエステル化合物(A)とセルロースエステル樹脂との相溶性がよく、エステル化合物が揮発しにくいため、セルロースエステル樹脂を溶解させるための溶剤の回収効率が向上するため好ましい。
【0043】
本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤を光学フィルム、特に偏光子保護フィルムに用いる場合は、高い耐揮発性が要求される。この耐揮発性は、前記添加剤単独での加熱減量値を測定すればよく、例えば、光学フィルムの偏光子保護フィルムに使用する場合には、耐久性、及び成形加工性、及び溶液流延法でフィルム製造時に使用する有機溶剤のリサイクル性に優れ、製造上及び実用上問題がないレベルとするために、セルロースエステル樹脂用添加剤の加熱減量値が2質量%以下であることが好ましく、0.01〜1.5質量%の範囲であることがより好ましく、0.01〜1.0質量%の範囲であることがさらに好ましい。なお、本発明における加熱減量値は、添加剤を140℃で60分間加熱後の質量を測定して、加熱前後の質量減少率を算出したものである。
【0044】
本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤であるエステル化合物(A)は、後述するセルロースエステル樹脂(B)との相溶性及び耐ブリード性を付与するため、その数平均分子量は300〜2,000の範囲である。また、より高いRth値、透明性及び耐透湿性を有し、フィルム製造工程等の高温条件下でもエステル化合物(A)のブリードを抑制し、湿熱条件下での耐久性に優れたフィルムを得るために、エステル化合物(A)の数平均分子量は、350〜1,800の範囲であることが好ましく、350〜1,500の範囲であることがより好ましい。
【0045】
前記エステル化合物(A)の数平均分子量が300未満であると、原料や低分子量のエステル化合物が残存するため、前記加熱減量値が増加する問題がある。一方、前記エステル化合物(A)の数平均分子量が2,000を超えると、芳香族モノカルボン酸化合物(a−3)で末端を封止されたエステル化合物(A)の製造が困難となり、セルロースエステル樹脂(B)との相溶性が悪化するため、光学フィルムとしてもちいることが困難となる問題がある。
【0046】
なお、本発明における前記エステル化合物(A)の数平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として使用し、ゲルパーミュエ−ションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定され、標準ポリスチレンに換算した値として得ることができる。測定条件は、下記の通りである。
【0047】
[エステル化合物(A)の数平均分子量(Mn)の測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC−8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ−L」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.03」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
標準試料:前記「HLC−8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0048】
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−300」
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
【0049】
次に、前記エステル化合物(A)を含有するセルロースエステル樹脂組成物について説明する。
【0050】
本発明のセルロースエステル樹脂組成物に用いるセルロースエステル樹脂(B)は、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等から得られるセルロースの有する水酸基の一部、又は全部がエステル化されたものである。これらの中でも、綿花リンターから得られるセルロースをエステル化して得られるセルロースエステル樹脂を使用して得られるフィルムは、フィルムの製造装置を構成する金属支持体から剥離しやすく、フィルムの生産効率を向上させることが可能となるため好ましい。
【0051】
前記セルロースエステル樹脂(B)の具体例としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートフタレート及び硝酸セルロース等が挙げられる。これらのセルロースエステル樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。本発明のセルロースエステル樹脂組成物からなるフィルムを光学フィルム、特に偏光子保護フィルムとして使用する場合には、セルロースアセテートを使用することが、機械的物性及び透明性に優れたフィルムを得ることができるため好ましい。
【0052】
前記セルロースアセテートとしては、平均酢化度(結合酢酸量)が51.0〜62.5質量%の範囲であるものが好ましく、平均酢化度が58.0〜62.5質量%の範囲であるセルローストリアセテートがより好ましい。この範囲の平均酢化度であるセルロースアセテートを使用することによって、得られるセルロースエステル樹脂組成物からなる光学フィルムの耐透湿性を向上させることができる。なお、平均酢化度は、セルロースアセテートの質量を基準として、該セルロースアセテートをケン化することによって生成する酢酸の質量割合である。
【0053】
前記セルロースアセテートの数平均分子量は、30,000〜300,000のものが好ましく、50,000〜200,000のものがより好ましい。この範囲の数平均分子量であるセルロースアセテートを使用することによって、得られるフィルムの機械的物性を向上することができる。
【0054】
本発明のセルロースエステル樹脂組成物は、前記セルロースエステル樹脂(B)100質量部に対して、前記エステル化合物(A)を1〜50質量部の範囲で含有したものが好ましい。また、セルロースエステル樹脂(B)とエステル化合物(A)との相溶性、耐ブリード性をより向上させる場合、前記セルロースエステル樹脂(B)100質量部に対して、エステル化合物(A)を3〜40質量部の範囲で含有したものがより好ましい。この範囲でエステル化合物(A)を含有するセルロースエステル樹脂組成物をフィルムとして用いると、耐透湿性、高Rth及び高温多湿下における耐ブリード性に優れた光学フィルムとして使用することができる。
【0055】
また、本発明のセルロースエステル樹脂組成物は、本発明を損なわない範囲でエステル化合物(A)以外の各種添加剤を添加することができる。
【0056】
前記添加剤としては、例えば、改質剤(可塑剤も含む)、紫外線吸収剤、レターデーション上昇剤、熱可塑性樹脂、マット剤、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤等)、染料、液晶などの添加剤が挙げられる。また、これらの添加剤は、後述する溶液流延法において、有機溶剤中に前記セルロースエステル樹脂(B)及び前記エステル化合物(A)を溶解、混合する際に併せて添加することもできる。
【0057】
前記改質剤(可塑剤も含む)としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル;エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、アセチルクエン酸トリブチルなどが挙げられる。
【0058】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。この紫外線吸収剤の添加量は、前記セルロースエステル樹脂(B)100質量部に対して、0.01〜2質量部の範囲であることが好ましい。
【0059】
前記レターデーション上昇剤としては、レターデーション(Rth)値が上昇するものであれば何ら制限はないが、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸エステル化合物、1,3,5−トリアジン環を有する化合物等が挙げられる。このレターデーション上昇剤の添加量は、前記セルロースエステル樹脂(B)100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲が好ましく、特に1〜10質量部の範囲が好ましい
【0060】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル等)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂等が挙げられる。
【0061】
前記マット剤としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク等が挙げられる。このマット剤の添加量は、前記セルロースエステル樹脂(B)100質量部に対して、0.1〜0.3質量部の範囲が好ましい。
【0062】
前記染料又は液晶は、必要に応じて用いることができ、その添加量は本発明の効果を損なわない範囲であればよい。
【0063】
本発明のエステル化合物(A)からなるセルロースエステル樹脂用添加剤を含有するセルロースエステル樹脂組成物は、フィルム状に成形することで光学フィルムとして用いることができる。
【0064】
前記セルロースエステル樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、前記セルロースエステル樹脂組成物を押出機等で溶融混練し、Tダイ等を用いることでフィルム状に成形する方法が挙げられる。
【0065】
また、本発明の光学フィルムは、前記成形方法の他に、前記セルロースエステル樹脂組成物を有機溶剤中に均一に溶解、混合して得られた樹脂溶液を金属支持体上に流延し乾燥させる溶液流延法での成形によっても得ることができる。溶液流延法によりフィルムを得た場合、成形途中でのフィルム中の前記セルロースエステル樹脂(B)の配向を抑制することができるため、得られるフィルムは、実質的に光学等方性を示す。この光学等方性を示すフィルムは、光学フィルムとして液晶ディスプレイ等の部材として使用することができ、特に偏光子保護フィルムとして有用である。また、この溶液流延法により得られるフィルムは、その表面に凹凸が形成されにくく、表面平滑性に優れるという特長を有するため、溶液流延法がより好ましい光学フィルムの成形方法である。
【0066】
溶液流延法は、前記セルロースエステル樹脂(B)及び前記エステル化合物(A)を有機溶剤中に溶解させ、得られた樹脂溶液を金属支持体上に流延させる第1の工程、流延させた前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤を乾燥させフィルムを形成する第2の工程、及び金属支持体上に形成されたフィルムを金属支持体から剥離し加熱乾燥させる第3の工程からなる。
【0067】
第1の工程で使用する金属支持体としては、無端ベルト状又はドラム状の金属、例えばステンレス製で、その表面が鏡面仕上げの施されたものを使用することができる。前記金属支持体上に、前記樹脂溶液を流延させる際には、得られるフィルムに異物が混入することを防止するために、フィルターで濾過した樹脂溶液を使用することが好ましい。
【0068】
第2の工程における乾燥方法としては、例えば30〜50℃の温度範囲の風を前記金属支持体の上面及び下面に当てることで、流延した前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤のおよそ50〜80質量%程度を蒸発させ、前記金属支持体上にフィルムを形成させる方法がある。
【0069】
第3の工程は、前記第2の工程で形成されたフィルムを金属支持体上から剥離し、前記第2の工程よりも高温で加熱乾燥させる工程である。前記加熱乾燥方法としては、例えば100〜160℃の温度範囲で段階的に温度を上昇させる方法が寸法安定性を良くするために好ましい。前記温度範囲で加熱乾燥することによって、前記第2の工程で得られたフィルム中に残存する有機溶剤をほぼ完全に除去することができる。
【0070】
前記樹脂溶液中のセルロースエステル樹脂組成物の溶液濃度としては、3〜50質量%の範囲が好ましく、5〜40質量%の範囲がより好ましい。
【0071】
前記有機溶剤としては、セルロースエステル樹脂(B)、及び前記エステル化合物(A)を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、セルロースエステル樹脂(B)としてセルロースアセテートを使用する場合は、セルロースアセテートの良溶媒として、例えばメチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類を使用することができる。また、この良溶媒に対して、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、酢酸メチル等の貧溶媒を併用することがフィルムの生産効率を向上することができるので好ましい。良溶媒と貧溶媒とを混合して使用する場合の質量割合は、良溶媒と貧溶媒との質量比(良溶媒/貧溶媒)は、75/25〜95/5の範囲が好ましい。
【0072】
本発明のフィルムの膜厚は、10〜1,000μmの範囲であることが好ましく、20〜500μmの範囲であることがより好ましく、30〜200μm範囲であることがさらに好ましい。また、本発明のフィルムを光学フィルムとして用いる場合は、その膜厚は10〜150μm範囲であることが好ましい。光学フィルムの中でも偏光子保護フィルムとして使用する場合には、その膜厚が25〜100μmの範囲であれば、液晶表示装置の薄型化を図ることが可能で、かつ優れたフィルム強度、湿熱変化による寸法安定性及び耐透湿性を維持することができる。なお、本発明では耐ブリード性及び寸法安定性を耐久性ということがある。
【0073】
また、本発明の光学フィルムは、光学補償機能を必要とする偏光子保護フィルムにも使用することができる。この偏光子保護フィルムには、TN(Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、OCB(Optically Compensatory Bend)等の液晶表示方式に応じて特定の範囲の異方性が求められる。
【0074】
本発明の光学フィルムは、Rth値が85nm以上を有していることが好ましく、120〜500nmの範囲のRth値を有していることで、主に液晶物質由来の位相差を効果的に補償する上でより好ましい。
【0075】
所望の異方性を有する偏光子保護フィルムを得るためには、本発明の前記エステル化合物(A)からなるセルロースエステル樹脂用添加剤の配合比率等を調整することにより可能である。特に本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤は、少量添加で高いRth値を得ることができるため、比較的高いRth値の求められるVA、OCB、及びTN等の液晶表示方式を採用した液晶表示装置にも、添加剤の添加量を減量できるため、耐ブリード性を維持したまま、所望のRth値に調整することができる。
【0076】
本発明の光学フィルムの透湿度については、膜厚80μmにおいて、本発明の光学フィルムのベース樹脂であるセルロースエステル樹脂(B)単独のフィルムの透湿度が、例えば、800〜900g/m・24h程度のものであれば、本発明の光学フィルムの膜厚80μmでの透湿度は、さらなる薄膜化、例えば、20〜60μm程度の膜厚でも十分な耐透湿性を発揮するためには、600g/m・24h以下の透湿度を有することが好ましく、100〜500g/m・24hの範囲の透湿度を有することがより好ましい。
【0077】
本発明の光学フィルムが高いRth値を発現する理由としては、前記エステル化合物(A)の化学構造、及びその分子間相互作用が寄与しているものと考えられる。具体的には、本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤の原料であるエステル化合物(A)が比較的平面性の高い構造を有しており、エステル化合物(A)中の芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)及び芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)が有する芳香環によりポリエステル化合物の分子間でπ−π結合を形成して電子密度が高いことが寄与している。この平面性が高く、電子密度が高いエステル化合物(A)を屈折率楕円体と仮定した場合、エステル化合物(A)は、セルロースエステル樹脂(B)中で異方性の高い構造体を形成しているため、高いRth値を発現するものと考えられる。
【0078】
さらに、前記エステル化合物(A)は、セルロースエステル樹脂(B)中のセルロース分子の配向を整える配向助剤として働き、エステル化合物(A)とセルロースエステル樹脂(B)中のセルロース分子との間で相互作用が生じ、セルロース分子のセルロース環構造が平面的に配向するため、高いRth値を発現するものと考えられる。
【0079】
また、本発明のエステル化合物(A)の分岐状アルキレンジオール(a−2)はエステル化合物(A)のセルロースエステル樹脂(B)との相溶性、及びフィルムの作製する際の溶媒溶解性に寄与していると考える。すなわち、ジオール成分として直線性の高い直鎖状アルキレンジオール(a−1)のみを使用すると、前記Rthを高めることには有効であるが、結晶性が高いため、セルロースエステル樹脂(B)の相溶性、及びフィルムの作製する際の溶媒溶解性が損なわれてしまい光学フィルムの使用が困難となる。そこで、分岐状アルキレンジオール(a−2)を直鎖状アルキレンジオール(a−1)と併用することにより、エステル化合物(A)の結晶性が若干乱れるため、セルロースエステル樹脂(B)の相溶性、又はフィルムの作製する際の溶媒溶解性が向上できるとともに、高いRth値を発現するという効果を両立できる。
【0080】
さらに、本発明のエステル化合物(A)からなるセルロースエステル樹脂用添加剤の原料である芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)は、置換位置がパラ位であるテレフタル酸、2つ置換位置が最も遠い2,6−ナフタレンジカルボン酸、2つの芳香環の結合部位の直線状に2つの置換位置がある4,4’−ビフェニルジカルボン酸を用いるため、ほぼ直線状のエステル化合物(A)を得ることができ、これをセルロースエステル樹脂(B)に配合した樹脂組成物中でも、その直線状の構造は維持され、規則正しく芳香環がほぼ同一平面上に配置されるため、高いRth値を発現する。
【0081】
本発明の光学フィルムは、耐透湿性、透明性、非揮発性、高温多湿下における耐ブリード性などに優れることから、例えば、液晶表示装置の光学フィルムやハロゲン化銀写真感光材料の支持体等に使用できる。ここで、光学フィルムとは、例えば、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム、カラーフィルター等が挙げられる。これらの光学フィルムのうち、前記したような優れた特性に加えて、高Rthを有するフィルムは、視野角補償機能を有する偏光子保護フィルムとして使用することが可能である。
【実施例】
【0082】
以下に実施例と比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
【0083】
[実施例1]エステル化合物(A−1)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、エチレングリコール(以下、「EG」と略記する。)を248gと、プロピレングリコール(以下、「PG」と略記する。)を304gと、テレフタル酸ジメチル(以下、「DMT」と略記する。)を682gと、安息香酸(以下、「BzA」と略記する。)を952gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート(以下、「TIPT」と略記する。)をEG、PG、DMT及びBzAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度で、生成する水、メタノールを留去しながら230℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が450、重量平均分子量が590のエステル化合物(A−1)(酸価:0.23、水酸基価:8)を得た。
【0084】
[実施例2]エステル化合物(A−2)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、EGを235gと、PGを288gと、DMTを971gと、PTAを545gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、PG、DMT及びPTAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度で、生成する水、メタノールを留去しながら230℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が670、重量平均分子量が1,130のエステル化合物(A−2)(酸価:0.10、水酸基価:13)を得た。
【0085】
[実施例3]エステル化合物(A−3)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、EGを224gと、PGを274gと、テレフタル酸(以下、「TPA」と略記する。)を871gと、PTAを272gとを仕込み昇温を開始した。釜内温度が130℃にてエステル化触媒としてTIPTをEG、PG、TPA及びPTAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度で、生成する水、メタノールを留去しながら245℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が1,060、重量平均分子量が2,200のエステル化合物(A−3)(酸価:0.43、水酸基価:16)を得た。
【0086】
[実施例4]エステル化合物(A−4)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、EGを200gと、PGを246gと、DMTを1,036gと、PTAを91gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、PG、DMT及びPTAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度で、生成する水、メタノールを留去しながら230℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が1,750、重量平均分子量が3,580のエステル化合物(A−4)(酸価:0.15、水酸基価:10)を得た。
【0087】
[実施例5]エステル化合物(A−5)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、EGを120gと、PGを440gと、DMTを971gと、PTAを545gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、PG、DMT及びPTAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度で、生成する水、メタノールを留去しながら230℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が660、重量平均分子量が1,090のエステル化合物(A−5)(酸価:0.11、水酸基価:9)を得た。
【0088】
[実施例6]エステル化合物(A−6)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積5リットルの加圧が可能な反応器にEGを636gと、PGを260gと、TPAを996gと、4−t−ブチル安息香酸(以下、「tBuBzA」と略記する。)を2,140gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、PG、TPA及びtBuBzAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら3.5MPaの圧力下で、生成する水を留去しながら250℃まで速やかに昇温した。3時間後、徐々に圧力を抜きながら、さらに常圧にて3時間反応した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が470、重量平均分子量が710のエステル化合物(A−6)(酸価:0.48、水酸基価:13)を得た。
【0089】
[実施例7]エステル化合物(A−7)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、EGを200gと、PGを246gと、DMTを1,036gと、PTAを91gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、PG、DMT及びPTAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度にて生成する水、メタノールを留去しながら230℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が1,950、重量平均分子量が3,940のエステル化合物(A−7)(酸価:0.35、水酸基価:20)を得た。
【0090】
[実施例8]エステル化合物(A−8)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積2リットルの四ツ口フラスコに、EGを127gと、PGを156gと、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(以下、NDCMと略記する。)を310gと、BzAを366gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、PG、NDCM及びBzAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度で、生成する水、メタノールを留去しながら230℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が350、重量平均分子量が420のエステル化合物(A−8)(酸価:0.08、水酸基価:12)を得た。
【0091】
[実施例9]エステル化合物(A−9)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、EGを186gと、PGを228gと、NDCMを916gと、BzAを366gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、PG、NDCM及びBzAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度で、生成する水、メタノールを留去しながら230℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が970、重量平均分子量が2,060のエステル化合物(A−9)(酸価:0.31、水酸基価:9)を得た。
【0092】
[実施例10]エステル化合物(A−10)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、EGを248gと、2−メチル−1,3−プロパンジオール(以下、「2MPD」と略記する。)を360gと、DMTを679gと、PTAを1,060gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、2−MPD、DMT及びPTAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度で、生成する水とメタノールを留去しながら230℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が460、重量平均分子量が621のエステル化合物(A−10)(酸価:0.03、水酸基価:7)を得た。
【0093】
[実施例11]エステル化合物(A−11)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、EGを248gと、ネオペンチルグリコール(以下、「NPG」と略記する。)を416gと、DMTを680gと、PTAを1,062gとを仕込み昇温を開始した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、NPG、DMT及びPTAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度で、生成する水とメタノールを留去しながら230℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が470、重量平均分子量が650のエステル化合物(A−11)(酸価:0.05、水酸基価:5)を得た。
【0094】
[比較例1]エステル化合物(A−12)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、PGを476gと、DMTを554gと、PTAを817gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをPG、DMT及びPTAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度にて生成する水、メタノールを留去しながら230℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4.5時間加熱することによって、数平均分子量が500、重量平均分子量が700のエステル化合物(A−12)(酸価:0.06、水酸基価:11)を得た。
【0095】
[比較例2]エステル化合物(A−13)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、PGを445gと、EGを40gと、DMTを524gと、PTAを817gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、PG、DMT及びPTAとの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度にて生成する水とメタノールを留去しながら220℃まで昇温させた。次いで、フラスコ内温度を195℃として約100Paの減圧下にて4.5時間加熱することによって、数平均分子量が440、重量平均分子量が580のエステル化合物(A−13)(酸価:0.9、水酸基価:8)を得た。
【0096】
[比較例3]エステル化合物(A−14)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコにEGを363gと、PGを49gと、DMTを524gと、PTAを817gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、PG、DMT及びPTAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度にて生成する水とメタノールを留去しながら220℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を195℃として約100Paの減圧下にて4.5時間加熱することによって、数平均分子量が460、重量平均分子量が610のエステル化合物(A−14)(酸価:0.10、水酸基価:7、加熱減量:0.24質量%)を得た。
【0097】
[比較例4]エステル化合物(A−15)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、EGを219gと、PGを269gと、DMTを1165gと、PTAを54gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、PG、DMT及びPTAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度にて生成する水とメタノールを留去しながら220℃まで昇温させた。次いで、フラスコ内温度を195℃として約100Paの減圧下にて4.5時間加熱することによって、数平均分子量が2,450、重量平均分子量が4,650のエステル化合物(A−15)(酸価:0.38、水酸基価:20、加熱減量:0.12質量%)を得た。
【0098】
[比較例5]エステル化合物(A−16)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、EGを248gと、PGを304gと、無水フタル酸(以下、「PA」と略記する。)を518gと、PTAを1,062gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてTIPTをEG、PG、PA及びPTAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度で、生成する水を留去しながら230℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が465、重量平均分子量が605のエステル化合物(A−16)(酸価:0.38、水酸基価:11)を得た。
【0099】
[比較例6]エステル化合物(A−17)の製造
温度計、攪拌器、還流冷却器及び窒素導入管を備えた内容積3リットルの四ツ口フラスコに、EGを248gと、PGを304gと、コハク酸ジメチル(以下、「DMS」と略記する。)を511gと、PTAを1060gとを仕込み昇温した。フラスコ内温度が130℃になった時点でエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート(以下、「TIPT」と略記する。)をEG、PG、PA及びPTAの合計量に対して60ppm加えて、窒素気流下で攪拌しながら170℃から1時間に10℃の昇温速度で、生成する水、メタノールを留去しながら230℃まで昇温した。次いで、フラスコ内温度を200℃として約100Paの減圧下にて4時間加熱することによって、数平均分子量が460、重量平均分子量が610のエステル化合物(A−17)(酸価:0.40、水酸基価:12)を得た。
【0100】
上記の実施例1〜11及び比較例1〜6で得られたエステル化合物(A−1)〜(A−17)について、下記の測定方法により、酸価、水酸基価、直鎖状アルキレンジオール(a−1)と分岐状アルキレンジオール(a−2)とのモル組成比(a−1)/(a−2)、数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)及び加熱残量値を測定した。
【0101】
[酸価、水酸基価の測定条件]
各エステル化合物の酸価及び水酸基価をJIS K 0070−1992に準じて測定した。
【0102】
[直鎖状アルキレンジオール(a−1)と分岐状アルキレンジオール(a−2)とのモル組成比(a−1)/(a−2)の測定方法]
H−NMR装置(日本電子株式会社製「JNM−LA300」)を用いて、各エステル化合物のクロロホルム−d(CDCl)溶液を分析することで、各エステル化合物を構成する直鎖状アルキレンジオール(a−1)単位と分岐状アルキレンジオール(a−2)単位とのモル組成比(a−1)/(a−2)(単位:モル%)を算出した。
【0103】
[エステル化合物の数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)の測定方法]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC−8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ−L」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.03」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
標準試料:前記「HLC−8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0104】
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−300」
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
【0105】
[加熱減量値の測定条件]
ギア老化試験機(株式会社東洋精機製作所製の型式「SB−P」、内容積45×45×50cm)中に約50gのエステル化合物を入れ、窒素雰囲気下、140℃で60分間加熱後の質量を測定し、加熱前後の質量を用いて下式(2)より算出した質量減少率を加熱減量値とした。
質量減少率(質量%)=(加熱前質量−加熱後質量)/加熱前質量×100 (2)
【0106】
上記で測定した各エステル化合物の特性値を表1及び2示す。
【0107】
[セルロースエステル樹脂組成物からなるフィルム(F−1)〜(F−19)の作製]
実施例1〜11及び比較例1〜6で得られたエステル化合物(A−1)〜(A−17)を1gと、セルローストリアセテート(酢化度61質量%、重合度265)を10gと、塩化メチレン81g及びメタノール9gからなる混合溶剤とを混合して均一に攪拌し、ドープ液を調製した。これらの各ドープ液をガラス板上に約1.0mmの厚さになるようにそれぞれ流延し、室温で16時間乾燥させた後、50℃で30分間乾燥させ、さらに120℃で30分乾燥させることで、膜厚80μmのフィルム(F−1)〜(F−19)を得た。
【0108】
また、エステル化合物(A−1)〜(A−17)に代えてトリフェニルホスフェート(TPP)を用いて同様に作製したフィルム(F−18)及び何も添加せずにセルローストリアセテートのみで作製したフィルム(F−19)も用意した。これらは、それぞれ、比較例7及び8とする。
【0109】
上記で得られたフィルム(F−1)〜(F−19)について、下記の測定方法により、耐ブリード性、ヘーズ値、フィルムの厚さ方向のRth値及び透湿度を測定し評価した。
【0110】
[フィルムの耐ブリード性の評価方法]
上記で得られたフィルムを30mm×40mmの大きさに切り取り、温度85℃、相対湿度90%の恒温恒湿中に120時間放置した。その後、フィルム表面を目視で観察し、エステル化合物等のブリードの有無を以下の基準に従い評価した。
A:フィルムの表面上にブリード物が観察されなかった。
B:フィルムの表面上にブリード物が観察された。
【0111】
[フィルムのヘーズ値の測定方法]
上記の耐ブリード性の評価後のフィルムで、エステル化合物のブリードが観察されなかったフィルムについて、セルロースエステル樹脂とエステル化物との相溶性を判断する目的で、前記フィルムの透明性を濁度計(日本電色工業株式会社製の型式「ND−1001DP」)を用いて、JIS K 7105−1981に準じて、フィルムのヘーズ値を測定した。
【0112】
[フィルムの厚さ方向のレターデーション(Rth)値の測定方法]
自動複屈折率計(王子計測機器株式会社製「KOBRA−WR」)を用いて、フィルムの厚さ方向のレターデーション(Rth)値を測定した。測定条件は、温度23℃、相対湿度20%の環境下で12時間以上調湿した後、同環境下で測定を行った。
【0113】
[フィルムの透湿度の測定方法]
JIS Z 0208−1976に準じてフィルムの透湿度を測定し、80μmの厚さに換算した。測定条件は、温度25℃、相対湿度90%とした。
【0114】
上記で測定した各フィルムの評価結果を表1及び2示す。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
表1に示した結果から、本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤であるエステル化合物(A−1)〜(A−11)は、比較例7で用いたTPPに比べ、加熱減量値が0.61質量%以下と非常に低いことが分かった。また、本発明のセルロースエステル樹脂用添加剤を用いたフィルムは、耐ブリード性及び耐透湿性に優れ、高温高湿環境下に保存しても高い透明性を維持することが分かった。また、130〜301nmという高いRth値を有し、光学フィルムとして非常に高い光学性能を有することが分かった。
【0118】
また、表2に示した結果から、以下のことが分かった。
【0119】
比較例1は、直鎖状アルキレングリコールを原料として用いなかったエステル化合物を添加剤として用いた例であるが、Rth値が85nmと十分高い値ではなかった。
【0120】
比較例2は、直鎖状アルキレングリコール(a−1)と分岐状アルキレングリコール(a−2)とのモル組成比(a−1)/(a−2)が10/90であって、本発明の85/15〜15/85の範囲外のエステル化合物を添加剤として用いた例であるが、Rth値が85nmと十分に高い値ではなかった。
【0121】
比較例3は、直鎖状アルキレングリコール(a−1)と分岐状アルキレングリコール(a−2)とのモル組成比(a−1)/(a−2)が90/10であって、本発明の85/15〜15/85の範囲外のエステル化合物を添加剤として用いた例であるが、フィルム作製時に有機溶剤にエステル化合物が不溶であったため、成膜できないことが分かった。これは、直鎖状アルキレングリコール(エチレングリコール)の比率が高すぎると、有機溶剤への溶解性が著しく低下するためと考えられる。
【0122】
比較例4は、本発明で用いるエステル化合物の数平均分子量の上限である2,000を超えるエステル化合物を添加剤として用いた例であるが、フィルム作製時に有機溶剤にエステル化合物が不溶であったため、成膜できないことが分かった。これは、エステル化合物の数平均分子量が高すぎると、有機溶剤への溶解性が著しく低下するためと考えられる。
【0123】
比較例5及び6は、本発明で用いるエステル化合物の原料である芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)の代わりにフタル酸又はコハク酸を用いたエステル化合物を添加剤として用いた例であるが、Rth値が60及び50nmと十分に高い値ではなかった。
【0124】
比較例7は、本発明で用いるエステル化合物の代わりにTPPを添加剤として用いた例であるが、耐透湿性が十分でなく、Rth値が25nmと十分に高い値ではなかった。
【0125】
比較例8は、添加剤を用いずにセルロースエステル樹脂のみのフィルムの例であるが、Rth値が20nmと十分に高い値ではなく、透湿度も800g/m・24hと非常に高く耐透湿性の性能が十分でないことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖状アルキレンジオール(a−1)及び分岐状アルキレンジオール(a−2)と、テレフタル酸、テレフタル酸ジアルキルエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアルキルエステル、4,4’−ビフェニルジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジアルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の芳香族ジカルボン酸化合物(a−3)と、芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)とをエステル化反応させて得られるエステル化合物であって、直鎖状アルキレンジオール(a−1)と分岐状アルキレンジオール(a−2)とのモル組成比(a−1)/(a−2)が85/15〜15/85の範囲であり、かつ前記エステル化合物の数平均分子量が300〜2,000の範囲であるエステル化合物(A)からなることを特徴とするセルロースエステル樹脂用添加剤。
【請求項2】
前記直鎖状アルキレンジオール(a−1)が炭素原子数2〜6の範囲内の直鎖状アルキレンジオールであり、前記分岐状アルキレンジオール(a−2)が炭素原子数3〜6の範囲内である分岐状アルキレンジオールである請求項1記載のセルロースエステル樹脂用添加剤。
【請求項3】
前記直鎖状アルキレンジオール(a−1)の主成分がエチレングリコールであり、前記分岐状アルキレンジオール(a−2)の主成分がプロピレングリコールである請求項1記載のセルロースエステル樹脂用添加剤。
【請求項4】
前記芳香族モノカルボン酸化合物(a−4)が、安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、テトラメチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ブチル安息香酸、クミン酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸からなる群から選ばれる1種以上のアルキルベンゼンカルボン酸である請求項1記載のセルロースエステル樹脂用添加剤。
【請求項5】
セルロースエステル樹脂(B)100質量部に対して、請求項1〜4のいずれか1項のエステル化合物(A)を0.5〜50質量部含有することを特徴とするセルロースエステル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5記載のセルロースエステル樹脂組成物からなることを特徴とする光学フィルム。

【公開番号】特開2010−248493(P2010−248493A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65957(P2010−65957)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】