説明

セルロースエーテルコーティング組成物および方法

本開示は、フィルム形成性コーティング用途のためのセルロースエーテル組成物を対象とする。極低粘度セルロースエーテルまたは低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルのいずれかの水性溶液を含有するコーティング組成物を提供し、該コーティング組成物は低い着色を有する。セルロースエーテル成分が低粘度であることにより、コーティング組成物は高濃度のセルロースエーテルを含有できる。これらの高濃度セルロースエーテルコーティング溶液の提供により、基材をコートするために必要な時間が低減されることによって製造効率が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件は、米国特許出願整理番号第60/986,731号(2007年11月9日出願)(その内容の全部を参照により本明細書に組入れる)への優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
本開示は、セルロースエーテルコーティング組成物、およびこれとともに製造される、コートされた組成物に関する。
【0003】
セルロースエーテルは、一般的に、錠剤上のフィルムコーティング物質として、食品添加物として、および医薬カプセルにおいて使用される。低分子量セルロースエーテルは、しばしば、黄変または変色を示す。セルロースエーテルの分子量が低くなると、変色度が増大することが公知である。より高分子量のセルロースエーテルを使用することは着色を改善するが、より高分子量のセルロースエーテルは、スプレーコーティング操作において使用することが困難である。
【0004】
基材に容易に適用され、そして外観の影響が大きい用途について許容可能なコーティングを与える低分子量セルロースエーテルコーティング組成物を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要約
本開示は、セルロースエーテル組成物(これらの組成物を用いて形成される、コートされる用途およびコートされた製品のためのもの)を対象とする。本開示はまた、コートされた組成物の製造方法を対象とする。ある態様において、組成物を提供する。組成物は、コーティング組成物であることができる。組成物は、可塑剤、および極低粘度セルロースエーテルの水性溶液を含む。極低粘度セルロースエーテルは、組成物の少なくとも10質量%の量で存在する。極低粘度セルロースエーテルの粘度は、2質量%水性溶液濃度として20℃で測定したときに、1.2cPから2cP未満である。ある態様において、極低粘度セルロースエーテルは、低い着色を有し、そしてAPHA値1〜100を有することができる。さらなる態様において、極低粘度セルロースエーテルはまた、APHA値1〜20の極低着色セルロースエーテルである。
【0006】
ある態様において、組成物は、以下からの1種以上の追加の成分を含むことができる:固体充填促進剤、第2のセルロースエーテル、界面活性剤、潤滑剤、艶出し剤、顔料、耐粘着剤、流動促進剤、不透明化剤およびこれらの組合せ。
【0007】
コーティング組成物の総固形分量は、少なくとも10質量%から約40質量%である。組成物の粘度は100cP〜1000cP、または100cP〜500cP(ブルックフィールド粘度)である。
【0008】
組成物を用いて、コートされた組成物を形成できる。ある態様において、コートされた組成物を提供する。コートされた組成物は、基材と該基材上のコーティングとを含む。コーティングは、可塑剤、および極低粘度セルロースエーテルを含有する。極低粘度セルロースエーテルは、コーティング中に、コーティングの少なくとも10質量%の量で存在する。
【0009】
コーティングは、以下の追加の成分の1種以上を含有できる:界面活性剤、着色剤、第2のセルロースエーテル、固体充填促進剤、潤滑剤、艶出し剤、顔料、耐粘着剤、流動促進剤、不透明化剤およびこれらの追加の成分の任意の組合せ。
【0010】
本開示は別の組成物を提供する。この組成物はコーティング組成物であることができる。ある態様において、この組成物は、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルの水性溶液を含む。低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルは、組成物中に、組成物の少なくとも10質量%の量で存在する。低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルの粘度は、2質量%水性溶液として20℃で測定したときに3cP未満である。ある態様において、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルは、APHA値1〜20の極低着色セルロースエーテルである。組成物は着色剤および/または可塑剤も含むことができる。
【0011】
ある態様において、組成物は以下の追加の成分の1種以上を含むことができる:固体充填促進剤、第2のセルロースエーテル、界面活性剤、潤滑剤、艶出し剤、顔料、耐粘着剤、流動促進剤、不透明化剤およびこれらの追加の成分の任意の組合せ。組成物の総固形分量は10質量%〜約40質量%である。
【0012】
組成物を用いて、コートされた組成物を製造できる。ある態様において、別のコートされた組成物を提供する。コートされた組成物は、基材と該基材上のコーティングとを含む。コーティングは、少なくとも10質量%の低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを含有する。ある態様において、コーティングは、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルの単層フィルムである。
【0013】
基材は、1つ以上の表面および1つ以上の端部を含むことができる。ある態様において、コーティングは基材の表面および端部を覆う。更なる態様において、コーティングは均一コーティングである。よって、コーティングは、表面に沿っておよび表面上に、更に端部の周囲および端部上に、一定厚みを有することができる。
【0014】
ある態様において、コーティングは、以下の追加の成分の1種以上を含むことができる:可塑剤、固体充填促進剤、第2のセルロースエーテル、界面活性剤、潤滑剤、艶出し剤、顔料、耐粘着剤、流動促進剤、不透明化剤およびこれらの任意の組合せ。
【0015】
ある態様において、エッジングを防止する方法を提供する。該方法は、水性溶液を基材上にスプレーすることを含む。水性溶液は、少なくとも10質量%の低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを含むことができる。基材は表面および端部を有する。該方法は、コーティングを表面および端部の上に形成することを含む。ある態様において、水性溶液は可塑剤を含有する。コーティングは、可塑剤および低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルのフィルムであることができる。ある態様において、該方法は、均一コーティングを表面および端部の上に形成することを含む。
【0016】
本開示の利点は、基材をコーティングするための改善された組成物の提供である。
【0017】
本開示の利点は、改善された、コートされた組成物の提供である。
【0018】
本開示の利点は、高濃度のセルロースエーテルを有するコーティング組成物、外観の影響が大きい用途について許容可能な着色を有する組成物の提供である。
【0019】
本開示の利点は、高濃度の総固形分を有するセルロースエーテル系コーティング組成物の提供である。
【0020】
本開示の利点は、基材をセルロースエーテルでコートするのに必要な時間の低減である。
【0021】
本開示の利点は、基材上にフィルムコーティングを形成するのに必要なコーティング組成物の量の低減である。
【0022】
本開示の利点は、スプレーコーティング操作中のエッジングの低減および/または排除である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本開示に係るコートされた組成物の断面図である。
【図2】図2は、エッジングを示すコーティング組成物の断面図である。
【図3】図3は、コートされていない錠剤と本開示に係るコートされた組成物についての溶解速度を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
本明細書に挙げる任意の数値範囲は、下側値から上側値までの全ての値を、任意の下側値と任意の上側値との間が少なくとも2単位離れていることを条件に、1単位刻みで包含する。例としては、組成の、物理的なまたは他の特性,例えば分子量、メルトインデックス等が100〜1,000であると記載される場合、全てのそれぞれの値,例えば100,101,102等、および下位範囲,例えば100〜144,155〜170,197〜200等が、本明細書において明示的に列挙されることが意図される。1未満である値を含むか、または1超の端数を含む(例えば1.1,1.5等)範囲について、1単位は、それに見合って0.0001,0.001,0.01または0.1と考えられる。10未満の有効数字1桁を含む範囲(例えば1〜5)について、1単位は、典型的には0.1と考えられる。これらは具体的に意図されるものの例に過ぎず、そして列挙する下限値と上限値との間の数値の全ての可能な組合せは、本明細書で明示的に記載されると考えるべきである。本明細書で議論するように、密度、成分の質量パーセント、tanδ、分子量および他の特性に言及して数値範囲を列挙した。
【0025】
本明細書で用いる用語「組成物」は、組成物を含む物質の混合物を包含する。
【0026】
本明細書で用いる用語「ブレンド」または「ポリマーブレンド」は、2種以上のポリマーの組成物を意味する。このようなブレンド物は混和性であってもそうでなくてもよい。このようなブレンド物は、相分離していてもしていなくてもよい。このようなブレンド物は、透過型電子顕微鏡によって評価される1以上のドメイン配置を含んでも含まなくてもよい。
【0027】
ある態様において、組成物を提供する。組成物はコーティング組成物であることができる。組成物は、極低粘度セルロースエーテルの水性溶液および可塑剤を含む。極低粘度セルロースエーテルはフィルム形成剤として作用し、そして組成物の少なくとも10質量%、または少なくとも20質量%、または10質量%〜40質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲(subrange))、または組成物の20質量%〜30質量%、または20質量%〜27質量%、または20質量%〜24質量%の量で存在する。本明細書で用いる「極低粘度(VLV)」セルロースエーテルは、その2質量%水性溶液の20℃での粘度が1.2センチポイズ(cP)から2cP未満(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)であるような分子量のセルロースエーテルである。特記がない限り、本明細書で記載する粘度値は、ASTM D1347(メチルセルロース)および/またはASTM D2363(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)に従って、2質量%セルロースエーテル水性溶液としての20℃での測定にて評価される。
【0028】
本明細書で用いる「セルロースエーテル」は、セルロースのエーテル結合誘導体(部分または完全のいずれも)である。セルロースエーテルは、セルロースパルプ(典型的には木材またはコットンから得る)から製造する。セルロースパルプは、セルロースパルプを水酸化アルカリでアルカリ化することによってアルカリセルロースに変換し、そして次いで、アルカリ化したセルロースを、乾式、ガス相またはスラリープロセスにおいて、1種以上のエーテル化剤でエーテル化する。これらのセルロースエーテルの分子量は、次いで、セルロースエーテルを酸(例えば塩化水素)で解重合させ、そして任意に、解重合させたセルロースエーテルを塩基化合物(例えば無水炭酸水素ナトリウム)で中和することによって低下させることができる。代替として、セルロースエーテルを、酸触媒分解、酸化的分解、高エネルギー放射による分解、および微生物または酵素による分解によって解重合させてもよい。
【0029】
セルロースエーテルは、「水溶性」セルロースエーテルまたは「水不溶性」セルロースエーテルであることができる。「水溶性」セルロースエーテルは、部分解重合前に水中での溶解性が少なくとも2グラム(100グラムの蒸留水中、25℃および1気圧で)であるセルロースエーテルである。水溶性セルロースエーテルの非限定の例としては、カルボキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばカルボキシメチルセルロース;カルボキシ−C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース;C1−C3−アルキルセルロース,例えばメチルセルロース;C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはエチルヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース;混合ヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース,例えばヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、混合C1−C3−アルキルセルロース,例えばメチルエチルセルロース、またはアルコキシヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(アルコキシ基が直鎖または分岐であり2〜8炭素原子を含有するもの)が挙げられる。
【0030】
セルロースエーテルは、水不溶性セルロースエーテルであることができる。「水不溶性」セルロースエーテルは、部分解重合前に、水中での溶解度が2グラム未満、または1グラム未満(100グラムの蒸留水中、25℃および1気圧にて)であるセルロースエーテルである。水不溶性のセルロースエーテルの非限定の例は、エチルセルロースである。
【0031】
ある態様において、セルロースエーテルは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースである。
【0032】
さらなる態様において、セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはメチルセルロース(MC)である。HPMCおよび/またはMCは、METHOCEL商標でThe Dow Chemical Company,Midland,Michiganから入手可能である。好適なHPMCおよびMCの非限定の例を、下記表1に記載する。
【0033】
【表1】

【0034】
セルロースエーテルは高ヒドロキシプロピルセルロースエーテルまたは低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルであることができる。本明細書で用いる「高ヒドロキシプロピルセルロースエーテル」は、28〜30質量%のメトキシル基および7.0〜12.0質量%のヒドロキシプロポキシル基を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである。高ヒドロキシプロピルセルロースエーテルの非限定の例は、Hypromellose 2910(The Dow Chemical Company,Midland,Michiganから商標METHOCEL Eで入手可能)である。「低ヒドロキシプロピルセルロースエーテル」は、27〜30質量%のメトキシル基および4.0〜7.5質量%のヒドロキシプロポキシル基を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースである。低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルの非限定の例はHypromellose 2906(The Dow Chemical Company,Midland,Michiganから商標METHOCEL Fで入手可能)である。
【0035】
ある態様において、VLVセルロースエーテルのAmerican Public Health Association(APHA)色値は、1〜100(またはその中の任意の値もしくは下位範囲)、または1〜50、または1〜30、または1〜20である。APHA値は、ASTM D−5386(水性溶液中2%濃度で雰囲気温度にて)に従って評価する。さらなる態様において、VLVセルロースは、極低着色セルロースエーテルである。本明細書で用いる「極低着色(very low color)」(VLC)セルロースエーテル」は、APHA値が1〜20(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)であるセルロースエーテルである。VLVセルロースエーテルおよび/またはVLCセルロースエーテルは、米国特許出願整理番号第60/986,686号(代理人整理No.34995)(2007年11月9日出願)(その全内容は参照により本明細書に組入れる)に記載されるように製造できる。
【0036】
ある態様において、組成物は可塑剤を含む。組成物中に存在する可塑剤は、水性溶液中のセルロースエーテルのフィルム性能を改善する。可塑剤は、ポリエチレングリコール、ひまし油、ジブチルセバケート、ジエチルフタレート、グリセロール、ポリエチレングリコールメチルエーテル、トリアセチン、トリエチルシトレート、リン脂質、レシチン、プロピレングリコール、およびこれらの任意の組合せであることができる。ある態様において、可塑剤は、組成物の1質量%〜10質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または1質量%〜5質量%、または2質量%〜4質量%の量で存在する。更なる態様において、可塑剤は、分子量約100〜約1000(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または分子量約400のポリエチレングリコールである。
【0037】
ある態様において、組成物は界面活性剤を含む。界面活性剤は水性溶液の表面張力を低下させてVLVセルロースエーテルの分散を促進し、および/または界面活性剤は、コーティング組成物の基材上への塗布を容易にする。界面活性剤は、ポリオキシレート化ソルビトールおよび脂肪酸(すなわち、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、またはソルビタンモノオレエートまたはポリソルベート)、ラウリル硫酸ナトリウム、ドキュセートナトリウム、グリセリルモノステアレート、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリソルベート、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチンおよびリン脂質であることができる。界面活性剤は、組成物の約0.001〜0.5質量%(またはその間の任意の下位範囲もしくは値)、または0.001〜0.1質量%、または0.001〜0.07質量%の量で存在する。
【0038】
ある態様において、組成物は着色剤を含む。着色剤は任意のFD&Cレーキ、D&Cレーキ、色素(水溶性または水不溶性)(米医薬品局によって摂取が認可されているもの、または類似の政府規制品)であることができる。ある態様において、着色剤はアルミニウム系レーキである。着色剤は、組成物の0.05質量%〜7質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、0.1質量%〜1.5質量%、または0.45質量%〜0.75質量%の量で存在する。組成物は顔料を含むことができる。顔料は、組成物の0.5質量%〜7質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または0.1質量%〜1.5質量%、または0.4質量%〜0.8質量%の量で存在できる。
【0039】
ある態様において、組成物は第2のセルロースエーテルを含む。第2のセルロースエーテルは補助的なフィルム形成剤として働く。第2のセルロースエーテルは高粘度セルロースエーテル、低粘度セルロースエーテル、またはこれらの組合せであることができる。「高粘度」セルロースエーテルは、その2質量%水性溶液の20℃での粘度が400cP超、または400cP〜100,000cPであるような分子量のセルロースエーテルである。代替として、第2のセルロースエーテルは、低粘度セルロースエーテルであることができる。「低粘度」セルロースエーテルは、その2質量%水性溶液の20℃での粘度が2センチポイズ(cP)〜400cPであるような分子量のセルロースエーテルである。さらなる態様において、第2のセルロースエーテルは、組成物の0.01質量%〜1.5質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または約1質量%の量で存在する低粘度HPMCである。予期しないことに、そして驚くべきことに、第2のセルロースエーテルの提供が、組成物を基材上にスプレーする際のエッジングを有利に防止することを見出した。
【0040】
ある態様において、組成物は以下の成分のうち1種以上を含有できる:固体充填促進剤、第2の界面活性剤、潤滑剤/艶出し剤、顔料、耐粘着剤、流動促進剤、不透明化剤およびこれらの任意の組合せ。好適な固体充填促進剤の非限定の例としては、高分子量水溶性ポリ(エチレンオキサイド)ポリマー(POLYOXTM),アカシア、および糖(例えばラクトース)が挙げられる。潤滑剤/艶出し剤は、ワックス(例えばカルナバワックスまたはミツロウ)であることができる。顔料は二酸化チタンであることができる。耐粘着剤および/または流動促進剤は、タルク、コロイド状二酸化珪素、モノステアリン酸グリセリル、およびこれらの組合せであることができる。不透明化剤は炭酸カルシウムであることができる。
【0041】
組成物の全固形分量は、組成物の少なくとも10質量%から約40質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または20質量%〜40質量%、または23質量%〜35質量%、または24質量%〜29質量%であることができる。組成物の粘度は、100cP〜1000cP(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または100cP〜500cP(ブルックフィールド粘度)であることができる。
【0042】
組成物を基材に適用して、コートされた組成物を形成できる。コーティング装置(例えば流動床コーティング装置、パンコーティング装置、および/またはフロースルー回転ドラム型コーティング装置)を使用して、組成物を基材の外側の上に適用(塗布)、スプレー、またはアトマイズできる。よって、本開示は、コートされた組成物を提供する。ある態様において、コートされた組成物は、基材および該基材上のコーティングを含む。コーティングは、VLVセルロースエーテルおよび可塑剤を含有する。VLVセルロースエーテルは、コーティングの少なくとも10質量%、または20質量%超、または少なくとも10質量%から40質量%の量で存在する。ある態様において、コーティングは、界面活性剤および着色剤を含む。
【0043】
本明細書で用いる「基材」は、セルロースエーテルで部分的または完全に覆うことができる対象物である。好適な基材の非限定の例としては、経口摂取用錠剤、食物製品、医薬製品(医薬の錠剤およびカプセル)、薬剤、薬物、種子、動物飼料、顆粒、ビーズ、粉末、トローチ、および肥料が挙げられる。基材は、カプセル化物(例えば粒子状物質)であってもよく、粒子状物質はコーティングによってカプセル化(マイクロ−またはマクロ−カプセル化)されている。
【0044】
コーティングは、基材の一部の上に位置することができる。別の態様において、コーティングは基材全体を包囲し、そして基材をカプセル化する。従って、VLVセルロースエーテルは、(i)基材の一部または(ii)基材全体の周り、の上にフィルムを形成する。ある態様において、乾燥されたコーティングは、基材の1質量%〜20質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)であることができる。
【0045】
ある態様において、コーティングは第2のセルロースエーテルを含む。第2のセルロースエーテルは、本明細書で前記した任意のセルロースエーテルであることができる。更なる態様において、コーティングは、以下の成分のうち1種以上を含有する:固体充填促進剤、第2の界面活性剤、潤滑剤/艶出し剤、顔料、耐粘着剤、流動促進剤、不透明化剤、およびこれらの任意の組合せ。これらの成分の各々がコーティング中に存在することは、以下のコーティング組成物中に存在する各化合物の量に対応することができる。
【0046】
組成物は、本明細書で開示する2つ以上の態様を含むことができる。
【0047】
本開示は別の組成物を開示する。この組成物はコーティング組成物であることができる。ある態様において、組成物は、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルの水性溶液を含む。溶液は、少なくとも10質量%、または20質量%超、または10質量%〜30質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または14質量%〜23質量%、または16質量%〜21質量%の、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを含有する。低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルは、フィルム形成剤として働く。ある態様において、組成物は可塑剤を含むことができ、および/または着色剤を含むことができる。
【0048】
ある態様において、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルの粘度は、2質量%水性溶液として20℃で測定したときに、3cP未満である。例えば、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルの粘度は、1.2cP〜3cP(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または2.61cP〜2.66cPである。更なる態様において、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルは、APHA値が1〜20(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または15〜16.5であるVLCセルロースエーテルである。粘度が3cP未満の(および極めて低着色の)低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルは、米国特許出願整理番号第60/986,686号(代理人整理番号第34995号)(2007年11月9日出願)(その全内容は参照により本明細書に組入れる)に記載されるように製造できる。
【0049】
可塑剤は、本明細書で先に開示した任意の可塑剤であることができる。可塑剤は、組成物の1質量%〜10質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または1質量%〜3.3質量%、または1.6質量%〜2.2質量%の量で存在できる。ある態様において、可塑剤はポリエチレングリコールである。
【0050】
着色剤は、本明細書で先に開示した任意の着色剤であることができる。着色剤は、組成物の0.5質量%〜7質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または0.1質量%〜1.5質量%、または0.4質量%〜0.8質量%の量で存在できる。ある態様において、着色剤は、アルミニウムレーキ顔料および/または水溶性色素であることができる。組成物は顔料を含むことができる。顔料は、組成物の0.5質量%〜7質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または0.1質量%〜1.5質量%、または0.4質量%〜0.8質量%の量で存在できる。
【0051】
ある態様において、組成物は、以下の成分のうち1種以上を含むことができる:界面活性剤、第2のセルロースエーテル、固体充填促進剤、潤滑剤/艶出し剤、耐粘着剤、流動促進剤、不透明化剤およびこれらの組合せ。組成物の総固形分量は、組成物の10質量%〜約40質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または15質量%%〜28質量%、または18質量%〜25質量%である。
【0052】
この組成物を基材に適用して、本明細書で先に開示したコートされた組成物を形成できる。よって、本開示は、別のコートされた組成物を提供する。ある態様において、図1に示すように、コートされた組成物10は、基材12および該基材上のコーティング14を含む。コーティング14は、少なくとも10質量%、または20質量%超、または10質量%〜40質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または14質量%〜23質量%、または16質量%〜21質量%の低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを含有する。コーティング14中に存在する低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルの粘度は、3cP未満であることができ、および/またはVLCセルロースエーテルであることができる(上記で議論したように)。
【0053】
コーティングは、基材の一部の上に位置できる。代替として、コーティング14は、基材12全体を包囲して、基材をカプセル化する(図1に示す通り)。従って、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルは、(i)基材の一部または(ii)基材全体の周り、の上にフィルムを形成する。
【0054】
ある態様において、コーティングは、以下の成分のうち1種以上を含有することができる:可塑剤、着色剤、第2のセルロースエーテル、界面活性剤、固体充填促進剤、顔料、潤滑剤/艶出し剤、耐粘着剤、流動促進剤、不透明化剤、およびこれらの組合せ。これらの成分の各々の量は、上記で議論した組成物中の各成分のそれぞれの量と同じである(またはこれより多い)ことができる。
【0055】
ある態様において、基材12は、1つ以上の表面16a,16b,16c,16d並びに1つ以上の端部18a,18b,18cおよび18dを有する。コーティング14は、少なくとも1つの表面および少なくとも1つの端部を覆う。更なる態様において、コーティング14は、全ての表面16a〜16dおよび全ての端部18a〜18dを覆う(図1に示すように)。
【0056】
ある態様において、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを含有するコーティングを用いてエッジングを防止できる。本明細書で用いる「エッジング(edging)」は、スプレーコーティングプロセスの間に、これによって基材の端部がコートされず、そして表面がコートされる現象である。エッジングは、典型的には、例えば錠剤のスプレーコーティングの間に観察される。図2は、エッジングを示すコートされた組成物50を示す。コーティング54は、基材52の表面56a,56b,56c,および56dを覆う。しかし、1つ以上の端部58a,58b,58c,および58dは、表面56a〜dが覆われているのと同じ範囲で、コーティング54によって覆われていない。
【0057】
何らの特定の理論にも拘束されることを望まないが、コーティング組成物中の高濃度の低ヒドロキシプロピルセルロースエーテル、および、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテル中に存在する低量のヒドロキシプロピル基は、基材に対するコーティング接着および基材端部の周りのフィルム形成の促進(スプレー適用中に)に寄与すると考えられる。驚くべきことに、そして予期しないことに、高濃度(すなわち少なくとも10質量%)の低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを含有するコーティング溶液は、スプレーコーティングプロセスの間のエッジングを低減、さらには排除することを見出した。従って、ある態様において、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテル溶液は、基材12全体を単層のコーティング14で覆うことを可能にする(図1)。
【0058】
ある態様において、コーティング14は、基材12の表面および端部に沿った均一なコーティングである。本明細書で用いる「均一」とは、コーティングの範囲に沿った一定厚みである。図1は、コーティング14についての厚み20を示す。厚み20は、コートされた組成物10の外周の周りの全ての点で同じまたは一定である。言い換えると、コーティング14の厚み20は、端部18a〜18dで、表面16a〜16dに沿ってと同じかまたは実質的に同じである。
【0059】
コートされた組成物は、本明細書で開示する2つ以上の態様を含むことができる。
【0060】
ある態様において、エッジングを防止する方法を提供する。該方法は、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを含有する水性溶液を基材上にスプレーすることを含む。溶液は、少なくとも10質量%、または20質量%超、または10質量%〜40質量%(またはその間の任意の値もしくは下位範囲)、または14質量%〜23質量%、または16質量%〜21質量%の低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを含有する。基材は表面および端部を有する。該方法は、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルのコーティングを表面上または端部上に形成することを含む。ある態様において、溶液は可塑剤を含むことができる。更なる態様において、該方法は、均一なコーティングを表面上および端部上に形成することを含む。
【0061】
本発明のコーティング組成物におけるVLVセルロースエーテルおよび/または低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルの提供は、幾つかの利点をもたらす。水性環境中で、VLVセルロースエーテル/低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを高濃度でスプレーする能力は、コーティング組成物を、味のマスキング剤として、および風味固定剤として、経口固体投与形状、液体懸濁液、飼料、獣医学的用途および栄養補助製品にて極めて有用にする。これはまた、平滑な(斑点がない)表面、および均一なコーティングをエッジングなしで与えることによって、得られるコートされた組成物の視覚的な魅力を改善する。VLVセルロースエーテルおよび/または低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルはまた、経口固体投与形状、獣医学的および農学的な適用、食品、飼料、栄養補助製品および化粧品を与えるためのカプセル化技術に対して極めて有用である。
【0062】
本開示は、従来のセルロースエーテルコーティング組成物よりも顕著に高度に溶解したセルロースエーテルを有するコーティング組成物を提供する。高濃度の、溶解したVLVセルロースエーテルおよび/または低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルは、アトマイズされるかまたは基材を均一にコートすることになるこれらの組成物を含有するフィルムコーティング配合物の能力を損なわない。顕著により高いフィルム形成性ポリマー濃度が溶解できるため、コーティング時間は、現在到達できるのを越えて顕著に低減できる。加えて、本発明のフィルム形成剤(例えば、VLVセルロースエーテルおよび低ヒドロキシプロピルセルロースエーテル)はまた、例えば、VLC特性を示す。これは、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルについて特に驚くべきものである。従来の低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルグレードは、典型的には、顕著に濃色の水性溶液を形成する。逆に、出願人は、驚くべきことに、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを含有する高度に濃縮されたフィルムコーティング溶液を用いて、フィルムコーティングを適用する一方、濃色(従来の低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルフィルムコーティング溶液で生じる)の許容可能でない形成を回避する方法を発見した。従って、本明細書で開示する組成物を用いることで、顕著な時間の節約を得ることができる一方、同時に高品質のフィルムコートされた基材を製造できる。
【0063】
溶解したフィルム形成性ポリマー、すなわちVLVセルロースエーテルおよび低ヒドロキシプロピルセルロースエーテル、の濃度は、近年の従来のセルロースエーテルグレードで(アトマイズ、コート均一性または溶液色に不利に作用せずに)達成できるよりも顕著に高い。本明細書で開示するコーティング組成物中の全固形分量は、用いる追加の添加物(顔料、可塑剤、界面活性剤等)の量および種類に応じて10質量%過剰であることができる。これは、本発明のコーティング組成物が高い総固体充填量を与え、更に、本発明のコーティング組成物は、アトマイズおよび均一フィルムコーティング適用に従うことができる粘度を有するため有利である。顕著により高いフィルム形成性ポリマー濃度を実現できることにより、コーティング時間は、現在到達できるのを越えて顕著に低減できる。加えて、くすんだフィルムコーティングの生成を回避できる。VLVセルロースエーテルおよび低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルは各々VLC特性を示すからである。VLVセルロースエーテルおよび低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルは、測色的な副生成物の生成が回避されるようにして製造する。従って、測色的な副生成物(これは、従来のセルロースエーテルフィルムコーティング溶液において一般的に見出される濃色の溶液色に影響する)は、本発明のVLVセルロースエーテルおよび低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルにおいては有利に存在しない。
【0064】
例の目的および非限定の、本開示の例をここで与える。
【0065】

例1
VLVセルロースエーテルコーティング組成物
【0066】
【表2】

【0067】
セルロースエーテル貯蔵溶液を形成するために、Sunbeamケトル(モデルno.K47AMD YE)(内部加熱コイルを収容する)内で水を沸騰させる。水を沸騰させた後、ケトルへの電源を外し、次いで水をビーカー内に計り入れる。水を、StedFastTMスターラー(モデルno.SL 600,Fisher Scientific)(マリンプロペラ型撹拌軸を備える)を用いて撹拌する。セルロースエーテルを、撹拌熱水に、全てのセルロースエーテルが完全に分散するまでゆっくり添加する。分散液を、次いで、定速撹拌下で室温まで平衡させる。室温に到達した時点で、セルロースエーテルを溶液中に完全に溶解させる。蒸発したいずれの水も淡水で置換する。各々の貯蔵溶液を、次いで瓶に移し、キャップし、そして溶液を平衡させるためにローラ装置上に1晩おく。貯蔵溶液を15℃で使用まで貯蔵する。使用前に、貯蔵溶液を室温まで平衡させる。貯蔵溶液セルロースエーテル濃度15%(E6PLV)および35%(w/w)(E2.1VLV)を用いてフィルムコーティング組成物を形成する。
【0068】
CARBOWAXTM SENTRYTM400をそのままで用いる。
【0069】
ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)貯蔵溶液を形成するために、水をビーカー内に計り入れ、そして、StedFastTM Stirrer(マリンプロペラ型撹拌軸を備える)を用いて撹拌する。SLSを水中に溶解させて、0.5%(w/w)貯蔵溶液を形成する。貯蔵溶液を室温で貯蔵する。
【0070】
アルミニウムレーキ貯蔵分散液を形成するために、最終アルミニウムレーキ貯蔵分散液によって占められるものの少なくとも2倍の容積のビーカー内に、水を計り入れる。これを行って、均質化の間の激しい混合のための空間が得られるようにする。アルミニウムレーキを計量し、そして水に5%(w/w)濃度で添加する。分散液を、次いで、ローター−ステーターホモジナイザー(Polyscience,モデルno.X−520)で、下記表中に挙げる手順を用いて均質化する。
【0071】
手順を2〜3回繰り返して、アルミニウムレーキの十分な分散および粒子サイズ低下を確保する。
【0072】
【表3】

【0073】
貯蔵溶液、CARBOWAXTM SENTRYTM 400 およびアルミニウムレーキ貯蔵分散液を一緒にブレンドして、得られるフィルムコーティング配合物中の各含有成分の所望の濃度を実現する。成分は、StedFastTMスターラー(マリンプロペラ型撹拌軸を備える)を用いて一緒にブレンドする。フィルムコーティング配合物を連続的に少なくとも1時間撹拌して、均一な混合物を確保する。
【0074】
フィルムコーティング配合物の粘度を、Brookfield Digital Viscometer(モデルno.DV II,Brookfield Engineering Laboratories,Inc.)(RVスピンドルセットを備える)を用いて測定する。スピンドル1〜7を、必要に応じて、フィルムコーティング配合物の粘度に応じて用いる。スピンドル1(最も大きいスピンドル)は、最も低粘度のサンプルに用いる。スピンドル7(最も小さいスピンドル)は、最も高粘度のサンプルに用いる。用いるスピンドル回転設定は、ダイヤル読み0.5,1,2.5,5,10,20,50および100であり、0.5は、最も遅い回転速度であり、100が最も速い。機器を準備するために、必要な最も大きいスピンドルを見積もり(サンプル粘度の目視観察による)、そして粘度計に取付ける。粘度計を次いでその特定スピンドルについてキャリブレートする。デジタルディスプレイをプログラムして、粘度データをcP単位で与える。ダイヤルを0.5に設定し、そしてスピンドルモーターを入れる。ダイヤル設定を徐々に、「低」インジケータの光が消えてスピンドル速度が有効な粘度読みを得るのに十分であることを示すまで、上げる。粘度を記録する。スピンドル設定を上げ、そして、デジタルディスプレイ読みが「EEE」になるまで粘度読みを記録する。これは、スピンドル速度が、有効な粘度読みを得るのには速すぎるようになったことを示す。粘度計モーターは、スピンドルを取外す前に消す。各回で、異なるスピンドルを用い、粘度計は、その特定のスピンドルについてキャリブレートし、そしてディスプレイは、粘度データをcP単位で与えるようにプログラムした。可能であれば、1〜3のスピンドルを用いて、各々の貯蔵溶液またはフィルムコーティング配合物の粘度を試験する。
【0075】
採点した卵形プラセボ錠剤(錠剤当たり400mg)を、0.49”×0.27”凹面具を用いて圧縮する。錠剤処方を下記表に列挙する。
【0076】
【表4】

【0077】
錠剤を、フィルムコーティング組成物で、HI−COATER(モデルLDCS,Vector Corporation)(1.3Lバッフル付パンを備える)を用いてコートする。スプレーノズルを洗浄し、そして“F3:Calibrate Guns”メニューを用いてキャリブレートする。フィルムコーティングの実施パラメータは、“Fl:Manual Process”メニューを用いてプログラムする。
【0078】
フィルムコーティングの前に、400〜600gバッチの錠剤をパン内に導入し、そして排気用送風機およびプロセス加熱を開始する。パンを次いで間欠的に操作する(10秒オン、10秒オフ)。タブレットを所望の操作温度に平衡させるためである。排気温度を操作温度設定点として用い、これは加熱が自動的に調整されて排気エアが比較的一定の温度に維持されることを意味する。所望の排気温度に到達した時点で、パンを連続式で操作し、そしてフィルムコーティング配合物を、ノズルを介して転動錠剤床上にアトマイズする。所望量のフィルムコーティング配合物を転動錠剤床上に導入した後、アトマイズを止め、そしてフィルムコートされた錠剤を連続的に同じ排気温度で30分間転動乾燥させる。乾燥後、パン、プロセス加熱および排気用送風機を逐次順番に止める。
【0079】
錠剤を、フィルムコーティングの前および後に計量して、パーセント質量増量を評価する。フィルムコートされた錠剤は、架橋、鋭い曲部のコーティング、エッジング、ならびにコートの平滑性および均一性について視覚的に検査する。
【0080】
【表5】

【0081】
【表6】

【0082】
【表7】

【0083】
【表8】

【0084】
視覚的な検査の際、VLVセルロースエーテルコートされた錠剤は、審美的に許容可能であり、そして均一にコートされている。錠剤は3%質量増量目標でコートし、実際の質量増量は3.48%である。SLSをフィルムコーティング配合物中に含ませることは、VLVセルロースエーテルコーティング組成物が錠剤表面に亘って広がることの助けとなる。より低い質量増量(3% 対 4%)は同等に審美的なフィルムコーティングを生成する。
【0085】
実験を繰り返す(ナプロキセンナトリウムを含有する錠剤をフィルムコートすることを除く)。溶解試験を行って、フィルムコーティングがナプロキセンナトリウムの放出を妨げないことを確保する。
【0086】
溶解試験(USP 29 Type 2(Paddle)Method)を、Distek Dissolution System 2100B(Crescent Scientific Pvt.Ltd.Goregaon−East,Mumbai,India)(Hewlett−Packard 8452A Diode Array Spectrophotometer(Hewlett−Packard Co.Palo Alto,CA,USA)を備える)を用いて実施する。各サンプルについての溶解試験は、6重(n=6)で、900mLの、脱気された脱イオン水(Distek MD−I De−Gasserを用いて脱気)(標準容器当たり)を用いて実施する。溶解媒体温度は、37.0±0.5℃に、Distek TCS0200Bヒーター/循環装置を用いて平衡させる。そしてパドル速度を50rpmで設定する。小さいセル(1.0mm)を分光光度計にて用いる。溶解したナプロキセンナトリウムを、紫外線波長330〜334nmで定量する。
【0087】
図3は、VLVセルロースエーテルコートされた錠剤が、ナプロキセンナトリウムを、コートされていないナプロキセンナトリウム錠剤とほぼ同じに放出することを示す。
【0088】
例2
VLVセルロースエーテルコーティング組成物
【0089】
【表9】

【0090】
【表10】

【0091】
【表11】

【0092】
【表12】

【0093】
例3
低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルコーティング組成物
【0094】
【表13】

【0095】
低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルF2.61VLVおよび低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルF2.66VLVは、解重合プロセス(解重合の間のポリマー濃色化を防止するための過酸化物処理を伴って)を用いて調製する。CARBOWAXTM SENTRYTM 400(PEG,Dow Chemical)およびFD&C Yellow No.5(Spectrum Chemical,FDA ロットno.AN3831)を、F2.61VLVおよび/またはF2.66VLVと組合せて使用して、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルコーティング組成物を形成する。材料を、これらの対応する機能とともに、下記表中に列挙する。
【0096】
【表14】

【0097】
フィルムコーティング液体調製
全コーティング成分を完全に、水性ビヒクル中に溶解させる。貯蔵溶液を以下に概説するように調製する。
【0098】
ヒプロメロース貯蔵溶液の調製
各々の低ヒドロキシプロピルセルロースエーテル貯蔵溶液を形成するために、水をSunbeamケトル(モデルno.K47AMD YE)(内部加熱コイルを収容する)中で沸騰させる。水を沸騰させた後、ケトルへの電源を外し、そして熱水をビーカー内に計り入れる(ビーカー風袋質量は記録されている)。水を、StedFastTMスターラー(モデルno.SL 600,Fisher Scientific)(マリンプロペラ型撹拌軸を備える)を用いて撹拌する。低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを、撹拌熱水に、全ての粉末が完全に分散するまでゆっくり添加する。分散液を、次いで、定速撹拌下で室温まで平衡させる。室温に到達した時点で、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルは完全に溶解している。蒸発する水の量が決定される。ビーカーおよび含有成分の質量は既知であるからである。蒸発する水は貯蔵溶液中に置換および混合される。貯蔵溶液を次いで瓶に移し、キャップし、そしてローラ装置上に1晩おく。貯蔵溶液を15℃で使用まで貯蔵する。使用前に、貯蔵溶液を室温まで平衡させる。低ヒドロキシプロピルセルロースエーテル貯蔵溶液濃度30%(w/w)を得る。
【0099】
色素貯蔵溶液の調製
FD&C Yellow No.5色素貯蔵溶液を形成するために、最終貯蔵溶液によって占められるものの少なくとも2倍の容積のビーカー内に、水を計り入れる。これを行って、均質化の間の激しい混合のための空間が得られるようにする。色素を計量し、そして水に添加して、5%(w/w)濃度を得る。分散液を、次いで、ローター−ステーターホモジナイザー(Polyscience,モデルno.X−520)で、下記表中に挙げる手順を用いて均質化する。手順を2〜3回繰り返して、溶解のための十分な色素分散および粒子サイズ低下を確保する。
【0100】
【表15】

【0101】
フィルムコーティング配合物の調製
貯蔵溶液を一緒にブレンドして、得られるフィルムコーティング配合物中の各含有成分の所望の固形分濃度を実現する。例えば、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテル貯蔵溶液を、風袋重さを量った瓶に計り入れる。次に、ポリエチレングリコール(PEG)(その純粋な形で)を添加する。次いで、FD&C Yellow No,5貯蔵溶液を添加する。最後に、十分な量の水を目的濃度まで添加する。フィルムコーティング配合物を少なくとも30分間、StedFast Stirrer(モデルno.SL 600,Fisher Scientific)(マリンプロペラ型撹拌軸を備える)を用いて混合する。
【0102】
粘度測定
フィルムコーティング配合物の粘度を、Brookfield Digital Viscometer(モデルno.DV−II,Brookfield Engineering Laboratories,Inc.)(RVスピンドルセットを備える)を用いて測定する。スピンドル1〜7を、必要に応じて、検討を通じて、フィルムコーティング配合物の粘度に応じて用いる。用いるスピンドル回転設定は、ダイヤル読み0.5,1,2.5,5,10,20,50および100であり、0.5は、最も遅い回転速度であり、100が最も速い。機器を準備するために、必要な最も大きいスピンドルを見積もり(サンプル粘度の目視観察による)、そして粘度計に取付ける。粘度計を次いでその特定スピンドルについてキャリブレートする。デジタルディスプレイをプログラムして、粘度データをcP単位で与える。ダイヤルを0.5に設定し、そしてスピンドルモーターを入れる。ダイヤル設定を徐々に、「低」インジケータの光が消えてスピンドル速度が有効な粘度読みを得るのに十分であることを示すまで、上げる。粘度を記録する。スピンドル設定を上げ、そして、デジタルディスプレイ読みが「EEE」になるまで粘度読みを記録する。これは、スピンドル速度が、有効な粘度読みを得るのには速すぎるようになったことを示す。粘度計へのモーターは、スピンドルを取外す前に消す。各回で、異なるスピンドルを用い、粘度計は、その特定のスピンドルについてキャリブレートし、そしてディスプレイは、粘度データをcP単位で与えるようにプログラムした。可能であれば、1〜3のスピンドルを用いて粘度を試験する。
【0103】
フィルムコーティング適用
採点した卵形プラセボ錠剤(錠剤当たり400mg)を、0.49”×0.27”凹面具を用いて圧縮する。錠剤処方を下記表に列挙する。
【0104】
【表16】

【0105】
錠剤を、フィルムコーティング配合物で、HI−COATER(モデルLDCS,Vector Corporation)(1.3Lバッフル付パンを備える)を用いてコートする。スプレーノズルを洗浄し、そして“F3:Calibrate Guns”メニューを用いてキャリブレートする。フィルムコーティング試験パラメータは、“Fl:Manual Process”メニューを用いてプログラムする。
【0106】
フィルムコーティングの前に、錠剤は、これらを篩上に置いて錠剤床に亘って圧縮エアをスプレーすることによって脱埃する。次に、600gバッチの錠剤を計量し、そしてパン内に導入し、そして排気用送風機およびプロセス加熱を開始する。コーティング試験を開始する前に、タブレットを所望の温度に最大30分間平衡させる。排気温度を操作温度設定点として用い、これは加熱が自動的に調整されて排気エアが比較的一定の温度に維持されることを意味する。所望の排気温度に到達した時点で、パンを連続式で操作し、そしてフィルムコーティング配合物を、ノズルを介して転動錠剤床上にアトマイズする。所望量のフィルムコーティング配合物を転動錠剤床上に導入した後、アトマイズを止め、そしてフィルムコートされた錠剤を連続的に30分間転動させて乾燥させる。乾燥後、パン、プロセス加熱および排気用送風機をその順番に止める。
【0107】
錠剤を、フィルムコーティングの前および後に計量して、パーセント質量増量を評価する。フィルムコートされた錠剤は、架橋、鋭い曲部のコーティング、エッジング、ならびにコートの平滑性および均一性について視覚的に検査する。
【0108】
結果
低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルコーティング組成物
低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルコーティング組成物、更に、錠剤をコートするために用いるパラメータを、下記表に列挙する。組成物は、全部で23.94%の固形分を含有し、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテル2.66VLVは、23.94%総固形分の21%を構成した。21%濃度の低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルコーティング組成物が実現されるという事実は驚くべきものである。粘度が、アトマイズおよび錠剤コーティングを可能にするのに十分に低く残ったからである。典型的には、フィルムコーティングのためのMETHOCEL濃度は、10%を超えないため、セルロースエーテル濃度の、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルコーティング組成物での2倍を超える増大は顕著である。所望量のコーティングは、28分以内で適用され、そして質量増量は3.56%(4%目標)である。コートされた錠剤は優れた品質のものである。適用されたコーティングは平滑でかつ均一である。
【0109】
【表17】

【0110】
【表18】

【0111】
【表19】

【0112】
【表20】

【0113】
米国特許実務のために、本明細書で参照するいずれの特許、特許出願または公開公報の内容も参照によりこれらの全部を本明細書に組み込む(特に、構造、合成方法および当該分野で一般的な技術の開示に関し)。本明細書で記載する本発明の好ましい態様に対する種々の変更および改変が当業者に明らかとなることを理解すべきである。このような変更および改変は、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、そしてその意図する利点を損なうことなく、なされることができる。従って、このような変更および改変は特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の少なくとも10質量%の量で存在する極低粘度セルロースエーテルの水性溶液;および可塑剤;を含む、組成物。
【請求項2】
セルロースエーテルが、極低色セルロースエーテルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
界面活性剤を含む、請求項1〜2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
着色剤を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
第2のセルロースエーテルを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
固体充填促進剤、第2の界面活性剤、潤滑剤、艶出し剤、顔料、耐粘着剤、流動促進剤、不透明化剤およびこれらの組合せからなる群から選択される成分を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
組成物の総固体量が少なくとも10質量%から約40質量%である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
組成物の粘度が100cP〜1000cPである、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
基材;および
該基材上のコーティング;
を含み、該コーティングが、可塑剤、およびコーティングの少なくとも10質量%の量で存在する極低粘度セルロースエーテルを含む、コートされた組成物。
【請求項10】
コーティングが、固体充填促進剤、界面活性剤、第2のセルロースエーテル、潤滑剤、艶出し剤、顔料、耐粘着剤、流動促進剤、不透明化剤およびこれらの組合せからなる群から選択される成分を含む、請求項9に記載のコートされた組成物。
【請求項11】
組成物の少なくとも10質量%の量で存在する低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルの水性溶液;を含む、組成物。
【請求項12】
2%水性溶液として20℃で測定したときの低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルの粘度が3cP未満である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルが極低色セルロースエーテルである、請求項11〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
着色剤を含む、請求項11〜13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
可塑剤を含む、請求項11〜14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
固体充填促進剤、第2のセルロースエーテル、界面活性剤、潤滑剤、艶出し剤、顔料、耐粘着剤、流動促進剤、不透明化剤およびこれらの組合せからなる群から選択される成分を含む、請求項11〜15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
総固形分量が10質量%から約40質量%である、請求項11〜16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
基材;および
該基材上のコーティング;
を含み、該コーティングが、少なくとも10質量%の低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを含む、コートされた組成物。
【請求項19】
コーティングが、可塑剤、着色剤、固体充填促進剤、第2のセルロースエーテル、界面活性剤、潤滑剤、艶出し剤、顔料、耐粘着剤、流動促進剤、不透明化剤およびこれらの組合せからなる群から選択される成分を含む、請求項18に記載のコートされた組成物。
【請求項20】
基材が、表面および端部を含み、コーティングが該表面および該端部を覆っている、請求項18〜19のいずれかに記載のコートされた組成物。
【請求項21】
表面および端部の上の均一コーティングを含む、請求項18〜20のいずれかに記載のコートされた組成物。
【請求項22】
コーティングが単層である、請求項18〜21のいずれかに記載のコートされた組成物。
【請求項23】
表面および端部を含む基材の上のエッジングを防止する方法であって:
少なくとも10質量%の低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを含む、低ヒドロキシプロピルセルロースエーテルを含む水性溶液を基材上にスプレーすること;および
コーティングを表面および端部の上に形成すること;
を含む、方法。
【請求項24】
均一コーティングを表面および端部の上に形成することを含む、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−504524(P2011−504524A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533213(P2010−533213)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/082485
【国際公開番号】WO2009/061821
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】