説明

セルロースナノファイバー不織シート

【課題】 セルロースナノファイバーを用いた不織シートであり、使用後、自然環境下で徐々に分解し最終的には消失する性能を有し、また、使用後に焼却した場合に大気汚染が無く、環境への影響が少ない素材であって、風合いソフトで肌触りの良好な素材を提供する。
【解決手段】 セルロースナノファイバーを主体繊維とする不織シートであり、主体繊維同士はバインダー繊維のバインダー成分が軟化または溶融することによって熱接着しており、バインダー成分がポリアルキレンサクシネートに乳酸が高々10モル%共重合した重合体である。バインダー繊維が、芯部にポリ乳酸、鞘部にポリアルキレンサクシネートに乳酸が高々10モル%共重合した重合体が配された芯鞘型複合繊維であるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースナノファイバーを使用した、風合いがソフトな不織シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロースナノファイバーとは全ての植物細胞の基本骨格を形成する径4nm程度のいわゆるナノファイバーであって、地球上にはおよそ1兆トンの蓄積があり、持続的に再生可能な資源である。近年、酵素処理、脱リグニンを行ったパルプを二軸混練機やグラインダーですり潰し、均一なセルロースナノファイバーを得る技術が確立されてきた(例えば、特許文献1)。このセルロースナノファイバー自体はパラ系アラミド繊維と同等の高強度であり、また石英ガラス並みの低熱膨張率であることからフェノール樹脂強化材として自動車外装材、機械要素部品としての製品化が図られている。
【特許文献1】特開2008−1728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者は、上記セルロースナノファイバーを樹脂強化材として使用するのではなく、布帛の構成素材として適用することを考えた。また、環境負荷を考慮して、布帛に生分解性を付与することを考えた。
【0004】
本発明の課題は、セルロースナノファイバーを使用した布帛であって、環境負荷低減効果があり使用後、自然環境下で徐々に分解し最終的には消失する性能を有し、また、使用後に焼却した場合に大気汚染が無く、環境への影響が少ない布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を達成するため検討した結果、ポリアルキレンサクシネートを有するバインダー繊維を用いてセルロースナノファイバー同士を熱接着してシートとすることによって、実用的な強度を保持し、かつソフトな風合いを呈することを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、セルロースナノファイバーを主体繊維とする不織シートであり、主体繊維同士はバインダー繊維のバインダー成分が軟化または溶融することによって熱接着しており、バインダー成分がポリアルキレンサクシネートに乳酸が高々10モル%共重合した重合体であることを特徴とするセルロースナノファイバー不織シートを要旨とするものである。
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明の不織シートは、セルロースナノファイバーを主体繊維とするものである。セルロースナノファイバーは、その直径がナノオーダーのサイズであり、2〜150nm程度の繊維である。例えば、酵素処理、脱リグニンを行ったパルプを二軸混練機やグラインダーですり潰すことによって得られる、直径や繊維長がほぼ均一なセルロースナノファイバーを用いることができる。繊維長としては、数ミクロン程度のものが一般的である。
【0009】
本発明の不織シートは、セルロースナノファイバー同士が、バインダー繊維のバインダー成分が溶融または軟化することにより熱接着したものである。
【0010】
本発明に用いるバインダー繊維は、ポリアルキレンサクシネートに乳酸が高々10モル%共重合した重合体で構成される。ポリアルキレンサクネートとしては、エチレンサクシネート、ブチレンサクシネート、プロピレンサクシネート等を繰り返し単位とするものであり、エチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール等のアルキレンジオールとコハク酸を重合したものである。本発明において、主体繊維であるセルロースナノファイバー同士を接着するバインダーとして、「繊維」を用いる理由は、セルロースナノファイバーは、繊維形態であるため、同じ繊維形態のものをバインダーとして用いる方が、不織シートを製造するにあたり主体繊維であるセルロースナノファイバーと均一に分散しやすいためである。均一に分散することにより、得られる不織シートは均一な強度を有する品質の良好なものとなるためである。また、本発明において、バインダー成分として上記ポリアルキレンサクシネートを用いる理由は、重合体が硬くなく柔軟性が良好であるため、得られる不織シートもまた、柔軟性に優れるものが得られるためである。なお、本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、上の繰り返し単位に、ε−カプロラクトン等の環状ラクトン類、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、アジピン酸、セバシン酸、リンゴ酸等のジカルボン酸類を共重合させてもよいが、共重合率が多すぎると融点が低くなりすぎるため、これらの共重合量は30モル%以下の範囲とする。
【0011】
バインダー成分となるポリアルキレンサクシネートには乳酸が高々10モル%共重合されている。乳酸の共重合比率を高々10モル%とすることにより、ポリアルキレンサクシネートの本来有する柔軟性が損なわずに保持できるためである。共重合する乳酸が10モル%を超えると、ポリアルキレンサクシネートの本来有する柔軟性が損なわれるため、バインダー繊維は硬く屈曲性に欠けたものとなり、この繊維をバインダーとした不織シートは、風合いが硬いものとなる。
【0012】
本発明においてバインダー成分であるポリアルキレンサクシネートに乳酸が高々10モル%共重合した重合体の融点は、90℃以上であることが好ましい。融点が90℃未満であると、紡糸や延伸時に密着が起こりやすく、操業性に劣る傾向にある。なお、バインダー成分の融点の上限は、バインダーとして機能させるための熱処理温度等を考慮すると140℃以下とするのがよい。融点が140℃を超えると、バインダー成分を軟化または溶融する際の熱処理温度を高く設定する必要があり、この熱処理工程で、セルロースの分解が開始することがある。
【0013】
バインダー成分の粘度は、ASTM D 1238に記載の方法に準じて、温度190℃、荷重20.2N(2160gf)で測定したMFRが5〜80g/10分であることが好ましく、20〜40g/10分であることがより好ましい。MFRが5g/10分未満であると、溶融押出が困難となるだけでなく、繊維の機械的強力が低下する傾向にある。一方、MFRが80g/10分を超えても、溶融押出により良好に繊維化しにくい。
【0014】
本発明に用いるバインダー繊維の形態は、前記したバインダー成分のみからなる単相形態であっても、バインダー成分が繊維表面の一部を占める複合形態であってもよい。複合形態を採用する場合は、バインダー成分と複合する重合体もまた、生分解性を有するものを採用する。本発明においては、芯部にポリ乳酸、鞘部にポリアルキレンサクシネートに乳酸が高々10モル%共重合した重合体が配された芯鞘型複合繊維をバインダー繊維として用いるとよい。ポリ乳酸とポリアルキレンサクシネートとを複合する場合、ポリアルキレンサクシネートは乳酸が共重合してなるものを用いることにより芯部との相溶性が飛躍的に良化する。芯部と鞘部の重合体同士における相溶性が低い場合、溶融した鞘部のバインダー成分が、芯部との界面が小さくなるような挙動を示し、流動して島状に凝集するという現象が起こるため、バインダー成分が局所的に存在する傾向となる。芯部のポリ乳酸と共通の成分である乳酸を、バインダー成分であるポリアルキレンサクシネートに含有させることにより、鞘部のバインダー成分と芯部のポリ乳酸との相溶性が良化し、前述のような現象が起こりにくく、シート全面に亘ってバインダー成分が存在するため接着強力が斑なく、不織シート自体の強力を向上させることができる。バインダー繊維が芯鞘型複合繊維の場合、芯部と鞘部との芯鞘比率については、操業性、コストの面から、芯/鞘の容積比で30/70〜70/30が好ましい範囲である。
【0015】
本発明において、ポリアルキレンサクシネートが共重合する乳酸は、L−乳酸であっても、D−乳酸でもよい。また、乳酸は、モノマー単位で共重合してなるものを基本とするが、本発明の効果を損なわない範囲でオリゴマー単位(2個〜10個程度)のものが一部含まれていてもよい。
【0016】
バインダー成分と複合するポリ乳酸としては、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、L−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリDL−乳酸、あるいはポリL−乳酸とポリD−乳酸の混合物(ステレオコンプレックス)のいずれでもよい。L−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリDL−乳酸を用いる場合のD−乳酸とL−乳酸の共重合比(D−乳酸/L−乳酸)は、100/0〜95/5、5/95〜0/100が好ましい。上記共重合比を外れる共重合体は、融点が低くなり、また、非晶性が高くなるため高強度の繊維が得られにくい。本発明においては、バインダー繊維の芯部に結晶性を有するポリ乳酸を配することにより、繊維が実用的な強度を保持することができる。
【0017】
ポリ乳酸の粘度は、ASTM D 1238に記載の方法に準じて、温度210℃、荷重20.2N(2160gf)で測定したメルトフローレート(以下、MFRと略記する。)が5〜80g/10分であることが好ましく、20〜40g/10分であることがより好ましい。MFRが5g/10分未満であると、溶融押出が困難となるだけでなく、繊維の機械的強力が低下する傾向にある。一方、MFRが80g/10分を超える場合、溶融押出により良好に繊維化しにくい。
【0018】
また、ポリ乳酸には、バインダー繊維の耐久性を向上させることを目的として、脂肪族アルコール、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、エポキシ化合物などの末端封鎖剤を添加してもよい。本発明の目的を損なわない範囲で、ε−カプロラクトン等の環状ラクトン類、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸等のα−オキシ酸類、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類がポリ乳酸に含有されていてもよい。
【0019】
本発明に用いるバインダー繊維の繊度は、生産性、操業安定性、接着性能などを考慮して1.0〜20デシテックス程度が好ましく、1.7〜10デシテックスがより好ましい。
【0020】
バインダー繊維の形状は、円形断面に限定されるものではなく、扁平形、多角形、多葉形、ひょうたん形、アルファベット形、その他各種の非円形(異形)などであってもよい。
【0021】
さらに、バインダー繊維は、各種顔料、染料、撥水剤、吸水剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属粒子、結晶核剤、滑剤、可塑剤、抗菌剤、香料その他の添加剤を目的に応じて混合、添加してもよい。
【0022】
本発明に用いるバインダー繊維は以下の方法により得ることができる。ポリアルキレンサクシネートに乳酸が高々10モル%共重合されている重合体あるいはこれとポリ乳酸とを通常の単一成分紡糸装置あるいは複合紡糸装置(同心芯鞘型の複合紡糸装置)を用いて溶融紡糸し、冷却、油剤を付与した後、延伸することなく一旦巻取る。この未延伸糸を数十万〜二百万デシテックスのトウに集束して、延伸倍率2〜5倍、延伸温度40〜80℃で延伸を行い、80〜130℃で熱処理を施す。続いて、必要に応じて押し込み式クリンパーにより機械捲縮を施した後、仕上げ油剤付与、乾燥機で乾燥を行い、さらにECカッター等のカッターで目的とする長さ(繊維長5〜150mm程度)に切断して短繊維とし、バインダー繊維を得る。
【0023】
本発明の不織シートは以下の方法により得ることができる。
【0024】
バインダー繊維と、通常、0.1〜2%程度の固形分濃度となるようにセルロースナノファイバーとともに水中に分散させ、必要に応じてポリアルキレンオキシド、ポリアクリルアミド、その他の界面活性剤などの分散剤や高級アルコール、シリコーンオイルなどの消泡剤を少量配合し、湿式抄造法により漉き上げてシートとする。次いで、余分な水分を除去する目的と併せてバインダー成分を溶融または軟化させてバインダーとして機能させるために、ヤンキードライヤーや熱風乾燥機等に通して、熱処理温度をバインダー成分の融点より10℃低い温度〜融点より30℃高い温度に設定して熱処理を行い、不織シートを得る。なお、熱処理時の設定温度は、処理速度(処理時間)にも関係するため、適宜設定する。また、一旦、余分な水分をヤンキードライヤーや熱風乾燥機(熱処理温度と時間は、バインダー成分が溶融または軟化しないように設定する。)で除去した後、別工程にてバインダー成分を溶融または軟化させて不織シートを得ることもできる。別工程としては、ヤンキードライヤー、熱風乾燥機や熱カレンダーロールに通すことがよい。
【0025】
本発明の不織シートは、前記したポリアルキレンサクシネートに乳酸が高々10モル%共重合してなる重合体をバインダー成分とする単一成分あるいは他の重合体と複合した繊維用いた不織シートである。本発明の不織シートでは、バインダーとして機能するポリアルキレンサクシネートが柔軟性に優れるため、溶融または軟化した重合体であるバインダー部分の融着箇所が硬くなりすぎず、ザラツキ感のない、ソフトな感触のシートを得ることができる。
【0026】
本発明の不織シートは、セルロースナノファイバーを主体繊維として用いているため、セルロースナノファイバーの作用により、従来にない微細な成分をもろ過できる性能を付与することができる。本発明の不織シートは、濾過布として用いることが好ましい。
【0027】
また、不織シートを使い捨てマスクとして用いることが好ましい。直接肌に触れても、ソフトな感触を有しかつ、花粉や埃等を遮断することができる。
【0028】
また、不織シートがバインダー成分を含んでいることから、熱による立体成形を行うことも可能であり、用途に応じて各種の形状に立体成形することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、セルロースナノファイバーを主体繊維とし、これをポリアルキレンサクシネートに高々10モル%の乳酸が共重合してなる重合体をバインダー成分とするバインダー繊維で、前記重合体が溶融または軟化することによりセルロースナノファイバーが熱接着してなる不織シートであるので、使用後に焼却した場合に、大気汚染が無く、環境への影響が少ない素材である。また、実用的な強力を有しながらも、風合いがソフトで、肌触りの良好な不織シートである。濾過布として好適に使用でき、また、使い捨てマスクとしても好適である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における特性値等の測定法は、次の通りである。また、MFRの測定法は上記したとおりである。
【0031】
(1)融点(℃):パーキンエルマ社製の示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。
【0032】
(2)単糸繊度(dtex):JIS L−1015 7−5−1−1Aの方法により測定した。
【0033】
(3)不織シートの引張強力(cN/25mm幅):不織布を幅25mm、長さ150mmの短冊状に切断し、試料を作成した。この試料をオリエンテック社製UTM−4型のテンシロンを用いて、つかみ間隔100mm、引張速度100mm/分の条件で伸長切断し、最大強力を読み取った。本発明においては、引張強力1000cN以上を実用的な強力を有するものとした。
【0034】
(4)不織シートの風合い:不織シートを10人のパネラーによる手触り試験により、風合いのソフト性を官能評価した。10人中9人以上が風合いがソフトであると評価した場合は○、5〜8人が風合いがソフトであると評価した場合は△、同じく風合いがソフトであると評価した者が4人以下である場合は×とした。
【0035】
実施例1
ポリブチレンサクシネート(MFR24g/10分、融点112℃)を、孔数560孔、円形断面紡糸口金を用い、紡糸温度230℃、紡糸速度800m/分で溶融紡糸し、ポリブチレンサクシネート繊維の未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を延伸温度60℃、延伸倍率3.50倍で延伸を行い、次いで湿式抄紙用の親水性油剤を付与後に70℃で乾燥させ、繊維長5mmに切断し、繊度が1.5dtexであるバインダー繊維を得た。
【0036】
得られたバインダー繊維40質量%とセルロースナノファイバー60質量%を混合し、紙料濃度0.1%、界面活性剤濃度0.02%として水中に分散させたところ均一に分散した。これを25cm四方の角型シートマシンを用いて湿式抄紙を行ったところ、地合いの良好なシートが得られた。得られたシートを110℃のヤンキードライヤーを通して乾燥させて余分な水分を除去し、さらに110℃の熱フラットローラーを通して熱圧着処理を施して、目付け35g/mの不織シートを得た。得られた不織シートの引張強力は2240cN/25mm幅、風合いは○であった。
【0037】
実施例2
実施例1において、バインダー繊維として下記芯鞘型複合バインダー繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、不織シートを得た。バインダー繊維は、以下の方法により得た。
【0038】
ポリ乳酸(MFR21g/10分、D−乳酸/L乳酸の共重合比=1.3/98.7、融点170℃)を芯部とし、L−乳酸を3.0モル%共重合したポリブチレンサクシネート(MFR32g/10分、融点109℃)を鞘部とし、孔数560孔、円形断面芯鞘複合紡糸口金を用い、芯鞘比率が溶融容積比として芯:鞘=50:50となるように計量し、紡糸温度230℃、紡糸速度800m/分で溶融紡糸し、芯鞘型複合繊維の未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を延伸温度60℃、延伸倍率3.50倍で延伸を行い、次いで湿式抄紙用の親水性油剤を付与後に、押し込み式の捲縮機により捲縮を付与した後、仕上げ油剤を付与後に、70℃で乾燥させ、繊維長5mmに切断し、繊度が2.2dtexである芯鞘型複合バインダー繊維を得た。
【0039】
得られた不織シートの引張強力は2450cN/25mm幅、風合いは○であった。
【0040】
実施例3
実施例2において、芯鞘型複合バインダー繊維のバインダー成分の重合体として、ポリブチレンサクシネートに共重合する乳酸の共重合量を1.5モル%(バインダー成分の融点112℃)のものを用いたこと以外は、実施例2と同様にして不織シートを得た。
【0041】
得られた不織シートの引張強力は1970cN/25mm幅、風合いは○であった。
【0042】
実施例4
実施例2において、芯鞘型複合バインダー繊維のバインダー成分の重合体として、ポリブチレンサクシネートに共重合する乳酸の共重合量を4.5モル%(バインダー成分の融点107℃)のものを用いたこと以外は、実施例2と同様にして不織シートを得た。
【0043】
得られた不織シートの引張強力は2050N/25mm幅、風合いは○であった。
【0044】
実施例5
実施例2において、芯鞘型複合バインダー繊維のバインダー成分の重合体として、L−乳酸を3.0モル%共重合したポリエチレンサクシネート(MFR29g/10分、融点101℃)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして不織シートを得た。
【0045】
得られた不織シートの引張強力は2120N/25mm幅、風合いは○であった。
【0046】
比較例1
実施例2において、芯鞘型複合バインダー繊維のバインダー成分として、L−乳酸/D−乳酸の共重合比8.8/91.2(MFR=24/10分、融点130℃)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして不織シートを得た。
【0047】
得られた不織シートの引張強力2640N/25mm幅、風合いは×であった。
【0048】
本発明の不織シートである実施例1〜5は、不織シートの強力も十分高く、また、風合いも非常にソフトであった。一方、比較例1はバインダー成分としてポリ乳酸を用いたものであり、不織シートの強力は高いものの、不織シート自体は剛性で硬く、ソフト性に欠けるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースナノファイバーを主体繊維とする不織シートであり、主体繊維同士はバインダー繊維のバインダー成分が軟化または溶融することによって熱接着しており、バインダー成分がポリアルキレンサクシネートに乳酸が高々10モル%共重合した重合体であることを特徴とするセルロースナノファイバー不織シート。
【請求項2】
バインダー繊維が、芯部にポリ乳酸、鞘部にポリアルキレンサクシネートに乳酸が高々10モル%共重合した重合体が配された芯鞘型複合繊維であることを特徴とする請求項1記載のセルロースナノファイバー不織シート。
【請求項3】
請求項1または2のセルロースナノファイバー不織シートからなる濾過布。
【請求項4】
請求項1または2のセルロースナノファイバー不織シートからなる使い捨てマスク。


【公開番号】特開2009−185417(P2009−185417A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27618(P2008−27618)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】