説明

セルロース処理剤及びその製造方法、並びにセルロースの処理方法

【解決手段】ケイ素化合物とアルミニウム化合物と水酸化ナトリウムが溶解している水溶液であって、ケイ素化合物を酸化ケイ素、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムにそれぞれ換算した場合、その合計量として0.90〜2.16質量%が前記水溶液中に溶解していると共に、前記水溶液中における水酸化ナトリウム濃度が10〜25質量%であることを特徴とするシリカ・アルミナ多孔体生成用セルロース処理剤。
【効果】本発明によれば、一液で一度の処理によってアルミニウム化合物とケイ素化合物とを同時にセルロースに付与してシリカ・アルミナ多孔体生成反応を行わせることができるので、シリカ・アルミナ多孔体をセルロース内部に有する無機化セルロースを簡単に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ・アルミナ多孔体をセルロース内部に生成させるための処理剤及びその製造方法、並びにセルロースの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゼオライトやアルミノシリカゲル等の無機化合物を、紙等のセルロース基材をはじめとする親水性高分子基材に担持させて機能性を付与することが多数試みられている。例えば、塗工、製紙工程でゼオライト、アルミノシリカゲル等の無機化合物を内添する等の技術が知られているが、担持率が自ずと制限される問題があるほか、無機化合物の機能性発現を著しく阻害する場合も多々ある。
このような問題を解決する技術として、例えば、ゼオライトの構成成分であるケイ素化合物又はアルミニウム化合物のどちらか一方の水溶液を親水性高分子基材に含浸させ、塩基性物質と他方の水溶液を混合し、これを更に含浸させて、セルロース繊維の内部にゼオライトを担持させた無機多孔結晶−親水性高分子複合体が提案されている(特許文献1:特開平10−120923号公報、特許文献2:特開平11−315492号公報)。
しかし、上記技術、特に特許文献1には「ケイ素化合物及びアルミニウム化合物の水溶液は、両者を混合した時点でゲルが生成するために、同時にセルロース基材に含浸はできないが、その他の順序ならば特に制限はない。」と記載されており、少なくとも2回の含浸操作が必要であることから、1回の含浸でケイ素化合物とアルミニウム化合物とをセルロースに付与可能な一液処理剤が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開平10−120923号公報
【特許文献2】特開平11−315492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、一度の含浸処理でケイ素化合物とアルミニウム化合物とを同時にセルロースに付与してゼオライト等のシリカ・アルミナ多孔体の生成反応を行わせることができるセルロース処理剤及びその製造方法、並びにセルロースの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、アルミン酸ソーダ等のアルミニウム化合物の水酸化ナトリウム水溶液とケイ酸ソーダ等のケイ素化合物の水溶液とを混合すること、この場合、ケイ素化合物を酸化ケイ素に、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムにそれぞれ換算した場合、その合計量が0.90〜2.16質量%であり、かつ水酸化ナトリウムの濃度が10〜25質量%となるようにアルミニウム化合物、ケイ素化合物、水酸化ナトリウム、水を使用することにより、透明、均一な混合水溶液が得られることを見出した。そして、この混合水溶液でセルロースを処理することにより、セルロースに同時にアルミニウム化合物とケイ素化合物とを付与でき、両化合物を湿熱条件下において反応させることにより、ゼオライト等のシリカ・アルミナ多孔体を生成させることができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
即ち、本発明は、下記のセルロース処理剤及びその製造方法、並びにセルロースの処理方法を提供する。
<1>ケイ素化合物とアルミニウム化合物と水酸化ナトリウムが溶解している水溶液であって、ケイ素化合物を酸化ケイ素、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムにそれぞれ換算した場合、その合計量として0.90〜2.16質量%が前記水溶液中に溶解していると共に、前記水溶液中における水酸化ナトリウム濃度が10〜25質量%であることを特徴とするシリカ・アルミナ多孔体生成用セルロース処理剤。
<2>ケイ素化合物とアルミニウム化合物と水酸化ナトリウムが溶解している水溶液であって、ケイ素化合物を酸化ケイ素、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムにそれぞれ換算した場合、その合計量として0.90〜2.16質量%が前記水溶液中に溶解していると共に、前記水溶液中における水酸化ナトリウム濃度が10〜19質量%であることを特徴とするセルロース系繊維構造物用の<1>記載のセルロース処理剤。
<3>ケイ素化合物がケイ酸ソーダであり、アルミニウム化合物がアルミン酸ソーダであり、シリカ・アルミナ多孔体がゼオライトである<1>又は<2>記載のセルロース処理剤。
<4>アルミニウム化合物の水酸化ナトリウム水溶液とケイ素化合物の水溶液とを、ケイ素化合物を酸化ケイ素、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムにそれぞれ換算した場合、その合計量が0.90〜2.16質量%であり、かつ水酸化ナトリウム濃度が10〜25質量%となるように混合することを特徴とする<1>記載のシリカ・アルミナ多孔体生成用セルロース処理剤の製造方法。
<5>アルミニウム化合物の水酸化ナトリウム水溶液と、ケイ素化合物の水溶液とを、ケイ素化合物を酸化ケイ素、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムにそれぞれ換算した場合、その合計量が0.90〜2.16質量%であり、かつ水酸化ナトリウム濃度が10〜19質量%となるように混合することを特徴とする<4>記載のセルロース処理剤の製造方法。
<6>ケイ素化合物がケイ酸ソーダであり、アルミニウム化合物がアルミン酸ソーダであり、シリカ・アルミナ多孔体がゼオライトである<4>又は<5>記載のセルロース処理剤の製造方法。
<7>セルロースに<1>記載のセルロース処理剤を含浸させた後、湿熱加熱してセルロース内部でケイ素化合物とアルミニウム化合物とを反応させてシリカ・アルミナ多孔体を生成させることを特徴とするセルロースの処理方法。
<8>セルロース系繊維構造物に<2>記載のセルロース処理剤を含浸させた後、湿熱加熱してセルロース系繊維内部でケイ素化合物とアルミニウム化合物とを反応させてシリカ・アルミナ多孔体を生成させる<7>記載のセルロースの処理方法。
<9>繊維構造物が、織布、不織布又は編物である<8>記載のセルロースの処理方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一液で一度の処理によってアルミニウム化合物とケイ素化合物とを同時にセルロースに付与してシリカ・アルミナ多孔体生成反応を行わせることができるので、シリカ・アルミナ多孔体をセルロース内部に有する無機化セルロースを簡単に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のセルロース処理剤は、セルロース内にシリカ・アルミナ多孔体を生成させるための処理剤であって、ケイ素化合物とアルミニウム化合物と水酸化ナトリウムが溶解している水溶液である。ここで、ケイ素化合物を酸化ケイ素、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムにそれぞれ換算した場合、その合計量として0.90〜2.16質量%、特に1.2〜1.9質量%が前記水溶液中に溶解していると共に、この水溶液中の水酸化ナトリウム濃度が10〜25質量%、好ましくは10〜19質量%、特に16〜19質量%である水酸化ナトリウム水溶液からなるものである。
【0009】
上記ケイ素化合物を酸化ケイ素、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムに換算した場合、その合計量が0.90質量%より低いとゼオライトの合成量が少なくなり、2.16質量%より多いと、白濁(利用されない量)が生じる。また、水酸化ナトリウム濃度が10質量%より低いと水溶液内で沈殿が発生する。25質量%より多いとセルロース繊維の物理的な変化が大きく、黄変や減量などが発生する。なお、10〜15質量%未満の場合、セルロース繊維の物理的な変化が少なく、セルロース繊維内でのゼオライトの合成が十分に進まないおそれがあり、19質量%を超え25質量%以下の場合、例えば黄変が発生するおそれがあり、かかる点で水酸化ナトリウム濃度は16〜19質量%が最も好ましい。
【0010】
ケイ素化合物を酸化ケイ素(SiO2)、アルミニウム化合物を酸化アルミニウム(Al23)に換算するとは、それぞれケイ素化合物を酸化ケイ素(SiO2)、アルミニウム化合物を酸化アルミニウム(Al23)として質量%を計算している。
この場合、ケイ素化合物を酸化ケイ素、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムにそれぞれ換算した際の酸化ケイ素と酸化アルミニウムが、質量比として1:0.2〜1:2、特に1:0.2〜1:1の割合となるように使用することが好ましい。
【0011】
ここで、ケイ素化合物としては、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、水ガラス、シリカゾル等を使用することができる。一方、アルミニウム化合物としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等が挙げられる。
【0012】
例えば、セルロース系繊維等のセルロース内部でゼオライトを生成する場合は、ケイ素化合物としてはメタケイ酸ナトリウムを、アルミニウム化合物としてはアルミン酸ナトリウムを好適に使用できる。この場合、セルロース処理剤には、メタケイ酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムとは4〜9質量%溶解していることが好ましい。
【0013】
上記セルロース処理剤は、アルミニウム化合物の水酸化ナトリウム水溶液と、ケイ素化合物の水溶液とを準備し、これらをアルミニウム化合物、ケイ素化合物及び水酸化ナトリウムの濃度が上述した範囲になるように混合することによって、透明、均一で低濃度の混合水溶液を得ることができる。また、アルミニウム化合物の水溶液とケイ素化合物の水酸化アルミニウム水溶液を混合しても同様な結果が得られる。
【0014】
なお、上記混合は室温において行うことができるが、30〜90℃程度に加熱しても差し支えない。
【0015】
本発明で得られた処理剤は、上述したように、実質的に透明、均一であり、25℃においてB形粘度計を用いて測定した程度が約2mPa・s以下の低粘度であり、この処理剤を用いてセルロースを処理するものである。
【0016】
その処理法としては、セルロース製品を上記処理剤に浸漬する等の方法でセルロース内に上記処理剤を含浸して、上記ケイ素化合物及びアルミニウム化合物をセルロースに付与し、必要に応じて室温下で養生した後、湿熱加熱させることにより、水蒸気の存在下で反応させ、これによってセルロース内にシリカ・アルミナ多孔体を形成させるものである。
【0017】
この場合、セルロース製品の種類は特に制限されず、例えば紙製品などを処理することもできるが、特に本発明はセルロース系繊維構造物の処理に有効である。
【0018】
ここで、セルロース系繊維としては、綿、麻等の天然セルロース繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン(キュプラ)、テンセル、ポリノジック、リヨセル等の再生セルロース繊維、アセテート等の半合成繊維が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を混用したものであっても構わない。この場合、セルロース系繊維は綿繊維が通常35%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、更に好ましくは綿100%のものが、優れた吸湿性、吸水性、風合の点から望ましい。なお、これら天然、再生セルロース繊維又は半合成繊維にナイロン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維等、他の繊維を本発明の目的を損なわない範囲で混合して用いても差し支えない。
【0019】
かかるセルロース系繊維からなる構造物としては、織布、不織布、編物を挙げることができ、具体的には、上記セルロース系繊維を通常の紡績方法により撚りを与えて糸とし、該糸を製織又は製編してなる、平織、綾織、朱子織等の織物や、天竺、鹿の子等のシングルジャージ、フライス、スムス等のダブルジャージ等の編物等のあらゆる織物又は編物、あるいは不織布等が挙げられ、これらは必要に応じて、毛焼、糊抜、精練、漂白、シルケット加工等の処理を施すことができる。
【0020】
この場合、このようなセルロース系繊維構造物を処理するセルロース処理剤としては、水酸化ナトリウム濃度が高すぎると、セルロース系繊維構造物に黄変が生じ、水酸化ナトリウム濃度が低すぎると、ゼオライト等のシリカ・アルミナ多孔体の生成率乃至担持率が低下するおそれがあるので、上述したように、ケイ素化合物のケイ素を酸化ケイ素、アルミニウム化合物のアルミニウムを酸化アルミニウムに換算してその合計で0.90〜2.16質量%、特に1.2〜1.9質量%溶解していると共に、水酸化ナトリウム濃度が10〜25質量%、好ましくは10〜19質量%、特に16〜19質量%である水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。
【0021】
セルロース系繊維構造物に上記水溶液を含浸させる方法は特に制限されず、パディング法、コーティング法、スプレー法、浴中法等いずれの方法でも構わないが、特にパディング法が加工性(生産性)に優れることから好ましく採用することができる。この場合、複数回に亘って繰り返し含浸させるようにすることが好ましい。
【0022】
上記処理剤(処理液)を含浸させた後、好ましくは4〜20時間、室温下で養生し、次いで湿熱加熱させる。湿熱加熱の条件は、60〜100℃、特に70〜90℃で、0.5〜20時間、特に1〜3時間が好ましい。湿熱加熱は、例えば、上記処理液を含浸させたセルロース系繊維構造物等を密閉空間へ投入し、これを上記温度に加熱する方法等により行うことができる。これにより、ケイ素化合物とアルミニウム化合物とを効率よく反応させ、結晶成長を促すことができる。
【0023】
反応終了後は、30〜90℃の温水で洗い、表面に生成した結晶を洗い流し、続いて乾燥させることが好ましい。
【0024】
なお、上記セルロース繊維等のセルロースの内部にシリカ・アルミナ多孔体を形成、担持させる場合、更にシリカ・アルミナ多孔体中に銅イオン、銀イオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、パラジウムイオン、マンガンイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオンを導入(イオン変換)することができるが、このように銅イオン、銀イオン、亜鉛イオン等の金属イオンをシリカ・アルミナ多孔体中に導入(イオン交換)する場合、例えば、銅イオンを含有する水溶液を濃度0.1〜1.0質量%、特に0.2〜0.6質量%に調製し、この水溶液をシリカ・アルミニウム多孔結晶を担持したセルロース系繊維構造物に付与する方法を採用することができる。この場合、上記金属塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記水溶液を繊維構造物に付与する方法は特に制限されず、浸漬法、コーティング法、パディング法、スプレー法等が挙げられ、浸漬法、パディング法を好ましく用いることができる。
【0026】
繊維構造物に上記金属イオンの水溶液を付与した後、50〜65℃の湯にて洗い乾燥して、金属イオンを導入したセルロース系繊維構造物を得ることができる。
【0027】
ここで、本発明のセルロース系繊維構造物は、セルロース系繊維内部にシリカ・アルミナ多孔体を担持してなるものであるが、本発明において、セルロース系繊維内部とは、セルロース繊維を構成する表皮や細胞壁の表面、細胞壁内の細孔及びルーメン(内腔)を除いた部分をいう。
【0028】
また、本発明におけるシリカ・アルミナ多孔体とは、ゼオライト、アルミノシリカゲル等が挙げられるが、これらの中でも特に合成ゼオライト(4A型)、X型、Y型が吸着特性及び金属イオン交換性の点から好ましい。
【0029】
なお、本発明のセルロース系繊維構造物は、上記製造法(処理法)において、セルロース繊維が黄変せず、実質的に処理前の色度を有していることが好ましい。
【0030】
本発明の無機化セルロース系繊維構造物は、それ自体で高消臭(脱臭)性、陽イオン交換能、吸放湿性能等に優れ、高い機能性を有するものであるが、上述したように、更にシリカ・アルミナ多孔体中に、銅イオン、銀イオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、パラジウムイオン、マンガンイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオンの1種又は2種以上を導入(置換)することで、抗菌性、防カビ性、ウィルス不活化性等の各種機能を付与することができる。
【0031】
この場合、金属イオンの導入量、例えば、銅イオンの導入量はゼオライト結晶の質量に対して0.5〜14質量%が好ましく、より好ましくは7〜12質量%である。金属イオンの量が少なすぎると、イオン効果がない場合がある。
【0032】
本発明のセルロース系繊維構造物は、消臭性、抗菌性等に非常に優れるため、衣料品(食品・衛生関連作業衣等)、家庭用品(インテリア関連用品等)、衛生材料関連用品、環境浄化システム、農業資材(水耕栽培)、土壌温床、自動車関連用品、ペット関連用品等の産業資材等、様々な用途に利用することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0034】
[実施例、比較例]
表1,2に示す量において、成分(i),(ii),(iii),(iv)を使用し、以下の操作を行った。
1 (i)アルミン酸ソーダ(朝日化学工業(株)製:NA−170)と(iii)苛性ソーダ(日産化学工業(株)製:48質量%水溶液)をマグネティックスターラー(ユニコントロールズ(株)製:MKY−215)で数分間(約5分)撹拌し、アルミン酸ソーダを苛性ソーダ溶液に溶解した。
2 次に、(iv)水で希釈した(ii)1号ケイ酸ソーダ(東曹産業工業(株)製)を撹拌しながら、上記成分(i),(iii)の混合水溶液に添加した。
3 10分間撹拌後、小型マングルを用いて繊維生地(綿100%織物)に加工液を塗布・含浸させた。
4 処理布をビニール袋に入れて密封し、一晩静置した後、85℃に設定した恒温乾燥機中で2時間反応させた。
5 反応後、処理布を袋から取り出し、60℃温水で繰り返し湯洗いした後、吊り干し乾燥させた。
【0035】
上記ステップ2で得られた混合水溶液の性状は、目視でほぼ透明であり、また、混合水溶液をB形粘度計により測定・評価した。この場合、水溶液の粘度は、25℃におけるB形粘度計を用いた測定で2mPa・s以下であった。
【0036】
また、ステップ5で得られた処理布のゼオライト担持率及び外観を評価した。この場合、ゼオライト担持率の測定は、下記の方法で行った。
10cm×10cmのゼオライトを生成させた生地(織物)を、100gの2%クエン酸水溶液に3時間浸漬した。その後、生地を水溶液から取り出し乾燥させた後、生地の質量を測定した。生地の浸漬前の質量と浸漬後の質量の差から、ゼオライトの担持量を測定して担持率を算出した。
【0037】
なお、外観の評価において、「良好」は黄変が加工前の布の白さに対して同等以上の場合であり、「僅かに黄変」は黄変が加工前の布の白さに対して黄色がかっている場合である。黄変とは、加工前の布の白色度に対して、黄色度が増加し、黄色に見えることをいう。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素化合物とアルミニウム化合物と水酸化ナトリウムが溶解している水溶液であって、ケイ素化合物を酸化ケイ素、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムにそれぞれ換算した場合、その合計量として0.90〜2.16質量%が前記水溶液中に溶解していると共に、前記水溶液中における水酸化ナトリウム濃度が10〜25質量%であることを特徴とするシリカ・アルミナ多孔体生成用セルロース処理剤。
【請求項2】
ケイ素化合物とアルミニウム化合物と水酸化ナトリウムが溶解している水溶液であって、ケイ素化合物を酸化ケイ素、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムにそれぞれ換算した場合、その合計量として0.90〜2.16質量%が前記水溶液中に溶解していると共に、前記水溶液中における水酸化ナトリウム濃度が10〜19質量%であることを特徴とするセルロース系繊維構造物用の請求項1記載のセルロース処理剤。
【請求項3】
ケイ素化合物がケイ酸ソーダであり、アルミニウム化合物がアルミン酸ソーダであり、シリカ・アルミナ多孔体がゼオライトである請求項1又は2記載のセルロース処理剤。
【請求項4】
アルミニウム化合物の水酸化ナトリウム水溶液とケイ素化合物の水溶液とを、ケイ素化合物を酸化ケイ素、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムにそれぞれ換算した場合、その合計量が0.90〜2.16質量%であり、かつ水酸化ナトリウム濃度が10〜25質量%となるように混合することを特徴とする請求項1記載のシリカ・アルミナ多孔体生成用セルロース処理剤の製造方法。
【請求項5】
アルミニウム化合物の水酸化ナトリウム水溶液と、ケイ素化合物の水溶液とを、ケイ素化合物を酸化ケイ素、アルミニウム化合物を酸化アルミニウムにそれぞれ換算した場合、その合計量が0.90〜2.16質量%であり、かつ水酸化ナトリウム濃度が10〜19質量%となるように混合することを特徴とする請求項4記載のセルロース処理剤の製造方法。
【請求項6】
ケイ素化合物がケイ酸ソーダであり、アルミニウム化合物がアルミン酸ソーダであり、シリカ・アルミナ多孔体がゼオライトである請求項4又は5記載のセルロース処理剤の製造方法。
【請求項7】
セルロースに請求項1記載のセルロース処理剤を含浸させた後、湿熱加熱してセルロース内部でケイ素化合物とアルミニウム化合物とを反応させてシリカ・アルミナ多孔体を生成させることを特徴とするセルロースの処理方法。
【請求項8】
セルロース系繊維構造物に請求項2記載のセルロース処理剤を含浸させた後、湿熱加熱してセルロース系繊維内部でケイ素化合物とアルミニウム化合物とを反応させてシリカ・アルミナ多孔体を生成させる請求項7記載のセルロースの処理方法。
【請求項9】
繊維構造物が、織布、不織布又は編物である請求項8記載のセルロースの処理方法。

【公開番号】特開2008−50742(P2008−50742A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179660(P2007−179660)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【出願人】(000115980)レンゴー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】