説明

セルロース成形体の製造方法

本発明は、ビスコース法によってセルロース成形体を製造する製造方法に関するものであり、そのセルロース成形体はイオン交換特性を有する物質を含んでおり、それは紡糸液および/またはその先駆物質に加えられる。本発明の方法は、その物質が20μmの最大粒径を有する粒子の分散という形で加えられるということを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ビスコース法によってセルロース成形体を製造する製造方法に関するものである。
【0002】
ビスコース法による成形体、具体的にはビスコース繊維の製造は、何十年も工業規模で行われてきており、以下の工程が含まれる。
・例えばパルプのようなセルロース原料をアルカリ化する工程。
・上記アルカリ化されたセルロース原料(「アルカリセルロース」)をセルロースキサントゲン酸塩へ転換する工程。
・上記セルロースキサントゲン酸塩をアルカリによって溶解する工程。このようにして得られた溶液は「ビスコース」と称される。
・上記ビスコースを1つまたは複数の再生槽で成形体に紡績する工程
・上記成形体から上記セルロースを再生利用し、得られた該成形体を後処理する工程
例えば、洗浄、乾燥、およびビスコース繊維の場合には、例えば短繊維の製造のための仕上げである繊維の切断も上記後処理の工程に含まれる。
【0003】
ビスコース法は、特に繊維(短繊維およびフィラメント繊維)およびフィルムの製造に役立つものであるが、スポンジまたはセルロース粒子のような他の製品の製造にも役立つものである。
【0004】
ビスコース繊維は2つのグループ、いわゆる「標準ビスコース繊維」と、より強い力およびより高い湿度が特定の手段によってビスコースの製造中および紡績中に得られる、いわゆる「モーダル繊維」とに大別される。上記2つのグループは、BISFA(国際化繊協会)によって総称として区別されている(そのような区別において、標準ビスコース繊維は「ビスコース」と称されている。紡績ドープとしても使用されている術語「ビスコース」とより明確に区別するために、本明細書では「標準ビスコース繊維」という術語を使用する)。
【0005】
ビスコース法によって製造された成形体、具体的には繊維を、例えば該成形体の着色性またはそれらの吸収度を改善するために、特定の官能基によって修正することが知られている。
【0006】
これに関して、ビスコース法によって製造された成形体を、イオン交換特性を有する物質によって修正することも知られている。この方法では、それ自体がイオン交換特性を有する成形体が得られる。そのような成形体は、特に繊維の形成では、多くの応用分野において従来のイオン交換体よりも好適なものである。
【0007】
上記成形体の修正は、すでに押し出し成形された成形体に(例えばグラフティングによって)官能基を適用することによって達成できる。また別の方法は、上記紡績ドープまたは該紡績ドープの先駆物質、例えば使用されたパルプまたはアルカリ化されたセルロースに、セルロースキサントゲン酸塩へ転換される前に、官能基を加えることにある。
【0008】
WO96/37641では、ビスコース繊維を製造する製法について述べられており、そこでは他の物質の中から高分子スチレンスルホン酸がビスコース塊またはアルカリセルロースに加えられている。
【0009】
JP‐A61‐146810には、それらの塩だけでなく、ポリスチレン・スルホン酸塩またはポリスチレン・カルボン酸塩の溶液もそれぞれビスコースに混合し、そこから繊維を紡績することによるビスコース繊維の製造が開示されている。上記工程の目的は、カチオン染料に対して改善された反応を有する繊維を製造することである。
【0010】
JP‐A3‐54234は、イオン性高分子化合物の一部を含む、再生利用されたセルロースの製造を開示しており、上記化合物がビスコースに混合されている。製造された成形体は、イオン交換特性および抗菌特性を示すものである。
【0011】
GB‐A910,202には、それぞれビスコース法による膜またはフィルムの製法が開示されており、そこでは、イオン交換特性を有する物質が同様に使用されている。
【0012】
DE‐A199 17 614にはアミン処理によるセルロース成形体の製法が開示されており、イオン交換粒子がアミン・オキシド中のセルロースの溶液に加えられている。技術的には、アミン処理はビスコース法とは基本的に異なっている。
【0013】
ビスコース法に関して知られている文書では、イオン交換特性を有する物質がビスコースおよび/またはその先駆物質に加えられ、上記物質は常に溶液の形で加えられる。
【0014】
従来技術による成形体の製造工程では、その整合性のため、高分子溶液をセルロースマトリクスに適量埋め込むことができないため、特に紡績歩留まりに関して必要とされるべきことが多く残されているということがわかる。不完全に埋め込まれた成分によって処理行程中に好ましくない蓄積が起こり、複雑な方法で取り除かねばならないことになってしまう。
【0015】
イオン交換特性を有する改善された成形体だけでなく、そのような成形体を製造するための改善された工程を提供することが本発明の目的である。
【0016】
上記目的は、ビスコース法による、イオン交換特性を有する物質を含んだセルロース成形体の製造工程によって達成される。上記イオン交換特性を有する物質は、紡績ドープおよび/またはその先駆物質に加えられ、その工程は、20μm以下の最大粒径を有する粒子の分散という形で上記物質が加えられるということを特徴としている。
【0017】
上記イオン交換特性を有する物質が分散液の形で加えられることが好ましい。
【0018】
ビスコースまたはその先駆物質に分散液をそれぞれ混合させた結果、従来技術で公知の溶液の混合と比較して、99%以上のかなり高い紡績歩留まりが得られるということがわかってきた。そのような紡績歩留まりは液体高分子または溶液の使用によっては実現されないであろう。
【0019】
したがって、上記分散液内に含まれる粒子の最大粒径が小さいこと、特に20μmを超えないということが重要である。上記粒子は7μm以下の最大粒径を有することが好ましい。
【0020】
本発明の目的および特許請求の範囲に関しては、「最大粒径」という術語は、上記分散液中の粒子の99%が最大限でもそれぞれの場合に示されたそれぞれの粒径を有するということを意味するものである。
【0021】
成形体の製造に使用可能な従来のビスコース、特に標準ビスコース繊維またはモーダル繊維の製造に使用可能なものは、紡績ドープとして好適である。成形体の後処理だけでなく紡績ドープからの上記成形体の製造は、当業者にはそれ自体は公知の従来の方法で実行される。
【0022】
本発明による上記工程によって短繊維またはフィラメント繊維(長繊維)状の繊維だけでなくフィルム、スポンジ、およびセルロース粒子が製造されることが好ましく、標準ビスコース繊維またはモーダル繊維が製造できる。
【0023】
強酸陽イオン交換特性を示す物質がイオン交換特性を有する物質として使用される場合には、スルホン酸基が官能基として好適である。
【0024】
弱酸陽イオン交換特性を示す物質が使用される場合には、キレート形成基だけでなく、炭酸基、ホスホン酸基、メタクリル酸基、イミノ2酢酸基、チオ尿素基、およびチオール基が官能基として好適である。
【0025】
両性基を有する物質もまた、本発明による工程で使用されるのに好適なものである。
【0026】
陽イオン交換特性を有する物質の場合、本発明による工程の好ましい実施形態は、上記物質を含む成形体を、好ましくは銀イオン、鉛イオン、銅イオン、亜鉛イオン、および水銀イオンからなるグループから選択された金属イオンで処理することにある。
【0027】
金属イオンは、その結果、陽イオン交換特性を有する上記物質の活性基となることになっている。このように、上記成形体は例えば抗菌特性を与えられ得る。
【0028】
本発明による上記工程のこの変例の具体的な実施形態においては、紡績の前および/または再生槽で、上記物質の官能基が少なくとも部分的に亜鉛形に転換される。
【0029】
一方では、再生槽中に存在し、再生利用に必要な亜鉛イオンが押し出し成形された成形体によってイオン交換効果の結果吸収されることが、紡績の前に亜鉛形に転換されることによって避けられる。
【0030】
他方では、再生槽中の押し出し成形された成形体が、それらに結合された亜鉛イオンを有することができる効果が出るように、上記押し出し成形された成形体の上記イオン交換効果を意図的に利用することができる。亜鉛イオンは、完成された成形体で抗菌作用を有するものである。
【0031】
強塩基陰イオン交換特性を示す物質がイオン交換特性を有する物質として使用される場合には、第4アンモニウム基が官能基として好適である。
【0032】
弱塩基陰イオン交換特性を示す物質が使用される場合には、2級アミン基および3級アミン基が官能基として好適である。
【0033】
イオン交換特性を有する物質が、架橋されたポリスチレンまたはコポリマー(ポリスチレンおよびメタクリル酸からなるコポリマー)、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、フェノール/ホルムアルデヒドおよび/またセルロースから選択されたマトリクス(その上に官能基が配置されている)を、それ自体は公知の方法で示していることが好ましい。
【0034】
つまり、それ自体は従来の市販のイオン交換樹脂および、以下のグループ
・強酸陽イオン交換体
・弱酸陽イオン交換体
・弱塩基陰イオン交換体
・強塩基陰イオン交換体
・特殊イオン交換体またはキレート・イオン交換体
・およびそれらを組み合わせたもの
から選択されたイオン交換樹脂が、本発明による上記工程で使用できる。
【0035】
したがって、イオン交換特性を有する上記物質は、セルロースおよび乾式活性物質に基づいて、0.1%〜100%、好ましくは10%〜70%、特に好ましくは10%〜50%の重量パーセントで使用できる。
【0036】
使用される分散液は、これも乾式活性物質に基づいて、重量パーセントで1%〜60%、好ましくは20%〜50%である、イオン交換特性を有する物質の濃度を示すこともできる。
【0037】
本発明はまた、本発明による上記工程によって得られるセルロース成形体に関するものである。本発明による上記成形体は、繊維、フィルム、スポンジ、および/または粒子の形で提供されることが好ましい。
【0038】
本発明による上記成形体は、それ自体は公知であるイオン交換物質に関する多くの利点を有するものである。
・実は、分離されるイオンはおそらく上記成形体のセルロースマトリクスに浸透することができ、かつ樹脂粒子によってそこに吸収されるということがわかっている。したがって、本発明による成形体を使用することによって、2つの作用の原理の組み合わせ、すなわち固体粒子の分離の作用だけでなくイオン交換の作用が得られる。
・より好ましいイオン交換反応速度が観察され、希釈液をより効果的な方法で処理できる。
・樹脂に基づいた従来のイオン交換体と比較して最大40%良く上記能力が利用できる。
・より高い押出量が得られる。
・本発明による上記成形体は、圧力に耐性があり、小型であり、かつ再生利用が容易である。
・化学薬品の使用量がより少ない。
・本発明による上記成形体は、環境に配慮した方法で処理できる。
・上記成形体が結合された金属イオン、特に亜鉛イオンを示している好ましい実施形態では、該成形体が例えば抗菌特性のような、さらに好ましい特性を有する。
【0039】
さらに、本発明は、本発明によるセルロース成形体をセルロース系繊維の形で含む繊維混合物に関するものである。
【0040】
したがって、本発明による上記セルロース系繊維は、正しい手順で、または緊密な混合で天然繊維および化学繊維、具体的には綿、ビスコース、モーダル、リヨセル、ポリエステル、および/またはポリアミドと混合できるものである。混合物中の本発明による上記繊維の量は、1%〜99%、好ましくは20%〜70%の範囲で変動可能である。
【0041】
本発明のもう1つの特徴は、本発明による上記セルロース系繊維または本発明による上記繊維混合物を含む繊維製品、具体的には紡績糸、織物、編物および/または不織布である。
【0042】
本発明による不織布は、例えばニードリング、熱溶着、ウォータージェット固形化処理および/または化学的固定化の、それ自体は公知の方法によって製造できる。
【0043】
本発明はまた、本発明によるセルロース成形体の用途、本発明による繊維混合物の用途、および/または本発明による繊維製品の液体フィルターでの用途に関するものであり、排水の浄化、溶液の浄化、重金属の分離、脱塩のための液体フィルターでの用途、抗菌特性を有するエアフィルターでの用途、具体的には医療用繊維製品の出発原料のような抗菌材料としての用途、具体的には例えばクロマトグラフ分離のような分析の準備または触媒のための基盤としての分析の目的のための用途、および/または具体的には下着、スポーツウェア、靴下、病院用繊維製品、ベッドリネン、家庭用繊維製品、テリークロス地のものおよび生理用の不織布のような抗菌特性を有する製品のための用途に関するものである。
【0044】
上述したように、上記分散液中の、イオン交換特性を有する物質の粒径が十分に小さいことが重要である。
【0045】
したがって、0.4mm〜1.5mmの粒径を有する樹脂ボールの形で通常提供される、市販のイオン交換体は、微細分散液に加工されねばならない。このために、上記物質の粉砕は、上記ボールを粗く粉砕することが可能な特別な微粉砕機を使用して水中で行わねばならない。
【0046】
粉砕工程は、好ましくは、ビーズがZrOからなり、典型的なサイズが1.1mm〜1.4mmまたは0.7mm〜0.9mmであるビーズ攪拌ミルで行われる。当業者は常時、好適なビーズのサイズを選択できる。一方では、これは粒のままの粒径次第であり、他方では、大きすぎるミリングボールを使用して分散液中で粉体サイズを生成することは不可能である。
【0047】
上記ビーズ攪拌ミルは循環作業モードで作動でき、前もって、例えばUltra-Turraxまたは歯付コロイドミルを使用して粗く粉砕することができる。
【0048】
結果として得られる分散液は、分散剤および増粘剤によってそれ自体は公知である方法で安定化される。具体的には、ポリリン酸塩、ポリアクリル酸誘導体、またはアルキレン・オキシド・ポリマーが分散剤および増粘剤として好適であり、キサンタン・ガムが増粘剤として好適であるということがわかっている。
【0049】
好ましい製品は、例えば、
Calgon N(ポリリン酸塩)製造業者:Messrs. BK Giulini Chemie
Lopon 890(ポリアクリル酸ナトリウム)製造業者:Messrs. BK Giulini Chemie
Hydropalat 890(アルキレン・オキシド・ポリマー)製造業者:Messrs. Henkel/Cognis
Deuteron VT819(キサンタン・ガム)製造業者:Messrs. Henkel/Cognis
である。
【0050】
上記分散液の紡績ドープへの追加は、該分散液を攪拌機で攪拌することによりビスコースへ、または上記分散液を、例えば金型等の成形型へ紡績ドープを供給する、いわゆる「スピンパイプ」のフィードラインへ連続して測定し均質化することによって達成される。上記分散液をフィルタリングするのは、20μmのメッシュ幅を有するプラスチックフィルターで十分である。
【0051】
繊維の製造の場合、使用される金型は、未変性繊維製造用のものよりも少し大きな穴径を有することもできるが、樹脂が十分な微粉度(例えば5μm以下)まで細かくなっていれば、通常は、より大きな穴径を選択する必要はない。それは別として、未変性繊維の製造で一般的な製造パラメータ(例えば再生槽の成分)を使用することもできる。
【0052】
以下に、例となる実施形態によって本発明がさらに詳細に説明されるが、これらの例は決して限定であると解釈されるものではない。
【0053】
〔実施例1〕
イオン交換樹脂Lewatit MP S100(ポリスチレンに基づき、ゲル状で、イニシャルビーズのサイズが約600μmである、Na型でスルホン酸基を含む強酸陽イオン交換体)は、等しい重量パーセントで水中に分散され、上記コロイドミルを用いて粗く粉砕される。使用される水にはすでに湿潤剤および分散剤(0.1% Calgon N、0.3% Lopon890)が含まれている。ビーズミル(ミリングボールのサイズ:1.1mm〜1.4mm)によって循環作業で砕かれ微細分散液となる、24%懸濁液が生成され、さらに添加物(0.1% Deuteron VT819、0.3% Hydropalat 1080)が加えられる。上記分散液の最大粒径は、4.9μmとなる。
【0054】
上記分散液は、ビスコースの荷重配分比=1:6で、標準ビスコース繊維の製造に使用される8.65%ビスコース水溶液と混合される。このような方法によって、上記繊維中の重量パーセント31%の樹脂分が得られる。上記混合物は直径80μmの金型から紡いで紡糸浴へ取られる。該紡糸浴には、48℃で、約100g/l HSO、350g/lNaSO、および17g/l ZnSO4が含まれている。好適な繊維強度を得るために、約75%の延伸が2次槽で実行される(92℃、15g/l HSO)。取り出し速度は50m/分である。
【0055】
得られるフィラメントは40mmの短繊維に切断され、従来の方法によって酸味水で処理され、脱硫され、必要に応じて漂白され、洗浄され、かつ光沢が出される。乾燥は70℃で行われる。
【0056】
得られた上記繊維は、24%の伸長度で4.4dtexの滴定量および12cN/texの乾燥強度を有するものである。
【0057】
上記繊維の総容量は、DIN54403にしたがって2.2mequ/g fibresと規定された。
【0058】
〔実施例2〕
実施例1と同じ手順が使用されるが、上記分散液は、ビスコースの荷重配分比=1:8.7で、モーダル繊維製造に使用される6%ビスコースにかき混ぜながら混合される。このような方法によって、上記繊維中の重量パーセント31%の樹脂分が同様に得られる。
【0059】
上記混合物は直径80μmの金型から紡いで紡糸浴へ取られる。該紡糸浴には、40℃で、約80g/l HSO、115g/lNaSO、および60g/l ZnSOが含まれている。好適な繊維強度を得るために、約114%の延伸が2次槽で実行される(92℃、15g/l HSO)。取り出し速度は25m/分である。
【0060】
得られるフィラメントは40mmの短繊維に切断され、酸味水で処理され、脱硫され、必要に応じて漂白され、洗浄され、かつ光沢が出される。乾燥は70℃で行われる。
【0061】
得られた上記繊維は、17%の伸長度で3.6dtexの滴定量および19cN/texの乾燥強度を有するものである。
【0062】
上記繊維の総容量は、DIN54403にしたがって2.1mequ/g fibresと規定された。
【0063】
〔実施例3〕
実施例1に記述されたように、ビスコース系繊維の製造が行われるが、使用される分散液の最大粒径は7μmであり、トウは55%まで伸ばされる。
【0064】
得られた上記繊維は、13%の伸長度で2.9dtexの滴定量および9cN/texの乾燥強度を有するものである。
【0065】
上記繊維の総容量は、1.35mequ/g fibresと規定された。
【0066】
イオン交換特性によって、紡糸浴に含まれ、ビスコース系繊維の製造のために必要な亜鉛は部分的に上記繊維と結合されており、該繊維上で2770ppmの亜鉛濃度が測定された。
【0067】
結合された亜鉛によって抗菌効果が生まれ、黄色ブドウ球菌および肺炎桿菌に対する殺菌効果だけでなく静菌効果が発見されている(JIS L1902:繊維製品の抗菌のためのテスト手段、1998)。
【0068】
〔実施例4〕
実施例1で引用されたイオン交換樹脂の代わりに、イオン交換樹脂Lewatit TP 208 (ポリスチレンに基づき、イニシャルビーズのサイズが約700μmである、Na型でメチレンイミノ2酢酸基を含む弱酸キレート・イオン交換体)が使用された。
【0069】
上記樹脂は等しい重量パーセントで水中に分散され、Ultra-Turraxを用いて粗く粉砕される。上記の水にはすでに湿潤剤および分散剤(0.1% Calgon N、0.3% Lopol890)が含まれている。ビーズミル(ミリングボールのサイズ:1.1mm〜1.4mm)によって循環作業で砕かれ微細分散液となる、20%懸濁液が生成される。上記分散液の最大粒径は、7.7μmとなる。
【0070】
上記分散液は、ビスコースの荷重配分比=1:12で、モーダル繊維の製造に使用される6%ビスコースと混合される。このような方法によって、上記繊維中の重量パーセント22%の樹脂分が得られる。上記混合物は直径90μmの金型から紡いで紡糸浴へ取られる。上記紡糸浴には、40℃で、約80g/l HSO、115g/lNaSO、および60g/l ZnSOが含まれている。好適な繊維強度を得るために、約99%の延伸が2次槽で実行される(92℃、15g/l HSO)。取り出し速度は25m/分である。
【0071】
得られるフィラメントは40mmの短繊維に切断され、酸味水で処理され、脱硫され、必要に応じて漂白され、洗浄され、かつ光沢が出される。乾燥は70℃で行われる。
【0072】
得られた上記繊維は、14%の伸長度で2.3dtexの滴定量および21cN/texの乾燥強度を有するものである。
【0073】
上記繊維の総容量は、0.08mequ/g fibresと規定された。
【0074】
〔実施例5〕
陰イオン交換樹脂 Lewatit MP 500(ポリスチレンに基づき、イニシャルビーズのサイズが約600μmである、Cl型で第4アンモニウム基を含むマクロ多孔性強塩基陰イオン交換体)は、まず希釈されたビスコースで前処理され、ろ過され、その後等しい重量パーセントで水中に分散される。使用される水にはすでに湿潤剤および分散剤(0.1% Calgon N、0.3% Lopol890)が含まれている。Ultra-Turraxを用いて粗く粉砕され、ビーズミル(ミリングボールのサイズ:1.1mm〜1.4mm)によって循環作業で砕かれ微細分散液となる、18%懸濁液が生成され、さらに添加物(0.1% Deuteron VT819、0.3% Hydropalat 1080)が加えられる。上記分散液の最大粒径は、9μmとなる。
【0075】
固形成分含有量が18%である上記分散液は、ビスコースの荷重配分比=1:33で、8.65%ビスコース水溶液(標準ビスコース繊維用のビスコース)と混合される。このような方法によって、上記繊維中の重量パーセント5.9%の樹脂分が得られる。上記混合物は直径90μmの金型から紡いで紡糸浴へ取られる。該紡糸浴には、58℃で、約100g/l HSO、350g/lNaSO、および17g/l ZnSOが含まれている。好適な繊維強度を得るために、約75%の延伸が2次槽で実行される(92℃、15g/l HSO)。取り出し速度は50m/分である。
【0076】
得られるフィラメントは40mmの短繊維に切断され、酸味水で処理され、脱硫され、漂白され、洗浄され、かつ光沢が出される。乾燥は70℃で行われる。
【0077】
得られた上記繊維は、16.7%の伸長度で6.7dtexの滴定量および9.9cN/texの乾燥強度を有するものである。上記繊維の総容量は、DIN54403にしたがって1.35mequ/g fibresと規定された。
【0078】
〔実施例6〕
イオン交換樹脂Lewatit MP S100 は等しい重量パーセントで水中に分散され、コロイドミルを用いて粗く粉砕される。0.1% Calgon N、0.3% Lopon890、0.1% Deuteron VT819、および0.3% Hydropalat 1080が添加物として加えられる。
【0079】
ビーズミルによって循環作業で砕かれ微細分散液となる、24%懸濁液が生成される。上記分散液の最大粒径は、7,8μmとなる。
【0080】
上記分散液は、ビスコースの荷重配分比=1:69で、8.65%ビスコース水溶液と混合される。このような方法によって、上記繊維中の重量パーセント3.8%の樹脂分が得られる。上記混合物は直径80μmの金型から紡いで紡糸浴へ取られる。該紡糸浴には、48℃で、約100g/l HSO、350g/lNaSO、および17g/l ZnSOが含まれている。好適な繊維強度を得るために、約69%の延伸が2次槽で実行される(92℃、15g/l HSO)。取り出し速度は50m/分である。
【0081】
そこから得られるフィラメントは40mmの短繊維に切断され、酸味水で処理され、脱硫され、必要に応じて漂白され、洗浄され、かつ光沢が出される。乾燥は70℃で行われる。
【0082】
上記繊維は、15.5%の伸長度で3.5dtexの滴定量および22.4cN/texの乾燥強度を有するものである。上記繊維の総容量は、DIN54403にしたがって0.34mequ/g fibresと規定された。
【0083】
亜鉛を含む紡糸浴での再生利用によって、上記繊維の亜鉛濃度は910ppm Znとなる。結合された亜鉛によって抗菌効果が高まり、黄色ブドウ球菌および肺炎桿菌に対する殺菌効果だけでなく静菌効果が発見されている(JIS L1902:繊維製品の抗菌のためのテスト手段、1998)。
【0084】
〔実施例7および8〕
実施例2に記述された処理によって、イオン交換樹脂Duolite C467(ポリスチレンに基づき、多孔性で、Na型でアミノホスホン酸基を含む弱酸キレート・イオン交換体)およびAmberlite GT73(ポリスチレンに基づき、多孔性で、イニシャルビーズのサイズが0.45〜0.7mmである、H型でチオール基を含む、弱酸陽イオン交換体)がモーダル繊維に取り入れられた。以下の表は最も重要な結果をまとめたものである。
【0085】
【表1】

【0086】
〔実施例9〕
イオン交換樹脂Lewatit MP S100(ポリスチレン、弱塩基性、第3アミン、多孔性)は等しい重量パーセントの脱イオン化された水の中でUltra-Turraxを用いて粗く粉砕され、結果として得られる混合物は、ビーズミル(ミリングボールのサイズ:1.1mm〜1.4mm)によって粉砕され、最大粒径が10.16μmであり、固形成分含有量が20.9%である微細分散液となる。この実施例では、上記分散液は分散剤を使用せずに製造される。
【0087】
上記分散液は、ビスコースの荷重配分比=1:3.5で、モーダル繊維の製造に使用される6%ビスコースと混合される。上記混合物は直径80μmの金型から紡いで紡糸浴へ取られる。該紡糸浴には、40℃で、約80g/l HSO、115g/lNaSO、および60g/l ZnSOが含まれている。好適な繊維強度を得るために、約82%の延伸が2次槽で実行される(92℃、15g/lHSO)。取り出し速度は25m/分である。
【0088】
そこから得られるフィラメントは40mmの短繊維に切断され、酸性の状態で再洗浄され、脱硫、漂白、洗浄され、かつ60℃で乾燥される。
【0089】
上記繊維は、35.6%の伸長度で4.8dtexの滴定量および6.14cN/texの乾燥強度を有するものである。上記繊維の総容量は、DIN54403にしたがって2.0mequ/gと規定されており、上記繊維中の50%の樹脂分に相当する。
【0090】
〔実施例10(比較例)〕
イオン交換樹脂Lewatit MonoPlus S100(ポリスチレン、強酸性、スルホン酸ナトリウム、多孔性)は等しい重量パーセントの脱イオン化された水の中でUltra-Turraxを用いて粗く粉砕され、結果として得られる混合物は、ビーズミル(ミリングボールのサイズ:1.1mm〜1.4mm)によって、粒径26μm、固形成分含有量18.3%に粉砕される。曳糸性を改善するために、上記分散液には0.1% Calgon Nおよび0.3% Lopol890が含まれている。
【0091】
上記分散液は、ビスコースの荷重配分比=1:10で、モーダル繊維の製造に使用される6%ビスコースと混合される。上記混合物は直径80μmの金型から紡いで紡糸浴へ取られる。該紡糸浴には、40℃で、約80g/l HSO、115g/lNaSO、および60g/l ZnSOが含まれている。
【0092】
その際に、10分以内に10バールの圧力上昇がダイフィルターで観察され、そのような圧力上昇によって、管理された繊維の製造が不可能になる。
【0093】
〔実施例11〕
すでに上述したイオン交換樹脂Lewatit MonoPlus S100から始まり、実施例9の例まで、2.1%の樹脂分を有する繊維が製造され、その後すぐに硫酸亜鉛液(0.5mol/l)または硝酸銀溶液(0.5mol/l)によってそれぞれ処理された。したがって、すべての可能性の利用を求めているわけではない。
【0094】
過剰な溶液を脱イオン化された水で洗い落とし、上記繊維を60℃で乾燥させた後、3100ppmの亜鉛濃度、15000ppmの銀濃度が上記繊維のそれぞれからICP分析を介して検出された。両方の繊維見本は、黄色ブドウ球菌および肺炎桿菌に対する顕著な抗菌性を示している(JIS L1902)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスコース法によってセルロース成形体を製造する製造方法であって、該セルロース成形体がイオン交換特性を有する物質を含んでおり、該イオン交換特性を有する物質が紡績ドープおよび/またはその先駆物質に加えられ、20μm以下の最大粒径を有する粒子の分散という形で上記物質が加えられることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
上記物質が分散液の形で加えられることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記粒子が7μm以下の最大粒径を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記物質が陽イオン交換特性を有することを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記物質が、スルホン酸基、炭酸基、ホスホン酸基、アミノホスホン酸基、メタクリル酸基、イミノ2酢酸基、チオ尿素基、チオール基、キレート形成基および/または両性基から選択された官能基を有することを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
上記物質を含む上記成形体が、銀イオン、鉛イオン、銅イオン、亜鉛イオン、および水銀イオンからなるグループから好ましくは選択された金属イオンによって処理されることを特徴とする、請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
上記物質の上記官能基が紡績の前および/または再生槽で、少なくとも部分的に亜鉛形に転換されることを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
上記物質が陰イオン交換特性を有することを特徴とする、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記物質が第2アミノ基、第3アミノ基および/または第4アンモニウム基から選択された官能基を有することを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
上記物質が、架橋されたポリスチレンまたは架橋されたポリスチレンおよびメタクリル酸からなるコポリマー、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、フェノール/ホルムアルデヒドおよび/またはセルロースから選択されたマトリクスを示していることを特徴とする、請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
上記物質がセルロースおよび乾式活性物質に基づいて、0.1%〜100%、好ましくは10%〜70%、特に好ましくは10%〜50%の重量パーセントで使用されることを特徴とする、請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
上記分散液が、上記乾式活性物質に基づいて、重量パーセントが1%〜60%、好ましくは20%〜50%である、イオン交換特性を有する物質の濃度を示すことを特徴とする、請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
上記請求項1〜12のうちいずれか1項に記載の製造方法によって得られることを特徴とする、セルロース成形体。
【請求項14】
繊維、フィルム、スポンジ、および/または粒子の形状であることを特徴とする、請求項13に記載のセルロース成形体。
【請求項15】
請求項14に記載のセルロース系繊維を含むことを特徴とする、繊維混合物。
【請求項16】
請求項14に記載のセルロース系繊維または請求項15に記載の繊維混合物を含む繊維製品であって、具体的には紡績糸、織物、編物および/または不織布である繊維製品。
【請求項17】
請求項13または14に記載の上記セルロース成形体、請求項15に記載の上記繊維混合物、および/または請求項16に記載の上記繊維製品の用途であって、排水の浄化、溶液の浄化、重金属の分離、および脱塩のための液体フィルターでの用途、抗菌特性を有するエアフィルターでの用途、具体的には医療用繊維製品の原材料としての抗菌材料、具体的には例えばクロマトグラフ分離のような分析の準備または触媒のための基盤としての分析の目的のための用途、および/または具体的には下着、スポーツウェア、靴下、病院用繊維製品、ベッドリネン、家庭用繊維製品、テリークロス地のものおよび生理用の不織布のような抗菌特性を有する製品のための用途。

【公表番号】特表2007−504369(P2007−504369A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525005(P2006−525005)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【国際出願番号】PCT/AT2004/000297
【国際公開番号】WO2005/024103
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(594191087)レンツィング・アクチエンゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】Lenzing AG
【住所又は居所原語表記】Werkstrasse 2 4860 Lenzing Austria
【Fターム(参考)】