説明

セルロース粒子のコーティング方法、コーティングされたセルロース粒子、並びに紙及び厚紙の製造におけるそれらの使用方法

本発明は、光散乱材料でセルロース粒子をコーティングする方法、コーティングされたセルロース粒子、紙及び厚紙におけるフィラーとして並びにコーティング顔料としてのそれらの使用、さらに紙及び厚紙を製造する方法並びに紙及び厚紙をコーティングする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース粒子をコーティングする方法、並びに例えば紙及び厚紙(ボール紙、板紙等を含む)の製造において有用な被コーティングセルロース粒子に関する。本発明はまた、紙及び厚紙の製造方法、さらには紙及び厚紙のコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティングの目的は、紙及び厚紙の表面に、光学特性及び印刷適性を向上させるための最大限の滑らかさ及び品質の均一性を与えることである。コーティングは、顔料、例えばカオリン、重質炭酸カルシウム(GCC)及びタルク、さらにラテックス及びデンプンのようなバインダーから構成され、さらに、上記コーティングはまた、分散剤、pH調節剤、潤滑剤及び抗菌剤のような添加剤を含有してもよい。顔料は通常、コーティングの80〜95重量%を構成し、したがって顔料は、不透明度、輝度及び光沢度のようなコーティングの光学特性において主要な役割を果たす。輝度は、低い光吸収及び高い光散乱係数により向上し、不透明度もまた高い光散乱係数により向上する。光沢度は、例えば顔料の粒子サイズにより、並びに上記紙及び厚紙のコーティング後の処理、例えばカレンダ加工により影響を受ける。
【0003】
紙及び厚紙の製造においては、フィラーがパルプに添加される。フィラーの量は、製造される製品に応じて様々であり、それらの比率は通常、原紙重量に対して、LWC紙に関しては4〜10%、及び化学パルプ紙に関しては15〜30%の範囲である。フィラーとしては、例えば、カオリン、炭酸カルシウム及び二酸化チタンが挙げられる。また、フィラーは、紙及び厚紙の光学特性並びに印刷適性に影響を与える。
【0004】
紙及び厚紙の光学特性は、コーティングにおける顔料の比率、及び原紙におけるフィラーの量を増加させることにより向上させることができる。しかし、このことは、紙及びコーティングの強度特性のかなりの低下をもたらす。
【0005】
紙の強度特性はまた、パルプ精製及び微粉の添加により改善され得るが、これは多くの場合、光沢度を低下させる。
【0006】
米国特許第6,080,277号は、カチオン基を含むセルロース粒子を製造する方法を開示しており、このセルロース粒子は、製紙産業においてペーパーウェブへ摂動剤(disturbing agent)を結合させるのに有用である。粒子に存在するセルロースは、無置換又は置換セルロース(例えば、セルロースエステル又はエーテル、或いはアルカリセルロース)であり得る。セルロースは、例えばビスコースプロセス、N−メチルモルホリンN−オキシド又は塩化リチウムジメチルアセトアミドを使用して溶解されるのに対して、好ましくはビスコースプロセスにより製造される水に可溶性のセルロース誘導体は、水を使用して溶解される。カチオン化剤が、溶解されたセルロースへ添加されて、カチオンセルロース粒子は、硫酸のような沈降剤の存在下で沈降させることにより得られる。
【0007】
特開平4−041289号は、基材の少なくとも片面上に、バインダー中にセルロース粒子を含有する層を有するコーティングされたシートを開示している。セルロース粒子には、ビスコースが使用され、2つの粒子ノズル等を用いて噴霧され、熱風により乾燥されて、粒子を形成する方法により製造され、これらは酸等で処理してセルロースを再生する。0.1〜1000μの粒度でこのようにして形成されるセルロース粒子の中でも、好ましくは1〜20μmのサイズを有する粒子が使用される。結晶化度は、低いことが要求され(40%未満)、したがって高度の膨潤、優れたインク吸収性及び高い発色濃度を有するコーティングが形成され得る。
【0008】
ドイツ国特許第1,574,068号は、粒子状材料又は繊維状材料をコーティングする方法、上記方法によりコーティングされた材料、並びに上記コーティングされた材料を含む紙を製造する方法を提示している。コーティング方法においては、粒子又は繊維を、任意に分散剤の存在下でセルロースキサントゲン酸塩のような再生可能なセルロース誘導体の希釈水溶液中でスラリーにし、続いて硫酸ナトリウム及び硫酸亜鉛を含有する硫酸のような沈降剤をスラリーに添加して、再生セルロースの別個のコーティングに取り囲まれた個々の粒子を生じる。コーティングされるべき材料は、カオリン、セッコウ、二酸化チタン又は炭酸カルシウムであることができる。上記方法でコーティングされる材料は、紙の製造用にフィラー組成物で使用され得る。
【0009】
光学特性及び結合強度(スコットボンド(Scott Bond)値と称される場合が多い)は、印刷用紙の最も重大な特性のうちの幾つかである。概して厚紙及び紙に関して、特にグラフィック紙に関して、光学特性に対する何らの悪影響も伴わずに強度特性を向上させる必要がある。
【0010】
エネルギー生成のための無機鉱物顔料を含有する古紙の燃焼の結果は大量の灰分の存在であり、その廃棄が問題となっている。欧州連合内では、2010年までに到達されるべき総エネルギー生成におけるバイオエネルギーの比率に関する目標が設定されている。また、これらの目標のために、紙及び厚紙において可能な限り再生可能な有機材料を使用することが望ましい。
【0011】
無機鉱物顔料は、研磨性であり、装置の磨耗が促進される。無機鉱物顔料はまた、紙及び厚紙の重量を増大させる。雑誌、カタログ等に関してさらに軽い紙(しかしながら、高品質の印刷特性が付与される)の必要性がますます高まっている。
【0012】
上記教示に基づいて理解され得るように、光学特性に対して任意の有害な影響を及ぼすことなく紙及び厚紙の強度特性の向上を可能にし、またさらには紙及び厚紙の中での再生可能な有機材料及び可燃性有機材料の比率の増大、並びに機器の磨耗の低減を可能にする紙及び厚紙用の新規でより軽いフィラー並びにコーティング顔料が明らかに必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
[発明の目的]
本発明の目的は、セルロース粒子のコーティング方法を提供することである。
【0014】
同様に、別の目的は、新規のコーティングされたセルロース粒子を提供することである。
【0015】
さらに、本発明の目的は、紙及び厚紙におけるフィラーとしての、及びそれらの製造におけるコーティング顔料としてのコーティングされたセルロース粒子の使用である。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、紙及び厚紙の製造方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、紙及び厚紙のコーティング方法を提供することである。
【0018】
本発明のセルロース粒子に関するコーティング方法、コーティングされたセルロース粒子、コーティングされたセルロース粒子の使用方法、並びに紙及び厚紙のコーティング方法並びに製造方法の特徴は特許請求の範囲に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
[発明の概要]
本発明に係るセルロース粒子のコーティング方法では、セルロース粒子を光散乱材料と接触させ、セルロース粒子の表面上に光散乱材料を付着(結合)させる。光散乱材料は本明細書において、シリカ、ケイ酸塩、沈降炭酸カルシウム(PCC)、セッコウ、シュウ酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、それらの修飾物若しくは組合せ、又は任意の他の光散乱材料を指すものである。
【0020】
コーティングされたセルロース粒子は、上に定義される光散乱材料でコーティングされたセルロース粒子を含んでおり、上記光散乱材料及びセルロース粒子は、それぞれコーティングされた粒子の5〜95重量%、及び95〜5重量%を構成する。
【0021】
本発明方法によりコーティングされたセルロース粒子は、光学特性に対する何らの有害な影響も伴わずに製品の強度特性を向上させるために紙及び厚紙のフィラーとして使用することができる。本発明方法により得られた被コーティングセルロース粒子はさらに、紙及び厚紙のコーティング顔料としても使用することができる。
【0022】
ここで本発明は、添付の図面、詳細な説明及び実施例により説明されるが、本発明をそれらに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[発明の詳細な説明]
驚くべきことに、従来技術の対策が直面する問題は、本発明の操作により回避され得るか、又は少なくとも実質的に低減され得ることを見出した。本発明は、紙及び厚紙の製造において有用な被コーティングセルロース粒子が、沈降により、溶解されたセルロースから製造されるセルロース粒子を、光散乱材料でコーティングすることにより得られるという知見に基づく。
【0024】
セルロース粒子をコーティングする本発明の方法では、上記セルロース粒子を光散乱材料と接触させて、上記セルロース粒子への上記材料の付着(結合)を可能にする。上記セルロース粒子のコーティングは、沈降法、吸着法、気相コーティング法又はスピンコーティング法等により実施され得る。したがって、上記コーティング法の改良法により、例えば改良型気相コーティング(例えば、原子層エピタキシ、即ちALE)プロセスにより上記セルロース粒子をコーティングすることが可能である。
【0025】
本発明方法では、コーティングを施される上記セルロース粒子は、任意の既知の方法により、例えばビスコース法又は第3級N−オキシドにより溶解されるセルロースの再生により製造し得る。溶解されるべきセルロース材料は、例えば漂白針葉樹パルプ、農業又は林業からのセルロース廃棄物等であってもよい。セルロース粒子はまた、以下に記載する方法により製造し得る。
【0026】
水性懸濁液は、溶解されるべきセルロース材料から作製され、上記懸濁液は、セルロースを少なくとも0.1重量%含有し、懸濁液のpHは、3〜7、好ましくは4〜6の範囲の値に調節され、エンドグルカナーゼ活性を有する酵素が懸濁液に添加されて、20〜200010IU/kg(乾燥セルロース)、好ましくは100〜60010IU/kg(乾燥セルロース)に及ぶエンドグルカナーゼ活性を付与し、酵素を含有する懸濁液は、40〜65℃、好ましくは45〜60℃に及ぶ温度で加熱されて、重合度が100の値以下に低減されたセルロースを得、次いでアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物15重量%を、酵素で処理した懸濁液へ添加し、その後15〜50℃、好ましくは20〜45℃に及ぶ温度で加熱して、少なくとも50%のセルロースを溶解させて、続いてこのようにして得られたセルロース溶液は、再生用溶液へ噴霧又は混合されて、セルロース粒子を沈降させる。溶解されたセルロースから空気を除去することが好ましい場合がある。同様に、固形分を例えば濾過により除去する場合がある。再生用溶液は、好ましくは酸、より好ましくは希硫酸である。形成された粒子が任意の直接的な後処理のために、例えばコーティングのために上記再生用溶液中に残され得る一方で、形成された粒子はまた、回収又は洗浄されてもよい。
【0027】
コーティングに使用されるべきセルロース粒子の製造において、セルロースは、任意の既知の手順を使用して、それらの変換により修飾されて、酢酸セルロースのような誘導体を生じる一方で、セルロースは、溶液中に存在するか、或いはセルロース粒子への再生後にのみ存在する。セルロース粒子はまた、乾燥するか、或いはホルムアミドで処理して、構造の剛性を改善することができる。セルロース粒子の多孔率は、例えば溶解されたセルロースへの空気の添加、並びにデンプン及びアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩(例えば、水酸化物)のような再生条件下で溶解する物質である固形材料の続く除去により増大され得る。
【0028】
コーティングを施されるべきセルロース粒子の粒子サイズは通常、0.05〜10μmである。
【0029】
本発明のコーティング方法で使用されるべき光散乱材料としては、シリカ、ケイ酸塩、沈降炭酸カルシウム(PCC)、セッコウ、シュウ酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛等、それらの修飾物又は組合せが挙げられ得る。
【0030】
コーティング方法で使用されるべきケイ酸塩は、金属ケイ酸塩、例えば、アルカリ土類金属ケイ酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属アルミニウムケイ酸塩及びアルカリ金属アルミニウムケイ酸塩、並びにそれらの修飾物(該修飾物は、アルカリ土類金属塩及び水酸化物を有する混合塩を包含する)、並びに上記化合物の混合塩及び組合せから成る群より選択される。ケイ酸塩は好ましくは、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸マグネシウムナトリウム、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸アルミニウム、特に好ましくはケイ酸アルミニウムナトリウムである。
【0031】
また、本発明のコーティング方法では、コーティング材料の各種組合せが意図される。
【0032】
シリカの沈降
二酸化ケイ素、即ちシリカ(SiO)は、例えば以下の反応式(1)に従って沈降され得る。沈降されるべき適切な物質、即ち卑金属ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムの水溶液(水ガラス)は、沈降用化合物(ここでは、鉱酸)と、通常HSOと反応させる。
【0033】
[NaO:xSiO]+HSO→xSiO+NaSO+HO (1)
【0034】
沈降シリカはまた、アルカリ金属ケイ酸塩を、亜硫酸と又は二酸化硫黄と反応させることにより得られる。さらに、アルカリ金属亜硫酸塩又は亜硫酸水素塩の水溶液が形成される。
【0035】
ケイ酸塩の沈降
合成ケイ酸塩は、沈降されるべき物質として作用するケイ素化合物を、沈降用化合物と反応させることにより得られる。沈降用化合物はまた、反応中にその場で生成されてもよい。ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸カルシウム及びケイ酸アルミニウムのようなケイ酸塩が、生成物として得られる。これらのうちで、特にケイ酸アルミニウムナトリウムが、製紙において最も広く使用されるケイ酸塩である。
【0036】
沈降されるべき適切な物質としては、沈降シリカ、金属ケイ酸塩、例えば、アルカリ土類金属ケイ酸塩及びアルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属アルミニウムケイ酸塩及びアルカリ金属アルミニウムケイ酸塩、並びにそれらの修飾(例えば、アルカリ土類金属の塩及び水酸化物を有する混合塩)、並びに上記化合物の混合塩及び組合せが挙げられる。
【0037】
ケイ酸ナトリウムのようなケイ酸塩は、以下の反応式(2)に従って沈降され得る。硫酸アルミニウム、即ちアラムを、ケイ酸ナトリウムの水溶液と反応させる。
【0038】
[NaO:xSiO]+Al(SO→NaO・Al・4[xSiO]・4〜6HO+NaSO (2)
【0039】
あるいは、アルカリ金属ケイ酸塩は、亜硫酸アルミニウムの水溶液と反応させて、沈降アルカリ金属アルミニウムケイ酸塩及び最終反応段階でのpHに応じてアルカリ金属亜硫酸塩又は亜硫酸水素塩を含有する水相を生じる。
【0040】
沈降アルカリ金属アルミニウムケイ酸塩はまた、アルカリ金属ケイ酸塩溶液を、二酸化硫黄、亜硫酸溶液又は硫酸溶液の存在下でアルカリ金属アルミン酸塩と処理することにより得られる。さらに、アルカリ金属亜硫酸塩を含有する水相が得られる。この場合、沈降用亜硫酸アルミニウム試薬は、反応中にその場で形成される。
【0041】
ケイ酸亜鉛は、ケイ酸ナトリウム溶液を塩化亜鉛溶液と混合すること、反応の最後に塩化亜鉛溶液を硫酸溶液で置き換えることにより沈降され得る。
【0042】
炭酸カルシウムの沈降
沈降炭酸カルシウム、即ちPCCは、例えば以下の反応式(3)〜(5)に従って得られる。
【0043】
CaCO+エネルギー→CaO+CO (3)
CaO+HO →Ca(OH)+エネルギー (4)
Ca(OH)+CO→CaCO+HO+エネルギー (5)
【0044】
反応(3)では、石灰石を加熱して、したがって石灰石を解離して、石灰、即ちCaO及び二酸化炭素を得る。次に、反応(4)で、石灰を水と混合させることにより、消石灰、即ちCa(OH)を得る。この工程では、例えばスクリーニングにより、あらゆる不純物が除去され得る。反応(5)で、炭酸カルシウムは、炭化工程で沈降され、ここでは二酸化炭素が消石灰の水性スラリーに通される。この工程では、沈降炭酸カルシウムの粒子サイズ及び粒子サイズ分布、さらにはこれらの粒子の形状及び表面特性は、反応条件を調節することにより影響を受けることがある。
【0045】
炭酸カルシウムはまた、反応式(6)に従って沈降され得る。この式では、消石灰を炭酸ナトリウムと反応させる。反応で製造されるアルカリ性溶液は、製紙においてCaCOを使用する前に中和される。
【0046】
Ca(OH)+NaCO→CaCO+2NaOH (6)
【0047】
炭酸カルシウムはさらに、式(7)に従って炭酸ナトリウムを塩化カルシウムと反応させることにより沈降され得る。
【0048】
NaCO+CaCl→CaCO+2NaCl (7)
【0049】
セッコウの沈降
硫酸カルシウムは、様々な水和形態及び無水形態で見出され、その中で硫酸カルシウム二水和物であるCaSO・2HOが一般にセッコウと呼ばれる。この二水和物は、硫酸カルシウムの最も安定な形態であり、したがって二水和物は、コーティング顔料として使用される。二水和物形態の自発的な沈降は、ボイラー堆積物の場合に一般的な現象であり、反応式(8)に従って過飽和溶液で起こる。
【0050】
Ca2++SO2−+2HO→CaSO・2HO (8)
【0051】
二水和物はまた、反応式(9)に従って、硫酸カルシウム半水和物であるCaSO・1/2HOがいったん水中でスラリーとされれば、硫酸カルシウム半水和物から沈降される。沈降するセッコウの粒子サイズ分布及び粒子形状は、沈降条件を調節することにより影響を受けることがある。
【0052】
2CaSO・1/2HO+3HO→2CaSO・2HO (9)
【0053】
二水和物形態はまた、反応式(10)に従って、いったんリン酸カルシウムが水溶液中で硫酸と反応されれば沈降される。リン酸は反応において形成される。
【0054】
Ca(PO+3HSO+6HO→3CaSO・2HO+2HPO (10)
【0055】
粗リン酸塩(raw phosphate)であるCa10(POが水溶液中で硫酸と反応すると、反応式(11)に従って硫酸カルシウムの二水和物形態、リン酸及びフッ化水素酸が形成される。
【0056】
Ca10(PO+10HSO+20HO→19CaSO・2HO+6HPO+2HF (11)
【0057】
硫酸カルシウムの二水和物形態はまた、反応式(12)に従って、亜硫酸水素カルシウムが水溶液中で酸素と反応すると沈降される。
【0058】
Ca(HSO(l)+O(g)+2HO(l)→CaSO・2HO(s)+HSO (12)
【0059】
シュウ酸カルシウムの沈降
シュウ酸カルシウムは、カルシウムを含有する化合物の存在下でシュウ酸からの沈降により製造され得る。カルシウムを含有する化合物は、例えば炭酸カルシウム、水酸化カルシウム又は塩化カルシウムであり得る。炭酸カルシウム及びシュウ酸からのシュウ酸カルシウムの製造を反応式(13)〜(14)に提示する。
【0060】
CaCO+2HCl→CaCl+HO+CO (13)
CaCl+H→CaC+2HCl (14)
【0061】
二酸化チタンの沈降
二酸化チタンは、既知の硫酸塩プロセスを用いて、即ち濃硫酸を使用して乾燥且つ粉末状チタン鉄鉱、又はチタンスラリーを溶解させること、及び加熱して、それにより固体反応生成物ケークを生成することにより製造され得る。反応生成物ケークは、水又は希硫酸中に溶解され、さらに例えば濾過により、固体不純物を硫酸チタン溶液から除去する。溶液の鉄含有量は、冷却により、したがって濾過により除去され得る硫酸鉄六水和物として鉄を沈降させることによりさらに低減され得る。溶液を濃縮して、オキシ水酸化チタン(IV)としてチタンを沈降させ、続いて濾過、洗浄、並びに必要であればか焼による所望の結晶サイズ及び形状への変換を行う。続いて、セルロース粒子は、例えば吸着又はスピンコーティングプロセスを使用して、このようにして得られる二酸化チタンでコーティングされてもよい。
【0062】
二酸化チタンはまた、米国特許第6,001,326号の文献に開示される手順を用いて、即ち蒸留水で作製される角氷、又は氷のように冷たい蒸留水を、未希釈四塩化チタン溶液へ添加すること、このようにして得られる塩化チタニルの水溶液を希釈して、それにより所望の濃度を得ること、続いて加熱して、微細二酸化チタンの沈降をもたらすことにより製造され得る。
【0063】
水酸化アルミニウムの沈降
アルミニウム三水和物としても既知である水酸化アルミニウムは、ボーキサイト中に含有されるアルミニウムを溶解させること、続いて他の鉱物の分離により、ボーキサイトから製造され得る。溶液のアルミニウム化合物が水酸化ナトリウムで抽出された後、不溶性不純物は、沈殿及び濾過により分離される。透明なアルミン酸ナトリウム濾液を冷却して、必要であれば、具体的にこの目的のために種結晶として調製される細粒水酸化アルミニウム結晶、及びセルロース粒子を添加する。濾液中に含有されるアルミン酸塩は、添加した種結晶上及びセルロース粒子上に沈降する。
【0064】
硫酸バリウムの沈降
硫酸バリウムは、硫酸基を含有する化合物を使用する水中で可溶性であり、且つ水中でも可溶性であるバリウム化合物から沈降され得る。上記バリウム化合物は、例えば硝酸バリウム、硫化バリウム、水酸化バリウム又は塩化バリウムであり得るのに対して、硫酸基を含有する化合物は、硫酸ナトリウム又は硫酸マグネシウム、或いは硫酸である。塩化バリウム及び硫酸ナトリウムからの硫酸バリウムの調製は、反応式(15)で示される。
【0065】
BaCl(aq)+NaSO(aq)→BaSO(s)+2NaCl(aq) (15)
【0066】
酸化亜鉛の沈降
酸化亜鉛は、硝酸亜鉛を加熱することにより、酸化亜鉛、二酸化窒素及び酸素を生じることによって沈降され得る。酸化亜鉛はまた、炭酸亜鉛を加熱すること、したがって酸化亜鉛及び二酸化炭素を得ることにより沈降され得る。さらに、酸化亜鉛は、酸化カルシウムを用いて又は水酸化カルシウムを用いて亜鉛イオンを含有する溶液から、或いはアルコール溶液若しくはアルコール/水溶液中で水酸化リチウムを用いた又は水酸化テトラメチルアンモニウムを用いた酢酸亜鉛の加水分解により沈降され得る。
【0067】
セルロース粒子へのコーティングは、沈降されるべき物質を、セルロース粒子を含有する水性懸濁液へ添加することにより実施されてもよく、さらにpH及び温度の値は、適切な範囲に任意に調節される。任意に、セルロース粒子を含有する懸濁液は、沈降される物質の添加に先立って、沈降用化合物の水溶液と、また場合によっては補助塩と組み合わされる。必要であれば、沈降されるべき物質の添加に続いて、水溶液、アルコール溶液又はアルコール/水溶液として、或いは気体形態で、沈降用化合物を添加し、且つ/又は酸又は沈降物質の種結晶が添加される。
【0068】
ケイ酸塩及びシリカの沈降に関して、沈降用化合物は、無機酸、二酸化硫黄、並びにアルカリ土類金属、アルカリ金属、土類金属、亜鉛及びアルミニウムの塩(好ましくは硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩)並びに硫酸アンモニウム塩から成る群から選択される。沈降は、二酸化硫黄、亜硫酸又は硫酸の存在下で、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、或いはアルカリ金属アルミン酸塩を使用して実施されることが特に好ましい。あるいは、沈降はまた、塩化亜鉛により達成されてもよく、塩化亜鉛は、反応の最終段階において硫酸溶液で置き換えられる。
【0069】
炭酸カルシウム沈降に関して、沈降用化合物は、例えば気体二酸化炭素又は炭酸ナトリウムであり得る。
【0070】
セッコウがリン酸カルシウムから又は粗リン酸塩から沈降される場合、沈降用化合物は硫酸である。セッコウが水溶液中で亜硫酸水素カルシウムから沈降される場合、気体酸素が沈降用化合物として使用される。沈降が過飽和溶液中で実施される場合、水中に溶解すると硫酸イオンを放出する任意の化合物が沈降用化合物として使用され得る。あるいは、硫酸カルシウム二水和物が、半水和物の水性スラリーから沈降される場合、沈降用化合物は必要とされない。
【0071】
シュウ酸カルシウムの沈降に関して、沈降用化合物はシュウ酸である。
【0072】
二酸化チタンの沈降に関して、沈降用化合物を添加することに代わって、沈降されるべき物質が加熱されてもよく、このようにして微細二酸化チタンが得られる。
【0073】
水酸化アルミニウムが沈降される場合、必要であれば、沈降用化合物に代わって、水酸化アルミニウム種結晶が添加される。
【0074】
硫酸バリウムの沈降に関して、沈降用化合物は、硫酸基を含有する化合物、例えば硫酸ナトリウム又は硫酸マグネシウム、或いは硫酸である。
【0075】
酸化亜鉛の沈降に関して、沈降用化合物は、例えば酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム又は水酸化テトラメチルアンモニウムである。硝酸亜鉛又は炭酸亜鉛が沈降されるべき物質として使用される場合、沈降用化合物の添加は必要でない場合がある。
【0076】
ケイ酸塩及びシリカの沈降に関して、補助剤として役立つ塩は、アルカリ土類金属塩及び水酸化物から成る群から選択される。適切な塩としては、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム又はカルシウム)の塩化物、硫酸塩及び炭酸塩が挙げられる。水酸化マグネシウムが好ましく使用される。
【0077】
ケイ酸塩の沈降に関して、沈降されるべき物質は、沈降シリカ、アルカリ金属ケイ酸塩及びアルカリ土類金属ケイ酸塩、アルカリ金属アルミニウムケイ酸塩及びアルカリ土類金属アルミニウムケイ酸塩、並びにアルカリ土類金属塩及び水酸化物を有する混合塩を包含するそれらの修飾、並びにさらには上記化合物の混合塩及び組合せから成る群から選択される。
【0078】
ケイ酸塩の沈降に関して、沈降されるべき物質は、アルカリ金属ケイ酸塩及びアルカリ土類金属ケイ酸塩から成る群から選択される。
【0079】
炭酸カルシウムの沈降に関して、沈降されるべき物質は、例えば水酸化カルシウム又は塩化カルシウムである。水酸化カルシウムは、水中で生石灰を混合することにより得られ、このようにして上記石灰を反応させることにより水酸化カルシウムが得られる。
【0080】
セッコウの沈降に関して、沈降されるべき物質は、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム半水和物、粗リン酸塩、亜硫酸水素カルシウム、又は水中で溶解されるとカルシウムイオンを放出する任意の化合物である。
【0081】
シュウ酸カルシウムの沈降に関して、沈降されるべき物質は、カルシウムを含有する任意の化合物、例えば塩化カルシウム、炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムである。
【0082】
酸化チタンの沈降に関して、沈降されるべき物質は、例えば塩化チタニルである。
【0083】
水酸化アルミニウムの沈降に関して、沈降されるべき物質は、アルミン酸ナトリウムである。
【0084】
硫酸バリウムの沈降に関して、沈降されるべき物質は、バリウム化合物、例えば硝酸バリウム、硫化バリウム、水酸化バリウム又は塩化バリウムである。
【0085】
酸化亜鉛の沈降に関して、沈降されるべき物質は、例えば硝酸亜鉛、炭酸亜鉛又は酢酸亜鉛であり得る。
【0086】
本発明によるセルロース粒子へのコーティング方法の好適な実施形態では、溶解されたセルロースを希硫酸溶液中に噴霧することにより沈降されるセルロース粒子は、混合しながら20℃の温度でセルロース粒子を含有する再生用溶液へ直接、ケイ酸ナトリウムを滴下することにより光散乱材料と接触させ、これによって上記セルロース粒子上にシリカが沈降する。
【0087】
本発明のセルロース粒子をコーティングする方法では、上記セルロース粒子はまた、上記セルロース粒子上に光散乱材料を吸着させることによりコーティングされてもよい。
【0088】
本発明のセルロース粒子をコーティングする方法では、セルロース粒子はさらに、気相コーティング法、又は改良型気相コーティング(例えば、原子層エピタキシ)を使用して光散乱材料でコーティングされてもよい。
【0089】
気相コーティングでは、コーティングは、コーティングされるべき材料を、気体出発材料と接触させることにより、気相中で出発材料の解離及び/又は化学反応、続くコーティングされるべき上記材料上での固体コーティングの形成を可能にすることにより、化学反応を用いて形成される。反応は例えば、熱分解、還元、酸化、加水分解又は合成を含み得る。ハロゲン化物、水素化物、金属カルボニル、有機金属化合物等が前駆体として使用され得る。気相コーティング技法によるコーティングに関して、光散乱材料は、好ましくは酸化亜鉛、酸化ケイ素又は二酸化チタンであり、気相コーティング技法によるこの製造は、反応式(16)により示される:
【0090】
TiCl+2O→TiO+2Cl (16)
【0091】
さらに、セルロース粒子をコーティングする本発明の方法では、上記セルロース粒子は、スピンコーティングプロセス等を使用して、セルロース粒子及び光散乱材料の水層を形成することにより、光散乱材料でコーティングされてもよい。層は、任意の順序で堆積されてもよく、その数は限定されない。いったん層が凝固されれば、層は、所望の用途に応じて所望の粒度へ破砕されてもよい。
【0092】
本発明のコーティングされたセルロース粒子は、光散乱材料でコーティングされるセルロース粒子を含む。当該セルロース粒子をコーティングする材料は、光散乱材料の中から選択される。好適な光散乱材料としては、シリカ、ケイ酸塩、沈降炭酸カルシウム(PCC)、セッコウ、シュウ酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム及び酸化亜鉛等、さらに、それらの修飾及び組合せが挙げられる。
【0093】
コーティングされたセルロース粒子に使用されるケイ酸塩は、金属ケイ酸塩、例えば、アルカリ土類金属ケイ酸塩及びアルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属アルミニウムケイ酸塩及びアルカリ金属アルミニウムケイ酸塩、並びに、アルカリ土類金属の塩及び水酸化物の混合塩等のそれらの修飾、並びに、上記化合物の混合塩及び組合せから成る群から選択される。ケイ酸塩は好ましくは、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、ケイ酸マグネシウムナトリウム、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸アルミニウム、特に好ましくは、ケイ酸アルミニウムナトリウムである。
【0094】
本発明によれば、コーティング材料の種々の組合せもまた使用され得る。
【0095】
本発明のコーティングされたセルロース粒子は、コーティングされたセルロース粒子の5〜95重量%、好ましくは5〜20重量%、又は50〜80重量%の範囲の量でコーティング材料を含有する。コーティング材料の比率は、特に好ましくは上記複合材料を含む製品の廃棄が望ましくは燃焼により達成される場合に、コーティングされたセルロース粒子の5〜20重量%に及ぶ。したがって、灰分の形成は最低限に抑えられる。
【0096】
コーティングされたセルロース粒子のサイズは、0.05〜10μm、好ましくは0.2〜2.0μmの範囲である。コーティング厚は、1nm〜5μmである。
【0097】
本発明のコーティングされたセルロース粒子は、紙及び厚紙においてフィラーとして使用され得る。フィラーとして使用されるべきコーティングされたセルロース粒子の粒子サイズは好ましくは、1〜2μmに及ぶ。本発明のコーティングされたセルロース粒子は、良質紙及び機械パルプ含有紙(例としては、LWC、ULWC、MWC及びSCが挙げられる)の両方に適切なフィラーである。
【0098】
本発明のコーティングされたセルロース粒子はまた、機械パルプ含有紙用の、例えばLWC印刷用紙用のコーティング顔料として、並びにさらに厚紙、例えばFBB厚紙用のコーティング顔料として使用され得る。コーティング顔料として使用されるべきコーティングされたセルロース粒子の粒子サイズは好ましくは、0.2〜1μmに及ぶ。
【0099】
紙又は厚紙を作製するための本発明のプロセスでは、コーティングされたセルロース粒子は、プレスセクションに先立ってシステムの適切な点で、好ましくは短い循環で、特に好ましくはヘッドボックスに近接して、例えば混合ポンプの吸い込み側で、或いはヘッドボックスの供給ポンプに近接して、紙又は厚紙におけるフィラー含有量をもたらす量で、即ち1〜50重量%に及ぶコーティングされたセルロース粒子の量で紙又は厚紙製造中にパルプに添加され、続いて従来の様式で紙又は厚紙を製造する。
【0100】
紙をコーティングするための本発明のプロセスでは、コーティングされたセルロース粒子は、上記懸濁液を使用して、それ自体として或いはコーティング顔料で使用される既知のバインダーとの、例えばデンプン若しくはラテックス、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロース)又は他の添加剤との混合物として、通常80〜95重量%に及ぶコーティングペーストにおけるコーティングされたセルロース粒子の含有量をもたらす量で適用される。紙又は厚紙ウェブ上での塗布は、任意のコーティングプロセスにより達成され得る。
【0101】
本発明のコーティングされたセルロース粒子は、従来技術のフィラー及びコーティング顔料と比較して幾つかの利点を有する。紙及び厚紙の重要な特性、特に強度特性(例えば、結合強度及び引っ張り強度指数)は、光学特性に対する悪影響をあまり伴わずにコーティングされたセルロース粒子により好適に影響され得る。さらに、上記コーティングされたセルロース粒子を使用することにより、紙及び厚紙の坪量は低減され、また機械の磨耗は減少され得る。
【0102】
本発明のコーティングされたセルロース粒子を利用して、紙及び厚紙を製造する方法並びに紙及び厚紙をコーティングする方法を用いて、紙及び厚紙における再生可能な有機材料の比率を増大することができ、したがって燃焼による再循環システムから除去される紙及び厚紙の利用が改善され得る。欧州連合内で、埋め立て地への堆肥とされる可能性がある材料の廃棄は将来禁止され、したがって燃焼は、廃棄物処理にとって重要な代替手段の1つである。
【実施例1】
【0103】
セルロース粒子の調製
5重量%の希釈物は、ビスコース法により溶解されたセルロースから調製され、上記希釈物は、セルロース含有量が約0.45重量%であるものに相当する。この希釈物900gを、1M硫酸1リットルへ噴霧して、これによりセルロースは沈降して、小粒子を生じた。当該セルロース粒子を沈殿させて、続くシリカによるコーティング用に硫酸中に残した。
【実施例2】
【0104】
シリカによるセルロース粒子のコーティング
実施例1で調製したセルロース粒子を、20℃で混合しながら、セルロース粒子を含有するスラリー(濃度0.43重量%)334.4gへケイ酸ナトリウムを滴下することによりコーティングした。添加されたケイ酸ナトリウムの量は、総計1.68ml(1.095g)に達する。シリカをセルロース粒子上に沈降し、最大35重量%のシリカを含有するコーティングされたセルロース粒子を得た。紙及び厚紙の製造においてフィラーとして有用な、このようにしてコーティングされたセルロース粒子を図1に示す。
【実施例3】
【0105】
ケイ酸塩によるセルロース粒子のコーティング
セルロース粒子を、実施例1に記載するように調製し、硫酸の大部分を濾別した。15重量%の濃度を有する硫酸アルミニウム溶液36.6g、及び21.2重量%の濃度を有するケイ酸ナトリウム60.3gを、温度20.3℃及びpH1.77を有するセルロース粒子を含有するスラリー(濃度は0.2重量%である)1166.5gへ、スラリーを混合しながら1.5分の間に同時に添加した。このようにして得られた複合材料のケイ酸塩含有量は、約4重量%であると求められた。紙及び厚紙の製造においてフィラー並びにコーティング顔料として有用な、このようにしてコーティングされたセルロース粒子を図2に示す。
【実施例4】
【0106】
ケイ酸塩によるセルロース粒子のコーティング
セルロース粒子を、実施例1に記載するように調製し、硫酸の大部分を濾別した。20重量%の濃度を有する硫酸アルミニウム溶液89.2g、及び22.2重量%の濃度を有するケイ酸ナトリウム180.9gを、温度20.5℃及びpH3.3を有するセルロース粒子を含有するスラリー(濃度は0.2重量%である)1170gへ、スラリーを混合しながら2分の間に同時に添加した。最終的に、硫酸アルミニウムをさらに添加し、最終pHを7.5の値へ調節した。このようにして得られた複合材料のケイ酸塩含有量は、約70重量%であると求められた。紙及び厚紙の製造においてフィラー並びにコーティング顔料として有用な、このようにしてコーティングされたセルロース粒子を図3a及び図3bに示す。
【実施例5】
【0107】
紙におけるフィラーとしての、シリカでコーティングされたセルロース粒子の使用
漂白カバノキパルプ70%及び漂白針葉樹パルプ30%から構成されるパルプからシートを作製し、シートは、フィラーとして実施例3に従って調製される本発明のシリカでコーティングされたセルロース粒子を含有していた。任意のフィラーなしのシート及びフィラーとしてコーティングされていないセルロース粒子を含有するシートをそれぞれ対照とした。60g/mの坪量を有するシートは、規格SCAN−C 26:76に従って作製された。フィラー含有量は、約6%重量%及び14重量%であった。シートに関する光散乱係数、スコットボンド値としての結合強度及び引っ張り指数は、SCAN−P 8:93、TAPPI T 569及びSCAN−P 67:93に従う方法を用いて求めた。
【0108】
フィラーとしてコーティングされたセルロース粒子を含有するシートに関して、光散乱係数は、対照としたシートと類似していたが、結合強度は相当高く、即ち、フィラーとしてコーティングされていないセルロース粒子を含有するシートよりも1.5倍高く、またフィラーなしのシートよりも2倍以上高かった。
【実施例6】
【0109】
紙におけるフィラーとしての、ケイ酸塩でコーティングされたセルロース粒子の使用
漂白カバノキパルプ70%及び漂白針葉樹パルプ30%から構成されるパルプからシートを作製し、シートは、フィラーとして実施例4に従って調製される本発明のケイ酸塩でコーティングされたセルロース粒子を含有していた。フィラーとしてコーティングされていないセルロース粒子を含有するシート及び任意のフィラーなしのシートを対照とした。60g/mの坪量を有するシートは、規格SCAN−C 26:76に従って作製された。フィラー含有量は、約6%重量%及び14重量%であった。シートのISO輝度及び光散乱係数は、SCAN−P 3:93及びSCAN−P 8:93に従う方法を用いて求めた。
【0110】
シートのISO輝度及び光散乱係数は、それぞれ図4a及び図4bにおいてグラフで示される。図4a及び図4bから理解され得るように、明確に良好な光学特性が、コーティングされていないセルロース粒子よりも本発明のコーティングされたセルロース粒子を用いた場合に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】実施例2に従って製造され、且つシリカでコーティングされた本発明のセルロース粒子の電子顕微鏡写真(倍率3000倍)である。
【図2】実施例3に従って製造され、且つシリカでコーティングされた本発明のセルロース粒子の電子顕微鏡写真(倍率10000倍)である。
【図3a】実施例4に従って製造され、且つシリカでコーティングされた本発明のセルロース粒子の電子顕微鏡写真(倍率10000倍)である。
【図3b】実施例4に従って製造され、且つシリカでコーティングされた本発明のセルロース粒子の電子顕微鏡写真(倍率10000倍)である。
【図4a】実施例6に従い、且つ本発明のケイ酸塩でコーティングされたセルロース粒子を6重量%〜14重量%含有するシートの、フィラー含有量の関数としてのISO輝度を示す図表である。等量のコーティングされていないセルロース粒子(参照 コーティングされていない)を含有するシート、及びフィラーを有さないシートが対照として使用される。
【図4b】実施例6に従い、且つ本発明のケイ酸塩でコーティングされたセルロース粒子を6重量%〜14重量%含有するシートの、フィラー含有量の関数としての光散乱係数を示す図表である。等量のコーティングされていないセルロース粒子(参照 コーティングされていない)を含有するシート、及びフィラーを有さないシートが対照として使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース粒子のコーティング方法であって、該セルロース粒子を光散乱材料と接触させ、次いで該セルロース粒子の表面に該光散乱材料を結合させることを特徴とするコーティング方法。
【請求項2】
前記セルロース粒子が、沈降法、吸着法、気相コーティング法又はスピンコーティング法により前記光散乱材料でコーティングされることを特徴とする請求項1に記載のセルロース粒子のコーティング方法。
【請求項3】
前記セルロース粒子が、沈降により、溶解されたセルロースから製造されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセルロース粒子のコーティング方法。
【請求項4】
前記セルロース粒子のサイズが、0.05〜10μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロース粒子のコーティング方法。
【請求項5】
前記光散乱材料が、シリカ、ケイ酸塩、PCC、セッコウ、シュウ酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、それらの修飾物又は組合せから成る群より選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロース粒子のコーティング方法。
【請求項6】
前記光散乱材料がシリカであることを特徴とする請求項5に記載のセルロース粒子のコーティング方法。
【請求項7】
コーティングされたセルロース粒子であって、光散乱材料でコーティングされたセルロース粒子を含むことを特徴とするコーティングされたセルロース粒子。
【請求項8】
前記光散乱材料が、シリカ、ケイ酸塩、PCC、セッコウ、シュウ酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、それらの修飾物又は組合せから成る群より選択されることを特徴とする請求項7に記載のコーティングされたセルロース粒子。
【請求項9】
前記粒子が、5〜95重量%、好ましくは5〜20重量%、又は50〜80重量%の前記光散乱材料を含有することを特徴とする請求項7又は8に記載のコーティングされたセルロース粒子。
【請求項10】
前記コーティングされたセルロース粒子のサイズが、0.05〜10μm、好ましくは0.2〜2.0μmの範囲であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のコーティングされたセルロース粒子。
【請求項11】
紙又は厚紙のフィラーとしての請求項7〜10のいずれか1項に記載のコーティングされたセルロース粒子の使用。
【請求項12】
紙又は厚紙のコーティング顔料としての請求項7〜10のいずれか一項に記載のコーティングされたセルロース粒子の使用方法。
【請求項13】
紙又は厚紙を製造する方法であって、請求項7〜10のいずれか一項に記載のコーティングされたセルロース粒子をパルプに添加し、次いで慣用的操作で前記紙を製造することを特徴とする紙又は厚紙の製造方法。
【請求項14】
紙又は厚紙をコーティングする方法であって、請求項7〜10のいずれか一項に記載のコーティングされたセルロース粒子を、懸濁液として或いはコーティング補助剤との混合物として、既知の方法を使用して紙又は厚紙ウェブ上に塗布することを特徴とするコーティングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2008−545033(P2008−545033A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518884(P2008−518884)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/FI2006/050284
【国際公開番号】WO2007/003697
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(504161906)
【Fターム(参考)】