説明

セルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法及び機能性オイル担持セルロース系繊維製品

【課題】 セルロース系繊維に皮膚の状態を維持又は改善することができる機能性オイルを付与し、その有効成分の洗濯耐久性を十分に維持しながら、洗濯後もその徐放性が発揮され、また繊維の風合いを損ねることのないセルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法及び機能性オイル担持セルロース系繊維製品を提供する。
【解決手段】 セルロース系繊維をアルキル系樹脂とフルオロアルキル系樹脂をそれぞれ少なくとも1種含有した処理剤で処理した後に、機能性オイルを付与する。又は、セルロース系繊維を、アリキル系樹脂、フルオロアルキル系樹脂及び機能性オイルをそれぞれ少なくとも1種含有した処理剤で処理する。この場合、好ましくは、上記アルキル系樹脂がアルキルエチレン尿素系樹脂であってもよい。また、好ましくは、上記フルオロアルキル系樹脂が、パーフルオロアルキル基を含むアクリレート又はメタクリレートを主体とするポリマーであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の状態を維持又は改善することができる機能性オイルをセルロース系繊維に担持するための当該セルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法及び機能性オイル担持セルロース系繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、天然物由来のオイル成分は、スキンケア用途の化粧品分野において多く利用されている。当該オイル成分は、化粧品から皮膚への有効成分の吸収により効果を発揮することで、皮膚の状態を健康に維持し又は改善する作用を有すると考えられている。このようなことから、当該オイル成分を肌に接する繊維製品にも応用することが提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に皮膚細胞活性化繊維及び皮膚細胞活性化衣料が開示されている。当該皮膚細胞活性化繊維及び皮膚細胞活性化衣料は、植物由来のオイル成分中の皮膚細胞活性化物質を乳化分散又はマイクロカプセル化して繊維に付着させることを特徴とするものである。
【特許文献1】特開2005−105478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように開示された皮膚細胞活性化繊維及び皮膚細胞活性化衣料は、植物由来のオイル成分中の皮膚細胞活性化物質を繊維に付着させることで得られる。しかし、衣料は着用後に洗濯されるものも多く、繊維に付着させた有効成分が洗濯によって脱落すれば、その効果が発揮されない。
【0005】
これに対しては、上述のように皮膚細胞活性化物質を繊維に付着させるにあたり、オイル成分を包含したマイクロカプセルに樹脂成分を配合して洗濯耐久性を付与することも考えられる。しかし、オイル成分をマイクロカプセル化すること自体が煩雑な作業であり、また、配合する樹脂成分が少ないと洗濯耐久性が十分でない。逆に、樹脂成分が多すぎると有効成分の繊維からの徐放性が得られず、その作用が十分に発揮されない。また、衣料の風合いを損ねることになる。
【0006】
そこで、本発明は、上述のようなことに対処するため、セルロース系繊維に皮膚の状態を維持又は改善することができる機能性オイルを付与し、その有効成分の洗濯耐久性を十分に維持しながら、洗濯後もその徐放性が発揮され、また繊維の風合いを損ねることのないセルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法及び機能性オイル担持セルロース系繊維製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決にあたり、本発明に係るセルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法では、請求項1の記載によれば、アルキル系樹脂及びフルオロアルキル系樹脂をそれぞれ少なくとも1種含有する処理液でもってセルロース系繊維を処理した後、このように処理した上記セルロース系繊維に機能性オイルを付与する。
【0008】
これによれば、機能性オイルの有効成分の洗濯耐久性を十分に維持しながら、洗濯後もその徐放性が発揮され、また、繊維の風合いを損ねることのない機能性オイル担持セルロース系繊維の提供が可能となる。
【0009】
また、本発明に係るセルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法では、請求項2の記載によれば、アルキル系樹脂、フルオロアルキル系樹脂及び機能性オイルをそれぞれ少なくとも1種含有する処理液でもってセルロース系繊維を処理する。
【0010】
これにより、セルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法において、工程簡略化によるコストの低減を確保しつつ、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を達成し得る。
【0011】
ここで、本発明は、請求項3の記載のように、請求項1又は2に記載のセルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法において、上記アルキル系樹脂は、アルキルエチレン尿素系樹脂であってもよい。
【0012】
また、本発明は、請求項4の記載のように、請求項1〜3のいずれか1つに記載のセルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法において、上記フルオロアルキル系樹脂は、パーフルオロアルキル基を含むアクリレート又はメタクリレートを主体とするポリマーであってもよい。
【0013】
また、本発明に係る機能性オイル担持セルロース系繊維製品は、請求項5の記載によれば、
機能性オイル、アルキル系樹脂、フルオロアルキル系樹脂及びセルロース系繊維からなる。
【0014】
当該機能性オイル担持セルロース系繊維製品において、アルキル系樹脂とフルオロアルキル系樹脂がセルロース系繊維に化学結合をしていることを特徴とする。
【0015】
これによれば、機能性オイルの有効成分の洗濯耐久性を十分に維持しながら、洗濯後もその徐放性が発揮され、また繊維の風合いを損ねることのない機能性オイル担持セルロース系繊維製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
本発明の適用対象となるセルロース系繊維には、綿、麻等の天然セルロース系繊維と、レーヨン、キュプラ、ポリノジック又はテンセル等の再生セルロース系繊維とがある。また、当該セルロース系繊維は、上記天然セルロース系繊維又は再生セルロース系繊維の単独又は混紡、交織、交編により、他の繊維(他の天然繊維、及び合成繊維も含む)と混用されているものでもよい。
【0018】
さらに、本発明の適用対象となるセルロース系繊維は、上記繊維からなる編物、織物、不織布又は糸、綿等、皮膚に接することのできる状態のものであれば、どのような形態であってもよい。
【0019】
本発明において、繊維製品とは、少なくとも一部が肌に接することにより使用されるものであり、例えば、下着、パジャマ、ブラウス、シーツ、タオル、寝具、靴下、ストッキングなど、又はスポーツ用途、健康用途、医療用途の繊維製品をいう。
【0020】
本発明において、機能性オイルとは、皮膚の状態を健康に維持し又は改善する作用があるオイル成分を主体としたものであり、スキンケア用途の化粧品分野において多く利用されている天然物由来のオイル成分などがあてはまる。
【0021】
例えば、上記オイル成分は、ホホバ油、マカデミアンナッツ油、ローズヒップ油、オリーブ油、コーン油、キャノーラ油、ピーナッツ油、ヒマワリ油、サフラワー油、アボガド油、ブラックカラント油、グレープシード油、ボリジ油、月見草油、コメ油、ティーツリーオイル、ネロリオイル、ラベンダーオイル、ユーカリオイル、パチュリーオイル、フランキンセンスオイル、キョウニン油及び醗酵エキスなどの植物抽出オイル成分をいう。
【0022】
また、それらに含まれる、例えば、アトピー性皮膚炎などの改善に効果があるといわれているγ‐リノレン酸、抗アレルギー作用があるといわれている共役リノール酸、その他のα‐リノレン酸やオレイン酸、また、ビタミンEなども含まれる。
【0023】
これらの機能性オイルを付与した繊維を肌に接していれば、繊維から皮膚へ機能性オイルが徐々に移行し、皮膚の状態を健康に維持し又は改善することができる。しかし、当該繊維を洗濯した場合には、機能性オイルが繊維から脱落し、洗濯後にその機能を発揮することができない。
【0024】
また、皮膚に接する繊維には、吸湿性も必要とされ、その目的からはセルロース系繊維が好ましい。一方、セルロース系繊維は、本来、親水性の繊維であり、オイル成分を保持する能力に欠ける。
【0025】
そこで、本発明者らは、鋭意研究の結果、特定の加工を行うことにより、本来親水性であるセルロース系繊維に機能性オイル保持能力を与え、一般の洗濯においてもオイルの脱落が少なく、且つ、繊維から皮膚への機能性オイルの移行を損なわないことを見出した。
【0026】
すなわち、アルキル系樹脂及びフルオロアルキル系樹脂をそれぞれ少なくとも1種含有した処理液でもって、セルロース系繊維を処理した後、このように処理したセルロース系繊維に機能性オイルを付与することで本発明の解決課題を達成することができる。
【0027】
ここで、本発明において、アルキル系樹脂とは、セルロース系繊維と化学結合し、繊維にアルキル基を付与することのできる物質をいう。上記化学結合とは、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合、分子間静電引力による結合などであって、アルキル系樹脂のセルロース系繊維に対する洗濯耐久性を付与する結合をいう。
【0028】
上記アルキル系樹脂は、例えば、アルキル4級アンモニウム塩、アルキルエチレン尿素、アルキルグリシジルエーテル、β‐ヒドロキシアルキルスルホン、N‐メチロールアルキルアミド、アルキルアミノ樹脂などがある。
【0029】
アルキル鎖の炭素長は、特に指定するものではないが、一般にはC12以上が好ましい。これらの化合物の中で、特に好ましくは、アルキルエチレン尿素であり、さらに好ましくは、オクタデシルエチレン尿素である。これらをセルロース繊維に加工するにあたり、これらを乳化分散した水系処理液が利用し易い。
【0030】
また、本発明において、フルオロアルキル系樹脂とは、セルロース系繊維と化学結合する含フッ素ポリマーであって、パーフルオロアルキル基を主鎖又は側鎖に有し、繊維表面を被覆することにより、繊維の表面エネルギーを著しく低下させることのできる物質であって、濡れ特性、特に撥水性と撥油性を向上させる物質をいう。上記化学結合とは、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合、分子間静電引力による結合などであって、フルオロアルキル系樹脂のセルロース系繊維に対する洗濯耐久性を付与する結合をいう。
【0031】
このような物質の中でも、パーフルオロアルキル基のみ、又はパーフルオロアルキル基とアルキル基との両方を側鎖に含むアクリレート若しくはメタクリレートを主体とするポリマーが好ましい。
【0032】
この場合、フルオロアルキル鎖の炭素長は、特に指定するものではないが、一般にはC6以上が好ましい。これらをセルロース繊維に加工するにあたり、これらを乳化分散した水系処理液が利用し易い。
【0033】
これらのアルキル基とフルオロアルキル基との混合系が本発明の特徴とするところであり、その作用は明確ではないが、機能性オイルがアルキル基と強い親和性をもち、さらに、これらアルキル基を介して、フルオロアルキル基とも親和性を有することにより、洗濯耐久性を有するにもかかわらず、繊維から皮膚への徐放性も有することとなるものと考えられる。上記洗濯耐久性は、アルキル系樹脂とフルオロアルキル系樹脂のセルロース系繊維に対する化学結合によりもたらされる。
【0034】
実際のセルロース系繊維の加工について、二種の方法につき説明する。加工されるセルロース系繊維は、事前に通常の方法による精練、場合によっては漂白、シルケット加工を行う。必要により、染色を行った後に本発明の加工を行うこともできる。
【0035】
まず、第1の方法について説明する。上記セルロース系繊維を、上記アルキル系樹脂の乳化分散体と上記フルオロアルキル系樹脂の乳化分散体との水系混合液に含侵する。含浸は、パッド法、スプレー法、コーティング法など公知のいずれの方法で行ってもよい。また、これらの処理液には、必要により、上記アルキル系樹脂又は上記フルオロアルキル系樹脂の触媒若しくは架橋剤などを併用してもよい。
【0036】
セルロース系繊維に付与するアルキル系樹脂の量は、多いほど機能性オイルの親和性が向上するが、実際には繊維重量に対して、有効成分で0.2%〜3.0%、好ましくは0.3%〜1.5%である。アルキル系樹脂の量が0.2%〜3.0%の範囲にあると、良好な風合いと機能性オイルの徐放性を維持しつつ、洗濯耐久性を得ることができる。
【0037】
また、セルロース系繊維に付与するフルオロアルキル系樹脂の量は、多いほど機能性オイルの洗濯耐久性が向上するが、実際には繊維重量に対して、有効成分で0.2%〜3.0%、好ましくは0.3%〜1.5%である。フルオロアルキル系樹脂の量が0.2%〜3.0%の範囲にあると、良好な風合いと機能性オイルの徐放性を維持しつつ、洗濯耐久性を得ることができる。また、加工コストが適正な範囲に収まる。
【0038】
上記含侵後、セルロース系繊維を乾燥し、化学結合のために熱処理する。熱処理は、化学結合性との関係で適宜選ばれるが、通常、140℃〜190℃、好ましくは150℃〜180℃で行われる。熱処理時間は、温度との関係で適宜選ばれるが、通常、10秒〜5分、好ましくは、30秒〜3分程度行われる。
【0039】
当該熱処理後、そのままで、又は必要により水洗した後に、機能性オイルを付与する。機能性オイルの付与は、機能性オイルをそのまま付与してもよいし、場合により溶媒で希釈してから付与してもよい。また、機能性オイルを水に乳化分散したものを水系乳化物として付与してもよい。機能性オイル付与の方法は、パッド法、スプレー法、コーティング法などの含浸法の他、浴中吸尽法など公知のいずれの方法で行ってもよい。機能性オイル付与後、必要により余剰のオイルを除去するために、水洗、湯洗、或いはソーピングを行う。
【0040】
機能性オイルを水系乳化物として付与した場合、付与後、乳化分散を破壊し、機能性オイルを繊維に親和させるために熱処理を行う。熱処理は、通常、100℃〜180℃、好ましくは、100℃〜160℃で行われる。熱処理時間は、温度との関係で適宜選ばれる。水分が乾燥し、乳化分散が破壊される条件でよいが、通常、10秒〜5分、好ましくは30秒〜3分程度行われる。熱処理後、乳化分散剤の残渣と余剰のオイルを除去するために、水洗、湯洗又はソーピングを行う。
【0041】
機能性オイル付与工程終了後の機能性オイルの付着量は、特に定めるものではないが、製品としての状態で繊維重量に対して、3%〜15%程度あればよい。
【0042】
上述のように、本実施形態では、アルキル系樹脂とフルオロアルキル系樹脂とをそれぞれ少なくとも1種含有した処理剤でもって、セルロース系繊維を処理した後に、このように処理したセルロース繊維に機能性オイルを付与するものである。
【0043】
これにより、上述のように加工されたセルロース系繊維は、機能性オイルの有効成分の洗濯耐久性を十分に維持しながら、洗濯後もその徐放性が発揮され、また繊維の風合いを損ねることのない機能性オイル担持セルロース系繊維製品を得ることができる。
【0044】
次に第2の方法について説明する。この方法は、上記第1の方法の工程を簡略化するものであって、その効果は第1の方法より弱いが、実用的に十分な効果を得ることができ、且つ、加工コストが低減できるメリットがある。
【0045】
この方法によると、上記セルロース系繊維を、上記アルキル系樹脂の乳化分散体と上記フルオロアルキル系樹脂の乳化分散体及び機能性オイルの乳化分散体との水系混合液に含侵する。この含浸は、パッド法、スプレー法、コーティング法など公知のいずれの方法で行ってもよい。また、これらの処理液には、必要により、上記アルキル系樹脂又は上記フルオロアルキル系樹脂の触媒若しくは架橋剤などを併用してもよい。
【0046】
セルロース系繊維に付与するアルキル系樹脂、フルオロアルキル系樹脂及び機能性オイルの量は、第1の方法と同様でよい。また、付与後の熱処理条件並びに水洗、湯洗及びソーピングも同様でよい。
【0047】
上述のように、本実施形態では、セルロース系繊維を、アリキル系樹脂、フルオロアルキル系樹脂及び機能性オイルをそれぞれ少なくとも1種含有した処理剤で処理するものである。
【0048】
これにより、上述のように加工されたセルロース系繊維は、機能性オイルの有効成分の洗濯耐久性を十分に維持しながら、洗濯後もその徐放性が発揮され、また繊維の風合いを損ねることのない機能性オイル担持セルロース系繊維製品を得ることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本実施形態において、次のような各実施例及び比較例を作製して評価した。使用した機能性オイルは、主として、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸を含有するオリーブ油を使用した。評価に使用した試験布は、通常の糊抜・精練・漂白・シルケット処理した綿100%の50番手ブロード織物(経糸144本/インチ、緯糸80本/インチ)を使用した。
【0050】
実施例1:
本実施例は、上記第1の方法によるものである。
【0051】
処理液1として、5%のオクテックスEM(保土ヶ谷化学株式会社製オクタデシルエチレン尿素20%乳化分散体)と5%のアサヒガードAG‐480(旭硝子株式会社製パーフルオロアルキルアクリレート20%乳化分散体)とを含む水溶液を準備した。
【0052】
また、処理液2として、オリーブ油の20%乳化液を準備した。乳化には、HLB11の非イオン系界面活性剤を1%使用し、通常の方法で乳化分散した。
【0053】
上記の試験布に対して、パッド法で前記処理液1を浸漬、搾液し、試験布重量に対して80%のピックアップで付与した。
【0054】
上記処理液1の付与後、上記試験布を100℃で3分間乾燥した。続いて、160℃で2分間熱処理し反応を完結した。
【0055】
このような反応後の試験布に対して、パッド法で上記処理液2を浸漬、搾液し、試験布重量に対して100%のピックアップで付与した。次に、上記処理液2の付与後、上記試験布を150℃で1分間乾燥し、その後、ソーピング、乾燥して加工布1を得た。
【0056】
実施例2:
本実施例は、上記第2の方法によるものである。
【0057】
処理液3として、5%のオクテックスEM(保土ヶ谷化学株式会社製オクタデシルエチレン尿素20%乳化分散体)、5%のアサヒガードAG‐480(旭硝子株式会社製パーフルオロアルキルアクリレート20%乳化分散体)、及びHLB11の非イオン系界面活性剤で乳化したオリーブ油12%を含む水溶液を準備した。
【0058】
上記試験布に対して、パッド法で上記処理液3を浸漬、搾液し、試験布重量に対して80%のピックアップで付与した。
【0059】
上記処理液3の付与後、上記試験布を100℃で3分間乾燥した。続いて、160℃で2分間熱処理し反応を完結すると共に、オリーブ油を担持した。その後、上記反応後の試験布に対して、ソーピング、乾燥して加工布2を得た。
【0060】
比較例1:
本比較例1は、上記実施例1及び2と同一の試験布に対し、当該実施例1の処理液1の付与を行わず、処理液2の付与のみを行った。その他の条件は、当該実施例1における処理液2と同様にして作成した。
【0061】
以上のように作製した各実施例及び比較例についてその特性につき評価した。この評価にあたり、評価項目として、加工後の機能性オイルの担持量、洗濯後の機能性オイルの保持量、及び実際の着用試験によるスキンケア効果を採用した。
【0062】
なお、これらの評価は、以下の方法で行った。加工による試験布の担持量及び洗濯後の担持量は重量法により対繊維重量%で測定した。これらの値から洗濯前に対する洗濯後の保持率(%)を計算した。なお、洗濯は、JIS L 0217の103法に準拠した家庭洗濯を20回繰り返すことにより評価した。
【0063】
スキンケア効果は、未加工布と加工布1及び2をモニターの腕に巻き付け、4時間後と8時間後の肌の状態を液体絆創膏でレプリカを採取し、マイクロスコープで観察した。評価は、スキンケア効果良好(○)、スキンケア効果あり(△)、スキンケア効果認めず(×)の三段階で評価した。
【0064】
これらの評価によれば、次の表1のような評価結果が得られた。
【0065】
【表1】

【0066】
この表1によれば、上記実施例1及び2は、いずれも比較例1に比べ、加工後の機能性オイルの担持量、洗濯後の機能性オイルの保持量が良好であり、また、実際の着用試験によるスキンケア効果においても良好な結果を示していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル系樹脂及びフルオロアルキル系樹脂をそれぞれ少なくとも1種含有する処理液でもってセルロース系繊維を処理した後、このように処理した前記セルロース系繊維に機能性オイルを付与するようにしたセルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法。
【請求項2】
アルキル系樹脂、フルオロアルキル系樹脂及び機能性オイルをそれぞれ少なくとも1種含有する処理液でもってセルロース系繊維を処理するようにしたセルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法。
【請求項3】
前記アルキル系樹脂は、アルキルエチレン尿素系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法。
【請求項4】
前記フルオロアルキル系樹脂は、パーフルオロアルキル基を含むアクリレート又はメタクリレートを主体とするポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のセルロース系繊維の機能性オイル担持加工方法。
【請求項5】
機能性オイル、アルキル系樹脂、フルオロアルキル系樹脂及びセルロース系繊維からなる機能性オイル担持セルロース系繊維製品において、
前記アルキル系樹脂及び前記フルオロアルキル系樹脂が、前記セルロース系繊維に化学結合をしていることを特徴とする機能性オイル担持セルロース系繊維製品。

【公開番号】特開2007−84937(P2007−84937A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271374(P2005−271374)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000219794)東海染工株式会社 (24)
【Fターム(参考)】