説明

セルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物

【課題】優れた剛性、熱伝導性、摺動性、制振性を兼備し、低比重で灰分も少ないポリアセタール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、(b)解繊されたセルロース繊維10〜150重量部、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部及び(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物0.01〜3重量部を含有させてなるセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維で強化され、高い剛性と優れた熱伝導性、摺動性、制振性等を兼備し、無機充填材による強化材料のように比重の増大や灰分の増加を生じさせることのないポリアセタール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的特性、熱的特性、電気的特性、摺動性、成形性などにおいて優れた特性を持っており、主に構造材料や機構部品などとして電気機器、自動車部品、精密機械部品などに広く使用されている。ポリアセタール樹脂が利用される分野の拡大に伴い、要求特性は益々高度化、複合化、特殊化する傾向にある。
【0003】
例えば、ポリアセタール樹脂の強度や剛性を向上させるためには、ガラス系無機充填材などの強化材を配合する方法が一般的であるが、この方法では得られるポリアセタール樹脂組成物の比重が高くなる上、焼却後に灰分(焼却残渣)が多量に残る問題がある。また、ポリアセタール樹脂が本来持つ摺動性などの特長を大きく損なう。更に、近年は、機構部品などの精密化が進む中で、強度や剛性の向上に加え、熱伝導性や制振性などの改良も要求される場合があるが、ガラス系無機充填材などの強化材を配合する方法ではこの要求に応えることも難しい。
【0004】
上記の課題に対し特開平3−217447号公報(特許文献1)には、ポリアセタール樹脂にパルプを配合したポリアセタール樹脂組成物が開示され、機械的強度、耐熱性、燃焼性(燃焼時の樹脂のドリッピング)等の改善が示されている。しかしながら、この方法では、ポリアセタール樹脂とパルプとの混合が不十分になり易く、安定して優れた特性を得ることが難しく、実用には適していない。また、この特許文献1には、ポリアセタール樹脂組成物の熱伝導性、摺動性、制振性などの改善については、何も開示されていない。
【0005】
また、特開2007−084713号公報(特許文献2)は、解繊されたセルロース繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物を得るための製造方法を提供するものであるが、この特許文献2には、ポリアセタール樹脂組成物についての具体的な記載はなく、また、強度や剛性の向上だけでなく熱伝導性、摺動性、制振性なども改善され、これらの特性を兼備した樹脂組成物については何も開示されていない。
【0006】
また、特開平3−28260号公報(特許文献3)に記載された発明では、ポリアセタール樹脂に対して微結晶セルロース及び繊維質性セルロースからなる群より選ばれる安定剤を少量配合し、ポリアセタール樹脂の熱安定性を改良することが行われているが、この発明ではポリアセタール樹脂組成物の剛性、熱伝導性、摺動性、制振性などの改良はいずれも達成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−217447号公報
【特許文献2】特開2007−084713号公報
【特許文献3】特開平3−28260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来から知られた技術では、上記のように、剛性、熱伝導性、摺動性、制振性を兼備し、低比重、低灰分であるポリアセタール樹脂組成物を得ることはできなかった。
【0009】
本発明は、これらの課題を解決し、優れた剛性、熱伝導性、摺動性、制振性を兼備し、低比重で灰分も少ないポリアセタール樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリアセタール樹脂に特定の繊維充填材と添加剤とを組み合わせて配合することにより、上記課題が解決し目的を達成し得るポリアセタール樹脂組成物およびその成形品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち本発明は、
(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、
(b)解繊されたセルロース繊維10〜150重量部、
(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部及び
(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物0.01〜3重量部を含有させてなるセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物とその成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物は、剛性、低比重、低灰分、熱伝導性、摺動性、制振性に優れ、自動車部品、電気・電子部品、雑貨、文房具類などに関連した成形品に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のポリアセタール樹脂組成物について詳細に説明する。
【0014】
本発明のポリアセタール樹脂組成物を構成する主要な成分は以下に説明する通りである。
<(a)ポリアセタール樹脂>
(a)成分のポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基(−OCH2−)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、実質的にオキシメチレン単位の繰返しのみからなるポリアセタールホモポリマー、オキシメチレン単位以外に他のコモノマー単位を含有するポリアセタールコポリマーが代表的な樹脂である。更に、ポリアセタール樹脂には、分岐形成成分や架橋形成成分を共重合することにより分岐構造や架橋構造が導入された共重合体や、オキシメチレン基の繰返しからなる重合体単位と他の重合体単位とを有するブロック共重合体やグラフト共重合体なども含まれる。これらのポリアセタール樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0015】
一般に、ポリアセタールホモポリマーは、無水ホルムアルデヒドやトリオキサン(ホルムアルデヒドの環状三量体)の重合により製造され、通常、その末端をエステル化することにより、熱分解に対して安定化されている。
【0016】
これに対して、ポリアセタールコポリマーは、一般的に、ホルムアルデヒドまたは一般式(CH2O)n[式中、nは3以上の整数を示す]で表されるホルムアルデヒドの環状オリゴマー(例えばトリオキサン)と、環状エーテルや環状ホルマールなどのコモノマーとを共重合することによって製造され、通常、加水分解によって末端の不安定部分を除去して熱分解に対して安定化される。
【0017】
ポリアセタールコポリマーの主原料としては、トリオキサンやテトラオキサンなどが挙げられ、通常、トリオキサンが使用される。
【0018】
コモノマーには、環状エーテル、グリシジルエーテル化合物、環状ホルマール、環状エステル(例えば、β−プロピオラクトンなど)、ビニル化合物(例えば、スチレン、ビニルエーテルなど)などが含まれる。
【0019】
環状エーテルとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキシド、オキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、トリオキセパン、1,3−ジオキサンなどが挙げられる。
【0020】
グリシジルエーテル化合物としては、例えば、アルキルまたはアリールグリシジルエーテル(例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテルなど)、アルキレンまたはポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテルなど)、アルキルまたはアリールグリシジルアルコールなどが挙げられる。
【0021】
環状ホルマールとしては、例えば、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマールなどが挙げられる。
【0022】
これらのコモノマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのコモノマーのうち、通常、環状エーテル及び/または環状ホルマールが用いられ、特に、エチレンオキシドなどの環状エーテルや、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマールなどの環状ホルマールが好ましい。
【0023】
これらのコモノマー(例えば、環状エーテル及び/または環状ホルマール)単位の割合は、ポリアセタール樹脂全体に対して、一般的には0.1〜20重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは0.5〜15重量%(特に1〜10重量%)程度である。
【0024】
(a)成分のポリアセタール樹脂のメルトインデックスは、特に限定されないが、1〜100g/10分の範囲が好ましく、特に、5〜50g/10分の範囲が好ましい。メルトインデックスが過小および過大の場合には、本発明の効果が十分に得られない場合がある。なお、メルトインデックスは、ASTM−D1238に準じて、190℃、2.16kgf(21.2N)の条件下で測定した値である。
<(b)セルロース繊維>
(b)成分のセルロース繊維は、セルロース繊維集合体が解繊されたものを使用する。セルロース繊維集合体は、多数のセルロース繊維が結合一体化されたものであり、天然物でも工業製品でもよく、麻繊維、竹繊維、綿繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維などの集合体を用いることができる。
【0025】
セルロース繊維集合体の形状、大きさは特に制限されず、解繊作業が円滑にできる範囲で選択することができる。その中でも好ましい形状のセルロース繊維集合体としては、シート形状のパルプシートが挙げられ、例えば、厚さが0.1〜5mm、好ましくは1〜3mmで、幅1〜50cmで、長さ3〜100cm程度のものが好適に使用することができる。
【0026】
パルプシートを使用する場合、パルプシートを丸めて筒状にしたもの、押し潰して細長い板状にしたもの、折り畳んで細長い板状シートとしたものなどを使用することもできる。また、パルプシートを一旦切断物とすることも可能である。例えば、厚さが0.1〜5mm、好ましくは1〜3mmで、幅2mm〜1cmで、長さ3mm〜3cm程度の短冊状のもの、または一辺が2mm〜1cm程度の四角形状のものを用いることもできる。
【0027】
セルロース繊維集合体の水分含有率は、20重量%以下が好ましく、17重量%以下がより好ましく、15重量%以下が更に好ましい。水分含有率が20重量%以下であると、摩擦熱の発生による昇温が容易になり、セルロース繊維集合体が解繊され易く凝集物が残らないので好ましい。なお、水分含有率は、カールフッシャー法による水分測定などにより求める。
【0028】
セルロース繊維集合体を形成するセルロース繊維は、熱安定性が高い点から、αセルロース含有量が高いものが好ましく、αセルロース含有量80重量%以上がより好ましく、85重量%以上が更に好ましく、90重量%以上が特に好ましい。
【0029】
セルロース繊維集合体におけるセルロース繊維の平均繊維径は、0.1〜1000μm
が好ましく、1〜500μmがより好ましく、5〜200μmが更に好ましく、10〜50μmが特に好ましい。セルロース繊維の平均繊維長さは、0.01〜100mmが好ましく、0.01〜50mmがより好ましく、0.1〜10mmが更に好ましく、0.1〜5mmが特に好ましい。セルロース繊維のアスペクト比(長さ/径)は、2〜1000が好ましく、3〜500がより好ましく、5〜200が更に好ましく、5〜100が特に好ましい。また、セルロース繊維は、カップリング剤(アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基、グリシジル基などの官能基を有するシランカップリング剤)で表面処理されていてもよい。
【0030】
(b)成分のセルロース繊維に使用するセルロース繊維集合体を解繊する方法としては、回転羽根を有するミキサーや解繊機などの装置を用いる方法が挙げられる。例えば、回転羽根を有するミキサー中にセルロース繊維集合体を入れ、高速攪拌することにより解繊することができる。ミキサーは、攪拌手段として回転羽根を有するものであればよく、好ましくは加温手段を有しているものであり、例えば、三井鉱山(株)製ヘンシェルミキサー、FM20C/I(容量20L)や(株)カワタ製スーパーミキサー、SMV−20(容量20L)などを用いることができる。
【0031】
回転羽根は、通常、上羽根と下羽根の2枚構成、あるいは上羽根、中間羽根、下羽根の3枚構成であるが、その枚数に制約はない。攪拌時の回転羽根の平均周速は10〜100m/秒の範囲で攪拌することが好ましく、より好ましくは平均周速が10〜90m/秒、更には平均周速が10〜80m/秒で攪拌することが好ましい。
【0032】
セルロース繊維集合体の解繊は、例えば、セルロース繊維集合体が綿状に変化したことが目視にて確認できた時点を処理の終了とすることができる。回転羽根の平均周速と攪拌時間は、セルロース繊維集合体の種類、形状、大きさ、投入量などにより変化するものであるため、前記したように綿状に変化した時点を基準とすることが好適である。
【0033】
(b)成分の解繊されたセルロース繊維の含有量は、(a)成分のポリアセタール樹脂100重量部に対して10〜150重量部であり、より好ましくは15〜120重量部である。含有量が過少および過多の場合には、本発明の効果が十分に得られないため好ましくない。
<(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤>
本発明で使用する(c)ヒンダードフェノール系化合物としては、単環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなど)、炭化水素基またはイオウ原子を含む基で連結された多環式ヒンダードフェノール化合物(例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など)、エステル基またはアミド基を有するヒンダードフェノール化合物(例えば、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、n−オクタデシル−2−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、ジ−n−オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ジヒドロシンナムアミド、N,N’−エチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−テトラメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−エチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N’−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレートなど)が挙げられる。
【0034】
本発明において、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。その配合割合は、(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、好ましくは0.02〜1重量部である。含有量が過少および過多の場合には、本発明の効果が十分に得られないため好ましくない。
【0035】
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物の調製にあたり、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤は(a)ポリアセタール樹脂に対し任意の段階で混合することが可能であるが、前記の(b)セルロース繊維との混合に先立ち、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を(a)ポリアセタール樹脂に予め押出機などで溶融混合する方法が特に好ましい。
<(d)窒素含有化合物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物が配合される。
【0036】
アミノトリアジン化合物としては、メラミンまたはその誘導体[メラミン、メラミン縮合体(メラム、メレム、メロン)など]、グアナミンまたはその誘導体、及びアミノトリアジン樹脂[メラミンの共縮合樹脂(メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−メラミン樹脂、メラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン樹脂、芳香族ポリアミン−メラミン樹脂など)、グアナミンの共縮合樹脂など]などが挙げられる。
【0037】
グアナミン化合物としては、脂肪族グアナミン化合物(モノグアナミン類、アルキレンビスグアナミン類など)、脂環族グアナミン系化合物(モノグアナミン類など)、芳香族グアナミン系化合物[モノグアナミン類(ベンゾグアナミン及びその官能基置換体など)、α−またはβ−ナフトグアナミン及びそれらの官能基置換誘導体、ポリグアナミン類、アラルキルまたはアラルキレングアナミン類など]、ヘテロ原子含有グアナミン系化合物[アセタール基含有グアナミン類、テトラオキソスピロ環含有グアナミン類(CTU−グアナミン、CMTU−グアナミンなど)、イソシアヌル環含有グアナミン類、イミダゾール環含有グアナミン類など]などが挙げられる。また、上記のメラミン、メラミン誘導体、グアナミン系化合物のアルコキシメチル基がアミノ基に置換した化合物なども含まれる。
【0038】
ヒドラジド化合物としては、脂肪族カルボン酸ヒドラジド系化合物(ステアリン酸ヒドラジド、12−ヒドロキシステアリン酸ヒドラジド 、セバシン酸ジヒドラジド 、ドデカン二酸ジヒドラジド 、エイコサン二酸ジヒドラジドなど)、脂環族カルボン酸ヒドラジド系化合物(1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントインなど)、芳香族カルボン酸ヒドラジド系化合物(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル安息香酸ヒドラジド、1−ナフトエ酸ヒドラジド、2−ナフトエ酸ヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジドなど)、ヘテロ原子含有カルボン酸ヒドラジド系化合物、ポリマー型カルボン酸ヒドラジド系化合物などが挙げられる。
【0039】
ポリアミドとしては、ジアミンとジカルボン酸とから誘導されるポリアミド;アミノカルボン酸、必要に応じてジアミン及び/またはジカルボン酸を併用して得られるポリアミド;ラクタム、必要に応じてジアミン及び/またはジカルボン酸との併用により誘導されるポリアミドが含まれる。また、2種以上の異なったポリアミド形成成分により形成される共重合ポリアミドも含まれる。
【0040】
具体的なポリアミドの例としては、ポリアミド3、ポリアミド4、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸および/またはイソフタル酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸)と芳香族ジアミン(例えば、メタキシリレンジアミン)とから得られるポリアミド、芳香族および脂肪族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸とアジピン酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミド及びこれらの共重合体などが挙げられる。また、ポリアミドハードセグメントとポリエーテル成分などの他のソフトセグメントの結合したポリアミド系ブロックコポリマーの使用も可能である。
【0041】
(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれる窒素含有化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。その配合割合は、(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、好ましくは0.02〜1重量部である。含有量が過少および過多の場合には、本発明の効果が十分に得られないため好ましくない。
【0042】
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物の調製にあたり、(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた窒素含有化合物は(a)ポリアセタール樹脂に対し任意の段階で混合することが可能であるが、前記(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤と同様に、(b)セルロース繊維との混合に先立ち、(d)窒素含有化合物を(a)ポリアセタール樹脂に予め押出機などで溶融混合する方法が特に好ましい。
<(e)金属化合物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、更に、(e)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、無機酸塩及びカルボン酸塩から選ばれた少なくとも一種の金属化合物を配合することができる。
【0043】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物としてはCaO、MgO、ZnOなどが挙げられる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物としてはLiOH、Ca(OH)2、Mg(OH)2などが挙げられる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の無機酸塩としては炭酸塩(Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3など)、ホウ酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
【0044】
また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属とカルボン酸塩を形成する有機カルボン酸としては、飽和モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、カプリル酸など)、飽和ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸など)、及びこれらのオキシ酸(グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、クエン酸など)、不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸など]、不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸など)、及びこれらのオキシ酸(プロピオール酸など)、重合性不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸などの重合性不飽和モノカルボン酸、重合性不飽和多価カルボン酸(イタコン酸、マレイン酸、フマル酸など)、多価カルボン酸の酸無水物またはモノエステル(マレイン酸モノエチルなどのモノアルキルエステルなど)など]とオレフィン(エチレン、プロピレンなど)との共重合体などが挙げられ、形成されるカルボン酸金属塩としては、アルカリ金属有機カルボン酸塩(クエン酸リチウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムなど)、アルカリ土類金属有機カルボン酸塩(酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなど)、アイオノマー樹脂(前記重合性不飽和多価カルボン酸とオレフィンとの共重合体に含有されるカルボキシル基の少なくとも一部が前記金属のイオンにより中和されている樹脂)などが挙げられる。
【0045】
これらの(e)金属化合物の中でも、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩及びカルボン酸塩が特に好ましい。
【0046】
これらの(e)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、無機酸塩及びカルボン酸塩から選ばれた金属化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0047】
その好ましい配合割合は、(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、特に好ましくは0.02〜1重量部から選択できる。含有量が過少の場合には(e)金属化合物の配合による耐熱安定性などに対する効果が十分に発現せず、逆に過多の場合には、本発明が目的とする剛性等の特性を損ねる恐れがあるため好ましくない。本発明において、かかる(e)金属化合物を配合する場合、(e)金属化合物は(a)ポリアセタール樹脂に対し任意の段階で混合することが可能であるが、(b)セルロース繊維との混合に先立ち、(e)金属化合物を(a)ポリアセタール樹脂に予め押出機などで溶融混合する方法が特に好ましい。
<(f)加工助剤>
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、更に、(f)長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の誘導体、ポリオキシアルキレングリコール及びシリコーン化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物を加工助剤として配合することができる。
【0048】
長鎖脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。また、その一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものも使用できる。このような長鎖脂肪酸としては、炭素数10以上の1価または2価の脂肪酸、炭素数10以上の一価の不飽和脂肪酸、炭素数10以上の二価の脂肪酸(二塩基性脂肪酸)が例示される。前記脂肪酸には、1つまたは複数のヒドロキシル基を分子内に有する脂肪酸も含まれる。
【0049】
長鎖脂肪酸の誘導体には、脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドなどが含まれる。
【0050】
脂肪酸エステルとしては、前記長鎖脂肪酸とアルコールとのエステルが挙げられる。その構造は特に制限されず、直鎖状または分岐状脂肪酸エステルのいずれも使用できる。脂肪酸エステルの具体例としては、エチレングリコールモノまたはジパルミチン酸エステル、エチレングリコールモノまたはジステアリン酸エステル、エチレングリコールモノまたはジベヘン酸エステル、エチレングリコールモノまたはジモンタン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリパルミチン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリステアリン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリベヘン酸エステル、グリセリンモノ乃至トリモンタン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラステアリン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラベヘン酸エステル、ペンタエリスリトールモノ乃至テトラモンタン酸エステル、ポリグリセリントリステアリン酸エステル、トリメチロールプロパンモノパルミチン酸エステル、ペンタエリスリトールモノウンデシル酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)のモノまたはジラウレート、モノまたはジパルミテート、モノまたはジステアレート、モノまたはジベヘネート、モノまたはジモンタネート、モノまたはジオレート、モノまたはジリノレートなどが挙げられる。
【0051】
脂肪酸アミドの例としては、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、モンタン酸アミドなどの飽和脂肪酸の第1級酸アミド、オレイン酸アミドなどの不飽和脂肪酸の第1級酸アミド、ステアリルステアリン酸アミド、ステアリルオレイン酸アミドなどの飽和及び/または不飽和脂肪酸とモノアミンとの第2級酸アミド、エチレンジアミン−ジパルミチン酸アミド、エチレンジアミン−ジステアリン酸アミド(エチレンビスステアリルアミド)、ヘキサメチレンジアミン−ジステアリン酸アミド、エチレンジアミン−ジベヘン酸アミド、エチレンジアミン−ジモンタン酸アミド、エチレンジアミン−ジオレイン酸アミド、エチレンジアミン−ジエルカ酸アミドなどが挙げられ、更にエチレンジアミン−(ステアリン酸アミド)オレイン酸アミドなどのアルキレンジアミンのアミン部位に異なるアシル基が結合した構造を有するビスアミドなどが例示できる。
【0052】
前記ポリオキシアルキレングリコールとしては、アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどのアルキレングリコールなど)の単独または共重合体、それらの誘導体などが挙げられる。
【0053】
ポリオキシアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(ランダムまたはブロック共重合体など)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノブチルエーテルなどの共重合体などが挙げられる。これらのうち、オキシエチレン単位を有する重合体、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体及びそれらの誘導体などが好ましい。ポリオキシアルキレングリコールの平均分子量は、3×102〜1×106、好ましくは1×103〜1×105程度である。
【0054】
前記シリコーン系化合物には、(ポリ)オルガノシロキサンなどが含まれる。(ポリ)オルガノシロキサンとしては、ジアルキルシロキサン(ジメチルシロキサンなど)、アルキルアリールシロキサン(フェニルメチルシロキサンなど)、ジアリールシロキサン(ジフェニルシロキサンなど)などのモノオルガノシロキサン、これらの単独重合体(ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンなど)または共重合体などが例示できる。なお、ポリオルガノシロキサンは、オリゴマーであってもよい。
【0055】
また、(ポリ)オルガノシロキサンには、分子末端や主鎖に、エポキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基または置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)、エーテル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などの置換基を有する変性(ポリ)オルガノシロキサンなども含まれる。
【0056】
本発明において(f)加工助剤を配合する場合、上記の長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の誘導体、ポリオキシアルキレングリコール及びシリコーン化合物から選ばれた化合物を単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。その好ましい配合割合は、(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜3重量部であり、特に好ましくは0.02〜1重量部である。含有量が過少の場合には加工助剤としての効果が得られず、逆に過多の場合にも加工性を損ねたり、本発明が本来目的とする効果を損ねる恐れがあるため好ましくない。
【0057】
本発明において、かかる(f)加工助剤を配合する場合、(f)加工助剤は(a)ポリアセタール樹脂に対し任意の段階で混合することが可能であるが、(b)セルロース繊維との混合に先立ち、(f)加工助剤を(a)ポリアセタール樹脂に予め押出機などで溶融混合する方法が特に好ましい。
<(g)摺動性改良剤>
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、更に、不飽和カルボン酸及びその酸無水物及びそれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種で変性した変性オレフィン系重合体、1級又は2級アミノ基を有するアルキレングリコール系重合体、α−オレフィンオリゴマー、表面処理を施した無機充填剤などから選ばれた化合物を摺動性改良剤として配合することができる。また、前述した長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の誘導体、ポリオキシアルキレングリコール、シリコーン化合物も摺動性改善機能を有するものであり、摺動性改良剤として配合することができる。
不飽和カルボン酸及びその酸無水物及びそれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種で変性した変性オレフィン系重合体は、オレフィン系重合体を不飽和カルボン酸及びその酸無水物及びそれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種で変性したものを総称する。ここで用いられるオレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィンの単独重合体、及びこれらの二種以上からなる共重合体、及びこれらのα−オレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等のα,β−不飽和カルボン酸エステル、 1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、 2,5−ノルボナジエン等の非共役ジエン、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン等の共役ジエン成分、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、ビニルメチルエーテル等のビニルエーテルやこれらのビニル系化合物の誘導体等のコモノマー成分のうちの少なくとも1種を含んで成るランダム、ブロック又はグラフト共重合体等が挙げられる。
変性オレフィン系共重合体とは、上記のオレフィン系重合体を不飽和カルボン酸及びその酸無水物及びそれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種で変性したものである。好ましい変性オレフィン系共重合体の具体例としては、無水マレイン酸で変性されたポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体、エチレンアクリル酸メチル共重合体、エチレンメタクリル酸エチル共重合体、エチレンメタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
1級又は2級アミノ基を有するアルキレングリコール系重合体とは、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールのホモポリマー又はコポリマーであって、その末端又は分子鎖中に1級又は2級アミノ基を有するポリマーである。更に脂肪酸とのエステル、脂肪族アルコールとのエーテルを形成する等の若干の変性をした重合体でもよい。その例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらの構成単位からなるコポリマーであって、少なくとも1つのアミノプロピル基、アミノオクチル基を有するものなどがある。
α−オレフィンオリゴマーとしては、主にC6 〜C20のα−オレフィンを単独、もしくはエチレンとC3 〜C20のα−オレフィンを共重合した構造を有する脂肪族炭化水素が挙げられる。
表面処理を施した無機充填剤としては、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭酸バリウム、タルク、ウォラストナイト、マイカ及び酸化亜鉛等より選ばれた少なくとも1種に脂肪酸エステル、シラン化合物などで表面処理を施したものが好ましく使用され、より好ましくは炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭酸バリウム及び酸化亜鉛より選ばれた少なくとも1種に脂肪酸エステルで表面処理を施したものが挙げられる。かかる無機充填剤は、粒子形状、繊維形、アスペクト比などの形状に依存せず、かかる群にあげられた無機充填剤であれば、何れのものも使用することが可能である。
本発明において(g)摺動性改良剤を配合する場合、上記の不飽和カルボン酸及びその酸無水物及びそれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種で変性した変性オレフィン系重合体、1級又は2級アミノ基を有するアルキレングリコール系重合体、α−オレフィンオリゴマー、表面処理を施した無機充填剤などから選ばれた化合物を単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。その好ましい配合割合は、(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部であり、特に好ましくは0.02〜8重量部から選択できる。
本発明において、かかる(g)摺動性改良剤を配合する場合、(g)摺動性改良剤は(a)ポリアセタール樹脂に対し任意の段階で混合することが可能であるが、(b)セルロース繊維との混合に先立ち、(g)摺動性改良剤を(a)ポリアセタール樹脂に予め押出機などで溶融混合する方法が特に好ましい。
<ポリアセタール樹脂組成物の調製方法>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、前記の(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、(b)解繊されたセルロース繊維10〜150重量部、(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部、(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物0.01〜3重量部を含有させることにより、また、好ましくは更に(e)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の、酸化物、水酸化物、無機酸塩及びカルボン酸塩から選ばれた少なくとも一種の金属化合物0.01〜3重量部、及び/または、(f)長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の誘導体、ポリオキシアルキレングリコール及びシリコーン化合物から選ばれた少なくとも一種の加工助剤0.01〜3重量部、及び/または、(g)摺動性改良剤0.01〜10重量部を含有させることにより調製する。
【0058】
本発明において、上記ポリアセタール樹脂組成物の調製方法の具体的態様は特に限定されるものではなく、一般に合成樹脂組成物またはその成形品の調製法として公知の設備と方法により調製することができる。即ち、必要な成分を混合し、1軸または2軸の押出機またはその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。また、押出機またはその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。
【0059】
本発明のポリアセタール樹脂組成物の調製にあたり、(b)セルロース繊維以外の配合成分、即ち(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(d)窒素含有化合物、好ましい配合成分である(e)金属化合物、(f)加工助剤 及び(g)摺動性改良剤等から選ばれた1種又は2種以上を予め(a)ポリアセタール樹脂に溶融混合しておき、しかる後、この溶融混合物を(b)セルロース繊維及び組成物を構成する残余成分と混合し、溶融混練して目的とする組成物を調製する方法は特に好ましい。
【0060】
本発明のポリアセタール樹脂組成物の調製方法としては、回転羽根を有するミキサー内でセルロース繊維集合体の解繊を行い、(b)解繊されたセルロース繊維に(a)ポリアセタール樹脂及び他の成分を追加添加し混合する方法、回転羽根を有するミキサーまたは解繊機でセルロース繊維集合体の解繊を行い、(b)解繊されたセルロース繊維を別のミキサーに移して(a)ポリアセタール樹脂及び他の成分と添加し混合する方法、あるいは、(b)解繊されたセルロース繊維と(a)ポリアセタール樹脂及び他の成分とを押出機にて混合する方法などが挙げられる。
【0061】
その中でも、本発明の効果、作業性及び経済性の観点から、特に、回転羽根を有するミキサー内で(b)解繊されたセルロース繊維に(a)ポリアセタール樹脂及び他の成分を追加添加し混合する方法が好ましい。前記方法においては、ミキサー内にてセルロース繊維集合体が解繊され、そこに所要量の(a)ポリアセタール樹脂及び他の成分を投入し高速攪拌することで、摩擦熱が発生してミキサー内が昇温するため、ポリアセタール樹脂が溶融し、解繊されたセルロース繊維に付着して、直接、セルロース繊維とポリアセタール樹脂及び他の成分との混合物を得ることができる。
【0062】
(b)解繊されたセルロース繊維に(a)ポリアセタール樹脂及び他の成分を追加添加し混合する場合の攪拌時の回転羽根の平均周速が10〜100m/秒の範囲で攪拌することが好ましく、より好ましくは平均周速が10〜90m/秒、更に好ましくは平均周速が10〜80m/秒で攪拌する。攪拌を継続するとミキサー内の温度が上昇し、モーターの動力が上昇する。この動力の上昇及びミキサー内の温度に応じて攪拌速度を徐々にあるいは一気に減速して回転数を低下させ、平均周速が前記範囲になるようにすることが好ましい。また、ミキサー内の昇温を補助して、セルロース繊維とポリアセタール樹脂との混合物の製造を容易にするため、加温手段により、ミキサーを加温することもできる。
【0063】
更に得られた混合物は、冷却することに固化させることができる。冷却の方法は、前記のミキサー内で冷却する方法、前記のミキサーに連結した別のミキサーに混合物を排出し、冷却する方法などが挙げられる。特に、前記のミキサーに連結した別のミキサーに混合物を排出し、攪拌しながら冷却する方法が好ましい。冷却時の回転羽根の平均周速が1〜30m/秒の範囲で攪拌することが好ましく、より好ましくは平均周速が2〜25m/秒、更に好ましくは平均周速が3〜25m/秒で攪拌する。
【0064】
このような処理により、(a)ポリアセタール樹脂と(b)解繊されたセルロース繊維及び他の成分とを含むポリアセタール樹脂組成物が得られる。得られた組成物は、そのままで使用することも可能であるが、粉砕機などにより造粒、及び/または、押出機などにより溶融混錬し造粒した後で使用することもできる。
【0065】
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物の調製にあたり、(a)ポリアセタール樹脂と(b)解繊されたセルロース繊維との密着性を改善する物質を使用することができる。ここで、密着性を改善する物質としては、一般式O=C=N-R-N=C=O(R:2価の基)で表されるイソシアネート化合物、S=C=N-R-N=C=S (R:2価の基)で表されるイソチオシアネート化合物、及びそれらの変性体イソシアネート化合物、熱可塑性ポリウレタン樹脂、α,β−モノオレフィン性不飽和カルボン酸の酸無水物の重合体及び共重合体などが挙げられる。
【0066】
イソシアネート化合物の例としては、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、2,4 −トリレンジイソシアネート、2,6 −トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,6 −ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが、またイソチオシオネート化合物の例としては上記イソシアネート化合物に対応するジイソチオネートが、また変性体としてはこれらのイソシアネート化合物或いはイソチオシオネート化合物の二量体、三量体、更にはイソシアネート基が何らかの形で保護されている化合物等が挙げられ、これらはいずれも有効であるが、溶融処理等の変色度等の諸性質、あるいは取扱い上の安全性を考慮すると、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、1,5 −ナフタレンジイソシアネート、1,6 −ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4 −トリレンジイソシアネート、2,6 −トリレンジイソシアネート並びにこれらの二量体、三量体等の変性体(又は誘導体)が好ましい。
【0067】
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂の例としては、(i)ジイソシアネート化合物、(ii)分子量が500〜5000の高分子量ポリオール、(iii)分子量が60〜500の低分子量ポリオール及び/又はポリアミンを構成成分とする反応生成物などが挙げられる。
【0068】
また、α,β−モノオレフィン性不飽和カルボン酸の酸無水物の重合体及び共重合体の例としては、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物の重合体、スチレン系単量体(例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロロスチレンなど)と無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物との共重合体、エチレン及び/またはプロピレン系単量体などと無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸の酸無水物との共重合体などが挙げられる。
【0069】
更に本発明の組成物には目的とする用途に応じてその物性を改善するため、公知の各種の添加物を配合し得る。添加物の例を示せば、各種の着色剤、滑剤、核剤、界面活性剤、異種ポリマー、有機高分子改良剤及び無機、有機、金属などの繊維状、粉粒状、板状の充填剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できる。
【0070】
また、上記安定剤、添加剤などの配合は任意のいかなる段階、例えば、(a)ポリアセタール樹脂に一旦加えても、或いは樹脂組成物の調整時に加えてもよく、又最終成形品を得る直前で、添加、混合することも可能である。
<ポリアセタール樹脂組成物の成形方法ならびに用途>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、従来公知の成形方法(例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクション成形などの方法)で、種々の成形品を成形することができる。また、これらの成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建材、生活関係部品・化粧関係部品・医用関係部品など各種用途に利用することができる。
【0071】
具体的には、自動車部品としては、インナーハンドル、フェーエルトランクオープナー、シートベルトバックル、アシストラップ、各種スイッチ、ノブ、レバー、クリップなどの内装部品、メーター、コネクターなどの電気系統部品、オーディオ機器やカーナビゲーション機器などの車載電気・電子部品、ウインドウレギュレーターのキャリアープレートに代表される金属と接触する部品、ドアロックアクチェーター部品、ミラー部品、ワイパーモーターシステム部品、燃料系統の部品などの機構部品などが挙げられる。
【0072】
電気・電子部品としては、ポリアセタール樹脂成形品で構成され、かつ金属接点が多数存在する機器の部品または部材、例えば、オーディオ機器、ビデオ機器、または、電話機、コピー機、ファクシミリ、ワードプロセサー、コンピューターなどのOA機器、玩具類の部品または部材、具体的には、シャーシ、ギヤー、レバー、カム、プーリー、軸受けなどが挙げられる。
【0073】
更に、照明器具、建具、配管、コック、蛇口、トイレ周辺機器部品などの建材・配管部品、ファスナー類、文具、リップクリーム・口紅容器、洗浄器、浄水器、スプレーノズル、スプレー容器、エアゾール容器、一般的な容器、注射針のホルダーなどの広範な生活関係部品・化粧関係部品・医用関係部品に好適に使用される。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例において使用した成分及び試験方法の詳細は、以下の通りである。
〔使用成分〕
(a)ポリアセタール樹脂:ポリプラスチックス(株)製
(a−1)メルトインデックス=9g/10分
(a−2)メルトインデックス=27g/10分
(a−3)メルトインデックス=45g/10分
(b)セルロース繊維集合体(解繊して使用)
(b−1)木材パルプシート(日本製紙グループ製)
(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
(c−1)ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
(d)窒素含有化合物
(d−1)メラミン
(e)金属化合物
(e−1)12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム
(e−2)ステアリン酸カルシウム
(e−3)酸化マグネシウム
(e−4)酸化亜鉛
(e−5)炭酸カルシウム
(f)加工助剤
(f−1)エチレンビスステアリルアミド
(f−2)グリセリンモノステアレート
(g)摺動性改良剤
(g−1)アミン変性ポリエチレングリコール
(g−2)無水マレイン酸変性ポリオレフィン
(g−3)エチレンプロピレンコポリマー
(g−4)脂肪酸エステルで表面処理した炭酸カルシウム
〔試験方法〕
(1)剛性(曲げ弾性率)
ISO178に準拠し、曲げ弾性率(MPa)を測定した。
(2)比重
試験片の容積(水中浸漬による増加分を測定)と試験片の重量により算出した。
(3)灰分
るつぼに入れた試料を電気炉内で600℃、2時間燃焼させ、燃焼後の灰分(wt%)を測定した。
(4)熱伝導性(熱伝導率)
ホットディスク法により、熱伝導率(W/m・K)を測定した。熱伝導率が高い方が熱伝導性に優れていることを示している。
(5)摺動性(磨耗量)
JIS K7218に準拠し、回転式摩擦磨耗試験機を用い、同規格A法指定の中空円筒試験片を鋼材(S45C)と摺動させ、S45Cの磨耗量(g)を測定した。試験は、樹脂側を固定、S45C側を回転し、回転速度150rpm、荷重20kgf、試験時間24時間の条件にて行った。なお、実施例23、比較例5については、回転数300rpmで試験を実施し、樹脂側とS45Cとの摩擦係数、S45Cの磨耗量(g)および樹脂側の磨耗量(g)についてそれぞれ測定した。摩擦係数が低く、磨耗量が少ない方が摺動性に優れていることを示している。
(6)制振性(損失係数)
JIS G0602の中央支持定常加振法に基づき、周波数1×102Hzにおける損失係数(%)を測定した。損失係数が高い方が制振性に優れていることを示している。
【0075】
実施例1〜7
予め、(a)ポリアセタール樹脂に(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(d)窒素含有化合物、(e)金属化合物、(f)加工助剤を表1の実施例1〜7の割合で混合し、押出機で溶融混練して、(b)セルロース繊維以外の成分を含有するポリアセタール樹脂組成物を各々調製した。
【0076】
回転羽根を有するヒーターミキサー(ヒーター及び温度計付き、容量200L)を100℃以上に加温し、(b)セルロース繊維集合体(木材パルプシート)を投入し、平均周速50m/秒で攪拌した。約2分経過時点において、セルロース繊維が綿状に変化した。
【0077】
引き続き、ヒーターミキサー内にホッパーから、予め調製しておいたポリアセタール樹脂組成物をミキサー内に投入し、平均周速50m/秒で攪拌を行った。ミキサーの温度は上昇して160〜190℃に達し、この状態で攪拌を続けた。
【0078】
その後、平均周速を25m/秒の低速に落とし、撹拌を継続させた後、ミキサーの排出口をあけ、接続する冷却ミキサー〔冷却水(20℃)による水冷手段及び温度計付き、容量500L〕に、混合物を排出し、冷却ミキサー内で、平均周速10m/秒で攪拌し、冷却を行った。その後、混合物は固化し、固化物が得られた。
【0079】
固化物を粉砕機で粉砕後、押出機で溶融混錬し、ペレット状のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物を調製した。得られたペレットを用いて、射出成形機により、所定の試験片を成形し、試験評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
比較例1
(b)セルロース繊維を含有しないポリアセタール樹脂組成物(表1の比較例1の組成にて押出機で溶融混合により配合されたもの)を実施例と同様に評価した。比較例1においてポリアセタール樹脂(a−1)を(a−2)或は(a−3)に替えた場合も物性に実質的な差異は生じなかった。結果を表1に示す。表1の結果の比較から、本発明のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物は、比重・灰分の上昇、摺動性・制振性の低下を抑えながら、剛性(曲げ弾性率)、熱伝導性を非強化のポリアセタール樹脂組成物(比較例1)よりも顕著に向上させていることがわかる。
【0081】
比較例2〜3
従来より、強度や剛性を向上させる手段として用いられているガラス繊維を配合したポリアセタール樹脂組成物を調製し評価した。調製した組成は表1の比較例2及び3の通りであり、(b’−2)ガラス繊維としてはアルミナ硼珪酸Eガラスを使用した。比較例3においては、ガラス繊維を配合した場合の安定性、加工性を考慮した組成とした。結果を表1に示す。 表1に示す実施例と比較例2〜3(及び比較例1)を対比することにより、本発明のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物は、ガラス繊維強化ポリアセタール樹脂組成物(比較例2〜3)のような比重、灰分の増大や、摺動性、制振性の低下を生じることなく、剛性や熱伝導性を向上させる手段として極めて有効であることがわかる。
【0082】
比較例4
予め、(a)ポリアセタール樹脂に(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(d)窒素含有化合物、(e)金属化合物、(f)加工助剤を表1の比較例4の割合で混合し、押出機で溶融混練して、(b)セルロース繊維を含有しないポリアセタール樹脂組成物を調製した。
【0083】
このポリアセタール樹脂組成物と未解繊の(b)セルロース繊維集合体(木材パルプシート)とを小型ニーダー型溶融混錬機(ラボプラストミル、東洋精機製)内で溶融混合した。ポリアセタール樹脂内でセルロース繊維の分散不良が見られたため、以後の評価は実施しなかった。
【0084】
実施例8〜11
(a)ポリアセタール樹脂に(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(d)窒素含有化合物、(f)加工助剤を表2の実施例8〜11の割合で混合し、押出機で溶融混練して、(b)セルロース繊維以外の成分を含有するポリアセタール樹脂組成物を各々調製した。
続いて、実施例1と同様に、回転羽根を有するヒーターミキサーに(b)セルロース繊維集合体(木材パルプシート)を投入し、セルロース繊維が綿状に変化した後、予め調製しておいたポリアセタール樹脂組成物をヒーターミキサー内にホッパーから投入し、攪拌後、接続する冷却ミキサーに混合物を排出し、冷却することにより固化物を得た。さらに、固化物を粉砕機で粉砕後、押出機で溶融混錬し、ペレット状のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物を調製した。得られたペレットを用いて、射出成形機により、所定の試験片を成形し、試験評価を行った。剛性(曲げ弾性率)の結果を表2に示す。
【0085】
実施例12〜22
実施例11と同様な組成にて、回転羽根を有するヒーターミキサーに(b)セルロース繊維集合体(木材パルプシート)を投入し、セルロース繊維が綿状に変化した後、予め調製しておいたポリアセタール樹脂組成物をヒーターミキサー内にホッパーから投入し、攪拌後、接続する冷却ミキサーに混合物を排出し、冷却することにより固化物を得た。さらに、固化物を粉砕機で粉砕した。
続いて、得られた粉砕物に対し、実施例12〜22に示す追加成分を所定の組成にて添加し、押出機で溶融混錬し、ペレット状のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物を調製した。得られたペレットを用いて、射出成形機により、所定の試験片を成形し、試験評価を行った。剛性(曲げ弾性率)の結果を表2〜3に示すように、剛性への影響は無かった。一方、官能テストにより、追加成分の添加を行なわないものに比べ、成形等の溶融加工時のホルムアルデヒドの発生が低減されることが確認された。
【0086】
実施例23
(a)ポリアセタール樹脂に(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤、(d)窒素含有化合物、(e)金属化合物、(f)加工助剤、(g)摺動性改良剤を表4の実施例23の割合で混合し、押出機で溶融混練して、(b)セルロース繊維以外の成分を含有するポリアセタール樹脂組成物を各々調製した。
続いて、実施例1と同様に、回転羽根を有するヒーターミキサーに(b)セルロース繊維集合体(木材パルプシート)を投入し、セルロース繊維が綿状に変化した後、予め調製しておいたポリアセタール樹脂組成物をヒーターミキサー内にホッパーから投入し、攪拌後、接続する冷却ミキサーに混合物を排出し、冷却することにより固化物を得た。さらに、固化物を粉砕機で粉砕後、押出機で溶融混錬し、ペレット状のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物を調製した。得られたペレットを用いて、射出成形機により、所定の試験片を成形し、試験評価を行った。結果を表4に示す。
【0087】
比較例5
(b)セルロース繊維を含有しないポリアセタール樹脂組成物(表4の比較例5の組成にて押出機で溶融混合により配合されたもの)を実施例23と同様に評価した。結果を表4に示す。表4の結果の比較から、本発明のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物は、摺動性の低下(摩擦係数・磨耗量の著しい増加)を抑えながら、剛性(曲げ弾性率)を向上させていることがわかる。特に、高回転条件においても摺動性を一定レベルで維持していることがわかる。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、
(b)解繊されたセルロース繊維10〜150重量部、
(c)ヒンダードフェノール系酸化防止剤0.01〜3重量部及び
(d)アミノトリアジン化合物、グアナミン化合物、ヒドラジド化合物及びポリアミドから選ばれた少なくとも一種の窒素含有化合物0.01〜3重量部を含有させてなるセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
(b)解繊されたセルロース繊維が、回転羽根を有するミキサーまたは解繊機でセルロース繊維集合体を解繊させたものである、請求項1記載のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
更に、(e)アルカリ金属またはアルカリ土類金属の、酸化物、水酸化物、無機酸塩及びカルボン酸塩から選ばれた少なくとも一種の金属化合物0.01〜3重量部を含有させてなる請求項1または2記載のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
更に、(f)長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の誘導体、ポリオキシアルキレングリコール及びシリコーン化合物から選ばれた少なくとも一種の加工助剤0.01〜3重量部を含有させてなる請求項1〜3のいずれか1項記載のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
更に、(g)不飽和カルボン酸及びその酸無水物及びそれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種で変性した変性オレフィン系重合体、1級又は2級アミノ基を有するアルキレングリコール系重合体、α−オレフィンオリゴマー、表面処理を施した無機充填剤から選ばれた少なくとも一種の摺動性改良剤0.01〜10重量部を含有させてなる請求項1〜4のいずれか1項記載のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
(b)セルロース繊維以外の配合成分から選ばれた1種又は2種以上が、予め(a)ポリアセタール樹脂に溶融混合されて配合されたものである請求項1〜5の何れか1項記載の
セルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
(a)ポリアセタール樹脂のメルトインデックス(ASTM−D1238に準拠、190℃、2.16kgf)が5〜50g/10分である、請求項1〜6のいずれか1項記載の
セルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のセルロース繊維強化ポリアセタール樹脂組成物を成形してなる成形品。

【公開番号】特開2010−265438(P2010−265438A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55658(P2010−55658)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】